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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1285065
審判番号 不服2012-8654  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-11 
確定日 2014-02-26 
事件の表示 特願2006-529028号「天然鉱石を使用した還元水の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年1月26日国際公開、WO2006/008997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年7月11日(特許法第41条に基づく優先権の主張日:平成16年7月23日、出願番号:特願2004-240166号、同主張日:平成17年4月6日、出願番号:特願2005-109853号)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月14日付けの拒絶理由の通知に対して、出願人から何らの応答がなかったことから、平成24年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、その後、特許法第164条第3項に基づく報告を引用した同年9月21日付けの審尋を通知し、同年11月14日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成24年5月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(2-1)補正事項
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含み、補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。
(補正前)
「【請求項1】
遠赤外線放射率80%以上の複数の天然鉱石を選択し、これらを5mm以下の粉末または粒状物若しくはこれらをバインダーで小径のボール状に形成した混合物とし、該天然鉱石の粉末または粒状物の混合物に水を接触させてマイナスの還元電位を有する還元水の製造方法。」
(補正後)
「【請求項1】
遠赤外線放射率80%以上の金属マグネシウムと、遠赤外線放射率80%以上の天然鉱石である麦飯石と、トルマリンと、ブラックシリカとを選択し、
これらを5mm以下の粉末または粒状物若しくはこれらをバインダーで小径のボール状に形成した混合物とし、
該金属マグネシウムと天然鉱石との粉末または粒状物の混合物に水を接触させてpH7?8のマイナスの還元電位を有する還元水とすること
を特徴とする還元水の製造方法。」

(2-2)補正の適否
(α)請求項1の補正事項は、同項に記載された発明を特定するために必要な事項である補正前の「遠赤外線放射率80%以上の複数の天然鉱石」を、補正後の「遠赤外線放射率80%以上の金属マグネシウムと、遠赤外線放射率80%以上の天然鉱石である麦飯石と、トルマリンと、ブラックシリカと」にし、
(β)同補正前の「該天然鉱石」を、補正後の「該金属マグネシウムと天然鉱石」にし、
(γ)同補正前の「マイナスの還元電位を有する還元水」を、補正後の「pH7?8のマイナスの還元電位を有する還元水」にするものである。
ここで、
(α)及び(β)は、「天然鉱石」について、補正前の「【請求項3】
複数の天然鉱石から少なくとも、マグネシウムと、麦飯石、トルマリンとを選択し、これらを3?4:3?5:1?4の割合で混合したこと
を特徴とする請求項1に記載の還元水の製造方法。
【請求項4】
天然鉱石として、更に、酸化マグネシウム、チタン、ゲルマニウム、ブラックシリカ、セラライト、貝化石、N-鉱石の一種または二種以上を選択すること
を特徴とする請求項3に記載の還元水の製造方法。」に記載されている「マグネシウム、麦飯石、トルマリン及びブラックシリカ」に限定すると共に、平成23年9月14日付けの拒絶理由の通知の「1.この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」及び「理由1・・・[C]明細書に開示されている『混合物』の具体例は、・・・また、何れも金属マグネシウム、麦飯石、トルマリン及びN-鉱石を使用している。麦飯石、トルマリン、N-鉱石は『天然鉱物』であろうが、金属マグネシウムは一般的には『天然鉱物』とは言えず、水と反応して化学的に水素を生じるような物質であり、麦飯石、トルマリン、N-鉱石等の天然鉱物とは明らかに質の異なる物質といえる。・・・」との指摘に対応して、このマグネシウムが天然鉱石ではない「金属マグネシウム」であることを明確にするものであり、
(γ)は、「還元水」について、「pH7?8の」という物性限定を付加するものであり、
かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、請求項1に係る補正は、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号及び同第4号の特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的にするものである。
そして、国際出願時の明細書(以下、「出願時明細書」という。)には、
「【0028】
また、粒状物(なるべく長辺2?3ミリ程度が良いがその前後のものであれば良い)で使用する場合に、好ましくは、還元力の強い金属マグネシウム、麦飯石及びトルマリンが選択される。還元力の強いものを要望する場合は遠赤外線放射率が85?90%程度のものが良いが一般的には83%でよい。更に、強い還元力が必要な場合はN-鉱石又は貝化石高品質物などを混入する。ここでこれ等鉱石の混合重量比の組合せが仲々困難である。それは自然の鉱石であるため鉱石の品質に上、中、下があり、鉱石といってもその塊の表面と内部とにおいてその分子集団の集合状態が違っており、その塊を粉砕した粒状物において全く同じ状態の物が少ない場合がある。鉱石における分子の集合状態を常に測定して混合することが好ましいのであるが、実際には簡易に測定できないので経験に基づいて混合するわけであるが、結果的には大体予想した通りのORPが測定できるものである。この場合に、限定するものではないが、大体において重量比で、金属マグネシウム30%、麦飯石40%、トルマリン10%、N-鉱石10%、ブラックシリカ10%を混合し、この混合物の所要量をナイロン生地袋又はステンレス製の網目状容器に入れて使用する。一例としては、家庭用であれば、例えば、10gの量をナイロン生地袋に入れて使用する。」及び「【0036】
更に、本願発明で製造された還元水については、最も強力なものは酸化還元電位が-1,250mVのものであったが、これは電解によって得られる酸化還元電位が-350mV前後という数値に比べたら比較にならない強力なものである。しかも一般にORPのマイナス電位の数値が大きければP.Hは11?12前後が普通であるが必要に応じてP.H7?8程度までは調整が可能であるということがこの天然鉱石還元水の特徴でもあり、従って利用度はこの後広範囲に拡大していくものと思われる。」との記載があり、これからして、請求項1の補正は、出願時明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満足するものである。

(2-3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-3-1)特許法第29条第2項について
(2-3-1-1)引用例の記載事項
原査定の拒絶理由において引用文献1として引用した特開2004-174301号(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載、表示及び図示がある。
(ア)「【0020】
次に、図2(d)に示されるように、上記布製の袋20の中に、水中の溶存水素濃度を高くするための高水素濃度化剤22を入れる。この高水素濃度化剤22としては、マグネシウムが好適である。また、高水素濃度化剤22には、トルマリン(電気石)を含むことが好適である。トルマリンは、水分子のクラスターを小さくする作用があり、飲用にされる水の味を向上させたり、肌につけたときの吸収を良くして肌への水分補給を容易にすることができるからである。マグネシウムとトルマリンとを布製の袋20の中に入れる場合は、最初にマグネシウムを入れ、次にトルマリンを入れる。これにより、布製の袋20の中には、マグネシウム層24とトルマリン層26とが分離して存在することになる。」

(イ)「【0026】
なお、図2(d)に示されたように、マグネシウム層24とトルマリン層26とを分離して存在させずに、マグネシウムとトルマリンとを混合して布製の袋20に入れてもよい。この場合、前述のように、布製の袋20を柱状容器10の底部30に接するまで入れると、柱状容器10の蓋12の近傍に空間ができ、これによって柱状容器10の底部30側と蓋12側で比重差ができ、底部30側が重くなるので、水中で蓋12側を上にして高水素濃度水製造用構造物を立てることができる。」

(ウ)「【0028】【表1】



(エ)「【0029】
上記表1及び図3からわかるように、マグネシウムの使用量を水500mlに対して5g以上とすると、酸化還元電位が急激に負の値となり、還元力の十分な水となる。これは、水がマグネシウムと接触して十分な量の水素が発生したためである。一方、マグネシウムの使用量が水500mlに対して5gより少ないと水素の発生量が不十分であるので酸化還元電位が大きな正の値のままであり、十分な還元力を得られなかった。さらに、マグネシウムの使用量を水500mlに対して5gより多くしても水の還元力に大きな向上はなかった。」

(オ)「【0030】
次に、水中の残留塩素濃度についても、マグネシウムの使用量を水500mlに対して5g以上とすると0.05ppmまで低下し、その際の水のpHもアルカリ性を示した。これは、水中の残留塩素がマグネシウムと反応して塩化マグネシウムとなってマグネシウム粒子の表面等に析出し、水中から除去されるからである。また、マグネシウムが水中に溶解することにより、ミネラルを含んだアルカリ性の水となり、飲料水等に使用すれば健康に良い影響を与えることができる。なお、マグネシウムの使用量が水500mlに対して5gより少ないと、残留塩素濃度が十分低くならず、pHも中性から弱アルカリ性に留まった。また、マグネシウムの使用量を水500mlに対して5gより多くしても残留塩素濃度、pHともに大きな変化はなかった。」

(カ)【図2】には、粒体からなるトルマリン層26が示されていることから、引用例1には、「粒体のトルマリン」が図示されているということができる。

(キ)上記(オ)の「【0030】・・・マグネシウム粒子・・・」からして、引用例1には、「粒体のマグネシウム」が記載されているということができる。

(ク)上記(エ)の「【0029】・・・マグネシウムの使用量を水500mlに対して5g以上とすると、酸化還元電位が急激に負の値となり、還元力の十分な水となる。・・・」との記載からして、引用例1には、「還元力の十分な水(還元水)を生成する」ことが記載されているということができる。

上記(ア)ないし(カ)の記載事項、表示内容及び図示内容、同(キ)及び(ク)の検討事項より、引用例1には、
「マグネシウムと、トルマリンとを選択し、
これらを粒体の混合物とし、
該マグネシウムとトルマリンとの粒体の混合物に水を接触させてアルカリ性のマイナスの還元電位を有する還元水(飲料水)とする、
還元水の製造方法。」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

原査定の拒絶理由において引用文献2として引用した特開2004-160386号(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(ケ)「【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様(形態)を説明する。水素水発生装置を構成する上槽の蓋を外して、例えば、水道水、飲料水等の水を上槽に投入する。この投入の過程で、上槽に設けた各種機能を備えた多重かつ交換式のフィルターを介して清澄化、又は各種のミネラル成分、イオン成分等を含んだ水(アルカリイオン水、ミネラル磁化水、又はマイナスイオン水「処理水とする」)に変換されて、順次滴下(流下)された後、上槽の底面に滞留し、この底面に設けた水素水発生用のスティックと接触することにより、活性水素を有する水(水素水又は還元水)に変換される。即ち、処理水は、スティック内のマグネシウム、黒曜石、トルマリン、抗菌砂、風化サンコ゛等に接触することで、水素水となり、上槽から下槽のタンク等に向って流れる(流下する)。この流下の過程で、必要により再度フィルターを利用して清澄化することも可能である。」

(コ)【0014】
下槽に到った水素水は、ヒータにより加温するか、又は冷却器により冷却、或いは常温に保持して、飲料水、料理水、又は他の用途の水として利用する。例えば、飲料水として利用した場合には、体内の活性酵素(老廃物)を消して、体内の細胞・血液・腸内微生物・皮膚・毛髪等の活性化、等に寄与できる。また病気、機能障害等の根源となる活性酵素を消して、健康な生活を満喫できること、病気の治癒に役立つこと、等の特徴がある。」

(サ)「【0020】
前記上槽100の仕切り部102に設けた活性炭、鉱石セラミック、濾過用フィルター、又は麦飯石充填フィルター等で構成されている多重フィルター10で、この仕切り部102に架承さけている。従って、投入された水は、先ず、この多重フィルター10を介して濾過及び/又は栄養・機能・治癒等の成分が付加される。この多重フィルター10を介して清澄化、又は各種のミネラル成分、イオン成分等を含んだ処理水を生成する。尚、この多重フィルター10の中で、必要とする一部のフィルター1000を、前記連通口103に設けて、再度、成長化、又は成分を付加する場合もあり得る。」

上記(ケ)ないし(サ)の記載事項より、引用例2には、
「麦飯石充填フィルターと、接触した水を水素水(還元水)にする『マグネシウム、黒曜石、トルマリン、抗菌砂、風化サンコ゛等を収容したステック』を用いる、還元水(飲料水)の製造方法。」の発明(以下、「引用例2記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

(2-3-1-2)対比・判断
[特許法第29条第2項について]
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。
○引用例1記載の発明の「マグネシウム」、「トルマリン」、「粒体」は、本願補正発明の「金属マグネシウム」、「天然鉱石としてのトルマリン」、「粒状物」にそれぞれ相当する。

○引用例1記載の発明の「トルマリン」と、本願補正発明の「天然鉱石」とは、「トルマリン」という点で共通する。

○引用例1記載の発明の「粒体(粒状物)の混合物とし」と、本願補正発明の「粉末または粒状物若しくはこれらをバインダーで小径のボール状に形成した混合物とし」とは、「粒状物の混合物とし」という点で共通する。

○引用例1記載の発明の「粒体(粒状物)の混合物に」と、本願補正発明の「粉末または粒状物の混合物に」とは、「粒状物の混合物に」という点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、
「金属マグネシウムと、天然鉱石であるトルマリンとを選択し、
これらを粒状物の混合物とし、
該金属マグネシウムとトルマリンとの粒状物の混合物に水を接触させてマイナスの還元電位を有する還元水とする
還元水の製造方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願補正発明では、「遠赤外線放射率80%以上の」金属マグネシウムと、「遠赤外線放射率80%以上の」天然鉱石である「麦飯石と、」トルマリンと「、ブラックシリカと」を選択しているのに対して、引用例1記載の発明では、マグネシウム(金属マグネシウム)と、トルマリン(天然鉱石であるトルマリン)とを選択しているものの、上記「」内の事項の特定がない点。

<相違点2>
本願補正発明では、「pH7?8の」マイナスの還元電位を有する還元水であるのに対して、引用例1記載の発明では、「アルカリ性の」マイナスの還元電位を有する還元水である点。

<相違点3>
本願補正発明では、「5mm以下の」粒状物であるのに対して、引用例1記載の発明では、粒体(粒状物)であるものの、上記「」内の事項の特定がない点。

上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
(a)上記(2-3-1)で示したように、引用例2記載の発明は、「麦飯石充填フィルターと、接触した水を水素水(還元水)にする『マグネシウム、黒曜石、トルマリン、抗菌砂、風化サンコ゛等を収容したステック』を用いる、還元水(飲料水)の製造方法。」である。
そして、一般に、以下の(b)ないし(m)で示す事項は、本願優先権主張日前に周知の事項である。
(b)麦飯石がマイナスイオンを発生すること(例えば、特開2001-161414号公報の特に【0012】、特開2003-306034号公報の特に【0021】参照)、
(c)水をマイナスイオン化することにより還元水が製造されること(例えば、特開2000-317414号公報の特に【請求項1】、【0001】【発明の属する技術分野】参照)、
(d)麦飯石が遠赤外線を放射すること(例えば、特開2002-81657号公報の特に【0018】、特開2003-154386号公報の特に【0009】参照)、
(e)遠赤外線放射率が89.3%である麦飯石を用いること(例えば、特開2003-103596号公報の特に【0031】【表1】参照)、
(f)トルマリンが遠赤外線を放射すること(特開2003-275328号公報の特に【0003】、特開2002-81657号公報の特に【0018】、特開2003-154386号公報の特に【0009】参照)、
(g)遠赤外線放射率が94.4%であるトルマリンを用いること(例えば、特開平11-235388号公報の特に【0015】、【0017】【表2】参照)、
(h)ブラックシリカが水を還元すること(例えば、特開2003-252685号公報の【請求項1】、【0001】【発明の属する技術分野】、【0047】ないし【0053】参照)、
(i)ブラックシリカが遠赤外線を放射すること(例えば、特開2004-41524号公報の特に【0012】、特開2003-210592号公報の特に【0022】参照)
(j)遠赤外線放射率が平均98%であるブラックシリカを用いて水の改質を行うこと(例えば、特開2003-275328号公報の特に【0009】、【0015】参照)、
(k)マグネシウムが遠赤外線を放射すること(例えば、特開平6-233830号公報の特に【0004】【課題を解決するための手段】参照)、
(l)遠赤外線放射により水の改質が行われること(例えば、特開2001-276852号公報の特に【0004】【産業上の利用分野】、特開2002-143866号公報の特に【0002】【従来の技術】参照)。
(m)遠赤外線放射率が低ければ効果(影響)が少ないこと(例えば、特開2002-361262号公報の特に【0017】参照)
ここで、麦飯石は、上記(b)(c)より、還元水を製造することができるものであり、また、上記(d)(e)(l)より、遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであり、
トルマリンは、上記(f)(g)(l)より、遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであり、
ブラックシリカは、上記(h)より、還元水を製造することができるものであり、また、上記(i)(j)(l)より、遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであり、
マグネシウムは、上記(k)(l)より、遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであることは明らかであり、以下、これを前提にして検討する。

引用例1記載の発明において、還元水を製造するマグネシウム(金属マグネシウム)及びトルマリン(天然鉱石であるトルマリン)は、上記からして、遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであり、また、麦飯石及びブラックシリカは、上記からして、還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであるので、マグネシウム、トルマリン、麦飯石及びブラックシリカは、還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであり、そうである以上、引用例1記載の発明において、還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うものとして、金属マグネシウムとトルマリンを用いることに加えて麦飯石とブラックシリカをも用いる(選択する)ことは、当業者であれば容易に想起し得ることである。
そして、引用例1記載の発明において、還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うものとして、マグネシウム、トルマリン、麦飯石及びブラックシリカを用いる際、上記(j)より、遠赤外線放射率が平均98%であるブラックシリカを用い、さらに、このブラックシリカと同じく遠赤外線放射率が高い上記(g)のトルマリン(94.4%)及び上記(e)の麦飯石(89.3%)についても、これを用いて水の改質を行うことは、上記(m)で示した「遠赤外線放射率が低ければ効果(影響)が少ない」ことも考慮すると、当業者であれば普通に行うことであるというべきであり、
また、引用例1記載の発明のマグネシウム(金属マグネシウム)と本願補正発明の金属マグネシウムとは、単元素金属(組成物ではない物質)であって結晶構造等のバリエーションがないものであることから、物性としての遠赤外線照射率(80%以上)も含め実質的に同じものであるというべきである。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2>について
上記「<相違点1>について」で検討したように、引用例1記載の発明において、金属マグネシウム、トルマリン、麦飯石及びブラックシリカを選択したとき、「アルカリ性の」マイナスの還元電位を有する還元水が製造されているということができる。
ここで、一般に、高いpH値の水を中和して飲料水基準(PH値が5.8以上8.6以下)の飲料水を製造することは、本願優先権主張日前に周知の事項(例えば、特開昭63-252589号公報の特に第1頁参照)であり、また、飲料水としての嗜好性を高めるために、マイナスの還元電位を有するアルカリ性の還元水に酸性液を添加して(中和して)マイナスの還元電位を有する中性の還元水(飲料水)を製造することも本願優先権主張日前に周知の事項(例えば、特開2003-10865号公報の特に下記で示す【0005】参照)であり、引用例1記載の発明と上記周知の事項とは、飲料水を製造するという点で共通している。
そうすると、引用例1記載の発明において、「アルカリ性の」マイナスの還元電位を有する還元水(飲料水)について、飲料水基準を満たすと共に飲料水としての嗜好性を高めるために、この還元水を中和してマイナスの還元電位を有する例えばpH7?8の還元水(飲料水)を製造するという、上記の点で共通する該周知の事項を適用することは、引用例1に「アルカリ水の中和」を排除する旨の開示がないことも考慮すると、当業者であれば容易に想起し得ることである。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

上記で示した特開2003-10865号公報の【0005】は、以下のとおりである。
「【0005】 現在市販されている還元水製造装置の殆どはアルカリ性であり、一部に飲料としての嗜好性を高めるために酸性液を添加して、中性ないし微弱酸性の還元水を得ている。電気分解法によって直接に酸性還元水を生成することが原理的に難しいことによって、酸性の還元水製造装置は実現していない。」

<相違点3>について
一般に、粒状物(改質材)に水を接触させてマイナスイオン水を製造するときの粒状物の形状について、粒径が1mm程度の粒状物(改質材)を用いることは、本願優先権主張日前に周知の事項(例えば、特開2003-24956号公報の【0030】ないし【0032】【表1】参照)であり、引用例1記載の発明と上記周知の事項とは、粒状物(改質材)に水を接触させて改質水を製造するという点で共通している。
そうすると、引用例1記載の発明において、粒状物(改質材)に水を接触させて還元水(改質水)を製造するときの粒状物の形状について、粒径が「1mm程度(5mm以下)の」粒状物(改質材)を用いるという、上記の点で共通する該周知の事項を適用することは、粒状物(改質材)の粒径が小さいほど水との接触効率が高まる(改質効率を高められる)ことも考慮すると、当業者であれば容易に想起し得ることである。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の「還元水を飲料水として使用することができる等」の作用効果は、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項(特に、マイナスの還元電位を有する中性の飲料水を製造すること)に基いて当業者であれば十分に予測し得るものである。
よって、本願補正発明は、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-3-2)特許法第36条第4項第1号について
平成24年5月11日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「補正明細書」という。)には、「【0030】
本発明に係る還元水の最も有用な利用の仕方は、飲料水として利用し各自が毎日飲用することで、ドロドロの血液をサラサラにすると共に体内の活性酸素を除去することによる健康回復と、ガン細胞発生の抑制、脳細胞の活性化によるアルツハイマー病発症の撲滅を図ることである。
因みに、先願発明で作成したイオンボールを利用し、前日の午後5時に該イオンボール略20gを1.8リットルのペットボトルに水道水と共に入れて静置し、16時間後の翌日午前9時頃に、ペットボトル内の水道水のORPを計測した結果-250mVの還元水になっていた。これを47才の男性に飲用させて試験を行った。まず、還元水を飲用する前に血液を採取し、それを位相差電子顕微鏡で拡大してそれをモニター画面に映し出し保存する。次に-150mVの還元水を約70cc飲み10分後に同じ方法で血液を採取し、それを位相差電子顕微鏡で拡大しモニターに映し出して画面上で比較した。その画面の写真を図1Aおよび図1Bに示す。この写真から明らかなように、還元水飲用後において血液がサラサラになっていることが確認できた。
【0031】
更に、複数の天然鉱石を粒状にし且つ所要の比率で配合した前記一例の10g入りナイロン生地袋を1袋用い、前記と同様に前日の午後5時に1.8リットルのペットボトルに水道水と共に入れて静置し、16時間後の翌日午前9時頃に、ペットボトル内の水道水のORPを計測した結果-188mVの還元水になっていた。これを77才の男性に飲用させて試験を行った。まず、還元水を飲用する前に血液を採取し、それを位相差電子顕微鏡で拡大してそれをモニター画面に映し出し保存する。次に-188mVの還元水を約70cc飲み14分後に同じ方法で血液を採取し、それを位相差電子顕微鏡で拡大しモニターに映し出して画面上で比較した。その画面の写真を図2Aおよび図2Bに示す。この写真から明らかなように、還元水飲用後において血液がサラサラになっていることが確認できた。」及び「【0045】
そして、本発明で得られた還元水を継続して飲用することで、体内に存在する活性酸素を除去できるので、活性酸素の増大による種々の病気(特にガンなど)の発生を抑制することができるのである。その他に、免疫機能の向上などにも機能するのである。」との記載があり、これらからして、本願補正発明は、「還元水の飲用による活性酸素の除去」による「ドロドロの血液をサラサラにすること、健康回復、ガン細胞発生の抑制、脳細胞の活性化によるアルツハイマー病発症の撲滅」の達成を目的(作用効果)の一つにするものである。
しかしながら、補正明細書は、「還元水(飲料水)」と「活性酸素の除去」と「ドロドロの血液をサラサラにすること、健康回復、ガン細胞発生の抑制、脳細胞の活性化によるアルツハイマー病発症の撲滅」の因果関係を証明(立証)する科学的、合理的な根拠を何ら示すものではなく、補正明細書の【0030】【0031】に示されている「血液がサラサラになる」現象は、水分を十分に摂取したことによる結果であるとみることもできることから、「ドロドロの血液をサラサラにすること、健康回復、ガン細胞発生の抑制、脳細胞の活性化によるアルツハイマー病発症の撲滅」を達成するものは「還元水(飲料水)」である、更にいうと、この還元水を製造する「還元水(飲料水)の製造方法」であると直ちにいうことはできない。
そうすると、補正明細書は、本願補正発明の目的の一つである「ドロドロの血液・・・撲滅」を達成する「還元水(飲料水)の製造方法」を記載するものではない、つまり、当業者が発明を実施する(目的を達成する)ことができる程度に明確にかつ十分に記載したものであるとはいえない。
よって、補正明細書は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものではない。

(2-3-3)まとめ
上記からして、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(3-1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、国際出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「2.(2-1)」の(補正前)で示したものである。

(3-2)拒絶査定の理由
拒絶査定の理由は以下のとおりである。
「この出願については、平成23年9月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」

(3-3)特許法第29条第2項について
(3-3-1)平成23年9月14日付けの拒絶理由の理由4は、以下のとおりである。
「4.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」及び
「・理由3、4
・請求項1-6
・引用文献1-6
・備考:
(請求項1、2、5について)
(A)請求項3によれば『マグネシウム』も『天然鉱石』といえる。
引用文献1(特許請求の範囲、実施例等参照。)に記載された発明は、マグネシウムとトルマリン粒状物を併用しており、引用文献1には、-150、-160mvの還元水が得られたとの具体例も記載されている。
引用文献2(特許請求の範囲、実施例等参照。)には、マグネシウム、トルマリン、黒曜石などの粒状物を併用しており、活性水素を含む飲料水を得ており、マグネシウムとトルマリン粒状物を使用しているのであるから、マイナスの還元電位を有する還元水を得ているものと認められる。
引用文献1又は2には『遠赤外線放射率80%以上』の記載はないが、-150、-160mvといった還元水を得ている以上、『遠赤外線放射率80%以上』の天然鉱石を使用しているものと考えられる。
よって、請求項1、2、5に係る発明は新規性進歩性を有さない。」

(3-3-2)引用例の記載事項
原査定の拒絶理由において引用したそれぞれ引用文献1、2である引用例1、2の記載事項は、上記「2.(2-3-1-1)」で示したとおりである。

(3-3-3)対比・判断
上記2.(2-2)で示したように、本件補正における請求項1の補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定すると共に不明りょうな記載を釈明するものであることから、本願発明は、本願補正発明を包含している。
そうすると、本願補正発明が、上記「2.(2-3-1-2)」で示したように、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願補正発明を包含する本願発明も同じく、拒絶理由の理由4(拒絶査定の理由)と同様に引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができる。

(3-4)特許法第36条第4項第1号について
(3-4-1)平成23年9月14日付けの拒絶理由の理由1([D])は、以下のとおりである。
「1.この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」及び
「[D]請求項1-6はマイナスの還元電位を有する還元水の製造方法の発明であるから、明細書の記載に基づき、その方法が明確に説明されており、かつ、その方法を使用できなければならない。
ところで、明細書には、位相差電子顕微鏡で拡大しモニターに映し出した画面の写真図1A-3Bで示されるドロドロの血液とサラサラの血液の比較が[0031]-[0034]で記載されている。その記載を見ると、本件還元水の飲用前の血液採取、本件還元水の酸化還元電位やその飲用量、本件還元水の飲用後の血液採取までの時間(10分後など。)というような実験条件は一応開示されているものの、どこでだれが血液を採取してどのように位相差電子顕微鏡を操作したのかなど、比較実験が科学的に適切に行われたものであることを示す開示はない。本件還元水の飲用でドロドロの血液をサラサラの血液にすることができるのか疑義がある。
また、明細書には『本発明に係る還元水の最も有用な利用の仕方は、飲料水として利用し各自が毎日飲用することで、ドロドロの血液をサラサラにすると共に体内の活性酸素を除去することによる健康回復と、ガン細胞発生の抑制、脳細胞の活性化によるアルツハイマー病発症の撲滅を図ることである。』([0031])と記載されているが、ドロドロの血液をサラサラの血液にすることと例示される疾患の抑制等との技術的関係を示す実施例は記載されていない。
そうしてみると、本件還元水にドロドロの血液をサラサラにする作用効果があるのか理解できず、仮に、そのような作用効果があるだとしても、それにどのような技術的意味があるのか理解できない。そうであれば、そのような作用効果を奏する還元水の製造方法として本件還元水の製造方法が明確に説明されているとはいえず、当該方法を使用できる程度の開示は明細書にないことになる。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

(3-4-2)判断
上記「2.(2-3-2)」で示した理由と同じ理由より、出願時明細書(国際出願時の明細書)は、当業者が発明を実施することができる程度に明確にかつ十分に記載したものであるということはできず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものではない。

(3-5)むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明及び本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、国際出願時の明細書は、当業者が発明を実施することができる程度に明確にかつ十分に記載したものであるということはできないので、特許法第29条第2項の規定及び特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものである。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-26 
結審通知日 2013-04-30 
審決日 2013-05-13 
出願番号 特願2006-529028(P2006-529028)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 536- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 真々田 忠博
木村 孔一
発明の名称 天然鉱石を使用した還元水の製造方法  
代理人 佐々木 功  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  

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