• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1285156
審判番号 不服2013-10100  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-31 
確定日 2014-03-18 
事件の表示 特願2008-506559「記録メッセージを使用する自動衝突通報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日国際公開、WO2006/110617、平成20年9月25日国内公表、特表2008-537832、請求項の数(36)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2006年4月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2005年4月11日(US)アメリカ合衆国、2006年4月7日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成19年10月11日に国内書面が提出され、平成19年12月7日に明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成21年2月16日に手続補正書が提出され、平成23年9月9日付けで拒絶理由が通知され、平成23年12月8日に意見書が提出され、平成24年3月27日付けで再度の拒絶理由が通知され、平成24年8月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年1月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年5月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成25年10月4日付けで書面による審尋がされ、平成26年2月3日に回答書が提出されたものである。

2 補正の適否
(1)補正の内容
平成25年5月31日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、下記アに示す本件補正前の(すなわち、平成24年8月3日に提出された手続補正書により補正された)請求項1ないし40を、下記イに示す請求項1ないし36へと補正するものである。

ア 「 【請求項1】
交通システムの衝突通報を自動的に提供する自動衝突通報システムであって、
前記交通システムに配置され、前記交通システムの衝突を検知するように構成される衝突検知システムと、
前記交通システムに配置され、遠隔地で衝突通報が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージを含んだメモリ・システムと、
前記交通システムに配置され、ワイヤレスで遠隔地へメッセージを送信し、ワイヤレスで遠隔地からメッセージを受信するように構成されたワイヤレス・コミュニケーション・システムと、
前記交通システムに配置され、前記交通システムの乗員へ言葉を伝達するように構成されたユーザ・コミュニケーション・システムと、
前記交通システムに配置された処理システムであって、
前記衝突検知システムによる衝突検知に応じて、前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って衝突通報を遠隔地へ送信し、かつ
遠隔地からの、遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが前記第一記録メッセージは含まれていない受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、前記交通システムに位置する前記第一記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させるように構成された処理システムとを備える自動衝突通報システム。
【請求項2】
前記メモリ・システムは多言語による第一記録メッセージを含み、かつ前記処理システムが通信言語を選択するように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項3】
前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムは言葉を送受信しないように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項4】
前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムは携帯電話を含む、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項5】
前記携帯電話は任意のセルラー・ネットワークを使って通信するように構成される、請求項4に記載の自動衝突通報システム。
【請求項6】
前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムは衛星通信システムを使って通信するように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項7】
前記第一記録メッセージは遠隔地が救助要請していることをも意味する一語以上の言葉を含む、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項8】
前記交通システムはエンターテイメント・システムを備え、かつ前記処理システムは前記衝突検知システムによる衝突検知に応じて、該エンターテイメント・システムの音をミュートするように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項9】
前記交通システムの場所を示す位置情報を生成するように構成されたGPSレシーバーをさらに含み、かつ前記処理システムは、遠隔地へ送信される前記衝突通報に該位置情報が含まれるようにするように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項10】
ユーザ作動キャンセル制御装置をさらに含み、かつ前記処理システムは、該処理システムが前記衝突検知システムによる衝突検知に応じて前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って衝突通報を遠隔地へ送信した後、該ユーザ作動キャンセル制御装置の作動に応じて、キャンセル通知を前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って該遠隔地に送信するように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項11】
前記メモリ・システムは、遠隔地がキャンセル通知を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを含み、前記処理システムは、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の遠隔地からの受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、該第二記録メッセージがユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達されるように構成される、請求項10に記載の自動衝突通報システム。
【請求項12】
前記衝突通報検知システムは車両の衝突を検知するように構成された、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項13】
前記処理システムは、衝突が激突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?12のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項14】
前記処理システムは、衝突が転覆衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?13のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項15】
前記処理システムは、衝突が後部衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?14のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項16】
前記処理システムは、衝突の重度の情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?15のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項17】
前記処理システムは、衝突前の前記交通システムのスピードの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?16のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項18】
前記メモリ・システムは、前記第一記録メッセージを長いバージョンおよび短いバージョンで含み、かつ前記処理システムが前記第一記録メッセージの前記長いバージョンか前記短いバージョンかを選択するように構成される、請求項1?17のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項19】
前記メモリ・システムは、前記第二記録メッセージを長いバージョンおよび短いバージョンで含み、かつ前記処理システムが前記第二記録メッセージの前記長いバージョンか前記短いバージョンかを選択するように構成される、請求項11に記載の自動衝突通報システム。
【請求項20】
前記交通システムの通常のバッテリーに障害があった場合、システムに電力を供給するための予備バッテリーを更に備える、請求項1?19のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項21】
交通システムの衝突を自動的に検知する自動衝突通報方法であって、
交通システムにおいて該交通システムの衝突を検知することと、
前記衝突の検知に応じて、前記交通システムからの衝突通報を遠隔地に送信することと、
遠隔地からの、遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが記録メッセージは含まれていない受領確認を交通システムにおいて受領することと、
前記確認の受領に応じて、前記交通システムの一部であるユーザ・コミュニケーション・システムを使って、該交通システムに保存され、遠隔地が衝突通報を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージを伝達することとを含む自動衝突通報方法。
【請求項22】
通信されるメッセージの言語を選択することを含む、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項23】
言葉が送受信されない、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項24】
前記送受信は携帯電話によって行われる、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項25】
前記送受信は任意のセルラー・ネットワークを使って行われる、請求項24に記載の自動衝突通報方法。
【請求項26】
前記送受信は衛星通信システムを使って行われる、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項27】
前記第一記録メッセージは遠隔地に救助要請があることをも意味する一語以上の言葉を含む、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項28】
衝突の通知に応じて前記交通システムのエンターテイメント・システムをミュートすることを含む、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項29】
交通システムの場所を示す位置情報を生成すること、かつ位置情報を衝突通報の一部として送信することを含む、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項30】
前記衝突の検知に応じて、前記交通システムからの衝突通報を遠隔地に送信した後、前記交通システムのユーザ作動キャンセル制御装置を作動させ、かつ、該ユーザ作動キャンセル制御装置の作動に応じて、該交通システムからのキャンセル通知を遠隔地へ送信することを含む、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項31】
遠隔地が前記キャンセル通知を受領した旨の遠隔地からの受領確認を前記交通システムにて受領すること、かつ前記キャンセル通知確認の受領に応じて、前記交通システムに保存され、遠隔地が前記キャンセル通知を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを伝達することを含む、請求項30に記載の自動衝突通報方法。
【請求項32】
車両の衝突が検知される、請求項21に記載の自動衝突通報方法。
【請求項33】
衝突が激突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項21?32のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項34】
衝突が転覆衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項21?33のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項35】
衝突が後部衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項21?34のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項36】
衝突の重度の情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項21?35のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項37】
衝突前の前記交通システムのスピードの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項21?36のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項38】
前記交通システムに保存された前記第一記録メッセージの長いバージョンか短いバージョンかを選択することを含む、請求項21?37のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項39】
前記交通システムに保存された前記第二記録メッセージの長いバージョンか短いバージョンかを選択することを含む、請求項31に記載の自動衝突通報方法。
【請求項40】
前記交通システムの通常のバッテリーに障害があった場合、予備バッテリーを用いる、請求項21?39のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。」

イ 「 【請求項1】
交通システムの衝突通報を自動的に提供する自動衝突通報システムであって、
前記交通システムに配置され、前記交通システムの衝突を検知するように構成される衝突検知システムと、
ユーザ作動キャンセル制御装置と
遠隔地で衝突通報が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージ及び遠隔地でキャンセル通知が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを含み、前記交通システムに配置されたメモリ・システムと、
前記交通システムに配置され、ワイヤレスで遠隔地へメッセージを送信し、ワイヤレスで遠隔地からメッセージを受信するように構成されたワイヤレス・コミュニケーション・システムと、
前記交通システムに配置され、前記交通システムの乗員へ言葉を伝達するように構成されたユーザ・コミュニケーション・システムと、
前記交通システムに配置された処理システムであって、
前記衝突検知システムによる衝突検知に応じて、前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って衝突通報を遠隔地へ送信し、かつ
遠隔地からの、遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが前記第一記録メッセージは含まれていない受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、前記交通システムに位置する前記第一記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させるように構成され、
衝突通報を遠隔地へ送信した後、前記ユーザ作動キャンセル制御装置の作動に応じて、キャンセル通知を前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って該遠隔地に送信し、かつ
遠隔地からの、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、前記第二記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させるように構成された処理システムとを備える自動衝突通報システム。
【請求項2】
前記メモリ・システムは多言語による第一記録メッセージを含み、かつ前記処理システムが通信言語を選択するように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項3】
前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムは言葉を送受信しないように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項4】
前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムは携帯電話を含む、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項5】
前記携帯電話は任意のセルラー・ネットワークを使って通信するように構成される、請求項4に記載の自動衝突通報システム。
【請求項6】
前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムは衛星通信システムを使って通信するように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項7】
前記第一記録メッセージは遠隔地が救助要請していることをも意味する一語以上の言葉を含む、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項8】
前記交通システムはエンターテイメント・システムを備え、かつ前記処理システムは前記衝突検知システムによる衝突検知に応じて、該エンターテイメント・システムの音をミュートするように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項9】
前記交通システムの場所を示す位置情報を生成するように構成されたGPSレシーバーをさらに含み、かつ前記処理システムは、遠隔地へ送信される前記衝突通報に該位置情報が含まれるようにするように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項10】
前記衝突通報検知システムは車両の衝突を検知するように構成された、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項11】
前記処理システムは、衝突が激突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?10のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項12】
前記処理システムは、衝突が転覆衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?11のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項13】
前記処理システムは、衝突が後部衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?12のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項14】
前記処理システムは、衝突の重度の情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?13のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項15】
前記処理システムは、衝突前の前記交通システムのスピードの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信するように構成される、請求項1?14のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項16】
前記メモリ・システムは、前記第一記録メッセージを長いバージョンおよび短いバージョンで含み、かつ前記処理システムが前記第一記録メッセージの前記長いバージョンか前記短いバージョンかを選択するように構成される、請求項1?15のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項17】
前記メモリ・システムは、前記第二記録メッセージを長いバージョンおよび短いバージョンで含み、かつ前記処理システムが前記第二記録メッセージの前記長いバージョンか前記短いバージョンかを選択するように構成される、請求項1に記載の自動衝突通報システム。
【請求項18】
前記交通システムの通常のバッテリーに障害があった場合、システムに電力を供給するための予備バッテリーを更に備える、請求項1?17のいずれか一項に記載の自動衝突通報システム。
【請求項19】
交通システムの衝突を自動的に検知する自動衝突通報方法であって、
交通システムにおいて該交通システムの衝突を検知することと、
前記衝突の検知に応じて、前記交通システムからの衝突通報を遠隔地に送信することと、
遠隔地からの、遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが記録メッセージは含まれていない受領確認を交通システムにおいて受領することと、
遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認の受領に応じて、前記交通システムの一部であるユーザ・コミュニケーション・システムを使って、該交通システムに保存され、遠隔地が衝突通報を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージを伝達することと、
衝突通報を遠隔地に送信した後、前記交通システムのユーザ作動キャンセル制御装置を作動させ、かつ、該ユーザ作動キャンセル制御装置の作動に応じて、該交通システムからのキャンセル通知を遠隔地へ送信することと、
遠隔地からの、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認を前記交通システムにて受領することと、
遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認の受領に応じて、前記交通システムに保存され、遠隔地がキャンセル通知を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを伝達することを含む自動衝突通報方法。
【請求項20】
通信されるメッセージの言語を選択することを含む、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項21】
言葉が送受信されない、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項22】
前記送受信は携帯電話によって行われる、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項23】
前記送受信は任意のセルラー・ネットワークを使って行われる、請求項22に記載の自動衝突通報方法。
【請求項24】
前記送受信は衛星通信システムを使って行われる、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項25】
前記第一記録メッセージは遠隔地に救助要請があることをも意味する一語以上の言葉を含む、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項26】
衝突の通知に応じて前記交通システムのエンターテイメント・システムをミュートすることを含む、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項27】
交通システムの場所を示す位置情報を生成すること、かつ位置情報を衝突通報の一部として送信することを含む、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項28】
車両の衝突が検知される、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項29】
衝突が激突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項19?28のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項30】
衝突が転覆衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項19?29のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項31】
衝突が後部衝突であるかどうかの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項19?30のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項32】
衝突の重度の情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項19?31のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項33】
衝突前の前記交通システムのスピードの情報を含む前記衝突通報を遠隔地へ送信する、請求項19?32のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項34】
前記交通システムに保存された前記第一記録メッセージの長いバージョンか短いバージョンかを選択することを含む、請求項19?33のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。
【請求項35】
前記交通システムに保存された前記第二記録メッセージの長いバージョンか短いバージョンかを選択することを含む、請求項19に記載の自動衝突通報方法。
【請求項36】
前記交通システムの通常のバッテリーに障害があった場合、予備バッテリーを用いる、請求項19?35のいずれか一項に記載の自動衝突通報方法。」
(下線は、本件補正箇所を示すために、請求人が付したものである。)

(2)本件補正の適否について
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1及び10を削除し、これらに従属していた請求項11を独立形式として新たな請求項1にするものであり、本件補正後の請求項19は、本件補正前の請求項21及び30を削除し、これらに従属していた請求項31を独立形式として新たな請求項19にするものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定される請求項の削除を目的とする補正に該当する。

3 本願発明
請求項1ないし36に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明36」という。)は、平成25年5月31日に提出された特許請求の範囲並びに平成19年12月7日に提出された明細書及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし36に記載された事項により特定される上記イのとおりのものであると認める。

4 原査定の理由の概要
(1)平成24年3月27日付け拒絶理由通知
ア この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

請求項1に係る発明は、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、特別な技術的特徴を有しない。
よって、請求項1に係る発明と請求項2?24に係る発明との間で同一の又は対応する特別な技術的特徴を見出すことができない。
ただし、請求項2、13及び14に係る発明については、審査基準に基づき、例外的に発明の単一性の要件を問わないこととする。
この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項1、2、13及び14以外の請求項に係る発明については特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。

イ この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(特開平11-191192号公報)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ウ この出願の請求項1、2、13及び14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平11-191192号公報
2.特表平06-506573号公報

(2)平成25年1月30日付け拒絶査定
ア 特許法第29条第1項第3号
請求項1及び21に係る発明は、文献1に記載された発明である。

イ 特許法第29条第2項
また、請求項1及び21に係る発明は、文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
請求項2及び22に係る発明は、文献1及び文献2に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 特許法第37条
請求項1及び21に係る発明は、先行技術に対する貢献をもたらすものでなく、特別な技術的特徴を有しないので、この出願は特許法第37条に規定する要件を満たさない。
このため、請求項3ないし12及び23ないし32に係る発明については特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。

エ なお書き
なお、今次補正により追加された請求項13-20、33-40に係る発明については、本拒絶査定の対象とはならないが、衝突通報システムにおいて、衝突方向等の事故状況を通報すること(特開2004-090721号公報の段落【0031】-【0032】参照。)や予備バッテリを備えること(特開2002-118685号公報の段落【0082】及び第4図参照。)はそれぞれ公知であり、また、文献1に記載された発明において、受領確認を受領したことに応じて表示ないし音声で提供される文章の長さをどの程度とするかは、当業者が適宜決定し得る設計的事項にすぎないことである。

5 引用刊行物
(1)引用刊行物の記載
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-191192号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア 「【請求項1】 ユーザに関する現在状態を表す状態情報をセンタ側へ通報する通報手段と、
通報された前記状態情報がセンタ側で受理されかつ少なくとも前記通報した状態情報が前記センタ側で受理されたことを表す受理情報が送出されたときに該受理情報を受け入れるための受入手段と、
前記受理情報及び前記状態情報の少なくとも一方に基づいて、前記受理情報の告知形態を決定すると共に、決定した告知形態で前記受理情報を告知する告知手段と、
を備えた通報情報確認装置。
【請求項2】 前記告知手段の告知形態は、前記受理情報の伝達性が高い告知形態または伝達性が低い告知形態に変更可能であり、前記告知手段は、前記状態情報が緊急状態を表すときには前記伝達性が高い告知形態を決定することを特徴とする請求項1に記載の通報情報確認装置。
【請求項3】 前記伝達性が高い告知形態は、大型ディスプレイ装置への表示、または音声出力手段による音声提示であることを特徴とする請求項2に記載の通報情報確認装置。
【請求項4】 前記告知手段の告知形態は、前記受理情報の伝達性が高い告知形態または伝達性が低い告知形態に変更可能であり、前記告知手段は、前記状態情報が第三者に対して秘匿性が高い秘匿状態を表すときには前記伝達性が低い告知形態を決定することを特徴とする請求項1に記載の通報情報確認装置。
【請求項5】 前記伝達性が低い告知形態は、小サイズ灯火の点灯手段による点灯表示または伝達性が低い既設装置の情報提示であることを特徴とする請求項4に記載の通報情報確認装置。
【請求項6】 請求項1乃至請求項5の何れか1項の通報情報確認装置を車両に搭載しかつ、前記状態情報は、車両内の乗員に関する現在状態を表すことを特徴とする車両用通報情報確認装置。
【請求項7】 プログラムされたコンピュータによって、ユーザに関する現在状態を表す状態情報をセンタ側で受理したことを表す受理情報を告知させる通報情報確認方法であって、
ユーザに関する現在状態を表す状態情報をセンタ側へ通報し、
通報された前記状態情報がセンタ側で受理されかつ少なくとも前記通報した状態情報を前記センタ側で受理したことを表す受理情報が送出されたときに該受理情報を受け入れ、
受け入れた前記受理情報及び前記状態情報の少なくとも一方に基づいて、前記受理情報の告知形態を決定すると共に、決定した告知形態で前記受理情報を告知することを特徴とする通報情報確認方法。
【請求項8】 コンピュータによって、ユーザに関する現在状態を表す状態情報をセンタ側で受理したことを表す受理情報を告知させる通報情報確認プログラムを記録した記録媒体であって、
ユーザに関する現在状態を表す状態情報をセンタ側へ通報させ、
通報された前記状態情報がセンタ側で受理されかつ少なくとも前記通報した状態情報を前記センタ側で受理したことを表す受理情報が送出されたときに該受理情報を受け入れさせ、
受け入れた前記受理情報及び前記状態情報の少なくとも一方に基づいて、前記受理情報の告知形態を決定すると共に、決定した告知形態で前記受理情報を告知させることを特徴とする通報情報確認プログラムを記録した記録媒体。」(【請求項1】ないし【請求項8】)

イ 「【0005】本発明は、上記事実を考慮して、ユーザに対して適切な状態でユーザに関する現在状態を表す状態情報をセンタ側で受理したことを表す受理情報を告知させることができる通報情報確認装置、車両用通報情報確認装置、通報情報確認方法、及び通報情報確認プログラムを記録した記録媒体を得ることが目的である。」(段落【0005】)

ウ 「【0014】請求項1では、通報手段によって、ユーザに関する現在状態を表す状態情報がセンタ側へ通報される。状態情報には、在宅のユーザに関する現在状態や車両内の乗員等のユーザに関する現在状態を表すものがある。・・・車両内の乗員等のユーザに関する現在状態としては、乗員の急病や交通事故、車両盗難による車両内への進入等があり、これら現在状態を表す状態情報が例えば緊急通報としてセンタ側へ通報される。
【0015】センタ側では、通報された状態情報を受理し、該状態情報を受理したことを表す受理情報を送出する。この受理情報には、少なくとも状態情報を受理したことを表すことは勿論であるが、受理した状態情報に対する関係情報を含むことができる。関係情報には、病気や火事等の災害等の場合に緊急車両が駆けつけることを表す情報がある。受入手段では、この受理情報を受け入れる。
【0016】受理情報をユーザに告知するには、その告知を認識するユーザの現在状態に応じた効果的な認識となることが好ましい。そこで、告知手段は、受け入れた受理情報及び状態情報の少なくとも一方に基づいて、受理情報の告知形態を決定する。すなわち、受理情報に告知形態の指示が含まれているときは、その指示に従って受理情報の告知形態を決定すればよく、ユーザの現在状態を表す状態情報のみで受理情報の告知形態が定まる場合には状態情報から受理情報の告知形態を決定すればよい。また、受理情報と状態情報を共に用いて受理情報の告知形態を決定してもよい。これと共に、告知手段は、決定した告知形態で受理情報を告知する。これによって、その告知を認識するユーザの現在状態に応じた効果的な認識ができるように、受理情報をユーザに告知することができる。
【0017】例えば、急病や事故等に遭遇したユーザには、より明確に受理情報がユーザに告知されることが効果的である。そこで、請求項2にも記載したように、前記告知手段の告知形態として、受理情報の伝達性が高い告知形態または伝達性が低い告知形態に変更可能であり、告知手段は、状態情報が緊急状態を表すときには伝達性が高い告知形態を決定することができる。例えば、在宅のユーザに関する現在状態としての病気や火事等の災害等や、車両内の乗員等のユーザに関する現在状態としての車両事故等では、より明確にセンタ側で通報を受理したことが確認されることが望ましいので、受理情報の伝達性が高い告知形態を決定することにより、事故等に遭遇したユーザは、その確認が容易となる。このような伝達性が高い告知形態を告知するためのものとしては、請求項3にも記載したように、大型ディスプレイ装置への表示、または音声出力手段による音声提示を採用することができる。」(段落【0014】ないし【0017】)

エ 「【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。本実施の形態はドライバに対して映像や音声で経路補助情報を提供するナビゲーションシステムに本発明を適用したものである。
【0023】図1に示すように、本実施の形態のナビゲーションシステム10は、装置本体12、CPU14、RAM16、ROM18、乗員の現在状態を一時的に記憶するためのメモリ20及び入出力ポート(I/Oポート)22からなるマイクロコンピュータで構成され、各々バス24によってコマンドやデータ授受が可能なように接続されている。なお、RAM16は、バックアップラムとされ、電源遮断時であっても記憶されている情報の内容をバックアップ(記憶)している。また、入出力ポート22には、フロッピーディスク26が挿抜可能なフロッピーデュスクユニット(FD装置)30が接続されている。なお、ROM18には、後述する処理ルーチンやドライバの現在状態を検知して検知結果から告知形態を決定するための判断基準が記憶されている(詳細は後述)。また、これら後述する処理ルーチンや判断基準は、FD装置30を介してフロッピーディスク26に読み書き可能である。」(段落【0022】及び【0023】)

オ 「【0030】・・・エアバック装置48は、急制動時等にドライバや助手席乗員と車両との急激な接近状態を回避するため、袋体を膨張させるものであり、本実施の形態では、エアバック装置48が作動したときに膨張信号を出力する。」(段落【0030】)

カ 「【0032】さらに、本実施の形態では、入出力ポート22には、メーデーメディア端末装置34が接続されている。このメーデーメディア端末装置34は、車両に関する緊急状態を電波通信により通報したり通報による結果の対応を受け取ったりするための装置であり、センタ70や他車両80との間で電波通信するためのアンテナを備えると共に、乗員の音声入力を可能とするマイクロフォン32を備えている。」(段落【0032】)

キ 「【0034】上記のメーデーメディア端末装置34からの通報は、センタ70で受信される。このセンタ70は、受信器72が接続された装置本体74及びモニタ76から構成される。装置本体74はCPUを有するマイクロコンピュータで構成され、メーデーメディア端末装置34からの通報により、この通報を受理したことを表す受理情報を送出すると共に、通報に対する処理を行う。通報に対する処理の一例としては、病気や事故等の救急医療が必要な場合に救急車両や、第三者の進入等の場合に緊急車両の呼び出し等がある。なお、これら緊急車両や救急車両等の他車両80は、これから向かうことや状況を把握するために、メーデーメディア端末装置34に対して、情報授受を可能とする。
【0035】また、センタ70では、オペレータOPにより上記通報に対処されるが、通報を受理したことを表す受理情報を送出するにあたり、ドライバD等の乗員に、より明確に受理情報が告知されるように指示させたり、泥棒や暴漢等の第三者に対して悟られぬように秘匿性が高く受理情報が告知されるように指示させたりする告知形態を決定し、その決定を受理情報に含めてメーデーメディア端末装置34へ送出することができる。
【0036】次に、本実施の形態の作用を説明する。イグニッションキーにより車両への電源が投入(アクセアリスイッチがオン)されると、ナビゲーションシステム10において図3の処理ルーチンが実行される。ステップ100では、エアバッグ装置48の信号出力を検知し、エアバッグ装置48が作動したか否かを判断する。なお、ステップ100では、水没判定装置50の信号出力を検知して、車両が水没しているか否かの判断を含めてもよい。すなわち、ステップ100では、エアバッグ装置48及び水没判定装置50の少なくとも一方の信号出力を検知し、エアバッグ装置48が作動したか否か、車両が水没しているか否かを判断することができる。
【0037】エアバッグ装置48の作動や車両の水没は、救援を必要とする緊急状態であるので、ステップ100で肯定され、ステップ120へ進む。ステップ120では、エアバッグ装置48が作動したことや車両が水没していることを表す現在状態を状態情報として、メーデーメディア端末34によって、センタ70へ自動的に通報し、ステップ114へ進む。なお、ステップ120では、現在状態が救援を必要とする緊急状態であるため、後述する告知形態の判定のための識別子Kを派手側(H)に設定するものとする。なお、このセンタ70への自動的な通報は、乗員によりその動作を容易にキャンセル可能とする図示しないキャンセルボタンの押圧によって、自動通報を非実行とすることもできる。なお、この識別子Kは本ルーチンの実行に初期値として地味側Lが設定されているものとする。」(段落【0034】ないし【0037】)

ク 「【0043】次のステップ114では、センタ70から送出された信号、すなわち後述する受理情報を受信するまで、信号を受信したか否かを繰り返し判断し、センタ70から送出された信号(受理情報)を受信したときにはステップ114で肯定され、次のステップ115で上記受信した信号に含まれる告知形態を抽出した後に、次のステップ116へ進む。なお、ステップ115では、センタ70から送出された信号に告知形態を表す情報が含まれている場合には告知形態を表す情報によりその告知形態を表す識別子Kを派手側Hまたは地味側Lに設定し、含まれていない場合には予め設定されている識別子Kを変更せずにそのまま用いるものとする。」(段落【0043】)

ケ 「【0046】派手な形態の他例としては、図7に示すように、ドライバに対して映像等で経路補助情報を提供するためのモニタ40に、受理情報の内容を表す「○○センタです。確かに受信しました。救援が到着するまでお待ち下さい」という文章41を表示する形態がある。この場合、モニタ40の画面の背景40Aを点滅表示することがさらに効果的である。なお、この文章41の内容は、受理情報に含まれた情報を用いてもよく、予め記憶した情報を用いてもよい。さらに、上記の文章41をスピーカ装置38によって、音声で提供するようにしてもよい。」(段落【0046】)

コ 「【0049】次に、センタ70側における処理を説明する。センター70側では、図4の処理ルーチンが実行され、ステップ200において、車両から送信された信号を受信したか否かを判断し、メーデー受信を判定する。非受信の場合には、ステップ200の判断を繰り返し、車両から送信された信号を受信すると、ステップ200で肯定され、次のステップ202でメーデー内容を把握する。このステップ202では、車両から送信された信号、すなわち状態情報に含まれる、車両の現在状態を抽出すると共に、その現在状態について、例えば救援を必要とする緊急状態であるか否かを把握する。
・・・
【0051】ステップ202で車両の現在状態の把握が終了すると、次のステップ204において、把握したメーデーの内容に応じて告知形態を決定し、次のステップ206において、告知形態を含めた受理情報を生成し、かつ車両へ向けて送出する。例えば、告知形態の判定のための識別子Kを派手側(H)に設定したり、地味側(L)に設定したりした後に、受理したことを表す識別子を含めて受理情報を生成し、送出する。次のステップ208では車両側のメーデーに対してセンター側の対処があるときにその対処を行う。この対処としては、例えば、緊急車両の呼び出しや警備会社への通報等がある。」(段落【0049】ないし【0051】)

(2)引用文献から分かること
上記5(1)カないしクの記載、上記5(1)コの「【0051】・・・告知形態を含めた受理情報を生成し、かつ車両へ向けて送出する。・・・受理したことを表す識別子を含めて受理情報を生成し、送出する。」の記載、上記5(1)ケの「【0046】・・・モニタ40に、受理情報の内容を表す・・・文章41を表示する形態がある。・・・なお、この文章41の内容は、受理情報に含まれた情報を用いてもよく、予め記憶した情報を用いてもよい。」の記載及び図7の記載から、センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を生成し送出し、メーデーメディア端末装置34が受信したことに応じて、受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41をモニタ40に表示することが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
ア 引用文献に記載された装置の発明について
上記5(1)及び(2)並びに図1、図3、図4及び図7の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「 車両のエアバッグ装置48が作動する救援を必要とする緊急状態の状態情報を自動的に通報する通報情報確認装置であって、
車両に配置され、車両のエアバッグ装置48の信号出力を検知するように構成される衝突検知システムと、
乗員によるキャンセルボタンの押圧により自動通報を非実行とすることと
センタ70で状態情報が受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41と、
車両に配置され、電波通信でセンタ70へ通報したり通報による結果の態様を受け取ったりするメーデーメディア端末装置34と、
車両に配置され、車両の乗員へ受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41を提供するモニタ40と、
車両に配置された装置本体12であって、
エアバッグ装置48の信号出力の検知に応じて、メーデーメディア端末装置34を使って状態情報をセンタ70へ送信し、かつ
センタ70からの、センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を生成し送出し、メーデーメディア端末装置34が受信したことに応じて、受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41をモニタ40に表示する通報情報確認装置。」

イ 引用文献に記載された方法の発明について
上記5(1)及び(2)並びに図1、図3、図4及び図7の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「 車両のエアバッグ装置48の信号出力を検知する通報情報確認方法であって、
車両においてエアバッグ装置48の信号出力を検知することと、
エアバッグ装置48の信号出力の検知に応じて、車両からの救援を必要とする緊急状態の状態情報をセンタ70に送信することと、
センタ70からの、センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を車両において受信することと、
センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を生成し送出し、車両の一部であるモニタ40により、受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41を表示することと、
乗員によるキャンセルボタンの押圧により自動通報を非実行とする通報情報確認方法。」

6 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
引用発明1における「車両」は、その機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「交通システム」に相当し、以下同様に、「エアバッグ装置48が作動する救援を必要とする緊急状態の状態情報」は「衝突通報」に、「自動的に通報する通報情報確認装置」は「自動的に提供する自動衝突通報システム」に、「エアバッグ装置48の信号出力を検知」は「衝突を検知するように構成される衝突検知システム」に、「センタ70」は「遠隔地」に、「状態情報」は「衝突通報」に、「受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41」は「受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージ」に、「電波通信でセンタ70へ通報したり通報による結果の態様を受け取ったりするメーデーメディア端末装置34」は「ワイヤレスで遠隔地へメッセージを送信し、ワイヤレスで遠隔地からメッセージを受信するように構成されたワイヤレス・コミュニケーション・システム」に、「乗員へ受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41を提供するモニタ40」は「乗員へ言葉を伝達するように構成されたユーザ・コミュニケーション・システム」に、「装置本体12」は「処理システム」に、「エアバッグ装置48の信号出力の検知」は「衝突検知システムによる衝突検知」に、「センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を生成し送出し、メーデーメディア端末装置34が受信したことに応じて、受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41をモニタ40に表示」は「遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが前記第一記録メッセージは含まれていない受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、前記交通システムに位置する前記第一記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させる」に、「通報情報確認装置」は「自動衝突通報システム」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、
「交通システムの衝突通報を自動的に提供する自動衝突通報システムであって、
交通システムに配置され、交通システムの衝突を検知するように構成される衝突検知システムと、
遠隔地で衝突通報が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージと、
交通システムに配置され、ワイヤレスで遠隔地へメッセージを送信し、ワイヤレスで遠隔地からメッセージを受信するように構成されたワイヤレス・コミュニケーション・システムと、
交通システムに配置され、交通システムの乗員へ言葉を伝達するように構成されたユーザ・コミュニケーション・システムと、
交通システムに配置された処理システムであって、
衝突検知システムによる衝突検知に応じて、ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って衝突通報を遠隔地へ送信し、かつ
遠隔地からの、遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが前記第一記録メッセージは含まれていない受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、前記交通システムに位置する前記第一記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させるように構成される、
自動衝突通報システム。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1においては、ユーザ作動キャンセル制御装置を備え、遠隔地で衝突通報が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージ及び遠隔地でキャンセル通知が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを含み、交通システムに配置されたメモリ・システムと、衝突通報を遠隔地へ送信した後、ユーザ作動キャンセル制御装置の作動に応じて、キャンセル通知を前記ワイヤレス・コミュニケーション・システムを使って該遠隔地に送信し、かつ、遠隔地からの、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、第二記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させるように構成された処理システムであるのに対し、引用発明1においては、乗員によるキャンセルボタンの押圧により自動通報を非実行とすることを備え、センタ70で状態情報が受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41とを備えるものの、他の事項が不明である点(以下、「相違点1」という。)。

イ 判断
相違点1について検討する。
自動衝突通報システムに関して、次の事項が周知技術であるといえる。
衝突通報を遠隔地へ送信した後、(救助が不要である場合等に)ユーザが衝突通報をキャンセルするためにキャンセル通知を遠隔地へ送信するユーザ作動キャンセル制御装置を備えた構成とすること(例として、特開2002-185647号公報[段落【0046】及び【0047】]、又は、特開2005-37991号公報[段落【0043】]参照。)。
しかしながら、引用発明1及び周知技術のいずれにも、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項である「遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認を該ワイヤレス・コミュニケーション・システムが受領したことに応じて、第二記録メッセージを前記ユーザ・コミュニケーション・システムを使って伝達させるように構成された処理システム」並びに「遠隔地でキャンセル通知が受領されたことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを含み、交通システムに配置されたメモリ・システム」について、開示も示唆もないといえる。
引用発明1は、キャンセルボタンの押圧により自動通報を非実行にするものであり、車両からキャンセルに係る情報を送信するものではない。一方、周知技術は、衝突通報の自動通報後におけるキャンセル通知についての技術であるから、両者を組み合わせる積極的な動機付けがあるとはいえない。そして、引用発明1に周知技術を付加した装置とすることが可能であっても、その付加された引用発明1の装置が、直ちに、遠隔地から車両へのキャンセルの受領確認及び受領確認を受信した際に車両に配置されたメモリシステムに含まれたメッセージを伝達する旨の処理システムを構成するとはいえないし、また、そのように構成することが設計事項であるともいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明19について
ア 対比
引用発明2における「車両」は、その機能又は技術的意義からみて、本願発明19における「交通システム」に相当し、以下同様に、「エアバッグ装置48の信号出力の検知」は「衝突を自動的に検知」及び「交通システムの衝突を検知」に、「通報情報確認方法」は「自動衝突通報方法」に、「車両からの救援を必要とする緊急状態の状態情報をセンタ70に送信する」は「交通システムからの衝突通報を遠隔地に送信する」に、「センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を車両において受信する」は「遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが記録メッセージは含まれていない受領確認を交通システムにおいて受領する」に、「センタ70が状態情報を受理したことを表す識別子を含めた受理情報を生成し送出し、車両の一部であるモニタ40により、受理情報の内容を表す予め記憶した情報による文章41を表示する」は「遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認の受領に応じて、前記交通システムの一部であるユーザ・コミュニケーション・システムを使って」「遠隔地が衝突通報を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージを伝達する」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明19と引用発明2とは、
「交通システムの衝突を自動的に検知する自動衝突通報方法であって、
交通システムにおいて該交通システムの衝突を検知することと、
衝突の検知に応じて、交通システムからの衝突通報を遠隔地に送信することと、
遠隔地からの、遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認であるが記録メッセージは含まれていない受領確認を交通システムにおいて受領することと、
遠隔地が衝突通報を受領した旨の受領確認の受領に応じて、前記交通システムの一部であるユーザ・コミュニケーション・システムを使って、遠隔地が衝突通報を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第一記録メッセージを伝達する自動衝突通報方法。」で一致し、次の点で相違する
(相違点2)
本願発明19においては、衝突通報を遠隔地に送信した後、交通システムのユーザ作動キャンセル制御装置を作動させ、かつ、該ユーザ作動キャンセル制御装置の作動に応じて、該交通システムからのキャンセル通知を遠隔地へ送信することと、遠隔地からの、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認を前記交通システムにて受領することと、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認の受領に応じて、交通システムに保存され、遠隔地がキャンセル通知を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを伝達するのに対し、引用発明2においては、乗員によるキャンセルボタンの押圧により自動通報を非実行とする点(以下、「相違点2」という。)。

イ 判断
相違点2について検討する。
上記6(1)イの相違点1の検討において述べたとおり、衝突通報を遠隔地へ送信した後、(救助が不要である場合等に)ユーザが衝突通報をキャンセルするためにキャンセル通知を遠隔地へ送信するユーザ作動キャンセル制御装置を備えた構成とすることは周知技術である。
しかしながら、引用発明2及び周知技術のいずれにも、相違点2に係る本願発明19の発明特定事項である「遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認を前記交通システムにて受領することと、遠隔地がキャンセル通知を受領した旨の受領確認の受領に応じて、前記交通システムに保存され、遠隔地がキャンセル通知を受領したことを意味する一語以上の言葉を含む第二記録メッセージを伝達すること」について、開示も示唆もないといえる。
引用発明2は、キャンセルボタンの押圧により自動通報を非実行にするものであり、車両からキャンセルに係る情報を送信するものではない。一方、周知技術は、衝突通報の自動通報後におけるキャンセル通知についての技術であるから、両者を組み合わせる積極的な動機付けがあるとはいえない。そして、引用発明2に周知技術を付加した装置とすることが可能であっても、当該装置が、直ちに、遠隔地から車両へのキャンセルの受領確認及び受領確認を受信した際に車両に保存されたメッセージを伝達する旨の手段を構成するとはいえないし、また、そのように構成することが設計事項であるともいえない。
したがって、本願発明19は、引用発明2及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明2ないし18について
本願発明2ないし18は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本願発明20ないし36について
本願発明20ないし36は、本願発明19の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記(2)と同様の理由により、引用発明2及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

7 特許法第29条第1項第3号について
(1)本願発明1
上記6で述べたとおり、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用文献に記載されているに等しい事項とはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献に記載された発明とはいえない。

(2)本願発明19
上記6で述べたとおり、相違点2に係る本願発明19の発明特定事項は、引用文献に記載されているに等しい事項とはいえない。
したがって、本願発明19は、引用文献に記載された発明とはいえない。

8 特許法第37条について
(1)本願発明1
本願発明1は、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の点で先行技術に対する貢献をもたらすから、特別な技術的特徴を有する。
したがって、本願発明1と、本願発明1を直接的又は間接的に引用する本願発明2ないし18とは、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する。
よって、本願発明1ないし18は、特許法第37条に規定する要件を満たすものである。

(2)本願発明19
本願発明19は、相違点2に係る本願発明19の発明特定事項の点で先行技術に対する貢献をもたらすから、特別な技術的特徴を有する。
したがって、本願発明19と、本願発明19を直接的又は間接的に引用する本願発明20ないし36とは、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する。
よって、本願発明19ないし36は、特許法第37条に規定する要件を満たすものである。

9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし36は、引用文献に記載された発明ではないし、引用発明1又は引用発明2並びに周知技術に基き当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないし、更に、発明の単一性の要件を満たすものであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-06 
出願番号 特願2008-506559(P2008-506559)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅野 裕之  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 藤原 直欣
加藤 友也
発明の名称 記録メッセージを使用する自動衝突通報システム  
代理人 城戸 博兒  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 成人  
代理人 池田 正人  
代理人 野田 雅一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ