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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1284094
審判番号 不服2013-11310  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-17 
確定日 2014-02-18 
事件の表示 特願2010-185730「内燃機関の可変バルブタイミング制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 1日出願公開、特開2012- 41901、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月23日の出願であって、平成25年1月29日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年3月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成25年3月1日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「 【請求項1】
内燃機関のクランク軸に対するカム軸の回転位相(以下「VCT位相」という)を変化させて吸気バルブ又は排気バルブのバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング装置と、実VCT位相を目標VCT位相に一致させるように前記可変バルブタイミング装置を制御するバルブタイミング制御手段とを備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置において、
運転領域に応じて設定される前記目標VCT位相が所定の基準位相に設定されたときに該基準位相を学習する基準位相学習手段と、
前記基準位相の学習要求の有無を判定する学習要求判定手段と、
前記学習要求判定手段により前記基準位相の学習要求有りと判定された場合に、前記目標VCT位相が前記基準位相に近い運転領域における目標VCT位相を前記基準位相に変更して、前記目標VCT位相が前記基準位相に設定される運転領域を拡大する学習領域拡大手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。」

第3 原査定の理由の概要
1.この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由1>
・備考
請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、特別な技術的特徴を有しているとはいえない。
よって、請求項1に係る発明と、請求項2-6に係る発明との間に、同一の又は対応する特別な技術的特徴を見いだすことができない。
ただし、請求項2、5-6に係る発明については、発明の単一性の要件を問わないこととする(「特許・実用新案 審査基準」第I部第2章4.2を参照)。
この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項1-2、5-6以外の請求項に係る発明については特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。
なお、この出願は出願日が平成19年4月1日以降であるから、特許法第17条の2第4項の「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の規定が適用される。補正に当たっては、発明の特別な技術的特徴を変更する補正とならないよう、注意されたい。

<理由3>
・請求項1-2
・引用文献1
・備考
請求項1-2に係る発明は、引用文献1に記載されている。(【0022】-【0077】、図6等)

引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1 特開平8-210158号公報

第4 当審の判断
1.引用文献1
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、例えば次の記載がある。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関のバルブタイミング制御装置に係り、特に、吸気バルブと排気バルブとが同時に開弁する期間(バルブオーバラップ期間)を制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、エンジンの運転状態に応じて、吸気バルブと排気バルブとが同時に開弁する期間(バルブオーバラップ期間)を変更させるための可変バルブタイミング機構が実用化されている。この可変バルブタイミング機構によれば、エンジンの高回転域においては、吸気バルブの閉タイミングを遅角させることにより、吸気慣性等を得て燃焼室内への吸入空気の充填効率を向上させることができる。一方、低回転域においては、吸気バルブの閉タイミングを進角させることにより、充填効率を向上させることができる。
【0003】このような可変バルブタイミング機構を備えるエンジンでは、バルブタイミングを変更しなければならない。このため、該機構の作動に伴って生じる目標とするバルブタイミングと実際のバルブタイミングとの偏差、具体的には、目標変位角と実際の変位角との間に生じる偏差が問題となる。すなわち、目標変位角は、エンジンの運転状態に基づいて算出されており、また、目標変位角に実際の変位角が一致することを前提として決定されるものである。従って、経年変化等により目標変位角と実際の変位角との間に偏差が生じ、目標変位角どおりに実際の変位角が得られない場合には、所望とするエンジン特性を実現することができなくなる。
【0004】そこで、目標変位角と実際の変位角との間に生じた偏差を学習し、実際の変位角から偏差を除去する可変バルブタイミング制御装置におけるカムシャフト位相フィードバック制御による自動校正法が特表平4-506851号公報に開示されている。…(中略)…
【0006】かかるバルブタイミング制御装置では、例えば、クランクシャフトに対するカムシャフトの目標変位角が0°CA(最遅角)である場合に、カム角センサ等によって検出されたクランクシャフトに対するカムシャフトの変位角を基準位置(可変バルブタイミング機構の基準タイミング)として学習させることが有効である。これは、カムシャフトは、最遅角の状態において機械的に係止されており、カムシャフトの変位角の変動が少なく安定しているからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来技術において、例えばバッテリを取り替えたような場合には、新たに最遅角学習を行うに際し、まず、所定の値を学習の初期値として設定する必要がある。しかしながら、この場合において、初期値として採用される値によっては、学習が完了するまでの間、学習精度が著しく悪化する場合があった。すなわち、初期値として、例えば許容される最大の値を採用した場合には、学習完了までの時間の短期化を図ることができるものの、バルブオーバーラップ量が大きくなりすきでしまうおそれがあった。その結果、特にエンジン低回転域においては、燃焼が不安定となり、ひいては失火、エンジンストール等の不具合を引き起こしてしまうという問題があった。
【0008】一方、初期値として、例えば許容される最小の値を採用した場合には、バルブオーバーラップ量が大きくなりすきでしまうおそれはほとんどないものの、学習完了までの時間が長期化してしまうおそれがあった。」(段落【0001】ないし【0008】)

イ.「【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、図1に示すように、内燃機関M1のクランクシャフトM2の回転に同期して所定のタイミングで駆動され、燃焼室M3に通じる吸気通路M4及び排気通路M5をそれぞれ開閉する吸気バルブM6及び排気バルブM7と、前記内燃機関M1の運転状態を検出するための運転状態検出手段M8と、その運転状態検出手段M8によって検出された内燃機関M1の運転状態に応じた目標バルブタイミングを決定するための目標バルブタイミング決定手段M9と、前記吸気バルブM6又は前記排気バルブM7のうち少なくともいずれか一方のバルブタイミングを変更させる可変バルブタイミング機構M10と、その可変バルブタイミング機構M10が配設された側におけるバルブの実バルブタイミングを検出するためのバルブタイミング検出手段M11と、前記目標バルブタイミング決定手段M9により決定された目標バルブタイミングが予め定められた所定バルブタイミングである場合に、前記バルブタイミング検出手段M10によって検出された実バルブタイミングを基準バルブタイミングとして学習する基準バルブタイミング学習手段M12と、その基準バルブタイミング学習手段M12によって学習された基準バルブタイミングを用いて目標バルブタイミングに対する実バルブタイミングの偏差を校正する実バルブタイミング校正手段M13と、その実バルブタイミング校正手段M13によって校正された実バルブタイミングを、前記目標バルブタイミング決定手段M9によって決定された目標バルブタイミングに収束させるため前記可変バルブタイミング機構M10を制御するバルブタイミング制御手段M14とを備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、前記基準バルブタイミング学習手段12によって基準バルブタイミングが学習される際の学習初期値を、バルブタイミングの公差上のほぼ上限値とする初期値設定手段M15と、前記基準バルブタイミング学習手段M12による基準バルブタイミングの学習が完了するまでは、前記バルブタイミング制御手段M14による前記可変バルブタイミング機構M10の制御を禁止する制御禁止手段M16とを設けたことをその要旨としている。」(段落【0011】)

ウ.「【0033】本実施例におけるガソリンエンジンシステムでは、吸気バルブ21の開閉タイミングを変更してバルブオーバラップ量の変更を実現するために、油圧により駆動される可変バルブタイミング機構50(以下「VVT」という。)が配設されている。このVVT50は、クランクシャフト14(吸気側タイミングプーリ27)の回転に対する吸気側カムシャフト23の回転の位相を変化させることにより、吸気バルブ21のバルブタイミングを連続的に変更させるための機構である。
【0034】かかるVVT50のシステム構成について、図3を参照して説明する。ここに、図3はVVT50が配設された吸気側カムシャフト23近傍の断面、及びVVT50の制御システム全体を示す説明図である。
【0035】VVT50の制御システムは、VVT50、VVT50に対して駆動力を印加するオイルコントロールバルブ80(以下「OCV」という。)、カム角度信号を検出するカム角センサ44、その他の各種センサ、及びカム角センサ44をはじめとする各種センサからの入力信号に基づいてOCV80を駆動制御する電子制御装置(以下「ECU」という)70を備えている。」(段落【0033】ないし【0035】)

エ.「【0054】続いて、本実施例に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置VCの制御系について図4に示す制御ブロック図を参照して説明する。本実施例に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置VCの制御系は、電子制御ユニット70(以下「ECU」という。)を核として構成されている。そして、ECU70によって目標バルブタイミング決定手段、基準バルブタイミング学習手段、実バルブタイミング校正手段、バルブタイミング制御手段、初期値設定手段及び制御禁止手段が構成されている。
【0055】ECU70は、吸気側カムシャフト23の基準位置(最遅角位置)を学習するVVT最遅角学習プログラム等の各種制御プログラム、各種条件に対応したバルブタイミングの変更を行うためのマップを格納したROM71を有している。また、ECU70はROM71に格納された制御プログラムに基づいて演算処理を実行するCPU72、CPU72での演算結果、各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するRAM73、電源供給停止時にRAM73に格納された各種データを保持するためのバックアップRAM74を有している。そして、CPU72、ROM71、RAM73及びバックアップRAM74は、双方向バス75を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース76及び出力インターフェース77と接続されている。
【0056】入力インターフェース76には、クランク角センサ40、エンジン回転数センサ41、気筒判別センサ42、水温センサ43、カム角センサ44、スロットルセンサ45、吸気圧力センサ46、酸素センサ47等が接続されている。そして、各センサから出力された信号がアナログ信号である場合には、図示しないA/Dコンバータによってデジタル信号に変換された後、双方向バス75に出力される。また、出力インターフェース77には、インジェクタ17、イグナイタ19、OCV62等の外部回路が接続されており、これら外部回路は、CPU72において実行された制御プログラムの演算結果に基づいて作動制御される。」(段落【0054】ないし【0056】)

オ.「【0057】次に、上記構成を備えた本実施例に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置VCにおける最遅角学習及び可変バルブタイミング(VVT)制御プログラムについて図5に示すフローチャートを参照して説明する。図5に示すフローチャートは、ECU70により実行される「最遅角学習・VVT制御ルーチン」を示すものであって、所定時間毎の定時割り込みで実行される。但し、本実施例において、最遅角学習を行うに際しての初期値、すなわち、バッテリを取り替えたような場合の当初の最遅角学習値GVTFRは、バルブタイミングの公差上の上限値とされる。
【0058】処理がこのルーチンに移行すると、ECU70はまず、ステップ101において、基準NEタイミング信号とカム角度信号とに基づいて、クランクシャフト14に対する吸気側カムシャフト23の実際の変位角である実変位角VTBを算出する。この実変位角VTBの算出に当たっては、先ず、カム角センサ44によって検出されたカム角度信号がECU70に入力されてから、クランク角センサ40によって検出された基準タイミング信号NEがECU70に入力されるまでの時間を、例えば、エンジン回転数NEによって計測する。そして、既知のクランク角度とエンジン回転数NEとの関係と、計測されたエンジン回転数NEとから、計測された時間を、クランク角度に対するカム角度の実際の変位角である、実変位角VTBに換算するのである。
【0059】続いて、ステップ102においては、別途のルーチンで算出された吸気側カムシャフト23の目標変位角が「0°CA」であるか否かを判断する。そして、目標変位角が「0°CA」でない場合には、最遅角学習をすることなくステップ103へ移行する。
【0060】ステップ103において、ECU70は、目標変位角に基づいてVVTフィードバック制御を実行する。すなわち、前回の最遅角学習値GVTFRを用いて実変位角VTBの校正、認識が行われる(校正された実変位角VTB=算出された実変位角VTB-最遅角学習値GVTFR)。そして、今回認識された実変位角VTBが目標変位角となるよう、ECU70はOCV80ひいてはVVT50をフィードバック制御する。そして、その後の処理を一旦終了する。
【0061】一方、ステップ102において、目標変位角が「0°CA」の場合には、最遅角学習を実行するべくステップ104へ移行する。ここで、目標変位角が「0°CA」(所定バルブタイミング)である場合に吸気側カムシャフト23の最遅角学習をすることとしたのは、目標変位角「0°CA」にしたがって吸気側カムシャフト23が変位した後には、吸気側カムシャフト23が極めて安定した状態となるからである。すなわち、最遅角位置等の最変位位置において、吸気側カムシャフト23を回転させるリングギヤ59は、ハウジング56と当接した状態にあり、他の変位位置と比較して最遅角位置等を確定し易いからである。
【0062】さて、ステップ104においては、今回算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した値が予め定められた値(本実施例では例えば「-0.049°CA」)よりも低い値であるか否かを判断する。そして、今回算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した値が「-0.049°CA」よりも低い場合には、ステップ105へ移行する。ステップ105においては、前回までの最遅角学習値GVTFRに、所定のなまし値(VTB+GVTFR)/8を加算した値を新たな最遅角学習値GVTFRとして設定する。次に、ECU70は、ステップ106において、今回算出された実変位角VTBから新たな最遅角学習値GVTFRを減算した絶対値が、所定値(本実施例では例えば「0.049°CA」)よりも小さいか否かを判断する。そして、算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した絶対値が、「0.049°CA」よりも小さい場合には、最遅角学習が完了したものと判断してステップ103へ移行し、上述したVVTフィードバック制御を実行する。すなわち、今回の最遅角学習値GVTFRを用いて実変位角VTBの校正、認識を行い、今回認識された実変位角VTBが目標変位角となるよう、OCV80、VVT50をフィードバック制御する。そして、その後の処理を一旦終了する。
【0063】これに対し、ステップ106において、算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した絶対値が、「0.049°CA」よりも小さくない場合には、未だ最遅角学習が完了していないものと判断して、VVT制御を実行することなく、その後の処理を一旦終了する。
【0064】また、前記ステップ104において、今回算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した値が「-0.049°CA」よりも低くない場合には、ステップ107へ移行する。ステップ107においては、今回算出された実変位角VTBから新たな最遅角学習値GVTFRを減算した値が、所定値(本実施例では例えば「+0.049°CA」)以上か否かを判断する。そして、算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した値が、「0.049°CA」以上の場合には、ステップ108へ移行する。
【0065】ステップ108においては、前回までの最遅角学習値GVTFRに、所定値「0.024°CA」を加算した値を新たな最遅角学習値GVTFRとして設定する。そして、ECU70は、ステップ106以降の処理を実行する。また、ステップ107において、算出された実変位角VTBから最遅角学習値GVTFRを減算した値が、「0.049°CA」未満の場合には、特に最遅角学習値GVTFRについての学習更新を行う必要がないものと判断してステップ106へジャンプし、それ以降の処理を実行する。このように、この「最遅角学習・VVT制御ルーチン」においては、そのときどきの基準NE信号、カム角度信号等の結果に応じて、最遅角学習、VVT制御が実行される。」(段落【0057】ないし【0065】)

カ.「【0082】(2)上記各実施例では、吸気バルブ21のバルブタイミングを可変制御することによりバルブオーバラップの期間を変更する構成を備えている。しかしながら、排気バルブ31のバルブタイミングを可変制御することにより、あるいは、吸気バルブ21、及び排気バルブ31のバルブタイミングを可変制御することによりバルブオーバラップの期間を変更する構成としてもよい。」(段落【0082】)

(2)引用文献1記載の発明
上記(1)及び図面の記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているといえる。

「エンジン10のクランクシャフト14に対するカムシャフト23、33の回転位相を変化させて吸気バルブ21又は排気バルブ31のバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構50と、実変位角VTBを目標変位角に一致させるように前記可変バルブタイミング機構50を制御する電子制御装置70とを備えたエンジン10の可変バルブタイミング制御装置VCにおいて、
エンジン10の運転状態に基づいて算出される前記目標変位角が所定の基準位置に設定されたときに該基準位置を学習する基準バルブタイミング学習手段M12とを備え、
所定時間毎の定時割り込みで前記基準位置の学習を行うエンジン10の可変バルブタイミング制御装置VC。」

2.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「エンジン10」は、その機能、構成及び技術的意味からみて、本願発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「クランクシャフト14」は「クランク軸」に、「カムシャフト23、33」は「カム軸」に、「吸気バルブ21」は「吸気バルブ」に、「排気バルブ31」は「排気バルブ」に、「可変バルブタイミング機構50」は「可変バルブタイミング装置」に、「実変位角VTB」は「実VCT位相」に、「目標変位角」は「目標VCT位相」に、「電子制御装置70」は「バルブタイミング制御手段」に、「可変バルブタイミング制御装置VC」は「可変バルブタイミング制御装置」に、「基準位置」は「基準位相」に、「基準バルブタイミング学習手段M12」は「基準位相学習手段」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「運転状態に基づいて算出される」は、本願発明における「運転領域に応じて設定される」に、「運転状態に基づく」という限りで相当する。

したがって、本願発明と引用文献1記載の発明とは、
「内燃機関のクランク軸に対するカム軸の回転位相を変化させて吸気バルブ又は排気バルブのバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング装置と、実VCT位相を目標VCT位相に一致させるように前記可変バルブタイミング装置を制御するバルブタイミング制御手段とを備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置において、
内燃機関の運転状態に基づく前記目標VCT位相が所定の基準位相に設定されたときに該基準位相を学習する基準位相学習手段とを備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置。」
である点で一致し、次の点において相違する。

<相違点>
(1)本願発明においては、「目標VCT位相」が「運転領域に応じて設定」され、「前記基準位相の学習要求の有無を判定する学習要求判定手段と、前記学習要求判定手段により前記基準位相の学習要求有りと判定された場合に、前記目標VCT位相が前記基準位相に近い運転領域における目標VCT位相を前記基準位相に変更して、前記目標VCT位相が前記基準位相に設定される運転領域を拡大する学習領域拡大手段と」を備えているのに対し、引用文献1記載の発明においては、「目標変位角」が「運転状態に基づいて算出」され、「所定時間毎の定時割り込みで前記基準位置の学習を行」うものであって、本願発明の「学習領域拡大手段」のような手段を備えていない点(以下、「相違点」という。)。

当該相違点について、原査定では、引用文献1に最遅角学習値の初期値をバルブタイミングの公差上の上限値(段落【0057】参照。)とする旨が記載されていることから、一致点と判断した。
しかし、本願発明の「学習領域拡大手段」は、請求項1に記載された事項により特定されるとおり、「前記学習要求判定手段により前記基準位相の学習要求有りと判定された場合に、前記目標VCT位相が前記基準位相に近い運転領域における目標VCT位相を前記基準位相に変更して、前記目標VCT位相が前記基準位相に設定される運転領域を拡大する」手段であって、学習頻度を確保するものであるのに対し、引用文献1に記載された最遅角学習値の初期値の設定に関する事項は、最遅角学習が完了するまでの時間を短縮するための技術であって、学習頻度を確保するためのものではない。そして、引用文献1には、目標変位角を基準位置に設定する運転状態の範囲を、学習要求が有る場合には、ない場合に比べて拡大することについての記載も示唆もないから、原査定で一致点とした当該相違点は、相違点である。

3.判断
上記相違点について検討する。
上記2.で指摘したとおり、引用文献1には、目標変位角を基準位置に設定する運転状態の範囲を、学習要求が有る場合には、ない場合に比べて拡大することについての記載も示唆もなく、また、そのようにすることが、技術常識ないし周知技術であるとはいえないから、引用文献1記載の発明に基づいて、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4.請求項2ないし5に係る発明について
平成25年3月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2ないし5に係る発明は、本願発明の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記3.と同様の理由により、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5.発明の単一性について
上記3.及び4.で指摘したとおり、本願発明は特別な技術的特徴を有しており、請求項2ないし5に係る発明も当該特徴を有しているから、これらの発明は同一の特別な技術的特徴を有しているといえる。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明及び請求項2ないし5に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、また、本願発明及び請求項2ないし5に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有しているから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-06 
出願番号 特願2010-185730(P2010-185730)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 信朗  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 久島 弘太郎
中川 隆司
発明の名称 内燃機関の可変バルブタイミング制御装置  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 井口 亮祉  
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