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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1285852
審判番号 不服2013-6294  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-08 
確定日 2014-03-12 
事件の表示 特願2006-279754「バッテリ充電システムおよび同システムを操作する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月10日出願公開、特開2007-116892〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年10月13日(パリ条約による優先権主張平成17年10月19日、米国)の出願であって、平成23年11月10日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年11月15日)、これに対し、平成24年4月12日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年12月6日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成24年12月11日)、これに対し、平成25年4月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。


2.平成25年4月8日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年4月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲(平成24年4月12日付手続補正書参照)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1のバッテリ(230)と並列に結合される第1のバッテリ充電器アセンブリ(220)と、
第2のバッテリと並列に結合される第2のバッテリ充電器アセンブリとを含み、
前記第1のバッテリ充電器アセンブリ(220)が、前記第1のバッテリ(230)の測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第1のバッテリ(230)が所定の限界内で動作しているかどうかを決定するバッテリ試験ステージ(256)を含み、
前記第2のバッテリ充電器アセンブリが、前記第2のバッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第2のバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定するバッテリ試験ステージを含み、
前記第1および第2のバッテリが、電気的に結合されて、バッテリのつながりを形成する、バッテリ充電システム(200)。
【請求項2】
n=3個のバッテリ充電器アセンブリをさらに含み、その各々が、それぞれのバッテリ(230)に並列に電気的に結合される、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項3】
前記第1および第2のバッテリ(230)が、直列に結合されて、バッテリの直列つながりを形成する、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項4】
前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリ(220)が各々、
マイクロプロセッサ(204)と、
前記マイクロプロセッサ内に保存されるバッテリ(230)充電プロフィールとを含み、前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリが、それぞれのバッテリ充電プロフィールに従って、前記第1および第2のバッテリを充電するように構成される、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項5】
前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリが各々、
電力入力ステージ(250)と、
電力整流ステージ(252)であって、第1のシリコン制御整流器(270)と、第2のシリコン制御整流器(272)とを含み、その各々が、前記電力入力ステージに電気的に結合される電力整流ステージ(252)とを含む、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項6】
前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリ(220)が各々、電力出力測定ステージ(254)であって、前記第1および第2のシリコン制御整流器(270、272)に電気的に結合され、前記電力入力ステージ(250)から前記第1および第2のバッテリ(230)に電流を流すために、前記第1および第2のシリコン制御整流器を動作させるように構成される電力出力測定ステージ(254)をさらに含む、請求項5記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項7】
前記第1及び第2のバッテリ充電器アセンブリの前記バッテリ試験ステージは、前記第1及び第2のバッテリが、所定の充電電流を受け取っているかどうか、かつ/または所定の充電を維持しているかどうかを決定するように構成される、請求項1乃至6のいずれかに記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項8】
前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリ(220)から外部ユーザへのデータ送信を容易にするため、前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリと前記外部ユーザの間を結合する通信リンク(222)をさらに含む、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項9】
少なくとも1つのピッチモータに動作可能に結合される少なくとも1つのブレード(108)を有するロータと、
請求項1乃至8のいずれかに記載のバッテリ充電システム(200)とを含む、風力タービン(100)。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
第1のバッテリ(230)と並列に結合される第1のバッテリ充電器アセンブリ(220)と、
第2のバッテリと並列に結合される第2のバッテリ充電器アセンブリとを含み、
前記第1のバッテリ充電器アセンブリ(220)が、
前記第1のバッテリ(230)を充電するための第1の交流電力を受ける第1の電力入力ステージ(250)と、
第1のシリコン制御整流器(270)と、第2のシリコン制御整流器(272)とを含み、その各々が、前記第1の電力入力ステージ(250)に電気的に結合され、前記第1のバッテリへの第1の直流充電電流を供給する第1の電力整流ステージ(252)と、
前記第1の直流充電電流を受け取り、前記第1のバッテリ(230)の測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第1のバッテリ(230)が所定の限界内で動作しているかどうかを決定する第1のバッテリ試験ステージ(256)と、
前記第1および第2のシリコン制御整流器(270、272)に電気的に結合され、前記第1のバッテリ試験ステージ(256)からのバッテリ試験の結果に応じて前記第1の電力入力ステージ(250)から前記第1のバッテリ(230)に前記第1の直流充電電流を流すために、前記第1および第2のシリコン制御整流器の動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージ(254)とを含み、
前記第2のバッテリ充電器アセンブリ(220)が、
前記第2のバッテリ(230)を充電するための第2の交流電力を受ける第2の電力入力ステージ(250)と、
第3のシリコン制御整流器(270)と、第4のシリコン制御整流器(272)とを含み、その各々が、前記第2の電力入力ステージ(250)に電気的に結合され、前記第2のバッテリへの第2の直流充電電流を供給する第2の電力整流ステージ(252)と、
前記第2(注:「1」は誤記と認める)の直流充電電流を受け取り、前記第2のバッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第2のバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定する第2のバッテリ試験ステージと、
前記第3および第4のシリコン制御整流器(270、272)に電気的に結合され、前記第2のバッテリ試験ステージ(256)からのバッテリ試験の結果に応じて前記第2の電力入力ステージ(250)から前記第2のバッテリ(230)に前記第2の直流充電電流を流すために、前記第3および第4のシリコン制御整流器の動作を制御するように構成される第2の電力出力測定ステージ(254)とを含み、
前記第1および第2のバッテリが、電気的に結合されて、バッテリのつながりを形成する、バッテリ充電システム(200)。
【請求項2】
n=3個のバッテリ充電器アセンブリをさらに含み、その各々が、それぞれのバッテリ(230)に並列に電気的に結合される、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項3】
前記第1および第2のバッテリ(230)が、直列に結合されて、バッテリの直列つながりを形成する、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項4】
前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリ(220)が各々、
マイクロプロセッサ(204)と、
前記マイクロプロセッサ内に保存されるバッテリ(230)充電プロフィールとを含み、前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリが、それぞれのバッテリ充電プロフィールに従って、前記第1および第2のバッテリを充電するように構成される、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項5】
前記第1及び第2のバッテリ充電器アセンブリの前記第1及び第2のバッテリ試験ステージは、前記第1及び第2のバッテリが、所定の充電電流を受け取っているかどうか、かつ/または所定の充電を維持しているかどうかを決定するように構成される、請求項1乃至4のいずれかに記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項6】
前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリ(220)から外部ユーザへのデータ送信を容易にするため、前記第1および第2のバッテリ充電器アセンブリと前記外部ユーザの間を結合する通信リンク(222)をさらに含む、請求項1記載のバッテリ充電システム(200)。
【請求項7】
少なくとも1つのピッチモータに動作可能に結合される少なくとも1つのブレード(108)を有するロータと、
請求項1乃至6のいずれかに記載のバッテリ充電システム(200)とを含む、風力タービン(100)。」


(2)目的要件について
本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

本件補正後の請求項1は、電力入力ステージ、第1及び第2の電力整流ステージ、第1及び第2の電力出力測定ステージを有しており、本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項5を引用する本件補正前の請求項6も、実質的に、電力入力ステージ、第1及び第2の電力整流ステージ、第1及び第2の電力出力測定ステージを有しているから、本件補正後の請求項1と本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項5を引用する本件補正前の請求項6は一応の対応関係に立つものである。この点は、本件補正後の請求項2-7の各請求項の記載自体が先行する請求項を引用する際の項番号が異なるほかは、実質的に各々本件補正前の請求項2-4、7-9と同一内容が記載されていることからも明らかである。
しかし、本件補正後の請求項6は本件補正後の請求項1を引用しているが、本件補正後の請求項6に対応する本件補正前の請求項8は本件補正前の請求項6を引用していないから、所謂増項補正に該当し、また、本件補正前の請求項6は本件補正前の請求項5のみを引用し、本件補正前の請求項6が引用する本件補正前の請求項5は本件補正前の請求項1のみを引用し、本件補正前の請求項2-4を引用していないが、本件補正前の請求項2-4に各々対応する本件補正後の請求項2-4は本件補正後の請求項1を引用しているから本件補正前の請求項5、6の内容を含むこととなり、所謂増項補正に該当し、本件補正前の請求項6は本件補正後の請求項1以外にも本件補正後の請求項2-4、6にも対応し、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

仮に、本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項1に対応するのであるとすれば、本件補正後の請求項1に係るバッテリ充電システムは、第1及び第2の電力出力測定ステージを有しており、「例示的な実施形態では、電力出力測定ステージ254は、SCR270および272を操作するための論理制御を、したがってバッテリ160を充電するための論理制御を提供するように構成され、診断を実行し、バッテリ160の健全性を監視するように構成され、またバッテリ充電器アセンブリ220からコンピュータ202に、したがってシステム操作者に情報を伝達するように構成される。」(【0020】)とあるように、シリコン制御整流器の動作を制御するという課題を解決していると解せるが、本件補正前の請求項1に係るバッテリ充電システムはシリコン制御整流器及び第1及び第2の電力出力測定ステージを有しておらず、シリコン制御整流器の動作を制御するという課題に対応するものではない。
したがって、第1及び第2の電力出力測定ステージを有している本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一であるものに該当しないから、「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

仮に、本件補正が、本件補正前の請求項1と本件補正前の請求項5の削除を目的とするものであるとすると、本件補正後の特許請求の範囲は、本件補正前の請求項1と本件補正前の請求項5と本件補正前の請求項6と本件補正前の請求項2-4、8の構成を併せ持つ請求項は存在しないはずであるが、本件補正前の請求項1と本件補正前の請求項5と本件補正前の請求項6と本件補正前の請求項2-4、8の構成を併せ持つ本件補正後の請求項2-4、6が存在し、本件補正前の請求項1と本件補正前の請求項5の削除に該当しない。


(3)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-33219号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

1-a「【請求項1】 直列に接続した複数個の電池と、これと同数の充電器を直列に接続し、この直列接続した充電器列の両シングル端子を、前記直列接続した電池列の始端と終端に接続して、電池と充電器を直列に接続し、且つ各充電器のマイナス側出力端子とこれに隣接する充電器のプラス側出力端子との接続部を、各充電器に対応する電池のマイナス側出力端子とこれに隣接する電池のプラス側出力端子との接続部に夫々接続したことを特徴とする直列電池の充電装置。
【請求項2】 充電器が、交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、この整流器に接続された充電電圧供給装置と、充電する電池の周囲温度または電池外側面温度を検出する温度検出器と、この温度検出器の検出温度に対応する前記電池の温度特性に応じた制御信号を前記充電電圧供給装置に出力する制御部とからなることを特徴とする請求項1記載の直列電池の充電装置。」

1-b「本発明の直列電池の充電装置では、電池列と充電器列が直列に接続されていると共に、並列にも接続させているので、充電器から直列に接続された各電池に電流が流れて同時に充電される。先ず残量が多い電池の充電が完了する時点で、今度は次の残量の電池が、これに対応する充電器から充電され、以下残量の順に順次充電が完了していく。また電池の内部抵抗が大きくなるにつれて電池が発熱するため、この電池の温度上昇は電池の周囲または外側面に設けられた温度検出器によって検出され、この検出信号が対応する充電器の制御部に出力され、ここから充電電圧供給装置に制御信号が出力されて温度特性に応じた最適電圧で各電池が充電されるようになっている。」(【0013】)

1-c「以下、本発明を図1ないし図4を参照して詳細に説明する。複数の電池B1 、B2 、B3 が直列に接続されて電池列1が形成されている。これら電池B1 、B2 、B3 と同数の充電器C1 、C2 、C3 が直列に接続されて充電器列6が形成されている。この充電器列6の一方のシングル端子7は前記電池列1の始端2に太い出力ケーブル10aで接続されていると共に、他方のシングル端子8は終端3に出力ケーブル10aで接続され、全体として電池列1と充電器列6が直列に接続されている。
また充電器C1 のマイナス側出力端子と、これに隣接する充電器C2 のプラス側出力端子とを接続する接続線11aは、電池B1 のマイナス側出力端子とこれに隣接する電池B2 のプラス側出力端子との接続線12aに細い出力ケーブル10bで接続されている。同様に充電器C2 のマイナス側出力端子と、これに隣接する充電器C3 のプラス側出力端子とを接続する接続線11bは、電池B2 のマイナス側出力端子とこれに隣接する電池B3 のプラス側出力端子との接続線12bに細い出力ケーブル10bで接続されている。
また前記充電器C1 の概略構成は図3に示すように、交流電源を整流して出力する整流器15と、直流入力をリップル除去及び低インピーダンスにするフィルタ16と、ここからの直流入力を異なった直流出力に変換する充電電圧供給装置17と、この充電電圧を制御する制御部18と、この制御部18に出力側が接続され、電池B1 の周囲または外側面の温度を検出する温度検出器となる温度サーミスタ19と、前記充電電圧供給装置17の出力側のプラス端子に接続された逆流防止手段となるダイオード19とから構成されている。なを電池B2 、B3 に接続されている充電器C2 、C3 の構成も同様である。」(【0014】-【0016】)

1-d「また鉛系電池における単セル当たりの最適充電電圧は、図4に示すように温度により変化する。つまり電池が充電されていくにつれて、セパレータ内の希硫酸の濃度が増大することにより電池自体の内部抵抗が大きくなり、電池に流れる電流が小さくなる。また電池の内部抵抗が大きくなるにつれて電池が発熱するため、この電池の温度上昇は電池B1 の周囲または外側面に設けられた温度サーミスタ19によって常時検出され、この検出信号が制御部18に出力され、ここから充電電圧供給装置17に制御信号が出力されて最適電圧が維持される。
従って上記直列電池の充電装置では個々の電池B1 、B2 、B3 の特性や温度に合わせて最適条件で充電することができ、図6に示す従来の直列電池回路のように、1個でも性能の悪い電池があると、互いに悪影響を及ぼして良品の電池まで充電不足となることを防止できる。しかも図8に示す従来の並列充電回路に比べて、出力ケーブル10の数は2本少なく、電池の数がn個の場合、2n本必要であったものが、本発明ではn+1本で済み、狭い車体内で出力ケーブル10の配線スペースが少なく接続作業も容易となる。」(【0020】-【0021】)

上記記載及び図面に基づけば、充電器C_(1)と充電器C_(2)は、電池B_(1)と電池B_(2)を充電するために各々交流入力端子から商用電源の供給を受けており、整流器は交流入力端子に電気的に結合されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「電池B_(1)と並列に接続される充電器C_(1)と、
電池B_(2)と 並列に接続される充電器C_(2)とを含み、
前記充電器C_(1)が、
前記電池B_(1)を充電するために交流入力端子から商用電源の供給を受け、
整流器と充電電圧供給装置を含み、その整流器が、前記交流入力端子に電気的に結合され、前記電池B_(1)への直流を供給する整流器と充電電圧供給装置と、
前記電池B_(1)の周囲または外側面の温度を検出し、当該検出信号が供給されると共に、前記整流器と充電電圧供給装置のうち前記充電電圧供給装置に前記検出信号に対応する制御信号が出力される制御部とを含み、
前記充電器C_(2)が、
前記電池B_(2)を充電するために交流入力端子から商用電源の供給を受け、
整流器と充電電圧供給装置を含み、その整流器が、前記交流入力端子に電気的に結合され、前記電池B_(2)への直流を供給する整流器と充電電圧供給装置と、
前記電池B_(2)の周囲または外側面の温度を検出し、当該検出信号が供給されると共に、前記整流器と充電電圧供給装置のうち前記充電電圧供給装置に前記検出信号に対応する制御信号が出力される制御部とを含み、
前記電池B_(1)および電池B_(2)が、直列に接続されている、直列電池の充電装置。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。


(2)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「電池B_(1)」、「充電器C_(1)」、「電池B_(2)」、「充電器C_(2)」、「直列電池の充電装置」は、それぞれ本願補正発明の「第1のバッテリ」、「第1のバッテリ充電器アセンブリ」、「第2のバッテリ」、「第2のバッテリ充電器アセンブリ」、「バッテリ充電システム」に相当する。

引用例1発明は、交流電力を交流入力端子を介して整流器に供給しているから、引用例1発明の「前記電池B_(1)を充電するために交流入力端子から商用電源の供給を受け」は、本願補正発明の「前記第1のバッテリを充電するための第1の交流電力を受ける第1の電力入力ステージ」に相当し、引用例1発明の「前記電池B_(2)を充電するために交流入力端子から商用電源の供給を受け」は、本願補正発明の「前記第2のバッテリを充電するための第2の交流電力を受ける第2の電力入力ステージ」に相当する。
引用例1発明の「前記交流入力端子に電気的に結合され、前記電池B_(1)への直流を供給する整流器と充電電圧供給装置」は、本願補正発明の「前記第1の電力入力ステージに電気的に結合され、前記第1のバッテリへの第1の直流充電電流を供給する第1の電力整流ステージ」に相当し、引用例1発明の「前記交流入力端子に電気的に結合され、前記電池B_(2)への直流を供給する整流器と充電電圧供給装置」は、本願補正発明の「前記第2の電力入力ステージに電気的に結合され、前記第2のバッテリへの第2の直流充電電流を供給する第2の電力整流ステージ」に相当する。
引用例1発明の「直列に接続されている」は、本願補正発明の「電気的に結合されて、バッテリのつながりを形成する」に相当する。

引用例1発明の「前記電池B_(1)の周囲または外側面の温度を検出し」は電池の測定値を検出するものであり、「前記充電電圧供給装置に前記検出信号に対応する制御信号が出力される」は所定のステージからの検出信号に応じて電力整流ステージの動作を制御するものであるから、引用例1発明の「前記電池B_(1)の周囲または外側面の温度を検出し、当該検出信号が供給されると共に、前記整流器と充電電圧供給装置のうち前記充電電圧供給装置に前記検出信号に対応する制御信号が出力される制御部」と、本願補正発明の「前記第1および第2のシリコン制御整流器に電気的に結合され、前記第1のバッテリ試験ステージからのバッテリ試験の結果に応じて前記第1の電力入力ステージから前記第1のバッテリに前記第1の直流充電電流を流すために、前記第1および第2のシリコン制御整流器の動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージ」は、「第1の電力整流ステージに電気的に結合され、第1のバッテリ用ステージからの検出信号に応じて前記第1の電力入力ステージから前記第1のバッテリに前記第1の直流充電電流を流すために、前記第1の電力整流ステージの動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージ」との概念で共通する。
引用例1発明の「前記電池B_(2)の周囲または外側面の温度を検出し、当該検出信号が供給されると共に、前記整流器と充電電圧供給装置のうち前記充電電圧供給装置に前記検出信号に対応する制御信号が出力される制御部」と、本願補正発明の「前記第3および第4のシリコン制御整流器に電気的に結合され、前記第2のバッテリ試験ステージからのバッテリ試験の結果に応じて前記第2の電力入力ステージから前記第2のバッテリに前記第2の直流充電電流を流すために、前記第3および第4のシリコン制御整流器の動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージ」は、「第2の電力整流ステージに電気的に結合され、第2のバッテリ用ステージからの検出信号に応じて前記第2の電力入力ステージから前記第2のバッテリに前記第2の直流充電電流を流すために、前記第2の電力整流ステージの動作を制御するように構成される第2の電力出力測定ステージ」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「第1のバッテリと並列に結合される第1のバッテリ充電器アセンブリと、
第2のバッテリと並列に結合される第2のバッテリ充電器アセンブリとを含み、
前記第1のバッテリ充電器アセンブリが、
前記第1のバッテリを充電するための第1の交流電力を受ける第1の電力入力ステージと、
前記第1の電力入力ステージに電気的に結合され、前記第1のバッテリへの第1の直流充電電流を供給する第1の電力整流ステージと、
前記第1の電力整流ステージに電気的に結合され、第1のバッテリ用ステージからの検出信号に応じて前記第1の電力入力ステージから前記第1のバッテリに前記第1の直流充電電流を流すために、前記第1の電力整流ステージの動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージとを含み、
前記第2のバッテリ充電器アセンブリが、
前記第2のバッテリを充電するための第2の交流電力を受ける第2の電力入力ステージと、
前記第2の電力入力ステージに電気的に結合され、前記第2のバッテリへの第2の直流充電電流を供給する第2の電力整流ステージと、
前記第2の電力整流ステージに電気的に結合され、第2のバッテリ用ステージからの検出信号に応じて前記第2の電力入力ステージから前記第2のバッテリに前記第2の直流充電電流を流すために、前記第2の電力整流ステージの動作を制御するように構成される第2の電力出力測定ステージとを含み、
前記第1および第2のバッテリが、電気的に結合されて、バッテリのつながりを形成する、バッテリ充電システム。」
の点で一致し、以下の点で一応の相違がみられる。

〔相違点1〕
第1の電力整流ステージに関し、本願補正発明は、第1のシリコン制御整流器と、第2のシリコン制御整流器とを含み、その各々が、第1の電力入力ステージに電気的に結合されるのに対し、引用例1発明は、整流器と充電電圧供給装置を含み、その整流器が、第1の電力入力ステージに電気的に結合される点。
〔相違点2〕
第2の電力整流ステージに関し、本願補正発明は、第3のシリコン制御整流器と、第4のシリコン制御整流器とを含み、その各々が、第2の電力入力ステージに電気的に結合されるのに対し、引用例1発明は、整流器と充電電圧供給装置を含み、その整流器が、第2の電力入力ステージに電気的に結合される点。
〔相違点3〕
本願補正発明は、第1の直流充電電流を受け取り、第1のバッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第1のバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定する第1のバッテリ試験ステージを有するのに対し、引用例1発明は、第1の直流充電電流を受け取り、第1のバッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第1のバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定する第1のバッテリ試験ステージとの特定がない点。
〔相違点4〕
本願補正発明は、第2の直流充電電流を受け取り、第2のバッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第2のバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定する第2のバッテリ試験ステージを有するのに対し、引用例1発明は、第2の直流充電電流を受け取り、第2のバッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいて前記第2のバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定する第2のバッテリ試験ステージとの特定がない点。
〔相違点5〕
第1の電力整流ステージに電気的に結合され、第1のバッテリ用ステージからの検出信号に応じて第1の電力入力ステージから第1のバッテリに第1の直流充電電流を流すために、前記第1の電力整流ステージの動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージに関し、本願補正発明は、第1の電力整流ステージは第1および第2のシリコン制御整流器であって、第1のバッテリ試験ステージからのバッテリ試験の結果に応じて前記第1および第2のシリコン制御整流器を制御するのに対し、引用例1発明は、第1の電力整流ステージは整流器と充電電圧供給装置であって、バッテリの温度に応じて前記整流器と充電電圧供給装置のうち前記充電電圧供給装置を制御する点。
〔相違点6〕
第2の電力整流ステージに電気的に結合され、第2のバッテリ用ステージからの検出信号に応じて第2の電力入力ステージから第2のバッテリに第2の直流充電電流を流すために、前記第2の電力整流ステージの動作を制御するように構成される第2の電力出力測定ステージに関し、本願補正発明は、第2の電力整流ステージは第3および第4のシリコン制御整流器であって、第2のバッテリ試験ステージからのバッテリ試験の結果に応じて前記第3および第4のシリコン制御整流器を制御するのに対し、引用例1発明は、第2の電力整流ステージは整流器と充電電圧供給装置であって、バッテリの温度に応じて前記整流器と充電電圧供給装置のうち前記充電電圧供給装置を制御する点。


(3)判断
相違点1、2について
バッテリの充電器は、通常電源が商用電源等の交流で、バッテリが直流負荷であるから、電源とバッテリの間に整流機能が必要になる。
電力整流ステージにおいて、2つのシリコン制御整流器の各々が、電力入力ステージに電気的に結合されることは、例えば特開平1-194828号公報(特に図6参照)にもみられるように周知の事項であるから、引用例1発明において、電力整流ステージを上記周知の事項のように、2つのシリコン制御整流器を含み、その各々が、電力入力ステージに電気的に結合されるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。

相違点3、4について
一般に、バッテリを含めた電力の授受を行う機器は、電力授受の際電力に関連する検出値が異常を示すと機器の損傷・事故等のおそれがあるため、当該検出値が異常を示さないか監視すること、即ち所定値以内で動作しているかを監視することは慣用手段(例えば、ブレーカ、ヒューズ等の使用)であるから、引用例1発明において、バッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいてバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定するバッテリ試験ステージを設けることは当業者であれば適宜なし得ることと認められ、その際バッテリの監視対象として直流充電電流とすることは周知の事項(必要ならば、特開2003-47111号公報【0025】、【0026】、電池状態検出回路参照)であるから、バッテリの直流充電電流を受け取り、バッテリの測定値を監視し、該測定値に基づいてバッテリが所定の限界内で動作しているかどうかを決定するバッテリ試験ステージを設けて、相違点3または相違点4のようにすることは、当業者が容易に考えられることと認められる。

相違点5、6について
引用例1発明において、電力整流ステージを、2つのシリコン制御整流器とすることは、上述したように当業者が適宜なし得ることと認められ、その際充電器はバッテリの充電状態に応じて電力整流ステージを制御する必要があるから、当然に2つのシリコン制御整流器の動作を制御するものと認められ、制御の際にはバッテリの測定値が当然に必要であるが、当該測定値の供給源は任意であり、バッテリ試験ステージではバッテリの測定値を監視しているのであるから、バッテリ試験ステージのバッテリの測定値を利用することは当業者が適宜なし得ることと認められる。


そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記「2.[理由I](1)」に記載したとおり平成24年4月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由II](1)」に記載したとおりである。


(2)対比・判断
本願発明は、実質的に本願補正発明から、「前記第1のバッテリ(230)を充電するための第1の交流電力を受ける第1の電力入力ステージ(250)」との限定を省き、「第1のシリコン制御整流器(270)と、第2のシリコン制御整流器(272)とを含み、その各々が、前記第1の電力入力ステージ(250)に電気的に結合され、前記第1のバッテリへの第1の直流充電電流を供給する第1の電力整流ステージ(252)」との限定を省き、「第1のバッテリ試験ステージ」について「前記第1の直流充電電流を受け取り」との限定を省き、「前記第1および第2のシリコン制御整流器(270、272)に電気的に結合され、前記第1のバッテリ試験ステージ(256)からのバッテリ試験の結果に応じて前記第1の電力入力ステージ(250)から前記第1のバッテリ(230)に前記第1の直流充電電流を流すために、前記第1および第2のシリコン制御整流器の動作を制御するように構成される第1の電力出力測定ステージ(254)」との限定を省き、「前記第2のバッテリ(230)を充電するための第2の交流電力を受ける第2の電力入力ステージ(250)」との限定を省き、「第3のシリコン制御整流器(270)と、第4のシリコン制御整流器(272)とを含み、その各々が、前記第2の電力入力ステージ(250)に電気的に結合され、前記第2のバッテリへの第2の直流充電電流を供給する第2の電力整流ステージ(252)」との限定を省き、「第2のバッテリ試験ステージ」について「前記第2の直流充電電流を受け取り」との限定を省き、「前記第3および第4のシリコン制御整流器(270、272)に電気的に結合され、前記第2のバッテリ試験ステージ(256)からのバッテリ試験の結果に応じて前記第2の電力入力ステージ(250)から前記第2のバッテリ(230)に前記第2の直流充電電流を流すために、前記第3および第4のシリコン制御整流器の動作を制御するように構成される第2の電力出力測定ステージ(254)」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由II](2)及び(3)」に記載したとおり、引用例1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-08 
結審通知日 2013-10-15 
審決日 2013-10-29 
出願番号 特願2006-279754(P2006-279754)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 572- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 新海 岳
平城 俊雅
発明の名称 バッテリ充電システムおよび同システムを操作する方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  
代理人 小倉 博  

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