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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1286025
審判番号 不服2012-13274  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-11 
確定日 2014-03-17 
事件の表示 特願2011-249783「ゲームシステムおよび携帯ゲーム機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日出願公開、特開2012- 30126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年3月12日(優先日、平成12年4月25日)に特許出願した特願2001-68032号(以下「親出願」という。)の一部を平成16年12月20日に特願2004-368127号(以下「子出願」という。)として新たな特許出願し、さらにその子出願の一部を平成23年3月14日に特願2011-55401号(以下「孫出願」という。)として新たな特許出願し、さらにその孫出願の一部を平成23年11月15日に新たな特許出願としたものであって、平成23年12月13日付け、及び平成24年3月30日付けで手続補正書が提出され、同年4月18日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年7月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において、平成25年10月23日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年12月17日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成24年3月30日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。
「第1携帯ゲーム機と、第2ゲーム機とからなるゲームシステムであって、
前記第1携帯ゲーム機は、
前記第2ゲーム機に第1プログラムおよび第1コードの転送を要求する要求手段を備え、
前記第2ゲーム機は、
前記第1携帯ゲーム機から転送要求があったことに応じて、前記第1プログラムおよび前記第1コードを前記第1携帯ゲーム機へ転送する転送手段と、
第2プログラムを実行する第2実行手段とを備え、
前記第1携帯ゲーム機は、
第2コードを予め記憶している記憶手段と、
前記第2ゲーム機から転送された前記第1コードと、前記記憶手段に予め記憶されている前記第2コードとに基づいて正否を判断する判断手段と、
前記判断手段によって正と判断されたときに、前記第2ゲーム機から転送された前記第1プログラムを実行する第1実行手段とをさらに備え、
前記第1携帯ゲーム機で前記第1プログラムが実行されると共に前記第2ゲーム機で前記第2プログラムが実行されることにより、当該第1携帯ゲーム機と当該第2ゲーム機との間で通信ゲームの実行が開始される、ゲームシステム。」

3.分割要件について
まず、本願が親出願、子出願、及び孫出願とのそれぞれの関係において、特許法第44条第1項に規定する分割の要件を満たしているか否かについて検討する。
(1)本願の親出願に対する分割の要件の適否
本願発明は、上記2のとおりであって、第1携帯ゲーム機において、カートリッジのような情報記録媒体の装着の有無に関して、何ら特定していないから、カートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものをも包含するものである。
しかるところ、親出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項には、例えば、「(携帯ゲーム機の)装着部に第1情報記憶媒体が装着されておらずかつ前記別のゲーム機と通信可能なときには、前記別のゲーム機に第2プログラムの転送を要求し」(【請求項1】)と記載されているように、携帯ゲーム機(本願発明の「第1携帯ゲーム機」に相当する。)に第1情報記憶媒体(本願明細書の「カートリッジのような情報記録媒体」に相当する。)が装着されていないときに、通信ポートを利用したデータ通信ができるもののみが記載されているに過ぎず、本願発明に包含されるカートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものは、親出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。
してみると、本願発明は、親出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面にに記載した事項の範囲内でないものを含んでいるから、本願は分割出願としての要件を満たしていない。

(2)本願の子出願に対する分割の要件の適否
本願発明は、上記(1)のとおり、カートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものをも包含するものである。
しかるところ、子出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項には、例えば、「(携帯ゲーム機の)装着手段に第1の記憶媒体が装着されておらずかつ前記通信ポートに本携帯ゲーム機と通信可能な別のゲーム機が通信接続されているときには、その別のゲーム機に対して補助プログラムの転送を要求する転送要求コマンドを予め決められた通信プロトコルで送出して、これにより前記通信ポートを通じて転送されてくる補助プログラムを前記読み書き可能記憶手段に記憶させ、その補助プログラムの実行を開始させる」(【請求項2】)と記載されているように、携帯ゲーム機(本願発明の「第1携帯ゲーム機」に相当する。)に第1の情報記憶媒体(本願明細書の「カートリッジのような情報記録媒体」に相当する。)が装着されていないときに、通信ポートを利用したデータ通信ができるもののみが記載されているに過ぎず、本願発明に包含されるカートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものは、子出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。
してみると、本願発明は、子出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面にに記載した事項の範囲内でないものを含んでいるから、本願は分割出願としての要件を満たしていない。

(3)本願の孫出願に対する分割の要件の適否
本願発明は、上記(1)のとおり、カートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものをも包含するものであり、孫出願の出願当初の特許請求の範囲にも、同様のものが記載されているから、本願の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項が、孫出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項の範囲内といえる。
また、他の分割の要件も満たしている。

(4)子出願の親出願に対する分割の要件の適否
子出願は、親出願に対し、分割の要件を満たしている。

(5)孫出願の子出願に対する分割の要件の適否
孫出願は、子出願に対し、分割の要件を満たしている。

(6)むすび
したがって、本願の特許請求の範囲に記載された事項は、親出願、及び子出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載した事項の範囲内でないものを含んでいるから、本願は、親出願、及び子出願に対し、分割出願としての要件を満たしていない。
よって、本願は、適法に親出願、及び子出願の一部を新たな特許出願としたものではないから、本願は、親出願、及び子出願の時にしたものとみなすことはできない。
しかしながら、本願は、適法に孫出願の一部を新たな特許出願としたものであるから、本願は、孫出願の時にしたものとみなす。
以上のとおりであるから、本願は、孫出願の時である平成23年3月14日に出願したものとみなす。

4.特許法第29条第2項違反について
(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用され、本願の孫出願前である平成14年1月15日に頒布された「特開2002-11250号公報 」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下、同じ。)
ア.「【請求項4】少なくとも1台の携帯ゲーム機と別のゲーム機とを通信可能に接続して構成されるゲームシステムであって、前記携帯ゲーム機は、携帯ゲーム機本体で実行されるプログラムを記憶した第1情報記憶媒体を装脱可能に装着するための第1装着手段、前記別のゲーム機を通信可能に接続するための第1通信ポート、電源が投入されたときに実行される起動用プログラムを記憶したプログラム記憶手段、前記別のゲーム機から転送される補助プログラムを読出し/書込み可能に記憶する読み書き可能記憶手段、および、電源が投入されたことに応じて前記プログラム手段に記憶されている前記起動用プログラムを実行し、前記第1装着手段に第1情報記憶媒体が装着されているときには、その起動用プログラムに従って、その第1情報記憶媒体のプログラムの実行を開始し、前記第1装着手段に第1情報記憶媒体が装着されておらずかつ前記第1通信ポートに別のゲーム機が通信可能に接続されているときには、その起動用プログラムに従って、前記第1通信ポートを通じて転送要求コマンドを送出することにより前記別のゲーム機から転送される補助プログラムを前記読み書き可能記憶手段に記憶させ、その補助プログラムの実行を開始する処理を行なう第1処理手段を備え、前記別のゲーム機は、前記携帯ゲーム機において実行される前記補助プログラムおよび前記補助プログラムを携帯ゲーム機に与えるためにこの別のゲーム機で実行される付与プログラムを少なくとも記憶した第2情報記憶媒体、前記第2の情報記憶媒体を装脱可能に装着するための第2装着手段、前記携帯ゲーム機を通信可能に接続するための第2の通信ポート、および、前記第2の通信ポートを通じて前記携帯ゲーム機から与えられる転送要求コマンドを受け取ったことに応じて第2装着手段に装着された第2情報記憶媒体の付与プログラムを実行し、その付与プログラムに従って、前記第2通信ポートを通じて携帯ゲーム機に前記補助プログラムを転送する処理を行なう第2処理手段を備える、ゲームシステム。」
イ.「【0028】一方、ビデオゲーム機14は、「別のゲーム機」として機能するゲーム機であり、扁平矩形の本体42を含み、その本体42の前面に前述の通信ポート18が配置される。この実施例では、4つの通信ポート18が設けられる。
【0037】携帯ゲーム機12のブートROM72は、たとえば16Kバイトのような比較的小容量であり、初期化プログラム領域72aを含み、この領域72aには、先に述べたように、ワークRAM70やCPUレジスタ等を初期化するための初期化プログラムが格納されている。この初期化プログラム領域72aには、認証コード領域72bが含まれ、この認証コード領域72bには、たとえば商標「NINTENDO」を表すイメージデータ(ドットデータないしピクセルデータ)のような認証コードが格納されている。なお、この認証コードは、好ましくは、暗号化又はデータ圧縮されている。
【0039】ブートROM72の領域72eに格納されている転送要求コマンド発行プログラムは、後に説明するように、ビデオゲーム機14のCPU78(図2)に転送要求を発行するためのプログラムである。エラーチェックプログラム領域72fのエラーチェックプログラムは、転送されてくるデータ(ゲームデータやプログラムデータ)のエラーチェックを実行するためのたとえばCRCチェックプログラムである。
【0040】ブートROM72の領域72gに格納されている認証プログラムは、領域72bの認証コードを利用した認証を実行するためのプログラムである。そして、領域72hの開始プログラムは、ワークRAM70に転送されたゲームプログラムまたはカートリッジ40のゲームプログラムの実行を開始させるためのプログラムである。
【0041】携帯ゲーム機12のワークRAM70は、認証コード領域70a,メッセージ領域70b,ダウンロード領域70cおよびゲーム処理領域70dを含む。認証コード領域70aには、認証プログラムを実行する際に、DVD-ROM46の領域46Ba(図4(B))から読み出された認証コードがストアされる。メッセージ領域70bは、携帯ゲーム機12のゲームプレイヤにLCD24を通して種々のメッセージを伝達するためのメッセージデータをストアする。ダウンロード領域70cには、後述のようにしたビデオゲーム機14からダウンロードされたゲームプログラムをストアするための領域である。また、このワークRAM70は、図示しないが、ダウンロード領域70cに転送されたゲームプログラムまたはカートリッジ40のゲームプログラムを実行するときに必要に応じてCPU66によって利用されるワーキングメモリ領域を含む。
【0044】また、図4(B)に示すDVD-ROM46には、大別して2つの領域46Aおよび46Bが形成されている。領域46Aはビデオゲーム14のためのプログラムを格納する領域であり、領域46Bは携帯ゲーム機12のためのプログラムを格納する領域である。実施例で用いられるDVD-ROM46は、周知のように、大容量であり、したがって、記憶容量に比較的余裕があり、携帯ゲーム機用プログラム格納領域46Bを形成することに特に不都合はない。ビデオゲーム機用プログラムおよび携帯ゲーム機用プログラムのデータ量にもよるが、DVD-ROM46に代えてCD-ROMを用いても同様であろう。
【0046】携帯ゲーム機用プログラム格納領域46Bは、認証コード領域46Ba,メッセージ領域46Bb,ダウンロード領域46Bcおよびプログラムデータ領域46Bdを含む。認証コード領域46Baには、携帯ゲーム機12のワークRAM70の領域70aにダウンロードするための認証コード(たとえば商標「NINTENDO」を表すイメージデータ)が格納されている。なお、この認証コードは、好ましくは、暗号化又はデータ圧縮されている。
【0047】メッセージ領域46Bbには、携帯ゲーム機12のワークRAM70の領域70bにダウンロードするためのメッセージデータが格納されている。ダウンロード領域46Bcは、領域46Bdのゲームプログラムを携帯ゲーム機12のワークRAM70の領域70cにダウンロードする第2プログラム又は補助プログラムの一例のダウンロードプログラムを格納するための領域である。ダウンロードプログラムは、例えば、通信ケーブル20の検出処理,通信異常の検出処理,データ転送処理,暗号化処理,エラー処理,認証処理等の各処理を実行するためのプログラムである。そして、領域46Bdには、そのダウンロードプログラムによって携帯ゲーム機12にダウンロードすべきプログラムデータが格納されている。
【0048】なお、携帯ゲーム機用のゲームが複数(n)のステージを含むものであれば、DVD-ROM46のこの領域46Bdには、図5に示すように、ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ,第2ステージデータ,…,第nステージデータが記憶されていて、携帯ゲーム機のワークRAM70のデータ領域70dには、ゲーム基本処理プログラムデータと、その都度必要な第iステージのデータとがストアされる。ここで、ゲーム基本処理プログラムとは、そのゲームプログラムを携帯ゲーム機12で実行する際に不可欠のプログラムであり、たとえばコントローラ26のデータないし状態を取得する補助プログラムなどを含む。
【0058】ステップS9で“YES”が判断されると、ステップS11で、CPU66は、ブートROM72の領域72eのプログラムを実行して、ビデオゲーム機14(のCPU78)に対して、転送要求コマンドを発行する(例えば、ネゴシエーションとも言う)。応じて、ビデオゲーム機14のCPU78は、図4(B)に示すDVD-ROM46の各領域46Ba,46Bbおよび46bcのすべてのデータと、領域46Bdの少なくとも一部のデータとをケーブル20を通して携帯ゲーム機12のワークRAM70に転送する。したがって、ステップS13で、そのようにしてビデオゲーム機14から転送されてきたデータをワークRAM70にストアする。
【0059】その後、ステップS15で、図7のステップS34と同様の認証処理を実行する。この場合、ブートROM72の領域72bからの認証コードと比較されるのは、DVD-ROM46からワークRAM70の領域70aに転送されている認証コードである。ステップS15の認証処理の結果、2つの認証コードが一致しなければ、認証NGであり、その場合には、ステップS19で、CPU66は、たとえば点滅させていた認証コードの文字の点滅を止めるなどして、エラー表示する。
【0060】2つの認証コードが一致すると認証OKとなり、ステップS17で“YES”が判断される。したがって、CPU66は、ステップS21において、ブートROM72の領域72hの開始プログラムを実行して、ワークRAM70の領域70dに転送されているプログラムデータの開始アドレスにジャンプさせる。したがって、この場合には、DVD-ROM46から携帯ゲーム機12に転送ないしダウンロードされたプログラムデータに従って、携帯ゲーム機12でゲームをプレイすることができる。」
ウ.「【0068】図10は、上記「別のゲーム機」として携帯ゲーム機を用いる場合の実施例を示す。この実施例では、また、「情報記憶媒体」として、半導体メモリを内蔵したカートリッジ40を用いる。このカートリッジ40を装着した携帯ゲーム機12Aが親機または「別のゲーム機」として用いられる。そして、カートリッジ40を装着していない他の携帯ゲーム機12Bがその親側携帯ゲーム機12Aからプログラムの転送を受ける。したがって、すべての(この実施例では4台の)携帯ゲーム機12Aおよび12Bが、1つのカートリッジ40においてプログラムされている同じ通信対戦ゲームをプレイすることができる(ワンカートリッジプレイ)。
【0069】図10の実施例では、親側携帯ゲーム機12Aのカートリッジ40にはROMが内蔵されていて、このROM74は、図11に示すように、3つのプログラム格納領域74a1,74a2および74a3を含む。
【0070】プログラム格納領域74a1には、メインプログラムおよび親側通信対戦ゲーム処理プログラムが格納される。このメインプログラムには、親側携帯ゲーム機から子側携帯ゲーム機へプログラムやグラフィクスデータを転送するための付与プログラムを含む。親側通信対戦ゲーム処理プログラムは、通信対戦型のゲームを処理するための親側携帯ゲーム機12AのCPU66が実行するプログラムである。
【0071】ROM74のプログラム格納領域74a2には、補助プログラムが格納される。この実施例では、補助プログラムは、デモ画面表示処理プログラムであり、このデモ画面表示処理プログラムは、後述のように、図13に示すデモ画面表示を実行するためのプログラムである。すなわち、デモ画面表示処理プログラムは、親側携帯ゲーム機12Aから子側携帯ゲーム機12Bへのプログラム転送が完了するまで、子側携帯ゲーム機12Bのゲームプレイヤに画像および/または音声によってプログラム転送状態を知らせるためのデモ画面を表示するためのプログラムである。このデモ画面表示処理プログラムは、親側携帯ゲーム機12Aから子側携帯ゲーム機12Bに転送される。
【0072】また、プログラム格納領域74a3には、同様に子側携帯ゲーム機12Bに転送される子側通信対戦ゲーム処理プログラムが格納される。子側通信対戦ゲーム処理プログラムは、上述のゲームプログラム格納領域74a1の親側通信対戦ゲーム処理プログラムと同様に、当該通信対戦ゲームを子側携帯ゲーム機12BのCPU66によって処理するためのプログラムである。
【0073】なお、親側携帯ゲーム機12AのワークRAM70は、親側携帯ゲーム機12AのCPU66(図2)で適宜利用される。また、親側携帯ゲーム機のブートROM72には、図3(A)に示すような起動プログラムが格納される。
【0074】さらに、子側携帯ゲーム機12BのワークRAM70は、親側携帯ゲーム機12Aから転送されるデモ画面表示処理プログラムおよび子側通信対戦ゲーム処理プログラムをストアするために利用される。また、子側携帯ゲーム機12BのブートROM72には、親側携帯ゲーム機と同様に、図3(A)に示すような起動プログラムが格納される。
【0075】図10に示す実施例において、ブートROM72に格納されている起動プログラム(図3(A))を実行してカートリッジ40が装着されていることを検出した携帯ゲーム機が親側携帯ゲーム機12Aとして動作し、カートリッジが装着されていないことを検出した携帯ゲーム機が子側携帯ゲーム機12Bとして動作する。そして、親側携帯ゲーム機は図12(B)に示す動作を実行し、子側携帯ゲーム機は図12(A)で示す動作を実行する。
【0076】具体的には、カートリッジ40が装着されている親側携帯ゲーム機12Aは、最初のステップS51において、そのカートリッジ40に内蔵されているROM74のプログラム格納領域74a1のメインプログラムを実行する。そして、子側携帯ゲーム機12Bおよび親側携帯ゲーム機12Aは、それぞれ、ステップS52およびS53においてお互いにネゴシェーションを実行し、通信ポート16(図2)を用いた通信状態を確立し、双方向にデータが転送可能な状態とする。このようなネゴシエーションに従って後述のように親側携帯ゲーム機12Aからプログラムやデータの転送を受けるのであるから、このステップS52が、子側携帯ゲーム機12Bから親側携帯ゲーム機12Aへの転送要求あるいは転送要求コマンドとして機能することは明白である。
【0077】なお、図10の実施例では、親側携帯ゲーム機12Aおよび子側携帯ゲーム機12Bのそれぞれの通信ポート16(図2)の間には、図1実施例で示したような通信ケーブルが接続される。したがって、親側携帯ゲーム機12Aおよび子側携帯ゲーム機12Bの間でのネゴシェーションやデータ転送は、通信ポート16およびそれらの間の通信ケーブルを利用して行われる。
【0078】ネゴシェーションの結果、通信可能状態が確立すると、親側携帯ゲーム機12Aは、ステップS54において、ROM74のプログラム格納領域74a2(図11)に格納されているデモ画面表示処理プログラムを、子側携帯ゲーム機12Bの通信ポート16に転送する(転送1)とともに、ステップS55において、ROM74のプログラム格納領域74a3に格納されている子側通信対戦ゲーム処理プログラムを子側携帯ゲーム機12Aの通信ポート16に転送する(転送2)。
【0079】子側携帯ゲーム機12Bでは、ネゴシェーションステップS52の後、ステップS56で、その通信ポート16にデータが転送されるのを待つ。そして、このステップS56において、通信ポート16にデータが転送されたことを検出すると、子側携帯ゲーム機12B(のCPU)は、通信ポート16に転送されてきたデータすなわちデモ画面表示処理プログラムをワークRAM70に記憶する(ステップS57)とともに、ステップS58で、そのワークRAM70に記憶したデモ画面表示処理プログラムの実行を開始する。このデモ画面表示処理プログラムは、たとえば図13に示すようなデモ画面を表示する。
【0080】図13に示すデモ画面は、親側携帯ゲーム機12Aから子側携帯ゲーム機12Bへのデータ転送の期間中、図13(A)-図13(D)に示すように順次変化するデモ画面を表示するとともに、スピーカ25(図2,図10)から図13(A)-図13(D)に示すような音声を出力し、子側携帯ゲーム機12Bのゲームプレイヤに対してデータ転送中であることを知らせる。
【0081】子側携帯ゲーム機12Bでは、図12のステップS58で図13に示すようなデモ画面表示処理プログラムの実行を開始し、続くステップS59では、ステップS55で親側携帯ゲーム機12Aから通信ポート16に転送されてくる子側通信対戦ゲーム処理プログラムを図11に示すようにワークRAM70に記憶する。そして、ステップS60で、その子側通信対戦ゲーム処理プログラムの転送が終了したことを判断すると、その時点で、ステップS61において、子側携帯ゲーム機12Bにおけるデモ画面表示処理プログラムの実行を終了する。
【0082】そして、子側携帯ゲーム機12BではステップS62において子側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行し、親側携帯ゲーム機12AではステップS63において親側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行することによって、親側携帯ゲーム機12Aに装着されたカートリッジ40によって、複数の携帯ゲーム機での通信ゲームがプレイできる。」

上記ア、及びウの記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「携帯ゲーム機と別のゲーム機とを通信可能に接続して構成されており、別のゲーム機として用いられるのは、カートリッジ40を装着した親側携帯ゲーム機12Aであり、カートリッジ40を装着していない他の携帯ゲーム機12Bがその親側携帯ゲーム機12Aからプログラムの転送を受けて、1つのカートリッジ40においてプログラムされている同じ通信対戦ゲームをプレイすることができるゲームシステムであって、親側携帯ゲーム機12Aのカートリッジ40にはROMが内蔵されていて、3つのプログラム格納領域74a1,74a2および74a3を含んでおり、プログラム格納領域74a1には、メインプログラムおよび親側通信対戦ゲーム処理プログラムが格納されており、プログラム格納領域74a2には、補助プログラムが格納されており、プログラム格納領域74a3には、同様に子側携帯ゲーム機12Bに転送される子側通信対戦ゲーム処理プログラムが格納されており、親側携帯ゲーム機12AのワークRAM70は、親側携帯ゲーム機12AのCPU66で適宜利用され、親側携帯ゲーム機のブートROM72には、起動プログラムが格納されており、子側携帯ゲーム機12BのワークRAM70は、親側携帯ゲーム機12Aから転送されるデモ画面表示処理プログラムおよび子側通信対戦ゲーム処理プログラムをストアするために利用され、子側携帯ゲーム機12BのブートROM72には、親側携帯ゲーム機と同様に、起動プログラムが格納されており、カートリッジ40が装着されている親側携帯ゲーム機12Aは、最初のステップS51において、そのカートリッジ40に内蔵されているROM74のプログラム格納領域74a1のメインプログラムを実行し、そして、子側携帯ゲーム機12Bおよび親側携帯ゲーム機12Aは、それぞれ、ステップS52およびS53においてお互いにネゴシェーションを実行し、通信ポート16を用いた通信状態を確立し、双方向にデータが転送可能な状態とし、このステップS52が、子側携帯ゲーム機12Bから親側携帯ゲーム機12Aへの転送要求あるいは転送要求コマンドとして機能しており、ネゴシェーションの結果、通信可能状態が確立すると、親側携帯ゲーム機12Aは、ステップS55において、ROM74のプログラム格納領域74a3に格納されている子側通信対戦ゲーム処理プログラムを子側携帯ゲーム機12Aの通信ポート16に転送し、子側携帯ゲーム機12Bは、ステップS59では、ステップS55で親側携帯ゲーム機12Aから通信ポート16に転送されてくる子側通信対戦ゲーム処理プログラムをワークRAM70に記憶し、そして、子側携帯ゲーム機12BではステップS62において子側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行し、親側携帯ゲーム機12AではステップS63において親側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行することによって、親側携帯ゲーム機12Aに装着されたカートリッジ40によって、複数の携帯ゲーム機での通信ゲームがプレイできる、ゲームシステム。」

また、上記イの記載事項を総合すると、引用例には、次の事項(以下「引用例に記載の事項」という。)が記載されているものと認められる。
「携帯ゲーム機12のCPU66は、ブートROM72の領域72eのプログラムを実行して、ビデオゲーム機14に対して、転送要求コマンドを発行し、これに応じて、ビデオゲーム機14のCPU78は、DVD-ROM46の認証コードが格納された認証コード領域46Baのデータ、及び携帯ゲーム機12にダウンロードすべきプログラムデータが格納されたプログラムデータ領域46Bdのデータ(ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ、第2ステージデータ、…、第nステージデータ)を携帯ゲーム機12のワークRAM70に転送し、そのようにしてビデオゲーム機14から転送されてきたデータをワークRAM70にストアして、その後、認証処理を実行し、この場合、ブートROM72の領域72bからの認証コードと比較されるのは、DVD-ROM46からワークRAM70の領域70aに転送されている認証コードであり、2つの認証コードが一致しなければ、認証NGであり、2つの認証コードが一致すると認証OKとなり、DVD-ROM46から携帯ゲーム機12に転送ないしダウンロードされたプログラムデータに従って、携帯ゲーム機12でゲームをプレイすることができるゲームシステム。」

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
後者における「『携帯ゲーム機』、『他の携帯ゲーム機12B』、及び『子側携帯ゲーム機12B』」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「第1携帯ゲーム機」に相当し、以下同様に、「『別のゲーム機』、及び『親側携帯ゲーム機12A』」は「第2ゲーム機」に、「子側通信対戦ゲーム処理プログラム」は「第1プログラム」に、「親側通信対戦ゲーム処理プログラム」は「第2プログラム」に、それぞれ相当する。
また、後者は、携帯ゲーム機と別のゲーム機とを通信可能に接続して構成されているゲームシステムであるから、「子側携帯ゲーム機12Bと、親側携帯ゲーム機12Aとからなるゲームシステム」といえる。
また、後者は、子側携帯ゲーム機12Bおよび親側携帯ゲーム機12Aが、それぞれ、ステップS52およびS53においてお互いにネゴシェーションを実行しており、このステップS52が、子側携帯ゲーム機12Bから親側携帯ゲーム機12Aへの転送要求あるいは転送要求コマンドとして機能しているから、「子側携帯ゲーム機12Bは、親側携帯ゲーム機12Aに要求する要求手段を備えている」といえ、また「親側携帯ゲーム機12Aは、子側携帯ゲーム機12Bから転送要求があったことに応じて、前記子側携帯ゲーム機12Bへ転送する転送手段を備えている」といえる。
また、後者における「親側携帯ゲーム機12A」は、親側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行しているから、「親側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行する第2実行手段を備えている」といえる。
また、後者における「子側携帯ゲーム機12B」は、親側携帯ゲーム機12Aが子側携帯ゲーム機12Aに転送した子側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行しているから、「親側携帯ゲーム機12Aから転送された子側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行する第1実行手段を備えている」といえる。
また、後者は、子側携帯ゲーム機12Bでは子側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行し、親側携帯ゲーム機12Aでは親側通信対戦ゲーム処理プログラムを実行することによって、親側携帯ゲーム機12Aに装着されたカートリッジ40によって、複数の携帯ゲーム機での通信ゲームがプレイできるから、「子側携帯ゲーム機12Bで子側通信対戦ゲーム処理プログラムが実行されると共に親側携帯ゲーム機12Aで親側通信対戦ゲーム処理プログラムが実行されることにより、当該子側携帯ゲーム機12Bと当該親側携帯ゲーム機12Aとの間で通信ゲームの実行が開始される」といえる。
したがって、両者は、
「第1携帯ゲーム機と、第2ゲーム機とからなるゲームシステムであって、
前記第1携帯ゲーム機は、
前記第2ゲーム機に要求する要求手段を備え、
前記第2ゲーム機は、
前記第1携帯ゲーム機から転送要求があったことに応じて、前記第1携帯ゲーム機へ転送する転送手段と、
第2プログラムを実行する第2実行手段とを備え、
前記第1携帯ゲーム機は、
前記第2ゲーム機から転送された前記第1プログラムを実行する第1実行手段とをさらに備え、
前記第1携帯ゲーム機で前記第1プログラムが実行されると共に前記第2ゲーム機で前記第2プログラムが実行されることにより、当該第1携帯ゲーム機と当該第2ゲーム機との間で通信ゲームの実行が開始される、ゲームシステム。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
[相違点1]
第1携帯ゲーム機の要求手段の要求内容が、本願発明は、「第1プログラムおよび第1コードの転送」であるのに対して、引用発明は、その点につき、明らかでない点。
[相違点2]
第2ゲーム機の転送手段の転送内容が、本願発明は、「第1プログラムおよび第1コードの転送」であるのに対して、引用発明は、その点につき、明らかでない点。
[相違点3]
第1携帯ゲーム機に関し、本願発明は、「第2コードを予め記憶している記憶手段と、前記第2ゲーム機から転送された前記第1コードと、前記記憶手段に予め記憶されている前記第2コードとに基づいて正否を判断する判断手段と備え」ており、第1実行手段を実行するのが、「前記判断手段によって正と判断されたとき」であるのに対して、引用発明は、その点につき、明らかでない点。

(3)当審の判断
上記相違点1ないし3について以下検討する。
引用例に記載の事項は、上記(1)のとおりであって、引用例に記載の事項における「携帯ゲーム機12」は、本願発明における「第1携帯ゲーム機」に相当し、以下同様に、「ビデオゲーム機14」は「第2ゲーム機」に、「『プログラムデータ領域46Bdのデータ(ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ、第2ステージデータ、…、第nステージデータ)』、及び『DVD-ROM46から携帯ゲーム機12に転送ないしダウンロードされたプログラムデータ』」は「第1プログラム」に、「プログラムデータ領域46Bdに格納された認証コード」は「第1コード」に、「ブートROM72の領域72bからの認証コード」は「第2コード」に、それぞれ相当する。
また、引用例に記載の事項は、携帯ゲーム機12のCPU66が、ブートROM72の領域72eのプログラムを実行して、ビデオゲーム機14に対して、転送要求コマンドを発行し、これに応じて、ビデオゲーム機14のCPU78は、DVD-ROM46の認証コードが格納された認証コード領域46Baのデータ、及び携帯ゲーム機12にダウンロードすべきプログラムデータが格納されたプログラムデータ領域46Bdのデータ(ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ、第2ステージデータ、…、第nステージデータ)を携帯ゲーム機12のワークRAM70に転送しているから、「携帯ゲーム機12は、ビデオゲーム機14にプログラムデータ領域46Bdのデータ(ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ、第2ステージデータ、…、第nステージデータ)およびプログラムデータ領域46Bdに格納された認証コードの転送を要求する要求手段を備えている」といえ、また「ビデオゲーム機14は、携帯ゲーム機12から転送要求があったことに応じて、ビデオゲーム機14にプログラムデータ領域46Bdのデータ(ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ、第2ステージデータ、…、第nステージデータ)およびプログラムデータ領域46Bdに格納された認証コードを前記携帯ゲーム機12へ転送する転送手段を備えている」といえる。
また、引用例に記載の事項は、ビデオゲーム機14から転送されてきたデータを携帯ゲーム機12のワークRAM70にストアして、その後、携帯ゲーム機12のブートROM72の領域72bからの認証コードとDVD-ROM46からワークRAM70の領域70aに転送されている認証コードとを比較する認証処理を実行し、2つの認証コードが一致しなければ、認証NGであり、2つの認証コードが一致すると認証OKとなり、DVD-ROM46から携帯ゲーム機12に転送ないしダウンロードされたプログラムデータに従って、携帯ゲーム機12でゲームをプレイすることができるから、「携帯ゲーム機12は、ブートROM72の領域72bに格納されている認証コードを予め記憶している記憶手段と、ビデオゲーム機14から転送された認証コードと、前記記憶手段に予め記憶されている前記(ブートROM72の領域72bに格納されている)認証コードとに基づいて正否を判断する判断手段と、前記判断手段によって正と判断されたときに、前記ビデオゲーム機14から転送されたプログラムデータ領域46Bdのデータ(ゲーム基本処理プログラムデータとともに、第1ステージデータ、第2ステージデータ、…、第nステージデータ)を実行する実行手段とをさらに備えている」といえる。
してみると、相違点1ないし3に係る本願発明の発明特定事項は、上記の引用例に記載の事項に示されているといえる。
そして、引用発明と引用例に記載の事項とは、ゲームシステムという共通の技術分野に属するものであり、また第1携帯ゲーム機と第2ゲーム機とが、それぞれネゴシェーションを実行し、第1携帯ゲーム機から第2ゲーム機へ転送要求コマンドを発行しているから、引用発明1に引用例に記載の事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明において、引用例に記載の事項を適用することにより、相違点1ないし3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明、及び引用例に記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(4)むすび
したがって,本願発明は、引用発明、及び引用例に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

5.特許法第36条第6項第1号違反について
(1)当審の判断
本願発明は、上記2のとおりであって、第1携帯ゲーム機において、カートリッジのような情報記録媒体の装着の有無に関して、何ら特定していないから、カートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものをも包含するものである。
しかるところ、本願明細書、または図面に記載された事項には、第1携帯ゲーム機(携帯ゲーム機12、子側携帯ゲーム機12B)にカートリッジのような情報記録媒体が装着されていないときに、通信ポートを利用したデータ通信ができるもののみが記載されているに過ぎず(段落【0045】?【0054】、段落【0069】参照。)、本願発明に包含されるカートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものは、本願明細書、または図面に記載や示唆されておらず、またそのようなものが自明な事項ともいえない。
してみると、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、本願明細書には、「しかしながら、携帯ゲーム機にカートリッジを装着しないかぎり、通信ポートを利用することができないので、通信ポートを介して複数の携帯ゲーム機の間でデータの送受信をするためには、各携帯ゲーム機ごとにカートリッジを用意しなければならないという問題がある。特に、複数の携帯ゲーム機でネットワークゲームを行なうためには、ネットワークゲームのプログラムを搭載したカートリッジを携帯ゲーム機毎に用意する必要が生じる。」(段落【0007】)、「この発明の他の目的は、携帯ゲーム機に同種のカートリッジを装着しないでも通信ポートを利用したデータ通信ができる、ゲームシステムおよびそれに用いる携帯ゲーム機を提供することである。」(段落【0010】)と記載され、また、上記のとおり第1携帯ゲーム機(携帯ゲーム機12、子側携帯ゲーム機12B)にカートリッジのような情報記録媒体が装着されていないときに、通信ポートを利用したデータ通信ができるもののみが記載されているから、本願明細書の発明の詳細な説明における発明の課題は、第1携帯ゲーム機(携帯ゲーム機12、子側携帯ゲーム機12B)にカートリッジのような情報記録媒体を装着しないときに、通信ポートを利用したデータ通信ができるゲームシステムおよびそれに用いる携帯ゲーム機を提供することにある。
してみると、本願発明は、カートリッジのような情報記録媒体を装着しても通信ポートを利用したデータ通信ができるものを包含するから、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものである。
また、本願の請求項2ないし4に係る発明においても、上記と同様のことがいえる。

(2)むすび
したがって、本願は、上記のとおり、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

6.総括
以上のとおりであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-17 
結審通知日 2014-01-20 
審決日 2014-01-31 
出願番号 特願2011-249783(P2011-249783)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉野 公夫
藤本 義仁
発明の名称 ゲームシステムおよび携帯ゲーム機  
代理人 石原 盛規  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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