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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1286366
審判番号 不服2013-3684  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-26 
確定日 2014-04-02 
事件の表示 特願2009-525554「基板上に機能材料のパターンを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日国際公開、WO2008/024207、平成22年 1月21日国内公表、特表2010-502010〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年8月8日(パリ条約による優先権主張2006年8月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月28日に手続補正がなされ、平成24年10月18日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成25年2月26日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成25年5月8日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年8月12日に回答書が提出された。

第2 平成25年2月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年2月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成25年2月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「機能材料のパターンを基板上に形成する方法であって、順に、
a)隆起表面及びリセス表面を備えたレリーフ構造を有するエラストマースタンプを準備し、
b)マスキング材料を前記レリーフ構造の少なくとも前記隆起表面に適用し、
c)前記マスキング材料を前記隆起表面から直接基板に転写して、前記基板上に開口領域のパターンを形成し、
d)機能材料を前記基板の前記開口領域に適用してパターンを形成し、
前記機能材料は前記マスキング材料と非相溶性であり、
前記スタンプのレリーフ構造では、前記隆起表面の幅が前記リセス表面の幅より広い、
ことを特徴とする方法。」(以下「補正発明」という。)

そこで、上記補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、米国特許第5512131号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)第5欄62行?第6欄60行
「Referring now to FIG. 1, and in particular to FIG. 1(a), a schematic illustration of a stamping method of the present invention is presented. According to the method, a stamp 20 is provided having a surface 22 including indentations 24 formed therein and defining an indentation pattern, the indentations contiguous with a stamping surface 26 defining a stamping pattern. The stamping surface is coated with a molecular species 28 terminating in a functional group selected to bind to a particular material. The stamp is positioned in a first orientation and is brought into contact with first portions 29 of a surface 30 of a particular material 32 which may be provided on a substrate 34. Stamping surface 26 is held against portions of surface 30 of material 32 to hold molecular species 28 against the material surface to allow the functional group to bind thereto (holding step not shown). Then, the stamping surface is removed to provide SAM 35 of the molecular species 28 on surface 30 according to the stamping pattern in the first orientation. Second portions 36 of surface 30, contiguous with first portions 29, remain free of molecular species 28.
Subsequently, a variety of procedures may be followed according to the invention. According to one, second material surface portions 36 are contacted with a second molecular species 40 terminating at a first end in a functional group selected to bind to material surface 30, to form a SAM continuous with the SAM of molecular species 28 on surface 30. Molecular species 28 and second molecular species 40 may each terminate at second, exposed ends with particular desirable functionalities which may be the same or different. According to one embodiment, the exposed functionality of molecular species 28 is hydrophilic while the exposed functionality of second molecular species 40 is hydrophobic.
FIG. 1(b) is a microscopic view of surface 22 of a stamp 20 formed according to one embodiment of the present invention. According to this embodiment, surface 22 includes a plurality of indentations 24 which form a continuous, grid-like indentation pattern, contiguous with stamping surface 26 defining a stamping pattern of squares. When stamping surface 26 is coated with the molecular species as described above, and the coated stamping surface is positioned so as to contact a portion 29 of material surface 30, an ordered SAM pattern of the molecular species, identical to the pattern of stamping surface 26, is transferred to surface 30. Illustrated in FIG. 1(c) is the pattern of molecular species 28 on surface 30, according to the pattern. The illustration is a photocopy of a SEM of a representative embodiment. All further references to SEM or microscopic images, micrographs, photographs, illustrations, diffraction patterns and the like shall mean photocopies of such visual representations. When second portions 36 of surface 30 are then contacted with second molecular species 40, a SAM of the second molecular species 40 continuous with the SAM of molecular species 28 is formed on surface 30. This can be clearly seen in the SEM of FIG. 1(c) where the continuous SAM of molecular species 28 and 40 is illustrated. When molecular species 28 and second molecular species 40 each terminate in different exposed functionalities (exposed being defined to mean functionality in the SAM facing away from surface 30), this embodiment of the invention permits a surface derivatized so as to provide at least two regions having different exposed chemical functionalities, including a base material 32, and a SAM on a surface 30 of the base material, the monolayer comprising at least one isolated region of a first molecular species 28, and a continuous region of a second molecular species 40 surrounding the first region.」
(仮訳)
「次に、図1、特に、本発明の刻印方法の概略図が提示される図1(a)を参照する。この方法によれば、スタンプ20は、それによって凹みパターンが形成される窪み24を含む表面22を有し、凹みはスタンピング面26と隣接してスタンピングパターンを画定する。
スタンピング面は特定の材料に結合するように選択された官能基で終端する分子種28で被覆されている。
スタンプは、第一の方向に配置され、基板34上に設けられる特定の材料32の表面30の第一の部分29に接触される。
スタンピング面26は、官能基がこれに結合することができるように、材料表面に対する分子種28を保持するために、材料32の表面部分30に対向して保持される(保持工程は図示せず)。
次いで、第一の方向のスタンピングパターンに従って表面30上に分子種28のSAM35を提供するために、スタンプ表面が除去される。
表面30の第一部分29と連続する第二の部分36には分子種28は存在しない。
引き続いて、様々な手順が、本発明に従って実行されてもよい。
その一つは、材料表面の第2部分36は、表面30上の分子種28のSAMと連続するSAMを形成するように、材料表面30と結合するように選択された官能基が最初の端部で終端している第二の分子種40と接触される。
分子種28と第二の分子種40は、それぞれ、特定の所望の機能性を発現する第二終端部を有することができ、それらは同じでも異なっていてもよい。
一実施形態によれば、分子種28の発現する機能性は、親水性であり、第二の分子種40の発現する機能性は疎水性である。
図1(b)は、本発明の一実施形態で形成されたスタンプ20の表面22の顕微鏡像である。
本実施形態では、連続的な格子状の凹みパターンを形成する凹み24を備える表面22は、正方形のスタンプパターンを画定するスタンピング面26と連続する。
スタンピング面26が上述したような分子種で被覆されて、被覆されたスタンピング面が材料表面30の部分29に接触するように配置されると、スタンピング面26のパターンと同一の、順序付けられた分子種のSAMパターンが面30に転写される。
図1(c)はパターンに従った、表面30上の分子種28のパターンを示す。
この図は、代表的な実施形態のSEMのフォトコピーである。
フォトコピーとは、SEMや顕微鏡画像、顕微鏡写真、写真、イラスト、回折パターンのようなすべての視覚的表現を意味するものとする。
それから表面30の第二部分36が第二の分子種40に接触すると、第二の分子種40のSAMが分子種28のSAMと連続して表面30上に形成される。
これはSEMの図1(c)に明確に見ることができ、ここでは分子種28と40の連続SAMが示されている。
分子種28と第2の分子種40がそれぞれ異なる機能性を発現する(発現は表面30と反対側のSAM表面で定義される)終端を有する場合の本発明のこの実施形態では、少なくとも2つの異なる化学的機能性を有する領域の表面を実現するために、基材32を含み、そして基材の表面30上のSAMを含み、少なくとも一つの第一の分子種28の分離領域からなる単層領域と、及び第一領域を囲む第二の分子種の連続領域40を有する。」
(2)第8欄29行?48行
「According to a preferred embodiment, stamp 20 is formed from a polymeric material. Polymeric materials suitable for use in fabrication of stamp 20 may have linear or branched backbones, and may be crosslinked or noncrosslinked, depending upon the particular polymer and the degree of formability desired of the stamp. A variety of elastomeric polymeric materials are suitable for such fabrication, especially polymers of the general classes of silicone polymers, epoxy polymers, and acrylate polymers.
・・・
Materials which may not be suitable for fabrication of stamping surface 26 according to preferred embodiments include polyethylene and polystyrene, which are generally too brittle, (not elastic enough), and polybutadiene, which is generally too elastic.」
(仮訳)
「好ましい実施形態によれば、スタンプ20はポリマー材料から形成される。スタンプ20の製造に使用するのに適したポリマー材料は、ポリマーの特性やスタンプに望まれる成形性の程度によって、直鎖または分枝鎖骨格を有していてもよく、架橋又は非架橋でよい。
様々なエラストマー性ポリマー材料がその製造に適している。特にポリマーの一般的なクラスのシリコーンポリマー、エポキシポリマー、およびアクリレートポリマー等である。
・・・
ポリエチレンやポリスチレン等の、一般的に伸縮性がありすぎる(剛性の不十分な)ものや、ポリブタジエンのように一般に剛性が高すぎる材料は、好ましい実施形態に係るスタンピング面26の作製には適していない。」
(3)「FIG.1(a)



これらの記載事項含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「エラストマー性ポリマー材料から形成されるスタンプ(20)が、凹みパターンが形成される窪み(24)を含む表面(22)を有し、凹みパターンはスタンピング面(26)と隣接してスタンピングパターンを画定し、
スタンプのスタンピング面が特定の材料に結合するように選択された官能基で終端する分子種(28)で被覆され、基板(34)上に設けられる特定の材料(32)の表面(30)の第一部分(29)に接触され、
次いで、スタンピングパターンに従って表面上に分子種のSAM(35)を提供するために、スタンプ表面が除去され、
表面の第一部分と連続する第二部分(36)には分子種は存在せず、
引き続いて、材料表面の第二部分は、表面上の分子種のSAMと連続するSAMを形成するように、材料表面と結合するように選択された官能基が最初の端部で終端している第二の分子種(40)と接触され、
分子種の発現する機能性は、親水性であり、第二の分子種の発現する機能性は疎水性であり、
それから表面の第二部分が第二の分子種に接触すると、第二の分子種のSAMが分子種のSAMと連続して表面上に形成され、
分子種と第二の分子種がそれぞれ異なる機能性を発現する終端であり、少なくとも2つの異なる化学的機能性を有する領域の表面を実現する、少なくとも一つの分子種の分離領域からなる単層領域と、及び第一領域を囲む第二の分子種の連続領域を有する、
刻印方法。」(以下「引用発明」という。)

3.対比
補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「第二の分子種」は所定の機能性を発現するから、補正発明の「機能材料」に相当する。
以下同様に、
「第一領域を囲む第二の分子種の連続領域」は「機能材料のパターン」に、
「基板上に設けられる特定の材料の表面」は「基板上」に、
「スタンピング面」は「隆起表面」に、
「窪み」は「リセス表面」に、
「凹みパターンはスタンピング面と隣接してスタンピングパターンを画定」する構成は「レリーフ構造」に、
「エラストマー性ポリマー材料から形成されるスタンプ」は「エラストマースタンプ」に、
それぞれ相当する。
(2)引用発明の「分子種」は補正発明の「マスキング材料」に相当し、同「スタンプのスタンピング面が特定の材料に結合するように選択された官能基で終端する分子種で被覆され」る工程は、同「マスキング材料を前記レリーフ構造の少なくとも前記隆起表面に適用」する工程に相当する。
(3)引用発明の「基板上に設けられる特定の材料の表面の第一部分に接触され、次いで、スタンピングパターンに従って表面上に分子種のSAMを提供するために、スタンプ表面が除去され」る工程は、補正発明の「前記マスキング材料を前記隆起表面から直接基板に転写して、前記基板上に開口領域のパターンを形成」する工程に相当する。
(4)引用発明の「それから表面の第二部分が第二の分子種に接触すると、第二の分子種のSAMが分子種のSAMと連続して表面上に形成され」る工程は、補正発明の「機能材料を前記基板の前記開口領域に適用してパターンを形成」する工程に相当する。
(5)補正発明の「機能材料」及び「マスキング材料」にそれぞれ相当する引用発明の「第二の分子種」及び「分子種」は、それぞれ疎水性及び親水性であるから、両者はお互いに非相溶性である。

してみると両者は、
「機能材料のパターンを基板上に形成する方法であって、順に、
a)隆起表面及びリセス表面を備えたレリーフ構造を有するエラストマースタンプを準備し、
b)マスキング材料を前記レリーフ構造の少なくとも前記隆起表面に適用し、
c)前記マスキング材料を前記隆起表面から直接基板に転写して、前記基板上に開口領域のパターンを形成し、
d)機能材料を前記基板の前記開口領域に適用してパターンを形成し、
前記機能材料は前記マスキング材料と非相溶性である、
方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
スタンプのレリーフ構造が、補正発明は「隆起表面の幅がリセス表面の幅より広い」のに対して、引用発明は両者の幅の関係が不明な点。

4.判断
上記相違点について検討する。
凹凸部から成るレリーフ構造のスタンプを用い、その凸部表面上の材料を基板表面に転写する方法において、凹凸部のそれぞれの幅をどの程度にするかは、転写するパターンの形状や大きさ、凹凸部の材料やそれぞれの高さ、転写条件等の種々の要素を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうる事項である。
してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。
なお、「スタンプのサギングによる望ましくない転写を回避する」という補正発明の目的は、本願の優先日時点ですでに広く知られたものである(引用文献1の上記摘記事項(2)参照)。

そして、補正発明全体の効果も、引用発明に基いて当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年2月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年7月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「機能材料のパターンを基板上に形成する方法であって、順に、
a)隆起表面を備えたレリーフ構造を有するエラストマースタンプを準備し、
b)マスキング材料を前記レリーフ構造の少なくとも前記隆起表面に適用し、
c)前記マスキング材料を前記隆起表面から直接基板に転写して、前記基板上に開口領域のパターンを形成し、
d)機能材料を前記基板の前記開口領域に適用してパターンを形成し、
前記機能材料は前記マスキング材料と非相溶性である、
ことを特徴とする方法。」

2.引用刊行物
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。

3.対比
本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、少なくとも「前記スタンプのレリーフ構造では、前記隆起表面の幅が前記リセス表面の幅より広い」という事項を削除することにより拡張したものである。
そして、上記の削除した事項は、引用発明と補正発明の相違点に係る事項である。
そうすると、本願発明と引用発明に相違点はない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に該当し特許を受けることができない。したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-31 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-19 
出願番号 特願2009-525554(P2009-525554)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐野 浩樹  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 基板上に機能材料のパターンを形成する方法  
復代理人 主代 静義  
復代理人 田村 正  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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