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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012800042 審決 特許
無効2010800088 審決 特許
無効2012800032 審決 特許
無効2011800051 審決 特許
無効2013800042 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 6項4号請求の範囲の記載形式不備  A61K
管理番号 1285403
審判番号 無効2013-800106  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2014-03-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第4659980号発明「二酸化炭素含有粘性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4659980号の請求項1?13に係る発明についての出願は、1998年10月5日(優先権主張1997年11月7日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月7日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人は平成25年6月12日に本件特許に対して無効審判を請求し、被請求人は平成25年9月2日付けで審判事件答弁書を提出した。

第2 本件発明
本件特許第4659980号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1?13に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】
部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり、
含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。
【請求項2】
得られる二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のキット。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする、水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物。
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。
【請求項8】
顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、又は顎の部分肥満改善用である、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を調製する方法であって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;
を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み、
含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものである、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。
【請求項10】
調製される二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項9又は10に記載の調製方法。
【請求項12】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。
【請求項13】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法。」
(上記請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、以下、請求項2?13に係る発明を、順次「本件特許発明2」、……、「本件特許発明13」という。なお、これらを総称して「本件特許発明」ということがある。)

第3 請求人の主張
これに対して、請求人は、「特許第4659980号にかかる特許請求の範囲の請求項1乃至13の各請求項に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の書証を提出し、本件特許が無効とされるべき理由として、以下の無効理由1(特許法第123条第1項第2号)と無効理由2(特許法第123条第1項第4号)を主張している。

1 無効理由1
(i)本件特許発明1及び本件特許発明9は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証並びに甲第4号証?甲第6号証、甲第7号証の1?10、甲第8号証の1?2、甲第9号証の1?9及び甲第10号証の1?6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(ii)本件特許発明1及び本件特許発明9は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第4号証並びに甲第3号証、甲第7号証の1?10、甲第8号証の1?2、甲第9号証の1?9、甲第10号証の1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(iii)本件特許発明2及び本件特許発明10は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証並びに甲第8号証の2、甲第11号証及び甲第12号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(iv)本件特許発明3及び本件特許発明11は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証並びに甲第4号証、甲第6号証、甲第9号証の1及び甲第13号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(v)本件特許発明4及び本件特許発明12は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証及び甲第9号証の1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(vi)本件特許発明5及び本件特許発明13は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証及び甲第9号証の1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(vii)本件特許発明6は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証甲第8号証の1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(viii)本件特許発明7は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証並びに甲第7号証の1?10、甲第8号証の2及び甲第9号証の2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(ix)本件特許発明8は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証並びに甲第7号証の1?10、甲第8号証の2及び甲第9号証の2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。

2 無効理由2
(ix)本件特許発明1?本件特許発明13は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであって、特許法第123条第1項第4号に該当する。

(証拠方法)
甲第1号証の1 特許出願拒絶査定不服審判(不服2007-886号)における平成22年6月30日付け拒絶理由通知書
甲第1号証の2 特許出願拒絶査定不服審判(不服2007-886号)における平成22年9月6日付け意見書
甲第2号証 特開2012-85954号公報
甲第3号証 特開昭60-215606号公報
甲第4号証 国際公開第96/19189号
(翻訳文として特表平11-501290号公報)
甲第5号証 新村出 編「広辞苑 第六版」、岩波書店
甲第6号証 「高分子分析ハンドブック」、朝倉書店
甲第7号証の1 鈴木正人 監修「機能性化粧品の開発II」普及版
甲第7号証の2 特開平6-285175号公報
甲第7号証の3 国際公開第97/14412号
(翻訳文として特表平11-513683号公報)
甲第7号証の4 実開平5-20735号公報
甲第7号証の5 実開平5-91700号公報
甲第7号証の6 特開平5-337195号公報
甲第7号証の7 特開平8-141030号公報
甲第7号証の8 実用新案登録公報第2508351号
甲第7号証の9 登録実用新案公報第3023646号
甲第7号証の10 実用新案登録公報第2537238号
甲第8号証の1 前田真治 他「人工炭酸泉浴剤の褥創温湿布療法におけ
る皮膚温の変化」、日温気物医誌、第53巻4号、19
90年8月発行
甲第8号証の2 特開昭62-181219号公報
甲第9号証の1 特公平7-8779号公報
甲第9号証の2 特公平7-39333号公報
甲第9号証の3 特開平8-268828号公報
甲第9号証の4 特開昭56-65814号公報
甲第9号証の5 特開昭60-222427号公報
甲第9号証の6 特開平5-229933号公報
甲第9号証の7 特開平6-276961号公報
甲第9号証の8 特開平6-340534号公報
甲第9号証の9 国際公開第96/27368号
甲第10号証の1 「国際化学物質安全性カード」の「クエン酸」
甲第10号証の2 「国際化学物質安全性カード」の「酒石酸」
甲第10号証の3 「国際化学物質安全性カード」の「テレフタル酸」
甲第10号証の4 「国際化学物質安全性カード」の「イソフタル酸」
甲第10号証の5 「国際化学物質安全性カード」の「リン酸二水素カリウ
ム」
甲第10号証の6 「国際化学物質安全性カード」の「二亜硫酸ナトリウム

甲第11号証 国立天文台 編「理科年表 平成8年(机上版)」第4
42?443頁
甲第12号証 社団法人日本化学会編「化学便覧基礎編改訂4版」
甲第13号証 更家勝 作成「試験結果報告書」、平成25年3月11

甲第14号証 中村亮 作成「実験成績証明書」、平成24年5月11

甲第15号証 更家勝 作成「試験結果報告書(2)」、平成25年6
月5日
(以上、審判請求書に添付。)

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。

(証拠方法)
乙第1号証 大阪地方裁判所 平成23年(ワ)第4836号特許権
侵害差止等請求事件 判決
乙第2号証 特許第4659980号に対する本件請求人提出の平成
24年5月24日付け審判請求書(特許無効審判(無効
2012-800084号))
乙第3号証 特許第4659980号に対する特許無効審判(無効2
012-800084号))の第1回口頭審理調書
乙第4号証 特許第4659980号に対する特許無効審判(無効2
012-800084号))の審決
乙第5号証 日置正人 作成「実験成績証明書」、平成23年10月
12日
乙第6号証 日置正人 作成「実験成績証明書」、平成23年10月
12日
乙第7号証 鈴木正人 監修「機能性化粧品の開発III」第314?
323頁、表紙、奥付
乙第8号証 特開2008-255073号公報
乙第9号証 「メディプローラーAA」の商品カタログ
乙第10号証 「スパオキシジェル」の商品カタログ
乙第11号証の1?21 請求人の炭酸パックのチラシ、ウェブ広告
(以上、平成25年9月2日付け答弁書に添付。)

第5 当審の判断
A 請求人の主張する無効理由1について
1 甲第3号証、甲第4号証?甲第6号証、甲第7号証の1?10、甲第8号証の1?2、甲第9号証の1?9及び甲第10号証の1?6
(1)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
(ア1)「1. 炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有することを特徴とするパツク剤。」(請求項1)、
(ア2)「2. 炭酸ガス発生物質が炭酸塩と酸である特許請求の範囲第1項記載のパツク剤。」(請求項2)、
(ア3)「パツク剤は、通常ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし、これに種々の添加成分を配合したもので、その造膜課程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると共に、皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料の一つである。」(第1頁右下欄第1?7行)、
(ア4)「また、酸としては、有機酸及び無機酸の何れも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましい。有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プリピオン酸、酪酸、吉草酸等の直鎖脂肪酸;シユウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸(o,m,p)、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸;桂皮酸、安息香酸、フエニル酢酸、ニコチン酸、カイニン酸、ソルビン酸、ピロリドンカルボン酸、トリメリツト酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸並びにこれら有機酸の酸性塩が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム(メタ重亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸カリウム(メタ重亜硫酸カリウム)、酸性ヘキサメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、スルフアミン酸等が挙げられる。就中コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、リン酸及びこれらの酸性塩が好ましい。」(第2頁右下欄第10行?第3頁右上欄第9行)、
(ア5)「本発明のパツク剤には上記必須成分のほかに、通常のパツク剤に使用される油性基剤、エモリエント剤、保湿剤、皮膜剤、ゲル化剤、増粘剤、アルコールおよび精製水、さらに必要に応じて界面活性剤、血行促進剤、消炎剤、ビタミン類、殺菌剤などの薬効剤、防腐剤、香料、色素などを適宜配合することができる。」(第3頁左下欄第5?11行)、
(ア6)「本発明のパツク剤は次のような形態とすることができる。<1> 従来公知のパツク剤を耐圧容器に入れ、これに高圧炭酸ガス、あるいは炭酸塩と酸、若しくはドライアイス等の炭酸ガス発生源を加えて密閉する。
本パツク剤は使用時内容物を吐出させて被パツク部位に塗布する。<2> 炭酸塩と酸を実質的に水の存在しない状態で、一つの不織布、布、紙等の担体に担持させる。更にこの担体に公知のパツク剤成分を一緒に担持させておいてもよい。
本パツク剤は、使用時被パツク部位に付着させ、この上に蒸しタオルを重ねるとか、水を添加するとかの方法によつてパツク剤に水を供給して、当該炭酸塩と酸とを反応させて炭酸ガスを発生させる。<3> 炭酸塩と酸をそれぞれ異なる2つの上記担体に担持させる。この担体には、<2>と同様に公知のパツク剤成分を担持させることも、また水分を保持させることもできる。
本パツク剤は、使用時被パツク部位に重ねて付着させ、必要な場合(パツク剤が水を含まない場合)には、<2>と同様に水を供給して炭酸ガスを発生させる。」(第2頁左上欄第14行?左下欄第8行、上記文中「<1>」、「<2>」、「<3>」はそれぞれ、丸の中に数字1、丸の中に数字2、丸の中に数字3、である。)、
(ア7)「実施例1
製造例1?4で得た本発明のパツク剤、従来法で得たパツク剤〔(P)及び(Q)〕について、血流量、NMP値及びしつとり感を測定した。
パツク剤(P)
平均分子量40万のポリビニルアルコール15部、平均分子量10万のポリビニルアルコール6部、ポリエチレングリコール(平均分子量300)2部、1,3-ブチレングリコール6部、エタノール5部、酸化チタン3部、香料0.2部、ホウ砂0.1部、色素を微量、および水63.8部から常法により製造した。
パツク剤(Q)
平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール5部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール5部、コラーゲン2部、酸化チタン2部、香料0.2部、色素を微量、および水61.8部から常法により製造した。
製造例1
パツク剤(P)を耐圧容器に入れ、高圧の炭酸ガスを封入し、炭酸ガス含有のパツク剤を得た。耐圧容器内の最終ガス圧は4気圧とした。使用時のpHは6.1。
製造例2
平均分子量40万のポリビニルアルコール15部、平均分子量5万のポリビニルアルコール5部、1,3-ブチレングリコール20部、エタノール5部、スクワラン10部、酸化チタン5部、ポリエチレングリコール(平均分子量300)30部、炭酸水素ナトリウム5部、クエン酸5部から常法により製造した。使用時のpHは6.3。
製造例3
製造例2で製したパツク剤を不織布に均一に塗布して得た。
製造例4
平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール4部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール6部、カルボキシメチルセルロースナトリウム3部、亜鉛華4部、炭酸水素ナトリウム5部、香料0.3部、色素を微量および水53.7部から、常法により製造したものをA剤とした。
平均分子量40万のポリビニルアルコール16部、平均分子量5万のポリビニルアルコール5部、1,3-ブチレングリコール8部、エタノール5部、コラーゲン2部、酸化チタン2部、酒石酸5部、香料0.3部、色素を微量および水56.8部から常法により製造して得たものをB剤とした。使用時、A剤2重量部とB剤3重量部を混合する。使用時のpHは6.2。」(第3頁右下欄第6行?第4頁左下欄第14行)、
(ア8)「本発明はパツク剤に関し、更に詳細には、炭酸ガスによる血行促進作用によつて皮膚をしつとりさせることができるパツク剤に関する。」(第1頁左下欄第13?15行)、
(ア9)「そこで、本発明者は、このような欠点がなく、血行をよく促進するパツク剤を提供すべく鋭意研究を行った結果、炭酸ガスを皮膚に直接作用させると皮膚の血流が良くなり、皮膚にしつとり感を与えることを見出し、本発明を完成した。」(第2頁左上欄第1?6行)、および
(ア10)「

(1) 血流量は、塗布前を1とした相対値で示した。
(2) NMP値は塗布30分後の値を塗布前を1とした相対値で示した。
(3) しつとり感はn=4の平均値を示した。
第1表から明らかなように、発明品は従来品に比較し、血流量、NMP値及びしつとり感の何れにおいても顕著に優れている。」(第5頁左下欄第1行?右下欄第4行)

上記記載事項(ア1)?(ア10)より、甲第3号証には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「不織布、布、紙等の担体に炭酸塩を担持させたものと、それとは異なる不織布、布、紙等の担体に酸を担持させたものの組み合わせからなり、2つの担体それぞれには、さらにパック剤成分を担持させることができ、また水分を保持させることができる、パック剤であって、使用時には被パック部位に重ねて付着させることにより(いずれの担体にも水分が保持されていない場合には併せて水を供給することにより)、発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与えるパック剤。」

(2)甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(イ1)「1.二酸化炭素を放出し、重炭酸塩または炭酸塩を含有する塩基性相と、薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を含有し、歯科衛生製品がディスペンサーから出た後に初めて互いに接触するような2つの分離した相の形態のペースト形歯科衛生製品であって、塩基性相中の重炭酸塩または炭酸塩の含量が10ないし15重量%であることを特徴とするペースト形歯科衛生製品。」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第2頁第2?7行)、および
(イ2)「8.酸性および/または塩基性相が、各ケースにおいて、さらに1またはそれ以上の以下に列挙する成分a)ないしi):
a)保湿剤、特にソルビトールおよび/またはグリセリン;
b)増粘剤、好ましくはキサンタンガムおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはヒドロキシエチルセルロースおよび/またはアラビアガムおよび/またはアルギン酸塩、ポリアクリル酸塩およびトラガカントガムまたはその混合物および/または平均粒度1ないし20μm、好ましくは1ないし15μmで、有利には比表面積50ないし250m^(2)/g、好ましくは100ないし200m^(2)/g、特に190m^(2)/g(BET法で測定;DIN66131)の増粘性沈降水和シリカ;
特にキサンタンガムおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはヒドロキシエチルセルロース;
c)好ましくはSiO_(2)をベースとする研磨作用を有する物質;特に増粘効果をほとんど有しない、平均粒度1ないし20μm、好ましくは1ないし15μm、好ましくは1ないし15μmで、有利には比表面積50ないし100m^(2)/g,好ましくは70ないし90m^(2)/g、特に80m^(2)/g(BET法で測定;DIN66131)の研磨性沈降水和シリカ;
d)有利には平均粒度20ないし80μm、好ましくは30ないし70μm、特に40ないし60μmの白色顔料、好ましくは、TiO_(2);
e)甘味料、好ましくはアセスルパム-Kおよび/またはネオヘスペリジンおよび/またはナトリウムシクラメートおよび/またはサッカリンナトリウム、特にサッカリンナトリウム;
f)pHを調節するためのNaOH;
g)着色料;
h)矯味矯臭剤;
i)水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の歯科衛生製品。」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第2頁第26行?第3頁第24行)、
(イ3)「このようにして、存在する重炭酸塩または炭酸塩添加物は迅速にかつ完全に中和され、歯の清浄操作開始直後、CO_(2)を放出し、これはまず使用者の側の不快な味覚を除去し、第二に、放出された二酸化炭素による微細な泡の迅速かつ有効な形成が起こる。これにより、歯の表面の全領域は、従来の歯科衛生製品では到達し難いかまたは全く到達し得ない部分も含めて洗浄操作中に練り歯磨剤と確実に実質的に均一に接触する。この強い泡の形成に基づく輸送効果の結果、歯の洗浄操作中に得られる活性成分の分布、特に存在するのが好ましいポリリン酸塩の分布が最適化され、これによりまず、新たに蓄積される歯石がキレート形成反応の結果阻害され、次にコーヒー、茶またはニコチンの消費による茶色を呈する歯の表面上の沈着物が緩和される。この結果、漂白プロセスが起こり歯がより白い外観を呈するようになる。さらに、口腔予防に重要なフッ化物イオンの分布が微細な泡により最適化される。」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第7頁第2?13行)、
(イ4)「本発明の歯科衛生製品の酸性および/または塩基性相は、有利には、各ケースにおいてさらに1またはそれ以上の以下に列挙する成分a)ないしi):
a)保湿剤、特にソルビトールおよび/またはグリセリン;
b)増粘剤、好ましくはキサンタンガムおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはヒドロキシエチルセルロースおよび/またはアラビアガムおよび/またはアルギン酸塩、ポリアクリル酸塩およびトラガカントガムまたはその混合物および/または平均粒度1ないし20μm、好ましくは1ないし15μmで、有利には比表面積50ないし250m^(2)/g,好ましくは100ないし200m^(2)/g,とくに190m^(2)/g(BET法で測定;DIN66131)の増粘性沈降水和シリカ;
特にキサンタンガムおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはヒドロキシエチルセルロース;
c)好ましくはSiO_(2)をベースとする研磨作用を有する物質;特に増粘効果をほとんど有しない、平均粒度1ないし20μm、好ましくは1ないし15μm、好ましくは1ないし15μmで、有利には比表面積50ないし100m^(2)/g、好ましくは70ないし90m^(2)/g,とくに80m^(2)/g(BET法で測定;DIN66131)の研磨性沈降水和シリカ;
d)有利には平均粒度20ないし80μm、好ましくは30ないし70μm、特に40ないし60μmの白色顔料、好ましくは、TiO_(2);
e)甘味料、好ましくはアセスルパム-Kおよび/またはネオヘスペリジンおよび/またはナトリウムシクラメートおよび/またはサッカリンナトリウム、特にサッカリンナトリウム;
f)pHを調節するためのNaOH;
g)着色料;
h)矯味矯臭剤;
i)水
を含有する。」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第9頁第27行?第10頁第25行)、
(イ5)「本発明の歯科衛生製品の酸性相中に含まれる薬理学的適合性有機または無機プロトンドナー成分は好ましくはクエン酸、酒石酸、ラセミ酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸またはオルトリン酸またはその混合物であり;特にクエン酸、酒石酸および/またはリンゴ酸であり、最も好ましくは、クエン酸および/または酒石酸である。」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第11頁第7?11行)、および
(イ6)「実施例3:
発泡性歯磨剤
塩基性相 酸性相
(% W/W) (%W/W)
ソルビトール - 60.00
水 38.05 -
キシリトール 20.00 -
水酸化ナトリウム 0.90 -
(50%H_(2)O中溶液)
重炭酸ナトリウム 12.50 -
トリポリリン酸ナトリウム 10.00 -
フッ化ナトリウム 0.30 0.30
サッカリンナトリウム 0.25 0.30
二酸化チタン 1.00 -
SiO_(2 )(サイデント9) 10.00 10.00
SiO_(2 )(サイデント22S) 1.50 8.00
PEG-6 2.00 2.00
ラウリル硫酸ナトリウム 1.50 1.50
キサンタンガム*) 1.00 0.90
酒石酸 - 2.40
矯味矯臭剤 1.00 0.40
着色料(1%) - 0.50
*)増粘剤として」(翻訳文としての特表平11-501290号公報第14頁第1?23行)

上記記載事項(イ1)?(イ6)より、甲第4号証には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「二酸化炭素を放出し、重炭酸塩または炭酸塩を含有する塩基性相と、薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を含有し、歯科衛生製品がディスペンサーから出た後に初めて互いに接触するような2つの分離した相の形態のペースト形歯科衛生製品であって、塩基性相中の重炭酸塩または炭酸塩の含量が10ないし15重量%であることを特徴とするペースト形歯科衛生製品であって、薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分はクエン酸および/または酒石酸であり、塩基性相及び/又は酸性相には増粘剤としてのアルギン酸塩を含有するペースト形歯科衛生製品。」

(3)甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(ウ)「ねんちゅう【粘稠・黏稠】ねばりけがあって密度の濃いこと。-・ざい【粘稠剤・黏稠剤】液体に粘性を与えるため混ぜる物質。」

(4)甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(エ)




(5)甲第7号証の1は、本件特許出願の優先権主張日後に頒布された刊行物である。しかし、甲第7号証の1には「普及版の刊行にあたって」として「本書は1996年に「機能性化粧品II」として刊行されました。普及版の刊行にあたり,内容は当時のままであり一部項目の削除のほか加筆・訂正などの手は加えておりませんので,ご了承ください。」(「普及版の刊行にあたって」の記された頁)との記載があることから、甲第7号証の1に記載された事項は、本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、鈴木正人 監修「機能性化粧品の開発II」初版、シーエムシー出版、1996年8月30日第1刷発行 にも記載された事項と推認できる。
甲第7号証の1には、以下の事項が記載されている。
(オ1)「ここでスリミング機能をさらに分類して考えてみたい。肥満を大きく分けると,単純に脂肪が蓄積されたタイプと水太り・むくみ太りのタイプがあるが,前者は脂質分解促進により,後者は体液(血液・リンパ液)の循環の促進により解消される。」(第189頁第21?23行)、および
(オ2)「血行促進、リンパ液循環促進剤としては,安全性や効果の穏やかさの点で,植物エキスがしばしば使われてきた。漢方薬の中で「駆お血」薬として知られていた物や,ヨーロッパ生薬において古くから用いられてきた物が例としてあげられる^(4))。これらを使うことによって,むくみや水太りが解消されるが,近年特にセルライト(皮下で脂肪が水分や老廃物とともに塊になり皮膚がデコボコになったもの,皮膚の変性により外から見えやすくなる)を解消する作用に注目した報告がなされている。」(第190頁下から第4行?第191頁第2行)

(6)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の2には,以下の事項が記載されている。
(カ1)「【0002】
【従来の技術】高周波エネルギ-は人体内の血液の循環を良くし、細胞質の分泌液を増加させ体内の循環液の循環を活発化させるものとして良く知られており、特に容量的に高周波電流を供給する方法は、医療機器や美容機器として知られている。従来の高周波エネルギ-を供給する装置は、表面を絶縁体で被覆した活性電極を被験者の体に接触させて電流を供給するとともに該被験者が棒状の中性電極を握り活性電極側から中性電極に向かって体内に電流を送り、体内で熱流を発生させるようにしていた。」(第1欄第25?35行)、および
(カ2)「【0008】また本発明に係る痩身装置の使用が局所肥満に効く理由は次のように考えられる。すなわち、脂肪細胞は常に、血糖、脂肪酸といったエネルギ-物質を貯蔵し、非常時に必要に応じて脂肪を動員し、エネルギ-を補う態勢をとっている。普段はリン脂質が脂肪滴を包みこみ脂肪が分解され流出しないよう関門の役割を果している。したがって本装置を使用して普段の状態のままで脂肪を分解するには、脂肪分解酵素(リパ-ゼ)を直接、脂肪細胞内の脂肪滴に接触させ、脂肪の分解を促進させる必要がある。この場合、ノルアドレナリンが分泌されると、リン脂質に直接働きかけ、関門を自動的に開くのでリパ-ゼが脂肪滴に作用して脂肪の分解がおきる。このアドレナリンは脂肪動員の関門をあけさせる引き金の役割を果す血中ホルモンである。本装置によるトリ-トメントは、円導子のマッサ-ジで体表近くの動脈を刺激し、血管にまとわりついた交感神経を活発にするためノルアドレナリンが分泌される。その結果、脂肪の分解がおこり、血中に動員された脂肪はさらに高周波の温熱作用で燃焼され、効率よく消費されるため局所肥満が解消する。」(第3欄第1?20行)

(7)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の3には,以下の事項が記載されている。
(キ1)「1.セリュライト患部組織上の皮膚領域に、8週間からセリュライトの所望の回復が達成されるまでの期間、局部的なウォーターバリア破壊処理を継続的に適用し、TEWL(トランスエピダーマルウォーターロス)を長期的に上昇させることを特徴とするセリュライト状態の回復方法。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第2頁第2?5行)、
(キ2)「局部的に適用された構造上のセリュライト処理」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第6頁第2行)、
(キ3)「セリュライトは、不規則な脂肪性の塊の異常な皮下の沈殿物であり、皮膚の正常で滑らかな曲がりに、見苦しい不要なものを形成する。
生理学的に、セリュライトは、脂肪が沈殿しがちな領域における微小循環の退化によって発生する。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第6頁第11?14行)、
(キ4)「以下で述べた実験データが示すところによると、本発明に係る組成物は、セリュライト処理の有効性の新しいレベルを提供する。そして、皮膚の厚さと血流を大幅に増加し、改善を促進する。これらのおよび他の生成物の有効性は、丁寧に定量化される。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第13頁第16?19行)、
(キ5)「さらに、重要なのは、組織密度がこのように肯定的効果として改善され、真皮および表皮がより堅く弾力性に富み、皮下領域の脂肪が減少し、異質の流動体が減少することである。これらは、本発明の処理による構造上の改善である。」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第13頁第24?27行)、および
(キ6)「

」(翻訳文としての特表平11-513683号公報第33頁)

(8)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の4には,以下の事項が記載されている。
(ク)「【0037】
次に、本考案に係る身体水泡マッサージ装置Aの使用方法、使用状況について説明する。
【0038】
先ず、図6に示すように、前記可撓管37先端を給湯蛇口Hに連結するとともに、本体10を腹部周囲に配置した後、浴槽b内に身体を沈め、しかる後、前記給湯蛇口Hを捻り、温水の供給を開始させる。
【0039】
前記の如くして温水供給が開始されると、該温水は、可撓管37から継手34、可撓性配管35等を経由して各ノズル40先端の噴射口49から噴射されるようになるとともに、該温水供給により混合室48内に負圧が生じるようになるため、浴槽bの水面L上に突出された通気管20先端から混合室48内に外気が流入するようになり、延いては該外気と温水が混合室48内で混合され、水泡と化して噴射口49から噴射されるようになる。
【0040】
このため、高速噴射される水泡により腹部マッサージが成され、血行が促進することにより、該腹部の脂肪分除去に寄与するようになる。」(第11頁第2?18行)

(9)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の5には,以下の事項が記載されている。
(ケ1)「【作用】
本考案は、非通気性素材と遠赤外線放射素材織り込みシート(以下、遠赤シートと略称する)を使用した帯体素地の間を伸縮性素材にて接続し、以上の帯体素地の両端に係止部を設けてなる痩身帯体である。
本案を使用するには、この帯体の係止部を外して開き、人体の手・足に巻いて係止部を互いに係止すればよい。
本案は、他のガードル類と異なり、非通気性素材を中芯に遠赤シートをその外面に用いており、そのため装着箇所の発汗をうながしてぜい肉・脂肪を取り去ってダイエット効果が現れる。
中芯の表面には遠赤シート、その上面に表地、中芯の裏面には吸水性素材による裏地が取り付けられており、非通気性素材による密閉効果と遠赤シートによる血行促進効果とによって出た汗はこの裏地に吸い取られるので快適に使用でき、適当な柄の表地を使用すればファッション的にも優れたものとなる。」(第4頁第11?23行)、
(ケ2)「すなわち、本案は遠赤外線の作用によって人体の血行を盛んにするとともに、非通気性素材によって発汗をうながすという二重の作用を持つためにより有効なダイエットが可能となるものである。」(第5頁第8?10行)、および
(ケ3)「本例は、中芯にビニールシートを使用しているので、柔軟性に富み、人体によくフィットでき、係止部に面ファスナーを用いているので着脱も容易である。
なお、係止方法としては面ファスナー以外の手段、例えばボタン・フックなどを使用することもできる。
以上のごとく、本案を使用することによって、人体所要個所の痩身効果を期待できるものである。」(第5頁第25行?第6頁第1行)

(10)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の6には,以下の事項が記載されている。
(コ1)「【請求項1】 脈波センサ、前記脈センサから収縮期信号を生成する収縮期信号生成手段、電気刺激生成用信号発振器、前記電気刺激生成用信号発振器の出力信号に応じて電気刺激パルスを出力する電気刺激パルス出力手段、前記電気刺激生成用信号発振器と、電気刺激パルス出力手段との間に両者の接続を前記収縮期信号生成手段から出力する収縮期信号に応じて制御するゲート手段よりなることを特徴とする電気刺激装置。」(第1欄第2?9行)、
(コ2)「【0014】更に本発明を人体に装着して使用した際の一実施態様を図5に示した。(10)は本体であり、前述した実施例で示す回路が組み込まれており、更に再充電可能な2次電池を内蔵している。2次電池はニッケル-カドミウム電池単4型4本程度が例示される。(52)は、イヤーセンサであり、光電変換型の脈波センサである。(53)は導子であり、関導子、不関導子を構成している。導子(53)は、粘着性、非粘着、何れでも良く、すくなくとも生体と接触する面に導電性を有していれば良い。(54)は腹帯であり、綿布、合成繊維等によって形成されている。導子(53)は、腹帯と腹部とで、挟まれることによって、固定されている。この様な状態で1日平均7?8時間の使用を繰り返し行なうと血行促進作用が顕著となると共に内蔵を取り囲む筋肉を動かし、余分な脂肪の燃焼を体内で促すことから、痩身的効果を奏するものである。」(第6欄第31?46行)、および
(コ3)「

」(第5頁)

(11)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の7には,以下の事項が記載されている。
(サ)「【0008】
【作用】すなわち、この発明のあかすり具は、上下に相対向する状態で配設された2枚の弾性板状部材と、これら両弾性板状部材の左右両側部を一体的に連結する左右の弾性側壁部材と、上記両弾性板状部材の後端部の間に形成される手指挿入用の開口部とを備えている。そして、一方の弾性板状部材の外側面に多数のマッサージ用突起を分布形成し、他方の弾性板状部材の外側面に多数のあかすり用突起を分布形成するようにしている。このように、この発明のあかすり具は、相対向する2枚の弾性板状部材の一方に多数のマッサージ用突起が分布形成され、他方に多数のあかすり用突起が分布形成されているため、あかすり具自体の洗浄作業が簡単で、また洗浄後は、従来例のようにゴム板42を袋状体41に収容するような作業が不要であり、使い勝手がよい。しかも、単に身体を洗浄するだけではなく、多数のあかすり用突起による摩擦で、従来例の絹布地43ではとれにくかった古い角質や毛穴の脂肪等の汚れや垢を擦りとり、充分なあかすり効果を得ることができるようになる。さらに、マッサージ用突起で直接皮膚表面を押圧することにより、強い押圧刺激摩擦が得られるため、皮膚表面の血流が増加し充分なマッサージ効果が得られるとともに、皮膚表面に対する血流の増加分だけエネルギーが消費され痩身効果をも得ることができるうえ、従来例のように袋状体41が擦り切れるようなことがなく、長期間使用することができて耐久性に優れる。そのうえ、このあかすり具では、あかすり用突起をあかすり用に、マッサージ用突起をマッサージ用に使い分けることで、マッサージ用突起にあかすりによって生じた汚れが付着することがなく、常に衛生的な状態でマッサージを行うことができる。」(第2欄第45行?第3欄第25行)

(12)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の8には,以下の事項が記載されている。
(シ)「〔従来の技術〕
一般に、入浴に際して、マッサージを行えば、非常に効果的であることはよく知られるところである。そのために身体の洗浄と同時にマッサージの行える用具として各種のものが提案されている。
例えば、石鹸箱の底面に、石鹸液が流出する貫通孔を設けるとともに、ゴム製のマッサージ用突起を備え、この石鹸箱を手に持ってマッサージ用突起で身体をこするようにした手動式マッサージ具は公知である(実公昭6-3387号、実公平1-23459号公報)。
また、電動式マッサージ具として、回転ブラシをモータで回転させながらマッサージを行うようにしたものも公知である(実開昭60-177835号公報)。
〔考案が解決しようとする課題〕
問題はこの種マッサージ具を使うにあたって肌を傷めやすい点である。
マッサージの際の肌への刺激によって、皮下の血流が促進され新陳代謝が盛んになる。これによって皮下脂肪が燃焼されるので痩身美容に大きな効果をもつということはよく知られている。
しかし、肌に刺激を強く与え過ぎると、却って肌を傷めたり、不快感を与える。」(第2欄第9行?第3欄第15行)

(13)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の9には,以下の事項が記載されている。
(ス)「【0002】
【従来の技術】
従来の美容機能性を有する石鹸としては、例えば、痩身美容法に使用するものとして、塩入り石鹸や金箔または金粉入り石鹸がある。
【0003】
この種の美容機能性を有する石鹸においては、石鹸を濡らして手で持ち、顔や胸あるいは腹等、皮膚に直接擦りつけ、塩や金箔、金粉が直接皮膚に働き掛けるようにして、施行部の人間の持っているイオンと前記の塩や金粉等のイオンの作用により、施行部の体内の血液の流れを活発にし、新陳代謝を高めて、痩身効果を高めるようにされていた。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の美容機能性を有する石鹸にあっては、血流を促進して新陳代謝を高め、皮下脂肪を燃焼させていたため、皮下脂肪を減らし肥満を防止できる痩身美容効果はあったが、皮膚そのものの美容、特に美顔効果は特に期待できないという問題があった。」(第3頁第6?15行)

(14)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第7号証の10には,以下の事項が記載されている。
(セ)「【0002】
【従来技術】塩化ナトリウムを主成分とし塩辛い味のある白色の結晶であるしおは、動物体の生命維持に必要不可欠な物質として知られ、従来から生活に密着して様々な形で用いられてきた。最近では、食物に混入させて摂取する以外にも、例えば、皮膚に直接擦りつけて皮膚を強靭にし、風邪をひかないようにする健康法や、同様に皮膚に擦りつけてマッサージを行い、血流を促進して新陳代謝を高め、皮下脂肪を減らす痩身美容法等にも用いられている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】しかし、上記した健康法や痩身美容法におけるしおの使用には、次のような課題があった。即ち、上記健康法や痩身美容法においては、粗しお等の粒の粗いものが効果が高いとされている。一般的にはこれを使用して皮膚に擦りつけるので、特に初期の段階において、皮膚への刺激が強過ぎて炎症を起こすことがある。」(第1欄第12行?第2欄第14行)

(15)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第8号証の1には,以下の事項が記載されている。
(ソ1)「III 方法
人工炭酸泉浴剤による褥創治療として田中らの方法^(1))を少し変えた局所湿布法を行った(Fig.1)。先ず,市販の花王バブ1/10コ5gを50℃の温水250mlに溶かし、その中に20cm四方の厚く層にしたガーゼをひたす。そのガーゼを褥創部に当て保温と炭酸ガスの拡散防止のためビニールを当てその上に42℃のホットパックをバスタオルで包んでのせ,30分間保温する。この方法を1日2回連日で行った。」(196頁左下欄下から第4行?右上欄第6行)、および
(ソ2)「V 考察
炭酸ガス泉浴による褥創治療の効果については創部の温度上昇,血管拡張により褥創治療機転が働くと考えられている^(1)2))。本研究においても難治性褥創の褥創面積の改善が認められた。その際,皮膚温の経時的変化は褥創部では比較的高温が持続されることがみられている。この温度上昇は水道水湿布に比べても1?2℃有意に上昇しており,42℃の温熱に加え炭酸ガスそのものの血管拡張作用,血流促進作用によると考えられた。また,周辺部位に比べ褥創部で高温維持されていることについては,創部では真皮が直接露出することで血管軟部組織がより浅いところに位置することになる。このことは一旦表皮を通るより高濃度の炭酸ガスに血管が暴露され,より直接に血管に作用し血管拡張するとも考えられた。以上より,単なる水道水のみの湿布に比較し褥創治癒が促進されると解釈できた。
さらに,皮膚温の経時的変化において急激な温度低下の後,再上昇することについては,冷湿布後の低温暴露による反射的な血管の再拡張と同様な機序による血流再促進,あるいは,炭酸ガスの濃度が褥創部では周辺組織より高く作用し血管拡張が周囲に比べてより大きいために生じる結果ともとらえられた。
一方,湿布周辺部においては逆に湿布前の皮膚温より低温になる部位もみられ,このことは血管拡張により血液が褥創部に流入するために周辺部においては血流のsteal現象により,血流減少が生じているとも考えられる。したがって,湿布法を用いた褥瘡治療においては,周辺に褥創があるならば同時に周辺の褥創も湿布するなど血流減少に対する注意が必要であると思われた。」(第199頁左欄第5?39行)

(16)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第8号証の2には,以下の事項が記載されている。
(タ1)「褥瘡治療剤用組成物には、上記炭酸塩及び有機酸の必須成分の他に、消炎剤、殺菌剤、抗生物質、創傷治癒促進剤、ビタミン類等の任意成分を配合することができる。なお、これら任意成分は、必要に応じて、褥創治療剤に別途添加することもできる。
また、その剤型は粉末、顆粒、錠剤等の形にすることができ、これらの製剤化のために、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を添加することができる。
本発明の褥瘡治療剤は、褥瘡治療剤用組成物を、その水溶液中の二酸化炭素の濃度が300ppm以上、好ましくは500ppm以上となるように水、好ましくは温水に溶解せしめることにより調製される。」(第2頁右上欄第10行?左下欄第4行)、
(タ2)「〔作用〕
本発明褥創治療剤の褥創に対する作用としては、二酸化炭素の血流促進作用あるいは二酸化炭素と炭酸塩、有機酸による相乗作用が考えられるが、その詳細は不明である。」(第2頁左下欄第15?19行)、および
(タ3)「実施例2
77才の女性。多発性脳梗塞と糖尿病、高血圧症の基礎疾患を有し、踵に血行不全による褥瘡が生じた。軟骨塗擦・消毒処置による治療を数ケ月続けたが改善がみられないため、実施例1で得た錠剤1個を10lの温水にとかして下腿部を約20分間足浴(1日2回)させた。当初、褥瘡面積が15.9cm^(2)であったのが、3ケ月後には完治した。」(第2頁右下欄下から第5行?第3頁左上欄第3行)

(17)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の1には,以下の事項が記載されている。
(チ1)「【請求項1】酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤として、水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料。」(第1欄第2?5行)、
(チ2)「

」(第3頁?第4頁)、
(チ3)「(比較例10)
(1) 約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し、熱時アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後、室温まで冷却し、粉末とした。
(2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し、熱時クエン酸を加えて均一に混合した後、室温まで冷却し粉末とした。
(1)に(2)を加え均一に混和した。
〔特性〕
第3表に示す如く、実施例2より水を除いた組成とほぼ同一な組成である比較例4、8?10は発泡性、ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが、経日安定性に著しく劣った。
配合比率を変えた、比較例5及びアルギン酸ナトリウムをのぞいた比較例6、ポリエチレングリコールを除いた比較例7でも経日安定性の改善にはいたらなかった。」(第9欄第6行?第10欄第11行)、および
(チ4)「

」(第5頁)

(18)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の2には,以下の事項が記載されている。
(ツ1)「【0012】
他の添加剤の1には増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを1?15重量部の範囲で含めることができる。アルギン酸ナトリウムはほど良い気泡膜を形成させるので、これも気泡の強弱を調節できるが、1重量部未満では気泡及び炭酸ガスの発生状態が強過ぎ、20重量部を越えると長く持続する反面弱くなり過ぎる。また発生した気泡が破裂する音の強弱のコントロールにも使用される。」(第4欄第29?36行)、および
(ツ2)「【0021】
【実施例】I.第1剤として炭酸水素ナトリウム35重量部、第2剤として硫酸カルシウム60重量部、添加剤として脱脂粉乳、でんぷん各1重量部、アルギン酸ナトリウム1重量部、予め処方したグリチルリチン酸ジカリウム以下香料までの別表に示す10種及び残部炭酸マグネシウム若干量の各粉末を混合し、発泡性化粧料を調製した。この化粧料は弱アルカリを示す。
【0022】
【表1】

II.第1剤の炭酸水素ナトリウムを15重量部に減じ、第2剤はクエン酸に変えるとともに35重量部に減じ、脱脂粉乳、でんぷんは各15重量部に増した上、アルギン酸ナトリウムも10重量部に増し、他は実施例Iと同様にして発泡性化粧料を調製した。
【0023】III.第1剤炭酸水素ナトリウム25重量部、第2剤アスコルビン酸50重量部、脱脂粉乳、でんぷん及びアルギン酸ナトリウム各5重量部、残部表1に示す添加剤により実施例Iと同様にして発泡性化粧料を調製した。
【0024】実施例II、IIIの発泡性化粧料はいずれも弱酸性を示す。故にパーマネント用にはII、IIIのものが使用される。
【0025】IV、V、VIこれらの例は、表1に示した通り、第1剤を炭酸水素アンモニウムに変更し、第2剤以下は前記実施例I?IIIと同様にして調製した4種であり、IVのものが弱アルカリ性のほか2種は弱酸性を示す。
【0026】上述の各発泡性化粧料I?VIに、重量比で略3倍に相当する量の上水を夫々添加し、皮膚に対するパック剤として使用した。被験者の感想を聴取し、また皮膚を観察したところ使用感は良好であり、気泡によるマッサージ効果も強弱様々選択できるため好評であり、また何の異状も認められなかった。さらに化粧料II、III、V、VIを頭髪に対するコールドパーマネントの酸化の際に使用した結果、従来15分程度を要した処理時間が7分程度に短縮できることが確認された。また従来のローションと異なり発泡性のため、液が頭皮を伝い目に入るということがない点でも好評であった。」(第6欄第15行?第12欄第3行)

(19)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の3には,以下の事項が記載されている。
(テ1)「【請求項1】 炭酸塩5?60重量%と有機酸5?60重量%と発熱物質と泡安定剤とを含有することを特徴とするパック化粧料。」(第1欄第2?4行)、
(テ2)「【0010】本発明に使用される泡安定剤としては、各種の粉末及び水溶性高分子が挙げられる。粉末成分としては、タルク、カリオン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等の無機粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等の有機粉末、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料等が挙げられる。これらは一種を用いてもよいし二種以上を用いてもよい。また、これらの粉末は一般の化粧品に適用できる粉末であれば良く、上記の成分に限定されるものではない。水溶性高分子としては、次のようなものが挙げられる。天然の水溶性高分子としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子などが挙げられる。半合成の水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等アルギン酸系高分子などが挙げられる。合成の水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール4,000 、6,000 、20,000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。無機の水溶性高分子としては、例えば、ベントナイト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。これら一種または二種以上を用いてもよい。泡安定剤の粉末および水溶性高分子の配合量は、 0.1?50重量%であり、好ましくは使用性より1?30重量%が適当である。 0.1重量%未満では炭酸ガスの発泡効果が不十分であり、50重量%を越えて配合した場合は発泡効果と発熱効果のバランスが悪くなり、十分な効果が得られない。」(第3欄第12行?第4欄第32行)、
(テ3)「【0012】実施例1
(1)タルク 5.0
(2)炭酸ナトリウム 5.0
(3)コハク酸 5.0
(4)硫酸マグネシウム 85.0
(製法)(1)?(4)を混合し、密封容器に保管した。
【0013】実施例2
(1)トウモロコシデンプン 25.0
(2)炭酸ナトリウム 10.0
(3)炭酸水素ナトリウム 10.0
(4)酒石酸 10.0
(5)リン酸水素一ナトリウム 45.0
(製法)(1)?(5)を混合し、密封容器に保管した。
【0014】実施例3
(1)ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
(2)炭酸ナトリウム 40.0
(3)リンゴ酸 10.0
(4)リン酸水素三ナトリウム 45.0
(製法)(1)?(4)を混合し、密封容器に保管した。
【0015】実施例4
(1)カルボキシメチルセルロース 1.0
(2)炭酸ナトリウム 20.0
(3)酒石酸 40.0
(4)リン酸水素一ナトリウム 20.0
(5)硫酸マグネシウム 19.0
(製法)(1)?(5)を混合し、密封容器に保管した。
【0016】実施例5
(1)タルク 20.0
(2)ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
(3)炭酸ナトリウム 10.0
(4)炭酸水素ナトリウム 5.0
(5)リンゴ酸 5.0
(6)酒石酸 10.0
(7)リン酸水素一ナトリウム 10.0
(8)硫酸マグネシウム 35.0
(製法)(1)?(8)を混合し、密封容器に保管した。」(第4欄第37行?第5欄第24行)、および
(テ4)「【0022】〔効果試験〕女性パネル10名にて試料の評価を行った。実施例1?5、比較例1?3を調理用ボールに取り、2倍量の水を加え充分に攪拌する。ベットにアルミシートを敷き、試料を水と混和して塗布した上にタオルを乗せてパネルに仰向けに寝てもらい、炭酸ガスの物理刺激及び温熱感を評価基準に従って官能評価した。各パネルの評価結果から試料の効果を判定した結果を表1に示す。
【0023】〔評価基準(評価点)〕
(1)炭酸ガスの物理刺激
3:発泡性が強く気持が良い
2:発泡性がやや強く気持が良い
1:発泡性がやや弱い
0:発泡性が全く感じられない
(2)温熱感
3:非常に温かく気持が良い
2:温かく気持が良い
1:やや温かく気持が良い
0:温かさを全く感じない
【0024】〔評価基準〕
(1)炭酸ガスの物理刺激
A:評価点平均2.5点以上
B:評価点平均1.5点以上、2.5点未満
C:評価点平均0.5点以上、1.5点未満
D:評価点平均0.5点未満
(2)温熱感
A:評価点平均2.5点以上
B:評価点平均1.5点以上、2.5点未満
C:評価点平均0.5点以上、1.5点未満
D:評価点平均0.5点未満
【0025】
【表1】
──────────────────────────────────
実 施 例 比 較 例
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5
──────────────────────────────────
(1)炭酸ガスの物理刺激 C A B A A D D D D C
──────────────────────────────────
(2)温熱感 A A A A A A B D B C
──────────────────────────────────」(第7欄第3行?第8欄第25行)

(20)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の4には,以下の事項が記載されている。
(ト1)「1.アルキルフエノキシポリエトキシエタノールを殺精子剤として約2?7重量%、水溶性のポリエチレングリコールの混合物を坐薬基剤として約75?80%、有機酸及び無機炭酸水素塩の混合物を発泡剤として約5?7%、及び両性表面活性剤及び水溶性のフイルム形成剤の混合物を泡安定剤として約4?10%含有する殺精子活性の膣坐薬。」(第1頁左下欄第5?12行)、及び
(ト2)「フイルム形成剤としては、ポビドン(Povidone)K26-28、ポビドンK29-32〔ゼネラル・アニリン・アンド・フイルム社(General Aniline & Film Corp.)から販売〕、セルロース・ゴム、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエーテル及びレテン(Reten)205〔ハーキユレス・パウダー社(Hercules Powder Co.)から販売〕、及びアルギン酸ナトリウムが使用できる。」(第4頁左下欄第8?16行)

(21)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の5には,以下の事項が記載されている。
(ナ1)「(1) 水分との接触によりほぼ安定した泡沫を形成する発泡性無水組成物であって、(a)水溶性ポリサッカライドゴム:20?75重量部、(b)アルカリ金属炭酸塩もしくは重炭酸塩および水溶性生体適合酸もしくは酸性塩とからなる沸騰塩基:10?50重量部、および(c)生体適合カルシウム塩もしくはカリウム塩よりなるゲル化剤:前記ゴムの重量に対して10?100 重量%を含有することを特徴とする発泡性無水組成物。
(2) (a)水溶性ポリサッカライドゴムが、アルギン酸ナトリウムもしくはカリウム、カッパ・カルゲナンナトリウムまたはイオタ・カラゲナンナトリウムよりなる群から選ばれ、(b)沸騰塩基の酸成分が果実酸もしくは生体適合酸性塩であり、また(c)ゲル化剤が、カルシウムのグルコン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、蟻酸塩、塩化物、炭酸塩、リン酸二カルシウム二水塩よりなる群から選ばれ、なお前記ゴムがカッパ・カラゲナンである場合は、前記塩として相応するカリウム塩が使用されることを特徴とする上記第(1) 項に記載の発泡性無水組成物。」(第1頁左下欄第5行?右下欄第5行)、および
(ナ2)「実施例1(膣用避妊剤組成物)
成分 ミリグラム/投与単位
アルギン酸ナトリウム ・・・500
重炭酸ナトリウム ・・・500
クエン酸 ・・・500
グルコン酸カルシウム ・・・200
ノノキシノール-9 ・・・100
乳糖 ・・・500
総 量 ・・ 2300
実施例2(膣用緩衝剤(pH4?5)成型坐薬)
成分 ミリグラム/投与単位
アルギン酸ナトリウム ・・・850
重炭酸ナトリウム ・・・500
クエン酸 ・・ 1000
グルコン酸カルシウム ・・・200
ポリエチレングリコール1540 ・・ 1000
ポリエチレングリコール4000 ・・・250
総 量 ・・ 3300
実施例1と2の混合物は造粒し、通常の打錠機で圧縮製錠できる。」(第5頁左下欄第1行?右下欄第2行)、および
(ナ3)「実施例8
(膣用挿入具により使用する避妊用ゲル剤)
成分 ミリグラム/投与単位
ノノキシノール-9 100.0
アルギン酸ナトリウム 800.0
重炭酸ナトリウム 500.0
クエン酸 500.0
ポリエチレングリコール1500 1000.0
グルコン酸カルシウム 200.0
総 量 3100.0mg」(第6頁左下欄第8?17行)

(22)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の6には,以下の事項が記載されている。
(ニ1)「【請求項1】 炭酸水素ナトリウムを含む第1剤と、前記炭酸水素ナトリウムと水の存在下で混合したときに気泡を発生するクエン酸、酒石酸、乳酸及びアスコルビン酸のうちの1又は2以上の成分を含む第2剤と、前記第1剤と第2剤に夫々分散された異色のものからなり、混合により色調を変え、使用可能な状態になったことを知らせるための2色の着色剤A、Bと、前記第1剤又は第2剤の一方又は双方に含まれた、化粧料としての有効成分とからなることを特徴とする発泡性粉末化粧料。」(第1欄第2?10行)、
(ニ2)「【0013】さらに起泡助長剤を用い、気泡発生を助成することができる。この種の助長剤としては、脱脂粉乳、加水分解ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等が用いられる。なお、粉末セッケンは、それ自体起泡剤としての効能をも有する。」(第3欄第8行?第4欄第2行)、
(ニ3)「【0015】
【表1】

」(第4欄第8行?第4欄最終行)、
(ニ4)「【0019】
【表2】

」(第6欄第13行?第5頁第38行)、および
(ニ5)「【0026】粉末セッケンの場合
実施例IV?VIのものを水とともに用いる。例えば第1剤と第2剤とを等量手のひらにのせて、適量の水をたらすと炭酸ガスが発生し泡立つ。これを皮膚につけて洗浄し、その後洗い流す。発泡作用によって皮膚が適度に刺激され、気持ち良く洗うことができる。」(第10欄第3?8行)

(23)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の7には,以下の事項が記載されている。
(ヌ1)「【請求項1】 難溶性多価金属炭酸塩と有機酸との反応により発生した多価金属イオンとアルギン酸塩によるゲル構造からなり、該難溶性多価金属炭酸塩と有機酸との反応により発生した炭酸ガス気泡が該ゲル構造中に内包されていることを特徴とするアルギン酸ゲル構造体。」(第1欄第2?6行)、
(ヌ2)「【0019】以下、本発明を詳述する。本発明において、難溶性多価金属炭酸塩と有機酸との反応とは、例えば、炭酸カルシウムとカルボン酸との反応で示せば、次のような反応で
【0020】
【化1】
CaCO_(3) +2RCOOH→Ca^(+2)+2RCOO^(-1)+CO_(2) ↑+H_(2)O
難溶性多価金属塩が有機酸の作用で水溶性となり多価金属イオンが発生するとともに、炭酸ガスが発生する。発生した多価金属イオンはアルギン酸塩溶液中の該一価金属イオンと置換しアルギン酸の構成単位であるマンヌロン酸およびグルロン酸に配位して架橋構造を構築し、アルギン酸多価金属ゲルを形成する。一方、炭酸ガスの発生はかかるゲル形成過程に同調して進行しているので、ゲルは炭酸ガスを取り込みながら発達していくことになり、ゲル中にガス気泡が局在化することなく均一に分散される。」(第4欄第37?46行)、および
(ヌ3)「【0043】
【発明の効果】以上説明したように、難溶性多価金属炭酸塩と有機酸とアルギン酸塩による特定の反応によりアルギン酸ゲルの形成と気泡の発生を同時に行い、ゲル構造体のゲル中に均一に気泡を包含させたので、均一な気泡を封入したゲル構造体を構築することができた。」(第9欄第18行?第10欄第1行)

(24)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の8には,以下の事項が記載されている。
(ネ1)「【請求項1】 水性酸と接触すると浮遊ゼラチン状塊を形成することができ、そして実質的に活性成分として、キサンタンガム;酸中和有効量のヘキシトール安定化水酸化アルミニウム及び水性酸と接触すると無毒性ガスを発生することができるガス発生物質からなる制酸組成物。
【請求項2】 キサンタンガムが、酸と接触するとヘキシトール安定化アルミニウム水酸化物と共にゼラチン状塊を形成し、次いでかかるゼラチン状塊が、浮揚力を付与するようなガス容量発生有効量のアルカリもしくはアルカリ金属の炭酸塩又は重炭酸塩により浮揚力を得るものである請求項1記載のラフト形成性(rafting)制酸調合剤。」(第1欄第2?第14行)、
(ネ2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬学的組成物、特に、胃食道炎症もしくは胃腸炎症の治療に用いるための組成物に関する。本発明は、胃酸及び胆汁が食道へ逆流するためにおこる痛みの治療及び緩和に用いるラフト(raft.浮遊物)形成性調合剤であって、制酸薬及びラフト形成性成分として、水酸化アルミニウム、キサンタンガム及び重炭酸塩もしくは炭酸塩を含んでなる調合剤に関する。」(第1欄第41?49行)、および
(ネ3)「【0009】1989年9月26日発行のRorer Pharmaceutical Corporationの米国特許第4,869,902号は、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム又は炭酸マグネシウム及びアルギン酸ナトリウムを含有するラフト形成性の組成物を用いる、逆流治療用薬学的組成物を開示している。1988年5月17日発行のRorer Pharmaceutical Corporationの米国特許第4,744,986号は、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、安定剤及びアルギン酸マグネシウムを含有する、ラフト形成性の逆流食道炎治療用薬学的組成物を開示している。
【0010】1986年9月23日発行のHealth Products Development の米国特許第4,613,497号は、カラゲナン、重炭酸ナトリウム、酒石酸、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムを含有する、胃制酸物質生成性ラフト形成用の乾燥水-泡生成性薬学的組成物を開示している。1984年8月14日発行のAktielbolaget Hassleの米国特許第4,465,667号は、炭酸マグネシウム、ヘキシトール安定化水酸化アルミニウム及び水素化グルコースポリマーを含有する、ラフト形成性の胃酸中性化剤の調製方法を開示している。
【0011】1977年3月15日発行のHercules Incorporated の 米国特許第4,012,333号は、CO2 ガスへ露らすことによるβ-1,3-グルカン-タイプポリサッカライドゲルの調製を開示している。1979年2月20日発行のReckitt & Colman Products Limited の米国特許第4,140,760号は、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム及びアルギン酸ナトリウムを含有する、ラフト形成性の逆流食道炎治療用薬学的組成物を開示している。」(第3欄第25行?第4欄第5行)
(25)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第9号証の9には,以下の事項が記載されている。
(ノ1)「逆流性食道炎、胃炎、消化不良又は消化性潰瘍の治療方法であって、以下に示す組成:
a)8?14%(w/v)の低粘度のアルギン酸ナトリウム、及び、
b)0.1?5%(w/v)の炭酸水素カリウム
を含む水性流動性液体組成物の経口的に有効な量の投与からなる方法。」(翻訳文としての特表平11-501044号公報の特許請求の範囲の請求項6)、および
(ノ2)「 GB 1524740は、炭酸水素ナトリウムは胃酸と接触したときに二酸化炭素を放出する発泡剤(effervescent agent)として使用され、ほぼ類似した液体製品もナトリウム塩を使用することを明記している。炭酸水素ナトリウムは、一般的に、味の特性、溶解性及び一般的な薬学的許容性を含む多くの理由について選ばれた塩である。その他の炭酸水素塩、例えば炭酸水素カリウムは、不十分な味特性(塩気がある(brackish))及び大量の投与において心臓に問題を与える可能性があるため、従来避けられている。」(翻訳文としての特表平11-501044号公報の第4頁第19?25行)

(26)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第10号証の1には,以下の事項が記載されている。
(ハ)「



(27)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第10号証の2には,以下の事項が記載されている。
(ヒ)「



(28)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第10号証の3には,以下の事項が記載されている。
(フ)「



(29)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第10号証の4には,以下の事項が記載されている。
(ヘ)「



(30)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第10号証の5には,以下の事項が記載されている。
(ホ)「



(31)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第10号証の6には,以下の事項が記載されている。
(マ)「



(32)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲第2号証には,以下の事項が記載されている。
(ミ1)「【請求項1】
皮膜成形性を有する重合体と、該重合体を分散又は溶解可能な揮発性溶媒と、を含有する液状組成物であって、
皮膚に塗布すると、前記揮発性溶媒が揮発して、前記皮膚上に前記重合体からなる皮膜が形成される皮膚の痛み緩和用皮膜形成組成物。」(第2頁第2?6行)、
(ミ2)「【0001】
本発明は、皮膚上に皮膜を形性し、接触刺激による接触痛や動きに伴う皮膚の痛みを緩和する皮膜形成組成物に関する。より詳しくは、アロディニアや痛覚過敏などの慢性疼痛を緩和する皮膚皮膜材料に関する。」(第2頁第47?50行)、
(ミ3)「【0020】
本発明によれば、皮膜成形性を有する重合体と、この重合体を分散又は溶解可能な揮発性溶媒とを含有しており、皮膚に塗布すると、揮発性溶媒が揮発して皮膚上に皮膜が形成されるため、皮膚に対する付着性に優れ、皮膚への刺激性がなく、更に、簡便で非侵襲な皮膜を形成することができる。」(第5頁第13?17行)、
(ミ4)「【0062】
(2)揮発性溶媒
揮発性溶媒は、前述した皮膜形成性の重合体が溶解又は分散可能なものであればよく、例えばシリコーンオイル、低沸点の炭化水素化合物、アルコール、水などを使用することができる。皮膜形成性の重合体として、疎水性高分子化合物を用いる場合は、シリコーンオイル、アルコール、又はこれらの混合物が好ましい。皮膜形成性の重合体として、親水性高分子化合物を用いる場合は、水、アルコール、又はこれらの混合物が好ましい。」(第11頁第4?10行)、
(ミ5)「【0077】
[皮膚の痛み緩和用皮膜形成組成物から形成される皮膜の特性]
本実施形態の組成物から形成される固体状の皮膜は、薄く、皮膚への接着性、順応性が良好で、優れた感触を示す。具体的には、以下のような特性をもつ。」(第13頁第4?7行)、および
(ミ6)「【0116】
【表1】

」(第18頁第11?43行)

2 対比・判断
(1)本件特許発明1は、上記のとおり
「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり、
含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 」であるから、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ
からなる態様と、
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなる態様がある。
以下では、前者の態様のものを「本件特許発明1-1」、後者の態様のものを「本件特許発明1-2」と表記する。
1)まず、本件特許発明1-1と引用発明1とを比較する。
(a)本件特許発明1-1は、その使用により得られる二酸化炭素含有粘性組成物の用途が「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される」とされているのに対し、引用発明1は、その使用により得られるものの用途が「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」とされている点、および
(b)本件特許発明1-1では、炭酸塩はアルギン酸ナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され、酸は顆粒(細粒、粉末)剤に含まれるのに対し、引用発明1では、炭酸塩は不織布、布、紙等の担体に担持され、酸はそれとは異なる不織布、布、紙等の担体に担持され、2つの担体それぞれには、さらにパック剤成分を担持させることができ、また水分を保持させることができるとされている点、
で少なくとも相違する。

相違点(a)について、請求人は、上記記載事項(オ1)?(セ)、(ソ2)、(タ2)及び(ツ2)により、引用発明1に対する部分肥満改善用化粧料との用途は当業者にとって容易に想到し得たことである旨を主張し、上記記載事項(ソ1)、(ソ2)及び(タ1)?(タ3)により、引用発明1に対する褥創の治療用医薬組成物との用途は当業者にとって容易に想到し得たことである旨を主張する。
しかし、上記記載事項(オ1)?(セ)、(ソ2)及び(タ2)のいずれも、植物エキス、高周波エネルギー、マッサージ、遠赤外線又は電気刺激等により痩身効果が生じる機序として推定されるものとして血行促進を挙げたものに留まり、それ以外の要因で生じた血行促進によっても必ず部分肥満が改善できることを意味していない。
よって、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、引用発明1に対して部分肥満改善化粧料との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。また、上記記載事項(ツ2)は、部分肥満改善についての言及はされていない。
さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、部分肥満改善化粧料との用途を容易に想到し得たとする根拠になるものは見いだせない。

また、上記記載事項(ソ1)及び(ソ2)は、42℃の温熱とともに温水により炭酸ガスを発生する人工炭酸泉浴剤を用いた温湿布を併用した褥創治療についてのものであって、温熱も温水も用いない引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。また、上記記載事項(タ1)?(タ3)も、特に上記記載事項(タ2)において「褥創に対する作用として、二酸化炭素の血流促進作用あるいは二酸化炭素と炭酸塩、有機酸による相乗作用が考えられるが、その詳細は不明である。」としており、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との美肌効果に着目した記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。
さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるものは見いだせない。

相違点(b)について、請求人は、上記記載事項(ア1)、(ア6)、(ア7)、(イ6)及び(チ1)により、引用発明1に対して、炭酸塩を担持した担体にはさらにパック剤成分を担持させるとともに水分を保持させる一方、酸を担持した担体にはパック剤成分を担持させず水を保持させないことは、当業者が容易に選択し得たことであり、その際に、上記記載事項(ア3)、(イ4)、(ウ)、(エ)及び(チ1)?(ノ2)により、炭酸塩を増粘剤としてのアルギン酸ナトリウムとともに担持させて水性粘性組成物とする一方、上記記載事項(ア4)、(タ1)、(チ3)及び(ハ)?(マ)により、酸を顆粒剤に含まれるものとすることも、当業者が容易になし得たことである旨を主張する。
しかし、引用発明1の「不織布、布、紙等の担体に炭酸塩を担持させたものと、それとは異なる不織布、布、紙等の担体に酸を担持させたものの組み合わせ」からなるものから本件特許発明1-1に近いものを想定したとしても、炭酸塩を担持させた「不織布、布、紙等の担体」にパック剤成分を担持させ水分を保持させる一方、酸を担持させた「不織布、布、紙等の担体」にはパック剤成分を担持させず水分を保持させないものが想定可能であるというに留まる。そして、そのものから「不織布、布、紙等の担体」を除いた状態のものとした上で、さらに粘性付与剤としてアルギン酸ナトリウムを含有させることまで、当業者が甲第3号証の記載事項から容易に想定し得たとはいえない。
また、他の証拠方法を検討しても、引用発明1に対して、炭酸塩を担持した担体にはさらにパック剤成分を担持させるとともに水分を保持させる一方、酸を担持した担体にはパック剤成分を担持させず水を保持させないことを選択すること、及び、引用発明1で用いられる「不織布、布、紙等の担体」を用いることなく、炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含水粘性組成物に含有させ、酸を顆粒(細粒、粉末)剤に含ませることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。
また、本件特許に係る平成23年(ワ)第4836号特許権侵害差止等請求事件についての大阪地裁判決(平成25年1月17日判決言渡)においては、
「前記(2)のとおり,乙3発明は,本件各特許発明と構成及び作用効果のいずれの点においても相違するものである。
乙3発明において本件各特許発明に係る「物」である「二酸化炭素含有粘性組成物」の構成を採用する動機付けや示唆の存在についても認めることはできない。
むしろ,前記(1)によれば,乙3発明は,皮膚上に皮膜を形成するものであり,皮膚への二酸化炭素の浸透量を増大させることができないものである。皮膜を形成させずに,発生させた二酸化炭素を持続的に保持させるという本件各特許発明の構成を採用すると,乙3発明の本来の目的を阻害することになる。
これらのことからすれば,本件各特許発明について,当業者が,乙3発明に基づいて容易に発明することができたものであるとは認めることができない。」(第49頁「(3)容易想到性」の項。なお、ここにいう「乙3発明」は本件における甲第1号証に記載された発明である)と判示しており、そのように判断することもできる。

2)次に、請求人は本件特許発明1-2について言及していないが、念のために、本件特許発明1-2と引用発明1とを比較する。
(a)本件特許発明1-2は、その使用により得られる二酸化炭素含有粘性組成物の用途が「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される」とされているのに対し、引用発明1は、その使用により得られるものの用途が「皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」とされている点、および
(b’)本件特許発明1-2では、炭酸塩は酸とともに複合顆粒(細粒、粉末)剤に含まれ、アルギン酸ナトリウムは含水粘性組成物に含有されるのに対し、引用発明1では、炭酸塩は不織布、布、紙等の担体に担持され、酸はそれとは異なる不織布、布、紙等の担体に担持され、2つの担体それぞれには、さらにパック剤成分を担持させることができ、また水分を保持させることができるとされている点、
で少なくとも相違する。

相違点(a)については本件特許発明1-1と同様、上記記載事項(オ1)?(セ)、(ソ2)及び(タ2)のいずれも、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、引用発明1に対して部分肥満改善化粧料との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。また、上記記載事項(ツ2)は、部分肥満改善についての言及はされていない。
さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、部分肥満改善化粧料との用途を容易に想到し得たとする根拠になるものは見いだせない。
また、上記記載事項(ソ1)及び(ソ2)は、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。また、上記記載事項(タ1)?(タ3)も、、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との美肌効果に着目した記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるとは認められない。
さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明1における「発生する炭酸ガスによる血行促進作用により、皮膚の血流を良くし皮膚にしっとり感を与える」との記載に接した当業者が、褥創の治療用医薬組成物との用途を容易に想到し得たとする根拠になるものは見いだせない。

相違点(b’)については、引用発明1の「不織布、布、紙等の担体に炭酸塩を担持させたものと、それとは異なる不織布、布、紙等の担体に酸を担持させたものの組み合わせ」からなるものから本件特許発明1-2に近いものを想定したとしても、炭酸塩を担持させた「不織布、布、紙等の担体」と酸を担持させた「不織布、布、紙等の担体」を一つのものとして「不織布、布、紙等の担体」を除いて複合顆粒(細粒、粉末)剤とした上で、さらにアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と組み合わせることまで、甲第3号証の記載事項から当業者が容易に想定し得たとはいえない。
また、他の証拠方法を検討しても、引用発明1に対して、炭酸塩を担持させた「不織布、布、紙等の担体」と酸を担持させた「不織布、布、紙等の担体」を一つのものとして「不織布、布、紙等の担体」を除いて複合顆粒(細粒、粉末)剤とした上で、さらにアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と組み合わせることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。

3)さらに、本件特許発明9についても、本件特許発明1と同様に判断される。

したがって、本件特許発明1及び9が、甲第3号証並びに甲第4号証?甲第6号証、甲第7号証の1?10、甲第8号証の1?2、甲第9号証の1?9及び甲第10号証の1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)次に、本件特許発明1と引用発明2とを比較する。
本件特許発明1は「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキット」であることを発明特定事項とする一方、引用発明2は「歯科衛生製品がディスペンサーから出た後に初めて互いに接触するような2つの分離した相の形態のペースト形歯科衛生製品」であることを発明特定事項とすることから、
(c)形態が、本件特許発明1では「キットであって、1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ」であるのに対し、引用発明2では「二酸化炭素を放出し、重炭酸塩または炭酸塩を含有する塩基性相と、薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を含有し、歯科衛生製品がディスペンサーから出た後に初めて互いに接触するような2つの分離した相の形態のペースト形」でありその2つの分離した相はいずれも含水状態であるペーストであって本件特許発明1のような含水粘性組成物と顆粒剤の組み合わせではない点、
(d)用途が、本件特許発明1では「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥瘡の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るため」であるのに対し、引用発明2では「歯科衛生」である点、
で少なくとも相違する。
相違点(c)について、請求人は上記記載事項(イ6)、(タ1)、(チ3)及び(ハ)により、引用発明2における薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を、顆粒状の酸又は酸を含む顆粒剤とすることは、当業者が容易になし得たことである旨を主張する。
しかし、引用発明2は「二酸化炭素を放出し、重炭酸塩または炭酸塩を含有する塩基性相と、薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を含有し、歯科衛生製品がディスペンサーから出た後に初めて互いに接触するような2つの分離した相の形態のペースト形」を採用して所期の効果を得ているところ、上記記載事項(イ6)、(タ1)、(チ3)及び(ハ)を参酌しても、引用発明2における薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を、あえて顆粒状の酸又は酸を含む顆粒剤とすることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。
さらに、他の証拠方法を検討しても、引用発明2における薬理学上適合する有機または無機プロトンドナー成分を含有する酸性相を、あえて顆粒状の酸又は酸を含む顆粒剤とすることが、当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。

相違点(d)について、請求人は上記記載事項(ア1)?(ア10)、(タ1)?(タ3)及び(ツ1)?(ツ2)並びに(オ1)?(セ)により、引用発明2の使用により得られる物を部分肥満改善用化粧料にすることは当業者が容易になし得たことであり、また、上記記載事項(ア1)?(ア10)、(タ1)?(タ3)及び(ツ1)?(ツ2)並びに(ソ1)?(ソ2)により、引用発明2の使用により得られる物を褥創の治療用医薬組成物にすることも、当業者が容易になし得たことである旨を主張する。
しかし、甲第4号証は「歯科衛生」に関するものであって、口腔以外への適用を示唆する記載は何ら存在せず、甲第4号証の記載事項から「部分肥満改善用化粧料」または「褥創の治療用医薬組成物」という用途を当業者が容易に想到し得たとは認められない。そして、上記記載事項(ア1)?(ア10)、(タ1)?(タ3)及び(ツ1)?(ツ2)並びに(オ1)?(セ)を参酌しても、「歯科衛生」を用途とする引用発明2に関して、引用発明2の使用により得られる物を部分肥満改善用化粧料とすることが当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせないし、上記記載事項(ア1)?(ア10)、(タ1)?(タ3)及び(ツ1)?(ツ2)並びに(ソ1)?(ソ2)を参酌しても、「歯科衛生」を用途とする引用発明2に関して、引用発明2の使用により得られる物を褥創の治療用医薬組成物にすることが当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。
さらに、他の証拠方法を検討しても、「歯科衛生」を用途とする引用発明2に関して、引用発明2の使用により得られる物を部分肥満改善用化粧料または褥創の治療用医薬組成物にすることが当業者が容易になし得たことであるとする根拠になるものは見いだせない。

さらに、本件特許発明9についても、本件特許発明1と同様に判断される。

したがって、本件特許発明1及び9は、甲第4号証並びに甲第3号証、甲第7号証の1?10、甲第8号証の1?2、甲第9号証の1?9、甲第10号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)なお、審判請求書第9頁第22行?第10頁第21行および同第38頁第16行?39頁第16行において、請求人が、本件特許は平成22年9月6日付け意見書における虚偽説明により成立したと主張している点を検討する。
請求人のこの主張は、甲15号証に記された試験においてキットB(炭酸水素ナトリウム1.2g+カルボキシメチルセルロース1.9g及びアルギン酸ナトリウム1.9g+水45gとする含水粘性組成物、及びクエン酸2g)による皮膜とキットC(炭酸水素ナトリウム1.2g+アルギン酸ナトリウム3.8g+水45gによる含水粘性組成物、及びクエン酸2g)による皮膜が、キットA(炭酸水素ナトリウム1.2g+カルボキシメチルセルロース3.8g+水45gによる含水粘性組成物、及びクエン酸2g)による皮膜と同様に、「造膜」による固化が生じているとするものであるが、上記(1)及び(2)では、「造膜」による固化の有無は検討しておらず、請求人の主張は上記判断に影響を及ぼさない主張である。また、請求人の主張の内容を検討しても、請求人のこの主張を採用することはできない。

(4)上記(1)?(3)に示したとおり、本件特許発明1及び9は、甲第3号証、甲第4号証?甲第6号証、甲第7号証の1?10、甲第8号証の1?2、甲第9号証の1?9及び甲第10号証の1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、特許法第123条第1項第2号に該当しない。

(5)本件特許発明2?8、10?13はいずれも、本件特許発明1又は本件特許発明9の発明特定事項のすべてを、その発明特定事項の一部としている。
そして、本件特許発明2?8、10?13が、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべき旨の請求人の主張は、本件特許発明1及び9が、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを前提としているところ、上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許発明1及び9は、甲第1号証?甲第2号証、甲第3号証の1?4及び甲第4?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないのであるから、本件特許発明2?8、10?13は、特許法第123条第1項第2号に該当しない。

B 請求人の主張する無効理由2について
1.発明の詳細な説明に記載されている事項
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、部分肥満改善に関して、以下のように記載されている。

ア 「技術分野 本発明は、……また所望する部位に使用すれば、その部位を痩せさせられる二酸化炭素含有粘性組成物とそれを用いる予防及び治療方法に関する。」(本件特許公報第2頁第40行?第3頁第6行)

イ 「背景技術 ……また本発明は、……部分肥満に有効な製剤とそれを用いる予防及び治療方法を提供することを目的とする。」(本件特許公報第3頁第7?31行)

ウ 「発明の開示 本発明者らは鋭意研究を行った結果、二酸化炭素含有粘性組成物が、……部分肥満解消作用、経皮吸収促進作用なども有することを発見して本発明を完成した。」(本件特許公報第3頁第32?36行)

エ 「本発明でいう「含水粘性組成物」とは、水に溶解した、又は水で膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物である。該組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ、皮膚粘膜又は損傷皮膚組織等に適用した場合、二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。」(本件特許公報第6頁第18?21行)

オ 「本発明の二酸化炭素含有粘性組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的、又は美容目的で使用する場合は、該組成物を直接使用部位に塗布するか、あるいはガーゼやスポンジ等の吸収性素材に含浸させるか、またはこれらの素材を袋状に成形してその中に該組成物を入れて使用部位に貼付してもよい。該組成物を塗布又は貼付した部位を通気性の乏しいフィルム、ドレッシング材などで覆う閉鎖療法を併用すれば更に高い効果が期待できる。該組成物を満たした容器に使用部位を浸すことも有効である。その場合、炭酸ガスボンベなどを用いて該組成物に二酸化炭素を補給すればより効果が持続する。」

カ 「実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、表中の数字は特にことわらない限り重量部を表す。
実施例1?84
炭酸塩含有含水粘性組成物と酸との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表1?表7に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、炭酸塩を表1?表7のように組み合わせ、炭酸塩含有含水粘性組成物をあらかじめ調製する。酸は、固形の場合はそのまま、又は粉砕して、又は適当な溶媒に溶解又は分散させて、液体の場合はそのまま、又は適当な溶媒で希釈して用いる。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸を混合し、二酸化炭素含有粘性組成物を得る。」(本件特許公報11頁32?40行)

キ 表1、2の実施例8、18、及び20(本件特許公報13?14頁。「炭酸塩含有含水粘性組成物」及び「酸」の組成が記載され、実施例8、18、20では、「炭酸塩含有含水粘性組成物」として炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを含む増粘剤、及び精製水が挙げられ、「酸」としてクエン酸が用いられており、発泡性や気泡の持続性が確認されている。)

ク 「試験例8(顔と腹部の部分痩せ試験)
41歳男性。ふっくらした頬と太いウエストを痩せさせたいと希望し、実施例8の組成物を1日1回15分間右頬に30g、腹部に100g塗布した。2ヶ月後に右頬が5名の評価者全員により明らかに小さくなったと判断された。腹部はウエストが6cm減少した。」(本件特許公報第46頁第33?36行)

ケ 「試験例9(肌質改善及び顔痩せ試験)
37歳女性。ふっくらした頬と荒れ肌、肌のくすみに悩み、種々の化粧品を試したが効果が得られなかった。実施例20の組成物50gを1日1回10分間顔全体に塗布したところ、1回目の塗布で肌のくすみが消えて白くなり、きめ細かい肌になった。2週間後には3名の評価者全員により、顔が小さくなったと判断された。」(本件特許公報第46頁第37?40行)

コ 「試験例13(腕の部分痩せ試験)
36歳女性。二の腕の太さを気にしていたため、実施例18の組成物30gを左の二の腕に塗布し、食品包装用フィルム(商品名サランラップ、旭化成社製)をその上からまいて6時間放置したところ、二の腕の周囲長が2cm減少した。」(本件特許公報第47頁第4?7行)

2.検討
請求人は、本件特許発明1?13を使用することによって直ちに「部分肥満改善」を実現することはできず、一律に「部分肥満改善」に至るような基準が存在しないことから、「部分肥満改善」とは一定の確率の下に「部分肥満改善が可能である状態」という趣旨であるにもかかわらず、発明の詳細な説明には「部分肥満改善が可能である状態」が成立するために必要な技術的要件が発明の詳細な説明には記載されていないと述べた上で、発明の詳細な説明には「部分肥満改善用化粧料」の用途を実現するために必要な技術的事項が記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たさないと主張している。
しかし、発明の詳細な説明には、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物の具体的な製造方法(摘記事項カ)が記載されており、当該組成物は皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持するものであるところ(摘記事項エ)、例えば実施例8、20及び18において、発泡性や気泡の持続性が実際に確認されたことが記載されている(摘記事項キ)ので、当業者は、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物を、過度の試行錯誤を要することなく製造することができる。
また、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物を部分肥満改善用に用いること(摘記事項ア?ウ)が記載されており、具体的に試験例8、9及び13には、それぞれ、上記実施例8、20及び18で得られた二酸化炭素含有粘性組成物を被験者に使用したところ、顔と腹部の部分痩せ(試験例8)、肌質改善及び顔痩せ(試験例9)及び腕の部分痩せ(試験例13)の効果が得られたこと(摘記事項ク?コ)が記載されている。そして、これらの記載に加え、本件特許の出願時の技術常識も考慮すれば、当業者は、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物は部分肥満改善用の用途に使用できることを、容易に理解できる。
以上のように、発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明1?5に係るキット、本件特許発明本件特許発明7及び8に係る化粧料を、製造できかつ使用できるように記載され、また、本件特許発明9?13に係る調製方法により二酸化炭素含有粘性組成物を調製できるように記載されているから、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1?5、7?13の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。また、本件特許発明6は「部分肥満改善用」を発明特定事項としていないところ、請求人は無効理由2に関して「部分肥満改善用」以外についての主張を述べていない上に、発明の詳細な説明は当業者が本件特許発明6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとする根拠も見出せない。

したがって、請求人の主張はいずれも認められない。

5.小括

以上のように、請求人が提示した主張及び証拠方法によっては、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとはいえないので、請求項1?13に係る発明の特許が、特許法第123条第1項第4号に該当するとはいえない。

C むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1ないし13に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-26 
結審通知日 2014-01-08 
審決日 2014-01-21 
出願番号 特願2000-520135(P2000-520135)
審決分類 P 1 113・ 538- Y (A61K)
P 1 113・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 守安 智岩下 直人  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 前田 佳与子
内田 淳子
登録日 2011-01-07 
登録番号 特許第4659980号(P4659980)
発明の名称 二酸化炭素含有粘性組成物  
代理人 紀田 馨  
代理人 岩▲崎▼ 孝治  
代理人 立花 顕治  
代理人 七條 耕司  
代理人 赤尾 直人  
代理人 山田 威一郎  
代理人 鈴木 一徳  
代理人 田中 順也  

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