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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1287046
審判番号 不服2013-17455  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-10 
確定日 2014-04-24 
事件の表示 特願2008- 15789「携帯電話機及び文字列登録方法並びに制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日出願公開、特開2009-176175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成20年1月28日の出願であって、平成22年12月13日付けで審査請求がなされ、平成24年10月10日付けで拒絶理由通知(同年10月16日発送)がなされ、これに対して同年12月14日付けで意見書が提出されると共に手続補正書が提出されたが、平成25年6月6日付けで拒絶査定(同年6月11日謄本送達)がなされた。
これに対して、「原査定を取り消す。この出願の発明は特許をすべきものとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成25年9月10日付けで審判請求がなされると共に、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成25年10月9日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ、同年11月5日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年11月12日発送)がなされ、平成26年1月6日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成25年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成25年9月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成25年9月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成24年12月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至9の記載

「【請求項1】
インターネットアクセス機能を備える携帯電話機において、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部と、
文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録する文字列登録部と、を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
複数の機能に基づく複数の画面を同時に表示する機能を備える携帯電話機において、
一方の画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部と、
文字列が一致する場合に、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録する文字列登録部と、を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
前記複数の機能は、インターネットアクセス機能及び電子メール機能であることを特徴とする請求項2記載の携帯電話機。
【請求項4】
インターネットアクセス機能を備える携帯電話機における文字列登録方法であって、
前記インターネットアクセス機能を用いてWebサイトにアクセスするステップと、
前記Webサイトの画面に表示される文字列を取得するステップと、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定するステップと、
文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録するステップと、を少なくとも備えることを特徴とする文字列登録方法。
【請求項5】
複数の機能に基づく複数の画面を同時に表示する機能を備える携帯電話機における文字列登録方法であって、
前記複数の機能を動作させて、前記複数の画面を表示させるステップと、
一方の画面に表示される文字列を取得するステップと、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定するステップと、
文字列が一致する場合に、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録するステップと、を少なくとも備えることを特徴とする文字列登録方法。
【請求項6】
前記複数の機能は、インターネットアクセス機能及び電子メール機能であることを特徴とする請求項5記載の文字列登録方法。
【請求項7】
インターネットアクセス機能を備える携帯電話機で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部、
文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録する文字列登録部、として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
複数の機能に基づく複数の画面を同時に表示する機能を備える携帯電話機で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
一方の画面に表示される文字列を取得する文字列取得部、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部、
文字列が一致する場合に、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録する文字列登録部、として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項9】
前記複数の機能は、インターネットアクセス機能及び電子メール機能であることを特徴とする請求項8記載の制御プログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「【請求項1】
インターネットアクセス機能を備える携帯電話機において、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部と、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部と、
を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
複数の機能に基づく複数の画面を同時に表示する機能を備える携帯電話機において、
一方の画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部と、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部と、
を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
前記複数の機能は、インターネットアクセス機能及び電子メール機能であることを特徴とする請求項2記載の携帯電話機。
【請求項4】
インターネットアクセス機能を備える携帯電話機における文字列登録方法であって、
前記インターネットアクセス機能を用いてWebサイトにアクセスするステップと、
前記Webサイトの画面に表示される文字列を取得するステップと、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定するステップと、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録するステップと、
を少なくとも備えることを特徴とする文字列登録方法。
【請求項5】
複数の機能に基づく複数の画面を同時に表示する機能を備える携帯電話機における文字列登録方法であって、
前記複数の機能を動作させて、前記複数の画面を表示させるステップと、
一方の画面に表示される文字列を取得するステップと、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定するステップと、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録するステップと、
を少なくとも備えることを特徴とする文字列登録方法。
【請求項6】
前記複数の機能は、インターネットアクセス機能及び電子メール機能であることを特徴とする請求項5記載の文字列登録方法。
【請求項7】
インターネットアクセス機能を備える携帯電話機で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
複数の機能に基づく複数の画面を同時に表示する機能を備える携帯電話機で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
一方の画面に表示される文字列を取得する文字列取得部、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項9】
前記複数の機能は、インターネットアクセス機能及び電子メール機能であることを特徴とする請求項8記載の制御プログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。


2.新規事項追加禁止要件

本件補正により、補正前の請求項1の「文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録する文字列登録部」は、補正後の請求項1の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」に変更されたが、この中で「のみ」を挿入する補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の記載と整合しないものである。
当初明細書等では、「予測変換データ」の登録に関し、段落【0026】の「また、制御部9は、Webサイトの画面などに表示されている文字列を取得する文字列取得部9aと、取得した文字列が、辞書データに登録されているかを判定する文字列判定部9bと、取得した文字列が辞書データに登録されている場合に、予測変換の候補の先頭に表示されるように、その文字列を予測変換データに登録する文字列登録部9cなどしても機能する。」,段落【0037】の「このように、インターネットアクセス機能を利用してWebサイトにアクセスしてWebサイトの画面を表示する場合などに、画面に表示されている文字列と携帯電話機1に予め記憶されている辞書データとを比較し、その文字列が辞書データに登録されていれば、予測変換の候補の先頭に表示されるように、その文字列を予測変換データに登録する制御を行うため、画面に表示されている文字列を文字入力の際に容易に選択することができ、これにより、キー操作回数を削減して、ユーザの利便性を向上させることができる。」との記載があり、確かに、取得した文字列と辞書データに登録されている文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データに登録する旨が記載されていると認められる。
しかしながら、当初明細書等のいずれにも、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、取得した文字列を予測変換データに登録するのは、取得した文字列と辞書データに登録されている文字列が一致する場合のみに限るという記載又は示唆はなく、また、本願出願時の周知の文字入力装置の予測変換技術から自明の事項であるとも認められない。
よって、補正後の請求項1の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」は、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。
また、補正後の請求項2の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」,補正後の請求項4の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録するステップ」,補正後の請求項5の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録するステップ」,補正後の請求項7の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」,補正後の請求項8の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、他方の画面での文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」についても、上記の補正後の請求項1の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」と同様の理由により、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。


3.目的要件

仮に、本件補正が新規事項追加でないとして、以下、検討を続ける。

本件補正が、特許法17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて、以下に検討する。

本件補正は、補正前の請求項1,2,4,5,7,8に記載した発明を特定するために必要な事項である「取得した文字列が」を「取得した前記文字列が」に限定し、
補正前の請求項1,2,4,5,7,8に記載した発明を特定するために必要な事項である「文字列が一致する場合に」を「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ」に限定し、
補正前の請求項1,2,4,5,7,8に記載した発明を特定するために必要な事項である「当該文字列を予測変換データ部に登録する」を「前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する」に限定するものであり、
また、本件補正によっても、補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することから、特許法17条の2第5項の規定を満たすものである。


4.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記平成25年9月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「インターネットアクセス機能を備える携帯電話機において、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部と、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部と、
を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。」


(2)引用発明

本願の出願日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成24年10月10日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2007-114932号公報(平成19年5月10日出願公開、以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0003】
このような状況において、文字入力を簡単に行う方法として、例えば引用文献1に記載されているように、短い入力文字列(例えば「そふ」)から長い文字列(例えば「ソフトウェア」)を予測して出力する技術が知られている。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AV機器や携帯電話などは、特許文献1のように、少ない文字入力から候補が予測されることが望ましい。ただし、テレビ番組などのコンテンツ視聴を楽しんでいるときにユーザが欲しい情報は、そのコンテンツや、それを提供している放送局などのサービスプロバイダなどに関連した情報であることが多い。この場合には、単に一般的な言葉からの予測辞書では出てくる言葉の範囲が広すぎて、ユーザが所望の言葉を選択するための平均操作回数が増加する。
…(中略)…
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが入力する文字列を、少ない操作回数で入力することができる文字列入力装置、テレビジョン受像機及び文字列入力プログラムを提供することにある。」

B 「【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
始めに、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による文字列入力システムの概略構成図である。この文字列入力システムは、放送局1、文字列入力装置2、コンテンツサーバ4を有する。文字列入力装置2とコンテンツサーバ4とは、インターネット3を介して接続されている。文字列入力装置2は、赤外線通信などにより文字列入力装置2を遠隔操作するためのリモコン21を備えている。
ここでは、放送局1から文字列入力装置2に対して、放送番組が送信されるとともに、放送局1が提供するインターネット3上のサイトに放送番組に関連したウエブページが保存されている。
放送局1は、放送番組をテレビジョン受像機などに対して送出する。文字列入力装置2は、文字列入力システムの中心となる装置であり、ここではテレビジョン受像機が文字列入力装置2として作動する。リモコン21は、文字列入力装置2に対してチャンネルの切り替えの他に文字や文字列の入力、キー情報の選択の指示を与える。
【0024】
インターネット3は、文字列入力装置2がコンテンツサーバ4から、文字列が含まれるコンテンツを取得するためなどに利用されるネットワークである。コンテンツサーバ4は、放送番組に関連するウエブページを記憶し、インターネット3を介して文字列入力装置2に送出する。
なお、本実施形態による文字列入力システムでは、文字列入力装置2が文字列を含むコンテンツをコンテンツサーバ4から受信し、その文字列に基づいてユーザの入力したい文字列の入力を容易にする。文字列入力装置2は、テレビジョン受像機に限定されるものではなく、DVDレコーダ、携帯電話、PCなどを用いることもできる。
また、図1では、放送を利用して放送番組を文字列入力装置2に送出し、インターネット3を利用してコンテンツを文字列入力装置2に送出する場合について説明しているが、このような構成に限定さるものではない。例えば、データ放送を利用して文字列を含む情報を取得したり、インターネット3を利用して放送番組のストリームを取得したりしてもよい。また、文字列入力装置2が放送番組の情報を取得することは必須ではなく、コンテンツサーバ4から送信される文字列を含む情報のみを取得するようにしてもよい。」

C 「【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態による文字列入力装置2により、辞書を作成する方法を示す図である。文字列入力装置2は、そのメモリ(図示省略)に漢字かな引き辞書201のソフトウェアを記憶している。漢字かな引き辞書201は、漢字に対して読み仮名を振るための辞書である。文章を単語に区切るためには、構文解析や形態素解析を行う。この構文解析や形態素解析には、“自然言語処理-基礎と応用”(田中穂積著、電子情報通信学会)などに記載されている技術を利用することができる。
…(中略)…。
【0026】
辞書203は、コンテンツ202に含まれる文字列を構文解析又は形態素解析し、漢字かな引き辞書201を用いて文字列と対応する読み仮名を付加して作成された辞書である。コンテンツ202の中に含まれる単語などの文字列を抽出して、その文字列に読み仮名を振り、所定の順序(読み仮名順、読み仮名の長い順など)に従い並べ替える。辞書203は、文字列入力装置2で表示されている放送番組に関する情報であり、ユーザが受信しているチャンネルを切り替えたり(放送番組を切り替えたり)、時間が経過したりすると意味が少なくなる性質のものである。この辞書203も文字列入力装置2のメモリに記憶される。
なお、ここでの辞書とは入力された仮名や数字の情報から、文字列や文章の候補を選択するための情報であり、図2に示すようにテーブル形式にする必要はなく、ルール形式にするなど、その他の形式を用いることもできる。」

D 「【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態による文字列入力装置2の構成を示すブロック図である。文字列入力装置2は、ネットワーク・インターフェース部301、主コンテンツ取得部302、主コンテンツ切り替え部303、主コンテンツ出力部319、関連コンテンツ取得部304、文字情報抽出部305、読み情報抽出部306、漢字かな変換部307、辞書記憶部308、ユーザ入力部309、文字列比較部310、候補表示部311、文字列決定部312、機能処理部313、辞書退避部314、辞書更新部315、辞書復旧部316を有する。」

E 「【0030】
主コンテンツ取得部302は、放送局1(図1)などから放送番組等の主コンテンツを取得する。主コンテンツ切り替え部303は、リモコン21(図1)などからの指示に基づいて、主コンテンツを別の主コンテンツに切り替える。
…(中略)…
【0031】
文字情報抽出部305は、主コンテンツ取得部302が取得した主コンテンツに含まれる文字列の情報を抽出する。HTML(Hyper Text Markup Language)などの文法に則った文字列の場合には、その文字列を解析することが必要であり、これらの機能も文字情報抽出部305に含まれる。
読み情報抽出部306は、漢字かな変換部307に記憶されている漢字かな引き辞書201(図2)を用いて、文字情報抽出部305で抽出された文字列の情報を単語などに分解して読み情報を抽出する。文字情報抽出部305では、XML(Extensible Markup Language)などの構文を解析する必要があったが、読み情報抽出部306では、文字情報抽出部305で抽出された自然言語を解析する必要があり、ここではこれらの解析を含めて行う。なお、英文など入力がそのまま表記になる言語では、漢字かな変換部307を設ける必要はなく、読み情報抽出部306では活用形から原形への変換、不要語の除去、複数形から単数形への変換などを行う。
【0032】
辞書記憶部308は、文字情報抽出部305で抽出された単語や文字列と、読み情報とを対にして辞書203(図2)として記憶する。なお、文字情報抽出部305で文字列にリンク情報などが設定されている場合には、このようなリンク情報も対にして辞書記憶部308に記憶する。このリンク情報は文字列が選択されたときの処理に用いる。
ユーザ入力部309は、ユーザがリモコン21(図1)を介して入力する文字や文字列を取得する。文字列比較部310は、ユーザ入力部309が取得した文字や文字列と、辞書記憶部308に記憶されている文字列とを比較して、ユーザ入力部309が取得した文字や文字列を含む、あるいは一致する文字列を辞書記憶部308から読み出すことにより、候補文字列を抽出する。」

F 「【0033】
候補表示部311は、文字列比較部310で抽出された候補のリストを候補文字列として表示画面に表示する。候補表示部311は、読みの長い順に候補文字列を並べ替えて表示するなどの処理を行う。また、ここでは関連コンテンツから得られた辞書から候補文字列の選択を行っている場合について説明しているが、辞書記憶部308にコンテンツによらない一般辞書を同時に記憶しておき、候補表示部311により一般辞書で得られた単語も含めて表示してもよい。この場合には、一般辞書から抽出される候補文字列と、関連コンテンツから抽出される候補文字列とが、重複する可能性があるので、その重複を取り除いて候補表示部311に表示することができる。」

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Bの「図1は、本発明の第1の実施形態による文字列入力システムの概略構成図である。この文字列入力システムは、放送局1、文字列入力装置2、コンテンツサーバ4を有する。文字列入力装置2とコンテンツサーバ4とは、インターネット3を介して接続されている。」,「インターネット3は、文字列入力装置2がコンテンツサーバ4から、文字列が含まれるコンテンツを取得するためなどに利用されるネットワークである。コンテンツサーバ4は、放送番組に関連するウエブページを記憶し、インターネット3を介して文字列入力装置2に送出する。」,「また、文字列入力装置2が放送番組の情報を取得することは必須ではなく、コンテンツサーバ4から送信される文字列を含む情報のみを取得するようにしてもよい。」との記載からすると、「文字列入力装置」はインターネットを介して「コンテンツサーバ」に接続され、「文字列入力装置」が「コンテンツサーバ」のウエブページから文字列を含む「コンテンツ」を取得する態様が記載されていると解される。
また、上記Aの「AV機器や携帯電話などは、特許文献1のように、少ない文字入力から候補が予測されることが望ましい。ただし、テレビ番組などのコンテンツ視聴を楽しんでいるときにユーザが欲しい情報は、そのコンテンツや、それを提供している放送局などのサービスプロバイダなどに関連した情報であることが多い。この場合には、単に一般的な言葉からの予測辞書では出てくる言葉の範囲が広すぎて、ユーザが所望の言葉を選択するための平均操作回数が増加する。」,「本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが入力する文字列を、少ない操作回数で入力することができる文字列入力装置、テレビジョン受像機及び文字列入力プログラムを提供することにある。」との記載、上記Bの「なお、本実施形態による文字列入力システムでは、文字列入力装置2が文字列を含むコンテンツをコンテンツサーバ4から受信し、その文字列に基づいてユーザの入力したい文字列の入力を容易にする。文字列入力装置2は、テレビジョン受像機に限定されるものではなく、DVDレコーダ、携帯電話、PCなどを用いることもできる。」との記載からすると、「文字列入力装置」は、コンテンツを視聴しているユーザが入力する文字列を少ない操作回数で入力することを目的とし、「携帯電話」の文字列入力装置の態様を含むと解されることから、引用文献には、
「コンテンツ視聴中のユーザが入力する文字列を少ない操作回数で入力するための、インターネットを介してコンテンツサーバのウエブページから文字列を含むコンテンツを取得する携帯電話の文字列入力装置」
が記載されていると解される。

(イ)上記Dの「文字列入力装置2は、ネットワーク・インターフェース部301、主コンテンツ取得部302、主コンテンツ切り替え部303、主コンテンツ出力部319、関連コンテンツ取得部304、文字情報抽出部305、読み情報抽出部306、漢字かな変換部307、辞書記憶部308、ユーザ入力部309、文字列比較部310、候補表示部311、文字列決定部312、機能処理部313、辞書退避部314、辞書更新部315、辞書復旧部316を有する。」との記載、上記Eの「文字情報抽出部305は、主コンテンツ取得部302が取得した主コンテンツに含まれる文字列の情報を抽出する。」,「読み情報抽出部306は、漢字かな変換部307に記憶されている漢字かな引き辞書201(図2)を用いて、文字情報抽出部305で抽出された文字列の情報を単語などに分解して読み情報を抽出する。」との記載からすると、「文字列入力装置」は「文字情報抽出部」,「読み情報抽出部」などから構成されることは明らかであり、上記(ア)の検討から、「文字列入力装置」の「文字情報抽出部」は「コンテンツサーバ」のウエブページからコンテンツを取得すると解される。
また、上記Cの「文字列入力装置2は、そのメモリ(図示省略)に漢字かな引き辞書201のソフトウェアを記憶している。漢字かな引き辞書201は、漢字に対して読み仮名を振るための辞書である。」との記載からすると、「読み情報抽出部」は「文字列入力装置」が予め記憶した「漢字かな引き辞書」を用いて、文字列から読み情報を抽出するといえることから、引用文献には、
「ウエブページから取得したコンテンツに含まれる文字列を抽出する文字情報抽出部と、
予め記憶した漢字かな引き辞書を用いて、文字情報抽出部で抽出された文字列から読み情報を抽出する読み情報抽出部」
が記載されていると解される。

(ウ)上記Cの「辞書203は、コンテンツ202に含まれる文字列を構文解析又は形態素解析し、漢字かな引き辞書201を用いて文字列と対応する読み仮名を付加して作成された辞書である。コンテンツ202の中に含まれる単語などの文字列を抽出して、その文字列に読み仮名を振り、所定の順序(読み仮名順、読み仮名の長い順など)に従い並べ替える。」との記載、上記Eの「辞書記憶部308は、文字情報抽出部305で抽出された単語や文字列と、読み情報とを対にして辞書203(図2)として記憶する。」との記載からすると、「辞書記憶部」はコンテンツから取得した文字列を所定の順序で「辞書」に記憶すると解され、上記(イ)の検討から、「読み情報抽出部」が「漢字かな引き辞書」を用いて文字列から読み情報を抽出した場合に、「辞書記憶部」が当該文字列を「辞書」に記憶すると解される。
また、上記Eの「ユーザ入力部309は、ユーザがリモコン21(図1)を介して入力する文字や文字列を取得する。文字列比較部310は、ユーザ入力部309が取得した文字や文字列と、辞書記憶部308に記憶されている文字列とを比較して、ユーザ入力部309が取得した文字や文字列を含む、あるいは一致する文字列を辞書記憶部308から読み出すことにより、候補文字列を抽出する。」との記載、上記Fの「候補表示部311は、文字列比較部310で抽出された候補のリストを候補文字列として表示画面に表示する。候補表示部311は、読みの長い順に候補文字列を並べ替えて表示するなどの処理を行う。」との記載からすると、「ユーザ入力部」にユーザが入力した文字列を含む、あるいは一致する文字列を「辞書記憶部308」から抽出し、候補文字列として並べ替えて表示すると解されることから、引用文献には、
「取得した文字列から読み情報が抽出された場合に、ユーザの文字列入力時に入力文字列を含むあるいは一致する候補文字列が表示されるよう、前記取得した文字列を所定の順序で辞書に記憶する辞書記憶部」
が記載されていると解される。

以上、(ア)乃至(ウ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「コンテンツ視聴中のユーザが入力する文字列を少ない操作回数で入力するための、インターネットを介してコンテンツサーバのウエブページから文字列を含むコンテンツを取得する携帯電話の文字列入力装置において、
ウエブページから取得したコンテンツに含まれる文字列を抽出する文字情報抽出部と、
予め記憶した漢字かな引き辞書を用いて、文字情報抽出部で抽出された前記文字列から読み情報を抽出する読み情報抽出部と、
前記取得した文字列から読み情報が抽出された場合に、ユーザの文字列入力時に入力文字列を含むあるいは一致する候補文字列が表示されるよう、前記取得した文字列を所定の順序で辞書に記憶する辞書記憶部と、
を少なくとも備える携帯電話の文字列入力装置。」


(3)参考文献

(3-1)参考文献1に記載されている技術的事項

本願の出願日前に頒布された、特開昭61-250769号公報(昭和61年11月7日出願公開、以下、「参考文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「2.特許請求の範囲
(1)変換辞書を記憶する変換辞書記憶手段と、文字列を入力する入力手段と、前記入力手段より入力した文字列に対応する変換文字を前記変換辞書記憶手段より検索する変換手段と、変換された変換文字を文書情報として記憶する文書情報記憶手段と、前記変換手段によって変換された変換文字及びその文字列を辞書情報として記憶する辞書情報記憶手段とを具備し、前記変換手段による無変換時に前記辞書情報記憶手段内の辞書情報を前記変換辞書記憶手段へ登録すると共に、前記辞書情報記憶手段内の辞書情報を消去することを特徴とする辞書情報登録方式。
(2)前記変換辞書記憶手段は単漢字を記憶する単漢字辞書と前記辞書情報記憶手段内の辞書情報が登録される熟語辞書とより成ることを特徴とする特許の範囲第1項記載の辞書情報登録方式。
(3)前記熟語辞書は前記変換手段によって検索される順の先頭に新しく登録する熟語を記憶することを特徴とした特許請求の範囲第2項記載の辞書情報登録方式。」(1頁左下欄4行?右下欄4行)

(3-2)参考文献2に記載されている技術的事項

本願の出願日前に頒布された、特開平8-297664号公報(平成8年11月12日出願公開、以下、「参考文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

H 「【0057】S115では領域123の先頭にバッファBUF1の文字列の文字数CO、バッファBUF1の内容である文字列CH、および使用回数CO(=1)が追加記憶される。このとき、領域123に既に記憶されていたデータDは順に後方に移動される。」

(3-3)参考文献3に記載されている技術的事項

本願の出願日前に頒布された、特開2006-344039号公報(平成18年12月21日出願公開、以下、「参考文献3」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0059】
本実施形態では、以上のような構成を有する移動体通信端末100により、受信した電子メールに基づく返信メールを作成する際、当該受信メールの本文を構成している文字列を単語単位で抽出し、抽出した単語等がより上位の優先順位となる変換候補として予測変換入力時に提示する。すなわち、取得した情報(受信メールなど)に基づく新たな情報(返信メールなど)を作成する際に、取得した情報から抽出した言語情報(単語等)を優先的に利用した入力処理を例外的におこなう。そのための処理の詳細を以下説明する。」


(4)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「携帯電話の文字列入力装置」は、携帯電話が備えるキーを入力手段として文字列を入力する装置であると解されるから、本件補正発明の「携帯電話機」に対応するものである。そして、引用発明の「携帯電話の文字列入力装置」は、インターネットを介してコンテンツサーバのウエブページにアクセスが可能であるから、引用発明の「インターネットを介してコンテンツサーバのウエブページから文字列を含むコンテンツを取得する携帯電話の文字列入力装置」と、本件補正発明の「インターネットアクセス機能を備える携帯電話機」とは、「インターネットアクセス機能を備える携帯電話機」である点で共通している。

(4-2)引用発明の「ウエブページ」,「コンテンツに含まれる文字列」はそれぞれ、本件補正発明の「Webサイト」,「画面に表示される文字列」に相当するから、引用発明の「ウエブページから取得したコンテンツに含まれる文字列を抽出する文字情報抽出部」は本件補正発明の「Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部」に相当するといえる。

(4-3)引用発明においては、上記Cの「辞書203は、コンテンツ202に含まれる文字列を構文解析又は形態素解析し、漢字かな引き辞書201を用いて文字列と対応する読み仮名を付加して作成された辞書である。コンテンツ202の中に含まれる単語などの文字列を抽出して、その文字列に読み仮名を振り、所定の順序(読み仮名順、読み仮名の長い順など)に従い並べ替える。」との記載からすると、文字情報抽出部で抽出されたコンテンツに含まれる文字列について、予め記憶した漢字かな引き辞書を検索して、当該文字列があるか調べて、当該文字列が記憶されていた場合には、対応する読み情報を抽出していると解される。
そうすると、引用発明の「漢字かな引き辞書」は本件補正発明の「辞書データ部」に対応するものであり、引用発明の「予め記憶した漢字かな引き辞書を用いて、文字情報抽出部で抽出された前記文字列から読み情報を抽出する読み情報抽出部」と、本件補正発明の「取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部」とは、「取得した文字列により、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列を検索する文字列検索部」である点で共通している。

(4-4)引用発明では、上記Eの「文字列比較部310は、ユーザ入力部309が取得した文字や文字列と、辞書記憶部308に記憶されている文字列とを比較して、ユーザ入力部309が取得した文字や文字列を含む、あるいは一致する文字列を辞書記憶部308から読み出すことにより、候補文字列を抽出する。」との記載、上記Fの「候補表示部311は、文字列比較部310で抽出された候補のリストを候補文字列として表示画面に表示する。候補表示部311は、読みの長い順に候補文字列を並べ替えて表示するなどの処理を行う。」との記載からすると、ユーザ入力文字列を含む文字列を候補文字列として抽出していることから、ユーザ入力文字列の予測変換を行っているといえる。
そうすると、引用発明における「辞書」は、予測変換の候補文字列が表示されるよう、取得した文字列を記憶するための手段といえることから、本件補正発明の「予測変換データ部」に対応し、引用発明における「辞書」は取得した文字列を所定の順序で記憶している一方、本件補正発明の「予測変換データ部」は取得した文字列を予測変換の候補の先頭に登録していることから、両者は「取得した文字列を予測変換の候補として所定の順序で登録している」点で共通しているといえる。
してみると、引用発明の「前記取得した文字列から読み情報が抽出された場合に、ユーザの文字列入力時に入力文字列を含むあるいは一致する候補文字列が表示されるよう、前記取得した文字列を所定の順序で辞書に記憶する辞書記憶部」と、本件補正発明の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」とは、「取得した文字列と登録されている文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補として表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補として所定の順序で登録する文字列登録部」である点で共通しているといえる。

以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「インターネットアクセス機能を備える携帯電話機において、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した前記文字列により、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列を検索する文字列検索部と、
前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補として表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補として所定の順序で登録する文字列登録部と、
を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。」

(相違点1)

取得した文字列による登録されている文字列の検索に関して、本件補正発明では「取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する」のに対して、引用発明では「予め記憶した漢字かな引き辞書を用いて、文字情報抽出部で抽出された前記文字列から読み情報を抽出する」点。

(相違点2)

取得した文字列の登録に関して、本件補正発明では「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する」のに対して、引用発明では「前記取得した文字列から読み情報が抽出された場合に、ユーザの文字列入力時に入力文字列を含むあるいは一致する候補文字列が表示されるよう、前記取得した文字列を所定の順序で辞書に記憶」しており、候補文字列の中で取得した文字列が先頭に表示されるかどうか明記されていない点。


(5)当審の判断

上記相違点1乃至相違点2について検討する。

(5-1)相違点1について

引用発明では、文字情報抽出部で抽出されたコンテンツに含まれる文字列により、予め記憶した漢字かな引き辞書を検索し、当該文字列が存在するか調べ、対応する読み情報を抽出していると解される。そして、この一連の処理の中で漢字かな引き辞書を検索する処理は、抽出された文字列が漢字かな引き辞書に登録されている文字列と一致するかを判定する処理であるといえる。
また、引用発明の漢字かな引き辞書は、予め文字列を登録して使用する辞書データベースの一態様であり、テキスト処理において、漢字かな引き辞書に登録されている文字列を変換対象として、テキスト文書から必要な文字列を抽出することは、本願出願当時には当業者にとっての慣用手法であった。
してみると、引用発明において、漢字かな引き辞書に代えて、予め文字列が登録された辞書データを用いて、コンテンツから抽出された文字列と一致するかを判定すること、すなわち、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

引用発明では、取得した文字列が候補文字列の中のどの位置で表示されるか明らかではないが、取得した文字列を所定の順序で辞書に記憶しており、辞書に記憶された文字列の順序は表示される予測変換の候補文字列の順序として利用されることは自明である。
また、文字入力システムおいて、辞書などへの候補文字列登録の際に、新たに登録されるものが優先して検索されるように、先頭あるいは上位に登録することは、例えば、参考文献1(上記G参照),参考文献2(上記H参照),参考文献3(上記J参照)に記載があるように、本願出願日前には当該技術分野の周知の技術であり、新たに辞書に登録される文字列のみを先頭に登録するか否かは、当該辞書の用途に応じて適宜に設定されるべき事項である。
してみると、引用発明において、上記周知技術に基づき、取得した文字列の辞書への記憶の所定順序を、適宜、取得した文字列から読み情報が抽出された場合にのみ、新たに取得した当該文字列を辞書の先頭に記憶し、候補文字列の先頭に表示すること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)小括

上記で検討したごとく、相違点1乃至相違点2は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5.むすび

以上のように、本件補正は、上記「2.新規事項追加禁止要件」で指摘したとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないものを含む補正であるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「4.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項の規定において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成25年9月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年12月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「インターネットアクセス機能を備える携帯電話機において、
Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部と、
取得した文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部と、
文字列が一致する場合に、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、当該文字列を予測変換データ部に登録する文字列登録部と、を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用発明は、前記「第2 平成25年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「(2)引用発明」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成25年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」で検討した本件補正発明の「取得した前記文字列が、予め記憶された辞書データ部に登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部」から「前記」を削除するとともに、「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように、前記取得した文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部」から「前記取得した文字列と前記登録されている」,「のみ」,「おける当該予測変換の候補の先頭に」を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記「第2 平成25年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「(2)引用発明」乃至「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.請求人の主張等について

なお、請求人は、上記平成26年1月6日付け回答書において、

『(4)本願発明の説明
本願発明は、携帯電話機及び文字列登録方法並びに制御プログラムに係る発明です。Webサイトの画面に表示される文字列を取得する文字列取得部、取得した文字列が辞書データに登録されている文字列と一致するかを判定する文字列判定部、二つの文字列が一致する場合にのみ、文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるように当該文字列を予測変換データ部における当該予測変換の候補の先頭に登録する文字列登録部、を少なくとも備えています。
課題は、文字入力時のキー操作回数を削減してユーザの利便性を向上させることができる携帯電話機等を提供することです。本構成によって「文字列が予測変換データに登録されていたとしても、予測変換の候補の順位が低いとキーを何度も押下してその文字列を選択しなければならない」および「一方、画面に表示されている文字列を辞書データに自動的に登録すると、ユーザが必要としない文字列まで登録され、予測変換の候補として表示されてしまい、必要とする文字列を選択するためのキー操作回数が増えてしまう」という両問題を解決する作用があります。
その結果、「文字入力時のキー操作回数を削減すると共に、不要な文字の登録を防止して、ユーザの利便性を向上させることができる」(段落0018)という効果があります。

(5-1)文字列が一致する場合にのみ取得した文字列を登録する構成について
審査官殿が指摘される『補正により新たに規定された「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、」取得した文字列を登録する』に関して、本願発明の補足説明および引用文献1との相違点の説明を行います。
まず、補足説明です。本願発明における「登録」が意味する内容とは、
コンテンツである「Webページに含まれる文字列」を「辞書データ記憶部6a」に「新規に登録する」ものではなく、
辞書データ記憶部6aに「予め記憶されている文字列」の「予測変換データ部6b」における登録位置をグループの「先頭に変更する」処理を行うこと(本願の段落0034)、にあります。
次に、本願発明と引用文献1との相違点についての説明です。引用文献1における「登録」が意味する内容とは、コンテンツである「Webページに含まれる文字列」を「辞書203」に「新規に登録する」ものです(引用文献1の段落0034、0062他)。審査官殿も、「引用文献1の辞書には、専らコンテンツから抽出された単語や文字列が格納される」と、拒絶査定通知の備考欄において認定されています。

(5-2)新たに登録されるものが先頭に登録する構成について
審査官殿が指摘される「辞書登録の際に、新たに登録されるものが優先して検索されるように、先頭に登録するといった構成は、引用文献2,3に見られるように本願出願前周知である」に関して、次のように考えます。
周知の構成として挙げられている引用文献2および3は、新たに辞書登録する際に先頭に登録する構成です。一方、本願発明は、予め登録されている文字列の登録位置を先頭に変更することを特徴とするものです。従って、引用文献1?3に記載の発明(引用発明)と本願発明とは、技術思想が全く異なるものと思料します。』

と主張をしている。

しかしながら、本願明細書の段落【0033】?【0034】の
「【0033】
次に、ステップS103で、文字列判定部9bは、辞書データ記憶部6aに記憶された辞書データを参照し、ステップS104で、取得した文字列の中に辞書データに登録されている文字列と同等の文字列があるかを判定する。
【0034】
そして、同等の文字列がある場合は、ステップS105で、文字列登録部9cは、文字入力時に予測変換の候補の先頭に表示されるように、その文字列を予測変換データに登録する。例えば、予測変換データが、50音の1文字毎に、その文字を先頭に含む文字列やその文字を表す記号などがグループ化されて構成されている場合は、その文字列が予測変換データに登録されていれば、その文字列の登録位置をグループの先頭に変更する処理を行い、その文字列が予測変換データに登録されていなければ、その文字列をグループの先頭に追加する処理を行う。」
との記載からすると、本件補正発明では、辞書データ部に登録されている文字列と一致するWebサイトの画面から取得した文字列は、予測変換データ部に予め登録されている文字列に限定されないことは明らかであり、本件補正発明の目的も、取得した文字列が予測変換データ部に予め登録されている文字列か否かに関係するものではなく、文字入力時のキー操作回数を削減する等のために、取得した文字列を文字入力時における予測変換の候補の先頭に表示されるようにするというものであると解される。仮に、取得した文字列は予測変換データ部に予め登録されている文字列であって、本件補正発明は予測変換データ部に予め登録されている文字列の登録位置を先頭に変更することを発明の目的に追加するならば、本願出願当初の明細書に記載されていなかった技術的事項を新たに追加するものとなる。
そうすると、本件補正後の請求項1の「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、・・・取得した文字列を・・・先頭に登録する」を「前記取得した文字列と前記登録されている文字列が一致する場合にのみ、・・・前記登録されている文字列の登録位置を・・・先頭に変更する」と補正することは、出願当初の明細書に記載されてなかった前提に基づく新たな技術的事項、すなわち、新規事項を含むものであるから、本願補正発明が引用発明と比較して、「予め登録されている文字列の登録位置を先頭に変更する」点で相違しているといる主張も、本願出願当初の明細書の記載に基づくものではなく、自明なものであるとも認められない。
してみると、上記回答書における請求人の『以上のように、本願発明における「登録」とは「位置を変更」の意味であり、引用文献1とは相違なるものです。そして、引用文献2および3は、新たに辞書登録する際に先頭に登録する構成であるのに対して、本願発明は予め登録されている文字列の登録位置を先頭に変更することを特徴とするものであり、引用発明と本願発明とは技術思想が全く異なることは明らかです。』という主張は、採用することができない。


5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-24 
結審通知日 2014-02-25 
審決日 2014-03-10 
出願番号 特願2008-15789(P2008-15789)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 山崎 達也
仲間 晃
発明の名称 携帯電話機及び文字列登録方法並びに制御プログラム  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  
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