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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1284735
審判番号 不服2013-10609  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-06 
確定日 2014-03-04 
事件の表示 特願2009-502845「無線ネットワークにおける改良されたマルチキャストストリーミングのための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日国際公開、WO2007/123613、平成21年 9月10日国内公表、特表2009-532939、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)3月19日(パリ条約による優先権主張、2006年(平成18年)3月31日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年5月2日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月3日付けで手続補正がなされたが、平成25年2月1日付けで拒絶査定がなされたものであり、これを不服とし、平成25年6月6日に本件審判請求がなされた。

第2.拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

1.この出願は、請求項1に記載された技術事項が特別な技術的特徴であるとはいえないから、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。なお、請求項3-10に係る発明については、特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。

2.この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:国際公開第2004/046968号

第3.本願発明
本願の請求項1-10に係る発明は、平成24年8月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された以下のとおりものである。

「【請求項1】
ブロードキャストサービングノード(BSN)から、マルチメディアコンテンツを提供するために装置によって行われる方法であって、
閾値数の無線端末と関連付けられ、かつマルチメディアコンテンツを搬送する元のメディアストリームの第1のデータレートが無線端末のチャネル状態に適していないことを示すチャネル状態情報をBSNにおいて受信するステップと、
無線端末のチャネル状態に適したメディアストリームデータレートを識別するステップと、
マルチメディアコンテンツを搬送し、識別されたメディアストリームデータレートを有するコンパニオンメディアストリームを形成するためにBSNにおいて元のメディアストリームをトランスコードするステップであって、関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子が、対応するメディアグループ識別子内に組み込まれ、第1のデータレートが、コンパニオンメディアストリームのメディアストリームデータレートよりも大きい、ステップと、
無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップであって、元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップが、BSNから開始される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
元のメディアストリームをトランスコードするステップが、
元のメディアストリームのデータレートを決定するステップと、
少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームの各データレートを決定するステップと、
各データレートにより、少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームを形成するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
元のメディアストリームをトランスコードするステップが、
1つまたは複数の無線端末からチャネル状態情報を受信するステップと、
少なくとも1つのチャネル状態パラメータを用いて、少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームを形成するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
元のメディアストリームをトランスコードするステップが、
少なくとも1つのチャネル状態パラメータを用いて、少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームの各データレートを決定するステップと、
決定されたデータレートにより、少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームを形成するステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
チャネル状態情報が、
無線端末が正しいメディアグループに属している場合、一定数の周期的な時間間隔、または、
無線端末が正しくないメディアグループに属している場合、複数の指数的に増加する時間間隔のうちの、少なくとも一方により受信される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
メディアグループの1つを選択するように構成された無線端末の1つから要求を受信するステップであって、メディアグループの選択された1つが、無線端末のチャネル状態によりサポート可能な最大のデータレートを有するメディアストリームの1つと関連付けられるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
関連するチャネル状態を有する無線端末でマルチメディアコンテンツを受信する方法であって、
無線端末により選択することが利用可能な複数のメディアストリームの指標を受信するステップであり、メディアストリームが、元のメディアストリーム、および元のメディアストリームをトランスコードすることにより形成される少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームを含み、各メディアストリームがマルチメディアコンテンツを搬送し、異なるデータレートを含むステップと、
チャネル状態およびメディアストリームの各データレートを用いて、メディアストリームの1つを選択するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
複数のメディアストリームの1つを選択するステップが、
各複数のアドバタイズされたメディアストリームの各データレートを識別するために、複数のアドバタイズメントのそれぞれを処理するステップと、
無線端末のチャネル状態を測定するステップと、
無線端末のチャネル状態によりサポート可能な最大のデータレートを有するメディアストリームの1つを選択するステップと
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
無線端末が、メディアストリームの選択された1つをそれを介して受信するデータチャネルと関連付けられた無線端末のチャネル状態を測定するステップと、
ネットワークエレメントに向けてチャネル状態を送信するステップとをさらに含み、
チャネル状態が、少なくとも1つのコンパニオンメディアストリームを形成するように元のメディアストリームのトランスコーディングで使用されるように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
マルチメディアコンテンツを提供するためのシステムであって、
マルチメディアコンテンツを搬送し、識別されたメディアストリームデータレートを有するコンパニオンメディアストリームを形成するように、BSNにおいて元のメディアストリームをトランスコードするためのトランスコーダであって関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子が、対応するメディアグループ識別子内に組み込まれ、第1のデータレートが、コンパニオンメディアストリームのメディアストリームデータレートよりも大きい、トランスコーダと、BSNが、無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズし、
利用可能なメディアストリームのそれぞれの指標を受信するためにトランスコーダと通信する複数の無線端末であって、各無線端末がチャネル状態を含み、各無線端末がメディアストリームのデータレートおよびチャネル状態により、利用可能なメディアストリームの1つを選択するように構成される、無線端末とを備える、システム。」

第4.刊行物1
1.刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された上記刊行物1には、以下の技術事項が記載されている。

(1)「TECHNICAL FIELD
Embodiments of the present invention relate to content delivery networks. More specifically, embodiments of the present invention relate to caching proxies.」(第1頁第4行-第7行)
(訳:
技術分野
本発明の実施形態はコンテンツデリバリネットワークに関する。より具体的には、本発明の実施形態はキャッシングプロキシに関する。)

(2)「BACKGROUND ART
Before the widespread use of caching in the Internet, an item of content (a content object) requested by a client was likely provided by the original content server (the source of the content object). The content source and the client were typically located at a substantial distance from each other, which often led to slow response times, low bandwidths, high loss rates, and lack of scalability. Response times, bandwidths, and loss rates could also be significantly affected when multiple clients attempted to request an object from the content source at the same time.」(第1頁第9行-第17行)
(訳:
背景技術
インターネットにおいてキャッシングが広く用いられる前には、クライアントによって要求されるコンテンツのアイテム(コンテンツオブジェクト)は大抵の場合に元のコンテンツサーバ(コンテンツオブジェクトのソース)によって提供されていた。コンテンツソースおよびクライアントは典型的には、互いからかなり離れて位置しており、その結果として多くの場合に、応答時間が遅くなり、帯域幅が狭くなり、ロスレートが高くなり、スケーラビリティを欠いていた。応答時間、帯域幅およびロスレートは、多数のクライアントが、コンテンツソースから1つのオブジェクトを同時に要求しようとするときにも、大きく影響を及ぼされる可能性があった。)

(3)「Different forms of caching, such as content delivery networks, have helped to overcome some of these problems. Generally, content delivery networks place servers, which may be more specifically referred to as caching proxies, nearer to clients. Content objects can be replicated and cached at each of the caching proxies. Caching of content on caching proxies closer to clients has resulted in a number of improvements, including reduced response times, higher bandwidths, lower loss rates, improved scalability, and reduced requirements for network (backbone) resources.」(第1頁第19行-第26行)
(訳:
コンテンツデリバリネットワークのような種々の形態のキャッシングは、これらの問題のうちのいくつかを克服するのを助けてきた。一般的に、コンテンツデリバリネットワークは、クライアントの近くにサーバ、さらに具体的にはキャッシングプロキシとも呼ばれるサーバを配置する。コンテンツオブジェクトは各キャッシングプロキシにおいて複製され、キャッシュされることができる。クライアントの近くにあるキャッシングプロキシ上にコンテンツをキャッシュすることは、応答時間が短くなる、帯域幅が広くなる、ロスレートが低くなる、スケーラビリティが改善される、ネットワーク(バックボーン)リソースのための要件が緩和されることを含む、数多くの改善に繋がってきた。)

(4)「Content delivery networks work well when the size of the content is relatively small in comparison to the size of the caches. For example, a Web page is generally much less than a megabyte in size. As such, this kind of content can be practically replicated at each caching proxy. Multiple instances of Web content can be stored on each caching proxy without the need for substantial memory resources, or without consuming a significant portion of available memory.」(第1頁第28行-第34行)
(訳:
コンテンツデリバリネットワークは、コンテンツのサイズがキャッシュのサイズと比べて相対的に小さいときに良好に機能する。たとえば、ウエブページは一般的に、そのサイズが1メガバイトよりもはるかに小さい。したがって、各キャッシングプロキシにおいて、この種のコンテンツを実際に複製することができる。ウエブコンテンツの多数のインスタンスを、大量のメモリ資源を必要とすることなく、あるいは利用可能なメモリのかなりの部分を消費することなく、各キャッシングプロキシ上に記憶することができる。)

(5)「However, caching can be problematic when the content includes multimedia data, which can be large in size as well as long in duration. Even a large cache can hold only a few items of multimedia content before getting filled. For example, a video of DVD (digital video disk) quality may be up to 4.7 gigabytes (GB) in size and up to two hours long (based on Moving Picture Expert Group-2 compression). Consequently, a 50 GB cache can hold only about ten DVD-quality videos. Thus, replicating a large number of DVD- quality videos and storing copies of each video at caching proxies closer to clients is not a practical solution for multimedia data. Memories would need to be very large, or only a small number of videos could be stored. On the other hand, storing large items of multimedia content only at a central source or only at a limited number of caching proxies reintroduces the problems mentioned above.」(第1頁第36行-第2頁第9行)
(訳:
しかしながら、コンテンツが、サイズが大きく、かつ長時間を要する可能性があるマルチメディアデータを含むときに、キャッシングに問題が生じる可能性がある。キャッシュが大きい場合であっても、マルチメディアコンテンツの少数のアイテムを保持しただけで、一杯になってしまう可能性がある。たとえば、DVD(デジタルビデオディスク)品質の映像は最大で、サイズが4.7ギガバイト(GB)および長さが2時間(MPEG(Moving Picture Expert Group)-2圧縮に基づく)に達する場合がある。結果として、50GBキャッシュは、DVD品質の映像を約10個しか保持することができない。したがって、マルチメディアデータの場合、クライアントの近くにあるキャッシングプロキシにおいて多数のDVD品質の映像を複製し、各映像のコピーを記憶することは実用的な解決策ではない。非常に大きなメモリが必要とされるようになるか、あるいは少数の映像しか記憶することができないであろう。一方、中央のソースあるいは限られた数のキャッシングプロキシのみにマルチメディアコンテンツの多数のアイテムを記憶するだけでは、先に記載した問題が再び生じる。)

(6)「The problems described above are exacerbated when considering that not only is there a multiplicity of different content objects, but there are likely multiple versions of each object. Different versions may exist to accommodate the variety of different types of network connections utilized by end users. For example, each content object may be encoded at one bitrate for dial-up connections and at another bitrate for broadband connections. In addition, different versions may exist to accommodate the different capabilities provided by the different types of client devices currently in use (e.g., desktops, laptops, personal digital assistants, cell phones, etc.). Different classes of devices typically have different processing and display capabilities. For example, while a personal digital assistant can receive and display a streamed video, it does not have the processing and display capabilities of a desktop. Accordingly, a reduced bitrate/reduced resolution version of the video is produced for use on the personal digital assistant, while the desktop uses a different version at a higher bitrate and higher resolution. In general, different versions of each content object will typically exist in order to accommodate the different types of client devices and the different types of connections in use.」(第2頁第11行-第27行)
(訳:
上記の問題は、多数の異なるコンテンツオブジェクトがあるだけでなく、各オブジェクトの多数のバージョンがあることを考えるときに、さらに酷くなる。エンドユーザによって利用される多種多様なタイプのネットワーク接続に対応するために、種々のバージョンが存在する場合がある。たとえば、各コンテンツオブジェクトが、ダイヤルアップ接続用のあるビットレートと、ブロードバンド接続用の別のビットレートとで符号化される場合がある。さらに、現時点で利用されている種々のタイプのクライアント装置(たとえば、デスクトップ、ラップトップ、携帯情報端末、携帯電話など)によって提供される種々の能力に対応するために、種々のバージョンが存在する場合がある。装置の種類が異なると通常は処理および表示能力が異なる。たとえば、携帯情報端末はストリーミング型の映像を受信し、表示することはできるが、デスクトップの処理および表示能力は持たない。したがって、携帯情報端末用に、その映像のビットレートが低く/解像度が低いバージョンが作成され、一方、デスクトップは、ビットレートが高く、かつ解像度が高い異なるバージョンを利用する。一般的に、使用されている種々のタイプのクライアント装置および種々のタイプの接続に対応するために、典型的には各コンテンツオブジェクトの種々のバージョンが存在するであろう。)

(7)「Caching proxies treat requests for objects individually, even if the requests are made for different versions of the same object. As a consequence, each caching proxy is likely to be storing different versions of the same object. Different versions of the same object may also be present at the content source. Storage at caching proxies provides some advantages over storing at the content source, as described above. However, in either case, storage space is being used inefficiently.」(第2頁第29行-第35行)
(訳:
同じオブジェクトであっても、異なるバージョンが要求される場合には、キャッシングプロキシはオブジェクト要求を個別に処理する。それゆえ、各キャッシングプロキシは、同じオブジェクトの種々のバージョンを記憶している可能性が高い。またコンテンツソースにも、同じオブジェクトの種々のバージョンが存在する場合がある。先に説明されたように、キャッシングプロキシにおいて記憶することは、コンテンツソースにおいて記憶するよりも優れたいくつかの利点を提供する。しかしながら、いずれの場合でも、記憶空間が非効率的に利用されている。)

(8)「Accordingly, a more efficient way of delivering content objects to end- users is desirable. Embodiments of the present invention provide such an improvement.」(第2頁第37行-第39行)
(訳:
したがって、エンドユーザに対してコンテンツオブジェクトを配信する、より効率的な方法が望まれる。本発明の実施形態はそのような改善を提供する。)

(9)「DISCLOSURE OF THE INVENTION
Embodiments of the present invention pertain to methods and systems for delivering content. A first version of a content object is received at a caching proxy from a content source. The first version of the content object is transcoded at the caching proxy to create a second version. A decision is made whether to cache at the caching proxy at least one of the first and second versions. The decision is made according to a caching strategy and then implemented. 」(第3頁第1行-第3頁第8行)
(訳:
課題を解決するための手段
本発明の実施形態は、コンテンツを配信するための方法およびシステムに関する。キャッシングプロキシにおいて、コンテンツソースからコンテンツオブジェクトの第1のバージョンが受信される。コンテンツオブジェクトの第1のバージョンはキャッシングプロキシにおいてトランスコードされ、第2のバージョンが作成される。キャッシングプロキシにおいて第1のバージョンおよび第2のバージョンのうちの少なくとも一方をキャッシュするか否かが決定される。その決定は、キャッシング方法に従って行われ、その後、実施される。)

(10)「Figure 1 illustrates a network or system 100 for delivering content according to one embodiment of the present invention. It is appreciated that system 100 may include elements other than those shown. System 100 may also include more than one of the various elements shown. The functionality of each of these elements is discussed below; it is appreciated that these elements may implement functionality other than that discussed.」(第5頁第23行-第28行)
(訳:
図1は、本発明の一実施形態によるコンテンツを配信するためのネットワークあるいはシステム100を示す。システム100は図示されるもの以外の構成要素を含むことができることは理解されたい。またシステム100は、図示される種々の構成要素を2つ以上含むこともできる。これらの構成要素のそれぞれの機能は後に説明する。これらの構成要素は、説明される機能以外の機能を実施することができることは理解されたい。)

(11)「In the present embodiment, the various elements of system 100 are in communication with each other as illustrated. That is, in the present embodiment, content source 110 communicates with caching proxy 120, which in turn communicates with client device 130 via a communication channel 125. Generally speaking, caching proxy 120 is typically deployed at the edge of the network or system 100 to reduce traffic to and from content source 110, and to also reduce latency as perceived by client device 130. As will be seen, according to the various embodiments of the present invention, caching proxy 120 incorporates the functionality of a transcoder; thus, caching proxy 120 performs transcoding as well as caching.」(第5頁第30行-第39行)
(訳:
本実施形態では、図示されるように、システム100の種々の構成要素が互いに通信することができる。すなわち、本実施形態では、コンテンツソース110はキャッシングプロキシ120と通信し、キャッシングプロキシはさらに、通信チャネル125を介してクライアント装置130と通信する。一般的には、キャッシングプロキシ120は典型的には、ネットワークあるいはシステム100の端に配置され、コンテンツソース110に対するトラフィックおよびコンテンツソース110からのトラフィックを低減するとともに、クライアント装置130によって認識される待ち時間も低減する。後に明らかになるように、本発明の種々の実施形態によれば、キャッシングプロキシ120はトランスコーダの機能を組み込む。したがって、キャッシングプロキシ120はトランスコーディングおよびキャッシングを実行する。)

(12)「Client device 130 may be a computer system (such as a laptop, desktop or notebook), a hand-held device (such as a personal digital assistant), a cell phone, or another type of device that, in general, provides the capability for users to access and execute (e.g., display) items of content. As mentioned above, there may actually be many client devices with access to caching proxy 120. In a heterogeneous network, each of these client devices may have different attributes or profiles. These attributes include, but are not limited to, the display, power, communication and computational capabilities and characteristics of the various client devices.」(第6頁第1行-第10行)
(訳:
クライアント装置130には、コンピュータシステム(ラップトップ、デスクトップあるいはノートブックなど)、ハンドヘルド装置(携帯情報端末など)、携帯電話、あるいは一般的に、ユーザがコンテンツのアイテムにアクセスし、そのアイテムを実行(たとえば表示)できる能力を提供する、別のタイプの装置を用いることができる。先に述べたように、実際には、キャッシングプロキシ120にアクセスする数多くのクライアント装置が存在する場合がある。異種ネットワークでは、これらのクライアント装置はそれぞれ異なる属性およびプロファイルを有することができる。これらの属性は、限定はしないが、種々のクライアント装置の表示、電力、通信および計算能力および特性を含む。)

(13)「Communication may occur directly between elements, or indirectly through an intermediary device or node (not shown). Also, communication may be wired or wireless, or a combination of wired and wireless. In one embodiment, communication occurs over the World Wide Web (or Internet). There may actually be many communication channels downstream of caching proxy 120. In a heterogeneous network, each of these communication channels (exemplified by communication channel 1 5) may have different attributes. For example, one channel may be characterized as having a higher bandwidth (higher data transfer rate) than another channel.」(第6頁第12行-第20行)
(訳:
通信は構成要素間で直に行うことができるか、あるいは媒介装置あるいはノード(図示せず)を通して間接的に行うことができる。また、通信は有線または無線、あるいは有線および無線の組み合わせを用いることができる。一実施形態では、通信はワールド・ワイド・ウエブ(あるいはインターネット)上で行われる。実際には、キャッシングプロキシ120の下流に数多くの通信チャネルが存在する場合がある。異種ネットワークでは、これらの通信チャネル(通信チャネル125によって例示される)はそれぞれ種々の属性を有することができる。たとえば、1つのチャネルが、別のチャネルよりも帯域幅が広い(データ転送速度が高い)という特徴を有することができる。)

(14)「The sizes of the incoming buffer 220 and the outgoing buffer 250 can be small because transcoder 230 will process content in a streamlined fashion. Transcoding may be from a higher bitrate to a lower bitrate, from a higher resolution to a lower resolution, or a combination of both. Any of various transcoding schemes may be used by transcoder 230. In one embodiment, a compressed domain transcoding approach known in the art is used. In compressed domain transcoding, the incoming video (which is typically encoded) is only partially decoded (decompressed). Rate adapting is performed in the compressed domain while the motion information is reused. Compressed domain transcoding can considerably improve transcoding speed relative to other approaches in which the video is decoded, transcoded and then re-encoded.」(第7頁第38行-第8頁第10行)
(訳:
トランスコーダ230はストリーミングによってコンテンツを処理することになるので、入力バッファ220および出力バッファ250のサイズは小さくすることができる。高いビットレートから低いビットレートへのトランスコーディング、高い解像度から低い解像度へのトランスコーディング、あるいは両方の組み合わせを用いることができる。種々のトランスコーディング方式のうちの任意のものをトランスコーダ230によって用いることができる。一実施形態では、当該技術分野において知られている圧縮領域トランスコーディング方式が用いられる。圧縮領域トランスコーディングでは、入力映像(典型的には符号化されている)の一部だけが復号化(圧縮解除)される。動き情報を再利用しながら、圧縮領域においてレート適応化が実行される。圧縮領域トランスコーディングは、映像が復号化され、トランスコードされ、その後、再符号化される他の方式に対して、トランスコーディング速度を大幅に改善することができる。)

(15)「The speed of the transcoding process can be measured by the transcoding bitrate, defined as the number of bits the transcoder 230 generates with time (e.g., bits per second). With a transcoding bitrate greater than or equal to the minimum of either of the uplink or downlink bandwidths, transcoder 230 will not introduce a delay in the delivery of a content object from content source 110 to client device 130.」(第8頁第12行-第17行)
(訳:
トランスコーディングプロセスの速度は、トランスコーディングビットレートによって測定することができ、それは、時間とともにトランスコーダ230が生成するビット数(たとえば、ビット/秒)として定義される。トランスコーディングビットレートがアップリンクあるいはダウンリンク帯域幅のいずれかの最小帯域幅以上である場合、トランスコーダ230によって、コンテンツソース110からクライアント装置130へのコンテンツオブジェクトの配信に遅れは生じないであろう。)

(16)「To summarize to this point, according to the embodiments of the present invention, caching proxy 120 performs transcoding as well as caching, allowing content adaptation to be performed closer to the edges of the network (e.g., system 100 of Figure 1). Caching proxy 120 can transcode content objects into different versions (or variants) in order to satisfy end users in a heterogeneous network (that is, a network composed of client devices that have different attributes, and further composed of different types of communication channels). Depending on the type (e.g., speed) of the connection with a client device 130, as well as the attributes of the client device 130, caching proxy 120 can (if necessary) transcode a content object that is either received from content source 110 or from caching system 240, and deliver the appropriate version of the content object to the client device 130.」(第8頁第19行-第31行)
(訳:
ここまでを要約すると、本発明の実施形態によれば、キャッシングプロキシ120はトランスコーディングおよびキャッシングを実行し、コンテンツの適応化がネットワークの端の近くで実行されるようにする(たとえば、図1のシステム100)。キャッシングプロキシ120は、異種ネットワーク(すなわち、種々の属性を有するクライアント装置から構成され、さらに種々のタイプの通信チャネルから構成されるネットワーク)においてエンドユーザを満足させるために、コンテンツオブジェクトを異なるバージョン(あるいは異なる形態)にトランスコードすることができる。クライアント装置130との接続のタイプ(たとえば速度)、およびクライアント装置130の属性に応じて、キャッシングプロキシ120は、コンテンツソース110あるいはキャッシングシステム240のいずれかから受信されるコンテンツオブジェクトを(必要に応じて)トランスコードし、コンテンツオブジェクトの適当なバージョンをクライアント装置130に配信することができる。)

(17)「Client device 130 may either specify a certain version of a content object in a request (based on user input, for example), or agent software resident on client device 130 may inform caching proxy 120 of the capabilities of client device 130 (including the connection speed). In the former case, a user aware of the capabilities of client device 130 and the type of connection may select (e.g., from a menu) a particular version of the content object. In the latter case, caching proxy 120 may select a version corresponding to the type of connection and the capabilities of client device 130.」(第9頁第36行-第10頁第4行)
(訳:
クライアント装置130が、要求されているコンテンツオブジェクトのある特定のバージョンを指定することができるか(たとえば、ユーザ入力に基づく)、あるいはクライアント装置130上に常駐するエージェントソフトウエアが、クライアント装置130の能力(接続速度を含む)をキャッシングプロキシ120に通知することができる。前者の場合、クライアント装置130の能力および接続のタイプを知っているユーザが、コンテンツオブジェクトのある特定のバージョンを(たとえばメニューから)選択することができる。後者の場合、キャッシングプロキシ120が、クライアント装置130の接続のタイプおよび能力に対応するバージョンを選択することができる。)

(18)「Figure 3 is a flowchart 300 of a method for delivering content according to one embodiment of the present invention. Although specific steps are disclosed in flowchart 300, such steps are exemplary. That is, embodiments of the present invention are well suited to performing various other steps or variations of the steps recited in flowchart 300. It is appreciated that the steps in flowchart 300 may be performed in an order different than presented, and that not all of the steps in flowchart 300 may be performed. All of, or a portion of, the methods described by flowchart 300 may be implemented using computer-readable and computer-executable instructions which reside, for example, in computer-usable media of a computer system or like device. Generally, flowchart 300 is implemented by devices such as caching proxy 120 of Figures 1 and 2.」(第13頁第27行-第38行)
(訳:
図3は、本発明の一実施形態によるコンテンツを配信するための方法の流れ図300である。流れ図300の具体的なステップが開示されるが、そのようなステップは例示である。すなわち、本発明の実施形態は、種々の他のステップ、あるいは流れ図300に記載されるステップの変形を実行するためにも適している。流れ図300のステップは、提供されるのとは異なる順序で実行される場合があること、および流れ図300のステップは全て実行されるとは限らないことは理解されたい。流れ図300によって説明される方法の全て、あるいは一部を、たとえば、コンピュータシステムあるいは類似の装置のコンピュータ利用可能媒体内に常駐するコンピュータ読取り可能およびコンピュータ実行可能命令を用いて実施することができる。一般的には、流れ図300は、図1および図2のキャッシングプロキシ120のような装置によって実施される。)

(19)「In step 310 of Figure 3, in the present embodiment, a request for a content object is received at a caching proxy from a client device (e.g., caching proxy 120 and client device 130 of Figures 1 and 2). The caching proxy also receives, or otherwise has knowledge of, the attributes of the client device as well as the type of connection between the caching proxy and the client device. Accordingly, the caching proxy can select the version of the content object to send to the client device. Alternatively, the request from the client device may identify the version of the content object.」(第14頁第1行-第8行)
(訳:
本実施形態において図3のステップ310では、クライアント装置からのコンテンツオブジェクト要求がキャッシングプロキシにおいて受信される(たとえば、図1および図2のキャッシングプロキシ120およびクライアント装置130)。またキャッシングプロキシは、クライアント装置の属性、およびキャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続のタイプも受信するか、あるいは別の方法で知る。その結果として、キャッシングプロキシは、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択することができる。別法では、クライアント装置からの要求によって、コンテンツオブジェクトのバージョンが特定される場合もある。)

(20)「In step 320 of Figure 3, in the present embodiment, a determination can be made with regard to whether or not the object version identified in step 310 is cached in memory at the caching proxy (e.g., in caching system 240 of Figure 2). If the object version identified in step 310 is cached, it can be sent to the client device (step 360). If not, then flowchart 300 proceeds to step 330. Optionally, portions of the object version may be buffered (e.g., in outgoing buffer 250 of Figure 2) as it is sent to the client device by the caching proxy.」(第14頁第10行-第16行)
(訳:
本実施形態において図3のステップ320では、ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリ(たとえば、図2のキャッシングシステム240)にキャッシュされているか否かに関する判定を行うことができる。ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされている場合には、クライアント装置に送信することができる(ステップ360)。そうでない場合には、流れ図300はステップ330に進む。オプションでは、キャッシングプロキシによってクライアント装置に送信されるのに応じて、オブジェクトバージョンの一部をバッファリングすることができる(たとえば図2の出力バッファ250)。)
(21)「In step 330 of Figure 3, in the present embodiment, a determination can be made with regard to whether or not a transcodable version of the object version identified in step 310 is cached in memory at the caching proxy (e.g., in caching system 240 of Figure 2). If a transcodable version of the object version identified in step 310 is cached, it can be transcoded (step 350) and then sent to the client device (step 360). If not, then flowchart 300 proceeds to step 340.」(第14頁第18行-第24行)
(訳:
本実施形態において図3のステップ330では、ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンのトランスコード可能なバージョンがキャッシングプロキシのメモリ(たとえば、図2のキャッシングシステム240)にキャッシュされているか否かに関する判定を行うことができる。ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンのトランスコード可能なバージョンがキャッシュされている場合には、それをトランスコードし(ステップ350)、その後、クライアント装置に送信する(ステップ360)ことができる。そうでない場合には、流れ図300はステップ340に進む。)

(22)「In step 340 of Figure 3, in the present embodiment, either the object version requested in step 310, or a transcodable version of that object version, is received from a content source (e.g., content source 110 of Figure 1). A decision with regard to which version should be provided by the content source can be made by the caching proxy based on access behavior, for example. Optionally, portions of the content object received from the content source can be buffered (e.g., in incoming buffer 220 of Figure 2) as it is received by the caching proxy.」(第14頁第26行-第33行)
(訳:
本実施形態において図3のステップ340では、ステップ310において要求されたオブジェクトバージョン、そのオブジェクトバージョンのトランスコード可能なバージョンのいずれかがコンテンツソース(たとえば図1のコンテンツソース110)から受信される。コンテンツソースによってどのバージョンが提供されるべきかに関する決定は、たとえばアクセス行動に基づいて、キャッシングプロキシが行うことができる。オプションでは、コンテンツソースから受信されるコンテンツオブジェクトの一部を、キャッシングプロキシによって受信されるのに応じてバッファリングすることができる(たとえば、図2の入力バッファ220)。)

(23)「If the object version requested in step 310 is received, then it can be sent to the client device (step 360). Alternatively, if a transcodable version of that object is received, it can be transcoded (step 350) and then sent to the client device (step 360).」(第14頁第35行-第38行)
(訳:
ステップ310において要求されたオブジェクトバージョンが受信された場合には、クライアント装置に送信することができる(ステップ360)。別法では、そのオブジェクトのトランスコード可能なバージョンが受信された場合には、トランスコードして(ステップ350)、その後、クライアント装置に送信することができる(ステップ360)。)

2.刊行物1発明
上記記載事項から、刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という)を認定する。

・「キャッシングプロキシから、マルチメディアコンテンツを配信するための方法であって、」

刊行物1には、「methods … for delivering content(コンテンツを配信するための方法)」(上記1.(9))が記載されており、このコンテンツは映像などの「multimedia content(マルチメディアコンテンツ)」(上記1.(3))であって、キャッシングプロキシ120からクライアント装置130へ配信される(FIG.1,FIG.2,FIG.3(図1、図2、図3))ものである。
したがって、刊行物1には、「キャッシングプロキシから、マルチメディアコンテンツを配信するための方法」が記載されている。

・「クライアント装置からコンテンツオブジェクト要求、クライアント装置の属性、キャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続タイプ(例えば速度)をキャッシングプロキシにおいて受信するステップと、」

刊行物1に記載された方法では、「a request for a content object is received at a caching proxy from a client device(クライアント装置からのコンテンツオブジェクト要求がキャッシングプロキシにおいて受信され)」、「The caching proxy also receives … the attributes of the client device as well as the type of connection between the caching proxy and the client device.(またキャッシングプロキシは、クライアント装置の属性、およびキャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続のタイプも受信し)」(上記1.(19))、このクライアント装置との間の接続のタイプとは「 e.g., speed(例えば速度)」(上記1.(16))である。
したがって、刊行物1に記載された方法は、「クライアント装置からコンテンツオブジェクト要求、クライアント装置の属性、キャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続タイプ(例えば速度)をキャッシングプロキシにおいて受信するステップ」を含んでいる。

・「その結果、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択するステップと、」

刊行物1に記載された方法は、「Accordingly, the caching proxy can select the version of the content object to send to the client device.(その結果、キャッシングプロキシは、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択することができる)」(上記1.(19))ものである。
したがって、刊行物1に記載された方法は、「その結果、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択するステップ」を含んでいる。

・「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定するステップと、」

刊行物1に記載された方法は、「In step 320 of Figure 3, in the present embodiment, a determination can be made with regard to whether or not the object version identified in step 310 is cached in memory at the caching proxy (e.g., in caching system 240 of Figure 2).(本実施形態において図3のステップ320では、ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリ(たとえば、図2のキャッシングシステム240)にキャッシュされているか否かに関する判定を行うことができる)」(上記1.(20))ものである。
したがって、刊行物1に記載された方法は、「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定するステップ」を含んでいる。

・「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされている場合には、クライアント装置に送信するステップと、」

刊行物1に記載された方法は、「If the object version identified in step 310 is cached, it can be sent to the client device (step 360).(ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされている場合には、クライアント装置に送信することができる(ステップ360))」(上記1.(20))ものである。
したがって、刊行物1に記載された方法は、「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされている場合には、クライアント装置に送信するステップ」を含んでいる。

・「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされていない場合には、トランスコード可能なバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定し、キャッシュされている場合には、それをトランスコードするステップであって、」

刊行物1に記載された方法は、「a determination can be made with regard to whether or not the object version identified in step 310 is cached in memory at the caching proxy(ステップ310において特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かに関する判定を行い)」、「If the object version identified in step 310 is cached, it can be sent to the client device(キャッシュされている場合には、クライアント装置に送信し)」、「If not, … a determination can be made with regard to whether or not a transcodable version of the object version … is cached in memory at the caching proxy(そうでない場合には、特定されたオブジェクトバージョンのトランスコード可能なバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かに関する判定を行い)」、「If a transcodable version of the object version identified in step 310 is cached, it can be transcoded (step 350) and then sent to the client device (step 360).(特定されたオブジェクトバージョンのトランスコード可能なバージョンがキャッシュされている場合には、それをトランスコードし(ステップ350)、その後、クライアント装置に送信する(ステップ360)ことができる)」(上記1.(20)(21))ものである。
したがって、刊行物1に記載された方法は、「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされていない場合には、トランスコード可能なバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定し、キャッシュされている場合には、それをトランスコードするステップ」を含んでいる。

・「該トランスコードは、高いビットレートから低いビットレートへのトランスコードである、ステップと、」

刊行物1に記載された方法におけるトランスコードは、「Transcoding may be from a higher bitrate to a lower bitrate, from a higher resolution to a lower resolution, or a combination of both.(高いビットレートから低いビットレートへのトランスコーディング、高い解像度から低い解像度へのトランスコーディング、あるいは両方の組み合わせを用いることができる)」(上記1.(14))ものである。
したがって、刊行物1に記載された方法おけるトランスコードするステップでは、トランスコードが、「高いビットレートから低いビットレートへのトランスコードであること」が記載されている。

・「トランスコードした後クライアント装置に送信するステップと、」

刊行物1に記載された方法では、「it can be transcoded (step 350) and then sent to the client device (step 360).(トランスコードし(ステップ350)、その後、クライアント装置に送信する(ステップ360))」(上記1.(21))から、「トランスコードした後クライアント装置に送信するステップ」を含んでいる。

・「クライアント装置には、キャッシングプロキシにアクセスする数多くのクライアント装置が存在し、通信は、無線を用いることができる方法。」

刊行物1に記載された方法におけるクライアント装置は、「Client device 130 may be a computer system (such as a laptop, desktop or notebook), a hand-held device (such as a personal digital assistant), a cell phone, or another type of device that, in general, provides the capability for users to access and execute (e.g., display) items of content. As mentioned above, there may actually be many client devices with access to caching proxy 120.(クライアント装置130には、コンピュータシステム(ラップトップ、デスクトップあるいはノートブックなど)、ハンドヘルド装置(携帯情報端末など)、携帯電話、あるいは一般的に、ユーザがコンテンツのアイテムにアクセスし、そのアイテムを実行(たとえば表示)できる能力を提供する、別のタイプの装置を用いることができる。先に述べたように、実際には、キャッシングプロキシ120にアクセスする数多くのクライアント装置が存在する場合がある)」(上記1.(12))ものであり、「Also, communication may be wired or wireless, or a combination of wired and wireless.(また、通信は有線または無線、あるいは有線および無線の組み合わせを用いることができる)」(上記1.(13))ものである。
したがって、刊行物1に記載された方法は、「クライアント装置には、キャッシングプロキシにアクセスする数多くのクライアント装置が存在し、通信は、無線を用いることができる方法。」といえる。

以上をまとめると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
「キャッシングプロキシから、マルチメディアコンテンツを配信するための方法であって、
クライアント装置からコンテンツオブジェクト要求、クライアント装置の属性、キャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続タイプ(例えば、速度)をキャッシングプロキシにおいて受信するステップと、
その結果、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択するステップと、
特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定するステップと、
特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされている場合には、クライアント装置に送信するステップと、
特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされていない場合には、トランスコード可能なバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定し、キャッシュされている場合には、それをトランスコードするステップであって、該トランスコードは、高いビットレートから低いビットレートへのトランスコードである、ステップと、
トランスコードした後クライアント装置に送信するステップと、
を含み、
クライアント装置には、キャッシングプロキシにアクセスする数多くのクライアント装置が存在し、通信は、無線を用いることができる方法。」

第5.拒絶の理由2、3(特許法第29条第1項第3号、第2項)について
1.対比
本願の請求項1に係る発明と刊行物1発明を対比する。

・「ブロードキャストサービングノード(BSN)から、マルチメディアコンテンツを提供するために装置によって行われる方法であって、」

請求項1に係る発明の「ブロードキャストサービングノード(BSN)」は、例えば、実施例のような、複数の無線端末に同報通信を行うサービングノードであるから、「ブロードキャスト」とは、複数の装置に対して情報を提供することを意味していると認められる。
一方、刊行物1発明は、「キャッシングプロキシから、マルチメディアコンテンツを配信するための方法」である。このキャッシングプロキシは、「キャッシングプロキシにアクセスする数多くのクライアント装置」に対して、マルチメディアコンテンツを提供する配信サービスを行うネットワーク上のノードといえるから、「ブロードキャストサービングノード」ということができる。また、刊行物1発明の方法は装置によって行われるものである。
したがって、請求項1に係る発明と刊行物1発明とは、「ブロードキャストサービングノード(BSN)から、マルチメディアコンテンツを提供するために装置によって行われる方法」である点で一致する。

・「閾値数の無線端末と関連付けられ、かつマルチメディアコンテンツを搬送する元のメディアストリームの第1のデータレートが無線端末のチャネル状態に適していないことを示すチャネル状態情報をBSNにおいて受信するステップと、」

請求項1に係る発明のこの受信するステップに関して、発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
「【0046】
ステップ708で、無線端末から、チャネル状態情報が受信される。・・・チャネル状態情報は、現在のビットレート、現在のパケット損失レートなど、ならびにそれらの様々な組合せのうちの少なくとも1つを含む。・・・
【0047】
ステップ710で、コンパニオンメディアストリームが必要であるかどうかに関して判定が行われる。一実施形態では、コンパニオンメディアストリームが必要であるかどうかに関する判定は、チャネル状態情報を用いて実施することができる。一実施形態では、各無線端末のチャネル状態に最も適したメディアストリームのレートが、既存のメディアストリームにより現在サポートされないこと(すなわち、元のメディアストリーム、または任意の既存のコンパニオンメディアストリームにより現在サポートされないこと)を示している関連するチャネル状態情報を、閾値数(1以上)の無線端末が報告していると判定したことに応じて、コンパニオンメディアストリームが必要であることが識別される。」

この記載から、請求項1に係る発明の受信するステップは、「無線端末と関連付けられ」た「チャネル状態情報をBSNにおいて受信するステップ」であって、「マルチメディアコンテンツを搬送する元のメディアストリームの第1のデータレートが無線端末のチャネル状態に適していないことを示すチャンネル状態情報」を、「閾値数の無線端末」から受信するということ(例えば、無線端末から受信したビットレートのうち、BSNにあるメディアストリームのビットレートに適合しないものが3以上あるというようなこと)を意味していると理解できる。閾値とは、値を判定するための境目となる値のことであり、請求項1に係る発明では、適していないことを示すチャンネル状態情報の無線端末の数を判定するためのものであると認められる。

一方、刊行物1発明は、クライアント装置(請求項1に係る発明の「無線端末」に相当)から、例えば、速度(請求項1に係る発明の「チャネル状態情報」に相当)をキャッシングプロキシ(請求項1に係る発明の「BSN」に相当)において受信するステップを含み、その結果、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択して、特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシにキャッシュされていない場合があるのであるから、クライアント装置から受信した速度に、キャッシングプロキシにあるオブジェクトバージョン(請求項1に係る発明の「マルチメディアコンテンツを搬送する元のメディアストリーム」に相当)が適合しない(請求項1に係る発明の「第1のデータレートが無線端末のチャネル状態に適していない」に相当)場合があることが記載されている。
すなわち、刊行物1発明は、請求項1の用語を用いると「無線端末と関連付けられ、かつマルチメディアコンテンツを搬送する元のメディアストリームの第1のデータレートが無線端末のチャネル状態に適していないことを示すチャネル状態情報をBSNにおいて受信するステップ」を含む点で、請求項1に係る発明と共通している。
しかしながら、無線端末と関連付けられたチャネル状態情報を受信するステップにおける無線端末が、請求項1に係る発明では、「閾値数の」無線端末であるのに対し、刊行物1発明では、1つである点で両者は相違する(相違点1)。

・「無線端末のチャネル状態に適したメディアストリームデータレートを識別するステップと、」

刊行物1発明は、接続タイプ(例えば、速度)(請求項1に係る発明の「チャネル状態情報」に相当)をキャッシングプロキシにおいて受信した結果、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択するステップを含んでいる。
このステップでは、要するに、受信した接続タイプ(例えば、速度)に適したバージョンを選択するのであるから、受信した接続タイプが速度の場合には、その速度で送信し得るオブジェクトバージョンを選択する、すなわち、オブジェクトバージョンの速度(請求項1に係る発明の「メディアストリームデータレート」に相当)を識別するといえる。
したがって、請求項1に係る発明と刊行物1発明とは、「無線端末のチャネル状態に適したメディアストリームデータレートを識別するステップ」を含む点で一致する。

・「マルチメディアコンテンツを搬送し、識別されたメディアストリームデータレートを有するコンパニオンメディアストリームを形成するためにBSNにおいて元のメディアストリームをトランスコードするステップであって、関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子が、対応するメディアグループ識別子内に組み込まれ、第1のデータレートが、コンパニオンメディアストリームのメディアストリームデータレートよりも大きい、ステップと、」

刊行物1発明は、「特定されたオブジェクトバージョンがキャッシュされていない場合には、トランスコード可能なバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定し、キャッシュされている場合には、それをトランスコードするステップ」を含んでいる。
この「トランスコード可能なバージョン」とは、トランスコードすることにより(クライアント装置に送信するために選択された)特定されたオブジェクトバージョン(請求項1に係る発明の「マルチメディアコンテンツを搬送し、識別されたメディアストリームデータレートを有するコンパニオンメディアストリーム」に相当)を形成するためのキャッシングプロキシ(請求項1に係る発明の「BSN」に相当)内にあるオブジェクトバージョンであり、また、該トランスコードは、キャッシングプロキシにおいて行われる。
また、刊行物1発明のトランスコードは、「高いビットレートから低いビットレートへのトランスコード」であり、このことは、請求項1に係る発明の「(元のメディアストリームの)第1のデータレートが、コンパニオンメディアストリームのメディアストリームデータレートよりも大きい」ことに相当する。
したがって、請求項1に係る発明と刊行物1発明とは、「マルチメディアコンテンツを搬送し、識別されたメディアストリームデータレートを有するコンパニオンメディアストリームを形成するためにBSNにおいて元のメディアストリームをトランスコードするステップであって」、「第1のデータレートが、コンパニオンメディアストリームのメディアストリームデータレートよりも大きい、ステップ」を含む点で一致する。
しかしながら、該トランスコードするステップにおけるメディアストリームについて、請求項1に係る発明では、「関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子が、対応するメディアグループ識別子内に組み込まれ」るのに対し、刊行物1発明ではそのような特定はなされていない点で両者は相違する(相違点2)。

・「無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップであって、元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップが、BSNから開始される、ステップと」

請求項1に係る発明は、「無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップであって、元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップが、BSNから開始される、ステップ」を含むのに対し、刊行物1発明は含まない点で両者は相違する(相違点3)。

以上をまとめると、請求項1に係る発明と刊行物1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
ブロードキャストサービングノード(BSN)から、マルチメディアコンテンツを提供するために装置によって行われる方法であって、
無線端末と関連付けられ、かつマルチメディアコンテンツを搬送する元のメディアストリームの第1のデータレートが無線端末のチャネル状態に適していないことを示すチャネル状態情報をBSNにおいて受信するステップと、
無線端末のチャネル状態に適したメディアストリームデータレートを識別するステップと、
マルチメディアコンテンツを搬送し、識別されたメディアストリームデータレートを有するコンパニオンメディアストリームを形成するためにBSNにおいて元のメディアストリームをトランスコードするステップであって、第1のデータレートが、コンパニオンメディアストリームのメディアストリームデータレートよりも大きい、ステップと、
を含む、方法。

[相違点1]
無線端末と関連付けられたチャネル状態情報を受信するステップにおける無線端末が、請求項1に係る発明では、「閾値数の」無線端末であるのに対し、刊行物1発明では1つである点。
[相違点2]
トランスコードするステップにおけるメディアストリームについて、請求項1に係る発明では、「関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子が、対応するメディアグループ識別子内に組み込まれ」るのに対し、刊行物1発明ではそのような特定はなされていない点。
[相違点3]
請求項1に係る発明は、「無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップであって、元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップが、BSNから開始される、ステップ」を含むのに対し、刊行物1発明は含まない点。

2.判断
(1)拒絶の理由2(特許法第29条第1項第3号)について
請求項1に係る発明と刊行物1発明とは、上述のとおり相違点1ないし3を有するから、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるということはできない。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の「元のメディアストリームをトランスコードするステップ」をさらに限定したものであるから、同様の理由により、請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるということはできない。

(2)拒絶の理由3(特許法第29条第2項)について
ア.相違点1について
請求項1に係る発明における、受信するステップで受信するチャネル状態情報が閾値数の無線端末と関連付けられているとは、上述したように、「適していないことを示すチャンネル状態情報」を、「閾値数の無線端末」から受信するということを意味しており、この閾値は、適していないことを示すチャンネル状態情報の無線端末の数を判定するためのものであると理解できる。
これに対し、刊行物1発明では、クライアント装置(本願発明でいう「無線端末」)は複数存在するが、クライアント装置から、接続タイプ(例えば、速度)をキャッシングプロキシにおいて受信し、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択し、特定されたオブジェクトバージョンがキャッシングプロキシのメモリにキャッシュされているか否かを判定するという処理が、クライアント装置1つ1つに対して個別に行われるのみであって、刊行物1発明において、そのようなクライアント装置の数を閾値により判定しようとする動機付けが存在しない。
したがって、刊行物1発明において、受信する接続タイプ(例えば、速度)(請求項1でいう「チャネル状態情報」)を、閾値数の無線端末と関連付けられるようにすることが容易に想到し得るということはできない。

イ.相違点2について
刊行物1発明における、トランスコードされてクライアント装置に送信されるコンテンツオブジェクトは、例えば、DVDに記録された映像などのマルチメディアコンテンツであるから、それと関連づけられたコンテンツ識別子(例えば、映像の題名など)が存在することは容易に推察できる。これは、請求項1に係る発明の「関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子」に相当するものである。
しかしながら、刊行物1発明において、このコンテンツ識別子を、「対応するメディアグループ識別子内に組み込まれ」るようにする動機付けはない。そもそも、刊行物1には、請求項1に係る発明の「メディアグループ」(無線端末のチャネル状態に最も適したチャネルデータレートを用いたメディアストリームが同じ無線端末のグループ)の概念がない。
したがって、刊行物1発明において、関係するメディアストリームと関連付けられたコンテンツ識別子が、対応するメディアグループ識別子内に組み込まれるれるようにすることが容易に想到し得るということはできない。

ウ.相違点3について
刊行物1発明の方法は、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンがキャッシュされているか否かにより、キャッシュされているバージョン、または、トランスコードしたバージョンをクライアント装置に送信するものである。したがって、クライアント装置に送信するバージョン(請求項1に係る発明でいう「メディアストリーム」)は、キャッシュされているか否かの判断をした時点で1つに確定するのであって、請求項1に係る発明のように、「元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズする」余地はない。

また、上記のように認定した刊行物1発明以外に、刊行物1には、次のような記載がある。
「Client device 130 may either specify a certain version of a content object in a request (based on user input, for example), or agent software resident on client device 130 may inform caching proxy 120 of the capabilities of client device 130 (including the connection speed). In the former case, a user aware of the capabilities of client device 130 and the type of connection may select (e.g., from a menu) a particular version of the content object. In the latter case, caching proxy 120 may select a version corresponding to the type of connection and the capabilities of client device 130.(クライアント装置130が、要求されているコンテンツオブジェクトのある特定のバージョンを指定することができるか(たとえば、ユーザ入力に基づく)、あるいはクライアント装置130上に常駐するエージェントソフトウエアが、クライアント装置130の能力(接続速度を含む)をキャッシングプロキシ120に通知することができる。前者の場合、クライアント装置130の能力および接続のタイプを知っているユーザが、コンテンツオブジェクトのある特定のバージョンを(たとえばメニューから)選択することができる。後者の場合、キャッシングプロキシ120が、クライアント装置130の接続のタイプおよび能力に対応するバージョンを選択することができる。)」(上記「第4.1.(17)」)
「In step 310 of Figure 3, in the present embodiment, a request for a content object is received at a caching proxy from a client device (e.g., caching proxy 120 and client device 130 of Figures 1 and 2). The caching proxy also receives, or otherwise has knowledge of, the attributes of the client device as well as the type of connection between the caching proxy and the client device. Accordingly, the caching proxy can select the version of the content object to send to the client device. Alternatively, the request from the client device may identify the version of the content object.(本実施形態において図3のステップ310では、クライアント装置からのコンテンツオブジェクト要求がキャッシングプロキシにおいて受信される(たとえば、図1および図2のキャッシングプロキシ120およびクライアント装置130)。またキャッシングプロキシは、クライアント装置の属性、およびキャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続のタイプも受信するか、あるいは別の方法で知る。その結果として、キャッシングプロキシは、クライアント装置に送信するためのコンテンツオブジェクトのバージョンを選択することができる。別法では、クライアント装置からの要求によって、コンテンツオブジェクトのバージョンが特定される場合もある。)」(上記「第4.1.(19)」)

これらには、「クライアント装置130が、要求されているコンテンツオブジェクトのある特定のバージョンを指定することができるか(たとえば、ユーザ入力に基づく)」、「クライアント装置130の能力および接続のタイプを知っているユーザが、コンテンツオブジェクトのある特定のバージョンを(たとえばメニューから)選択する」、「クライアント装置からの要求によって、コンテンツオブジェクトのバージョンが特定される」とあり、クライアント装置が特定のバージョンを選択する技術が認められる。この場合は、特定のバージョンを選択するためにアドバタイズを行うことを考える余地はあるかもしれない。
しかしながら、この技術は、上記のように認定した刊行物1発明における「クライアント装置からコンテンツオブジェクト要求、クライアント装置の属性、キャッシングプロキシとクライアント装置との間の接続タイプ(例えば、速度)をキャッシングプロキシにおいて受信する」方法に代わる別の方法として記載されているものであるから、この技術と上記刊行物1発明とは両立しないものである。
したがって、この技術と上記刊行物1発明とを組み合わせることは想定できないから、この技術を考慮しても、刊行物1発明において、アドバタイズを行うこと、すなわち、「無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップであって、元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップが、BSNから開始される、ステップ」を含むことが容易に想到し得るとすることはできない。

エ.拒絶の理由3(特許法第29条第2項)のまとめ
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の「元のメディアストリームをトランスコードするステップ」をさらに限定したものであるから、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、原査定の拒絶の理由2、3によっては、本願を拒絶すべきものであるとすることはできない。

第6.拒絶の理由1(特許法第37条)について
1.請求項1に係る発明の特別な技術的特徴について
上述したように、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるとはいえないから、請求項1に係る発明の技術的特徴が特別な技術的特徴でないとすることはできず、このことをもってこの出願が単一性の要件を満たさないとはいえない。

2.請求項1に係る発明と他の請求項に係る発明との関係
本願の請求項1-10のうち他の請求項を引用しない独立形式で記載された請求項は、請求項1、請求項7、請求項10であるから、まず、これらの請求項について検討する。
請求項1に係る発明は、「無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズするステップ」を含む。
請求項7に係る発明は、「無線端末により選択することが利用可能な複数のメディアストリームの指標を受信するステップ」を含む。
請求項10に係る発明は、「BSNが、無線端末が元のおよびコンパニオンメディアストリームのそれぞれのデータレートおよび無線端末のチャネル状態に基づいて、元のおよびコンパニオンメディアストリームの1つを選択できるように構成された方法で元のおよびコンパニオンメディアストリームをアドバタイズ」するシステムである。
これらの技術的特徴は、何れも、無線端末が複数のメディアストリームから1つを選択できるようにするための、アドバタイズに関する技術的特徴であって、これらの請求項に共通する技術的特徴であり、これは上記「第5.1.対比」の相違点3で述べたように、刊行物1発明にない技術的特徴であるから、先行技術に対する貢献を明示する特別な技術的特徴といえる。
また、請求項2-6、8、9は、これらの請求項を引用し、さらに、技術事項を付加するものであるから、同じ特別な技術的特徴を有する。
したがって、この出願は、単一性の要件を満たさないとはいえない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、原査定の拒絶の理由1によっては、本願を拒絶すべきものであるとすることはできない。

第7.付記
平成25年2月1日付けの拒絶査定において、「付記」として、『「受信するステップ」の特定における「閾値数の無線端末と関連づけられ」なる記載は、不明瞭であり、発明の詳細な説明の開示に対応しないものである。』とされているので、この点について言及する。
「受信するステップ」の特定における「閾値数の無線端末と関連づけられ」なる記載については、上記「第5.1.対比」で述べたように、発明の詳細な説明に対応して合理的に理解できるものであって、文言の表現上は十分でない点があったとしても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第8.むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-17 
出願番号 特願2009-502845(P2009-502845)
審決分類 P 1 8・ 65- WY (H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 113- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 渡辺 努
千葉 輝久
発明の名称 無線ネットワークにおける改良されたマルチキャストストリーミングのための方法および装置  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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