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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10H
管理番号 1284532
審判番号 不服2013-2981  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-15 
確定日 2014-02-05 
事件の表示 特願2009-545803「音楽のセグメントの情報に基づいてサーチする音楽捜索方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日国際公開、WO2008/089647、平成22年 5月20日国内公表、特表2010-517060〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年(2008年)1月8日を国際出願日とする出願であって、平成21年7月17日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成21年9月9日付けで同法第184条の4第1項に規定する翻訳文及び同法第184条の8第1項に規定する条約第34条に基づく補正書の翻訳文が提出された後、平成24年5月17日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年10月4日付けで拒絶査定がなされ、平成25年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成25年4月15日付けで書面による審尋がなされたが、これに対して回答書は提出されなかったものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1にかかる発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年2月15日付け手続補正により補正された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
音楽のセグメントの情報に基づいてサーチする音楽捜索方法であって、
a)ある確定された音楽やソングを分析して、何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を得て、デジタルに変換し、それを音楽やソングを捜索する依拠とし、
b)音楽やソングのデータベースにおける音楽やソングを、同じデジタル処理方法にて予めデジタル信号で表示された音楽拍子及び音符情報に処理し、捜索するための索引庫を構成し、
c)サーチしようとするある音楽やソングの既知の何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を依拠とし、音楽やソングのデータベースにおける音楽拍子及び音符情報の索引庫で捜索して対比させ、一致する程度によって判別し、一致する程度の高いものを挙げて、その上、ユーザの選択によって欲しい音楽やソングを捜索でき、
音楽やソングの何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を分析することは、その音楽やソングのオーディオ信号をサンプリングし、音調及び拍子特徴を含む一組の音符パルスを得て、デジタル化された後に一組のデジタルフィルタにてフィルタリングして、対応する音符の周波数を得て、パルス重畳器にて重畳され、その音楽やソングのセグメントの音楽拍子及び音符情報を得ることであり、
前記パルス重畳器は、全ての音符のパルスをタイムアクシスにおいて対応して重畳させ、
対比を行うとき、捜索命中率や捜索精度を向上させるように、そのセグメントの音楽拍子及び音符情報と、索引庫における音楽拍子及び音符情報データとの一致する程度を設定すること
を特徴とする音楽捜索方法。」

3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-14974号公報(以下、「引用例」という。)には、「検索装置及び検索システム」として図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。

ア.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の検索方法では、キーワードが不明であったり分類が少なかったりして、利用者所望の楽曲への絞り込みができないという不具合や、所望の楽曲を検索することができないという不具合を生じていた。
【0004】例えば、CDや音楽等のパッケージメディアの購入動機として、テレビやラジオ、街頭で耳にしたうろ覚えの楽曲を購入したい場合、又はCDのジャケットの絵柄やアーティストの容貌は記憶しているが曲名やアーティスト名がわからない楽曲のソフトを購入したいと要求が多い。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、利用者が所望の楽曲又は作品に容易にたどり着くことが可能な検索装置及び検索システムを提供することを目的としている。」

イ.「【0009】図1は、検索システムの構成例を示す図である。
【0010】同図によれば、楽曲の検索システムは、複数の楽曲に関する情報を各楽曲に関連付けて記憶するとともに利用者が入力した情報を無線の通信手段12を介して受信し、該受信した情報に基づいて楽曲を選び出す選出手段を備えたサーバ10と、通信手段22を介してサーバ10と通信することが可能であるとともに表示手段23及び入力手段24等のインターフェースを介して利用者と情報の伝達が可能な携帯電話機等で構成された携帯端末20と、通信手段32を介してサーバ10と情報の通信が可能であるとともに商品の販売を行う通版システム30と、通信手段42を介してサーバ10と利用料金や商品の代金に関する情報を送受信することが可能な金融システム40と、各通信手段どうしの通信の中継を行う公衆回線網又は、インターネット等で利用する通信網(通信ネットワーク)の通信基地局50とから構成されている。
【0011】図2は、サーバ10と携帯端末20との情報処理部のブロック図を示す図である。
【0012】同図によればサーバ10には、楽曲その他の各種情報を記憶する記憶手段18(データベース)と、通信手段12及び記憶手段18の制御を行うとともに選出処理等の各種情報処理を行う情報処理手段19(検索手段)とから構成されている。
【0013】また、携帯端末20は、MIDIデータや音声データを他の通信機器と送受信する音声インターフェース21と、音声を発する発音手段25と、音声を集音する集音手段26と、集音した音声を集音デジタルデータに変換するとともに発音するデジタルデータを発音手段25が発する情報に変換する音声変換手段27とから構成されている。」

ウ.「【0016】利用者が、所望の楽曲のメロディーをうろ覚えながら記憶している場合には、「音声入力による楽曲検索」のモードに設定して、利用者はその楽曲のメロディーを歌う。利用者が発生した音声は、集音手段26から集音されて音声変換手段27で集音デジタルデータに変換され、情報処理手段29に入力される。情報処理手段29は集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換する。このようにして変換して生成したメロディーデータは通信手段22から出力され、通信基地局50を介してサーバ10に送信される。また、利用者が歌ってメロディーを入力する代わりに、通信インターフェース21を介して他の機器から音程又は拍子の少なくとも一方を含むメロディー情報(録音物及び利用者が電子楽器のキーボードにより入力生成したMIDI形式のメロディー情報、パソコンの画面上でマウス等のポインティングデバイスを用いて入力生成したMIDI形式あるいは音声のメロディー情報等)を受信して入力するようにしてもよい。
【0017】サーバ10の通信手段12は受信したデータを情報処理手段19に伝達する。記憶手段18には、各楽曲のメロディーデータ(少なくとも楽曲の音程及び拍子の一方を含む情報)が予め記憶されている。情報処理手段19は、受信したメロディーデータに曖昧さを付け加えて選出の範囲を広げたデータと、記憶手段18に記憶されている各楽曲のメロディーデータとの比較を開始する(音程キーや音価の微妙な違いは吸収するアルゴリズムを用いた手法やパターンマッチングの手法等を用いてもよい)。ある許容範囲内で一致する類似した楽曲が選出された場合には、その楽曲の曲名等の情報を利用者に関する情報とともに記憶手段18に記憶し、次の候補の楽曲との比較を開始する。以降順次比較処理を続行して一通りの検索を終了する。情報処理手段19は記憶手段18に記憶された該選出した楽曲の曲名等の情報を通信手段12から携帯端末20に送信する指令を出力する。」

エ.「【0019】なお、上記の説明では、携帯端末20の情報処理手段29が利用者の歌の集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換する実施例で説明したが、本発明はこの方法に限定されるものではなく、情報処理手段29は集音した音声情報(上記の例では集音デジタルデータ)をサーバ10に直接送信し、サーバ10の情報処理手段19が受信した音声情報をメロディーデータに変換するようにしても本発明の目的は達成される。」

オ.「【0021】上記のようにして利用者が入力した曖昧な楽曲に関する情報から、類似する1乃至複数の楽曲の候補を選出して表示するので、利用者は表示されている楽曲の候補の中からこれぞと思われる所望の楽曲を選択することが可能となる。利用者が入力手段24を操作して楽曲を選択すると、選択した楽曲の演奏が流れる。演奏されている楽曲が利用者所望の楽曲でない場合には他の候補を選択する。演奏されている楽曲が利用者所望の楽曲である場合には、利用者は購入する指示を入力手段24(指示手段)を用いて指示する。利用者が指示した購入情報は、リンク手段を備えたプログラムによって通信手段22と通信基地局50とを介してサーバ10又は通版システム30に送信され、CD等に代表される物品の配送又は通信を介しての楽曲ソフトの配信処理が実行される。」

すなわち、引用例(下線部)には、

上記ア.から、「利用者が所望の楽曲又は作品に容易にたどり着くことが可能な検索装置及び検索システム」であること(段落0003)、
上記イ.から、「楽曲の検索システムは、複数の楽曲に関する情報を各楽曲に関連付けて記憶するとともに利用者が入力した情報に基づいて楽曲を選び出す選出手段を備えたサーバ10」であり(段落0010)、
「サーバ10には、楽曲その他の各種情報を記憶する記憶手段18(データベース)と、通信手段12及び記憶手段18の制御を行うとともに選出処理等の各種情報処理を行う情報処理手段19(検索手段)とから構成され」ており(段落0012)、
「携帯端末20は、・・・音声を集音する集音手段26と、集音した音声を集音デジタルデータに変換するとともに発音するデジタルデータを発音手段25が発する情報に変換する音声変換手段27とから構成され」ていること(段落0013)、
上記ウ.から、「利用者が、所望の楽曲のメロディーをうろ覚えながら記憶している場合には、「音声入力による楽曲検索」のモードに設定して、利用者はその楽曲のメロディーを歌」い、かかる「利用者が発生した音声は、集音手段26から集音されて音声変換手段27で集音デジタルデータに変換され、情報処理手段29に入力され」、「情報処理手段29は集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換する」ものであり(段落0016)、
「サーバ10の通信手段12は受信したデータを情報処理手段19に伝達する」ものであって、「記憶手段18には、各楽曲のメロディーデータ(少なくとも楽曲の音程及び拍子の一方を含む情報)が予め記憶され」ており、
「情報処理手段19は、受信したメロディーデータに曖昧さを付け加えて選出の範囲を広げたデータと、記憶手段18に記憶されている各楽曲のメロディーデータとの比較を開始する」とともに「ある許容範囲内で一致する類似した楽曲が選出された場合には、その楽曲の曲名等の情報を利用者に関する情報とともに記憶手段18に記憶し、次の候補の楽曲との比較を開始」し、
「以降順次比較処理を続行して一通りの検索を終了する」こととされ(段落0017)、
上記オ.から、「利用者が入力した曖昧な楽曲に関する情報から、類似する1乃至複数の楽曲の候補を選出して表示する」とともに「楽曲の候補の中からこれぞと思われる所望の楽曲を選択することが可能」である(段落0021)、
「検索装置及び検索システム」

が記載されているから、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 利用者が所望する楽曲を音声で入力し、
音声で入力された楽曲を集音デジタルデータに変換し、
集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換し、
複数の楽曲に関する情報を各楽曲に関連付けて記憶するとともに利用者が入力した情報に基づいて楽曲を選び出す手段を備えるとともに、楽曲その他の各種情報を記憶する記憶手段18(データベース)を含んでなるサーバ10を備え、
前記変換したメロディーデータをサーバ10に送信し、
サーバ10の通信手段12は受信したデータを情報処理手段19に伝達し、
記憶手段18には、各楽曲のメロディーデータ(少なくとも楽曲の音程及び拍子の一方を含む情報)が予め記憶され、
情報処理手段19は、受信したメロディーデータに曖昧さを付け加えて選出の範囲を広げたデータと、記憶手段18に記憶されている各楽曲のメロディーデータとを比較し、
ある許容範囲内で一致する類似した楽曲が選出された場合には、その楽曲の曲名等の情報を利用者に関する情報とともに記憶手段18に記憶し、次の候補の楽曲と比較し、以降順次比較処理を続行して一通りの検索を終了するようにした、
利用者が所望の音楽に容易にたどり着くことが可能な検索装置及び検索システム。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(4-1)
引用発明には、利用者が所望する楽曲を検索する装置ないしシステムが記載されているところ、かかる検索対象となる楽曲は、その検索を実行する時点では「うろ覚え」(段落0004,0016)の楽曲(メロディー)であって、例えば歌い出しやサビのメロディーであると考えられるから、これは当該楽曲の一部すなわち「音楽のセグメント」であるといえる。
また、引用例の「利用者が発生した音声は、集音手段26から集音されて音声変換手段27で集音デジタルデータに変換され、情報処理手段29に入力される。情報処理手段29は集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換する。このようにして変換して生成したメロディーデータは通信手段22から出力され、通信基地局50を介してサーバ10に送信される。」(段落0016)や「受信したメロディーデータに曖昧さを付け加えて・・・中略・・・ある許容範囲内で一致する類似した楽曲が選出され・・・」(段落0017)などの記載から、前記「音楽のセグメント」に関する所定の「情報」に基づいて検索(サーチ、捜索)を実行するものと認められるから、引用発明は、「音楽のセグメントの情報に基づいてサーチする音楽捜索方法」であるといえる。
なお、引用発明における検索対象は、利用者が音声で入力した楽曲すなわちアナログ信号を、音声変換手段27によりデジタル信号に変換するものであるが、アナログ-デジタル信号変換では所定の時間幅(周波数)でサンプリングを行うことが技術常識であるから、前記アナログ信号であるオーディオ信号は、デジタル処理されるにあたってサンプリングされているものと認める。
(4-2)
引用発明の「楽曲」「拍子」は、本願発明の「音楽」「拍子」に相当する。また、本願発明の「音符情報」について、本願明細書の段落0012?0015及び表1,2の記載によれば、「対応する音符の周波数を得る」ための情報であって、当該音符の周波数に関する情報すなわち音の高低ないし音程を含むものといえるから、引用発明の「音程(=ピッチ)」は、本願発明の「音符情報」に相当する。
また、引用発明は、上記のように楽曲の一部(楽曲内での位置について、特段の限定はない)を音声で入力し、これを集音デジタルデータに変換し、その中から音程や拍子を抽出してメロディーデータに変換し、もって楽曲検索の対象(探したい楽曲)とすることから、引用発明の「利用者が所望する楽曲を音声で入力し、音声で入力された楽曲を集音デジタルデータに変換し、集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換し、」及び「情報処理手段19は、受信したメロディーデータに曖昧さを付け加えて選出の範囲を広げたデータと、記憶手段18に記憶されている各楽曲のメロディーデータとを比較し」は、「ある確定された音楽を分析して、何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を得て、デジタルに変換し、それを音楽を捜索する依拠とし」ているといえる。
(4-3)
引用発明の記憶手段18は、各楽曲のメロディーデータ(少なくとも楽曲の音程及び拍子の一方を含む情報)が予め記憶されたデータベースであって、前記音声で入力された楽曲を探すものであるから、検索(比較)対象となる情報は、かかる入力された楽曲が固有に備える情報に関連する情報によることが一般的であり、かかる情報の形式も互いに同じないし同等の形式によることが検索作業の効率の点から望ましいことは技術常識であるから、当該記憶手段18が記憶する「楽曲その他の各種情報」には前記デジタル変換された音楽拍子及び音符情報と同じデジタル処理方法で処理された情報ないしこれらと同等の情報を有しているものと解するのが相当である。
また、引用発明の情報処理手段19は、サーバ10で受信したデータと、記憶手段18に記憶されている各楽曲のメロディーデータとを比較するものであるから、検索を実行するための構成であり、かかる検索は楽曲の一部の情報すなわち所定のインデックス(索引と同義)に基づいて行われることから、かかるインデックス(索引)が格納された索引庫たる構成に相当するといえる。
これらのほか、本願出願時の周知慣用技術等も総合して勘案すると、引用発明の「複数の楽曲に関する情報を各楽曲に関連付けて記憶するとともに利用者が入力した情報に基づいて楽曲を選び出す手段を備えるとともに、楽曲その他の各種情報を記憶する記憶手段18(データベース)を含んでなるサーバ10を備え、前記変換したメロディーデータをサーバ10に送信し、サーバ10の通信手段12は受信したデータを情報処理手段19に伝達し、記憶手段18には、各楽曲のメロディーデータ(少なくとも楽曲の音程及び拍子の一方を含む情報)が予め記憶され、情報処理手段19は、受信したメロディーデータに曖昧さを付け加えて選出の範囲を広げたデータと、記憶手段18に記憶されている各楽曲のメロディーデータとを比較し、」は、「音楽のデータベースにおける音楽を、同じデジタル処理方法にて予めデジタル信号で表示された音楽拍子及び音符情報に処理し、捜索するための索引庫を構成し、サーチしようとするある音楽の既知の何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を依拠とし、音楽のデータベースにおける音楽拍子及び音符情報の索引庫で捜索して対比させ、ユーザの選択によって欲しい音楽を捜索でき」ることを記載しているといえる。
(4-4)
その他、引用発明において「集音デジタルデータの中から音声のピッチ(音程)や拍子を抽出してメロディーデータに変換」する点は、「音楽の音楽拍子及び音符情報を分析」して「その音楽の音楽拍子及び音符情報を得る」ことといえ、また、一般に、検索(例;文書やデータの中から、必要な事項をさがし出すこと(広辞苑第六版)。蓄積された情報の中から必要なものを引き出すこと(日経パソコン用語事典2009))の実行(検索作業)に際しては、検索の命中率や精度(適合率)を向上するという周知の課題が存在しているから、引用発明の検索(対比)においても当然に「捜索命中率や捜索精度を向上させるように」しているものと認める。

よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

<一致点>
「 音楽のセグメントの情報に基づいてサーチする音楽捜索方法であって、
ある確定された音楽を分析して、何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を得て、デジタルに変換し、それを音楽を捜索する依拠とし、
音楽のデータベースにおける音楽を、同じデジタル処理方法にて予めデジタル信号で表示された音楽拍子及び音符情報に処理し、捜索するための索引庫を構成し、
サーチしようとするある音楽の既知の何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を依拠とし、音楽のデータベースにおける音楽拍子及び音符情報の索引庫で捜索して対比させ、一致する程度によって判別し、一致する程度の高いものを挙げて、その上、ユーザの選択によって欲しい音楽を捜索でき、
音楽の何れかのセグメントの音楽拍子及び音符情報を分析することは、音楽のオーディオ信号をサンプリングして、その音楽のセグメントの音楽拍子及び音符情報を得ることであり、
対比を行うとき、捜索命中率や捜索精度を向上させるようにする音楽捜索方法。」

<相違点1>
本願発明の音楽の音楽拍子及び音符情報を分析してこれらを得る工程は、「音調及び拍子特徴を含む一組の音符パルスを得て、デジタル化された後に一組のデジタルフィルタにてフィルタリングして、対応する音符の周波数を得て、パルス重畳器にて重畳され」る工程を含むものであるところ、引用発明は、かかる工程を備えない点。

<相違点2>
本願発明は、「全ての音符のパルスをタイムアクシスにおいて対応して重畳させ」る「パルス重畳器」を備えるところ、引用発明は、かかる構成を備えない点。

<相違点3>
本願発明は、「索引庫における音楽拍子及び音符情報データとの一致する程度を設定する」工程を備えるのに対し、引用発明は、かかる工程を備えない点。

よって、上記相違点について検討する。なお、相違点2は、相違点1が含む構成にかかるものであるから、これらをまとめて判断する。

<相違点1、2について>
各音階音の周波数成分のみを通過させるように構成したバンドパスフィルタの組を用いて対応する周波数の音符情報を得ることは、原査定の拒絶理由で提示した引用文献2(特開2002-91433号公報)、引用文献3(特開平4-195196号公報)等に記載されているように周知技術である。そして、かかるバンドパスフィルタの出力からは、それぞれ対応する周波数の音符情報のみが得られるが、検索対象とする楽曲をメロディで対比するとした場合、当該楽曲のメロディを得るために前記各周波数の音符情報を時間軸において重畳する必要があることは明らかである。なお、楽曲をメロディで対比することは、原査定の拒絶理由で提示した特開2001-56817号公報(以下、引用文献4とする)にも記載された周知技術であって、かかる構成を採用するか否かは設計的事項にすぎない。さらに、引用文献3はMIDIコードを生成すること(周知技術)が記載されているが、ここでMIDIの「ノートオン情報」は発音タイミングを示すものであるから、本願補正発明の「パルス」に対応するものであって、かかるパルスを時間軸(タイムアクシス)において重畳するMIDI装置は本願発明の「パルス重畳器」であるといえる。
以上のことからすれば、本願発明の当該工程は、当業者であれば引用文献1ないし4の記載に基づいて容易に想到し得たものであり、その効果も格別顕著なものがあるとは認められない。

<相違点3について>
楽曲を検索する際に、検索キーの一致率が所定の値以上のものを検索候補とすることは、引用文献4に記載されている。ところで、検索対象となる情報と被検索対象に含まれるある情報とが「一致したかどうか」を判定する際には所定の基準を要することは当然であり、かかる検索対象となる情報が更に複数の情報(属性)によって構成される場合は、それらないしそれらの一部について所定の基準を適用して個々に「一致」を検討し、その結果を集計することをもって全体としての「一致する程度」を判定しようとすることは検索技術の分野では普通に行われていることである。そして、「一致する程度」によって判別する以上、判別の基準となる適切な「一致する程度」を決定すること、すなわち「設定」することは当然である。よって、かかる楽曲の検索において、その楽曲の属性である「音楽拍子及び音符情報データ」の「一致する程度」を「設定」するようになすことは、当業者が容易に想起した程度のことである。なお、かかる設定の詳細については、本願明細書でも特に言及されておらず、その効果も格別顕著なものがあるとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-04 
結審通知日 2013-09-10 
審決日 2013-09-24 
出願番号 特願2009-545803(P2009-545803)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小宮 慎司  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 石丸 昌平
関谷 隆一
発明の名称 音楽のセグメントの情報に基づいてサーチする音楽捜索方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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