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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1284909
審判番号 不服2011-27656  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-22 
確定日 2014-02-20 
事件の表示 特願2002-500960「セキュアな、暗号化PINパッド」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 6日国際公開、WO01/92349,平成16年 4月15日国内公表,特表2004-511926〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2001年5月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年5月31日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成15年1月29日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成20年5月26日付けで審査請求がなされ,平成23年3月4日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成23年7月19日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成23年8月19日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成23年12月22日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成24年2月16日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成24年8月29日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ,平成25年2月28日付けで回答書の提出があったものである。

第2.平成23年12月22日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年12月22日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成23年12月22日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成23年7月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】 識別子を暗号化する装置であって:
識別子を入力するためのパッドと;
前記パッドに隣接し,前記入力された識別子を暗号化するための暗号化回路と;
前記パッドから前記識別子を受け取り,前記暗号化された識別子を 照合装置送信するコントローラと,
通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路を包含するハウジングとを備え,
前記暗号化回路,コントローラ,第1リンク及び第2リンクがそれぞれ前記ハウジング内に埋め込まれていることを特徴とする装置。
【請求項2】 前記パッドは,
タッチ・パッド
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項3】 前記タッチ・パッドは,
Nワイヤ技術のタッチ・パッド
を具備することを特徴とする,請求項2に記載の装置。
【請求項4】 前記タッチ・パッドは,
4ワイヤ技術のタッチ・パッド
を具備することを特徴とする,請求項2に記載の装置。
【請求項5】 前記タッチ・パッドは,
7ワイヤ技術のタッチ・パッド
を具備することを特徴とする,請求項2に記載の装置。
【請求項6】 前記パッドは,
タッチ画面
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項7】 前記パッドは,
個人識別子(PIN)を入力するためのパッド
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項8】 前記暗号化回路は,
CPUと;および
前記CPUに接続され,かつ暗号化するようにプログラムされたメモリと
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項9】 前記CPUおよびプログラムされたメモリは,それを通して前記識別子が送られる,前記入力された識別子を暗号化するようにプログラム可能な第一のCPUであることを特徴とする,請求項8に記載の装置。
【請求項10】 前記暗号化回路は,
暗号化するようにプログラムされたマイクロコントローラ
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項11】 前記暗号化回路は,
特定用途向けIC(ASIC)
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項12】 前記ハウジングは,タンパリングしにくいハウジングを具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項13】 前記ハウジングは,タッピングしにくいハウジングを具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項14】 前記ハウジングは,前記パッドのコンポーネントが装着されている基板を備えており,該基板は少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術であることを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項15】 識別子を暗号化するための装置であって:
個人識別子(PIN)を暗号化するための,タッチ画面およびNワイヤ技術タッチ・パッドのうちの1を具備するパッドと;
前記入力された識別子を暗号化するための,前記パッドに隣接し,かつプログラムされたマイクロコントローラならびにASICのうち1を具備する回路と;
前記パッドから前記識別子を受け取り,前記暗号化された識別子を 照合装置送信するコントローラと,
通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記第1リンク及び第2リンク及び暗号化回路が埋め込まれている,アクセスしにくく,および少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術であるハウジングと
を具備する装置。
【請求項16】 識別子を暗号化するための方法であって:
識別子を入力するためのパッドと,
識別子を暗号化するための回路と,
コントローラと,
前記パッドと前記暗号化回路とを通信上接続する第1リンクと
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
を配置し,
前記暗号化回路,コントーラ,第1リンク及び第2リンクはそれぞれ前記ハウジング内に埋め込まれており,
アクセスしにくいハウジングに隣接して;
前記パッドで識別子を入力し;
前記コントローラからの前記識別子を前記暗号化回路に通信し;
前記暗号化回路で,前記識別子を暗号化し,及び
前記暗号化された識別子を前記暗号化の段階の後,前記コントローラに送信することを含む方法。
【請求項17】 前記暗号化された識別子を検査のために転送するステップをさらに含むことを特徴とする,請求項16に記載の方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】 識別子を暗号化する装置であって:
識別子を入力するためのパッドと;
前記パッドに隣接し,前記入力された識別子を暗号化するための暗号化回路と;
前記パッドから前記識別子を受け取り,前記暗号化された識別子を 照合装置送信するコントローラと,
通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路と前記コントローラとを内包する基板とを備え,
前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されていることを特徴とする装置。
【請求項2】 前記パッドは,タッチ・パッドを具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項3】 前記タッチ・パッドは,Nワイヤ技術のタッチ・パッドを具備することを特徴とする,請求項2に記載の装置。
【請求項4】 前記タッチ・パッドは,4ワイヤ技術のタッチ・パッドを具備することを特徴とする,請求項2に記載の装置。
【請求項5】 前記タッチ・パッドは,7ワイヤ技術のタッチ・パッドを具備することを特徴とする,請求項2に記載の装置。
【請求項6】 前記パッドは,タッチ画面を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項7】 前記パッドは,個人識別子(PIN)を入力するためのパッドを具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項8】 前記暗号化回路は,
CPUと;および
前記CPUに接続され,かつ暗号化するようにプログラムされたメモリと
を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項9】 前記CPUおよびプログラムされたメモリは,それを通して前記識別子が送られる,前記入力された識別子を暗号化するようにプログラム可能な第一のCPUであることを特徴とする,請求項8に記載の装置。
【請求項10】 前記暗号化回路は,暗号化するようにプログラムされたマイクロコントローラを具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項11】 前記暗号化回路は,特定用途向けIC(ASIC)を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項12】 前記基板は,タンパリングしにくい基板を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項13】 前記基板は,タッピングしにくい基板を具備することを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項14】 前記基板は,前記パッドのコンポーネントが装着されている基板を備えており,該基板は少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術であることを特徴とする,請求項1に記載の装置。
【請求項15】 識別子を暗号化するための装置であって:
個人識別子(PIN)を暗号化するための,タッチ画面およびNワイヤ技術タッチ・パッドのうちの1を具備するパッドと;
前記入力された識別子を暗号化するための,前記パッドに隣接し,かつプログラムされたマイクロコントローラならびにASICのうち1を具備する暗号化回路と;
前記パッドから前記識別子を受け取り,前記暗号化された識別子を 照合装置へ送信するコントローラと,
通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
アクセスしにくく,および少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術である基板とを備え,
前記暗号化回路と前記コントローラとが前記基板に内包され,前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されていることを特徴とする装置。
【請求項16】 識別子を暗号化するための方法であって:
識別子を入力するためのパッドと,
識別子を暗号化するための回路と,
コントローラと,
前記パッドと前記暗号化回路とを通信上接続する第1リンクと
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
を配置し,
前記暗号化回路と前記コントローラとが基板内に内包され,前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されており,
アクセスしにくい基板に隣接して
前記パッドで識別子を入力し;
前記コントローラからの前記識別子を前記暗号化回路に通信し;
前記暗号化回路で,前記識別子を暗号化し,及び
前記暗号化された識別子を前記暗号化の段階の後,前記コントローラに送信することを含む方法。
【請求項17】 前記暗号化された識別子を検査のために転送するステップをさらに含むことを特徴とする,請求項16に記載の方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)新規事項
本件手続補正が,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,平成15年1月29日付けで提出された明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。

ア.当審の判断
補正後の請求項1,及び,請求項15に,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されている」(下線は,当審にて,説明の都合上,附加したものである。以下,同じ。)
と記載され,
補正後の請求項16に,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されおり」,
と記載されているが,当初明細書等には,
“第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に基板に内包されている”という記載と同一の記載内容は存在しない。
そこで,当初明細書等の記載から,上記引用の記載が読み取れるかについて検討すると,
当初明細書等には,

「 【0030】
マイクロコントローラ330は,概念的,物理的またはその両方で,埋め込まれてもよい:マイクロコントローラ330は,あるノン・コンピューティング・タイプ,ここではキーパッド2261またはPOS226のより大きなマシンの一部を形成してもよい。また,キーパッド2261の構造は,LCD業界ではよく知られている,チップ・オン・グラス(COG)技術を含むかもしれず,マイクロコントローラ330およびタッチ・パッド・コントローラ320がグラスに埋め込まれている。マイクロコントローラ330およびコントローラ320が埋め込まれている場合,リンク350が埋め込まれていてもよい。好ましくは,リンク340は,実行できるように埋め込まれる。
【0031】
他に,マイクロコントローラ330およびコントローラ320は,タッチ・パッド310の実体に埋め込まれていてもよい。すなわち,回路配線330,320は,タッチ・パッド310のグラスあるいは基板に,またはタッチ・パッド310の(通常プラスティックである)ハウジングに存在していてもよい。ここでも,回路配線330,320が埋め込まれている場合,?好ましくは,実行可能であるように,リンク350が埋め込まれていてもよい。
【0032】
埋め込み技術(COGまたはその他)は,マイクロコントローラ330および回路配線320およびそれとタッチ・パッド310との間のリンク340,350に,周囲のかさが,抗タンパー保護??特に,アンチ・タップ保護??を与えるという効果を有する。また,タッチ・パッド310に対するマイクロコントローラ330の隣接(すなわち,近接)は,犯罪者がアクセスできるかもしれない物理的スペースを減らす。
【0033】
タッチ・パッド310は,その接続340のためのフレックス・テイルを有していてもよい。フレックス・テイルは,タッチ・パッド310のグラス,基板またはハウジングに埋め込まれていてもよい。」

と記載され,上記引用記載と対応する,【図3】に記載の内容から,
「リンク350」は,「コントローラ320」と,「暗号化回路336」を含む「マイクロコントローラ330」とを接続するものであり,
「リンク340」は,「コントローラ320」と,「タッチ・パッド310」とを接続するものであるから,
「リンク350」は,補正後の請求項1に記載の「第1リンク」に相当し,
「リンク340」は,補正後の請求項1に記載の「第2リンク」に相当する。
よって,上記引用の当初明細書等の記載からは,
“第1リンクが,タッチ・パッド310のグラス或いは基板,またはハウジングに埋め込まれてもよい”こと,および,
“第2リンクが,タッチ・パッド310のグラス,基板またはハウジングに埋め込まれてもよい”こと,が読み取れる。
しかしながら,上記引用の記載における「埋め込まれる」と,補正後の請求項1,請求項15,及び,請求項16に記載された「内包されている」とが,同一のものを指すか否か,本願明細書の発明の詳細な説明からは不明であり,仮に,両者が同じものを指し示すとしても,上記引用の記載には,
「リンク350」,及び,「リンク340」が,“部分的”に,「タッチ・パッド310」の「グラス」,或いは,「基板」,または,「ハウジング」に「埋め込まれ」てる点は,記載されておらず,上記引用の記載から,“部分的”に「埋め込まれ」ることが読み取れるものでもないので,上記引用の記載からは,
“第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に基板に内包されている”
ことを読み取ることはできない。
更に,当初明細書等には,「部分的」という表現について,

「 【0018】
装置は,暗号化回路およびリンクを包含するハウジングを含んでもよい。ハウジングは,アクセス,タンパリングまたはタッピングがしにくいであろう。ハウジングは,少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術(chip-on-glass technology)でもよい。」

という記載が存在するだけであり,上記引用の段落【0018】に記載された内容は,
“ハウジングが,部分的にチップ・オン・グラス技術でもよい”
というものであって,「リンク340」,或いは,「リンク350」と関連する内容とは認められない。
そして,上記引用した記載以外に,“リンクが埋め込まれる”こと,及び,「部分的」に関連する記載は,当初明細書等には存在していない。
以上検討したように,当初明細書等には,
“第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に基板に内包されている”
ことは,記載されておらず,当初明細書等の記載内容から自明の事項とも求められない。
よって,本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。

イ.新規事項むすび
したがって,本件手続補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)目的要件
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」で検討したとおり,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものとして,
本件手続補正が,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,特許法第17条の2第4項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

ア.当審の判断
本件手続補正は,補正前の請求項1に記載された,
「通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路を包含するハウジングとを備え,
前記暗号化回路,コントローラ,第1リンク及び第2リンクがそれぞれ前記ハウジング内に埋め込まれている」
を,補正後の請求項1に記載された,
「通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路と前記コントローラとを内包する基板とを備え,
前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されている」
と補正すること,及び,補正前の請求項15に記載された,
「通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記第1リンク及び第2リンク及び暗号化回路が埋め込まれている,アクセスしにくく,および少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術であるハウジングとを具備する」
を,補正後の請求項15に記載された,
「通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
アクセスしにくく,および少なくとも部分的にチップ・オン・グラス技術である基板とを備え,
前記暗号化回路と前記コントローラとが前記基板に内包され,前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されている」
と補正すること,並びに,補正前の請求項16に記載された,
「前記暗号化回路,コントーラ,第1リンク及び第2リンクはそれぞれ前記ハウジング内に埋め込まれており」
を,補正後の請求項16に記載された,
「前記暗号化回路と前記コントローラとが基板内に内包され,前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されており」
と補正するものであるが,補正前の請求項1に記載の「包含する」を,補正後の請求項1に記載の「内包する」に補正することは,「包含する」と「内包する」が同義ではなく,また,「内包する」は,「包含する」の限定的表現でもない。
また,補正前の請求項1に記載の「ハウジング」を,補正後の請求項1に記載の「基板」に補正することは,上記「(1)新規事項」の,「ア.当審の判断」において引用した,本願明細書の段落【0031】に,
「回路配線330,320は,タッチ・パッド310のグラスあるいは基板に,またはタッチ・パッド310の(通常プラスティックである)ハウジングに存在していてもよい」
との記載があるように,「グラス」,「基板」,「ハウジング」は,並列的な関係であり,「ハウジング」を,限定的に表現したものが,「基板」でないことは明らかである。
よって,上記で引用した,本件手続補正における,請求項1についての補正は,限定的減縮を目的としたものでないことは明らかである。
そして,本件手続補正における,請求項1についての補正が,請求項の削除,誤記の訂正,或いは,明瞭でない記載の釈明でないことも明らかであるから,本件手続補正における,請求項1についての補正は,目的外の補正である。
上記で引用した,本件手続補正における,請求項16,及び,請求項17についての補正も同様である。

イ.目的要件むすび
したがって,本件手続補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件
本件手続補正は,上記「(1)新規事項」で検討したとおり,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり,仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとしても,
本件手続補正は,上記「(2)目的要件」で検討したとおり,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされ,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的としたものであるとして,
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する。

ア.36条6項1号について
補正後の請求項1,及び,請求項15に,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されている」
と記載され,
補正後の請求項16に,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されおり」,
と記載されているが,上記引用の記載内容は,上記「(1)新規事項」において指摘したとおり,本願明細書に記載されておらず,また,本願明細書の記載内容から,当業者にとって自明の事項でもない。
そして,補正後の請求項2乃至14は,補正後の請求項1を直接・間接に引用し,補正後の請求項17は,補正後の請求項16を引用しているので,上記して指摘した,本願明細書に記載されていない構成を内包するものである。
よって,本願の請求項1乃至17に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

よって,本願は,特許法第36条第6項第1号に規定の要件に違反するので,特許出願の際独立して特許受けることができない。

イ.36条6項2号について
補正後の請求項1,及び,請求項15に記載された,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されている」,
及び,補正後の請求項16に記載された,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されおり」,
における,
“第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に基板に内包されている”
という構成が,どのようなものを表現したものであるか,補正後の請求項1,請求項15,及び,請求項16に記載された内容からは不明である。

よって,本願は,特許法第36条第6項第2号に規定の要件に違反するので,特許出願の際独立して特許受けることができない。

ウ.36条4項について
補正後の請求項1,及び,請求項15に記載された,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されている」,
及び,補正後の請求項16に記載された,
「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に前記基板に内包されおり」,
に関して,本願明細書の発明の詳細な説明には,上記「(1)新規事項」において指摘した程度の記載しか存在せず,上記で指摘したように,仮に,補正後の請求項1,請求項15,及び,請求項16に記載された“内包されている”が,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「埋め込まれている」と同義であるとしても,本願明細書の発明の詳細な説明には,「埋め込まれる」の具体的な例示として,上記引用の段落【0018】,【0030】,及び,【0032】に,チップ・オン・グラス(COG)に関する記述があるのみである。
そして,COGは,例えば,国際公開第98/22867号(1998年5月28日公開,以下,これを「周知文献1」という)に,

A.「液晶駆動用IC14を液晶パネルの透明基板上に直接に接合する形式の,いわゆるCOG(Chip On Glass)形式の液晶パネルを使用する。」(国際公開第98/22867号の再公表公報13頁5?6行)

或いは,特開2001-066623号公報(2001年03月16日公開,以下,これを「周知文献2」という)に,

B.「【0004】しかし,TAB方式によれば,駆動用ICを搭載するフィルムキャリアの仕様がパネルごとに異なるため,部材費が高くなるという課題があった。他方のCOG方式では,ガラス基板の非表示領域に駆動用ICを搭載し,配線することで,額縁の部分が広くなり,小型化の要求に応じることがむずかしかった。」

と記載されているように,“LCDのガラス面上に直接回路を形成する”技術である。
そして,上記引用の記載にもあるとおり,「COG」は,ガラス面,或いは,ガラス基板上に,回路を構成するものであって,“埋め込む”,或いは,“内包する”という日本語表現とは適さないものである。
以上のとおりであるから,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「チップ・オン・グラス」は,“ガラスに回路を構成する”とは言えるものの,“ガラスに回路を内包する”とまでは,言えず,ましてや,「基板に内包される」ことの例示でないことは明らかであるから,本願明細書の発明の詳細な説明からは,
“第1のリンク及び第2のリンクがそれぞれ基板に内包される”
という構成をどのように実現しているか不明である。
また,本願の【図4】と,それに関連する本願明細書の発明の詳細な説明に,

「 【0034】
図4は,pinパッド2261の物理的特徴を示す。グラス370およびタッチ・パッド310が接触する。回路330は,グラス370とタッチ・パッド310との間に挟まれている。グラスは,厚さ0.5インチより薄く,通常は0.053インチかそれより薄い。」

という記載も存在はするが,該記載内容から,上記引用の,補正後の請求項1,請求項15,及び,請求項16に記載の構成が読み取れるものでもないことは,明らかである。
よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載したものでない。

よって,本願は,特許法第36条第4項に規定の要件に違反するので,特許出願の際独立して特許受けることができない。

エ.29条2項について
補正後の請求項1,請求項15,及び,請求項16に記載の発明は,上記指摘のとおり,
当初明細書等に記載されたものでなく,その記載内容も明確ではないが,一応,字句どおりのものとして,以下の検討を行う。

(ア)本件補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した記載により特定されるものである。

(イ)引用刊行物に記載の発明
一方,原審が,平成23年3月4日付けの拒絶理由に引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第98/12615号(1998年3月26日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

C.「SUMMARY OF THE INVENTION
It is an object of the invention to overcome the shortcomings discussed above by a system and method for encrypting the input from a touch screen within the touch screen device itself.
Specifically, the improved device displays a PIN input screen to the user; the user inputs the user's PIN in the conventional manner (for example, by inputting a four-digit number on a conventional keypad -- such as the zero to nine keys configured on a touch tone telephone -- and then touching an “enter” button). The improved touch screen device does not send the coordinates of the user's input out of the device but rather collects the digits, encrypts them and, at the request of the bank's processing system, sends the encrypted values to the bank's processor.
The encryption is done by an encryption processor in the touch screen device. More specifically, the processor takes the digits and uses a computer program resident in the processor to convert the digits into a coded signal.」(3頁3行?18行)
(発明の要旨
本発明の目的は,タッチ・スクリーンからの入力を,タッチ・スクリーン・デバイスそれ自体の内部で,暗号化するためのシステム,及び,方法によって,上述した欠点を克服することである。
特に,改良されたデバイスは,PINを,ユーザの入力画面に表示する。:ユーザは(例えば,--プッシュホン上に設定されている0?9のキーのような,--従来型のキーパッドに,4桁の数字を入力し,次いで,確定ボタンを押すといった),従来の方法で,ユーザのPINを入力する。改良されたタッチ・スクリーン・デバイスは,デバイスの外部に,ユーザの入力と同等のものを送信するのではなく,ディジットを集め,それらの暗号化し,銀行のプロセッサ・ユニットからの要求によって,銀行のプロセッサに,暗号化された値を,送信する。
暗号化は,タッチ・スクリーン・デバイス内の,暗号化プロセッサによって行われる。
すなわち,プロセッサは,ディジットを取得し,ディジットを符号化信号に変換するために,コンピュータ内に常駐するプログラムを使用する。<当審にて訳出。以下,同じ。>)

D.「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENT
Figure 1 depicts an exploded view of the protective covers. The protective covers operate to protect the text of a user's entry onto the computer monitor from unauthorized viewing and access. The user's entries may include personal identification numbers (PIN), account information, and other personal data. As shown, the present invention includes five protective covers sandwiched together, one atop the other, to form a single thick protective cover over the perimeter of a computer monitor. The covers fasten securely together and includes tamper resistant architecture. In addition, the covers include a protective seal to show if there has been tampering.」(4頁5行?15行)
(本発明の好適な実施態様
図1は,保護カバーの分解組立図を,表現している。保護カバーは,許可されていない閲覧,及び,アクセスから,コンピュータ・モニタ上のユーザ入力のテキストを保護するように動作する。ユーザの入力は,個人識別番号(PIN),アカウント情報,及び,その他の個人データを含む可能性がある。図のように,本発明は,コンピュータ・モニタの周囲の上に,単一の厚い保護カバーを形成するように,一つが,その他の最上位で,一緒に挟まれた,5つの保護カバーを含む。カバーは,共に,しっかりと結び付き,改ざん防止機構を含んでいる。加えて,カバーは,改ざんがなされている場合を示す,保護シールを含む。)

E.「A printed circuit board 30 is situated directly below second cover 20. The third cover includes first circular opening 32 for accommodating first screws 114 to securely fasten the third cover to the fourth cover. In addition, first openings 32 are co-linear with first openings 16 and first openings 24 further aligning the third cover with the top two covers. The third cover includes a second set of circular openings 33 for accommodating second screws 25 and a raised surface 34 located on the fourth cover. Raised surface 34 comprised a hollow cylindrical tube rising up from the fourth cover. The inner diameter of the raised surface is sufficiently wide so as to accommodate second screws 25 therein. The outer diameter of raised surface 34 fits securely within second openings 33 thereby further aligning the third and fourth covers.
The fourth protective cover 40 is situated directly below the third protective cover. The protrudance of circuitry 32 from below the third cover is accommodated located directly below the circuitry on the fourth protective cover40.」(5頁21行?6頁6行)
(回路基板30は,第2カバー20の真下に配置される。第3カバーは,第3カバーを,第4カバーに,しっかりと固定するための,第1ネジ114(当審注:14の誤記である)を受け入れるための,第1の丸穴32を含む。加えて,第1の丸穴32は,第1の丸穴16,及び,第1の丸穴24と,上位の2つのカバーと,第3カバーとが,より一層,一直線になるように,同一直線上に存在する。第3カバーは,第2ネジ25,及び,第4カバー上に位置する突起面34を受け入れるための,第2の丸穴群33を含む。突起面34は,第4カバーから立ち上がる,中空の円形の管から成っていた。表面の立ち上がりの内径は,その中に,第2ネジ25を受け入れるために,十分の広さがある。突起面34の外径は,それによって,第3,及び,第4カバーが,より一直線になるよう,第2穴33に,しっかりと嵌合する。
第4保護カバー40は,第3保護カバーの真下に配置される。第3カバーの下からの電気回路の突起部32は,第4の保護カバー40上の電気回路の真下に配置され,収容される。)

F.「In addition, the interface communicates with and delivers incoming signals to the main processor 63. The main process can include any compute processor known to one skilled in the art to perform the tasks set out below. In addition, the main processor 63 controls the scanning operation performed on the computer monitor touch screen. Data read during the scanning process is fed to an encryption processor 65 via a direct electrical connection as depicted by line 66. The data to be encrypted generally refers to the user's personal identification number (PIN) that indicate to the system beings accessed who the user is.
One type of application during use of a touch screen, directs the user to initially enter his/her PIN number by pressing against the touch screen at locations corresponding to numbers on a computer generated keypad. The main processor determines the location of the user's touch, correlates the location with the numbers on the computer generated keypad and determines which numbers the user has entered. These numbers are then encrypted by the encryption processor.」(7頁20行?8頁3行)
(加えて,インターフェースは,メイン・プロセッサ63と通信し,入力信号を送る。メイン・プロセッサは,以下に示すタスクを実行するための,当業者に知られた,如何なる,計算プロセッサも含み得る。加えて,メイン・プロセッサ63は,コンピュータ・モニタ・タッチ・スクリーン上で実行される,走査過程を制御する。走査過程の間のデータは,ライン66として表現される,直接的な電気接続を介して,暗号化プロセッサ65に,入力される。暗号化されるデータは,通常,システムにアクセスしているユーザが誰かを,システムに示す,個人識別番号(PIN)を指す。
タッチ・スクリーン使用中の,一つのアプリケーションは,最初に,キーパッドが形成されたコンピュータ上の,関連する数字の場所に対して,タッチスクリーンを押すことで,彼,或いは,彼女のPINを入力することを,指示する。メイン・プロセッサは,ユーザのタッチした位置を特定し,キーパッドの形成されたコンピュータ上の数字と,位置とを関連付け,ユーザの入力した数字を決定する。これらの数字は,次に,暗号化プロセッサによって,暗号化される。)

G.「The circuit element includes a pair of emitter arrays 81 and 80, located across from a pair of sensor arrays 79 and 79. The two pairs of elements form the sides of a square 94 about the same size as the computer monitor being protected and are positioned along the perimeter of the internal opening of cover 30.」(9頁4行?8行)
(回路素子は,一組みのセンサ・アレイ79と80と交差する位置に,一組みのエミッタ・アレイ81と80を含む。二組の素子は,コンピュータ・モニタが保護され,カバー30の内側開口部の周囲に沿って配置されるよう,ほぼ同じサイズで,正方形94の辺を形成している。)

H.FIG.2には,「main processor 63」と「encryption processor 65」とが,「line 66」によって接続されていること,及び,「sensor arrays 79 and 79」(当審注;「78 and 79」の誤記である)が,「sensor amplifiers 83」,「sample/hold element 82」を介して,或いは,「sensor amplifiers 83」,「location latch element 74」,「line 96」を介して,「main processor 63」に接続されることが,図示されている。

a.上記Cに記載の「a system and method for encrypting the input from a touch screen within the touch screen device itself(タッチ・スクリーンからの入力を,タッチ・スクリーン・デバイスそれ自体の内部で,暗号化するためのシステム,及び,方法)」という記載から,引用刊行物1は,少なくとも,
“タッチ・スクリーンからの入力を,タッチ・スクリーン・デバイスそれ自体の内部で,暗号化するためのシステム”
に関するものであることが読み取れる。

b.上記Cの「The encryption is done by an encryption processor in the touch screen device.(暗号化は,タッチ・スクリーン・デバイス内の,暗号化プロセッサによって行われる。)」という記載,上記Fの「 the interface communicates with and delivers incoming signals to the main processor 63. The main process can include any compute processor known to one skilled in the art to perform the tasks set out below.(インターフェースは,メイン・プロセッサ63と通信し,入力信号を送る。メイン・プロセッサは,以下に示すタスクを実行するための,当業者に知られた,如何なる,計算プロセッサも含み得る。) 」という記載,同じく上記Fの「 Data read during the scanning process is fed to an encryption processor 65 via a direct electrical connection as depicted by line 66.(走査過程の間のデータは,ライン66として表現される,直接的な電気接続を介して,暗号化プロセッサ65に,入力される。)」という記載,及び,同じく上記Fの「One type of application during use of a touch screen, directs the user to initially enter his/her PIN number by pressing against the touch screen at locations corresponding to numbers on a computer generated keypad.(タッチ・スクリーン使用中の,一つのアプリケーションは,最初に,キーパッドが形成されたコンピュータ上の,関連する数字の場所に対して,タッチスクリーンを押すことで,彼,或いは,彼女のPINを入力することを,指示する。)」という記載から,「走査過程のデータ」とは,「PIN」であり,該「PIN」が,「メイン・プロセッサ」から,「暗号化プロセッサ」に送信されることが読み取れ,このことと,上記a.において検討した事項から,引用刊行物1に記載の「システム」は,
“PINを入力するためのタッチ・スクリーン”と,「メイン・プロセッサ」と“PINを暗号化するための暗号化プロセッサ”とを有すること,及び,“メイン・プロセッサから,暗号化プロセッサに,PINが送信される”ことが読み取れる。

c.上記Cの「The improved touch screen device does not send the coordinates of the user's input out of the device but rather collects the digits, encrypts them and, at the request of the bank's processing system, sends the encrypted values to the bank's processor.(改良されたタッチ・スクリーン・デバイスは,デバイスの外部に,ユーザの入力と同等のものを送信するのではなく,ディジットを集め,それらの暗号化し,銀行のプロセッサ・ユニットからの要求によって,銀行のプロセッサに,暗号化された値を,送信する。)」という記載における,「銀行のプロセッサ・ユニット」とは,「タッチ・スクリーン・デバイス」とは別の装置であることは明らかであるから,上記引用の記載と,上記a.,及び,b.において検討した事項から,引用刊行物1に記載の「タッチ・スクリーン・デバイス」は,“暗号化されたPINを,外部のプロセッサに送信する手段”を有することが読み取れる。

d.上記Fの「The main processor determines the location of the user's touch, correlates the location with the numbers on the computer generated keypad and determines which numbers the user has entered.(メイン・プロセッサは,ユーザのタッチした位置を特定し,キーパッドの形成されたコンピュータ上の数字と,位置とを関連付け,ユーザの入力した数字を決定する。)」という記載,及び,上記Hで指摘したFIG.2に記載された内容から,
「メイン・プロセッサ」が,“タッチスクリーンからPINを受信する”ことは明らかである。

e.上記b.で引用した上記Cの記載,及び,上記Hで指摘したFIG.2に記載された事項から,
引用刊行物1に記載の「タッチ・スクリーン・デバイス」においては,「メイン・プロセッサ」と,「暗号化プロセッサ」とが,「回路基板」上で,「ライン」によって接続され,「センサーアレイ」と,「メイン・プロセッサ」とが接続されていること,即ち,
“メイン・プロセッサと,暗号プロセッサと,メイン・プロセッサと,暗号プロセッサとを接続するラインと,メイン・プロセッサと,センサアレイとを接続する通信回路とを有する,回路基板を有する”ことが読み取れるので,上記a.で検討した「システム」とは,「タッチ・スクリーン・デバイス」内に構築されたものであることが読み取れる。

よって,以上a.?e.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

タッチ・スクリーンからの入力を,タッチ・スクリーン・デバイスそれ自体の内部で,暗号化するためのタッチ・スクリーン・デバイスであって,
PINを入力するためのタッチ・スクリーンと,
PINをタッチ・スクリーンから受信し,暗号化プロセッサに送信するメイン・プロセッサと,
PINを暗号化するための暗号化プロセッサと,
暗号化されたPINを,外部のプロセッサに送信する手段と,
メイン・プロセッサと,暗号プロセッサとを接続するラインと,メイン・プロセッサと,センサアレイとを接続する通信回路とを有する,回路基板とを備える,タッチ・スクリーン・デバイス。

(ウ)本件補正発明と引用発明との対比
a.引用発明における「PIN」は,本件補正発明における「識別子」に相当し,
引用発明における「タッチ・スクリーン・デバイス」は,入力された「PIN」を,暗号化するものであって,前記「タッチ・スクリーン・デバイス」は,一種の“装置”であるから,
引用発明における「タッチ・スクリーンからの入力を,タッチ・スクリーン・デバイスそれ自体の内部で,暗号化するためのタッチ・スクリーン・デバイス」が,
本件補正発明における「識別子を暗号化する装置」に相当する。

b.引用発明における「タッチスクリーン」は,上記Fに引用した記載から,“キーパッドを形成する”ものであることは明らかであるから,本件補正発明における「タッチ・パッド」に相当するので,
引用発明における「PINを入力するためのタッチ・スクリーン」が,
本件補正発明における「識別子を入力するためのパッド」に相当する。

c.上記Hで指摘したFIG.2から,引用発明における「タッチ・スクリーン」と,「暗号化プロセッサ」が隣接していることは明らかであるから,
引用発明における「PINを暗号化するための暗号化プロセッサ」が,
本件補正発明における「前記パッドに隣接し,前記入力された識別子を暗号化するための暗号化回路」に相当する。

d.引用発明における「メイン・プロセッサ」は,“PINをタッチ・スクリーンから受信”するものであるから,
引用発明における「メイン・プロセッサ」と,
本件補正発明における「暗号化された識別子を照合装置送信するコントローラ」とは,
“識別子を受け取る手段”である点で共通する。

e.引用発明における「ライン」は,「メイン・プロセッサと,暗号プロセッサとを接続する」ものであるから,
本件補正発明における「通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンク」と,
“通信上,識別子を受け取る手段と,暗号化回路とを接続する第1のリンク”である点で共通する。

f.上記d.で検討したとおり,引用発明における「メイン・プロセッサ」は「タッチスクリーン」と接続されているものであるから,
引用発明における「暗号プロセッサとを接続するラインと,メイン・プロセッサと,センサアレイとを接続する通信回路」と,
本件補正発明における「通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンク」とは,
“通信上,識別子を受け取る手段と,パッドとを接続する第2リンク”
である点で共通する。

g.引用発明における「回路基板」は,「メイン・プロセッサ」,「暗号化プロセッサ」,「通信回路」,及び,「ライン」とを有し,
本件補正発明における「基板」は,「暗号化回路」,「コントローラ」,「第1リンク」,及び,「第2リンク」を有するものであることは明らかであるから,
引用発明における「PINをタッチ・スクリーンから受信し,暗号化プロセッサに送信するメイン・プロセッサと,PINを暗号化するための暗号化プロセッサと,暗号化されたPINを,外部のプロセッサに送信する手段と,メイン・プロセッサと,暗号プロセッサとを接続するラインと,メイン・プロセッサと,センサアレイとを接続する通信回路とを有する,回路基板」と,
本件補正発明における「通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,前記暗号化回路と,前記コントローラとを内包する基板」とは,
“通信上,識別子を受け取る手段と暗号化回路とを接続する第1リンクと,通信上,前記識別子を受け取る手段とパッドとを接続する第2リンクと,前記暗号化回路と,前記識別子を受け取る手段とを有する基板”である点で共通する。

よって,以上a.?g.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
識別子を暗号化する装置であって,
識別子を入力するためのパッドと,
前記パッドに隣接し,前記入力された識別子を暗号化するための暗号化回路と,
識別子を受け取る手段と,
通信上,識別子を受け取る手段と暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記識別子を受け取る手段とパッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路と,前記識別子を受け取る手段とを有する基板とを備える装置。

[相違点1]
“識別子を受け取る手段”に関して,
本件補正発明においては,
“パッドから識別子を受け取り,暗号化された識別子を,照合装置送信するコントローラ”であるのに対して,
引用発明における「メイン・プロセッサ」は,“PINを受信し,受信したPINを暗号化プロセッサに送信する”処理は行っているが,“暗号化プロセッサが暗号化したPINを,銀行のプロセッサに送信する”ことを行っているか不明である点。

[相違点2]
“前記識別子を受け取る手段とパッドとを接続する第2リンク”に関して,
本件補正発明においては,「タッチ・パッド」と,「コントローラ」とは,直接接続されているのに対して,
引用発明においては,「タッチ・スクリーン」と,「メイン・プロセッサ」との間に,他の回路素子が介在している点。

[相違点3]
“有する基板”に関して,
本件補正発明においては,“第1リンク,第2リンク,コントローラ,暗号化回路を内包する基板”であるのに対して,
引用発明においては,“内包する基板”であるか,不明である点。

[相違点4]
本件補正発明においては,
“第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に基板に内包されている”のに対して,
引用発明においては,そのような構成について言及されていない点。

(エ)相違点についての当審の判断
a.[相違点1]について
引用発明においては,FIG.2に記載された回路素子からなる回路基板を有する「タッチ・スクリーン・デバイス」は,上記Cに引用した記載にあるように,外部の「銀行のプロセッサ」に,暗号化された値を,送信している。そして,上記Fに引用した記載にもあるように,引用発明における「タッチ・スクリーン・デバイス」は,「メイン・プロセッサ63と通信」する「インターフェース」を有している。ここで,FIG.2の記載に従えば,該「インターフェース」は,「メインプロセッサ」に接続され,「暗号化プロセッサ」から,外部に通信を行う場合には,少なくとも「メイン・プロセッサ」を経由する構成を含み得ることは明らかである。
よって,引用発明においても,「暗号化プロセッサ」が暗号化した「PIN」を,「メイン・プロセッサ」が,外部の「銀行のプロセッサ」に送信するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点1は,格別のものではない。

b.[相違点2]について
引用発明において,「タッチ・スクリーン」と,「メイン・プロセッサ」とを直接接続するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点2は,格別のものではない。

c.[相違点3],及び,[相違点4]について
上記「イ.36条6項2号について」,及び,「ウ.36条4項について」において指摘したとおり,「内包する」,或いは,「部分的に内包する」という日本語表現が,電子回路実装上,どのような構成を表現したものであるか不明ではあるが,仮に,本願明細書に記載された「チップ・オン・グラス」を意味するものであるとすると,上記A,及び,上記Bで引用した周知文献1,及び,周知文献2にも記載されているように,「チップ・オン・グラス」自体は,当業者において周知の技術事項であるから,引用発明においても,「回路素子」を「チップ・オン・グラス」で実装することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点3,及び,相違点4は,格別のものではない。

上記で検討したごとく,相違点1?4はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明,及び,当該技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

オ.独立特許要件むすび
したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下むすび
以上検討したとおり,本件手続補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲ないでなされたものであるとしても,
本件手続補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり,
仮に,本件手続補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされ,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的としたものであるとしても,
本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成23年12月22日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成23年7月19日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成23年12月22日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「識別子を暗号化する装置であって:
識別子を入力するためのパッドと;
前記パッドに隣接し,前記入力された識別子を暗号化するための暗号化回路と;
前記パッドから前記識別子を受け取り,前記暗号化された識別子を 照合装置送信するコントローラと,
通信上,前記コントローラと前記暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記コントローラと前記パッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路を包含するハウジングとを備え,
前記暗号化回路,コントローラ,第1リンク及び第2リンクがそれぞれ前記ハウジング内に埋め込まれていることを特徴とする装置。」

第4.引用刊行物に記載の発明
一方,原審が,平成23年3月4日付けの拒絶理由に引用した,国際公開第98/12615号(1998年3月26日公開)には,上記「第2.平成23年12月22日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「エ.29条2項について」における「(イ)引用刊行物に記載の発明」おいて認定したとおりの「引用発明」が記載されているものと認める。

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,本件補正発明における「内包する基板」を,「包含するハウジング」に,
また,本件補正発明における「前記第1リンク及び第2リンクがそれぞれ部分的に基板に内包されている」を,「前記暗号化回路,コントローラ,第1リンク及び第2リンクがそれぞれハウジング内に埋め込まれている」に変更したものである。
引用発明における「回路基板30」は,上記Eの「A printed circuit board 30 is situated directly below second cover 20. (回路基板30は,第2カバー20の真下に配置される。)」という記載,及び,同じく上記Eの「The fourth protective cover 40 is situated directly below the third protective cover. (第4保護カバー40は,第3保護カバーの真下に配置される。)」という記載,及び,引用刊行物1のFIG.1の記載内容から,「第2保護カバー」と,「第4保護カバー」に挟まれ,該「第2保護カバー」と,「第4カバー」とが,「回路基板30」の“ケース”を形成していることが読み取れる。
そして,引用発明における,前記「ケース」が,本願発明の「ハウジング」に相当するものであって,該「ケース内」に「暗号化プロセッサ」,「メイン・プロセッサ」,「ライン」を有する「回路基板」が存在していることは明らかであるから,
引用発明における上記構成と,本願発明における「コントローラと,・・・暗号化回路を包含するハウジング」とは,
“コントローラ,第1リンク及び第2リンク,暗号化回路を包含するハウジング”である点で共通する。
よって,上記「第2.平成23年12月22日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「エ.29条2項について」における「(ウ)本件補正発明と引用発明との対比」で検討した事項も踏まえると,本願発明と引用発明との一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
識別子を暗号化する装置であって,
識別子を入力するためのパッドと,
前記パッドに隣接し,前記入力された識別子を暗号化するための暗号化回路と,
識別子を受け取る手段と,
通信上,識別子を受け取る手段と暗号化回路とを接続する第1リンクと,
通信上,前記識別子を受け取る手段とパッドとを接続する第2リンクと,
前記暗号化回路とを包含するハウジングとを備える装置。

[相違点a]
“識別子を受け取る手段”に関して,
本願発明においては,
“パッドから識別子を受け取り,暗号化された識別子を,照合装置送信するコントローラ”であるのに対して,
引用発明における「メイン・プロセッサ」は,“PINを受信し,受信したPINを暗号化プロセッサに送信する”処理は行っているが,“暗号化プロセッサが暗号化したPINを,銀行のプロセッサに送信する”ことを行っているか不明である点。

[相違点b]
“前記識別子を受け取る手段とパッドとを接続する第2リンク”に関して,
本願発明においては,「タッチ・パッド」と,「コントローラ」とは,直接接続されているのに対して,
引用発明においては,「タッチ・スクリーン」と,「メイン・プロセッサ」との間に,他の回路素子が介在している点。

[相違点c]
本願発明においては,
「前記暗号化回路,コントローラ,第1リンク及び第2リンクがそれぞれハウジング内に埋め込まれている」のに対して,
引用発明においては,「暗号化プロセッサ」,「メイン・プロセッサ」,「ライン」は,「回路基板」上に存在し,「第2保護ケース」,「第4保護ケース」の何れかの内面に形成されたものではない点。

第6.相違点についての当審の判断
1.[相違点a],及び,[相違点b]について
本願発明と,引用発明との[相違点a],及び,[相違点b]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1],及び,[相違点2]と同じものであるから,上記「第2.平成23年12月22日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」の「エ.29条2項について」における「(エ)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。

2.[相違点c]について
引用発明においても,上記Dに「The covers fasten securely together and includes tamper resistant architecture.(カバーは,共に,しっかりと結び付き,改ざん防止機構を含んでいる。)」と記載されているように,「改ざん防止」の対策がなされており,
引用発明において,上記Eに引用した記載内容から,「回路基板30」も,「第3保護カバー」となっていて,「電気回路」は,「第3保護カバー」の下面に形成されているものと解される。
従って,該「電気回路」は,「回路基板」と「第4保護カバー」によって覆われているとも言い得るものである。
そして,本願発明における「埋め込み」の例が,上記で引用した,本願明細書の段落【0018】,【0030】?【0033】に記載された「チップ・オン・グラス」である場合,該,「チップ・オン・グラス」は,上記で引用した,周知文献1,及び,周知文献2に記載されているように,本願の第1国出願前に既に周知の技術事項であるから,引用発明において,「第2保護カバー」,「第3保護カバー」,「第4保護カバー」の何れかが,“ガラス基板”であるとき,該“ガラス基板”に,「チップ・オン・グラス」で「電気回路」を形成し,他の「保護カバー」を用いて,該「電気回路」を保護する構成とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点cは,格別のものではない。

上記で検討したごとく,相違点a?cはいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-20 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-11 
出願番号 特願2002-500960(P2002-500960)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04L)
P 1 8・ 574- Z (H04L)
P 1 8・ 571- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 561- Z (H04L)
P 1 8・ 573- Z (H04L)
P 1 8・ 536- Z (H04L)
P 1 8・ 572- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 原 秀人
石井 茂和
発明の名称 セキュアな、暗号化PINパッド  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 須田 洋之  
代理人 大塚 文昭  

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