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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1287311
審判番号 不服2013-4074  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-04 
確定日 2014-05-08 
事件の表示 特願2010-101427「導電性接触子ホルダ、導電性接触子ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 9日出願公開、特開2010-197402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月15日を出願日(優先権主張 平成15年11月5日(以下、「優先日」という。) 日本)とする特願2004-177471号の一部を、平成22年4月26日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2010-101427号)としたものである。
平成24年7月9日付けで、明細書、特許請求の範囲及び図面についての補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成24年11月5日付けで、特許請求の範囲についての補正がなされ(以下、「補正2」という。)、平成24年11月27日付けで、補正2の却下の決定がなされるとともに、同日付け(送達日:同年12月4日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年3月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。
その後、当審より、平成25年12月10日付け審尋書により審尋をしたところ、平成26年2月17日付けで回答書が提出された。


第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のとおり補正するものである。

(本件補正前)
「【請求項1】
所定回路構造に対する信号入出力に用いられる信号用導電性接触子を少なくとも収容する導電性接触子ホルダであって、
前記信号用導電性接触子を収容する第1開口部が形成された導電性のホルダ基板と、
誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ基板は、前記所定回路構造の熱膨張係数と適合する材料によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項3】
前記ホルダ基板は、前記所定回路構造に対して電力供給を行う給電用導電性接触子を収容する第3開口部が形成された構造を有し、
前記第3開口部の内面を被覆する絶縁部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項4】
前記ホルダ基板は、前記所定回路構造に対してアース電位を供給するアース用導電性接触子を収容する第2開口部が形成された構造を有し、
前記第1、第2および第3開口部は、一律に形成されることを特徴とする請求項3に記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項5】
前記誘電材料の比誘電率をεr、前記信号用導電性接触子の外径をd1、前記円筒形状の外径をd2としたとき、前記特性インピーダンスは、
【数1】
(略)
で与えられることを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項6】
所定回路構造に対して信号入出力を行う信号用導電性接触子と、
前記所定回路構造に対してアース電位供給を行うアース用導電性接触子と、
前記信号用導電性接触子を収容する第1開口部が形成された導電性のホルダ基板と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材とを有する導電性接触子ホルダと、
少なくとも前記信号用導電性接触子と電気的に接続され、前記所定回路構造に対して入力する信号を生成する回路を有する回路基板と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ユニット。
【請求項7】
アース電位を供給するアース電位供給手段と、
前記ホルダ基板と前記アース電位供給手段との間を電気的に接続する接続手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の導電性接触子ユニット。」

(本件補正後)
「【請求項1】
所定回路構造に対する信号入出力に用いられる信号用導電性接触子、前記所定回路構造に対して電力供給を行う給電用導電性接触子および前記所定回路構造に対してアース電位を供給するアース用導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダであって、
前記信号用導電性接触子、前記アース用導電性接触子および前記給電用導電性接触子のうち、いずれかの導電性接触子を挿脱自在に収容可能に、一律に形成された第1、第2および第3開口部を有する導電性のホルダ基板と、
誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1、第2および第3開口部のいずれかの内面上に配置され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ基板は、前記所定回路構造の熱膨張係数と適合する材料によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項3】
前記誘電材料の比誘電率をεr、前記信号用導電性接触子の外径をd1、前記円筒形状の外径をd2としたとき、前記特性インピーダンスは、
【数1】
(略)
で与えられることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項4】
所定回路構造に対して信号入出力を行う信号用導電性接触子と、
前記所定回路構造に対してアース電位供給を行うアース用導電性接触子と、
前記所定回路構造に対して電力供給を行う給電用導電性接触子と、
前記信号用導電性接触子、前記アース用導電性接触子および前記給電用導電性接触子のうち、いずれかの導電性接触子を挿脱自在に収容可能に、一律に形成された第1、第2および第3開口部を有する導電性のホルダ基板と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1、第2および第3開口部のいずれかの内面上に配置され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材と、を有する導電性接触子ホルダと、
少なくとも前記信号用導電性接触子と電気的に接続され、前記所定回路構造に対して入力する信号を生成する回路を有する回路基板と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ユニット。
【請求項5】
アース電位を供給するアース電位供給手段と、
前記ホルダ基板と前記アース電位供給手段との間を電気的に接続する接続手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の導電性接触子ユニット。」
(下線は補正箇所。)

2 本件補正の目的について
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1の「誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材」を、本件補正後の請求項1の「誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1、第2および第3開口部のいずれかの内面上に配置され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材」とする補正、及び、本件補正前の請求項6の「誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材」を、本件補正後の請求項4の「誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1、第2および第3開口部のいずれかの内面上に配置され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材」とする補正を含むものである。

(2)この補正により、「第1開口部の内面上に形成され」が、「第1、第2および第3開口部のいずれかの内面上に配置され」と変更されるところ、「第1‥‥開口部の‥‥内面上に配置され」るとの文言では、まず、インピーダンス補正部材が、開口部の内面上に形成される場合に加えて、例えば、別途形成されて開口部に挿入されることにより、開口部の内面に接触することで内面上に配置される場合をも意味することになる。次に、インピーダンス補正部材が形成される開口部についてみると、本件補正前は第1開口部に限定されていたものが、本件補正により第1開口部ないし第3開口部のいずれかと変更されたものであり、開口部の種類を拡張するものである。
そうすると、「第1開口部の内面上に形成され」を「第1、第2および第3開口部のいずれかの内面上に配置され」とする補正は、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第4項第2号)を目的とするものとはいえない。

(3)また、この補正は、請求項の削除(特許法第17条の2第4項第1号)、誤記の訂正(特許法第17条の2第4項第3号)、及び明瞭でない記載の釈明(特許法第17条の2第4項第4号)を目的とするものであるともいえない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項6に係る発明は次のとおりである。

「所定回路構造に対して信号入出力を行う信号用導電性接触子と、
前記所定回路構造に対してアース電位供給を行うアース用導電性接触子と、
前記信号用導電性接触子を収容する第1開口部が形成された導電性のホルダ基板と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材とを有する導電性接触子ホルダと、
少なくとも前記信号用導電性接触子と電気的に接続され、前記所定回路構造に対して入力する信号を生成する回路を有する回路基板と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ユニット。」(以下、「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の各請求項に係る発明は、いずれも、優先日前に頒布された刊行物である特開2001-99889号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明、並びに国際公開第00/03250号、及び特開平7-113821号公報に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例には、高周波回路の検査装置(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0016】
【発明の実施の形態】つぎに、図面を参照しながら本発明の高周波回路の検査装置について説明をする。本発明の高周波回路の検査装置は、図1にその一実施形態の構成説明図が平面図および断面図で、図2にプローブ部の拡大断面図で示されるように、金属ブロック1の一面側で被検査物20の各電極端子21?24とそれぞれ対応する部分に、可動ピン11の先端部が突出するように、RF信号用プローブ3、電源用プローブ4、および接地用プローブ5が設けられている。RF信号用プローブ3および電源用プローブ4は図2および3に示されるように、可動ピン11と電気的に接続される金属パイプ13の周囲が絶縁体15、16によりそれぞれ被覆されて金属ブロック1内に埋め込まれている。金属ブロック1の他面側には、少なくとも電源用プローブ4に電源を供給できるように電源端子が形成された配線基板6が固定されている。そして、RF信号用プローブ3の他端部側には、RF信号入出力用の同軸ケーブル7が接続されている。
【0017】金属ブロック1は、RF信号用や電源用などのプローブ3、4を保持するもので、金属板を用いることにより、プローブの周囲に絶縁体を介して保持することにより、その絶縁体の選択により同軸線を形成しやすいため好ましい。」

(b)
「【0018】RF信号用プローブ3や電源用プローブ4、接地用プローブ5などのプローブ10は、図3にその断面説明図が示されるように、金属パイプ13内にスプリング14により可動ピン11が保持される構造になっている。図1?3に示される例では、両端に可動ピン11、12が設けられる構造になっているが、少なくとも被検査物との接触側の一方が可動ピン11となる構造になっておればよい。可動ピン11のスプリング側の端部は、図3に示されるように斜めに切断されており、可動ピン11の先端が押されてスプリング14が縮む状態では、可動ピン11が斜めに傾いて金属パイプ13に押しつけられて接触し、可動ピン11に伝わる電気信号は、細いスプリング14ではなく電気抵抗が低くインピーダンスの小さい金属パイプ13を介して伝達するようにすれば、再現性のよい特性が得られる。また、金属パイプ13の端部側には、くびれ部13aが両側に設けられており、可動ピン11、12が抜け落ちない構造になっている。
【0019】RF信号用プローブ3の外周には、たとえばテフロン(登録商標)チューブ15などの絶縁体が被覆され、前述のように、プローブ3および金属ブロック1とをそれぞれ内導体および外導体とする同軸線を構成し、所望の特性インピーダンスが得られるように、その絶縁体の厚さおよび誘電率が設定されている。電源用プローブ4は、そのような制限はなく、金属ブロック1と電気的に絶縁されるように絶縁体16を介して保持されればよい。また、接地用プローブ5は、金属ブロック1と直接接触してよいため、絶縁体を介しないで、直接金属ブロック1の孔内に挿入して保持されている。この各プローブ3?5は、図2に拡大断面図が示されるように、下端部は配線基板6により固定され、上端部はアクリル板などからなる電気的絶縁性の押え板8により固定されて、上下に動かないようになっている。この配線基板6および押え板8は、ビス9により金属ブロック1に固定されている。」

(c)
「【0022】配線基板6は、被検査物に電源の供給などを行うもので、基板上に配線が形成されて、その端子が被検査物の端子と対応する場所に、適切に形成されている。この場合、被検査物が増幅器のような場合、配線基板6上の電源端子と接地端子間にチップコンデンサ6aなどを接続することができる。図1および2に示されるように、金属ブロック1の裏面側と配線基板6との間の、少なくとも電源端子の近傍に間隙部が形成されるように、金属ブロック1に段差が設けられ、必要によりスペーサ9aを介して、金属ブロック1に取り付けられることにより、チップコンデンサ6aを接続する場合などにも容易に配線基板6上で、しかも被検査物から遠くない位置に搭載することができる。
【0023】また、前述の例では、RF信号用プローブ3の他端部側に同軸ケーブル7が接続されているが、配線基板6にRF信号用配線を形成しておき、RF信号用プローブ3の他端部側を直接配線基板6と接続することもできる。」

・前記記載(a)及び(b)、並びに【図1】及び【図2】より、
ア 「被検査物20に対して信号入出力を行うRF信号用プローブ3」及び「被検査物20に対して接地電位供給を行う接地用プローブ5」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(a)及び(b)、並びに【図1】及び【図2】より、
イ 「RF信号用プローブ3を収容する孔が形成され、RF信号用プローブ3を保持する金属ブロック1」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(a)及び(b)、並びに【図1】ないし【図3】より、
ウ 「誘電材料によって形成されると共に、収容されるRF信号用プローブ3の外周上に位置するように金属パイプ13上に形成され、RF信号用プローブ3と同軸の円筒形状をなし、RF信号用プローブ3における特性インピーダンスを補正する絶縁体のチューブ15」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(a)及び(b)、並びに【図1】及び【図2】より、
エ 「金属ブロック1と絶縁体のチューブ15とを有するプローブ保持手段」及び「プローブユニット」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(c)、並びに【図1】及び【図2】より、
オ 「少なくともRF信号用プローブ3と電気的に接続され、被検査物20に対して入力する信号用の配線を有する配線基板6」との技術的事項が読み取れる。

(2)引用発明
以上の技術的事項アないしオを総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「被検査物20に対して信号入出力を行うRF信号用プローブ3と、
前記被検査物20に対して接地電位供給を行う接地用プローブ5と、
前記RF信号用プローブ3を収容する孔が形成され、前記RF信号用プローブ3を保持する金属ブロック1と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記RF信号用プローブ3の外周上に位置するように金属パイプ13上に形成され、前記RF信号用プローブ3と同軸の円筒形状をなし、前記RF信号用プローブ3における特性インピーダンスを補正する絶縁体のチューブ15とを有するプローブ保持手段と、
少なくとも前記RF信号用プローブ3と電気的に接続され、前記被検査物20に対して入力する信号用の配線を有する配線基板6と、
を備えたことを特徴とするプローブユニット。」(以下、「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に、順に対比する。

(1)引用発明における「被検査物20」、「プローブ」、「接地」、「孔」、及び「保持手段」は、本願発明における「所定回路構造」、「導電性接触子」、「アース」、「開口部」、及び「ホルダ」に、それぞれ相当する。

(2)上記相当関係を踏まえると、引用発明における「被検査物20に対して信号入出力を行うRF信号用プローブ3」、及び「前記被検査物20に対して接地電位供給を行う接地用プローブ5」は、本願発明における「所定回路構造に対して信号入出力を行う信号用導電性接触子」、及び「前記所定回路構造に対してアース電位供給を行うアース用導電性接触子」に、それぞれ相当する。

(3)上記相当関係(1)、(2)を踏まえると、引用発明における「前記RF信号用プローブ3を収容する孔が形成され、前記RF信号用プローブ3を保持する金属ブロック1と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記RF信号用プローブ3の外周上に位置するように金属パイプ13上に形成され、前記RF信号用プローブ3と同軸の円筒形状をなし、前記RF信号用プローブ3における特性インピーダンスを補正する絶縁体のチューブ15とを有するプローブ保持手段」も、本願発明における「前記信号用導電性接触子を収容する第1開口部が形成された導電性のホルダ基板と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材とを有する導電性接触子ホルダ」も、共に、「前記信号用導電性接触子を収容する第1開口部が形成された導電性のホルダ基板と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材とを有する導電性接触子ホルダ」である点で共通する。

(4)上記相当関係(1)、(2)を踏まえると、引用発明における「少なくとも前記RF信号用プローブ3と電気的に接続され、前記被検査物20に対して入力する信号用の配線を有する配線基板6」も、本願発明における「少なくとも前記信号用導電性接触子と電気的に接続され、前記所定回路構造に対して入力する信号を生成する回路を有する回路基板」も、共に、「少なくとも前記信号用導電性接触子と電気的に接続され、前記所定回路構造に対して入力する信号用の回路を有する回路基板」である点で共通する。

(5)上記相当関係(1)を踏まえると、引用発明における「プローブユニット」は、本願発明における「導電性接触子ユニット」に相当する。

(6)以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下の通りである。

(一致点)
「所定回路構造に対して信号入出力を行う信号用導電性接触子と、
前記所定回路構造に対してアース電位供給を行うアース用導電性接触子と、
前記信号用導電性接触子を収容する第1開口部が形成された導電性のホルダ基板と、誘電材料によって形成されると共に、収容される前記信号用導電性接触子の外周上に位置するように形成され、前記信号用導電性接触子と同軸の円筒形状をなし、前記信号用導電性接触子における特性インピーダンスを補正するインピーダンス補正部材とを有する導電性接触子ホルダと、
少なくとも前記信号用導電性接触子と電気的に接続され、前記所定回路構造に対して入力する信号用の回路を有する回路基板と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ユニット。」

(相違点)
・相違点1:「インピーダンス補正部材」に関し、本願発明では、「信号用導電性接触子の外周上に位置するように前記第1開口部の内面上に形成され」ているのに対し、引用発明では、「RF信号用プローブ3の外周上に位置するように金属パイプ13上に形成され」ている点。

・相違点2:「回路基板」に関し、本願発明では、回路基板が、「所定回路構造に対して入力する信号を生成する回路を有する」のに対し、引用発明では、配線基板6が、被検査物20に対して入力する信号を生成する回路を有しているか明らかでない点。

5 判断
(1)相違点1について
ア 技術事項
原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前に頒布された前記刊行物である国際公開第00/03250号には、
「図3に本発明に基づく第2の実施の形態を示す。なお、前記図示例と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この形態にあっては、2枚の導電性金属プレート11・12を互いに重ね合わせた積層状態で支持ブロック8が形成されていると共に、プレート12が接地されている。それら両金属プレート11・12には、その積層方向に貫通するストレート孔状の貫通孔13が設けられており、その貫通孔13の内周面及び両金属プレート11・12の各外面(図における上下の各端面)に、それら各面間に渡って連続する絶縁膜14が形成されている。これらプレート11・12の材質や絶縁膜14の種類は、上記した材質の組み合わせであって良い。
本実施の形態にあっては、貫通孔13の内周面の全面に絶縁膜14が形成されていることから、針状体ガイド孔14a及びコイルばね支持孔14bが絶縁膜14により形成されている。そして、コイルばね支持孔14b内に圧縮コイルばね5が同軸的に受容されており、その圧縮コイルばね5の両コイル端部に、各導電性針状体6が設けられている。」(明細書第6頁第14行?第7頁第1行)、
「また、絶縁皮膜14の材質と厚さなどをコントロールすることにより、特性インピーダンスを検査対象機器と整合させることができる。」(明細書第8頁第2行?第3行)
との記載があり、開口部である貫通孔13の内面上に絶縁被膜14を形成する、という技術事項が記載されていると認められる。

イ 上記技術事項を踏まえて、以下、検討する。
引用発明では、インピーダンス補正部材である絶縁体のチューブ15は、金属ブロック1に形成された開口部である孔の内面上に配置されている。そして、引用発明に対して上記技術事項を適用し、絶縁体であるチューブ15を金属ブロック1に形成された孔の内面上に形成するようにすることは、引用発明と上記技術事項は、開口部である孔の内面上の絶縁膜に関するものである点で共通するから、当業者であれば容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
回路基板上に必要な回路を備えるようにすることは、例示するまでもなく、周知の技術である。引用例においても、配線基板6上に必要な回路であるチップコンデンサ6aを備えることが記載されている(上記「2(1)記載事項(c)」を参照のこと。)。そして、被検査物20に対して入力する信号を生成する回路をどこに備えるかは、当業者が適宜決定すべき設計的事項であるから、引用発明に対して上記周知技術を適用し、配線基板6上に被検査物20に対して入力する信号を生成する回路を備えるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

(3)そして、本願発明の作用効果も、引用発明、前記技術事項及び前記周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、前記技術事項及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-05 
結審通知日 2014-03-11 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2010-101427(P2010-101427)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (G01R)
P 1 8・ 573- Z (G01R)
P 1 8・ 572- Z (G01R)
P 1 8・ 574- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 小林 紀史
関根 洋之
発明の名称 導電性接触子ホルダ、導電性接触子ユニット  
代理人 酒井 宏明  

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