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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1286171 |
審判番号 | 不服2013-4684 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-11 |
確定日 | 2014-03-27 |
事件の表示 | 特願2010-241417「入力装置および入力装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開、特開2011- 48848〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成21年8月27日に出願した特願2009-197070号の一部を平成22年10月27日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月17日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由が通知され、同年9月19日付けで手続補正がなされ、同年10月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月14日付けで意見書が提出され、同年12月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年3月11日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。 そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月19日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 入力を受け付けるタッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記タッチセンサに対する入力位置に関わらず所定の荷重基準を満たす状態で所定期間継続した際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する制御部と、 を備えることを特徴とする入力装置。」 2.引用例 原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された、特開2007-133698号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a)「【請求項1】 パネルの表面に対する押圧操作により入力が行われるパネル入力部と、 複数の発光素子を備え、上記パネル入力部の上記パネルの下面側に配される発光部と、 上記パネル入力部を振動させるためのパネル駆動部と、 上記パネル入力部からの入力信号に基づいて上記発光部の発光制御と上記パネル駆動部の振動制御を行う制御部と、 を有することを特徴とする携帯端末。」(【請求項1】の記載。) b)「【請求項6】 請求項1記載の携帯端末であって、 上記制御部は、上記パネル入力部の押圧力と押圧位置と押圧時間と押圧軌跡の少なくとも何れかに応じて上記パネル駆動部を振動させる制御を行うことを特徴とする携帯端末。」(【請求項6】の記載。下線は当審で付与。以下、同様。) c)「【0012】 本発明によれば、パネル入力部への押圧操作による入力に応じて、発光部の発光制御やパネル駆動部の振動制御を行うことにより、コストの上昇を抑えつつ、ユーザに対してより判り易く且つ確実なフィードバックを行うことが可能となっている。」(【0012】の記載。) d)「【0016】 本実施形態の携帯電話端末1は、いわゆる折り畳み型の端末であり、第1の筐体2と第2の筐体3とがヒンジ部5を介して回転自在に連結されている。なお、本実施形態では折り畳み型の携帯電話端末を例に挙げているが、本発明はストレート型等、スライド型等の他の各種タイプの携帯電話端末でも良い。 【0017】 第1の筐体2は、液晶デバイス等からなるディスプレイ4と受話用スピーカ6等が配されている。なお、図示は省略するが、ディスプレイ4が設けられている筐体面に対する筐体背面側には、カメラや撮影補助光発光部、サブディスプレイ、着信音用のスピーカ等が配されている。 【0018】 第2の筐体3は、主要な回路構成と着脱可能なバッテリを内蔵している。当該第2の筐体3は、端末を折り畳んだ際に上記第1の筐体2のディスプレイ4が設けられている筐体面と相対応する面(端末を開いた時に第1の筐体2のディスプレイ4と同じ側となる面)には、送話用マイクロホン7と操作入力部10とが設けられている。」(【0016】?【0018】の記載。) e)「【0020】 上記操作入力部10は、タッチパネル部11と、上記タッチパネル部11の下部(筐体内部側)に配される発光部12と、上記発光部12の下部(筐体内部側)に配されるパネル駆動部13とを有して構成されている。」(【0020】の記載。) f)「【0022】 上記タッチパネル部11は、透明若しくは半透明の部材により構成され、外部からの押圧力を検知した時、その押圧力に応じた電圧値を生成し、さらに当該電圧値をA/D(アナログ/ディジタル)変換してディジタルデータとして出力するセンサ部と、上記センサ部により押圧力を検知した位置を求め、その押圧位置を表す二次元座標データ(つまり入力位置データ)を生成する位置判定処理部とを備えている。なお、タッチパネル部11の外表面上には、上記各LED14の配置に合わせた位置に、例えば一般的な携帯電話端末に配列されている各キーのキートップに描かれているものと同じ数字や文字、記号等が描かれていても良い。 【0023】 上記パネル駆動部13は、例えばタッチパネル部11の下面側に配され、当該操作入力部10をその下側から振動させるため振動デバイスにより構成されている。振動デバイスは、一例として、モータ回転軸に対して偏芯した位置に錘を備えたバイブレータにより構成され、当該モータの回転により振動を発生する。その他、振動デバイスは、上記複数のLED14に各々対応した複数の位置に例えば圧電セラミック等の複数の圧電素子を配置し、それら各圧電素子を個々に振動可能としたデバイスであっても良い。なお、図2,図4では、パネル駆動部13が発光部12と略々同じ面積を有するデバイスとなされている例を挙げたが、本実施形態のパネル駆動部13は、当該操作入力部10を振動させることができるのであれば、より小型のものであっても良い。」(【0022】?【0023】の記載。) g)「【0026】 また、本実施形態の携帯電話端末1の内部CPUは、上記操作入力部10上の所望の位置がユーザの指等によりタッチ操作された場合に、上記タッチパネル部11からの押圧力と押圧位置や押圧時間のデータを元に、上記パネル駆動部13の振動制御を行うことも可能である。すなわち、内部CPUは、例えば上記タッチ操作がなされた場合、押圧力や押圧時間に応じた強さで上記パネル駆動部13を振動させたり、上記押圧位置や押圧時間に応じた振動パターンで上記パネル駆動部13を振動させる制御を行う。なお、パネル駆動部13が上記複数の圧電素子で構成されている場合、内部CPUは、上記押圧位置に対応した場所に配置されている圧電素子を上記押圧力や押圧時間に応じた強さで振動させたり、押圧位置に対応した場所に配置されている圧電素子を上記押圧力や押圧時間に応じた振動パターンで振動させるような振動制御を行う。」(【0026】の記載。) h)「【0041】 タッチパネル部34は、前述の操作入力部10のタッチパネル部11に相当し、外部からの押圧力を電圧値に変換する電圧値検出部34a、及び、当該電圧値検出部34aにより検出された電圧値をA/D変換するA/D変換部34bからなる前述したセンサ部と、そのA/D変換部34bからのデータを元に、押圧位置を表す二次元座標データを生成する前述の位置判定処理部である入力位置検出部34cとからなる。そして、上記入力位置検出部34cは、上記押圧力と押圧位置のデータを、内部CPUである制御部30に送る。 【0042】 パネル駆動部35は、前述したパネル駆動部13に相当し、上記操作入力部10をその下側から振動させるため振動デバイスにより構成される。当該パネル駆動部35は、内部CPUである制御部30による制御の元で振動する。」(【0041】?【0042】の記載。) してみると、引用例1には以下の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。 「第1の筐体2と第2の筐体3とがヒンジ部5を介して回転自在に連結され、 第2の筐体3は、操作入力部10が設けられ、 上記操作入力部10は、タッチパネル部11と、パネル駆動部13とを有して構成され、 上記タッチパネル部11は、透明若しくは半透明の部材により構成され、外部からの押圧力を検知した時、その押圧力に応じた電圧値を生成し、さらに当該電圧値をA/D(アナログ/ディジタル)変換してディジタルデータとして出力するセンサ部を備え、 上記パネル駆動部13は、例えばタッチパネル部11の下面側に配され、当該操作入力部10をその下側から振動させるため振動デバイスにより構成され、 内部CPUは、上記操作入力部10上の所望の位置がユーザの指等によりタッチ操作された場合に、上記タッチパネル部11からの押圧力と押圧位置や押圧時間のデータを元に、上記パネル駆動部13の振動制御を行うことも可能であり、 タッチパネル部34は、前述の操作入力部10のタッチパネル部11に相当し、 パネル駆動部35は、前述したパネル駆動部13に相当し、上記操作入力部10をその下側から振動させるため振動デバイスにより構成され、当該パネル駆動部35は、内部CPUである制御部30による制御の元で振動し、 上記制御部は、上記パネル入力部の押圧力と押圧位置と押圧時間と押圧軌跡の少なくとも何れかに応じて上記パネル駆動部を振動させる制御を行うものであり、 パネル入力部への押圧操作による入力に応じて、パネル駆動部の振動制御を行うことにより、ユーザに対してより判り易く且つ確実なフィードバックを行うことが可能な、 携帯電話端末1。」 ここで、引用例1記載の発明でいう「上記制御部は、上記パネル入力部の押圧力と押圧位置と押圧時間と押圧軌跡の少なくとも何れかに応じて上記パネル駆動部を振動させる」という技術的事項(引用例1の請求項6に示される技術的事項)の意味合いについて検討するに、以下の事情を勘案すると、当該技術的事項が「制御部は、パネル入力部の押圧位置にかかわらず押圧力(すなわち押圧荷重)に応じてパネル駆動部を振動させるものであってもよい」という技術的事項を含んでいることは明らかというべきである。 ア.「押圧力と押圧位置と押圧時間と押圧軌跡の少なくとも何れかに応じて・・・振動させる」という文言は、「押圧位置に応じて振動させる」ことが選択肢の一つであって必須の事項ではないことを表していると解するのが自然である。 イ.引用例1の段落【0006】から【0009】の記載から把握される引用例1に記載される発明の課題に照らしても、「押圧位置に応じて振動させる」ことを課題解決に必須の事項と解すべき理由はない。 ウ.引用例1の請求項2の記載からも明らかなように、引用例1においては、押圧位置に応じることを必須とする場合には、そのことが明確に理解できるような記載がなされており、そのこととの対比でみても、引用例1の請求項6に対する上記ア.の解釈は妥当なものである。 3.対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。 (1)引用例1記載の発明の「操作入力部10」の「タッチパネル部11」は、本願発明の「入力を受け付けるタッチセンサ」に相当する。 (2)引用例1記載の発明の「タッチパネル部11」は「透明若しくは半透明の部材により構成され、外部からの押圧力を検知した時、その押圧力に応じた電圧値を生成し、さらに当該電圧値をA/D(アナログ/ディジタル)変換してディジタルデータとして出力するセンサ部を備え」るものであるから、引用例1記載の発明の「タッチパネル部11」は本願発明の「タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」にも相当する。 (3)上記2.の末尾で検討したように、引用例1記載の発明でいう「上記制御部は、上記パネル入力部の押圧力と押圧位置と押圧時間と押圧軌跡の少なくとも何れかに応じて上記パネル駆動部を振動させる」という技術的事項が「制御部は、パネル入力部の押圧位置にかかわらず押圧力(すなわち押圧荷重)に応じてパネル駆動部を振動させるものであってもよい」という技術的事項を含んでいるのは明らかであるから、引用例1記載の発明の「制御部30」は本願発明の「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記タッチセンサに対する入力位置に関わらず所定の荷重基準を満たす状態で所定期間継続した際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する制御部」と、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記タッチセンサに対する入力位置に関わらず所定の基準を満たす際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する制御部」である点で一致するといえる。 (4)引用例1記載の発明の「操作入力部10」は、以下の相違点は別にして、本願発明の「入力装置」に相当する。 したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。 <一致点> 「入力を受け付けるタッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記タッチセンサに対する入力位置に関わらず所定の基準を満たす際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する制御部と、 を備えることを特徴とする入力装置。」 <相違点> 制御部が押圧対象に対して触感を呈示するように触感呈示部を制御するのが、本願発明においては、「押圧荷重が、『所定の荷重基準を満たす状態で所定時間継続した際』」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「押圧荷重が、『所定の基準を満たす際』」ではあるものの、「押圧荷重が、『所定の荷重基準を満たす状態で所定時間継続した際』」ではない点。 4.当審の判断 <相違点についての判断> 端末の入力操作として、所定時間継続して押圧する入力操作は、例えば、特開2005-186847号公報の段落【0026】に記載されるように、「長押し」として広く一般に知られた操作方法であり、該「長押し」の入力操作が引用例1記載の発明においても有用かつ採用可能であることは明らかである。 したがって、引用例1記載の発明に上記「長押し」の技術を適用し、所定の荷重基準を満たす状態が所定期間継続した際に、パネル入力部への押圧操作による入力に応じて、パネル駆動部の振動制御を行うことによりユーザに対してより判り易く且つ確実なフィードバックを行うようにすること、すなわち上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 よって、本願発明は、引用例1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に為し得たものである。 そして、本願発明が奏する作用、効果についてみても、引用例1記載の発明及び周知技術から当業者が予想できる程度のものである。 5.むすび 以上のとおり、平成24年9月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-01-27 |
結審通知日 | 2014-01-28 |
審決日 | 2014-02-10 |
出願番号 | 特願2010-241417(P2010-241417) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 星野 昌幸 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
清水 稔 山田 正文 |
発明の名称 | 入力装置および入力装置の制御方法 |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 杉村 憲司 |