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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1284784
審判番号 不服2012-114  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-05 
確定日 2014-02-12 
事件の表示 特願2007-528082「通信システム,通信方法及びネットワーク鍵共有方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月30日国際公開,WO2006/033745,平成20年 4月10日国内公表,特表2008-511215〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2005年8月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年8月20日,2004年12月16日,2005年1月28日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成19年4月20日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成20年8月19日付けで審査請求がなされ,平成23年4月27日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成23年8月9日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成23年8月26日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成24年1月5日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成24年3月2日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成24年8月29日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ,平成24年12月28日付けで回答書の提出があったものである。

第2.平成24年1月5日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年 1月 5日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成24年1月5日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成23年8月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
電力線通信ネットワークを介してストリーミングメディアを通信する通信システムにおいて,
端末リストを有し,動作電力が供給される電力線に接続された第1のストリーミングメディア装置と,
上記第1のストリーミングメディア装置内に設けられ,該第1のストリーミングメディア装置と,上記電力線に接続された少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置との間で,上記電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信回路と,
上記電力線通信回路内に設けられ,ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化又は復号するスクランブル回路と,
上記電力線通信ネットワークを介して上記ネットワーク鍵の値を通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間の物理的接続の確立に応じて,上記複数のストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記端末リストに登録する手段と,
上記ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知する手段と,
を備える通信システム。
【請求項2】
上記第1及び第2のストリーミングメディア装置は,ビデオストリーム,オーディオストリーム又はオーディオ/ビデオストリームの組合せ用に構成されたソース装置,プレーヤ,レコーダ,カメラ及びサーバからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
上記第1のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵の値を上記第2のストリーミングメディア装置に供給する管理者モード,又は上記電力線通信ネットワークを介して通信されてくるストリーミングメディアを暗号化又は復号する際に使用する該ネットワーク鍵の値を該第2のストリーミングメディア装置から受信して保存する申込者モードで動作することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
上記管理者モードで動作する第1のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵のデフォルト値を読み出し,該デフォルト値を上記第2のストリーミングメディア装置に供給することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵の値を共有及び保存するために,共通ネットワーク鍵の値を共有していないことを検出する検出手段を更に備える請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
上記検出手段は,受信したネットワーク鍵の値が有効であり,メモリに保存されているネットワーク鍵の値と一致するかを判定する比較回路を備えることを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
上記共有ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段は,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間でネットワーク識別子を共有することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
上記共有ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段は,
直接電力線接続を確立する鍵共有回路と,
上記直接電力線接続を介して共有されるネットワーク鍵の値を保存するメモリと,
上記電力線通信ネットワーク上の上記直接電力線接続を越えて電力線通信データが通信されないように,該電力線通信データをフィルタリングする選択的電力線通信データフィルタとを備え,
上記ネットワーク鍵は,上記電力線通信ネットワークを介して配信されることなく,上記直接電力線接続を介して共有され,
上記直接電力線接続は,上記ネットワーク鍵が共有された後に,切断することができることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項9】
上記選択的電力線通信データフィルタは,上記直接電力線接続と上記電力線通信ネットワークへの接続との間の経路に選択的に挿入可能なローパスフィルタであることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
上記直接電力線接続は,上記少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置に接続された上記第1のストリーミングメディア装置の電源コンセント,又は上記第1のストリーミングメディア装置に接続された上記第2のストリーミングメディア装置の1つの電源コンセントからなり,
上記電源コンセントは,上記電力線から動作電力を供給される電源プラグ接続に接続され,
上記選択的電力線通信フィルタリングは,上記電源コンセントと上記電源プラグ接続との間に選択的に接続されることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項11】
上記ネットワーク鍵の値が,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置との間で共有されていることを示す手段を更に備える請求項1に記載の通信システム。
【請求項12】
上記共有されていることを示す手段は,光インジケータからなることを特徴とする請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
電力線通信ネットワークを介して通信する通信システムにおいて,
電力線通信ネットワークを介して,少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置とデータを通信する第1のストリーミングメディア装置と,
上記第1のストリーミングメディア装置上のマイクロプロセッサとを備え,
上記マイクロプロセッサは,
上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置とが,該第1のストリーミングメディア装置又は該第2のストリーミングメディア装置内のそれぞれの電源ソケットを介して何時相互に接続されるのかを判定し,
上記それぞれの電源ソケットと関連する電力線通信データフィルタを,登録手続中に起動し,該それぞれの電源ソケットを介して通信されるデータが上記電力線通信ネットワーク上のそれぞれの電源ソケット接続を越えて配信されることを防止し,
上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置とが互換ネットワーク鍵によって構成されるように,上記電力線通信ネットワーク上のデータの暗号化及び復号を制御するネットワーク鍵を送信及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記第1のストリーミングメディア装置の端末リストに登録し,
上記ネットワーク鍵を受信した後に,上記電力線通信データフィルタを停止し,
上記それぞれの電源ソケット接続を,その後の任意の時刻に,上記電力線通信ネットワーク接続に置き換え,
上記ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知することを特徴とする通信システム。
【請求項14】
電力線通信ネットワーク上の複数のストリーミングメディア装置間で通信されるストリーミングメディアの暗号化及び復号において用いられるネットワーク鍵を共有するネットワーク鍵共有方法において,
第1のストリーミングメディア装置と第2のストリーミングメディア装置との間に直接電源接続を確立するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置によって,上記第2のストリーミングメディア装置が上記直接電源接続に接続されていることを検出するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置によって,上記第2のストリーミングメディア装置が上記第1のストリーミングメディア装置と互換性があるネットワーク鍵をまだ用いていないことを判定するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置によって,電力線通信データが上記直接電源接続を越えて上記電力線通信ネットワークに通信されることを阻止するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置が,上記ネットワーク鍵を上記第2のストリーミングメディア装置に上記直接電源接続を介して送信するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置が,上記第2のストリーミングメディア装置を上記第1のストリーミングメディア装置の端末リストに登録するステップと,
上記ネットワーク鍵が変更された場合,上記第1のストリーミングメディア装置によって,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置が,変更された上記ネットワーク鍵を,上記電力線通信ネットワークを介して,上記第2のストリーミングメディア装置送信するステップと,
を有することを特徴とするネットワーク鍵共有方法。
【請求項15】
上記第1のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵が上記第2のストリーミングメディア装置と共有されていないときは,デフォルトのネットワーク鍵の値を有することを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項16】
上記直接電源接続は,上記第1のストリーミングメディア装置の電源コンセントからなり,該電源コンセントには少なくとも1つの他のストリーミングメディア装置からの電源コードが接続されることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項17】
上記第2のストリーミングメディア装置が直接電源接続に接続されていることを検出するステップは,上記第2のストリーミングメディア装置における電力の供給が上記第1のストリーミングメディア装置から当該第2のストリーミングメディア装置への直接電力線接続を介して行われているか,又は,上記第2のストリーミングメディア装置から上記第1のストリーミングメディア装置へ送信された電力線通信データの受信が該直接電源接続を介して行われているか,を検出することに応じて,実行されることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項18】
上記電力線通信データを阻止するステップは,上記電力線通信データコンテンツを上記第1のストリーミングメディア装置のフィルタを用いてフィルタリングすることによって実行されることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項19】
上記ネットワーク鍵の値を更新するステップは,データを通信する公開/秘密鍵メカニズムを用いることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項20】
上記第1のストリーミングメディア装置によって,上記電力線通信データを上記直接電力線接続を越えて上記電力線通信ネットワークに通信するステップを更に有する請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
電力線通信ネットワークを介してストリーミングメディアを通信する通信システムにおいて,
端末リストを有し,動作電力が供給される電力線に接続された第1のストリーミングメディア装置と,
上記第1のストリーミングメディア装置内に設けられ,該第1のストリーミングメディア装置と,上記電力線に接続された少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置との間で,上記電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信回路と,
上記電力線通信回路内に設けられ,ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化又は復号するスクランブル回路と,
上記電力線通信ネットワークを介して上記ネットワーク鍵の値を通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間の物理的接続の確立に応じて,上記複数のストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記端末リストに登録する手段と,
上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に上記物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵の値とは異なるネットワーク鍵の値を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置と,
上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の値の提供によって,上記ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知する手段と,
を備える通信システム。
【請求項2】
上記第1及び第2のストリーミングメディア装置は,ビデオストリーム,オーディオストリーム又はオーディオ/ビデオストリームの組合せ用に構成されたソース装置,プレーヤ,レコーダ,カメラ及びサーバからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
上記第1のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵の値を上記第2のストリーミングメディア装置に供給する管理者モード,又は上記電力線通信ネットワークを介して通信されてくるストリーミングメディアを暗号化又は復号する際に使用する該ネットワーク鍵の値を該第2のストリーミングメディア装置から受信して保存する申込者モードで動作することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
上記管理者モードで動作する第1のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵のデフォルト値を読み出し,該デフォルト値を上記第2のストリーミングメディア装置に供給することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵の値を共有及び保存するために,共通ネットワーク鍵の値を共有していないことを検出する検出手段を更に備える請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
上記検出手段は,受信したネットワーク鍵の値が有効であり,メモリに保存されているネットワーク鍵の値と一致するかを判定する比較回路を備えることを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
上記共有ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段は,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間でネットワーク識別子を共有することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
上記共有ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段は,
直接電力線接続を確立する鍵共有回路と,
上記直接電力線接続を介して共有されるネットワーク鍵の値を保存するメモリと,
上記電力線通信ネットワーク上の上記直接電力線接続を越えて電力線通信データが通信されないように,該電力線通信データをフィルタリングする選択的電力線通信データフィルタとを備え,
上記ネットワーク鍵は,上記電力線通信ネットワークを介して配信されることなく,上記直接電力線接続を介して共有され,
上記直接電力線接続は,上記ネットワーク鍵が共有された後に,切断することができることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項9】
上記選択的電力線通信データフィルタは,上記直接電力線接続と上記電力線通信ネットワークへの接続との間の経路に選択的に挿入可能なローパスフィルタであることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
上記直接電力線接続は,上記少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置に接続された上記第1のストリーミングメディア装置の電源コンセント,又は上記第1のストリーミングメディア装置に接続された上記第2のストリーミングメディア装置の1つの電源コンセントからなり,
上記電源コンセントは,上記電力線から動作電力を供給される電源プラグ接続に接続され,
上記選択的電力線通信フィルタリングは,上記電源コンセントと上記電源プラグ接続との間に選択的に接続されることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項11】
上記ネットワーク鍵の値が,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置との間で共有されていることを示す手段を更に備える請求項1に記載の通信システム。
【請求項12】
上記共有されていることを示す手段は,光インジケータからなることを特徴とする請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
電力線通信ネットワークを介して通信する通信システムにおいて,
電力線通信ネットワークを介して,少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置とデータを通信する第1のストリーミングメディア装置と,
上記第1のストリーミングメディア装置上のマイクロプロセッサとを備え,
上記マイクロプロセッサは,
上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置とが,該第1のストリーミングメディア装置又は該第2のストリーミングメディア装置内のそれぞれの電源ソケットを介して何時相互に接続されるのかを判定し,
上記それぞれの電源ソケットと関連する電力線通信データフィルタを,登録手続中に起動し,該それぞれの電源ソケットを介して通信されるデータが上記電力線通信ネットワーク上のそれぞれの電源ソケット接続を越えて配信されることを防止し,
上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置とが互換ネットワーク鍵によって構成されるように,上記電力線通信ネットワーク上のデータの暗号化及び復号を制御するネットワーク鍵を送信及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記第1のストリーミングメディア装置の端末リストに登録し,
上記ネットワーク鍵を受信した後に,上記電力線通信データフィルタを停止し,
上記それぞれの電源ソケット接続を,その後の任意の時刻に,上記電力線通信ネットワーク接続に置き換え,
上記通信システムは,さらに,
上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に電源ソケット接続を行い,当該電源ソケット接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵とは異なるネットワーク鍵を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置を備え,
上記マイクロプロセッサは,さらに,
上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の提供によって,上記ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知することを特徴とする通信システム。
【請求項14】
電力線通信ネットワーク上の複数のストリーミングメディア装置間で通信されるストリーミングメディアの暗号化及び復号において用いられるネットワーク鍵を共有するネットワーク鍵共有方法において,
第1のストリーミングメディア装置と第2のストリーミングメディア装置との間に直接電源接続を確立するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置によって,上記第2のストリーミングメディア装置が上記直接電源接続に接続されていることを検出するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置によって,上記第2のストリーミングメディア装置が上記第1のストリーミングメディア装置と互換性があるネットワーク鍵をまだ用いていないことを判定するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置によって,電力線通信データが上記直接電源接続を越えて上記電力線通信ネットワークに通信されることを阻止するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置が,上記ネットワーク鍵を上記第2のストリーミングメディア装置に上記直接電源接続を介して送信するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置が,上記第2のストリーミングメディア装置を上記第1のストリーミングメディア装置の端末リストに登録するステップと,
鍵提供装置が,上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置へ直接電源接続を行い,当該直接電源接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵とは異なるネットワーク鍵を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供ステップと,
上記鍵提供ステップによる上記ネットワーク鍵の提供によって,上記ネットワーク鍵が変更された場合,上記第1のストリーミングメディア装置によって,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知するステップと,
上記第1のストリーミングメディア装置が,変更された上記ネットワーク鍵を,上記電力線通信ネットワークを介して,上記第2のストリーミングメディア装置送信するステップと,
を有することを特徴とするネットワーク鍵共有方法。
【請求項15】
上記第1のストリーミングメディア装置は,上記ネットワーク鍵が上記第2のストリーミングメディア装置と共有されていないときは,デフォルトのネットワーク鍵の値を有することを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項16】
上記直接電源接続は,上記第1のストリーミングメディア装置の電源コンセントからなり,該電源コンセントには少なくとも1つの他のストリーミングメディア装置からの電源コードが接続されることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項17】
上記第2のストリーミングメディア装置が直接電源接続に接続されていることを検出するステップは,上記第2のストリーミングメディア装置における電力の供給が上記第1のストリーミングメディア装置から当該第2のストリーミングメディア装置への直接電力線接続を介して行われているか,又は,上記第2のストリーミングメディア装置から上記第1のストリーミングメディア装置へ送信された電力線通信データの受信が該直接電源接続を介して行われているか,を検出することに応じて,実行されることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項18】
上記電力線通信データを阻止するステップは,上記電力線通信データコンテンツを上記第1のストリーミングメディア装置のフィルタを用いてフィルタリングすることによって実行されることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項19】
上記ネットワーク鍵の値を更新するステップは,データを通信する公開/秘密鍵メカニズムを用いることを特徴とする請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。
【請求項20】
上記第1のストリーミングメディア装置によって,上記電力線通信データを上記直接電力線接続を越えて上記電力線通信ネットワークに通信するステップを更に有する請求項14に記載のネットワーク鍵共有方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)新規事項
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,平成19年4月20日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文,及び,国際出願の願書に添付された図面(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。

補正後の請求項1に,
「上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に上記物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵の値とは異なるネットワーク鍵の値を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置と,
上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の値の提供によって」(下線は,当審にて,説明の都合上附加したものである。以下,同じ),
補正後の請求項13に,
「上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に電源ソケット接続を行い,当該電源ソケット接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵とは異なるネットワーク鍵を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置を備え,
上記マイクロプロセッサは,さらに,
上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の提供によって」,
補正後の請求項14に,
「鍵提供装置が,上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置へ直接電源接続を行い,当該直接電源接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵とは異なるネットワーク鍵を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供ステップ」,
と記載されているが,当初明細書等には,「鍵提供装置」という記載は存在しない。
そこで,「鍵提供装置」という構成が,当初明細書等の記載内容から読み取れるか,以下に検討する。
当初明細書等の段落【0059】に,
「図6は複数管理者の例110を示したものである。PLC装置112,114及び116は電力線18に接続されている。PLC装置116は,ソケット118を有する管理者装置である。装置120のような追加の管理者を,その入力接続をソケット118に接続することにより登録することができる。管理者120のソケット122へのマスタ管理者116の電源プラグ26が,マスタ管理者のNID及びNKを,新しい管理者により(すなわち,デフォルト又は別に決定された値により)提供されるNID及びNKにリセットし,それにより,マスタ管理者116の暗号化/復号が変更され,マスタ管理者116により登録された装置との通信ができないことは明らかである。この状況を避けるために,マスタ管理者は好ましくはPLC装置112,114のNID及びNKを更新するように構成されている。これを実現するために,マスタ管理者116は,自身に登録済みの端末のリストを利用することができる(図5の管理者のメモリ72内の「登録済み装置リスト」を参照)。マスタ管理者は,リストに記載された各端末に,NID及びNDが更新され,その公開鍵が要求されることを示した通知を送る。マスタ管理者はその後に新しいNID及びNDを公開鍵により暗号化し,自身の秘密鍵により復号を行う各端末に送る。このようにして,新しいNID及びNDがリストに記載された端末だけに安全に配信される。」
と記載されている。上記引用の段落【0059】の記載における,特に下線を附した箇所に記載された内容によれば,“マスタ管理者116のNIDとNKを更新するのは,追加の管理者120であり,前記管理者120の電源ソケット122と,前記マスタ管理者116の電源プラグとを直結することによって,前記管理者120が,前記マスタ管理者116のNIDとNKを更新する”ものであると解される。
即ち,当初明細書等の記載に従えば,“マスタ管理者の鍵を更新するものは,追加の管理者である”。
そして,当初明細書等の記載においては,「管理者」とは,当初明細書等の段落【0042】に記載された内容から,「管理者は、PLC対応装置と接続が確立されたことを認識し、PLCネットワークの新しい装置の認証及び登録処理を開始する」機能を有するものであると解される。
一方,補正後の請求項1,及び,請求項13,並びに,請求項14に記載された「鍵提供装置」は,その表現から,単に,“鍵を提供するだけの装置”という態様を含むことは明らかである。
よって,当初明細書等の記載された「管理者」と,補正後の請求項1,及び,請求項13,並びに,請求項14に記載された「鍵提供装置」とが同一のものであるとは認められない。
以上検討したとおり,補正後の請求項1,請求項13,並びに,請求項14に記載された「鍵提供装置」は,当初明細書等の記載されたものではない。
よって,本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。

したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)目的要件
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」において検討したとおり,
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとして,
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,特許法第17条の2第4項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

本件手続補正は,補正前の請求項1に,
「上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に上記物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵の値とは異なるネットワーク鍵の値を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置」,
という新たな構成要素附加し,それに伴い,補正前の請求項1における,
「上記ネットワーク鍵が変更された場合」を,
「上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の値の提供によって,上記ネットワーク鍵が変更された場合」と補正し,
補正前の請求項13に,
「上記通信システムは,さらに,上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に電源ソケット接続を行い,当該電源ソケット接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵とは異なるネットワーク鍵を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置を備え」,
という新たな構成を附加し,それに伴い,補正前の請求項13における,
「上記ネットワーク鍵が変更された場合」を,
「上記マイクロプロセッサは,さらに,上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の値の提供によって,上記ネットワーク鍵が変更された場合」と補正し,
補正前の請求項14に,
「鍵提供装置が,上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置へ直接電源接続を行い,当該直接電源接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵とは異なるネットワーク鍵を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供ステップ」,
という新たなステップを附加し,それに伴い,補正前の請求項14における,
「上記ネットワーク鍵が変更された場合」を,
「上記鍵提供ステップによる上記ネットワーク鍵の提供によって,上記ネットワーク鍵が変更された場合」と補正するものである。

上記補正内容について検討する。
補正前の請求項1において,「ネットワーク鍵」は,
「第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間の物理的接続の確立に応じて,上記複数のストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記端末リストに登録する手段」,
という記載内容から,
“ネットワーク鍵を提供する第1のストリーミングメディア装置と,該鍵を受け取る第2のストリーミングメディア装置との間で,共有及び保存されるもの”であり,上記引用の「複数のストリーミングメディア装置」とは,「第1のストリーミングメディア装置」,及び,「第2のストリーミングメディア装置」を指すものと解される。
一方,補正後の請求項1に記載の「鍵提供装置」は,「第1のストリーミングメディア装置」,「第2のストリーミングメディア装置」の何れとも異なるものであるから,上記で指摘の補正前の請求項1に記載の,
“ネットワーク鍵を提供する第1のストリーミングメディア装置と,該鍵を受け取る第2のストリーミングメディア装置との間で,共有及び保存される”操作とは何ら関係していないことは明らかである。
即ち,「鍵更新装置」とは,「第1のストリーミングメディア装置」の“鍵を更新するための装置”を新たに附加するものであって,補正前の請求項1に記載された,何れの発明特定事項を限定するものでもない。
よって,本件手続補正における,補正前の請求項1に対する補正は,限定的減縮を目的としたものとは認められない。
また,原査定の拒絶理由においては,“ネットワーク鍵の変更”が不明であるとの指摘はしていないので,明瞭でない記載の釈明を目的のしたものでないこと,また,請求項の削除,誤記の訂正を目的としたものでないことも明らかである。
補正前の請求項13,及び,請求項14に対する,本件手続補正の内容もついても同等である。

以上検討したとおりであるから,本件手続補正は,
請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れの目的にも該当していない。

したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」において検討したとおり,
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとしても,上記「(2)目的要件」において検討したとおり,
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされ,補正の目的要件を満たすものであるとして,
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

ア.36条6項1号について
補正後の請求項1,請求項13,及び,請求項14に
「鍵提供装置」と記載されているが,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面には,「鍵提供装置」は記載されておらず,“鍵を提供する機能のみ”を有する装置を含む,「鍵提供装置」が,本願明細書の発明の詳細な説明の記載内容から,当業者にとって自明の事項とは認められない。
よって,補正後の請求項1,請求項13,及び,請求項14に係る発明,及び,補正後の請求項1,請求項13,及び,請求項14を直接・間接に引用する請求項に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

イ.36条4項1号について
補正前の請求項1,請求項13,及び,請求項14に記載された「鍵提供装置」に関して,
本願明細書の発明の詳細な説明には,上記「(1)新規事項」で引用した,本願明細書の段落【0059】に記載された内容が存在しているが,上記「(1)新規事項」において検討したとおり「マスター管理者」の「NK」を変更しているのは,「追加の管理者」であって,該「追加の管理者」は,「NK」を提供することのみ行うものでないことは,本願明細書の記載内容からは明らかであるから,該「追加の管理者」は,「鍵提供装置」とは言い得ないものである。
即ち,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容からは,「鍵提供装置」が,どのようなもので,該「鍵提供装置」がどのようにして,「ネットワーク鍵」の変更を実現しているか不明である。
以上のとおりであるから,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでない。

ウ.29条2項について
(ア)本件補正発明
上記ア.,及びイ.において検討したとおり,補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,発明の詳細な説明な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものではないが,一応,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した記載のとおりのものとして,以下の検討を行う。

(イ)引用刊行物に記載の発明
一方,原審が,平成23年4月27日付の拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2002-352365号公報(2002年12月6日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0017】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)本実施形態は,図1に示すように,商用電源の電力線Lpに接続される送信機1と受信機2とを1対1に対応付けるものである。送信機1および受信機2と電力線Lpとの接続には,図2に示すように,コンセント3に差込可能なプラグ4を用いる。送信機1とプラグ4との間,受信機2とプラグ4との間はそれぞれ電源コード5を介して接続される。図2では,送信機1と受信機2とは,それぞれプラグ4とは別に設けた器体を備える例を示しているが,送信機1と受信機2とを構成する回路部は,それぞれプラグ4の器体に収納することが可能であり,またプラグ4とは別に設けた器体とプラグ4の器体とに分割して収納することも可能である。送信機1および受信機2の電源は電力線Lpから供給される。しかして,送信機1および受信機2はコンセント3の近傍箇所であれば,任意の場所に配置することが可能になる。
【0018】送信機1にはスイッチあるいはセンサからの発報信号を受ける入力部11が設けられ,発報信号が電力線Lpを介して受信機2に転送されることにより,受信機2に設けた報知部21において発報信号に対応した報知を行う。発報信号を発生するスイッチあるいはセンサは目的に応じて選択され,たとえば,次のようなものが用いられる。」

B.「【0021】送信機1には,不揮発性メモリからなる送信機側記憶部としての記憶部12が設けられ,記憶部12には暗号キーが格納される。暗号キーは,送信機側通信部である赤外線通信部13を通して外部装置から赤外線信号により入力され,マイクロコンピュータからなる送信機主処理部10を通して記憶部12に格納される。送信機主処理部10では,入力部11が発報信号を受けると記憶部12に格納された暗号キーを用いて発報信号に対応する暗号化データを生成し,この暗号化データを送信機側電力線モデム部である電力線モデム部14に転送する。電力線モデム部14は,電源周波数よりも高い搬送波を,送信機主処理部10からの暗号化データにより変調して伝送信号に変換する。つまり,電力線モデム部14では暗号化データを電力線Lpに送出可能な伝送信号に変換して電力線Lpに送出する。
【0022】一方,受信機2は,送信機1と同様に,不揮発性メモリからなる受信機側記憶部としての記憶部22を備え,記憶部22には暗号キーが格納される。記憶部22に格納される暗号キーは,受信機側通信部である赤外線通信部23を通して外部装置から赤外線信号により入力され,マイクロコンピュータからなる受信機主処理部20を通して記憶部22に格納される。また,受信機主処理部20と電力線Lpとの間には,受信側電力線モデム部である電力線モデム部24が介装される。電力線モデム部24では,電力線Lpを伝送される伝送信号を分離して暗号化データを抽出し,暗号化データを受信機主処理部20に引き渡す。受信機主処理部20では記憶部22に格納されている暗号キーを用いることによって,暗号化データを復号化し,発報信号に相当する情報を抽出する。抽出された発報信号は報知部21に送出され,報知部21により発報信号の発生を報知する。」

C.「【0027】(第2の実施の形態)上述の構成では,工場出荷時に送信機1と受信機2との記憶部12,22にそれぞれ暗号キーを登録している例を示したが,送信機1と受信機2との一方にのみ設定器による暗号キーの設定を行い,他方については設定器を用いるずに,送信機1と受信機2との赤外線通信部13,23間で通信可能とすることにより,暗号キーを設定した一方から他方へ暗号キーを転送して登録させることが可能である。
【0028】いま,受信機2に暗号キーが設定されているものとする。また,送信機1と受信機2との間での赤外線信号の授受を開始させるトリガスイッチが送信機1と受信機2との一方に設けられているものとする。ここで,送信部1と受信部2との赤外線通信部13,23を対向させてトリガスイッチを投入すれば,赤外線通信部13,23を通して受信機2に設定されている暗号キーが送信機1における記憶部12に格納され,送信機1と受信機2とに同じ暗号キーを設定することが可能になる。他の構成および動作は第1の実施の形態と同様である。」

D.「【0029】(第3の実施の形態)上述した実施形態では,暗号キーを記憶部12,22に書き込むために,専用の設定器から赤外線信号を送信するようにしていたが,赤外線通信部13,23に代えてRS232C規格などのシリアルポートのコネクタを備える通信部を設けてもよい。つまり,暗号キーを書き込むための設定器を有線で接続してもよい。たとえば,設定器としてパーソナルコンピュータを用いるとすれば,設定器と送信機1ないし受信機2とをケーブルによって容易に接続することが可能になり,汎用の装置を用いて暗号キーの設定が容易になる。他の構成および動作は第1の実施の形態と同様である。」

(イ)-1.
上記Aの「商用電源の電力線Lpに接続される送信機1と受信機2とを1対1に対応付けるものである」という記載,及び,上記Aの「送信機1にはスイッチあるいはセンサからの発報信号を受ける入力部11が設けられ,発報信号が電力線Lpを介して受信機2に転送されることにより,受信機2に設けた報知部21において発報信号に対応した報知を行う」という記載から,引用刊行物1には,
“電力線Lpを介して発報信号を転送する通信システム”が記載されていることが読み取れる。
また,上記Aの「送信機1および受信機2の電源は電力線Lpから供給される」という記載から,
引用刊行物1に記載の「送信機1」,及び,「受信機2」は,
“電力線Lpに接続され,電力線Lpから電源が供給される”ことが読み取れる。

(イ)-2.
上記Bの「送信機1には,不揮発性メモリからなる送信機側記憶部としての記憶部12が設けられ,記憶部12には暗号キーが格納される」という記載から,
引用刊行物1に記載の「送信機1」には,
“暗号キーが格納される,送信機側記憶部”が設けられていることが読み取れ,
上記Bの「送信機主処理部10では,入力部11が発報信号を受けると記憶部12に格納された暗号キーを用いて発報信号に対応する暗号化データを生成し,この暗号化データを送信機側電力線モデム部である電力線モデム部14に転送する」という記載から,
引用刊行物1に記載の「送信機1」には,
“発報信号を,送信機側記憶部に格納された暗号キーを用いて暗号化する送信機主処理部”が設けられていることが読み取れ,更に,上記Bの「電力線モデム部14は,電源周波数よりも高い搬送波を,送信機主処理部10からの暗号化データにより変調して伝送信号に変換する。つまり,電力線モデム部14では暗号化データを電力線Lpに送出可能な伝送信号に変換して電力線Lpに送出する」という記載,及び,上記Bの「一方,受信機2は,・・・電力線モデム部24では,電力線Lpを伝送される伝送信号を分離して暗号化データを抽出し,暗号化データを受信機主処理部20に引き渡す」という記載から,
“電力線Lpに接続された受信機2との間で,暗号化された発報信号を通信すること”は明らかであるから,
引用刊行物1に記載の「送信機1」は,
“電力線Lpに接続された受信機2との間で,暗号化データを通信するために,前記暗号化データを電力線Lpに送出可能な伝送信号に変換して電力線Lpに送出する電力線モデム部”が設けられていることが読み取れる。

(イ)-3.
上記Cの「送信機1と受信機2との一方にのみ設定器による暗号キーの設定を行い,他方については設定器を用いるずに,送信機1と受信機2との赤外線通信部13,23間で通信可能とすることにより,暗号キーを設定した一方から他方へ暗号キーを転送して登録させることが可能である」という記載から,
引用刊行物1に記載のシステムにおいては,
“送信機1に設定された暗号キーを,電力線Lpを介すことなく,受信機2に赤外線通信を用いて通信する赤外線通信部”が設けられていることが読み取れる。

(イ)-4.
上記Dの「暗号キーを書き込むための設定器を有線で接続してもよい。たとえば,設定器としてパーソナルコンピュータを用いるとすれば,設定器と送信機1ないし受信機2とをケーブルによって容易に接続することが可能になり,汎用の装置を用いて暗号キーの設定が容易になる」という記載から,
引用刊行物1に記載のシステムが,
“送信機1にケーブルによる有線接続によって暗号キーを書き込むための設定器”を有する態様を取り得ることが読み取れる。

以上,(イ)-1.?(イ)-4.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されていると認める。

“電力線Lpを介して発報信号を転送する通信システムであって,
電源が供給される電力線Lpに接続された送信機1と,
上記送信機1に設けられた暗号キーが格納される,送信機側記憶部と,
発報信号を,送信機側記憶部に格納された暗号キーを用いて暗号化する送信機主処理部と,
電力線Lpに接続された受信機2との間で,暗号化データを通信するために,前記暗号化データを電力線Lpに送出可能な伝送信号に変換して電力線Lpに送出する電力線モデム部と,
送信機1に設定された暗号キーを,電力線Lpを介すことなく,受信機2に赤外線通信を用いて通信する赤外線通信部と,
送信機1にケーブルによる有線接続によって暗号キーを書き込むための設定器と
を備える通信システム。”

(ウ)本件補正発明と引用発明との対比
(ウ)-1.
引用発明における「電力線Lp」は,該「電力線Lp」を介して「送信機1」から「受信機2」に「発報信号」が送信されるものであるから,本件補正発明における「電力線通信ネットワーク」に相当するので,
引用発明における「電力線Lpを介して発報信号を転送する通信システム」と,
本件補正発明における「電力線通信ネットワークを介してストリーミングメディアを通信する通信システム」とは,
“電力線通信ネットワークを介してデータを通信する通信システム”である点で共通する。

(ウ)-2.
引用発明における「送信機1」と,「受信機2」は,共に,「電源が供給される電力線Lp」に接続され,「発報信号」を送受する関係にあるものであるから,本件補正発明における「第1のストリーミングメディア装置」と,「第2のストリーミングメディア装置」と,
“動作電力が供給される電力線に接続され,電力線を介してデータを授受する第1装置,及び,第2装置”である点で共通する。
したがって,引用発明における「電源が供給される電力線Lpに接続された送信機1」と,
本件補正発明における「端末リストを有し,動作電力が供給される電力線に接続された第1のストリーミングメディア装置」とは,
“動作電力が供給される電力線に接続された第1装置”である点で共通する。

(ウ)-3.
引用発明における「電力線モデム部」は,「送信機1」に設けられ,「送信機1」から,「受信機2」へ,「暗号化データ」を通信するために,該「暗号化データ」を「電力線Lp」に送出するものであるから,
本件補正発明における「上記第1のストリーミングメディア装置内に設けられ,該第1のストリーミングメディア装置と,上記電力線に接続された少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置との間で,上記電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信回路」と,
“第1装置内に設けられ,該第1装置と,電力線に接続された第2装置との間で,電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信手段”である点で共通する。

(ウ)-4.
引用発明における「送信機主処理部」は,「発報信号」,即ち,“データ”を暗号キーを用いて暗号化するものであり,
引用発明における「暗号キー」は,
本件補正発明における「ネットワーク鍵」,及び,「ネットワーク鍵の値」に相当するものであることは明らかであるから,
引用発明における「発報信号を,送信機側記憶部に格納された暗号キーを用いて暗号化する送信機主処理部」と,
本件補正発明における「上記電力線通信回路内に設けられ,ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化又は復号するスクランブル回路」とは,
“ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化する手段”である点で共通する。

(ウ)-5.
引用発明における「赤外線通信部」は,“送信機1に設定された暗号キーを,受信機2に,電力線Lpを介することなく,送信する”ために用いるものであり,該「暗号キー」は,上記Bに引用の記載に,「受信機2は,送信機1と同様に,不揮発性メモリからなる受信機側記憶部としての記憶部22を備え,記憶部22には暗号キーが格納される」と有るように,「受信機2」にも「格納される」ものであるから,
引用発明における「送信機1に設定された暗号キーを,電力線Lpを介すことなく,受信機2に赤外線通信を用いて通信する赤外線通信部」及び,「送信機1に設けられた暗号キーが格納される,送信機側記憶部」と,
本件補正発明における「上記電力線通信ネットワークを介して上記ネットワーク鍵の値を通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間の物理的接続の確立に応じて,上記複数のストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記端末リストに登録する手段」とは,
“電力線通信ネットワークを介して,ネットワーク鍵の値を通信することなく,第1装置と第2装置間の接続の確立に応じて,第1装置,第2装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段”である点で共通する。

(ウ)-6.
引用発明における「設定器」は,「送信機1」に,「有線接続」を用いて「暗号キー」を書き込むものであり,
引用発明における「有線接続」は,
本件補正発明における「物理的接続」に相当するものであるから,
引用発明における「送信機1にケーブルによる有線接続によって暗号キーを書き込むための設定器」と,
本件補正発明における「上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に上記物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵の値とは異なるネットワーク鍵の値を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置」とは,
“電力線通信ネットワークを介して通信することなく,第1装置に物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,ネットワーク鍵の値を,第1装置に提供する鍵提供手段”である点で共通する。

以上(ウ)-1.?(ウ)-6.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
電力線通信ネットワークを介してデータを通信する通信システムのおいて,
動作電力が供給される電力線に接続された第1装置と,
第1装置内に設けられ,該第1装置と,電力線に接続された第2装置との間で,電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信手段と,
ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化する手段と,
電力線通信ネットワークを介して,ネットワーク鍵の値を通信することなく,第1装置と第2装置間の接続の確立に応じて,第1装置,第2装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段と,
電力線通信ネットワークを介して通信することなく,第1装置に物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,ネットワーク鍵の値を,第1装置に提供する鍵提供手段と,
を備える通信システム。

[相違点1]
“電力線通信ネットワークを介してデータを通信する通信システム”に関して,
本件補正発明においては,「ストリーミングメディアを通信する」ものであるのに対して,
引用発明においては,通信されるのは「発報信号」であって,「ストリーミングメディア」を通信するものではない点。

[相違点2]
“第1装置”に関して,
本件補正発明においては,「第1のストリーミングメディア装置」であるのに対して,
引用発明においては,「送信機1」が,「ストリーミングメディア装置」であることについては,言及されていない点。

[相違点3]
“第1装置”に関して,更に,
本件補正発明においては,「第1のストリーミングメディア装置」が,「端末リストを有」しているのに対して,
引用発明においては,「送信機1」が,「受信機2」の「リスト」を有することについては,言及されていない点。

[相違点4]
“電力線通信手段”に関して,
本件補正発明においては,「第1のストリーミングメディア装置」と,「第2のストリーミングメディア装置」との間のデータ通信であるのに対して,
引用発明においては,「送信機1」と,「受信機2」との間のデータ通信であって,「ストリーミングメディア装置」間のデータ通信であることが示されていない点。

[相違点5]
“暗号化する手段”に関して,
本件補正発明においては,「スクランブル回路」は,「電力線通信回路内」に設けられているのに対して,
引用発明においては,「電力線モデム部」と,「送信機主処理部」とは,別構成であって,「電力線モデム部」内に,「送信機主処理部」が存在する構成については,言及されていない点。

[相違点6]
“第1装置,第2装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段”に関して,
本件補正発明においては,“ストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,第2のストリーミングメディア装置を端末リストに登録する手段”であるのに対して,
引用発明においては,“受信機2のリストを登録する”ことに関しては,言及されていない点。

[相違点7]
“第1装置と第2装置間の接続の確立に応じて”に関して,
本件補正発明においては,「物理的接続の確立に応じて」であるのに対して,
引用発明においては,「赤外線通信を用いて」,「送信機1」と,「受信機2」の接続を確立するものあって,「物理的接続」とまでは言えない点。

[相違点8]
“鍵提供手段”に関して,
本件補正発明においては,「鍵提供装置」は,“上記ネットワーク鍵の値とは異なるネットワーク鍵の値を第1のストリーミングメディア装置に提供する”,即ち,“ネットワーク鍵の更新を提供する”ものであるのに対して,
引用発明における「設定器」が,“鍵の更新を行う”点に関しては,言及されていない点。

[相違点9]
本件補正発明は,“鍵提供装置によるネットワーク鍵の値の提供によって,ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,端末リストに登録されている第2のストリーミングメディア装置へ電力線通信ネットワークを介して通知する手段”を有するのに対して,
引用発明においては,そのような「通知手段」については,言及されていない点。

(エ)相違点についての当審の判断
(エ)-1.[相違点1],[相違点2],及び,[相違点4]について
原審拒絶理由に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第02/087105号(2002年10月31日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)に,

E.「SSD 10 may be employed for other uses as well. For example, SSD 10 may be employed to directly connect to a powerline modem enabled device using a full bandwidth of the modem (instead of sharing bandwidth with other devices on the powerline network). In addition, using the full bandwidth avoids impairments on a main powerline network. These advantages may be employed to, for example, quickly download audio, video, computer programs or other data onto a device. In one embodiment, software in a device 22 may be updated (e.g., user programs or device drivers) by downloading data or programs from memory 18 onto a device 22. 」(10頁12行?19行)
(【0030】
セキュリティ同期デバイス(SSD)10は他の用途に利用することもできる。例えば,セキュリティ同期デバイス(SSD)10を利用して,モデムの全帯域幅を使用する電力線モデム対応デバイスに直接に接続することができる(電力線回路網上の他のデバイスと帯域幅を共有するのではなく)。更に,全帯域幅を使用することで,主要な電力線回路網上の障害が回避される。これらの利点を利用して,例えば,音声,ビデオ,コンピュータ・プログラム,またはその他のデータをデバイスに高速にダウンロードすることができる。一実施例では,データまたはプログラムをメモリ18からデバイス22にダウンロードすることにより,デバイス22中のソフトウェア(例えば,ユーザー・プログラムやデバイス・ドライバ)を更新することができる。<国際公開第02/087105号のファミリーである特表2004-536490号公報の上記英文引用箇所に対応する箇所より引用>)

と記載されていて,
“電力線を介して,音声,ビデオ等をダウンロードする”ことは,本願の第1国出願前に既に公知の技術事項であり,該“音声,ビデオ”といったデータが,“メディアデータ”であること,“ビデオ”といったデータは,“ストリーミング送信”されることは,当業者にとって周知の技術事項であり,このとき,該“メディアデータ”を送信,或いは,受信する装置は,「ストリーミングメディア装置」と言い得るものであるから,
引用発明においても,送信するデータとして,「ストリーミングメディア」データを採用し,送信機1,及び,受信機2を「ストリーミングメディア装置」とし,「電力線通信ネットワーク」を介して,該「ストリーミングメディア」データを送受するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点1,相違点2,及び,相違点4は,格別のものではない。

(エ)-2.[相違点3],及び,[相違点6]について
オーディオ・ビデオ機器等の分野において,接続されている機器の「リスト」を持つことは,例えば,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平10-117332号公報(1998年5月6日公開,以下,これを「周知文献1」という)の段落【0042】に,

F.「また管理データメモリ180は,現在どのような機器がネットワークに接続されているかを把握し,各機器の各種情報を記憶するためのメモリである。この管理データメモリ180を有することにより,現在どのような機器が接続されているかを把握することができる。この把握のために例えば,ディスプレイ600にその接続機器リストを表示することができる。」

と記載され,或いは,同じく,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2002-252882号公報(2002年9月6日公開,以下,これを「周知文献2」という)の段落【0017】に,

G.「ホームゲートウェイサーバ12は,図2に示すように,家庭内機器情報12aと,自己の電子証明書12b,宅外機器情報12cを有しており,通信や制御の際にこれら情報を利用する。家庭内機器情報12aは,接続機器リスト,接続機器のオンオフ情報,機器毎の操作についての操作情報,誰にアクセスを許可するかという許アクセス権情報などがある。」

と記載されているように,本願の第1国出願前に,当業者にとっては周知の技術事項であり,また,接続時に機器を登録する点についても,例えば,本願の出願前に既に公知である,特開平11-328081号公報(1999年11月30日公開,以下,これを「周知文献3」という)に,

H.「【0039】なお,・・・(中略)・・・新規デバイスが接続されたとの情報を受け取ったときには,この新規デバイスの・・・(中略)・・・接続機器の登録を迅速に行うことが可能となる。」

と記載されてもいるように,当業者にとっては周知の技術事項であるから,
引用発明においても,「送信機1」に,「受信機2」を,赤外線,或いは,有線を介して接続した際に,「送信機1」のリストに「受信機2」を“登録”するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点3,及び,相違点6は,格別のものではない。

(エ)-3.[相違点5]について
引用発明においては,「暗号化」機能は,「送信機主処理部」に設けられているが,「暗号化」機能を,別回路構成とすることは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であり,したがって,該機能を,引用発明における「電力モデム部」内に構築することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点5は,格別のものではない。

(エ)-4.[相違点7]について
上記Dに記載されているように,引用発明において,「送信機1」に,「暗号キー」を設定する「設定器」と,「送信機1」との間の接続を,「赤外線」に替えて,「RS232C」等の“有線接続”とすることが示されており,該“有線接続”は,正しく,「物理的接続」である。
そして,引用発明において,「設定器」と,「送信機1」間の“赤外線接続”が,「物理的接続」である,“有線接続”に置換可能である以上,「送信機1」と,「受信機2」との間の“赤外線接続”も同様に,「物理的接続」である,“有線接続”に置換可能であることは明らかである。
よって,相違点7は,格別のものではない。

(エ)-5.[相違点8],及び,[相違点9]について
鍵を更新すること自体は,原審が平成23年8月26日付けの拒絶査定において指摘した周知技術文献であって,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2002-118546号公報(2002年4月19日公開,以下,これを「周知文献4」という)に,

I.「【0006】本発明は,上記課題を解決するためになされたもので,その主たる目的は,公開鍵と秘密鍵をもつ受信側装置で自装置の公開鍵を更新した場合に,更新前の公開鍵を利用している送信側装置(公開鍵利用者)に対して迅速かつ確実に更新後の公開鍵を配信できるようにすることにある。」

と記載され,或いは,本願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第2002/093826号(2002年11月21日公開,以下,これを「周知文献5」という)に,

J.「<共有鍵更新>
共有鍵更新手段108は,すでに暗号化して送信された共有鍵と異なる新たな共有鍵を生成する。」(9頁19行?21行)

と記載されてもいるように,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であり,“鍵の更新を通知する”点についても,周知文献4に,

K.「【0026】先ず,受信側装置が新たな公開鍵と秘密鍵のペアを生成し,これによって自装置が保持する公開鍵を更新すると,上記管理手段が管理する公開鍵利用者テーブルを参照する(ステップS21,S22)。次に,その時点で公開鍵利用者テーブルに登録されている公開鍵利用者全員のアドレス情報(メールアドレス)を取得することにより,自装置の公開鍵を利用している利用者全員を特定する(ステップS23)。その後,ステップS23で特定した公開鍵利用者全員のメールアドレスを宛先指定して,先に更新された公開鍵をメッセージとして配信する(ステップS24)。これにより,受信側装置の公開鍵を利用している全ての公開鍵利用者に対して,更新された公開鍵を確実に配信することができる。」

と記載され,周知文献5に,

L.「第二に,共有鍵を更新できるようにし,また,共有鍵の更新の通知を送ることができなかった電子機器に後で更新の通知を送るようにするために,共有鍵更新手段と電子機器登録部を電子機器制御装置に備え,電子機器側に共有鍵更新手段を備えた。これにより,共有鍵を更新することができ,コピー攻撃を困難にすることができる。」(7頁23行?26行)

と記載されているように,“鍵の更新を通知すべき相手が登録された登録情報に基づいて,該鍵の更新を通知する”ことは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であり,周知文献4は,公開鍵,周知文献5は,共有鍵を暗号化したものが通知情報となっているが,周知文献4,周知文献5に記載の周知技術の構成からすれば,該通知情報を,“鍵が更新された”という情報のみにし得ることは明らかである。
そして,引用発明における「設定器」は,「送信機1」に,「暗号キー」の設定ができるものであり,一度,「暗号キー」を設定後に,再び,異なる「暗号キー」を設定するよう構成し得ることは明らかであるから,引用発明において,
「送信機1」の「暗号キー」を,「有線接続」によって接続された「設定器」を用いて更新し,該更新したことを「電力線Lp」に接続された「受信機2」に対して,「送信機1」の有する「受信機2」の“接続リスト”に基づいて通知するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点8,及び,相違点9は,格別のものではない。

上記で検討したごとく,相違点1?9はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

よって,本件補正発明は,特許法第36条第4項第1号,及び,第6項第1号に規定する要件を満たしていないので特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また,仮に,上記の要件を満たすものであるとしても,
本件補正発明は,引用発明,及び,引用刊行物2に記載の発明,並びに,周知文献1?周知文献5に記載の如き周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって,本件補正発明は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下むすび
以上検討したとおり,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとしても, 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされ,補正の目的要件を満たすものであるとしても,
本件補正発明は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成24年1月5日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成23年8月9日付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「電力線通信ネットワークを介してストリーミングメディアを通信する通信システムにおいて,
端末リストを有し,動作電力が供給される電力線に接続された第1のストリーミングメディア装置と,
上記第1のストリーミングメディア装置内に設けられ,該第1のストリーミングメディア装置と,上記電力線に接続された少なくとも1つの第2のストリーミングメディア装置との間で,上記電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信回路と,
上記電力線通信回路内に設けられ,ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化又は復号するスクランブル回路と,
上記電力線通信ネットワークを介して上記ネットワーク鍵の値を通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置と上記第2のストリーミングメディア装置間の物理的接続の確立に応じて,上記複数のストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,上記第2のストリーミングメディア装置を上記端末リストに登録する手段と,
上記ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,上記端末リストに登録されている上記第2のストリーミングメディア装置へ上記電力線通信ネットワークを介して通知する手段と,
を備える通信システム。」

第4.引用刊行物に記載の発明
原審拒絶理由で引用された,特開2002-352365号公報(引用刊行物1)には,上記「第2.平成24年1月5日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「ウ.29条2項について」の「(イ)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの発明(引用発明)が記載されている。

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成24年1月5日付けの手続補正の却下の決定」において検討した,本件補正発明から,「上記電力線通信ネットワークを介して通信することなく,上記第1のストリーミングメディア装置に上記物理的接続を行い,当該物理的接続の確立に応じて,上記ネットワーク鍵の値とは異なるネットワーク鍵の値を上記第1のストリーミングメディア装置に提供する鍵提供装置と,上記鍵提供装置による上記ネットワーク鍵の値の提供によって」という構成を取り除いたものであるから,
本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
電力線通信ネットワークを介してデータを通信する通信システムのおいて,
動作電力が供給される電力線に接続された第1装置と,
第1装置内に設けられ,該第1装置と,電力線に接続された第2装置との間で,電力線通信ネットワークとして動作する該電力線を介してデータを通信する電力線通信手段と,
ネットワーク鍵の値に応じてデータを暗号化する手段と,
電力線通信ネットワークを介して,ネットワーク鍵の値を通信することなく,第1装置と第2装置間の接続の確立に応じて,第1装置,第2装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段と,
を備える通信システム。

[相違点a]
“電力線通信ネットワークを介してデータを通信する通信システム”に関して,
本願発明においては,「ストリーミングメディアを通信する」ものであるのに対して,
引用発明においては,通信されるのは「発報信号」であって,「ストリーミングメディア」を送信するものではない点。

[相違点b]
“第1装置”に関して,
本願発明においては,「第1のストリーミングメディア装置」であるのに対して,
引用発明においては,「送信機1」が,「ストリーミングメディア装置」であることについては,言及されていない点。

[相違点c]
“第1装置”に関して,更に,
本願発明においては,「第1のストリーミングメディア装置」が,「端末リストを有」しているのに対して,
引用発明においては,「送信機1」が,「受信機2」の「リスト」を有することについては,言及されていない点。

[相違点d]
“電力線通信手段”に関して,
本願発明においては,「第1のストリーミングメディア装置」と,「第2のストリーミングメディア装置」との間のデータ通信であるのに対して,
引用発明においては,「送信機1」と,「受信機2」との間のデータ通信であって,「ストリーミングメディア装置」間のデータ通信であることが示されていない点。

[相違点e]
“暗号化する手段”に関して,
本願発明においては,「スクランブル回路」は,「電力線通信回路内」に設けられているのに対して,
引用発明においては,「電力線モデム部」と,「送信機主処理部」とは,別構成であって,「電力線モデム部」内に,「送信機主処理部」が存在する構成については,言及されていない点。

[相違点f]
“第1装置,第2装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存する手段”に関して,
本願発明においては,“ストリーミングメディア装置間で共通ネットワーク鍵の値を共有及び保存するとともに,第2のストリーミングメディア装置を端末リストに登録する手段”であるのに対して,
引用発明においては,“受信機2のリストを登録する”ことに関しては,言及されていない点。

[相違点g]
“第1装置と第2装置間の接続の確立に応じて”に関して,
本願発明においては,「物理的接続の確立に応じて」であるのに対して,
引用発明においては,「赤外線通信を用いて」,「送信機1」と,「受信機2」の接続を確立するものあって,「物理的接続」とまでは言えない点。

[相違点h]
本願発明は,“ネットワーク鍵が変更された場合,当該変更を,端末リストに登録されている第2のストリーミングメディア装置へ電力線通信ネットワークを介して通知する手段”を有するのに対して,
引用発明においては,そのような「通知手段」については,言及されていない点。

第6.相違点についての当審の判断
本願発明と,引用発明との[相違点a]?[相違点g]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]?[相違点7]と同一であり,本願発明と,引用発明との[相違点h]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点9]とほぼ同等であるから,上記「第2.平成24年1月5日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「ウ.29条2項について」の「(エ)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,何れの相違点も,格別のものではない。

そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の第1国出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-13 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-30 
出願番号 特願2007-528082(P2007-528082)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 573- Z (H04L)
P 1 8・ 572- Z (H04L)
P 1 8・ 571- Z (H04L)
P 1 8・ 574- Z (H04L)
P 1 8・ 561- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 信行  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 石井 茂和
辻本 泰隆
発明の名称 通信システム、通信方法及びネットワーク鍵共有方法  
代理人 須田 洋之  
代理人 大塚 文昭  
代理人 山崎 貴明  
代理人 熊倉 禎男  

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