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審決分類 審判 査定不服 特37条出願の単一性 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1284004
審判番号 不服2013-8446  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-08 
確定日 2014-02-12 
事件の表示 特願2009-140106「無線通信システムにおいて動作する装置の地理的位置情報の制御」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-278632、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年6月28日(パリ条約による優先権外国庁受理2002年6月27日、米国)を国際出願日とする特願2004-518008号の一部を平成21年6月11日に新たな出願としたものであって、平成24年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年5月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出され、同年6月21日付けで審尋がなされ、同年12月24日に回答書が提出されたものである。


第2 平成25年5月8日付けの手続補正の適否
1.補正の内容
平成25年5月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、平成24年5月8日付けの手続補正書に記載されたとおりの

「 【請求項1】
移動する目標の位置を要求側エンティティへ選択的に伝送するための方法であって、
目標の位置を判断することと、
目標の位置に関係付けられた第1の所定の距離値を判断することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の所定の距離値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の所定の距離値よりも短い距離離れた位置であるときは、
目標の位置と関係付けられた第2の所定の距離値を判断することと、
目標の新しい位置が、経路上の地点から、第2の所定の距離値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとを含む方法。
【請求項2】
移動する目標の位置を要求側エンティティへ選択的に伝送するための方法であって、
目標の位置を判断することと、
目標の位置に関係付けられた第1の所定の距離値を判断することと、
目標の新しい位置が、経路上の地点から、第1の所定の距離値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとを含む方法。
【請求項3】
目標の新しい位置が、経路上の地点から、第1の所定の距離値よりも短い距離離れた位置であるときは、
目標の位置と関係付けられた第2の所定の距離値を判断することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第2の所定の距離値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
目標の速度を判断することと、
目標の位置にしたがって目標の所定の制限速度を判断することと、
目標の速度が目標の所定の制限速度を越えているときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項5】
目標の位置が、ピークの容量のロードをもつ区域に位置特定されるか、またはオフピークの容量のロードをもつ区域内に位置特定されるかを判断することと、
目標の位置が、ピークの容量のロードをもつ区域内に位置特定されるときは、目標の位置を低減レートで伝送することと、
目標の位置が、オフピークの容量のロードをもつ区域内に位置特定されるときは、目標の位置を標準または増加レートで伝送することとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項6】
目標の位置を要求側エンティティへ伝送するときを判断するための方法であって、
距離に基づいて報告する方式に関係付けられた第1の閾値を越えたかどうかを判断することと、
経路上の地点に基づいて報告する方式に関係付けられた第2の閾値を越えたかどうかを判断することと、
第1の閾値または第2の閾値を越えたときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとを含む方法。
【請求項7】
近接に基づいて報告する方式に関係付けられた第3の閾値を越えたかどうかを判断することと、
第3の閾値を越えたときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
速度に基づいて報告する方式に関係付けられた第4の閾値を越えたかどうかを判断することと、
第4の閾値を越えたときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
目標の位置を要求側エンティティへ伝送するときを判断するための装置であって、
距離に基づいて報告する方式に関係付けられた第1の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
経路上の地点に基づいて報告する方式に関係付けられた第2の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
近接に基づいて報告する方式に関係付けられた第3の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
速度に基づいて報告する方式に関係付けられた第4の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、または第4の閾値を越えたときに、目標の位置を要求側エンティティへ伝送するための手段とを含む装置。」

から、平成25年5月8日付けの手続補正書に記載されたとおりの

「 【請求項1】
移動する目標の位置を要求側エンティティへ選択的に伝送するための方法であって、
目標の位置を判断することと、
目標の位置に関係付けられた第1の予め定められた閾値を判断することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値よりも短い距離離れた位置であるときは、
目標の位置と関係付けられた第2の予め定められた閾値を判断することと、
目標の新しい位置が、予め定められた経路上の地点から、第2の予め定められた閾値以上それた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとを含む方法。
【請求項2】
移動する目標の位置を要求側エンティティへ選択的に伝送するための方法であって、
目標の位置を判断することと、
目標の位置に関係付けられた第1の予め定められた閾値を判断することと、
目標の新しい位置が、予め定められた経路上の地点から、第1の予め定められた閾値以上それた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとを含む方法。
【請求項3】
目標の新しい位置が、予め定められた経路上の地点から、第1の予め定められた閾値よりも短い距離それた位置であるときは、
目標の位置と関係付けられた第2の予め定められた閾値を判断することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第2の予め定められた閾値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
目標の速度を判断することと、
目標の位置にしたがって目標の所定の制限速度を判断することと、
目標の速度が目標の所定の制限速度を越えているときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項5】
目標の位置が、ピークの容量のロードをもつ区域に位置特定されるか、またはオフピークの容量のロードをもつ区域内に位置特定されるかを判断することと、
目標の位置が、ピークの容量のロードをもつ区域内に位置特定されるときは、目標の位置を低減レートで伝送することと、
目標の位置が、オフピークの容量のロードをもつ区域内に位置特定されるときは、目標の位置を標準または増加レートで伝送することとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項6】
目標の位置を要求側エンティティへ伝送するときを判断するための方法であって、
距離に基づいて報告する方式に関係付けられた第1の閾値を越えたかどうかを判断することと、
予め定められた経路上の地点に基づいて報告する方式に関係付けられた第2の閾値を越えたかどうかを判断することと、
第1の閾値または第2の閾値を越えたときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとを含み、
前記目標の位置を要求側エンティティへ伝送することは、目標の新しい位置が予め定められた経路上の地点から前記第2の閾値以上それた位置であるときは目標の位置を要求側エンティティへ伝送することを含む、方法。
【請求項7】
近接に基づいて報告する方式に関係付けられた第3の閾値を越えたかどうかを判断することと、
第3の閾値を越えたときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
速度に基づいて報告する方式に関係付けられた第4の閾値を越えたかどうかを判断することと、
第4の閾値を越えたときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することとをさらに含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
目標の位置を要求側エンティティへ伝送するときを判断するための装置であって、
距離に基づいて報告する方式に関係付けられた第1の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
予め定められた経路上の地点に基づいて報告する方式に関係付けられた第2の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
近接に基づいて報告する方式に関係付けられた第3の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
速度に基づいて報告する方式に関係付けられた第4の閾値を越えたかどうかを判断するための手段と、
第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、または第4の閾値を越えたときに、目標の位置を要求側エンティティへ伝送するための手段とを含み、
前記目標の位置を要求側エンティティへ伝送するための手段は、目標の新しい位置が予め定められた経路上の地点から前記第2の閾値以上それた位置であるときは目標の位置を要求側エンティティへ伝送することを含む、装置。」(下線は、請求人が手続補正書において補正箇所を示すものとして付加したものを援用したものである。)

と補正するものである。(以下、【請求項1】?【請求項9】に係る発明を、それぞれ「補正後の発明1」?「補正後の発明9」という。)


2.補正の目的・新規事項の有無について
(1)補正事項
本件補正は上記のものであって、その補正の前後の内容を対比すると、本件補正は以下a.?d.の補正事項を含むものである。

a.補正前の請求項1、2、及び3において、「所定の距離値」を「予め定められた閾値」とする補正。
b.補正前の請求項1、2、3、6及び9において、「経路上の地点」を「予め定められた経路上の地点」とする補正。
c.補正前の請求項1、2、及び3において、「・・・距離離れた位置」を「・・・距離それた位置」とする補正。
d.請求項6に「前記目標の位置を要求側エンティティへ伝送することは、目標の新しい位置が予め定められた経路上の地点から前記第2の閾値以上それた位置であるときは目標の位置を要求側エンティティへ伝送することを含む」という限定を追加し、同様に請求項9に「前記目標の位置を要求側エンティティへ伝送するための手段は、目標の新しい位置が予め定められた経路上の地点から前記第2の閾値以上それた位置であるときは目標の位置を要求側エンティティへ伝送することを含む」という限定を追加する補正。

(2)検討
まず、上記各補正事項について補正の目的を検討する。
上記補正事項a.は、「所定」とは「予め定められた」ものであるということを限定し、「距離値」が「閾値」として使われるものであるということを特定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
上記補正事項b.は、「経路上の地点」が「予め定められた」ものであることを限定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
上記補正事項c.は、「離れた位置」が単に離れているだけではなく、「それ」ていることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
上記補正事項d.は、請求項6では「第2の閾値」に基づき「目標の位置を要求側エンティティへ伝送すること」に関して、「目標の新しい位置が予め定められた経路上の地点から前記第2の閾値以上それた位置であるときは目標の位置を要求側エンティティへ伝送すること」を限定するものである。そして請求項9においても、「第2の閾値」に基づき「目標の位置を要求側エンティティへ伝送するための手段」に関して同様の限定を行うものである。したがって、これらの補正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
以上のように、本件補正はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そして、特に、願書に最初に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0047】【0048】欄には「予定軌道」の存在と、「予定軌道からのずれ」、すなわち、予定軌道から「それた」ことを利用することについて記載されていることに鑑みれば、上記補正事項はいずれも願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲内で行われたものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定、及び、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。


3.独立特許要件について
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)進歩性について
ア.補正後の発明
補正後の発明1?補正後の発明9は上記「1.補正の内容」の項で認定したとおりである。

イ.引用文献
原査定で引用された特開2002-135196号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

a.「【0002】
【従来の技術】移動体通信システムとしては現在種々の形態のものが広く実用に供せられているが、以下述べる本発明のシステムは、自動車(タクシー等)に移動局を塔載し、基地局(配車センター等)で各移動局の位置と動態(空車/実車/迎車等の状態)とを把握し、配車指示を各移動局に出すための配車システムを例示する。さらに具体的には、GPS-AVM(Grobal Positioning System-Automatic Vehicle Monitoring)システムを例にとって説明する。このGPS-AVMシステムは、移動局がGPSを使って自律的に自己の位置を把握し、さらにその位置のデータを配車センターに自ら通知するものであって、現在の配車システムはこのGPS-AVMシステムが主流になりつつある。」(3頁3欄)

b.「【0006】特にこのGPS-AVMシステム1においては、多数の移動局3の各々についてその現在位置と動態(実車/空車/迎車)を常に正確に把握できるように、基地局2へ頻繁に上りフレームを送出する。このため現在位置については任意発信方式が採用され、この方式では、移動局3が例えば50m等の一定距離を移動する毎に自律的に上りフレームを使って基地局2にその位置を通知する。」(3頁4欄)

上記引用文献1の記載,及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されているものと認められる。

「移動局の位置を基地局へ送出する方法であって、
移動局がGPSを使って自律的に自己の位置を把握し、
移動局が一定距離を移動する毎に自律的に基地局にその位置を通知することとを含む方法。」


また、原査定で引用された特開平9-152475号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

c.「【請求項1】 移動する物体の位置をGPS衛星を利用して検出し、位置情報を出力する位置情報検出手段と、地図情報を格納する格納手段と、前記位置情報検出手段で検出した移動物体の位置情報と前記格納手段から読み出した地図情報とを合成して合成画像データを作成するデータ合成手段と、前記合成画像データを無線送信する無線送信手段とを具備した物体位置情報送信装置と;前記物体位置情報送信装置を遠隔地から操作し、移動物体の位置情報をファクシミリ通信を用いて図面として取り出すことのできる受信側ファクシミリ装置とから成ることを特徴とする遠隔移動物体位置検出システム。
【請求項2】 前記合成画像データをファクシミリデータに変換するデータ変換手段を更に備え、前記無線送信手段でファクシミリデータを送信することを特徴とする請求項1記載の遠隔移動物体位置検出システム。
【請求項3】 物体位置情報送信装置が受信側ファクシミリ装置から一定距離離れたとき、自動的に位置情報を送信することを特徴とする請求項1又は2記載の遠隔移動物体位置検出システム。
【請求項4】 物体位置情報送信装置が予め定めた特定位置に到達したときに、自動的に位置情報を送信することを特徴とする請求項1又は2記載の遠隔移動物体位置検出システム。」(2頁1欄)

d.「【0022】次に、移動物体10の位置と受信側ファクシミリ26との間の距離は図面上で容易に計測できるので、一定距離離れたとき、また一定距離離れるごとに自動的に位置情報と合成した図面情報を物体位置情報送信装置12の側から送信することも可能である。
【0023】更に、移動物体10が予め定めた特定位置に到達したとき、自動的に位置情報と合成した図面情報を物体位置情報送信装置12側から送信することも可能である。ただしこの場合は、特定位置の座標を予めメモリ18に格納しておき、移動物体10の位置情報と格納された特定位置の座標とを照合する必要がある。」(3頁4欄)

上記引用文献2の記載,及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用文献2記載のものは、移動する物体の位置を受信側ファクシミリ装置に送信するための方法といえる。そして上記摘記事項d.の「移動物体10」は上記摘記事項c.の「移動する物体」に相当する構成である。
したがって、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されているものと認められる。

(引用発明2)
「移動する物体の位置を受信側ファクシミリ装置に送信するための方法であって、
移動する物体の位置をGPS衛星を利用して検出することと、
移動する物体の位置と受信側ファクシミリ装置とが一定距離離れるごとに自動的に位置を受信側ファクシミリ装置に送信することとを含む方法。」


ウ.対比・判断
補正後の発明1と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「移動局」「基地局」が、それぞれ補正後の発明1の「移動する目標」「要求側エンティティ」に相当する。
引用発明1の「移動局がGPSを使って自律的に自己の位置を把握」することは、補正後の発明1の「目標の位置を判断すること」に相当する。
引用発明1の「一定距離」は、目標の位置に関係付けられて判断されるものではない点で異なるものの、補正後の発明1の「第1の予め定められた閾値」に対応する。
そして、引用発明1において「移動局が一定距離を移動する毎に自律的に基地局にその位置を通知する」ということは、位置を送信した前の位置から一定距離離れた位置になったときに、そのときの移動局の位置を自律的に位置を基地局に送信することになるから、補正後の発明1の「目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送する」に対応する。

したがって、補正後の発明1と引用発明1とは以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 移動する目標の位置を要求側エンティティへ伝送するための方法であって、
目標の位置を判断することと、
目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値以上離れた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送することを含む方法。」

(相違点1)
補正後の発明1は「移動する目標の位置を要求側エンティティへ選択的に伝送するための方法」であるのに対して、引用発明1は「選択的に」伝送しているのか否かは不明な点。

(相違点2)
補正後の発明1は「目標の位置に関係付けられた第1の予め定められた閾値を判断すること」という構成を有するのに対して、引用発明1において「第1の予め定められた閾値」に対応する「一定距離」は「目標の位置に関係付けられた」ものではなく、また「判断」されるものでもない点。

(相違点3)
補正後の発明1は
「目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値よりも短い距離離れた位置であるときは、目標の位置と関係付けられた第2の予め定められた閾値を判断することと、目標の新しい位置が、予め定められた経路上の地点から、第2の予め定められた閾値以上それた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送すること」という構成を有するのに対して、引用発明1は「目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値よりも短い距離離れた位置であるとき」に関して何らの構成も有さない点。

つぎに、上記の相違点について検討する。
(相違点1)について検討すると、「選択的に」とはその文言上、「全てではなく一部を選択して」の意と解せられるところ、これは要求側エンティティが何を欲しているかによって当業者が適宜決められる事項にすぎないから、相違点1とした点は格別の事項ではない。

(相違点2)について検討すると、「第1の予め定められた閾値」が「目標の位置」に依存しており、しかも当該「目標の位置」に基づいて判断され決定されるということは、引用文献1及び2をみても何らの示唆もなく、また技術的常識、あるいは周知の技術ということもできない。したがって(相違点2)とした補正後の発明1の構成は容易になし得たものとはいえない。

(相違点3)について検討すると、「目標の新しい位置が、目標の前の位置から、第1の予め定められた閾値よりも短い距離離れた位置であるとき」にどのような動作を行うかについて、引用文献1及び2には何も示唆されていない。
また、相違点とした「目標の新しい位置が、予め定められた経路上の地点から、第2の予め定められた閾値以上それた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送する」という動作に関しても、引用文献1及び2をみても何らの示唆もなく、また技術的常識、あるいは周知の技術ということもできない。したがって(相違点3)とした補正後の発明1の構成は当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、補正後の発明1は当業者が引用発明1、2及び周知技術に基いて容易に想到し得たものということはできない。

つぎに、独立請求項である補正後の発明2、6及び9について検討する。これらの請求項はいずれも「目標の新しい位置が、予め定められた経路上の地点から・・・閾値以上それた位置であるときは、目標の位置を要求側エンティティへ伝送する」構成を含むものである。しかしながら、当該構成は上記の(相違点3)についての検討の項でも検討したように、引用文献1及び2をみても何らの示唆もなく、また技術的常識、あるいは周知の技術ということもできない。したがって当該構成を含む補正後の発明2、6及び9についても当業者が引用発明1、2及び周知技術に基いて容易に想到できたものということはできない。

以上のように、独立請求項である補正後の発明1、2、6及び9は引用発明1、2及び周知技術に基いて発明できたものではないから、これらを引用する補正後の発明3、4、5、7、及び8についても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


(2)出願の単一性について
方法の発明である補正後の発明1?8は、通信システムまたは情報システムにおいて、目標の位置を要求側エンティティ伝送する方法であるという点で産業上の利用分野が共通なものである。
さらに、補正後の発明1?8は、ネットワークトラフィックが輻輳するという課題を避けるために情報が過多にならないように、目標の位置が特定の条件(例えば、予め定められた経路上の地点から、閾値以上それた場合。)を満たすときに目標の位置を要求側エンティティへ伝送するという構成をいずれも有するから、解決しようとする課題も、これを解決するための主要部の構成も同一であるということができる。したがって補正後の発明1?8は単一性の要件を満たしている。
また、補正後の発明8を特定発明とみれば、物の発明である補正後の発明9は、特定発明の実施に直接使用する機械、器具、装置その他の物の発明といういうことができるから、補正後の発明9も単一性の要件を満たしている。
したがって、補正後の発明1?9は、特許法第37条第1,2及び4号の要件に適合し単一性を有する。

(3)まとめ
上記(1)及び(2)より、補正後の発明1?9は、引用発明1、2及び周知技術に基いて発明できたものではなく、また単一性の要件にも適合している。そして、他に拒絶の理由を発見しない。
したがって、補正後の発明1?9は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の要件を満たしている。


4.結語
上記「2.」及び「3.」の検討から、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項及び第5項の規定、及び、特許法第17条の2第3項に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり補正の要件に適合するから、本願の請求項1?9に係る発明は本件補正により補正された特許請求の範囲1?9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-29 
出願番号 特願2009-140106(P2009-140106)
審決分類 P 1 8・ 572- WY (H04M)
P 1 8・ 64- WY (H04M)
P 1 8・ 121- WY (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 新川 圭二
山本 章裕
発明の名称 無線通信システムにおいて動作する装置の地理的位置情報の制御  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 野河 信久  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 中村 誠  
代理人 砂川 克  
代理人 井上 正  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 河野 直樹  
代理人 竹内 将訓  
代理人 白根 俊郎  

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