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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04F
管理番号 1284759
審判番号 不服2012-23938  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-03 
確定日 2014-03-04 
事件の表示 特願2005-370464号「手摺りの取付方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-170078号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年12月22日の出願であって、平成24年9月4日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成24年12月3日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされ、その後、平成25年6月27日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年8月19日に回答書が提出された。

第2 平成24年12月3日の手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?4を削除すると共に、補正前の請求項5を、
「【請求項1】
上端部が、階段用の傾斜した手摺りの下面に形成したホゾ穴に嵌入すると共に、下端部が、踏み板または踏み板に隣接して設けられたボーダーの上面に形成したホゾ穴に嵌入する子柱本体と、該子柱本体の円柱形状の略上半部に昇降自在及び回転自在に嵌装された筒状で、しかも上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面とした上部装飾部材と、円柱形状の略下半部に昇降自在及び回転自在に嵌装された筒状の下部装飾部材を備え、さらに、前記上部装飾部材を、前記子柱本体から上方に抜き出し可能にし、前記上部装飾部材を前記子柱本体から抜き出して前記上部装飾部材の上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断した後、前記上部装飾部材を前記子柱本体に嵌装させてなる子柱を使用して階段の手摺りを取付ける方法であって、
階上と階下のそれぞれに親柱を立設して、該二本の親柱の間に、下面の所定箇所に複数のホゾ穴を形成した手摺りを掛け渡して取付けた後、
前記子柱本体の上端部を、前記手摺りのホゾ穴に嵌入した後、前記子柱本体の下端部を前記踏み板またはボーダーのホゾ穴に嵌入して、前記子柱を前記手摺りと踏み板またはボーダーとの間に取付け、
前記上部装飾部材を上側に持ち上げるように移動するとともに回転してその上部装飾部材の上端面を手摺りの下面の傾斜角度に対応した位置決め調整を行って、前記手摺りの下面に固定すると共に、前記下部装飾部材を下側に下げるように移動してその下部装飾部材の下端面を踏み板またはボーダーの上面に固定してなることを特徴とする手摺りの取付方法。」
と補正し、補正前の請求項6を、
「【請求項2】
上端部が、階段用の傾斜した手摺りの下面に形成したホゾ穴に嵌入すると共に、下端部が、踏み板または踏み板に隣接して設けられたボーダーの上面に形成したホゾ穴に嵌入する子柱本体と、該子柱本体の円柱形状の略上半部に昇降自在及び回転自在に嵌装された筒状で、しかも上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面とした上部装飾部材と、円柱形状の略下半部に昇降自在及び回転自在に嵌装された筒状の下部装飾部材を備え、さらに、前記上部装飾部材を、前記子柱本体から上方に抜き出し可能にし、前記上部装飾部材を前記子柱本体から抜き出して前記上部装飾部材の上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断した後、前記上部装飾部材を前記子柱本体に嵌装させてなる子柱を使用して階段の手摺りを取付ける方法であって、
階下に親柱を立設するとともに、階上の壁に台座を取付け、前記親柱と台座の間に、下面の所定箇所に複数のホゾ穴を形成した手摺りを掛け渡して取付けた後、
前記子柱本体の上端部を、前記手摺りのホゾ穴に嵌入した後、前記子柱本体の下端部を前記踏み板またはボーダーのホゾ穴に嵌入して、前記子柱を前記手摺りと踏み板またはボーダーとの間に取付け、
前記上部装飾部材を上側に持ち上げるように移動するとともに回転してその上部装飾部材の上端面を手摺りの下面の傾斜角度に対応した位置決め調整を行って、前記手摺りの下面に固定すると共に、前記下部装飾部材を下側に下げるように移動してその下部装飾部材の下端面を踏み板またはボーダーの上面に固定してなることを特徴とする手摺りの取付方法。」
と補正し、それに合わせて明細書の記載を補正するものである。

本件補正は、補正前の請求項5及び6に記載した発明を特定するために必要な事項である「上部装飾部材」について、「さらに、前記上部装飾部材を、前記子柱本体から上方に抜き出し可能にし、前記上部装飾部材を前記子柱本体から抜き出して前記上部装飾部材の上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断した後、前記上部装飾部材を前記子柱本体に嵌装させてなる」との限定を付加し、同じく「その上端面」及び「その下端面」について、「その上部装飾部材の上端面」及び「その下部装飾部材の下端面」とするものであって、補正前の請求項5、6に記載された発明と補正後の請求項1,2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第2項、第3項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1,2に記載された発明(以下、「本願補正発明1」「本願補正発明2」という。)が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

2.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭48-097624号(実開昭50-044829号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、手摺りの支柱に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案の構成を添附図面の実施例について説明すると、(1)は金属あるいは合成樹脂よりなる中空状の取付部材で、表面には凹凸状を始めとする任意の模様を付した装飾部(2)を形成してなり、この取付部材(1)は適宜間隔を有して設けたパイプ状の支柱(3)の外周面を自在に摺動して適宜位置に接着剤又はビスの係止手段により係止されるものである。」(明細書第2頁第3?10行)
(イ)「取付施工の一例を示すと、階段踏面の固定部(4)に支柱(3)の下端部を固着した後、この支柱(3)の適宜個所、例えば手摺笠木(5)附近の上端方、固定部附近の下端方、或いは中央附近等に位置せしめた取付部材(1)ビスで止着すると共に、支柱(3)の上端部を手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支して取付を完了する。尚取付部材(1)を支柱(3)の適宜個所に設置するものとして説明したが、第2図々示の如く支柱(3)の全周面を被冠するものであつても良い。」(明細書第2頁第10?19行)
(ウ)「更にこの取付部材(1)を支柱(3)の上下端に位置することによつて、支柱(3)と固定部分(4)や手摺笠木(5)との接続部分を被覆するキヤツプともなり、取付跡を隠して手摺の美観を高めると共に合成樹脂を用いて製することにより、金属製の支柱(3)や手摺笠木(5)の接続個所から発生し易い錆や汚れを防ぐことが出来る。」(明細書第3頁第10?16行)
(エ)記載事項(ア)?(ウ)と共に、第1図を見ると、第1図には、
上端部が、階段用の傾斜した手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支すると共に、下端部が、階段踏面の固定部(4)に固着する支柱(3)と、
支柱(3)のパイプ状の外周面を自在に摺動して手摺笠木(5)附近の上端方に接着剤又はビスの係止手段により係止される中空状で、上端面を手摺笠木(5)の傾斜角度に対応した傾斜面とした手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)と、
パイプ状の外周面を自在に摺動して固定部附近の下端方に接着剤又はビスの係止手段により係止される中空状の固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)を備えてなる支柱(3)を使用して階段の手摺りを取付ける方法が図示されている。
(オ)記載事項(イ)の「手摺笠木(5)附近の上端方・・に位置せしめた取付部材(1)」や「固定部附近の下端方・・に位置せしめた取付部材(1)」は、「パイプ状の支柱(3)の外周面を自在に摺動」するものであって、支柱(3)の端部においても当該摺動を拒否する様な特段の事情も存在しないものであるので、「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を、支柱(3)から上方に抜き出し可能」及び「固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)を、支柱(3)から下方に抜き出し可能」にしてあるということができる。
(カ)記載事項(イ)の「取付施工」は、予め取付部材(1)を支柱(3)に嵌装させてなる支柱(3)を使用して、それを手摺笠木(5)及び階段踏面の固定部(4)に固着すると考えるのが通常であるので、「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を支柱(3)に嵌装させてなる支柱(3)を使用して階段の手摺りを取付ける方法」ということができる。
(キ)記載事項(イ)の「取付施工」は、「階段踏面の固定部(4)に支柱(3)の下端部を固着し・・・支柱(3)の上端部を手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支して取付を完了する」ものであるので、
「何らかの部材に、下面に嵌合溝(6)を設けた手摺笠木(5)を取付けた後、
支柱(3)の下端部を階段踏面の固定部(4)に固着した後、支柱(3)の上端部を、手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支して、支柱(3)を手摺笠木(5)と階段踏面との間に取付け、
手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を手摺笠木(5)の下面に嵌支すると共に、固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)の下端面を階段踏面の固定部(4)に固着してなる」ものということができる。

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「上端部が、階段用の傾斜した手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支すると共に、下端部が、階段踏面の固定部(4)に固着する支柱(3)と、
支柱(3)のパイプ状の外周面を自在に摺動して手摺笠木(5)附近の上端方に接着剤又はビスの係止手段により係止される中空状で、上端面を手摺笠木(5)の傾斜角度に対応した傾斜面とした手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)と、
パイプ状の外周面を自在に摺動して固定部附近の下端方に接着剤又はビスの係止手段により係止される中空状の固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)を備え、
さらに、手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を、支柱(3)から上方に抜き出し可能にし、固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)を、支柱(3)から下方に抜き出し可能にし、手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を支柱(3)に嵌装させてなる支柱(3)を使用して階段の手摺りを取付ける方法であって、
何らかの部材に、下面に嵌合溝(6)を設けた手摺笠木(5)を取付けた後、
支柱(3)の下端部を階段踏面の固定部(4)に固着した後、支柱(3)の上端部を、手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支して、支柱(3)を手摺笠木(5)と階段踏面との間に取付け、
手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を手摺笠木(5)の下面に嵌支すると共に、固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)の下端面を階段踏面の固定部(4)に固着してなる手摺りの取付方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭54-94526号(実開昭56-12635号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、バルコニ-・手摺り等の格子組立構造に関し、次の事項が記載されている。
(ア)「以上の構成を有する格子を組立てるには、次の如くにして行われる。
i)孔明きプレート4を上桟の溝5内に挿込む。
ii)孔明きプレート6を下桟3の溝7に挿通する。
iii)i)ii)の状態に組込まれた上桟と下桟を左右の支柱10,10に固定する。
iv)手すり子1を第5図の如く、下側から上側の孔明きプレート4の孔8に挿通する。
v)次に下側の孔明きプレート6の切欠き孔9に押し込む。すると手すり子1と孔明きプレート6とは第4図の状態で係合し、その位置が固定される。」(明細書第3頁第13行?第4頁第9行)

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭58-187914号(実開昭60-94530号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には、格子取付装置に関し、次の事項が記載されている。
(ア)「このような構成からなる取付装置7による格子1の取付けは、まず挿入用凹溝9へ格子1の上端部を、側壁9aの傾斜を利用して係止部13に係止させながら挿入する。(第2図に想像線で示す。)
次に格子1の下端部を、固定用凹溝10へ係止部14,14に係止させながら挿入載置する。この時、格子1の上端部が係止部13へ確実に係止すると共に、当接部12に当接して、格子1が固定する。」(明細書第5頁第17行?第6頁第6行)

(4)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公昭53-54337号公報(以下「刊行物4」という。)には、組立式手摺りに関し、次の事項が記載されている。
(ア)「手摺を組立て設置する場合、先ず固定子9を・・・固着設置し、天井には・・桟枠4を固着設置して、・・・上部固定部材5を桟枠4に固定設置せしめる。次に・・し、・・・この支柱3の上端、即ち副杆2の上部の短軸部12を・・上部固定部材5の円形凹穴に挿入嵌合した後、支柱3の下端を・・下部固定部材8を摺り降ろし、この下部固定部材8の筒穴24で支柱3の下端と固定子9とを一体的に嵌合接続せしめることにより極めて堅実に設置する。」(第3欄第3?24行)

(5)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3021522号公報(以下「刊行物5」という。)には、衣類吊棚に関し、次の事項が記載されている。
(ア)「【0018】
図3の(イ)に示すように、ハンガー用横杆6の端部に抜け止め部材8を外嵌すると共に、スリット7を下方位置に来るように横杆6を配置し、横杆6を矢印A方向に挿入する。(なお、左右一対の支柱1,1の取付孔5,5に取付けるために、やり送り方式で行なう。つまり、一方の取付孔5には、一旦深く横杆6の端部を挿入してから、元へもどして浅く挿入する。)
・・・
【0020】
その後、矢印Cの如く、(予め外嵌させておいた)前記抜け止め部材8をスライドさせ、図3の(ハ)及び図4に示すように、(係止状態にて取付孔5の上半部に形成された)三か月型の空隙部11に挿入させれば、差込み片部10がこの空隙部11を占有して、横杆6の浮上りを防止する。」

(6)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-339537号公報(以下「刊行物6」という。)には、階段の手摺と親柱との連結構造に関し、次の事項が記載されている。
(ア)「【0007】階段室1の、1階床2側の端部右側に親柱3が設けられ、この親柱3と建造物の側壁4(親柱3の前方に位置する)とに手摺6が渡し止められている。前記手摺6と階段室1の右側部の装飾縁材7とには複数の手摺子8が渡し止められている。
【0008】前記手摺6の下側端(後端)には、フランジ部材10が、その周縁部が手摺6よりはみ出す状態で、ねじ11により取り付けられている。そして、このフランジ部材10が親柱3の上部側面にねじ13(請求の範囲でいう連結具)により取り付けられている。前記ねじ13は、フランジ部材10に形成された、ねじ頭嵌入凹所を有する貫通孔14を貫通して、親柱3にねじ嵌められ、貫通孔14はキャップ15により閉塞されている。
【0009】手摺6の上側端(前端)と側壁4との連結も、前記と同様にフランジ部材10を介して行なわれている。」

3.本願補正発明1と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「手摺笠木(5)」は、本願補正発明1の「手摺り」に相当し、以下同様に、
「階段踏面」は、「踏み板」の「上面」に、
「支柱(3)」は、「子柱本体」及び「子柱」に相当する。
(b)引用発明の「手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支する」ことと、本願補正発明1の「手摺りの下面に形成したホゾ穴に嵌入する」こととは、「手摺りの下面に形成した嵌合部に嵌入する」点で共通する。
(c)引用発明の「階段踏面の固定部(4)に固着する」ことと、本願補正発明1の「踏み板または踏み板に隣接して設けられたボーダーの上面に形成したホゾ穴に嵌入する」こととは、「踏み板の上面に固定する」点で共通する。
(d)引用発明の「支柱(3)のパイプ状」は、パイプ形状として円柱形状が代表的なものであるので、本願補正発明1の「子柱本体の円柱形状」に相当する。
刊行物1の図1において支柱(3)が全長に亘り同径に記載されていることから、引用発明の「外周面を自在に摺動」するは、実質的に支柱(3)の全長に亘りなされると解されるので、引用発明の手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)が支柱(3)の「外周面を自在に摺動」することは、本願補正発明1の「略上半部に昇降自在」「に嵌装され」たことに相当し、以下同様に、
「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)」は、本願補正発明1の「上部装飾部材」に、
「中空状」は、本願補正発明1の「筒状」に相当する。
そして、引用発明の「支柱(3)のパイプ状の外周面を自在に摺動して手摺笠木(5)附近の上端方に接着剤又はビスの係止手段により係止される中空状で、上端面を手摺笠木(5)の傾斜角度に対応した傾斜面とした手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)」と、本願補正発明1の「該子柱本体の円柱形状の略上半部に昇降自在及び回転自在に嵌装された筒状で、しかも上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面とした上部装飾部材」とは、「子柱本体の円柱形状の部分に昇降自在に嵌装された筒状で、上端面を手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面とした上部装飾部材」である点で共通する。
(e)引用発明の「固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)」は、本願補正発明1の「下部装飾部材」に相当する。
そして、引用発明の「パイプ状の外周面を自在に摺動して固定部附近の下端方に接着剤又はビスの係止手段により係止される中空状の固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)」と、本願補正発明1の「円柱形状の略下半部に昇降自在及び回転自在に嵌装された筒状の下部装飾部材」とは、「円柱形状の部分に昇降自在に嵌装された筒状の下部装飾部材」である点で共通する。
(f)引用発明の「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を、支柱(3)から上方に抜き出し可能にし、固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)を、支柱(3)から下方に抜き出し可能にし、手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を支柱(3)に嵌装させてなる支柱(3)を使用して階段の手摺りを取付ける方法」と、本願補正発明1の「前記上部装飾部材を、前記子柱本体から上方に抜き出し可能にし、前記上部装飾部材を前記子柱本体から抜き出して前記上部装飾部材の上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断した後、前記上部装飾部材を前記子柱本体に嵌装させてなる子柱を使用して階段の手摺りを取付ける方法」とは、「上部装飾部材を、子柱本体から上方に抜き出し可能にし、上部装飾部材を子柱本体に嵌装させてなる子柱を使用して階段の手摺りを取付ける方法」である点で共通する。
(g)引用発明の「嵌支」は、本願補正発明1の「固定」に相当する。
そして、引用発明の「何らかの部材に、下面に嵌合溝(6)を設けた手摺笠木(5)を取付けた後、
支柱(3)の下端部を階段踏面の固定部(4)に固着した後、支柱(3)の上端部を、手摺笠木(5)の下面に設けた嵌合溝(6)に嵌支して、支柱(3)を手摺笠木(5)と階段踏面との間に取付け、
手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)を手摺笠木(5)の下面に嵌支すると共に、固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)の下端面を階段踏面の固定部(4)に固着してなる」ことと、本願補正発明1の「階上と階下のそれぞれに親柱を立設して、該二本の親柱の間に、下面の所定箇所に複数のホゾ穴を形成した手摺りを掛け渡して取付けた後、
前記子柱本体の上端部を、前記手摺りのホゾ穴に嵌入した後、前記子柱本体の下端部を前記踏み板またはボーダーのホゾ穴に嵌入して、前記子柱を前記手摺りと踏み板またはボーダーとの間に取付け、
前記上部装飾部材を上側に持ち上げるように移動するとともに回転してその上部装飾部材の上端面を手摺りの下面の傾斜角度に対応した位置決め調整を行って、前記手摺りの下面に固定すると共に、前記下部装飾部材を下側に下げるように移動してその下部装飾部材の下端面を踏み板またはボーダーの上面に固定してなること」とは、
「何らかの部材に、下面に嵌合部をを形成した手摺りを取付けた後、
子柱本体の上端部を、手摺りの嵌合部に固定し、子柱本体の下端部を踏み板の嵌合部に固定して、子柱を手摺りと踏み板との間に取付け、
上部装飾部材を手摺りの下面に固定すると共に、下部装飾部材の下端面を踏み板の上面に固定してなる」ことで共通する。

(2)両発明の一致点
「上端部が、階段用の傾斜した手摺りの下面に形成した嵌合部に嵌入すると共に、下端部が、踏み板の上面に固定する子柱本体と、子柱本体の円柱形状の略上半部に昇降自在に嵌装された筒状で、上端面を手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面とした上部装飾部材と、円柱形状の略下半部に昇降自在に嵌装された筒状の下部装飾部材を備え、さらに、上部装飾部材を、子柱本体から上方に抜き出し可能にし、上部装飾部材を子柱本体に嵌装させてなる子柱を使用して階段の手摺りを取付ける方法であって、
何らかの部材に、下面に嵌合部をを形成した手摺りを取付けた後、
子柱本体の上端部を、手摺りの嵌合部に固定し、子柱本体の下端部を踏み板の嵌合部に固定して、子柱を手摺りと踏み板との間に取付け、
上部装飾部材を手摺りの下面に固定すると共に、下部装飾部材の下端面を踏み板の上面に固定してなる手摺りの取付方法。」

(3)両発明の相違点
ア.手摺りの下面に形成した嵌合部が、本願補正発明1は「複数のホゾ穴」であり、子柱本体の上端部の固定が「ホゾ穴に嵌入」であり、子柱本体の下端部の固定が踏み板等の上面に「形成したホゾ穴に嵌入」であるのに対して、引用発明は、手摺りの下面に形成した嵌合部が嵌合部が嵌合溝(6)であり、踏み板の上面側の固定構造は不明な点。
イ.上部装飾部材及び下部装飾部材が、本願補正発明1は、「回転自在」に嵌装されたものであるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。
ウ.子柱が、本願補正発明1は、「上部装飾部材を前記子柱本体から抜き出して前記上部装飾部材の上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断した後」嵌装させてなるものであるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。
エ.本願補正発明1は、「階上と階下のそれぞれに親柱を立設して、該二本の親柱の間に、」手摺りを「掛け渡して」取付けたものであるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。
オ.本願補正発明1は、子柱本体の上端部を嵌入した「後」、下端部を嵌入して取付けるものであるのに対して、引用発明は、下端部を先に固着するものである点。
カ.本願補正発明1は、上部装飾部材を「上側に持ち上げるように移動するとともに回転してその上部装飾部材の上端面を手摺りの下面の傾斜角度に対応した位置決め調整を行って」固定するものであるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。
キ.本願補正発明1は、下部装飾部材を「下側に下げるように移動して」固定するものであるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。

4.本願補正発明1の容易推考性の検討
(1)相違点ア.について
柱状部材の固着方法として、柱状部材の端部を穴に嵌入して固着する手法は、刊行物2,5に記載されている様に周知慣用のものであり、引用発明の柱状部材の上下端部の固着を、当該周知慣用のものとして、本願補正発明1の相違点ア.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.カ.について
引用発明の「支柱(3)のパイプ状」は、上記「3.(d)」記載の様に、本願補正発明1の「子柱本体の円柱形状」に相当する構成であり、引用発明の「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)」及び「固定部附近の下端方に位置せしめた取付部材(1)」は、実質的に「回転自在」に嵌装されたものでもあるといえる。
また、引用発明の「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)」を「上端面を手摺笠木(5)の傾斜角度に対応した傾斜面とした手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめ」て通常の取付状態とする為には、「上側に持ち上げるように移動するとともに回転」する「位置決め調整」がともなうことも自明である。
そうすると、相違点イ.カ.は、実質的な相違点ではない。

(3)相違点ウ.について
(a)引用発明の「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)」は、「上端面を手摺笠木(5)の傾斜角度に対応した傾斜面とした」構成を有するものであるが、当該傾斜面の成型方法については、刊行物1に記載も示唆もされていない。
また、刊行物2?6にも、手摺の上部装飾部材を子柱本体から抜き出して、上端面を手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断した後、子柱本体に嵌装することは記載されていない。
(b)さらに、刊行物1は、手摺笠木(5)の傾斜角度に着目する記載は全く存在せず、刊行物1の図1に図示されている上端方に位置せしめた取付部材(1)の形態も、上端部から左右に張り出す部分が、左右とも同じ厚みで記載されており、「上部装飾部材を前記子柱本体から抜き出して前記上部装飾部材の上端面を前記手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断」することには適さない形態と言うべきものである。
(c)一方、本願補正発明1は、相違点ウ.に係る構成を備えることによって、本願明細書【0034】記載の「手摺りの傾斜に合わせて斜めに切断する必要がある」を前提に、「子柱本体から抜き出して切断することができるので、施工現場での加工が容易である。」という作用効果を奏するものと認められる。
(d)そうすると、建築分野において、取り合いの形状にあわせて加工することが、施工上の一般的な手段に過ぎないものであったとしても、手摺笠木(5)の傾斜角度に関する着目が全くなされておらず、かつ、手摺りの傾斜角度に対応した傾斜面に切断することに適さない形態の引用発明の「手摺笠木(5)附近の上端方に位置せしめた取付部材(1)」を、本願補正発明1の相違点ウ.に係る構成として、上記(c)の作用効果を生じるものとすることを、当業者が容易に想到し得たとは言えない。

(4)相違点エ.について
本願明細書においても、「【0006】・・最初に親柱20を取付け、次いで子柱30、最後に手摺り1を取付けるといった旧来の方法がそのまま行なわれている。【0009】・・手摺りを先に取付けた後、伸縮式の子柱を縮めた状態で取付け、伸長させる手段が提案されている。」とされている様に、親柱に手摺りを先に取付けた後、子柱を取り付ける手法は、従来知られたものであり、引用発明の手摺笠木(5)を、親柱に先に取付けたものとして、本願補正発明1の相違点エ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(5)相違点オ.について
柱状部材の固着方法として、柱状部材の上端を先に、下端を後に固着するものも、刊行物2,3に記載されている様に周知慣用のものであり、引用発明の柱状部材の上下端部の固着を、当該周知慣用のものとして、本願補正発明1の相違点オ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(6)相違点キ.について
引用発明の子柱の下部装飾部材を、刊行物4記載の様に下側に下げるように移動して、定位置に固定するものとして、本願補正発明1の相違点キ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、本願補正発明1は、引用発明及び刊行物1?6記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.本願補正発明2と引用発明との対比
(1)両発明は、上記「3.(2)」の「両発明の一致点」で一致する。
(2)両発明の相違点
両発明は、上記「3.(3)」「ア.」?「ウ.」、「オ.」?「キ.」及び以下の点で相違する。
エ’.本願補正発明2は、
「階下に親柱を立設するとともに、階上の壁に台座を取付け、前記親柱と台座の間に、」手摺りを「掛け渡して」取付けたものであるのに対して、引用発明はそのようなものであるか不明な点。

6.本願補正発明1の容易推考性の検討
(1)相違点「ア.」?「ウ.」及び「オ.」?「キ.」については、上記「4.」「(1)」?「(3)」及び「(5)」?「(6)」と同様である。

(2)相違点エ’.について
刊行物6に記載されている様に、親柱に手摺りを先に取付けた後、子柱を取り付ける手法は、従来知られたものであり、引用発明の手摺笠木(5)を、それらに先に取付けたものとして、本願補正発明2の相違点エ’.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そうすると、結局、相違点のうち、相違点ウ.は当業者が容易に想到し得たとは言えないので、本願補正発明2は、引用発明及び刊行物1?6記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

7.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第2項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第2項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1?2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-17 
出願番号 特願2005-370464(P2005-370464)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 隆  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 高橋 三成
住田 秀弘
発明の名称 手摺りの取付方法  
代理人 山広 宗則  
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