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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1286378
審判番号 不服2012-20929  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-24 
確定日 2014-04-01 
事件の表示 特願2007-541779「吸水性ポリマーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月26日国際公開、WO2006/053731、平成20年 6月19日国内公表、特表2008-520778〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年11月16日(パリ条約に基づく優先権主張 2004年11月18日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特許出願であって、平成23年6月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年12月26日付けで前置報告がなされ、それに基いて当審において平成25年5月29日付けで審尋がなされ、これに対して同年8月22日に回答書が提出されたものである。

第2.平成24年10月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成24年10月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成24年10月24日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合の補正であって、特許請求の範囲について、本件補正前の

「【請求項1】
吸水性ポリマーを、
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合により製造する方法において、
この溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
吸水性ポリマーを後架橋することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸を、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アクリル酸を重合の前に結晶化により精製することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
アクリル酸を重合の前に少なくとも2段階の層結晶化により精製することを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
アクリル酸が結晶化の前に少なくとも98質量%のアクリル酸を含有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
アクリル酸が結晶化の前に少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする、請求項4から6までの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0015質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.001質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液であって、
この溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液。
【請求項12】
溶液がアクリル酸に対して多くとも0.015質量%のヒドロキノン半エーテルを含有することを特徴とする、請求項11に記載のモノマー水溶液。
【請求項13】
溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0015質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする請求項11又は12に記載のモノマー水溶液。
【請求項14】
溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.001質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする請求項11又は12に記載のモノマー水溶液。
【請求項15】
溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする請求項11又は12に記載のモノマー水溶液。
【請求項16】
i)重合導入されたアクリル酸、この重合導入されたアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
ii)重合導入された少なくとも1種の架橋剤、
iii)重合導入されたアリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
iv)場合により、重合導入された、i)で挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
v)場合により、ポリマー上にi)に挙げたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされた1種以上の水溶性ポリマー
を含有する吸水性ポリマーであって、
このポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.002質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー。
【請求項17】
ポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.0015質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、請求項16に記載の吸水性ポリマー。
【請求項18】
ポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.001質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、請求項16に記載の吸水性ポリマー。
【請求項19】
ポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、請求項16に記載の吸水性ポリマー。
【請求項20】
請求項1から10までの何れか1項記載の方法により得られる吸水性ポリマーを使用する、衛生製品の製造方法。
【請求項21】
請求項16に記載の吸水性ポリマーを含有する、衛生用品。」

を、

「【請求項1】
吸水性ポリマーを、
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合により製造する方法において、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、
前記溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
吸水性ポリマーを後架橋することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸を重合の前に少なくとも2段階の層結晶化により精製することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液であって、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、
前記溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液。
【請求項5】
溶液がアクリル酸に対して多くとも0.015質量%のヒドロキノン半エーテルを含有することを特徴とする、請求項4に記載のモノマー水溶液。
【請求項6】
i)重合導入されたアクリル酸、この重合導入されたアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
ii)重合導入された少なくとも1種の架橋剤、
iii)重合導入されたアリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
iv)場合により、重合導入された、i)で挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
v)場合により、ポリマー上にi)に挙げたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされた1種以上の水溶性ポリマー
を含有する吸水性ポリマーであって、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、
前記ポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー。
【請求項7】
請求項1から3までの何れか1項記載の方法により得られる吸水性ポリマーを使用する、衛生製品の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の吸水性ポリマーを含有する、衛生用品。」

と補正するものである。

2.補正の適否について
(1)新規事項の追加の有無について
本件補正は、特許法第184条の6第2項の規定により、同法第17条の2第3項における願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲とみなす国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文及び国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(以下、「当初明細書等」という。)の記載からみて、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものではないことから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。

(2)補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1、11、16における「a)アクリル酸」について、「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製した」に限定し(以下、「補正事項イ」という。)、「アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有量」を「多くとも0.002質量%」から「多くとも0.0005質量%」に限定する補正(以下、「補正事項ロ」という。)と、「架橋剤」について「前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、」と特定する補正(以下、「補正事項ハ」という。)を含むものであり、当該補正事項イ及びロは、本件補正前の発明を限定的に減縮することを目的とするものといえ、補正事項ハは、拒絶理由で指摘された架橋剤に対しての特許法第36条第6項第2号の不備を解消しようとすることを目的とするものと認められる。

そうすると、前記補正事項イ、ロ、ハは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、本件補正に係る請求項1、11、16に係る補正は、同法第17条の2第4項第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
上記補正事項イ、ロは、上記のとおり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する補正であるか否か(いわゆる、独立特許要件の有無)について、以下に検討する。

(3-1)本件補正後の請求項1、4、6に係る発明
本件補正後の請求項1、4、6に係る発明(以下、それぞれを「補正発明1」、「補正発明4」、「補正発明6」という。)は、平成24年10月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「本件補正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、4、6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
吸水性ポリマーを、
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合により製造する方法において、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、
前記溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする方法。
【請求項4】
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液であって、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、
前記溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液。
【請求項6】
i)重合導入されたアクリル酸、この重合導入されたアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
ii)重合導入された少なくとも1種の架橋剤、
iii)重合導入されたアリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
iv)場合により、重合導入された、i)で挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
v)場合により、ポリマー上にi)に挙げたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされた1種以上の水溶性ポリマー
を含有する吸水性ポリマーであって、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり、
前記ポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー。」

(3-2)刊行物
刊行物:国際公開第2003/095510号(平成23年6月24日付け拒絶理由通知書において提示された引用文献1)

(3-3)刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな国際公開第2003/095510号(以下、単に「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、以下の摘示した記載は、引用文献の対応日本出願である特表2005-525445号公報を参照して記載した。また、下線は当審において付した。)

ア.「【請求項1】
アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法であって、次の工程:
a)水性重合媒体中でのアクリル酸少なくとも50質量%を含有しているモノマー組成物のラジカル重合によりポリマーヒドロゲルを製造し、前記ヒドロゲルを粒状ヒドロゲルへか又はヒドロゲル形成性粉末へ変換する工程;及び場合により
b)前記粒状ヒドロゲル又は前記ヒドロゲル形成性粉末を、ポリマーのカルボキシル基に対して反応性の少なくとも2つの官能基を場合により潜伏形で有する架橋的に作用する物質で処理する工程;
を含むアクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法において、
工程a)において使用されるアクリル酸が、酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有する
ことを特徴とする、アクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法。
【請求項2】
工程a)において0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により得ることができるヒドロゲル形成性ポリマー。
【請求項10】
請求項8記載の少なくとも1つのヒドロゲル形成性ポリマーを含有している吸収体を有する衛生用品。」(特許請求の範囲の請求項1、2、8及び10)

イ.「本発明はアクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法に関する。」(2頁3?6行(段落【0001】))

ウ.「出願人はこれに関連して、そのようなSAPの製造に、酢酸及びプロピオン酸の全含量が400ppm未満であるアクリル酸が使用される場合に、上記で説明された課題が解決されることができることを見出した。
それに応じて、本発明は次の工程:
a)水性重合媒体中でのアクリル酸少なくとも50質量%を含有しているモノマー組成物のラジカル重合によりポリマーヒドロゲルを製造し、ヒドロゲルを粒状ヒドロゲル又はヒドロゲル形成性粉末に変換する工程;及び場合により
b)粒状ヒドロゲル又はヒドロゲル形成性粉末を、ポリマーのカルボキシル基に対して反応性の少なくとも2つの官能基を場合により潜伏形で有している架橋的に作用する物質で処理する工程
を含んでいるアクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法に関するものであり;
前記方法は、工程a)において使用されるアクリル酸が、400ppm以下、好ましくは300ppm以下及び特に200ppm以下の酢酸及びプロピオン酸の全含量を有することにより特徴付けられる。ここで及び以下で全てのppmの記載はアクリル酸に対する質量含分である。
400ppm以下、好ましくは300ppm以下及び特に200ppm以下の酢酸及びプロピオン酸の全含量を有するアクリル酸は原則的に、より高い含量のこれらの不純物を有するアクリル酸の結晶化により製造されることができる。アクリル酸の結晶化に適している方法はEP-A 616998、EP-A 648520、EP-A 730893、EP-A 776875、WO 98/25889及びWO 01/77056から公知である。それらに記載された方法によれば、特にWO 01/77056に記載された方法によれば、粗アクリル酸から出発して本発明により遵守すべき酢酸及びプロピオン酸の最大濃度を有している純アクリル酸が製造されることができる。
本発明による方法における使用のためには、0.05?5質量%の範囲内、特に0.1?3質量%の範囲内の酢酸及びプロピオン酸の全含量を有する粗アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸が有用であることが分かっている。粗アクリル酸はそれに加えて結晶化の際に同様に大幅に分離されるさらに別の有機不純物を含有していてよい。これらの別の有機不純物の含量は通例3質量%未満である。別の不純物の例はジアクリル酸、芳香族アルデヒド、例えばフルフラール及びベンズアルデヒド、さらにアリルアクリレート、アクロレイン、脂肪族アルデヒド、マレイン酸及びその無水物並びにプロセス防止剤、例えばフェノチアジン(ジベンゾ-1,4-チアジン;PTZ)及び4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-OH-TEMPO)又はしばしば安定化のためにアクリル酸に添加される比肩しうる安定剤である。
結晶化に使用されることができる典型的な粗アクリル酸は、アクリル酸70?99.9質量%、特に97.0?99.7質量%、酢酸及びプロピオン酸0.05?5質量%、特に0.1?3質量%、芳香族アルデヒド0.005?1質量%、特に0.01?0.1質量%、ジアクリル酸5質量%まで、例えば0.01?3質量%の範囲内、プロセス防止剤0.001?0.3質量%、特に0.005?0.1質量%及びその他の有機不純物1質量%まで、例えば0.001?1質量%を含有し、その際に全ての質量の記載はアクリル酸の総組成に基づいている。粗アクリル酸中の含水量は通例5質量%以下、特に3質量%以下である。しかしながらより高い、例えば30質量%までの含水量を有するアクリル酸を使用することも可能である。
結晶化を実施するためには、粗アクリル酸は晶出装置へ移送され、冷却下にアクリル酸の一部が晶出される。これは母液から分離され、引き続いてさらなる加工のために溶融されるか又は水もしくは水性アルカリ中に溶解される。好ましくはこの際にアクリル酸に僅少量の安定剤、好ましくはヒドロキノン又はヒドロキノンモノアルキルエーテル、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルが添加される。量は通例10?500ppmの範囲内及び特に50?300ppmの範囲内である。
場合により、こうして得られたアクリル酸は、所望の純度が達成されるまで、1つ又はそれ以上の、例えば2、3、4、5又は6の、連続した別の結晶化段階に供給されることができる。好ましくはその際に向流原理に従って作業される、すなわちそれぞれの結晶化段階の母液はその都度先行する結晶化段階に供給される。場合により、アクリル酸を単離する前にさらに別の精製工程が実施される。
結晶化の際に生じるアクリル酸含有の母液は、さらなるアクリル酸の取得のために同様に1つ又はそれ以上の連続した別の結晶化段階に供給されることができる。好ましくはその際に向流原理に従って作業される、すなわち先行した結晶化段階、例えば第一の結晶化段階の母液から取得された結晶は、先行した結晶化段階の結晶化すべきアクリル酸、例えば第一段階において結晶化すべき粗アクリル酸に供給される。
選択的な実施態様において、結晶化の際に生じる母液、多段階の結晶化の際に好ましくは第1段階において生じる母液は、単蒸留又は分別蒸留に供給される。この際にアクリル酸は頂部を経て留去され、母液の難揮発性不純物、例えば(無水)マレイン酸及びプロセス防止剤は缶出液として排出される。このための方法はWO 00/01657から公知であり、該明細書にこれにより関連付けられている。好都合には単蒸留のために母液は流下薄膜型蒸発缶に供給される。母液はついでさらなる使用にか又は結晶化すべき粗アクリル酸に供給されることができる。
好ましくは結晶化はそれぞれの結晶化段階において、粗アクリル酸中に含まれているアクリル酸の少なくとも20質量%及び好ましくは少なくとも40質量%が晶出されているように行われる。通例、十分な精製効果を達成するために、それぞれの結晶化段階において使用されるアクリル酸の90質量%以下、好ましくは80質量%以下及び特に70質量%以下が結晶化される。
本発明による方法において使用される晶出装置は本来制限を受けない。その機能が冷却される平面上への結晶の形成に基づいている晶出装置が特に適していることが判明している。そのような結晶化法は層結晶化とも呼ばれる。適している装置はドイツ連邦共和国特許出願公開(DE-OS)第17 69 123号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開(DE-OS)第26 06 364号明細書、EP-A 218 545、EP-A 323 377、CH 645278、FR 2668946、EP-A 616998、EP 638520及びUS 3,597,164に記載されている。
層結晶化のためには、粗アクリル酸は熱交換器の冷却された平面と接触される。その際に晶出装置の熱交換器平面は好ましくは粗アクリル酸中のアクリル酸の溶融温度を40Kまで下回る温度に冷却される。所望の結晶化度を達成した際に、冷却過程は終了され、液状の母液は例えばポンプ排出又は流出により導出される。精製された、結晶化されたアクリル酸の単離は、通例、結晶化されたアクリル酸の溶融により、例えばアクリル酸の溶融温度を上回る温度への熱交換器平面の加熱によるか及び/又は精製されたアクリル酸の融成物の供給により行われる。この際に精製されたアクリル酸は融成物として生じ、かつそれ自体として単離される。また、結晶質アクリル酸は水又は水性アルカリ中に溶解され、こうして得られた溶液は場合により安定剤の添加後に、その後の重合において直接使用されることもできる。
付加的な精製工程として層結晶化の際に例えば熱交換器平面上に析出された結晶層のしみ出しが実施されることができる。この際に結晶層の温度は幾分、例えば0.5?5Kだけ溶融温度を上回り上昇され、その際に好ましくは結晶層のより高度に汚染された領域は溶けて分離され、こうして付加的な精製効果が達成される。しみ出し生成物はついで母液に供給され、これと共にさらに加工される。結晶層は精製液体、例えば精製されたアクリル酸の融成物で処理されることもできる。
晶出装置中の粗アクリル酸の層結晶化に必要な温度はその組成に依存している。上限はもちろん既に結晶化されたアクリル酸が、母液中に含まれているアクリル酸と平衡状態である温度である(平衡温度)。粗生成物の組成に応じて平衡温度は+5?+13.5℃の範囲内である。結晶化すべき酸の温度は、好ましくは0?13.5℃の範囲内及び特に5?12℃の範囲内であり、その際に高度に過冷却された融成物は通例回避される。特に動的層結晶化の場合に結晶化熱の除去のために必要である冷却媒体は、結晶化過程の間に約+5?-5℃から約-10?-25℃に冷却される。静的に実施される層結晶化の場合に好ましくは冷却媒体は結晶化過程の間に初めに+5?-15℃の温度から結晶化の終わり頃に約-15?-30℃に冷却される。」(3頁1行?6頁41行(段落【0010】?【0023】))

エ.「適している粗アクリル酸は公知であり、かつC3-炭化水素、特にプロパン、プロペン及びその混合物の接触酸化による大工業的方法により入手可能であり、」(11頁14行?17行(段落【0036】))

オ.「その全質量に対して重合すべきモノマー混合物は通例:- モノマーAとしてアクリル酸50?99.99質量%、好ましくは70?99.9質量%及び特に80?99.8質量%、
- アクリル酸と共重合性の1つ又はそれ以上のモノエチレン系不飽和モノマーB 0?49.99質量%、特に0?29.9質量%及び特に0?19.8質量%及び
- 少なくとも1つの架橋的に作用する化合物C 0.01?20質量%、特に0.1?15質量%及び特に0.2?3質量%を含有する。 ・・・
架橋的に作用する化合物Cとして少なくとも2個、例えば2、3、4又は5個のエチレン系不飽和二重結合を分子中に有する化合物が考慮される。これらの化合物は架橋剤モノマーC1とも呼ばれる。化合物C1の例はN,N′-メチレンビスアクリルアミド、その都度106?8500、好ましくは400?2000の分子量のポリエチレングリコールから誘導されるポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなるブロックコポリマーのジアクリレート及びジメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸で2回、3回、4回又は5回エステル化された多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はジペンタエリトリット、モノエチレン系不飽和カルボン酸とエチレン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、シクロヘキセノール及びジシクロペンテニルアルコールとのエステル、例えばアリルアクリレート及びアリルメタクリレート、さらにトリアリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びジエチルジアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、106?4000の分子量のポリエチレングリコールのポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテル1molとペンタエリトリトールトリアリルエーテル又はアリルアルコール2molとの反応生成物、及びジビニルエチレン尿素である。重合すべきモノマー混合物に対するモノマーC1含分は好ましくは0.01?5質量%及び特に0.2?3質量%である。
架橋的に作用する化合物Cとしてさらにその反応性に関してポリマーのカルボキシル基に対して相補的である少なくとも2個、例えば2、3、4又は5個の官能基を有する多官能性化合物C2が機能しうる。架橋剤Cとしてエチレン系不飽和二重結合に加えてカルボキシル基に対して相補的な少なくとも1つの別の官能基を有する架橋的に作用するモノマーC3も考慮される。そのような官能基の多数を有するポリマーも考慮される。適している官能基は例えばヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基及びアジリジン基、さらにイソシアナート基、エステル基及びアミド基並びにアルキルオキシシリル基である。このタイプの適している架橋剤には例えばアミノアルコール、例えばエタノールアミン又はトリエタノールアミン、ジオール及びポリオール、例えば1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、デンプン、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなるブロックコポリマー、ポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びポリエチレンイミン並びにその都度4000000までのモル質量を有するポリアミン、エステル、例えばソルビタン脂肪酸エステル、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリシジルエーテル、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアジリジン化合物、例えば2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)-プロピオネート]、炭酸のジアミド、例えば1,6-ヘキサメチレンジエチレン尿素、ジフェニルメタン-ビス-4,4′-N,N′-ジエチレン尿素、ハロゲンエポキシ化合物、例えばエピクロロヒドリン及びα-メチルエピフルオロヒドリン、ポリイソシアナート、例えば2,4-トルイレンジイソシアナート及びヘキサメチレンジイソシアナート、アルキレンカーボネート、例えば1,3-ジオキソラン-2-オン及び4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、さらにビスオキサゾリン及びオキサゾリドン、ポリアミドアミン並びにエピクロロヒドリンとのその反応生成物、さらにポリ四級アミン、例えばジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの縮合生成物、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー並びに場合により例えば塩化メチルで四級化されているジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのホモポリマー及びコポリマーが含まれる。化合物C3の例はヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレート並びに前記のエチレン系不飽和カルボン酸のグリシジルエステル及びエチレン系不飽和グリシジルエーテルである。
好ましくはモノマーCは少なくとも1つのモノマーC1を前記の量で含んでいる。好ましくは重合は化合物C2の不在で行われる。」(14頁30行?16頁19行(段落【0044】?【0051】))

カ.「以下の例は本発明を明確に示すはずであるが、しかし限定しているものではない。
全ての場合にDE-A 4308087の方法により製造された粗アクリル酸から結晶化又は蒸留により取得された純アクリル酸を使用し、その際に全ての場合にジアクリル酸含量は<500ppmであり、芳香族アルデヒド含量は<5ppmであり、かつプロセス防止剤含量は<5ppmであった。
例1:超吸収体I
粗アクリル酸の結晶化により製造され、酢酸160ppm及びプロピオン酸30ppmの含量を有する純アクリル酸A 1735g、50質量%水性カセイソーダ液1445g及び水2760gから部分中和されたアクリル酸/アクリル酸ナトリウム-溶液を製造し、常法で放散塔中で向流で窒素で処理することにより酸素を取り除いた。大幅に酸素不含の溶液を、ジャケット加熱を備えたトラフニーダー(Werner & Pfleiderer社の型式LUK 8)中へ移送し、十分混合しながらポリエチレングリコールジアクリレート7.8gを添加した。反応器を全ての反応期間の間に窒素で覆った。撹拌シャフトのスイッチが入っている状態でまず最初にペルオキソ二硫酸ナトリウム33.12gを15質量%水溶液として及び引き続いてアスコルビン酸20.79gを0.5質量%溶液として添加した。添加の完了後にニーダーの内容物を加熱した(加熱液体の温度74℃)。この際にニーダー内容物の自発的な加熱及び粘度の激しい増大の結果となった。ニーダー内容物の最大温度を超えたと同時に加熱を止め、15min後重合させた。ニーダーの内容物を50?60℃に冷却し、それを乾燥ふるい上で薄い層にし、それを160℃で90min乾燥させた。引き続き、乾燥されたポリマーを粉砕及びふるい分けにより100?850μmの最終粒度に粉砕した。
こうして製造された粉末1.8kgを、内容積5 lを有するLoedigeプラウシェアミキサー中に装入した。この上に5?10minかけて水59g及び1,2-プロパンジオール29g中のエチレングリコールジグリシジルエーテル1.4gの溶液を噴霧した。120℃に温め、前記温度を60min保持し、その際に溶剤を留去した。引き続き、冷却し、粒子画分100?850μmに分級した。
例2:超吸収体II
例1に類似して超吸収体IIを製造し、その際に純アクリル酸Aの代わりに、結晶化により取得され、酢酸240ppm及びプロピオン酸60ppmの含量を有する純アクリル酸Bを使用した。
例3:超吸収体III
例1に類似して超吸収体IIIを製造し、その際に純アクリル酸Aの代わりに、蒸留により取得され、酢酸1200ppm及びプロピオン酸300ppmの含量を有する純アクリル酸Cを使用し、その際にジアクリル酸含量は<500ppmであり、芳香族アルデヒド含量は<5ppmであり、かつプロセス防止剤含量は<5ppmであった。
こうして製造された超吸収体I?IIIを引き続き臭気試験にかけた。このためにはそれぞれの超吸収体15gずつのその都度5つの試料を、気密に密閉された試料容器中で30℃で5h熱処理した。引き続き5人の試験人が試料の臭気を1?5の評価スケールに従って評価し、その際に1は知覚可能な自己臭がないか又は殆どなく、2は僅かな自己臭であり、3は明らかな自己臭であり、4は強い自己臭であり、かつ5は極めて強い自己臭である。結果は第1表に示されている。
【表1】

第1表からわかるように、本発明により製造された超吸収体は知覚可能な自己臭を有しないかもしくは殆ど有さず、それに反して本発明によらない超吸収体は強いないし極めて強い自己臭を有する。そのうえ、超吸収体IIIは全ての試験人により不快な臭いがすると判断された。」(22頁23行?24頁末行(段落【0078】?【0083】))

(3-4)引用文献に記載された発明
引用文献には、摘示アから、請求項1の任意的な工程b)を除いた
「アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法であって、次の工程:
a)水性重合媒体中でのアクリル酸少なくとも50質量%を含有しているモノマー組成物のラジカル重合によりポリマーヒドロゲルを製造し、前記ヒドロゲルを粒状ヒドロゲルへか又はヒドロゲル形成性粉末へ変換する工程;
を含むアクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法において、
工程a)において使用されるアクリル酸が、酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有し
工程a)において0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用する、
アクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法。」が記載されている。当該「水性重合媒体中でのアクリル酸少なくとも50質量%を含有しているモノマー組成物のラジカル重合によりポリマーヒドロゲルを製造し」において、引用文献の摘示オの記載から、当該水性重合媒体には、少なくとも1つの架橋的に作用する化合物Cを配合するものといえ、架橋的に作用する化合物Cの具体的な例示に「好ましくは400?2000の分子量のポリエチレングリコールから誘導されるポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、・・・トリアリルアミン」が例示されている。
そうすると、引用文献には、摘示ア及びオからみて、
「アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法であって、次の工程:
a)水性重合媒体中でのアクリル酸少なくとも50質量%を含有しているモノマー組成物のラジカル重合によりポリマーヒドロゲルを製造し、前記ヒドロゲルを粒状ヒドロゲルへか又はヒドロゲル形成性粉末へ変換する工程;
を含むアクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法において、
工程a)において使用されるアクリル酸が、酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有し
当該水性重合媒体中に、少なくとも1つの架橋的に作用する化合物Cを配合しており、化合物Cとして、好ましくは400?2000の分子量のポリエチレングリコールから誘導されるポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなるブロックコポリマーのジアクリレート及びジメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸で2回、3回、4回又は5回エステル化された多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はジペンタエリトリット、モノエチレン系不飽和カルボン酸とエチレン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、シクロヘキセノール及びジシクロペンテニルアルコールとのエステル、例えばアリルアクリレート及びアリルメタクリレート、さらにトリアリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びジエチルジアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、106?4000の分子量のポリエチレングリコールのポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテル1molとペンタエリトリトールトリアリルエーテル又はアリルアルコール2molとの反応生成物、及びジビニルエチレン尿素があり、
工程a)において0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用する、
アクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法。」に係る発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認める。

また、引用発明Aのアクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法における製造の途中過程の重合に供される水性重合媒体として、
「酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有するアクリル酸、当該アクリル酸は、0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用するものであり、
少なくとも1つの架橋的に作用する化合物C、当該化合物Cとして、好ましくは400?2000の分子量のポリエチレングリコールから誘導されるポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなるブロックコポリマーのジアクリレート及びジメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸で2回、3回、4回又は5回エステル化された多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はジペンタエリトリット、モノエチレン系不飽和カルボン酸とエチレン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、シクロヘキセノール及びジシクロペンテニルアルコールとのエステル、例えばアリルアクリレート及びアリルメタクリレート、さらにトリアリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びジエチルジアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、106?4000の分子量のポリエチレングリコールのポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテル1molとペンタエリトリトールトリアリルエーテル又はアリルアルコール2molとの反応生成物、及びジビニルエチレン尿素がある、
を配合してなる水性重合媒体。」(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認める。

さらに、引用文献には、引用発明Aとしてヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法が記載されているのであるから、かかる方法によって製造されたヒドロゲル形成性ポリマーである、
「アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法であって、次の工程:
a)水性重合媒体中でのアクリル酸少なくとも50質量%を含有しているモノマー組成物のラジカル重合によりポリマーヒドロゲルを製造し、前記ヒドロゲルを粒状ヒドロゲルへか又はヒドロゲル形成性粉末へ変換する工程;
を含むアクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法において、
工程a)において使用されるアクリル酸が、酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有し
当該水性重合媒体中に、少なくとも1つの架橋的に作用する化合物Cを配合しており、化合物Cとして、好ましくは400?2000の分子量のポリエチレングリコールから誘導されるポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなるブロックコポリマーのジアクリレート及びジメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸で2回、3回、4回又は5回エステル化された多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はジペンタエリトリット、モノエチレン系不飽和カルボン酸とエチレン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、シクロヘキセノール及びジシクロペンテニルアルコールとのエステル、例えばアリルアクリレート及びアリルメタクリレート、さらにトリアリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びジエチルジアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、106?4000の分子量のポリエチレングリコールのポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテル1molとペンタエリトリトールトリアリルエーテル又はアリルアルコール2molとの反応生成物、及びジビニルエチレン尿素があり
工程a)において0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用する、
アクリル酸ベースの臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーの製造方法によって製造されたヒドロゲル形成性ポリマー。」に係る発明(以下、「引用発明C」という。)が記載されていると認める。

(3-5)補正発明1と引用発明Aとの対比
引用発明Aの「アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマー」は、ヒドロゲル形成性ポリマーが吸水性であることは明らかであるから、補正発明1における「吸水性ポリマー」に相当する。
引用発明Aの「少なくとも1つの架橋的に作用する化合物C」は、補正発明1における「少なくとも1種の架橋剤」に相当することは明らかであり、その具体例として記載されている化合物のなかの「ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、さらにトリアリルアミン、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル」は、補正発明1において架橋剤として具体的に例示されている化合物であるから、補正発明1における「架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり」に包含される架橋剤を包含している。
引用発明Aの「粗-アクリル酸」は、引用文献の「適している粗アクリル酸は公知であり、かつC3-炭化水素、特にプロパン、プロペン及びその混合物の接触酸化による大工業的方法により入手可能であり」(摘示エ)の記載及び具体的な実施例の記載である例1(摘示カ)の製造方法として記載されているDE-A4308087号の要約の「混合物を基準として、70?75重量%のジフェニル・エーテル、25?30重量%のジフェニル、0.1?25重量%のo-フタル酸ジメチルの混合物を用いた向流吸収によりプロピレン及び/又はアクロレインの接触酸化の反応ガスからアクリル酸を分離する方法。」の記載からみて、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたものを包含しているといえる。そして、当該製造方法で製造された粗アクリル酸には、アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールが含有されることは明らかである。
引用発明Aの「工程a)において使用されるアクリル酸が、酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有し、工程a)において0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用する」とは、粗アクリル酸を重合前に結晶化により精製して酢酸及び/又はプロピオン酸の含有量を減少させているといえることから、補正発明1における「重合の前に結晶化により精製したアクリル酸」に相当する。
そうすると、両者は、

「吸水性ポリマーを、
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合により製造する方法において、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸並びにアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものである、
方法。」

の点で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点1>
重合の前に結晶化により精製するプロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸に関し、補正発明1においては「少なくとも98質量%のアクリル酸を含有する粗生成物」と特定されているのに対して、引用発明Aにおいては、このような規定はない点。

<相違点2>
重合の前に結晶化により精製するプロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸に関し、補正発明1においては「少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物」と特定されているのに対して、引用発明Aにおいては、この点の規定はない点。

<相違点3>
モノマー溶液について、補正発明1では「溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」と特定されているのに対して、引用発明Aにおいては、このような規定はない点。

以下、相違点について検討する。

相違点1について
重合の前に結晶化する粗-アクリル酸のアクリル含有量について、引用文献には「結晶化に使用されることができる典型的な粗アクリル酸は、アクリル酸70?99.9質量%、特に97.0?99.7質量%、・・・及びその他の有機不純物1質量%まで、例えば0.001?1質量%を含有し、その際に全ての質量の記載はアクリル酸の総組成に基づいている。」(摘示ウ)との記載があるから、引用発明Aは、補正発明1における「少なくとも98質量%」との配合量を包含しているといえる。そうすると、相違点1は、実質上の相違点ではない。

相違点2について
引用発明Aの粗-アクリル酸は、補正発明1において特定している「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された粗アクリル酸の製造過程を経て得られた」粗-アクリル酸であり、補正発明1の粗アクリル酸と同じ製造過程で製造されたものであるから、少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物である蓋然性が高い。したがって、相違点2は、実質上の相違点ではない。

相違点3について
補正発明1において、「溶液が、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」ことを満足させるために粗アクリル酸に対して行っているプロセスは、本件補正明細書の段落【0037】?【0049】に記載のとおりであって、「所望の純度を達するまで、1回以上、好ましくは2回、3回又は4回、特に好ましくは2回結晶化させる」ことである。そして、当該本件補正明細書の段落【0037】?【0049】の記載からみて、アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有量は、再結晶の回数に関係することは明らかであるから、所定の再結晶の回数が4回なら、多くとも0.0005質量%であると解せる。
一方、引用発明Aに記載の結晶化は、「酢酸及びプロピオン酸」の含有量を減少させるためのものであるが、その具体的な結晶化のプロセスについては、本件補正明細書の前記所定の結晶化の記載である【0038】?【0044】の記載内容と同一の内容が引用文献の5頁10行?6頁43行(対応公表公報の段落【0018】?【0024】)に記載されていて、引用発明Aの結晶化においても「アクリル酸は、所望の純度が達成されるまで、1つ又はそれ以上の、例えば2、3、4、5又は6の、連続した別の結晶化段階に供給されることができる」(4頁36行?39行、対応公表公報の段落【0016】)と記載されており、引用発明Aにおいて、4回を超え、6回もの結晶化を行った場合には、引用発明Aのポリマー溶液中のアクリル酸に対してのアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有量は、多くとも0.0005質量%になるものと解せる。
そうすると、引用発明Aのポリマー溶液は「ポリマー溶液がアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」ものを包含しているといえ、相違点3は実質上の相違点ではない。

したがって、補正発明1は引用発明Aと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

(3-6)補正発明4と引用発明Bとの対比・判断
引用発明Bの「水性重合媒体」は、アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマーを製造するための水性重合媒体であるから、上記(3-5)の検討のとおり、補正発明4における「吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液」に相当する。
引用発明Bの「粗-アクリル酸」は、上記(3-5)での検討と同様に、補正発明4における「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸並びにアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物」に相当する。
引用発明Bの「粗-アクリル酸の結晶化により製造され」は、当該結晶化が精製のために行われていることは明らかであり、当該製造が重合前に行われていることは自明であるから、補正発明4における「粗生成物を、重合の前に結晶化により精製した」に相当する。
引用発明Bの「少なくとも1つの架橋的に作用する化合物C」は、補正発明4における「少なくとも1種の架橋剤」に相当することは明らかであり、その具体例として記載されている化合物のなかの「ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、さらにトリアリルアミン、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル」は、補正発明4において架橋剤として具体的に例示されている化合物であるから、補正発明4における「架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり」に包含される架橋剤を包含している。

そうすると、補正発明4と引用発明Bとは、

「a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液であって、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸並びにアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものである、
吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点4>
重合の前に結晶化により精製するプロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸に関し、補正発明4においては「少なくとも98質量%のアクリル酸を含有する粗生成物」と特定されているのに対して、引用発明Bにおいては、このような規定はない点。

<相違点5>
重合の前に結晶化により精製するプロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸に関し、補正発明4においては「少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物」と特定されているのに対して、引用発明Bにおいては、この点の規定はない点。

<相違点6>
モノマー水溶液に関し、補正発明4においては「前記溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」と特定されているのに対して、引用発明Bにおいては、このような規定はない点。

以下、相違点について検討する。
相違点4について
重合の前に結晶化する粗アクリル酸のアクリル含有量について、引用文献には「結晶化に使用されることができる典型的な粗アクリル酸は、アクリル酸70?99.9質量%、特に97.0?99.7質量%、・・・及びその他の有機不純物1質量%まで、例えば0.001?1質量%を含有し、その際に全ての質量の記載はアクリル酸の総組成に基づいている。」(摘示ウ)との記載があるから、引用発明Bは、補正発明4における「少なくとも98質量%」との配合量を包含しているといえる。そうすると、相違点4は、実質上の相違点ではない。

相違点5について
引用発明Bの粗-アクリル酸は、補正発明4において特定している「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された粗アクリル酸の製造過程を経て得られた」粗アクリル酸であり、補正発明4の粗アクリル酸と同じ製造工程で製造されたものであるから、少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物である蓋然性が高い。
したがって、相違点5は、実質上の相違点ではない。

相違点6について
補正発明4において、「溶液が、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」ことを満足させるために粗アクリル酸に対して行っているプロセスは、本件補正明細書の段落【0037】?【0049】に記載のとおりであって、「所望の純度を達するまで、1回以上、好ましくは2回、3回又は4回、特に好ましくは2回結晶化させる」ことである。そして、当該本件補正明細書の段落【0037】?【0049】の記載からみて、アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有量は、再結晶の回数に関係することは明らかであるから、所定の再結晶の回数が4回なら、多くとも0.0005質量%であると解せる。
一方、引用発明Bに記載の結晶化は、「酢酸及びプロピオン酸」の含有量を減少させるためのものであるが、その具体的な結晶化のプロセスについては、本件補正明細書の前記所定の結晶化の記載である【0038】?【0044】の記載内容と同一の内容が引用文献の5頁10行?6頁43行(対応公表公報の段落【0018】?【0024】)に記載されていて、引用発明Bの結晶化においても「アクリル酸は、所望の純度が達成されるまで、1つ又はそれ以上の、例えば2、3、4、5又は6の、連続した別の結晶化段階に供給されることができる」(4頁36行?39行、対応公表公報の段落【0016】)と記載されており、引用発明Bにおいて、4回を超え、6回もの結晶化を行った場合には、引用発明Bのポリマー溶液中のアクリル酸に対してのアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有量は、多くとも0.0005質量%になるものと解せる。
そうすると、引用発明Bのポリマー溶液は「溶液がアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」ものを包含しているといえ、相違点6は実質上の相違点ではない。

したがって、補正発明4は引用発明Bと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

(3-7)補正発明6と引用発明Cとの対比・判断
引用発明Cの「アクリル酸ベースで臭気の少ないヒドロゲル形成性ポリマー」は、ヒドロゲル形成性ポリマーが吸水性であることは明らかであるから、補正発明6における「吸水性ポリマー」に相当する。
引用発明Cの「酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有する、アクリル酸」、「少なくとも1つの架橋的に作用する化合物C」は、それぞれ、補正発明6における「重合導入されたアクリル酸」、「重合導入された少なくとも1種の架橋剤」に相当することは明らかである。
引用発明Cの架橋的に作用する化合物Cの具体例として記載されている化合物のなかの「ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、さらにトリアリルアミン、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル」は、補正発明6において架橋剤として具体的に例示されている化合物であるから、補正発明6における「架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり」に包含される架橋剤を包含している。
引用発明Cの「粗-アクリル酸」は、引用文献の「適している粗アクリル酸は公知であり、かつC3-炭化水素、特にプロパン、プロペン及びその混合物の接触酸化による大工業的方法により入手可能であり」(摘示エ)の記載及び具体的な実施例の記載である例1(摘示カ)の製造方法として記載されているDE-A4308087号の要約の「混合物を基準として、70?75重量%のジフェニル・エーテル、25?30重量%のジフェニル、0.1?25重量%のo-フタル酸ジメチルの混合物を用いた向流吸収によりプロピレン及び/又はアクロレインの接触酸化の反応ガスからアクリル酸を分離する方法。」の記載からみて、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたものを包含しているといえる。そして、当該製造方法で製造された粗アクリル酸には、アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールが含有されることは明らかで、当該アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールが重合導入されることは明らかである。
引用発明Cの「工程a)において使用されるアクリル酸が、酢酸及びプロピオン酸から選択される揮発性飽和カルボン酸400ppm未満(アクリル酸に対する質量含分)を含有し、工程a)において0.1?5質量%の範囲内の酢酸及び/又はプロピオン酸含量を有する粗-アクリル酸の一段階又は多段階の結晶化により取得されたアクリル酸を使用する」とは、粗アクリル酸を重合前に結晶化により精製して酢酸及び/又はプロピオン酸の含有量を減少させているといえることから、補正発明6における「重合の前に結晶化により精製したアクリル酸」に相当する。
そうすると、補正発明6と引用発明Cとは、

「i)重合導入されたアクリル酸、この重合導入されたアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
ii)重合導入された少なくとも1種の架橋剤、
iii)重合導入されたアリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
iv)場合により、重合導入された、i)で挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
v)場合により、ポリマー上にi)に挙げたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされた1種以上の水溶性ポリマー
を含有する吸水性ポリマーであって、
前記アクリル酸が、プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸並びにアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製したアクリル酸であり、
前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものである、
吸水性ポリマー。」

で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点7>
重合の前に結晶化により精製するプロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造されたアクリル酸に関し、補正発明6においては「少なくとも98質量%のアクリル酸を含有する粗生成物」と特定されているのに対して、引用発明Cにおいては、このような規定はない点。

<相違点8>
アクリル酸の粗成生物におけるアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有量に関し、補正発明6においては「少なくとも0.005質量%」と特定されているのに対して、引用発明Cにおいては、このような規定はない点。

<相違点9>
吸水性ポリマーに関し、補正発明6においては「前記ポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」と特定されているのに対して、引用発明Cにおいては、このような規定はない点。

以下、相違点について検討する。
相違点7について
重合の前に結晶化する粗アクリル酸のアクリル含有量について、引用文献には「結晶化に使用されることができる典型的な粗アクリル酸は、アクリル酸70?99.9質量%、特に97.0?99.7質量%、・・・及びその他の有機不純物1質量%まで、例えば0.001?1質量%を含有し、その際に全ての質量の記載はアクリル酸の総組成に基づいている。」(摘示ウ)との記載があるから、引用発明Cは、補正発明6における「少なくとも98質量%」との配合量を包含しているといえる。そうすると、相違点7は、実質上の相違点ではない。

相違点8について
引用発明Cの粗-アクリル酸は、補正発明6において特定している「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された粗アクリル酸の製造過程を経て得られた」粗アクリル酸であり、補正発明6の粗アクリル酸と同じ製造工程で製造されたものであるから、少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物である蓋然性が高い。
したがって、相違点8は、実質上の相違点ではない。

相違点9について
補正発明6において、「ポリマーが、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」ことを満足させるために粗アクリル酸に対して行っているプロセスは、本件補正明細書の段落【0037】?【0049】に記載のとおりであって、「所望の純度を達するまで、1回以上、好ましくは2回、3回又は4回、特に好ましくは2回結晶化させる」ことである。そして、当該本件補正明細書の段落【0037】?【0049】の記載からみて、アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有量は再結晶化の回数に関係することは明らかであるから、所定の再結晶の回数が4回なら、多くとも0.0005質量%であると解せる。
一方、引用発明Cに記載の結晶化は、「酢酸及びプロピオン酸」の含有量を減少させるためのものであるが、その具体的な結晶化のプロセスについては、本件補正明細書の前記所定の結晶化の記載である【0038】?【0044】の記載内容と同一の内容が引用文献の5頁10行?6頁43行(対応公表公報の段落【0018】?【0024】)に記載されていて、引用発明Cの結晶化においても「アクリル酸は、所望の純度が達成されるまで、1つ又はそれ以上の、例えば2、3、4、5又は6の、連続した別の結晶化段階に供給されることができる」(4頁36行?39行、対応公表公報の段落【0016】)と記載されており、引用発明Cにおいて、4回を超え、6回もの結晶化を行った場合には、引用発明Cのポリマー中のアクリル酸に対してのアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有量は、多くとも0.0005質量%になるものと解せる。
そうすると、引用発明Cの吸水性ポリマーは「ポリマーがアクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」ものを包含しているといえ、相違点9は実質上の相違点ではない。

したがって、補正発明6は引用発明Cと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

(3-8)まとめ
したがって、補正発明1、4、6は引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、補正発明1、4、6は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3-9)審判請求人の主張の検討
審判請求人は、平成24年10月24日提出の審判請求書および平成25年8月22日提出の回答書において、以下のように主張している。

「本願発明1と文献1(国際公開第2003/095510号)及び文献2(国際公開第2004/052949号)との対比について
文献1、2では、「ジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分は粗アクリル酸の総組成に対して通例5質量%を超えず、かつ例えば0.001?3質量%の範囲内」であり(文献1の第10頁第47行?第11頁第6行、文献2の第4頁第27行?第33行)、「架橋剤モノマーC1の例は・・・アリルアクリレート・・・。重合すべきモノマー混合物に対するモノマーC1含分は好ましくは0.01?5質量%及び特に0.2?3質量%である」(文献1の第14頁第32行?第15頁第18行、文献2の第15頁第14行?第16頁第2行)、つまり、粗アクリル酸のジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分は例えば0.001?3質量%であり、モノマー混合物にC1含分(アリルアクリレート)0.01?5質量%であるのに対し、本願発明1では「少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物」を精製して、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する溶液を使用する点で、文献1、2とは課題の解決手段が顕著に相違する。
平成23年11月4日付意見書にて記載したように、参考文献1から、文献1、2ではアリルアクリレートの含有量は約0.003質量%以上と考えられる。
また、本願発明1のモノマー溶液では、架橋剤にアリルアクリレートが含まれていないので、文献1、2のように、0.01質量%以上のアリルアクリレートが含まれることはない。
さらに、文献1、2では、「粗アクリル酸は、C3-炭化水素、特にプロパン、プロペン及びその混合物の接触酸化により入手可能」(文献1の第11頁第15行?第18行、文献2の第4頁第42行?第45行)であるのに対し、本願発明1では、「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造される」点で、文献1、2とは課題の解決手段が顕著に相違する。
上記より、本願発明1は文献1、2に記載されていないといえ、本願発明1は理由1に該当しないと思料される。
上記課題の解決手段の相違により、文献1、2では「極めて弱い臭いを有するに過ぎないか又は不快臭をもはや有しない」(文献1の第21頁第13行?第18行、文献2の第22頁第1行?第7行)のに対し、本願発明1では「抽出可能分及び残留モノマーをより低減でき」(表1)、皮膚刺激作用を防止できる([0006]参照)点で、文献1、2とは得られる「効果」も顕著に相違する。
文献1、2では、適切な架橋剤としてアリルアクリレートが挙げられているように、従来、アリルアクリレートは有害成分としては知られていなかったので、アクリル酸の生成の際にアリルアクリレート含有量を低くすることは行なわれていなかった。
従って、本願発明1は、文献1、2に記載も示唆もない新規な構成を有し、また、文献1、2から当業者が予測できない有利な効果を発揮するので、文献1、2から当業者が容易に本願発明1をなし得るとは認められず、本願発明1は理由2に該当しないと思料される。
また、本願発明2、3は本願発明1の従属請求項、本願発明4、5は本願発明1の製造方法に用いるモノマー水溶液の発明、本願発明6は本願発明1の製造方法に用いるモノマー水溶液にて製造した吸水性ポリマーの発明、本願発明7、8は本願発明1の製造方法により得られた吸水性ポリマーを用いた衛生製品に関する発明であり、本願発明1が理由1、2に該当しないのであるから、本願発明2?8も当然、理由1、2に該当しないと思料される。」

「(a)引例1、2について
引例1、2では、「ジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分は粗アクリル酸の総組成に対して通例5質量%を超えず、かつ例えば0.001?3質量%の範囲内」であり(文献1の第10頁第47行?第11頁第6行、文献2の第4頁第27行?第33行)、「架橋剤モノマーC1の例は・・・アリルアクリレート・・・。重合すべきモノマー混合物に対するモノマーC1含分は好ましくは0.01?5質量%及び特に0.2?3質量%である」(文献1の第14頁第32行?第15頁第18行、文献2の第15頁第14行?第16頁第2行)、つまり、粗アクリル酸のジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分は例えば0.001?3質量%であり、層結晶化後の精製されたアクリル酸のジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分は記載されていないのに対し、本願発明1では、アクリル酸に対して多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する溶液を使用するものである。
実際には、層結晶化段階の条件に応じて、精製されたアクリル酸のジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分も左右されるので、結晶化手段の共通性をもって、引例1、2のアリルアクリレートの含分が、本願発明1のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有割合と一致するとはいえない。
そもそも、引例1、2では、架橋剤として、「0.01?5質量%のアリルアルコール、アリルアクリレート」を使用することが認められており(文献1の第14頁第32行?第15頁第18行、文献2の第15頁第14行?第16頁第2行)、結果、アクリル酸に対して0.0005質量%超のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有するモノマー溶液を認めている。
従って、引例1、2では、アクリル酸の重合に不利な影響を及ぼす別の有機不純物、例えばジアクリル酸又はアリルアクリレート(文献1の第10頁第47行?第11頁第6行、文献2の第4頁第27行?第33行)を、0.0005質量%以下に低減する技術思想は一切記載されていないといえる。
上記より、引例1、2には、本願発明1の特徴である「多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有するモノマー溶液」は記載も示唆もない。」

以下、上記主張について検討する。
引用文献1に「不純物としてアリルアクリレートも含有していてよく」と記載されているのは、粗アクリル酸に対する不純物であり、同文献には、該粗アクリル酸を精製した後、重合に用いることが記載されているので、「アリルアクリレートの含分は粗アクリル酸の総組成に対して0.001?3質量%」なる含有量は、重合に用いられるアクリル酸に含有されるアリルアクリレートの含有量ではない。
また、同文献には、架橋剤モノマーとして多数例示されているものの一つとしてアリルアクリレートが例示されているだけであって、0.01?5質量%のアリルアクリレートが必須成分であることが記載されているわけではないので、「アリルアクリレートを、重合すべきモノマー混合物に対して0.01?5質量%加えるものである」とはいえない。
請求人は「実際には、層結晶化段階の条件に応じて、精製されたアクリル酸のジアクリル酸又はアリルアクリレートの含分も左右されるので、結晶化手段の共通性をもって、引例1、2のアリルアクリレートの含分が、本願発明1のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有割合と一致するとはいえない」と主張するが、本願明細書の層結晶化の好適な装置として例示されている特許文献DE-A-10257449の4頁6?7行(本願明細書の段落【0040】)に記載の文献は「(DE-OS)第17 69 123号明細書、(DE-OS)第26 06 364号明細書、EP-A 218 545、EP-A 323 377、CH 645278、FR 2668946、EP-A 616998、EP 638520及びUS 3,597,164」であって、引用文献1で適している装置として例示されている文献と同一であって、層結晶化の段階における諸条件についての記載である本願明細書の段落【0018】?【0023】においても引用文献1の記載と一致していることから、当該主張は失当である。
そして、引用文献1には、文言として「多くとも0.0005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有するモノマー溶液」との記載がなくとも、上記第2.2.(3)(3-5)において検討したとおり、本願発明である特許請求の範囲に記載された製造方法、モノマー溶液、吸水性ポリマーが記載されているといえるのであるから、請求人の主張は失当であり、採用できない。

3.補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成24年10月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?21に係る発明は、平成23年11月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?21に記載されたとおりのものであり、その請求項1、11、16に記載された発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明11」、「本願発明16」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
吸水性ポリマーを、
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合により製造する方法において、
この溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有することを特徴とする方法。
【請求項11】
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液であって、
この溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液。
【請求項16】
i)重合導入されたアクリル酸、この重合導入されたアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
ii)重合導入された少なくとも1種の架橋剤、
iii)重合導入されたアリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
iv)場合により、重合導入された、i)で挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
v)場合により、ポリマー上にi)に挙げたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされた1種以上の水溶性ポリマー
を含有する吸水性ポリマーであって、
このポリマーは、重合導入されたアクリル酸に対して多くとも0.002質量%の重合導入されたアリルアクリレート及び/又は重合導入されたアリルアルコールを含有する、吸水性ポリマー。」

第4.原査定の理由
原査定の理由とされた、平成23年6月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は、以下のとおりである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・・・

[理由1,2について]
・請求項 1-12
・引用文献 1,2
-・備考:
引用文献1の請求項1-10、第3頁第30行-第6頁第12行、第10頁第21行-第11頁下から第7行、実施例を特に参照。
・・・
引用文献1,2には、粗アクリル酸を結晶化によって精製することが記載され、得られた純アクリル酸中のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有量は明記されていないが、その精製方法からみて、本願発明に係る「アクリル酸に対して多くとも0.002質量%」なる範囲であるものと認められる。
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第2003/095510号
2.略
(以下、略)」

第5.当審の判断
1.刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
原査定で引用された引用文献等1である国際公開第2003/095510号は、上記第2 3.(3-2)の刊行物と同じであるから、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、上記第2 2.(3)(3-3)及び(3-4)に記載したとおりである。

2.対比
本願発明1、11、16は、上記第2 1.で述べたとおり、補正発明1、4、6における「a)アクリル酸」について、「プロパン、プロペン及び/又はアクロレインの気相酸化により製造された少なくとも98質量%のアクリル酸並びに少なくとも0.005質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する粗生成物を、重合の前に結晶化により精製した」ものであると限定することをなくすと共に、「アリルアクリレート及び/又はアリルアルコールの含有量」について、補正発明1、4、6における「多くとも0.0005質量%」から「多くとも0.002質量%」と条件を広げ、補正発明1、4、6における「架橋剤」についての「前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌラート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのジアクリレート、3?15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート、及び3?5箇所プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートからなる群から選択されたものであり」との限定をなくしたものに相当する。

そうすると、上記第2 2.(3-5)で述べたとおり、本願発明1と引用発明Aは、

「吸水性ポリマーを、
a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合により製造する方法。」

で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点A>
本願発明1における製造する方法は、重合するモノマー溶液に関し、「この溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」と特定されているのに対して、引用発明Aにおいては、このような規定はない点。

また、本願発明11と引用発明Bとは、

「a)アクリル酸、このアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)アリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
d)場合により、a)に挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有する、吸水性ポリマー製造用のモノマー水溶液。」

で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点B>
モノマー水溶液に関し、本願発明11においては「前記溶液は、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」と特定されているのに対して、引用発明Bにおいては、このような規定はない点。

さらに、本願発明16と引用発明Cとは、

「i)重合導入されたアクリル酸、この重合導入されたアクリル酸は少なくとも部分的に中和されていてよい、
ii)重合導入された少なくとも1種の架橋剤、
iii)重合導入されたアリルアクリレート及び/又はアリルアルコール、
iv)場合により、重合導入された、i)で挙げたモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、及び
v)場合により、ポリマー上にi)に挙げたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされた1種以上の水溶性ポリマー
を含有する吸水性ポリマー。」

で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点C>
吸水性ポリマーに関し、本願発明16においては「このポリマーは、アクリル酸に対して多くとも0.002質量%のアリルアクリレート及び/又はアリルアルコールを含有する」と特定されているのに対して、引用発明Cにおいては、このような規定はない点。

3.相違点についての判断
上記相違点A?Cは、それぞれ、上記第2 2.(3)(3-5)における相違点3、6、9における上限の数値範囲を「多くとも0.0005質量%」から「多くとも0.002質量%」に拡張したものであるから、上記第2 2.(3)(3-5)で述べたとおり、これらの相違点A?Cは、実質上の相違点ではない。

4.まとめ
よって、本願発明1、11、16は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1、11、16に係る発明についての原査定の拒絶の理由1は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-30 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-18 
出願番号 特願2007-541779(P2007-541779)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武貞 亜弓  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 塩見 篤史
大島 祥吾
発明の名称 吸水性ポリマーの製造方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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