• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1283975
審判番号 不服2013-12892  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-05 
確定日 2014-01-22 
事件の表示 特願2011- 75610「マルチレベル基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日出願公開、特開2011-139098〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成9年4月23日(パリ条約による優先権主張1996年6月13日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願平10-501581号の一部を平成20年6月10日に新たな特許出願とした特願2008-151727号の一部をさらに平成23年3月30日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月24日付けで拒絶の理由が通知され、同25年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同25年3月1日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同25年7月5日に本件審判の請求がされ、同時に特許請求の範囲を補正対象とする手続補正書(以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正について
1 補正の内容
本件補正は特許請求の範囲について補正をするものであって、補正前後の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
(1)補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
基板処理装置であって、
搬送チャンバ、及び前記搬送チャンバ内の中央に配されている回転軸を有する基板搬送機構を有する基板搬送部と、
前記搬送チャンバの壁部の開口部に結合され、複数の基板処理チャンバと前記搬送チャンバとを接続する複数の閉鎖可能ゲートと、を含み、
前記複数の基板処理チャンバの各々は鉛直高さの異なる少なくとも2つの水平面内に配され、前記鉛直高さの異なる水平面の各々は、前記複数の処理チャンバの各々と前記搬送チャンバとを接続しかつ互いに90°未満の角度をなしている少なくとも2つの閉鎖可能ゲートを有し、当該鉛直方向において異なる位置にある少なくとも2つの基板処理チャンバの各々は、閉鎖可能取り付け具の各々によって前記搬送チャンバの同一の側部に別々かつ独立に取り付けられて、別々かつ独立している隔離基板処理領域を当該鉛直方向において異なる位置にある少なくとも2つの基板処理チャンバ内部に形成し、
前記基板処理装置は、前記基板搬送機構の前記回転軸の水平方向移動なしに、前記基板搬送機構が前記少なくとも2つの鉛直高さの異なる水平面の全てにある前記閉鎖可能ゲートの全てを通って基板を搬送し、前記鉛直高さの異なる水平面において前記基板処理チャンバの各々に基板を挿入しかつそこから基板を取り出すように前記基板搬送機構を動作させるコントローラをさらに含むことを特徴とする基板処理装置。」
(2)補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
基板処理装置であって、
搬送チャンバ、及び前記搬送チャンバ内の中央に配されている回転軸を有する基板搬送機構を有する基板搬送部と、
前記搬送チャンバの壁部の開口部に結合され、複数の基板処理チャンバと前記搬送チャンバとを接続する複数の閉鎖可能ゲートと、を含み、
前記複数の基板処理チャンバの各々は鉛直高さの異なる少なくとも2つの水平面内に配され、前記鉛直高さの異なる水平面の各々は、前記複数の処理チャンバの各々と前記搬送チャンバとを接続しかつ互いに90°未満の角度をなしている少なくとも2つの閉鎖可能ゲートを有し、当該鉛直方向において異なる位置にある少なくとも2つの基板処理チャンバの各々は、閉鎖可能取り付け具の各々によって前記搬送チャンバの同一の側面に別々かつ独立に取り付けられて、別々かつ独立している隔離された基板処理領域を当該鉛直方向において異なる位置にある少なくとも2つの基板処理チャンバ内部に形成し、
前記基板処理装置は、前記基板搬送機構の前記回転軸の水平方向移動なしに、前記基板搬送機構が前記少なくとも2つの鉛直高さの異なる水平面の全てにある前記閉鎖可能ゲートの全てを通って基板を搬送し、前記鉛直高さの異なる水平面において前記基板処理チャンバの各々に基板を挿入しかつそこから基板を取り出すように前記基板搬送機構を動作させるコントローラをさらに含むことを特徴とする基板処理装置。」(下線は補正箇所を示すため、当審で付したものである。)
2 補正の適否
請求項1に関する本件補正について検討すると、「隔離基板処理領域」を「隔離された基板処理領域」と補正するものであるので、誤記の訂正を目的とするものであることは明らかである。
以上のとおりであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により従前の例とされる改正前の特許法第17条の2第4項第3号の規定に適合する。

第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり適法と認められることから、本件出願の請求項1ないし7に係る発明は、平成25年7月5日付け手続補正書により補正がされた特許請求の範囲、及び出願当初の明細書、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(2)の補正後の特許請求の範囲の請求項1に示したとおりである。

第4 刊行物記載の発明
原審で通知した拒絶理由で引用した、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平3-274746号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)第2ページ右下欄第12行ないし第3ページ左上欄第7行
「(D.発明が解決しようとする問題点)
ところで、マルチチャンバ装置には一般に下記の問題があった。
先ず、マルチチャンバ装置は複数のチャンバを平面方向のみに並べて一体化していたのでマルチチャンバ装置の占有面積が大きくなるという問題があった。
また、一般にマルチチャンバ装置には必ず最低一つの搬送チャンバ5が必要であるが、マルチチャンバ装置に占める搬送チャンバ5の占有面積の割合が無視できない程大きい。従って、マルチチャンバ装置の為し得る仕事の量に対するマルチチャンバ装置の占有面積の比(これは工場の面積を有効に利用する利用率に拘わってくる)を大きくすることが難しかった。」
(イ)第3ページ左上欄第18行ないし右上欄第13行
「第2に、マルチチャンバ装置においては一般に搬送チャンバ5とプロセスチャンバ8、8、…との間のゲートバルブ4を同時に複数個開かないルールが支配しているが、このことがスループットの向上を阻む要因となる。というのは、各チャンバ5、8、8、…間が相互汚染(クロスコンタミネーション)するのを完全に防止するため、ゲートバルブ4を同時に2個以上開かないようにする必要がある。しかしながら、一部のプロセスチャンバ8、8のなかには、互いに連通しても全く相互汚染が生じないものがある場合がある。にも拘らず、マルチチャンバ装置全体のなかで同時にゲートバルブ4を2個以上開かないようにするというルールを守らなければならないため、スループットの向上が阻害されてしまっていたのである。」
(ウ)第3ページ右下欄第4ないし7行
「(E.問題点を解決するための手段)
本発明マルチチャンバ装置の第1のものは、複数のチャンバ又は処理部を高さが異なるように配置した構造部分を有することを特徴とする。」
(エ)第4ページ左上欄第2ないし11行
「(F.作用)
本発明マルチチャンバ装置の第1のものによれば、垂直方向に積み重ねたチャンバあるいは処理部を高さを異ならせて配置したチャンバについては占有面積の増大をほとんど伴うことなく為し得る処理の種類あるいは処理量を増大させることができる。
従って、マルチチャンバ装置の占有面積の増大を伴うことなく処理の種類、量の増大を図ることができる。」
(オ)第4ページ左下欄第9行ないし右下欄第14行
「(a.第1の実施例)[第1図、第2図]
第1図(A)、(B)は本発明マルチチャンバ装置の第1の実施例を示すものであり、同図(A)は平面断面図、同図(B)は縦断面図である。
本マルチチャンバ装置は平面形状が略正方形の搬送チャンバ5の三つの側面それぞれにプロセスチャンバ8を上下に2段ずつ合計6個ゲートバルブ4を介して連結し、残りの一つの側面にロードロックチャンバ1を設けたものである。各プロセスチャンバ8、8、…のうち上段のものには上方に排気するクライオポンプ10を、下段のものには下方に排気するクライオポンプ10をそれぞれ設けている。
そして、ウエハ搬送機構9は上段のチャンバ8と下段のチャンバ8との間で半導体ウエハ3の搬送ができるようにアーム6及びフォーク7を全体的に昇降させることができるようになっている。
このようなマルチチャンバ装置によれば、占有面積の増大を伴うことなくプロセスチャンバ8の数を増すことができる。また、プロセスチャンバ8の数が同じならばマルチチャンバ装置の占有面積を狭くすることができる。」
(カ)第10ページ左下欄第13行ないし右下欄第3行
「(H.発明の効果)
以上に述べたように、本発明マルチチャンバ装置の第1のものは、複数のチャンバあるいは複数の処理部を異なる高さに配置した構造部分を少なくとも有することを特徴とするものである。
従って、本発明マルチチャンバ装置の第1のものによれば、チャンバ、処理部の高さを異ならせて配置したので占有面積の増大をほとんど伴うことなくマルチチャンバ装置により為し得る処理の種類あるいは処理量を増大させることができる。」
(キ)ここで、第1図を参照すると、ウエハ搬送機構9が搬送チャンバ5内の中央に配されていることが見て取れる。そして、上記摘記事項(オ)の「ウエハ搬送機構9は上段のチャンバ8と下段のチャンバ8との間で半導体ウエハ3の搬送ができるようにアーム6及びフォーク7を全体的に昇降させることができるようになっている。」の記載から、ウエハ搬送機構9は、回転軸を有し、かつ、当該回転軸が水平方向移動なしに鉛直方向に上下動できるものであることは明らかである。
第1図の平面断面図(A)と縦断面図(B)とを参照することにより、鉛直方向上段及び下段のそれぞれに、お互いに90°の角度をなして3つずつのプロセスチャンバ8が設けられているのが理解できる。また、第1図の縦断面図(B)を参照することにより、各プロセスチャンバ8は、搬送チャンバ5の同一の側面の上段及び下段に別々にかつ独立に取り付けられ、また、別々かつ独立している隔離されたプロセス領域を有しているものであることは明らかである。
(ク)刊行物1記載の発明
以上(ア)ないし(カ)の摘記事項、及び(キ)の認定事項を考慮し、本願発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認める。
「マルチチャンバ装置であって、
搬送チャンバ5、及び前記搬送チャンバ5内の中央に配されている回転軸、及びアーム6、フォーク7を有するウエハ搬送機構9と、
6個のプロセスチャンバ8、8、・・・と前記搬送チャンバ5とを連結する6個のゲートバルブ4と、を含み、
前記6つのプロセスチャンバ8、8、・・・のうち鉛直方向上段の3つのプロセスチャンバ8、下段の3つのプロセスチャンバ8の各々は、前記3つのプロセスチャンバ8の各々と前記搬送チャンバ5とを連結しかつ互いに90°の角度をなしている3つのゲートバルブ4を有し、当該鉛直方向において異なる段にある2つのプロセスチャンバ8の各々は、ゲートバルブ4による連結によって前記搬送チャンバ5の同一の側面の上段及び下段に別々にかつ独立に取り付けられ、また、別々かつ独立している隔離されたプロセス領域を有しているものであり、
前記マルチチャンバ装置は、前記回転軸の水平方向移動なしで鉛直方向の上下動により、前記アーム6及びフォーク7が前記鉛直方向上段及び下段のすべてのプロセスチャンバ8、8、・・・に半導体ウエハ3を搬送できるようにしたマルチチャンバ装置。」

第5 対比及び当審の判断
(1)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「マルチチャンバ装置」は本願発明の「基板処理装置」に相当し、以下同様に、「搬送チャンバ5」は「搬送チャンバ」に、「プロセスチャンバ8」は「基板処理チャンバ」に、「半導体ウエハ3」は「基板」に相当する。
刊行物1発明の「回転軸、及びアーム6、フォーク7」は本願発明の「回転軸を有する基板搬送機構」に相当し、刊行物1発明の「ウエハ搬送機構9」は本願発明の「基板搬送部」に相当する。
刊行物1発明の「ゲードバルブ4」は本願発明の「閉鎖可能ゲート」及び「閉鎖可能取り付け具」に相当する。そうすると、刊行物1発明の「6個のプロセスチャンバ8、8、・・・と前記搬送チャンバ5とを連結する6個のゲートバルブ4」は、ゲートバルブがチャンバの壁部の開口部に結合され、接続されるものであるので、本願発明の「搬送チャンバの壁部の開口部に結合され、複数の基板処理チャンバと搬送チャンバとを接続する複数の閉鎖可能ゲート」に相当する。
刊行物1発明の「鉛直方向上段」及び「下段」は、本願発明の「鉛直高さの異なる」「2つの水平面内」に相当する。
刊行物1発明の「90°の角度」は、「所定の角度」という限りで本願発明の「90°未満の角度」と共通する。
刊行物1発明の「同一の側面の上段及び下段に別々にかつ独立に取り付けられ」ることは、本願発明の「同一の側面に別々かつ独立に取り付けられ」ることに相当する。
刊行物1発明の「プロセス領域」は本願発明の「基板処理領域」に相当する。したがって、刊行物1発明の「プロセス領域を有している」ことは、プロセス領域がプロセスチャンバ8内にあることが明らかなので、本願発明の「基板処理領域を」、「基板処理チャンバ内部に形成」することに相当する。
刊行物1発明の「回転軸の鉛直方向の上下動により、アーム6及びフォーク7が前記鉛直方向上段及び下段のすべてのプロセスチャンバ8、8、・・・に半導体ウエハ3を搬送できるようにした」ことは、回転軸が水平方向移動していないことは明らかなので、本願発明の「基板搬送機構の回転軸の水平方向移動なしに、基板搬送機構が2つの鉛直高さの異なる水平面のすべてにある閉鎖可能ゲートの全てを通って基板を搬送し、鉛直高さの異なる水平面において基板処理チャンバの各々に基板を挿入しかつそこから基板を取り出すように基板搬送機構を動作させる」ことに相当する。
以上から、本願発明と刊行物1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「基板処理装置であって、
搬送チャンバ、及び前記搬送チャンバ内の中央に配されている回転軸を有する基板搬送機構を有する基板搬送部と、
前記搬送チャンバの壁部の開口部に結合され、複数の基板処理チャンバと前記搬送チャンバとを接続する複数の閉鎖可能ゲートと、を含み、
前記複数の基板処理チャンバの各々は鉛直高さの異なる2つの水平面内に配され、前記鉛直高さの異なる水平面の各々は、前記複数の処理チャンバの各々と前記搬送チャンバとを接続しかつ互いに所定の角度をなしている少なくとも2つの閉鎖可能ゲートを有し、当該鉛直方向において異なる位置にある2つの基板処理チャンバの各々は、閉鎖可能取り付け具の各々によって前記搬送チャンバの同一の側面に別々かつ独立に取り付けられて、別々かつ独立している隔離された基板処理領域を当該鉛直方向において異なる位置にある2つの基板処理チャンバ内部に形成し、
前記基板処理装置は、前記基板搬送機構の前記回転軸の水平方向移動なしに、前記基板搬送機構が前記2つの鉛直高さの異なる水平面の全てにある前記閉鎖可能ゲートの全てを通って基板を搬送し、前記鉛直高さの異なる水平面において前記基板処理チャンバの各々に基板を挿入しかつそこから基板を取り出すように前記基板搬送機構を動作させる基板処理装置。」
<相違点1>
2つの閉鎖可能ゲートのなす角度に関して、本願発明においては、「90°未満」と特定しているのに対して、刊行物1発明では、「90°」である点。
<相違点2>
本願発明においては、基板搬送機構を動作させるための「コントローラ」を有しているのに対して、刊行物1発明では、コントローラを有しているのかどうか不明な点。
(2)相違点についての検討及び判断
(ア)<相違点1>について
刊行物1発明では、プロセスチャンバ8は搬送チャンバ5の周囲に90°の角度で3つ設けられているものであるが、刊行物1の第6図や第8図、第10図、原査定における拒絶理由において引用した特開平8-46013号公報の図4、特開平7-171778号公報の図24、特開平8-115968号公報の図1に記載されているように、基板処理チャンバを搬送チャンバの周囲に90°未満の角度で配置することは従来周知の事項であって、しかも、当該周知の基板処理チャンバを刊行物1発明に適用できないとする阻害要因は見当たらず、また、一般に搬送チャンバの周囲に配置される基板処理チャンバの数は多ければ多いほど多数の基板を同時に処理できることからすれば、刊行物1発明において、基板処理チャンバの数を増やしてその結果として基板処理チャンバを搬送チャンバの周囲に90°未満の角度で配置するものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
(イ)<相違点2>について
基板処理装置において、基板の搬送の制御をコントローラで行うことは、例示するまでもなく従来周知の事項であって、基板の処理環境を考えると、コントローラで動作させることが通常であることからすれば、刊行物1発明において、基板搬送機構である回転軸、及びアーム6、フォーク7の動作をコントローラで行うようにすることについて、格別な発明力を要するものとすることはできない。
(ウ)本願発明の作用ないし効果について
本願発明によってもたらされる作用ないし効果は、刊行物1発明及び周知の事項から予測できる作用ないし効果以上の顕著なものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願の請求項2乃至7に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

第7 仮に、本願発明において、回転軸の移動を「鉛直方向移動なしに」と解釈した場合について
基板搬送機構の回転軸の移動について、本願発明は、「水平方向移動なしに」と特定されているところ、前記の(1)の対比において言及したとおり、刊行物1発明においても、ウエハ搬送機構9の回転軸は、鉛直方向には上下動するものの水平方向には移動しないものであるから、この点に関して本願発明と刊行物1発明とで相違するものではない。
この点に関して、拒絶査定においても言及しているように、「水平方向移動なしに」が「鉛直方向移動なしに」の誤りであったと仮定した場合について、以下、検討する。
その場合、本願発明と刊行物1発明とは、さらに、以下の点で相違することになる。
<仮の相違点3>
基板搬送機構に関して、本願発明では、「回転軸の鉛直方向移動なしに」搬送機構が基板を搬送するものであるのに対して、刊行物1発明では、ウエハ搬送機構9の回転軸は鉛直方向に上下動することにより、上下段のプロセスチャンバ8に半導体ウエハを搬送するものである点。
<仮の相違点3>について検討すると、回転軸の鉛直方向移動なしに搬送可能な搬送機構は、拒絶査定において引用した実願昭62-189456号(実開平1-93733号)のマイクロフィルム(第1図参照)のほか、例えば、特開平2-2605号公報(Fig.3、6a?6f参照)、特開平4-280651号公報(図1参照)、特開平4-146092号公報(第2図参照)、実願平4-58842号(実開平6-23252号)のCD-ROM(図1、2参照)に見られるように従来周知の事項であることからすれば、刊行物1発明においても、半導体ウエハ3を上下段のプロセスチャンバ8に移載する上でウエハ搬送機構9に回転軸の鉛直方向移動なしのものを用いることに格別の困難性を有するものとは認められない。
したがって、本願発明において、「水平方向移動なしに」が「鉛直方向移動なしに」の誤りであったと仮定したとしても、本願発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第8 審判請求書における補正案について
本願発明は、審判請求時の補正によって補正された上記第2の1の(2)のとおりのものであるところ、請求人は、審判請求書において補正案を提示している。
ここで、審判請求書の補正案について検討すべき法律上の根拠はなく、しかも、審判請求時に特許請求の範囲を補正することは可能であるから、審判請求書記載の補正案について検討する必要性は全く存在しないところ、念のため当該補正案について検討すると、当該補正案では、上記認定の本願発明に、さらに「複数の処理チャンバの各々を搬送チャンバに接続しかつ鉛直高さの異なる少なくとも2つの水平面内に配されている少なくとも2つの閉鎖可能ゲートは、同一の側面に接続され、互いに水平方向にオフセットしており」という事項を追加している。
しかしながら、2つの閉鎖可能ゲートを水平方向にオフセットさせても、そのことによる技術的意義がなんら認められないことから、この特定された点は、単なる設計的事項に過ぎないと考えざるを得ない。
 
審理終結日 2013-08-21 
結審通知日 2013-08-27 
審決日 2013-09-09 
出願番号 特願2011-75610(P2011-75610)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 陽  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 豊原 邦雄
刈間 宏信
発明の名称 マルチレベル基板処理装置  
代理人 藤村 元彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ