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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1号課題同一 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2号主要部同一 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1286839
審判番号 不服2012-16113  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-20 
確定日 2014-04-04 
事件の表示 特願2002-516661「高周波磁界ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年2月7日国際公開,WO02/10786,平成16年2月19日国内公表,特表2004-504906〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年7月31日(パリ条約による優先権主張日 平成12年7月31日,米国)を国際出願日とする国際特許出願であって,平成23年4月15日付けで拒絶理由が通知され,同年10月19日付けで意見書が提出されるとともに,同日付で手続補正がなされたが,平成24年4月18日付で拒絶査定がされた。これに対し,同年8月20日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに,同日付で手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ,平成25年4月17日付けで審尋がなされ,同年10月17日に回答書が請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項に係る発明
請求項1,2,9,12,16,18,20及び60に係る発明は,本件補正により,以下のように補正された。なお,下線は補正箇所を示している。
「【請求項1】複数の電流素子を含む横位電磁(TEM)ボリュームコイルを備えた装置であって、該ボリュームコイルは、磁気共鳴のためのものであり、該ボリュームコイルは、電流素子の規則的または対称的なパターンあるいは規則的または対称的な構成から1つ以上の電流素子を除去または移動することによって形成されるアパーチャを有し、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、
該複数の電流素子のうちの各電流素子に対して、
該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路に対して共鳴し、
該平行なリターン電流経路は、シールドおよび/または中空壁区域である、装置。」

「【請求項2】横位電磁(TEM)空洞共鳴器を形成するように非対称的に構成された複数の電流素子を含む磁気共鳴のための高周波磁界ユニットを備えた装置であって、少なくとも1つの電流素子は、横位電磁波を伝播させるための伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、少なくとも1つの電流素子は、他の電流素子から物理的に接続されておらず、少なくとも2つの電流素子は、反作用的に結合されている、装置。」

「【請求項9】横位電磁(TEM)空洞共鳴器を形成する複数の電流素子を有する磁気共鳴のための高周波磁界ユニットを備えた装置であって、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、該リターン電流経路は、該第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており、該高周波磁界ユニットは、所望の磁界を生成するように適合されており、該高周波磁界ユニットは、該高周波磁界ユニットの端部にて形成される第1のアパーチャと、実質的に塞がれない第2のアパーチャとを有し、該第1のアパーチャは、該第2のアパーチャと一続きである、装置。」

「【請求項12】複数の電流素子を有する磁気共鳴のための高周波磁界ユニットを備えた装置であって、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、該リターン電流経路は、該第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており、該高周波磁界ユニットは、第1の側面アパーチャと、第2の側面アパーチャと、1対の端部アパーチャとを有し、該第1の側面アパーチャおよび該第2の側面アパーチャは、該1対の端部アパーチャの各々と一続きである、装置。」

「【請求項16】第1の高周波磁界ユニットから複数の電流素子のうちの1つの電流素子を除去することにより、アパーチャを有する磁気共鳴のための第2の高周波磁界ユニットを形成する工程を包含する方法であって、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路から外側に放射状に間隔を空けられている、方法。」

「【請求項18】 第1の高周波磁界ユニットから複数の電流素子のうちの2つ以上の
隣接する電流素子を除去することにより、アパーチャを有する磁気共鳴のための第2の高
周波磁界ユニットを形成する工程を包含する方法であって、各電流素子は、伝送線路セグ
メントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための
平行なリターン電流経路とを有し、該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路から外側に放射状に間隔を空けられている、方法。」

「【請求項20】対向して配置される2つの電流素子回路を第1の高周波磁界ユニットから除去することにより、第1のアパーチャと第2のアパーチャとを有する磁気共鳴のための第2の高周波磁界ユニットを形成する工程を包含する方法であって、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路に隣接している、方法。」

「【請求項60】複数の電流素子を備える横位電磁コイル空洞であって、該横位電磁コイルは、磁気共鳴のためのものであり、該横位電磁コイルは、複数の電流素子の間で切断された窓またはアパーチャを有し、該複数の電流素子を介してアクセスを可能にし、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための放射状に間隔が空けられた平行なリターン電流経路とを有し、該第1の電流経路は、該空洞と該リターン電流経路との間に配置されている、横位電磁コイル空洞。」
(下線は補正箇所を示す)と補正された。

2 補正事項について
(1)補正事項1
請求項1について,「該平行なリターン電流経路は、シールドおよび/または中空壁区域である」との技術的事項を追加する補正について検討する。
請求人は,審判請求書において「3.1 本願の特許請求の範囲は、審判請求書と同日付けで提出した手続補正書に示されるとおりです。この補正は、少なくとも、本願明細書の段落0044および本願の図4の記載によってサポートされています。」と主張している。
国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(以下「当初明細書等」という。)の【0044】には,
「図4は、本発明の高周波磁界ユニットと共に用いるために適切な電流素子400の1実施形態の図である。電流素子400は、導体404と共鳴するシールドまたは中空壁区域402を備える。中空壁区域402は導電性材料を含み、導体404は導電性材料を含む。1実施形態において、中空壁区域402は、導電性メッシュから形成される。複数の電流素子400は、『囲まれた空間』を形成するように構成され得る。1実施形態において、複数の電流素子400は、円筒形状の囲まれた空間(図示せず)を形成するように構成される。円筒形状の囲まれた空間において、シールドまたは中空壁区域402は、囲まれた空間の外側に配向され、導体404は、囲まれた空間の内側に配向される。電流素子400等の電流素子は、米国特許第5,557,247号にさらに記載され、本出願は、参考のため、本明細書中に援用される。」と記載されており,
図4には,以下の図が記載されいている。

まず,「平行なリターン電流経路」との用語は,【0044】にはない。そこで,当該用語について,当初明細書等のその余の記載を参照するに,【0041】に以下のような記載がある。
「1実施形態において、中空壁301は、電流素子302?308のリターン素子を備える。代替的実施形態において、中空壁301は、溝付きシールドを含む。図3A?図3Dに見出され得るように、中空壁301は、不在か、または移動された電流素子326と共に線においてアパーチャを備える。」
当該記載を参照するに,「電流素子302?308のリターン素子」を,一応「リターン電流経路」と称していると解される。そこで,図4を参照するに,「電流素子400」,「導体404」,「中空壁区域402」が記載されているが,そこには「リターン素子」すなわち「リターン電流経路」が記載されておらず,図4において,どの部分を「リターン電流経路」としているのか不明である。
一方,【0044】においても,「電流素子400は、導体404と共鳴するシールドまたは中空壁区域402を備える。中空壁区域402は導電性材料を含み、導体404は導電性材料を含む。」「円筒形状の囲まれた空間において、シールドまたは中空壁区域402は、囲まれた空間の外側に配向され、導体404は、囲まれた空間の内側に配向される。」と,「シールドまたは中空壁区域402」の記載はあるものの,「リターン電流経路」に相当する記載はなく,「リターン電流経路」は「シールドまたは中空壁区域である」とはいえない。さらに,「シールドおよび中空壁区域である」の場合については全く記載されていないのであるから,「リターン電流経路」は「シールドおよび中空壁区域である」ともいえないことは明らかである。
してみれば,当初明細書等から「該平行なリターン電流経路は、シールドおよび/または中空壁区域である」という技術的事項は導かれないのであるから,補正事項1は,「該平行なリターン電流経路は、シールドおよび/または中空壁区域である」という技術的意義を有する新たな技術的事項を導入するものである。

(2)補正事項2
請求項9について,「該リターン電流経路は、該第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており」との技術的事項を追加する補正について検討する。
補正事項1で既に検討したように,「リターン電流経路」に関連する用語としては,【0041】に「リターン素子」との記載があるのみである。また,当初明細書等には「放射状に間隔を空けられており」との記載はないことから,一般的な技術用語としての「放射状」と解するに,放射状とは一点を中心に四方八方へ伸びた状態のことである。
図4において,仮に「電流素子400」が「第1の電流経路」に相当するとしても,図4において,どの部分を「リターン電流経路」としているのか不明である。ましてや,図4から,「第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられて」いるものがあるとはいえない。また,上記【0044】の記載からも,「リターン電流経路」は「第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており」との状態は導出されない。
してみれば,当初明細書等から「該リターン電流経路は、該第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており」という技術的事項は導かれず,補正事項2は,「該リターン電流経路は、該第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており」という技術的意義を有する新たな技術的事項を導入するものである。
補正事項2についての上記判断は,請求項12の「該リターン電流経路は、該第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられており」,請求項16の「該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路から外側に放射状に間隔を空けられている」,請求項18の「該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路から外側に放射状に間隔を空けられている」,請求項60の「放射状に間隔が空けられた」の補正事項についても,当てはまることである。

なお,【0044】に「電流素子400等の電流素子は、米国特許第5,557,247号にさらに記載され、本出願は、参考のため、本明細書中に援用される。」と記載されているが,上記米国特許の記載事項を参酌して本願明細書に記載した事項を判断するものではない。仮に,上記米国特許の記載事項を参酌しても,当該記載事項からは「リターン電流経路」に相当するものが何で,それが「シールドおよび/または中空壁区域」であること,さらに,それが「第1の電流経路から外側に放射状に間隔を空けられて」いることは不明であるから,上記補正事項についての判断が変わることはない。

(3)まとめ
したがって,本件補正は,少なくとも,補正事項1又は補正事項2によって,新たな技術的事項を導入するものであることから,その余の補正事項を検討するまでもなく,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
よって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反しているものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである

第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1?66に係る発明は,平成23年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?66に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1および2に係る発明は,次のとおりのものである。
「【請求項1】複数の電流素子を含むボリュームコイルを備えた装置であって、該ボリュームコイルは、磁気共鳴のためのものであり、該ボリュームコイルは、電流素子の規則的または対称的なパターンあるいは規則的または対称的な構成から1つ以上の電流素子を除去または移動することによって形成されるアパーチャを有し、各電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、該複数の電流素子のうちの各電流素子に対して、該第1の電流経路は、該平行なリターン電流経路に対して共鳴する、装置。」(以下「本願発明1」という。)

「【請求項2】非対称的に構成された複数の電流素子を含む磁気共鳴のための高周波磁界ユニットを備えた装置であって、少なくとも1つの電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、少なくとも1つの電流素子は、他の電流素子から物理的に接続されておらず、少なくとも2つの電流素子は、反作用的に結合されている、装置。」(以下「本願発明2」という。)

2 原査定の理由
原査定の拒絶理由の理由1は,本願発明1と,本願発明2,請求項9,12,16,18,20,60に係る発明との間で特許法第37条に規定する要件を満たしていないとするものである。

3 当審の判断
原査定の上記理由について,まず,本願発明1と本願発明2との関係について検討する。本願の国際出願日は,上記のとおり平成13年7月31日であるから,平成15年法律第47号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第37条(以下「特許法第37条」という。)に規定する関係を満たすかどうかについて検討することになる。
本願発明1及び本願発明2とも「装置」の発明で,両者は同一カテゴリーの発明であるから,特許法第37条のうち関係するものは,第1号及び第2号であるから,本願発明1と本願発明2とが、特許法第37条第1号又は第2号の関係を有するか否かについて検討する。
本願発明の詳細な説明には,
「【0004】
・・・。コイルボリュームへの末端アクセスまたは『横木間』アクセスによって提供される限定されたアクセスは、コイルボリュームに閉じ込められる被験者、およびその被験者を治療するか、またはその被験者と相互に互いに接し合う医師または技術者に影響を及ぼす。特定の被験者は閉所恐怖症であり、ボリュームコイル内に閉じ込められることに耐えることができない。その一方で、脳外科等の特定の医療処置は、画像化中、被験者へのアクセスを必要とする。これらおよび他の理由から、本発明が必要とされる。」
「【0006】
実質的に塞がれておらず、高周波磁界ユニット内に配置されるアパーチャを備える高周波磁界ユニット、および側面アパーチャを備える高周波磁界ユニットが記載される。実質的に塞がれていない第1のアパーチャを備える高周波磁界ユニットが画像装置と共に用いられる場合、画像装置の使用と関連付けられた医療上の利益が、閉所恐怖症の被験者に供与され得る。側面アパーチャを備える高周波磁界ユニットが画像装置と共に用いられる場合、画像装置の使用と関連付けられた医療上の利益が、標準的高周波磁界ユニット内に適合し難い被験者に供与され得る。実質的に塞がれないアパーチャを欠く高周波磁界ユニットを、実質的に塞がれないアパーチャを有する高周波磁界ユニットに転換する方法と、側面アパーチャを欠く高周波磁界ユニットを、側面アパーチャを有する高周波磁界ユニットに転換する方法とが、さらに、記載される。
【0007】
さらに、コイル等の、高周波磁界ユニット内にアパーチャを備えることによって、解剖学的組織の1部分をコイルによって投影することが可能となる。これにより、コイルの残り部分がはるかに小さくなり、被験者にはるかにぴったりと適合可能となる。小型でぴったりと適合するコイルは、画像信号効率を改善し、その結果、より高い分解能の画像が、より少ない電力を用いて、より短い時間でもたらされる。」
「【0012】
第1のアパーチャ104は、物体または被験者を高周波磁界ユニット102内に導入する出入り口(port)を提供する。例えば、ヒトの頭部(図示せず)は、第1のアパーチャ104にて高周波磁界ユニット102の中に導入され得る。頭部は、好適には、高周波磁界ユニット102内で、目が第2のアパーチャ106の方向に向けられるように配向される。この配向によって、実質的に塞がれていない第2のアパーチャを欠く高周波磁界ユニットの中に導入された被験者がよく経験する閉所恐怖効果を被験者は回避する。・・・。
【0013】
第1のアパーチャ104は、好適には、第2のアパーチャ106と一続きである。一続きの第2のアパーチャ106は、第1のアパーチャ104および第2のアパーチャ106を含む一続きのオープンスペースを提供することによって、高周波磁界ユニット102の中に被験者を比較的容易に導入することを可能にし、その被験者が画像化中に閉所恐怖効果を感じる可能性を低減する。第2のアパーチャ106は、さらに、被験者が高周波磁界ユニット102の外側を見ることを可能にし、医師または技術者が被験者の目、鼻および口にアクセスすることを可能にする。」
「【0016】
第2のアパーチャ106は、大きい鼻を有するヒトの被験者の頭部にぴったりと適合する高周波磁界ユニット102の製造を可能にする。・・・。」
「【0024】
・・・。複数の被験者について、第1の側面アパーチャ206および第2の側面アパーチャ208は、四肢または余分な身体質量が高周波磁界ユニット202の外側に延びることを可能にすることによって、高周波磁界ユニット202の内側に位置するときの被験者の快適さが向上する。快適な被験者は、画像化中にあまり動かない傾向があり、従って、画像の撮り直しがあまり必要とされず、被験者が画像化される場合に、より高い質の画像が取得される。さらに、ボディコイルがより小型でより接近すると、画像の質が著しく向上する。より小さい寸法のコイルが、高い磁界強度の画像化のために必要とされる高周波にて効率的に共鳴させるように作製され得る。」
「【0032】
図2Cは、臨床の場において使用するために構成された図2Aに示された高周波磁界ユニットを含む装置のいくつかの実施形態の図である。図2Cに見出され得るように、被験者は、ぴったりと適合する高周波磁界ユニット202の中に容易に、かつ快適に適合する。このユニットは、高周波磁界ユニット202を、心臓、肺および胸部を画像化する用途に用いるために特に適合する。」(下線は,当審において付与した。)
と記載されており,発明の詳細な説明から把握される発明の「解決しようとする課題」が,上記【0004】に記載されている「特定の被験者は閉所恐怖症であり、ボリュームコイル内に閉じ込められることに耐えることができない。その一方で、脳外科等の特定の医療処置は、画像化中、被験者へのアクセスを必要とする。」ことであることは,発明の詳細な説明全体から明らかであり,その「解決しようとする課題」に対応した発明の主要部は,高周波磁界ユニット内にアパーチャを備えるという技術的事項であることも,発明の詳細な説明全体から明らかである。
そこで,本願発明1を検討するに,本願発明1は「該ボリュームコイルは、電流素子の規則的または対称的なパターンあるいは規則的または対称的な構成から1つ以上の電流素子を除去または移動することによって形成されるアパーチャを有し」との事項が発明特定事項とされていることから,解決しようとする課題が上記発明の詳細な説明から把握されるものと同じであり,当該発明特定事項が,その解決しようとする課題に対応した発明の主要部になるものである。
一方,本願発明2は,上記のとおり「非対称的に構成された複数の電流素子を含む磁気共鳴のための高周波磁界ユニットを備えた装置であって、少なくとも1つの電流素子は、伝送線路セグメントを含み、該伝送線路セグメントは、第1の電流経路と、該第1の電流経路のための平行なリターン電流経路とを有し、少なくとも1つの電流素子は、他の電流素子から物理的に接続されておらず、少なくとも2つの電流素子は、反作用的に結合されている、装置」であり,発明の詳細な説明では「いくつかの実施形態において、電流素子110?115は非対称的に構成され、物理的に互いに接続されず、反作用的に結合される。」(【0010】)と記載されるのみで,これがボリュームコイルにアパーチャーを有するようなことに対応しているとはいえないことから,上記発明の詳細な説明全体から把握される「解決しようとする課題」に対応したものとはいえない。そして,発明の詳細な説明から把握される解決しようとする課題に対応した発明の主要部である「高周波磁界ユニット内にアパーチャを備える」という技術的事項に対応する事項を,本願発明2では発明特定事項としているとはいえない。
してみれば,本願発明1を特定発明とするに,本願発明2は,その特定発明と「解決しようとする課題が同一である発明」とはいえない。また,本願発明1と本願発明2との間で「解決しようとする課題が同一である」とはいえないのだから,いずれの請求項に係る発明を特定発明としても,特許法第37条第1号で規定する「その特定発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明」の関係を満たすことにはならない。
同様に,本願発明1を特定発明とするに,本願発明2は,その特定発明と「請求項に記載する事項の主要部が同一である発明」とはいえず,また,本願発明1と本願発明2との間で「請求項に記載する事項の主要部が同一である発明」とはいえないのだから,いずれの請求項に係る発明を特定発明としても,特許法第37条第2号で規定する「その特定発明と産業上の利用分野及び請求項に記載する事項の主要部が同一である発明」の関係を満たすことにはならない。
さらに,上記のとおり,本願発明1及び本願発明2とも「装置」の発明であることから,特許法第37条第3号,第4号及び第5号に規定するいずれの関係をも満たさないことは明らかである。

したがって,本願特許請求の範囲のいずれの請求項に係る発明を特定発明としても,少なくとも本願発明1と本願発明2との間で特許法第37条に規定する要件を満たしていないのであるから,本願は,特許法第37条の規定を満たしたものではない。


(回答書の補正案について)
なお,請求人は,回答書で補正案を提示しているが,それは本件補正の各請求項にさらに技術的事項を追加するものであり,「第2 本件補正についての補正却下の決定」「2 補正事項について」において,新たな技術的事項を導入するものであると判断した技術的事項が,そのまま発明特定事項とされていることから,回答書における補正案における発明についても,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえないものである。
さらに,補正案によって,請求項1に追加している「1つ以上の電流素子の除去または移動の後の電流素子の残りのパターンまたは構成は、所望の磁界を生成することができ、該所望の磁界は、復元されるか、補償されるか、そうでない場合、該複数の電流素子内の電流を調整することによってもたらされる」,請求項2に追加している「該少なくとも1つの電流素子が接続されなくなった後の電流素子の残りのパターンまたは構成は、所望の磁界を生成することができ、該所望の磁界は、復元されるか、補償されるか、そうでない場合、電流素子の該残りのパターンまたは構成内の電流を調整することによってもたらされる」,請求項16,17及び18に追加している「該第2の高周波磁界ユニット内に所望の磁界を生成する電流のセットを計算およびインプリメントする工程」は,いずれも発明の詳細な説明に具体的に記載されているものではない。このような発明の詳細な説明に記載されていない技術的事項を含む発明は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとはいえず,それらを本願発明の特徴であるとする請求人の主張は受け入れられるものではない。


第4 むすび
以上,本願は、特許法37条に規定する要件を満たしていないため,原査定のその他の拒絶の理由を検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2013-11-05 
結審通知日 2013-11-06 
審決日 2013-11-25 
出願番号 特願2002-516661(P2002-516661)
審決分類 P 1 8・ 641- Z (A61B)
P 1 8・ 561- Z (A61B)
P 1 8・ 642- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹内 あや乃伊藤 幸仙大▲瀬▼ 裕久  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 森林 克郎
三崎 仁
発明の名称 高周波磁界ユニット  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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