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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B62D
審判 全部無効 2項進歩性  B62D
管理番号 1287719
審判番号 無効2011-800169  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-13 
確定日 2013-12-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4613402号「車両用ステアリング装置」の特許無効審判事件についてされた平成24年 3月13日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10141号;平成24年6月20日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4613402号の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4613402号は,平成12年8月24日(優先権主張 平成12年2月15日)の出願に係るものであって,平成22年10月29日にその発明についての特許権の設定登録がなされた。

以後の本件無効審判に係る手続の概要は以下のとおりである。

平成23年 9月13日 本件無効審判請求
平成23年12月 5日 答弁書提出(被請求人)
平成23年12月 5日 訂正請求(被請求人)
平成24年 2月23日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年 2月24日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年 3月 9日 口頭審理,審理終結
平成24年 3月13日 審決(訂正認める。請求項1?6に係る特許無
効)
平成24年 4月20日 知的財産高等裁判所出訴
(平成24年(行ケ)第10141号)
平成24年 6月 1日 訂正審判請求
(訂正2012-390070号)
平成24年 6月20日 知的財産高等裁判所決定(特許法第181条
2項の規定に基づく審決取消し(差戻し))
平成24年 7月 9日 訂正請求(被請求人)
平成24年 7月 9日 答弁書提出(被請求人)
平成24年 8月17日 弁駁書提出(請求人)
平成24年 9月18日 上申書提出(請求人)
平成24年10月19日 答弁書提出(被請求人)

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は,審判請求書において,「特許第4613402号公報に記載された特許発明の明細書の請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5及び請求項6に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めており,平成24年2月24日付けの口頭審理陳述要領書も併せると,請求人の主張は,概略次のとおりである。

(1)請求項1?6に係る発明は,下記証拠方法に示す甲第1号証,甲第3号証,甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第6号証ないし甲第9号証)に基づいて,その発明の属する分野において通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

そして,請求人は,上記(1)の具体的理由として下記(2)ないし(11)を主張している。

(2)甲第1号証の中間支持片材75又は85の一対のクランプは,コラムケーシング61に溶接で一体に形成され,取付け突縁部3もコラムケーシング61と一体になっている。さらに,弾性スペーサ4の中心孔が請求項1に係る発明の「筒状開口部」に相当し,同様に,取付け突縁部3は「支持部」に,ねじは「ボルト」にそれぞれ相当している。取付け突縁部3は,筒状ではなく,かつ回動でなく揺動するものであるが,正確な「チルト中心」の支持部である。また,取付け突縁部3の孔にねじとエラストマー製の弾性スペーサが挿通していることから,弾性スペーサ4の中心孔は「筒状開口部」ともいえるものである。

(3)甲第3号証には,第3図等により,支持筒2の端部に締付鍔4,4’が一体形成されている点が記載されている。

(4)甲第4号証には,溶接の一体形成を鋳物の一体形成にする動機付けが記載されているとともに,アルミニウム合金やマグネシウム合金からなるもの等,鋳物の複数の形態が記載されている。従来溶接等で一体形成していたものを鋳物により一体形成することは当業者であれば容易に想到し得ることであり,特別な手段ではなく常套手段ともいえる。

(5)甲第5号証には,筒状開口部に挿通されたボルトを中心としてステアリングコラムを回動自在に支持するチルトピボット部が開示されている。

(6)インナーコラムとアウターコラムとを備えた車両のステアリングコラムにおいて,一対のクランプ部材に相当する部位がアウターコラムと一体に形成され,かつ,該部位にインナーコラムを包持する包持面が形成される技術は,下記証拠方法に示す甲第6?9号証から明らかなように,周知技術である。

(7)請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明との相違点は,(ア)チルト機構の異同が不明確である点,(イ)アウターコラムとクランプ部材と支持部とが一体に形成された鋳物であるか否かという点,(ウ)一対のクランプ部材がインナーコラムと一体に形成され,インナーコラムを包持する包持面を有するか否かという点,の3点である。
相違点(ア)に係る構成は,甲第1号証記載の発明における「取付け突縁部3」は請求項1に係る発明における「支持部」に,同様に「ねじ」は「ボルト」に,「弾性スペーサ4」の「中心孔」は「筒状開口部」に相当していて,両者のチルト機構は同一の機構ということができ,また,取付け突縁部3は正確な「チルト中心」の支持部であるといえる点と,甲第5号証に貫通孔41に挿通されたフランジボルト33を回動中心としてステアリングコラムを回動自在に支持するチルトピボット部が開示されている点とから,甲第1号証及び,必要に応じて甲第5号証を参酌すれば,当業者が容易になし得たことである。
相違点(イ)に係る構成は,甲第3号証記載の支持筒2の端部に締付鍔4,4’が一体形成されている点と,甲第4号証記載のアウターコラムとその周辺部材であるブラケットとを従来の溶接に代えてアルミニウム合金やマグネシウム合金で鋳物として一体成形する点とを参酌することにより,当業者であれば容易に想到し得たことである。
相違点(ウ)に係る構成は,甲第6?9号証から明らかなように周知技術であり,当業者が適宜採用し得るものである。

(8)請求項2または3に係る発明と甲第1号証記載の発明との相違点も上記(7)のものと同様であるので,これらの発明も,当業者であれば容易に想到し得たものといえる。

(9)甲第1号証記載の装置では,中間支持片材75又は85が摺動筒体62の外周面に押圧接触していることが明らかであるから,請求項4において限定される事項は,甲第1号証に記載されている。

(10)甲第1号証の装置は,中間支持片材85のクランプ(案内プレート85a及び85b)が摺動筒体62の外周面に周方向で断続的に2箇所押圧接触している,或いは,当該クランプ及びキー90が合計3箇所押圧接触しているものであるから,請求項5において限定される事項は,甲第1号証に記載されている。

(11)甲第4号証には,アルミニウム合金,マグネシウム合金等をダイキャスト成形してなる鋳物が開示されているから,請求項6において限定される事項は,甲第4号証に記載されている。

請求人は,さらに,平成24年8月17日付けの弁駁書において,平成24年7月9日付けでなされた訂正請求は,特許請求の範囲を変更するものであって,不適法であると主張するとともに,訂正に基づく甲第1号証との相違点は,甲第6号証ないし甲第9号証に示される周知技術,甲第17号証ないし甲第19号証に示される周知技術及び甲第20号証ないし甲第22号証に示される周知技術から当業者が容易に想到することができたものである旨主張している。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特開昭62-74767号公報
甲第3号証:実公昭38-24519号公報
甲第4号証:特開平8-225079号公報
甲第5号証:特開2000-38146号公報
甲第6号証:特公昭45-39291号公報
甲第7号証:実公昭46-35777号公報
甲第8号証:実公昭60-36513号公報
甲第9号証:特開平6-211137号公報
甲第10号証:鋳造品ハンドブック:日本鋳物協会編
:平成4年[1992年]発行
甲第11号証:鋳造工学:中江秀雄著:1995年1月発行
甲第12号証:金属の百科事典:佐藤純一他4名編者
:1999年9月30日発行
甲第13号証:鋳物五千年の足跡:石野亨著:1994年3月15日発行
甲第14号証:機械工学便覧:日本機械学会著作:1998年発行
甲第15号証:アルミニウムハンドブック(第5版):軽金属協会編集
:1994年発行
甲第16号証:アルミニウム合金鋳物の実体強さ:軽金属協会
:1994年発行
甲第17号証:実公平3-27898号公報
甲第18号証:実開平4-110672号公報
甲第19号証:特開2000-43738号公報
甲第20号証:実公昭48-33845号公報
甲第21号証:実願昭57-13310号(実開昭58-116476号
)のマイクロフィルム
甲第22号証:実公平7-38044号公報

〈参考資料〉
参考資料1:実願平3-104831号(実開平5-35540号)
のCD-ROM
参考資料2の1:本件特許公報:特許第4613402号
参考資料2の2:本件特許に係る特許出願の願書,明細書及び図面
:特願2000-254210
参考資料2の3:本件出願書類における平成22年6月4日付け
手続補正書
参考資料2の4:本件出願書類における平成22年6月4日付け意見書
参考資料3:実願昭58-127940号(実開昭60-34954号)
のマイクロフィルム
参考資料4:特開平8-67257号公報
参考資料5:特開平3-182871号公報
参考資料6:米国特許第4,648,624号明細書

上記証拠方法の甲第1号証,甲第3号証,甲第4号証及び甲第5号証は審判請求書とともに,甲第6号証ないし甲第9号証は平成24年2月24日付け口頭審理陳述要領書とともに,甲第10号証ないし甲第19号証は平成24年8月17日付け弁駁書とともに,甲第20号証ないし甲第22号証は平成24年9月18日付け上申書とともに,それぞれ提出されたものである。
なお,参考資料1ないし参考資料6は,審判請求時には,それぞれ甲第2号証,甲第5号証の1,甲第5号証の2,甲第5号証の3,甲第5号証の4,甲第6号証,甲第8号証,甲第9号証及び甲第10号証として提出されたが,その後,参考資料に変更されたものである。

2 被請求人の主張
被請求人は,平成24年7月9日付けで特許請求の範囲の訂正を請求するとともに,答弁書において,「本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めており,平成24年2月23日付けの口頭審理陳述要領書,平成24年7月9日付けの答弁書,平成24年10月19日付けの答弁書も併せると,被請求人の主張は,概略次のとおりである。

(1)請求項1ないし6の訂正はいずれも,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2)訂正後の請求項1ないし請求項6に係る発明は,甲第1号証,甲第3号証,及び甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,いずれも独立して特許を受けることができるものである。

そして,被請求人は,上記(2)に関して下記(3)ないし(9)を主張している。

(3)甲第1号証に係る発明の中間支持片材75又は85の一対のクランプは,一対のうちの片方が摺動筒体62に対して一方向に押圧するものであり,包持するものとはいえないから,当該一対のクランプは請求項1?6に係る発明の「一対のクランプ」には相当しない。

(4)請求項1?6に係る発明の「支持部」には「筒状開口部」があるのに対し,甲第1号証の取付け突縁部3には筒状開口部はないから,取付け突縁部が「支持部」に該当するとの請求人の主張は認められない。また,弾性スペーサ4の中心孔が「支持部」の「筒状開口部」に該当するとの主張は,中心孔が明らかに筒状ではないことから,失当である。
甲第1号証のチルト機構は弾性スペーサ4の弾性変形を利用したフレキシブルな取付構成によるものであって,チルト中心ボルトを中心として傾動するものではなく,請求項1?6に係る発明とはチルトの支持構造が異なっている。
甲第1号証の中間支持片材は別体として形成された後にコラムケーシング61に溶接されるものであるから,一体形成ではない。取付け突縁部についても,「一体になっており」との記載に留まり,一体形成であるとは記載されていない。

(5)甲第3号証には,支持筒2に締付鍔4を一体成形したとの記載はないから,一体形成であるとは認められない。「締付金具」との表現が用いられていることから,支持筒と締付金具とは別個に形成し,その後組付けられたものと考えられる。

(6)甲第3号証はレバー6によって締付鍔4を直接締め付けるものであり,請求項1?6に係る発明の構成とは異なる。また,同「締付手段」は,アウターコラムの締め付けだけでなく,アウターコラム自体を車体側に支持する機能も備えている。

(7)甲第4号証は,請求項1?6に係る発明とは異なるブラケット等の特定の部分をアウターコラムに一体形成したことを開示するに留まる。この証拠のみから,アウターコラムに対して「一対のクランプ」や「支持部」を溶接に代えて鋳物で一体形成することが当業者にとって想到容易であるといえるほど一般化・抽象化することはできない。

(8)甲第4号証のチルトボルト13は,チルト機構の傾動中心となるものではなく,請求項1?6に係る発明の「チルト中心ボルト」には相当しない。

(9)請求項1に係る発明のような「包持部」と「対向肉厚突出部」から構成されるクランプ部材は,甲第3号証,甲第4号証にも全く開示されていない。

〈証拠方法〉
乙第1号証:JISハンドブック(2)鉄鋼II:日本規格協会編集
:平成24年1月23日発行:184頁?221頁
乙第2号証:特開昭62-178469号公報
乙第3号証:特開平7-137639号公報
乙第4号証:特開平11-208508号公報

上記証拠方法の乙第1号証ないし乙第4号証は平成24年10月19日付け答弁書とともに提出されたものである。

第3 訂正について
1 訂正の内容
平成24年7月9日になされた訂正請求(以下「本件訂正」という。)は,特許第4613402号の特許時の特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)を,平成24年7月9日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲(以下「訂正特許請求の範囲」という。)のとおりに訂正しようとするものであり,以下の訂正事項を含む(各訂正事項におけるアンダーラインは請求人による)。なお,平成23年12月5日付けでなされた訂正請求は,特許法第134条の2第4項の規定に基づき,取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと,」とあるのを「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したアウターコラムと,」とあるのを「前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「このアウターコラムに一体に形成され,車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とをそれぞれ備えた一対のクランプ部材と,」とあるのを「それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,」とあるのを「前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,」とあるのを「前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に「該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと,を具備し,」とあるのを「車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2に「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと,」とあるのを「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項2に「前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し,車体側に回動自在に支持されたアウターコラムと,」とあるのを「前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し,車体側に回動自在に支持されたロアー側のアウターコラムと,」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項2に「このアウターコラムに一体に形成され,車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とをそれぞれ備えた一対のクランプ部材と,」とあるのを「それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項2に「これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,」とあるのを「前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項2に「前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,」とあるのを「前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項2に「該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと,を具備し,」とあるのを「車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項3に「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと,」とあるのを「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項3に「前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したアウターコラムと,」とあるのを「前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項3に「このアウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とを内周面にそれぞれ備えた一対のクランプ部材と,」とあるのを「それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項3に「これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,」とあるのを「前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項3に「前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,」とあるのを「前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項3に「該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと,を具備し,」とあるのを「車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,」に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項4に「前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触していることを特徴とする請求項3に記載の車両用ステアリング装置。」とあるのを,
「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり,
前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触していることを特徴とする車両用ステアリング装置。」に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項6に「前記鋳物はアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用ステアリング装置。」とあるのを,
「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり,
前記鋳物はアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであることを特徴とする車両用ステアリング装置。」に訂正する。

以下,本件特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明6」といい,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に係る発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明6」という。また,特許時の明細書及び図面を「本件明細書等」という。

2 訂正の適否についての検討
(1)目的要件
訂正事項1,訂正事項2,訂正事項7,訂正事項8,訂正事項13,訂正事項14は,請求項1ないし3に記載の「インナーコラム」及び「アウターコラム」について,それぞれ「アッパー側の」及び「ロアー側の」との限定(以下「発明特定事項A」という)を付すものである。
訂正事項3は,請求項1に記載の「一対のクランプ部材」について,「アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた」との限定(以下「発明特定事項B」という)を付すものである。
訂正事項4,訂正事項10は,請求項1及び請求項2に記載の「締付手段」について,「車体側ブラケット及び対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって一対のクランプ部材を変形させる」との限定(以下「発明特定事項C」という)を付すものである。
訂正事項5,訂正事項11,訂正事項17は,請求項1ないし請求項3に記載の「支持部」について,「互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するため」との限定(以下「発明特定事項D」という)を付すものである。
訂正事項6,訂正事項12,訂正事項18は,請求項1ないし3に記載の「ステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルト」について,「車幅方向に配置され」,「車体側ロアーブラケットに挿通される」との限定(以下「発明特定事項E」という)を付すとともに,当該ボルトがステアリングシャフトのチルト回動の「傾動中心として」機能する「チルト中心ボルト」であるとの限定(以下「発明特定事項F」という)を付すものである。
訂正事項9,訂正事項15は,請求項2及び3に記載の「一対のクランプ部材」について,「アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた」との限定(以下「発明特定事項G」という)を付すものである。
訂正事項16は,請求項3に記載の「締付手段」について,「車体側ブラケットを介して」一対のクランプ部材を「変形させ」,互いに近接するように移動させるとの限定(以下「発明特定事項H」という)を付すものである。
訂正事項19は,請求項4に発明特定事項A,発明特定事項Dないし発明特定事項F及び発明特定事項Hの限定を付すとともに,「一対のクランプ部材」について,「アウターコラムに軸方向に連なり,インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた」との限定(以下「発明特定事項I」という)を付すものであり,請求項4を引用する請求項5に係る発明の構成にも同様の限定を付すものである。
訂正事項20は,請求項1を引用する請求項6に発明特定事項A,発明特定事項B,発明特定事項Dないし限定事項F及び発明特定事項Hの限定を付すものである。
以上のことから,訂正事項1ないし訂正事項20は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無
本件明細書等には,以下の事項が記載されている。
(イ)「【0016】図1および図2に示すように,ステアリングシャフトは,車両後方側端部でステアリングホイール(図示なし)を固設支持するアッパーシャフト1と,これにスプライン嵌合したロアーシャフト2とから伸縮自在に構成してあり,ステアリングコラムは,アッパーシャフト1を上端部で玉軸受31を介して回転自在に支持するアッパー側のインナーコラム3と,ロアーシャフト2を下端部で玉軸受33を介して回転自在に支持すると共にアッパー側のインナーコラム3に嵌合したロアー側のアウターコラム4とから摺動自在に構成してある。」
(ロ)「【0018】図4に示すように,車体側ブラケット6のロアー側には,別体のロアーブラケット7が車体側ブラケット6を包持するように設けてある。ロアーブラケット7は車体に連結される上板部7aとブラケット6の対向側板部6b,6cを接触挟持する下向きの対向側板部7b,7cを形成している。ブラケット6の対向側板部6b,6cの内側に両側端が摺接するように,筒状部8がアウターコラム4の前方端に一体的に形成してある。これらロアーブラケット7の対向側板部7b,7c,ブラケット6の対向側板部6b,6c,および筒状部8には,スペーサ筒9を介して,チルト中心ボルト10aが通挿してあり,ナット10bにより締め付けられている。これにより,ロアー側のアウターコラム4は,このチルト中心ボルト10aを中心として傾動できるようになっている。」
(ハ)「【0019】ロアー側のアウターコラム4はアッパーシャフト1とロアーシャフト2との嵌合部をほぼ覆う位置まで後方に延びており,さらにこの嵌合部よりも後方側にはある長さ範囲にわたりアウタージャケット部4aを一体に有している。アウタージャケット部4aには上方部中央に軸方向のすり割りlが形成してあり,アッパー側のインナーコラム3を包持してクランプするための一対のクランプ部材12a,12bを形成している。クランプ部材12a,12bはそれぞれインナーコラム3の外周面に適合する形状の内周面と車体側ブラケット6の内側に摺接する外側面とを有している。・・・クランプ部材12a,12bには,締付ボルト13が通挿してある。この締付ボルト13のネジ部には,締付ナット14およびロックナット15が螺合してある。」
(ニ)「【0020】この締付ボルト13の頭部側には,操作レバー16が取り付けてあると共に,カムロック機構が設けてある。このカムロック機構は,操作レバー16と一体的に回転する第1カム部材17と,この第1カム部材17の回転に伴って,第1カム部材17の山部または谷部に係合しながら軸方向に移動してロックまたはロック解除する非回転の第2カム部材18とから構成してある。」
(ホ)「【0023】これにより,チルト調整の場合には,締付ボルト13をチルト調整用溝5に沿って移動し,チルト中心ボルト10を中心として,アウターコラム4およびインナーコラム3を傾動し,ステアリングホイール(図示略)の傾斜角度を所望に調整することができる。
(ヘ)「【0025】チルト・テレスコピックの締付時には,操作レバー16を逆方向に揺動すると,第1カム部材17が同時に回転して,第2カム部材18の谷部から山部に係合し,第2カム部材18が図3の右方に移動して,締付ボルト13により,車体側ブラケット6がアウターコラム4を押圧する。」
(ト)「【0026】これにより,これら一対のクランプ部材12a,12bは,互いに近接するように移動して,アッパー側のインナーコラム3を包持するようにクランプする。」
(チ)「【0028】図6(a)に示すように,上述した第1実施の形態において,一対のクランプ部材12a,12bの間の「すり割りl」を形成した箇所では,その隙間が大きすぎ,アウターコラム4とインナーコラム3との間の隙間が大きい場合,クランプ時に,一対のクランプ部材12a,12bが傾斜するといった虞れがある。」

訂正事項1,訂正事項2,訂正事項7,訂正事項8,訂正事項13,訂正事項14,訂正事項19,訂正事項20における発明特定事項Aは,上記記載事項(イ)から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものである。
訂正事項3,訂正事項9,訂正事項15,訂正事項19,訂正事項20における発明特定事項B,発明特定事項G及び発明特定事項Iは,上記記載事項(ハ),記載事項(チ)及び本件明細書等の図3,図5,図6から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものである。
訂正事項4,訂正事項10における発明特定事項Cは,上記記載事項(ハ),記載事項(ニ),記載事項(ト)及び本件明細書等の図3,図5から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものである。
訂正事項5,訂正事項11,訂正事項17,訂正事項19,訂正事項20における発明特定事項Dは,上記記載事項(ロ)から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものである。
訂正事項6,訂正事項12,訂正事項18,訂正事項19,訂正事項20における発明特定事項E及び発明特定事項Fは,上記記載事項(ロ),記載事項(ホ)及び本件明細書等の図2,図4から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものである。
訂正事項16,訂正事項19,訂正事項20における発明特定事項Hは,上記記載事項(ヘ),記載事項(ト)及び本件明細書等の図3,図5から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものである。
したがって,本件訂正は,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
本件発明1ないし6は,「インナーコラム」及び「アウターコラム」との要件を備えた車両用ステアリング装置に係る発明であって,発明特定事項Aは,本件発明1ないし6におけるインナーコラム及びアウターコラムの車両内における配設位置をそれぞれ特定したものといえる。
本件発明1ないし6は,「車体側ブラケットに摺接する面とインナーコラムを包持する包持面とをそれぞれ備えた一対のクランプ部材」との要件を備えており,発明特定事項B,発明特定事項G及び発明特定事項Iは,一対のクランプ部材の構成を本件特許に係る発明の実施の形態に則して具体化したものといえる。
本件発明1ないし6は,「一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて,インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段」との要件を備えており,発明特定事項C及び発明特定事項Hは,インナーコラムを一対のクランプ部材により締め付けのための機構を発明の実施の形態に則して具体化したものといえる。
本件発明1ないし6は,「ステアリングシャフトをチルト回動可能にするためにアウターコラムに設けられた支持部」との要件を備えており,発明特定事項Dは,支持部が支持される部材を特定したものといえる。
本件発明1ないし6は,「ステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルト」との要件を備えており,発明特定事項Eは,ボルトの配置方向及び挿通箇所を特定したものといえ,発明特定事項Fは,チルト中心ボルトを傾動中心としてチルト回動することを特定したものといえる。
したがって,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3 訂正の許否の結論
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし,かつ同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
したがって,本件訂正を認めることとする。

第4 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1ないし請求項6に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項2】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し,車体側に回動自在に支持されたロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトのチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項3】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項4】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり,
前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触していることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項5】
前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触していることを特徴とする請求項4に記載の車両用ステアリング装置。
【請求項6】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり,
前記鋳物はアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであることを特徴とする車両用ステアリング装置。」

第5 無効理由(進歩性欠如)についての当審の判断
1 刊行物及び刊行物に記載された発明
(1)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した,本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である特開昭62-74767号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。

(1a)「3.発明の詳細な説明
イ.技術分野
本発明は,枢動及びもしくは軸方向移動により調整の可能な乗り物のステアリングコラムなどの筒状部品のための固定装置に係る。
ロ.従来技術と問題点
周知の如く,自動車のステアリングコラムにおいては,その高さはステアリングシヤフトの上方部分の枢着領域に位置する水平軸線を中心にした枢動により調整ができる。又,コラムの若干の構成部品の伸縮抜差し移動により軸方向の調整が行われるようなステアリングコラムの構成も知られている。」(第3頁右上欄第15行?左下欄第7行)

(1b)「既に提案されているステアリングコラムのための固定装置には,かじ取りハンドルの付近の乗物ボデーの一部に固定した支持片材が設けられ,この支持片材はU字型構造になるように互いにつながれた2つのほぼ平行状の側方フランジよりなつている。この構造体は側方フランジを互いに近づけたり離したり動かすことにより調整できるものであり,ステアリングコラムの貫通する中間部をフランジ間でクランプしてこれを固定することができる。この中間部により,ステアリングコラムの高さの固定ならびに構成部分の相対的軸方向移動を避けるためのコラムのクランプの両方が保証される。中間部へ伝わるフランジのクランプは,コラムに対してこれを横切る方向に支持片材の側方フランジを貫通し外部及びフランジの両側に位置する両端にストツプを有するタイロツド又はねじロツドにより行われる。これらのストツプの中の1つは例えばねじロツド上に取付けられハンドル又は操作ボタンと一体のナツトで良く,このハンドル又はボタンによりナツトを回しフランジをクランプしたりゆるめたりすることができるものである。」(第3頁左下欄第14行?右下欄第15行)

(1c)「ハ.発明の目的及び構成
従って,本発明の目的は,枢動及びもしくは伸縮抜差し軸方向移動により連続的に調整のできる筒状部品特に乗り物のステアリングコラムのための固定装置にして,乗り物のボデーなどの固定部分に堅固に取付けるための装置を設けかつ2つのほぼ平行状の側方フランジよりなる支持片材を包含し,2つのほぼ平行状の側方フランジは一端で互いにつなげられU字型構造体を形成し,このフランジを互いに近づけたり離したりするように動かすことによりこれを調整可能にし,筒状部品が貫通する中間支持片材のクランプにより筒状部品の固定を,側方フランジを横切る方向に貫通しかつ両端に2つの支承ストツプを側方フランジの外側その両側に位置して設けたタイロツドにより確保し,又1つのストップに当接し対応フランジの外面に当接する少なくとも1つのハンドル操作のクランプ装置によりフランジを互いに横方向に近づけたりもしくは弾性戻し具により引き離すことができるように筒状部品の固定を確保し,・・・」(第4頁右上欄第1?20行)

(1d)「ニ.実施例
第1図と第2図に示すステアリングコラム1において,この高さはコラムが車のボデーに取付けられる2点の軸線を通る水平軸線2の周りの枢動により調整ができる。コラム1の外側筒体1aは底部で孔のある2つの取付け突縁部3と一体になつており,ねじをエラストマー製の2つの弾性スペーサの中心孔に通してコラムをボデーに取付けることができる。このフレキシブルな取付構成によりコラム1は僅かに枢動し軸線2の周りに調整が可能となる。・・・従って,ステアリングコラム1の高さは,回転軸受け8によりコラム1の筒体1a内で回転可能に取付けられているステアリングシヤフト6の結合軸線に合う軸線を中心とする枢動によりこれを調整することができる。
第1図において,ステアリングコラム1は乗り物内に納められた傾斜位置に示されており,ドライバーは後述の如くこの傾斜を一定範囲内で調整することができる。」(第5頁左上欄第7行?右上欄第8行)

(1e)「コラム1は参照番号12に一括指示せる本発明の取付装置の内側に係合する。この装置により,コラムの傾きを調整するようこれをゆるめ次いで調整後このコラムをドライバーの席より容易に操作できる操作ハンドル13を用いてロックすることができる。
装置12には,15などの2つの突縁部を設けた支持片材14があり,この突縁部によりその貫通孔16に係合するねじにより車のボデーに支持片材14を取付けることができる。第1図と第2図に半分だけしか示されてない支持片材14は,鋼板の曲げ作業によりステアリングコラムの軸方向対称面に対し完全に対称な形状をもつように作られている。この支持片材には2つの側方フランジ17とこの側方フランジ間の連結部分18があり,これらのフランジにより両アーム間にコラム1が係合する断面U字型の構造体が形成される。
支持片材14が車のボデー上の定位置にある時垂直方向におかれるフランジ17のそれぞれには,軸線2上の共通中心をもつ円の2つの弧で限定された案内開口20が設けられている。フランジ17にある案内開口20はコラムの軸方向垂直対称面に関して互いに対称になっている。方形又は矩形の断面をもつタイロッド21がその両端で開口20内に遊隙嵌合しており,後述のコラム1を支持する中間部品をコラム枢動中案内することができる。(第5頁右上欄第17行?右下欄第3行)

(1f)「第3図は正方形断面のタイロッド21の軸線を通る対称面にそつた装置全部の断面図を示し,ロッド21は支持片材14の横断面を形成するU字型のアームにより構成された側方部分を形成する垂直フランジ17a及び17bに係合している。
コラム1の外側筒体1aは第9図に示す中間支持部分25と一体になっている。この部分は折り曲げられた鋼より作られており,円形開口26をもつ2つの相対する平行状フランジ24a及び24bを有しており,この開口を介しステアリングコラム1の外筒体1aが通過でき,外筒体1aは溶接によりフランジ24a,24bに開口26の輪郭にそって接着されている。この中間支持片材25には又,フランジ24a及び24bに対して直角方向に折りたたむ工程により形成した2つの突起部27が設けられ,それぞれの突起部27にはタイロッド21の通過できる開口28が設けられている。」(第5頁右下欄第13行?第6頁左上欄第10行)

(1g)「クランプ力は支承部分34及びナツト31によりフランジ17a及び17bに伝わり,それにより支持片材14の弾性変形の結果フランジ17a及び17bは互いに近接するように動く。従って,中間支持片材25のフランジ24a及び24bがフランジ17a及び17bの間にクランプされ,コラムの固定が確保される。・・・
ゆるめ工程中,フランジ17a及び17bはハウジング14の弾性及びシュー32により通常の間隔に戻り,支持片材25が自由になり,コラムは軸線2を中心とした枢動により動けるようになり,この動きはハウジング14の開口20内のタイロッド21の移動により導かれる。新しい調整位置が選ばれると,ハンドル13の操作で再び中間支持片材25のクランプが行われる。」(第7頁左下欄第8行?右下欄第4行)

(1h)「第10図は,第1図及び第2図について述べた如きステアリングシヤフトの枢動軸線に合致せる軸線55を中心とする枢動ならびに後述する伸縮移動の両方により調整実施が可能なように組立てたステアリングコラム60を示す。コラム60の外側筒体はコラムケーシング61と,コラムケーシング61内のリング状ジヨイント63及び64により伸縮式に取付けた調整筒体62よりなつている。
同様にステアリングシヤフト65は伸縮式に取付けられ,コラムケーシング61内に回転ベアリング67により回転できるよう取付けた底部分66と,この底部分66内の軸方向に摺動できるよう取付けられ,かつベアリング69により自由に回転でき摺動筒体62に対して平行移動のできないように取付けられたトップ部分68を有している。」(第8頁左上欄第5行?右上欄第1行)

(1i)「枢動又は伸縮移動によりもしくはこの2つの動きの組合せによる調整後のステアリングコラムの固定は本発明の固定装置72により保証され,この装置はステアリングコラムを支持する中間部の構造及び機能を除いては上述の装置と実際上同じである。
この中間支持片材75は第11図及び第11a図に示されている。実際上2つの対称形の要素75aと75bが折りたたみ板材より作られ,コラムケーシング61に対応する内部通路を残すよう切断されて設けられている。要素75bはコラムケーシングの貫通する半円形開口の全長にわたりコラムケーシング61に溶接されている。
支持片材75の部分75aは,コラムケーシング61が貫通できる半円形開口の半分にほぼ等しい距離にわたりコラムケーシング61に溶接されている。この要素75aの左方部分76はコラムケーシング61には溶接されてはおらず,コラムケーシング61を貫通する開口の組77を貫通するクランプジヨーを形成している。中間支持片材75は既述実施例における支持片25と同じように装置72の固定支持片内に取付けられている。従って,この中間支持片材75はその2つの部分75a及び75bを近づけ合うように働くクランプ圧を受ける。しかしながら,支持片75の部分76だけが要素75aの残り部分につながつた部分の弾性変形により動くことができる。従って,ジヨー76がコラムケーシング61の開口77を貫通して摺動筒体62をクランプできる。従って,支持片75をこの固定した支持片内にクランプすることにより,コラムケーシング61を装置72の固定した支持片内に固定し同時に摺動筒体62を支持片75及びコラムケーシング61に対し固定する両方の工程を行うことができる。」(第8頁右上欄第12行?右下欄第5行)

(1j)記載事項(1i)における「枢動又は伸縮移動によりもしくはこの2つの動きの組合せによる調整後のステアリングコラムの固定は本発明の固定装置72により保証され,この装置はステアリングコラムを支持する中間部の構造及び機能を除いては上述の装置と実際上同じである。」との記載及び「中間支持片材75は既述実施例における支持片25と同じように装置72の固定支持片内に取付けられている。」との記載から,固定装置72の構造は中間支持片材75を除いて装置12と同じであって,中間支持片材75は装置12と同じ機構によりクランプされると認められるので,固定装置72は,装置12と同様に,フランジ17a及び17bよりなる固定された支持片材14及びタイロッド21を備え,中間支持材片75の要素75a,75bには,タイロッド21が通過できる開口が設けられ,中間支持材片75がフランジ17a及び17b間で摺接することは明らかである。そして,第3図,第9図,第11図及び第11a図を参照すると,中間支持材片75の要素75a及び75bの外側の面がフランジ17a及び17bに摺接する面であり,フランジ17a及び17bの間隔が摺動筒体62の外径寸法よりも広いことが看取できる。

(1k)第10図の記載より,摺動筒体62がアッパー側に設けられ,コラムケーシング61がロアー側に設けられていることが看取できる。

(1l)第11図の記載より,中間支持片材75の2つの要素75a及び75bのうちの一方(要素75a)のみ,摺動筒体62を押圧,保持する面を備えていることが看取できる。

上記記載事項1a?1l及び図面の記載を総合すると,甲第1号証には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「ステアリングシヤフトを枢動及び伸縮抜差し軸方向移動により連続的に調整のできる固定装置を備えた乗り物のステアリングコラムであって,
ステアリングコラム60の外側筒体はロアー側のコラムケーシング61と,これに伸縮式に取付けたアッパー側の摺動筒体62よりなり,
ステアリングシヤフト65は,コラムケーシング61内に回転ベアリング67により回転できるよう取付けた底部分66と,摺動筒体62内にベアリング69により自由に回転できるように取付けられたトップ部分68を有し,
ステアリングコラムを支持する中間支持片材75は,2つの対称形の要素75a,75bが折りたたみ板材より作られ,要素75bはコラムケーシング61の貫通する半円形開口の全長にわたりコラムケーシング61に溶接され,中間支持片材75の要素75aはコラムケーシング61が貫通できる半円形開口の半分にほぼ等しい距離にわたりコラムケーシング61に溶接され,この要素75aの部分76はクランプジヨーを形成し,
中間支持片材75は,乗り物のボデーなどの固定部分に堅固に取付けるための固定装置72の,一端で互いにつなげられU字型構造体を形成する2つのほぼ平行状のフランジ17a及び17bよりなる固定された支持片材14内に取付けられて,中間支持片材75の2つの要素75a及び75bはフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,また,2つの要素75a及び75bのうちの一方(要素75a)のみ,摺動筒体62を押圧,保持する面を備え,
フランジ17a及び17bの間隔は摺動筒体62の外径寸法よりも広く,フランジ17a及び17bには案内開口20が設けられ,タイロッド21がその両端で案内開口20内に遊隙嵌合しており,中間支持片材75の要素75a,75bにはタイロッド21が通過できる開口が設けられており,
ハンドル13の操作でクランプを行うと,クランプ力はフランジ17a及び17bに伝わり,それにより支持片材14の弾性変形の結果フランジ17a及び17bは互いに近接するように動き,中間支持片材75がフランジ17a及び17bの間にクランプされ,中間支持片材75はその2つの要素75a及び75bを近づけ合うように働くクランプ圧を受け,支持片75の部分76だけが要素75aの残り部分につながつた部分の弾性変形により動き,ジヨー76が摺動筒体62をクランプして,コラムケーシング61を固定装置72の固定した支持片材14内に固定し同時に摺動筒体62を中間支持片材75及びコラムケーシング61に対し固定するものであり,
フランジ17a及び17bを互いに近づけたり離したりするように動かすことによりステアリングシヤフトの枢動及び伸縮抜差し軸方向移動が連続的に調整可能とされ,
ステアリングコラムの高さはコラムが車のボデーに取付けられる水平軸線の周りの枢動により調整ができ,コラムの外側筒体は底部で孔のある2つの取付け突縁部3と一体になつており,該2つの取付け突縁部3の孔とエラストマー製の2つの弾性スペーサの中心孔とに通したねじによりコラムをボデーに取付けるフレキシブルな取付構成により,コラムは僅かに枢動し軸線の周りに調整が可能となって,傾斜を一定範囲内で調整することができるステアリングコラム。」

(2)甲第3号証
請求人が甲第3号証として提出した,本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である実公昭38-24519号公報には,乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置に関し,図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「この考案は,・・・摺動筒の一端をハンドル取付部に取付けるとともに,その他端を締付部を備えた支持筒に伸縮自在に嵌装してなる乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置に関するもので,支持筒の一部に備えた締付部の簡単な操作により運転者に適合したハンドルの伸縮を行うことを目的とするものである。」(第1頁左欄第6?14行)

(2b)「第1図の1はトラクターのボンネツトを示し,2はボネト1よりその一部が外部に突出するように設けた支持筒で,その一部には締付部3が装着されており第3図に示すように締付金具の締付鍔4,4’のほぼ中央に穿孔された螺孔には螺杆5が挿通されている。なお,6は螺杆5に螺着されているレバーを示すものである。
次に,第2図において7は摺動筒で,,その一端はハンドル取付部10に取付けられ,他端は支持筒2に伸縮自在に嵌挿されて締付部3にて締付固着されている。」(第1頁左欄第15?26行)

(2c)「この考案装置は操縦席11に搭乗する運転者の体長に応じて,支持筒2の一部に備えた締付部3のレバー6を適当に回動して,締付部3の緊締を解き,しかるのち摺動筒7を支持筒2の内面にそつて上方あるいは下方に摺動伸縮させて,適当な位置を定めたのち,前記締付部3のレバー6を回動締付してなるものである。」(第1頁右欄第1?8行)

(2d)第2図及び第3図を参照すると,支持筒2に軸方向に連なり,隙間を介して配置された一対の締付鍔4,4’が形成された部位が,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成していることが看取できる。

(3)甲第4号証
請求人が甲第4号証として提出した,本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である特開平8-225079号公報には,衝撃吸収式ステアリングコラムに関し,図面とともに次の事項が記載されている。

(3a)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述の様に構成され作用する,従来のエネルギ吸収式ステアリングコラムの場合,衝突事故の際に於ける運転者の保護の面からは特に問題ないが,部品点数が多く,部品製作,部品管理,組立作業が何れも面倒になり,製作費が嵩む事が避けられない。特に,複数の部品同士を溶接或はボルト付け等により結合固定する為,必要な寸法精度を確保しようとすると,組立作業が相当に面倒になり,製作費を高くしてしまう。本発明の衝撃吸収式ステアリングコラムは,この様な事情に鑑みて発明したものである。」

(3b)「【0010】特に,本発明の衝撃吸収式ステアリングコラムに於いては,上記アウターコラムと上記ブラケットとが非鉄材料により一体形成されている。尚,これらアウターコラムとブラケットとを一体に造る為の非鉄材料としては,アルミニウム合金,マグネシウム合金等の非鉄金属が好ましく利用できる。・・・
【0011】
【作用】・・・本発明の衝撃吸収式ステアリングコラムの場合には,アウターコラムの外周面にブラケットを後から結合固定する手間が不要になり,部品製作,部品管理,組立作業を何れも簡略化して,製作費の低減を図れる。」

(3c)「【0012】
【実施例】図1?5は本発明の第一実施例として,チルト機構を備えたステアリングコラムに本発明を適用した場合を示している。尚,本発明の特徴は,ステアリングコラム4aを構成するアウターコラム5aに昇降ブラケット8aと取付ブラケット9aとシリンダブラケット10aとを一体に形成した点にある。その他の部分の構成及び作用は,前述した従来構造とほぼ同様である為,同等部分には同一符号を付して,重複する説明を省略若しくは簡略にし,以下,本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0013】上記昇降ブラケット8aは,例えば非鉄金属をダイキャスト成形する事により,全体を円筒状に形成している。」

(3d)「【0024】次に,図10?11は本発明の第三実施例として,前記チルト機構に加えて,ステアリングホイールの前後位置を調節する為のテレスコピック機構を備えたステアリングコラムに本発明を適用した場合を示している。」

(3e)「【0029】・・・本実施例の場合も,昇降ブラケット8a及びシリンダブラケット10aを上記アウターコラム5aと一体に形成する事で,製作費の低廉化を図っている。」

2 対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「アッパー側の摺動筒体62」,「ロアー側のコラムケーシング61」,「乗り物のボデーなどの固定部分に堅固に取付けるための固定装置72の固定された支持片材14」,「中間支持片材75の2つの対称形の要素75a,75b」,「タイロッド21」,「固定装置72」,「取付け突縁部3」及び「乗り物のステアリングコラム」は,それぞれ訂正発明1の「アッパー側のインナーコラム」,「ロアー側のアウターコラム」,「車体側ブラケット」,「一対のクランプ部材」,「締め付け用のボルト」,「締付手段」,「支持部」及び「車両用ステアリング装置」に相当する。
甲1発明において,アッパー側の摺動筒体62がロアー側のコラムケーシング61に伸縮式に取付けられており,また,ステアリングシヤフト65が,コラムケーシング61内に回転ベアリング67により回転できるよう取付けた底部分66と,摺動筒体62内にベアリング69により自由に回転できるように取付けられたトップ部分68を有しているから,甲1発明は,訂正発明1における「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラム」との要件を備える。
甲1発明において,中間支持片材75の2つの要素75a及び75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,2つの要素75a及び75bのうちの一方(要素75a)のみ,摺動筒体62を押圧,保持する面を備え,前記フランジ17a及び17bの間隔は摺動筒体62の外径寸法よりも広いから,甲1発明の中間支持片材75の2つの対称形の要素75a,75bと訂正発明1の一対のクランプ部材とは,「インナーコラムを押圧,保持する面を一方に備え,前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた一対のクランプ部材」である点において共通する。
甲1発明において,タイロッド21は,フランジ17a及び17bに設けられた案内開口20内に遊隙嵌合し,中間支持片材75の要素75a,75bに設けられた開口を通過するから,甲1発明のタイロッド21と訂正発明1の締め付け用ボルトとは,「車体側ブラケット及び一対のクランプ部材を貫通する締付け用のボルト」である点において共通する。
甲1発明において,中間支持片材75をフランジ17a及び17b間にクランプすることにより,中間支持片材75はその2つの要素75a及び75bを近づけ合うように働くクランプ圧を受け,中間支持片材75の部分76だけが要素75aの残り部分につながつた部分の弾性変形により動き,ジヨー76が摺動筒体62をクランプして,コラムケーシング61を固定装置72の固定した支持片材14内に固定し同時に摺動筒体62を中間支持片材75及びコラムケーシング61に対し固定するから,甲1発明の固定装置72と訂正発明1の締付手段とは,「一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け保持するための締付手段」である点において共通する。
甲1発明における「コラムの外側筒体は底部で孔のある2つの取付け突縁部3と一体になつており」との構成は,甲第1号証の第10図の記載を参酌すれば,訂正発明1の「一対のクランプ部材よりも車両前方側でアウターコラムに設けられ」た「支持部」の構成に相当するということができる。そして,甲1発明においては,ステアリングコラムの高さはコラムが車のボデーに取付けられる水平軸線の周りの枢動により調整ができ,コラムの外側筒体は底部で孔のある2つの取付け突縁部3と一体になつているから,甲1発明は,訂正発明1における「一対のクランプ部材よりも車両前方側でアウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするためにアウターコラムに設けられた支持部」との要件を備える。
甲1発明の「コラムは僅かに枢動し軸線の周りに調整が可能となって,傾斜を一定範囲内で調整することができる」,「該2つの取付け突縁部3の孔とエラストマー製の2つの弾性スペーサの中心孔とに通したねじによりコラムをボデーに取付けるフレキシブルな取付構成」と,訂正発明1の「車幅方向に配置され,支持部に形成された筒状開口部と車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルト」との構成は,「支持部に形成された構造によりステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持する取付構成」である点で共通する。
甲1発明の「フランジ17a及び17bを互いに近づけたり離したりするように動かすことによりステアリングシヤフトの枢動及び伸縮抜差し軸方向移動が連続的に調整可能とされ」との構成は,訂正発明1の「しかして締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である」との構成に相当する。

したがって,訂正発明1と甲1発明は,訂正発明1の表記にできるだけしたがえば,
「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,
前記インナーコラムを押圧,保持する面を一方に備え,前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた一対のクランプ部材と,
前記車体側ブラケット及び一対のクランプ部材を貫通する締付け用のボルトと,一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け保持するための締付手段と,
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,
該支持部に形成された構造によりステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持する取付構成と,を具備し,
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置。」
である点で一致し,次の各点で相違する。

[相違点1]
訂正発明1では,一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えており,締付け用のボルトが,前記対向厚肉突出部を貫通しているのに対し,甲1発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えておらず,さらに,タイロッド21は,前記2つの要素75a,75bを貫通してはいるものの,対向厚肉突出部を貫通する構成とはなっていない点。

[相違点2]
訂正発明1では,ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって一対のクランプ部材を変形させるのに対し,甲1発明では,中間支持片材75を変形させるための機構として,互いに面接触する2つのカム部材を用いていない点。

[相違点3]
訂正発明1では,支持部が,ステアリングシャフトを,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するためのものであり,車幅方向に配置され,前記支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されるチルト中心ボルトを具備し,該チルト中心ボルトを傾動中心としてステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するのに対し,甲1発明では,支持部(取付け突縁部3)の構造はチルト回動の中心をなす構成を有するものの,一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケット,筒状開口部及びチルト中心ボルトを備えるものではない点。

[相違点4]
訂正発明1では,アウターコラムは一対のクランプ部材と支持部と共に一体に形成された鋳物であるのに対し,甲1発明では,中間支持片材75をコラムケーシング61に溶接により接合しており,また,取付け突縁部3については単にコラム1の外側筒体1a(コラムケーシング61)と一体になっているとされているのみであって,全体として一体に形成された鋳物ではない点。

相違点1について検討する。
甲第3号証には,乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置,すなわち乗り物のステアリングコラムにおいて,支持筒2に軸方向に連なり,隙間を介して配置された一対の締付鍔4,4’を備えた部位を,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面として形成する点が記載されており(記載事項2d参照),一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持するための包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成した突出部を備え,該一対のクランプ部材が互いに近接するように移動することによってインナーコラムを包持する,すなわち,包み込んで保持する点が記載されているといえる。
甲1発明及び甲第3号証に記載の事項は,共にステアリングコラムを保持するための構造に関するものであるので,甲1発明において,摺動筒体62を押圧,保持するための構造として甲第3号証の記載の構造を適用することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして,ステアリングコラムをクランプする一対のクランプ部材において,包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部を備えたものが周知であること(甲第7号証の「クランプ11」,甲第8号証の「アツパサポート2」,甲第9号証の「クランプブロック82」参照)を考慮すると,甲第1発明に甲第3号証の記載の構造を適用する際に,一対のクランプ部材の互いに対向する面の背側の面を,摺動筒体62の外径寸法よりも広い間隔を有するフランジ17a及び17bに摺接させるために,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた構成とし,該対向肉厚突出部にタイロッド21を貫通する構成とすることは当業者にとって困難ではない。
したがって,甲1発明において,上記相違点1に係る構成とすることは,甲第3号証の記載事項及び周知技術を参酌することにより当業者が容易になし得たことである。

相違点2について検討する。
ステアリングコアラムをクランプする一対のクランプ部材を締め付けるための機構として,一対のクランプ部材を貫通するボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させるものは,甲第20号証,甲第21号証及び甲第22号証に記載されているように,周知技術である。
そうすると,甲1発明において,上記相違点2に係る構成とすることは,上記周知技術を参酌することにより当業者が容易になし得たことである。

相違点3について検討する。
甲1発明も,「2つの取付け突縁部3の孔とエラストマー製の2つの弾性スペーサの中心孔とに通したねじによりコラムをボデーに取付けるフレキシブルな取付構成」(記載事項1d参照)により,一応のチルト中心と認められる箇所を有してステアリングコラムをチルト回動自在に支持する構造を備えている。このようなチルト機能を備えた構造として,車幅方向に配置され,アウターコラムに設けられた支持部に形成された筒状開口部と互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに挿通され,ステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するボルトやピン等の軸部材を具備し,前記支持部を車体側ロアーブラケットに支持する構造を採用すること,すなわち相違点3に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得る設計変更の範疇である。必要であれば,当該構造が本願の優先日前に公知であることを示す一例として,審判請求人が審判請求書とともに提出した甲第5号証の「ロアブラケット9」,「チルトピボット部31」,「貫通孔41」及び「フランジボルト33」等により構成される「チルトピボットTP」を参照のこと。同号証の「ロアブラケット9」,「チルトピボット部31」,「貫通孔41」及び「フランジボルト33」が,訂正発明1の上記相違点3における「車体側ロアーブラケット」,「支持部」,「筒状開口部」及び「チルト中心ボルト」にそれぞれ相当する。

相違点4について検討する。
甲第4号証には,自動車のステアリングコラムにおいて,アウターコラムに対し,昇降ブラケット等の周辺部材を従来溶接により接合していたのを,寸法精度確保の手間を省くために,アウターコラムに当該周辺部材を含めて全体を鋳物で一体形成したことが記載されている(記載事項3b?3e参照)。そうすると,甲1発明において,コラムケーシング61に対して中間支持片材75の2つの要素75a,75b(訂正発明1の「一対のクランプ部材」に相当)を溶接により接合することに代えて,コラムケーシング61とこれらの部材とを鋳物で一体形成し,また,取付け突縁部3(訂正発明1の「支持部」に相当)については単にコラム1の外側筒体1a(コラムケーシング61)と一体になっているとされているのを,同じく鋳物で一体成形することとして,上記相違点4に係る構成とすることは,甲第4号証の記載事項を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。

以上のことから,訂正発明1は,甲1発明において,甲第3,4号証の記載事項及び周知技術を参酌するとともに,必要に応じて適宜なし得る設計変更を施すことにより,当業者であれば容易になし得たものということができる。
すなわち,訂正発明1は,甲1発明,甲第3号証の記載事項,甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)訂正発明2について
訂正発明2は,訂正発明1の「ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラム」との発明特定事項(以下「事項1-1」という)を「ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し,車体側に回動自在に支持されたロアー側のアウターコラム」との発明特定事項(以下「事項2-1」という)に,訂正発明1の「それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材」との発明特定事項(以下「事項1-2」という)を「それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材」との発明特定事項(以下「事項2-2」という)に,訂正発明1の「締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置」との発明特定事項(以下「事項1-3」という)を「締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトのチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置」との発明特定事項(以下「事項2-3」という)にそれぞれ変更したものに相当するため,以下,事項2-1,事項2-2及び事項2-3についてのみ検討し,上記訂正発明1についての検討と合わせることにより,訂正発明2の進歩性について判断するものとする。
事項2-1は,事項1-1に対して,アウターコラムが車体側に回動自在に支持される点を付加したものに相当し,事項2-3は,事項1-3において,ステアリングシャフトを軸方向に移動することによりテレスコピック位置が調整自在とされている点を省いたものに相当する。そして,甲1発明は,アウターコラムが車体側に回動自在に支持される点を備えている。
事項2-2は,事項1-2において,対応厚肉突出部に対する「包持部よりも肉厚で突出した」との限定を外したものに相当する。
したがって,訂正発明2と甲1発明とを対比すると,両者は,上記相違点2ないし4において相違するほか,以下の点で一応相違する。

[相違点1-2]
訂正発明2では,一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えており,締付け用のボルトが,前記対向厚肉突出部を貫通しているのに対し,甲1発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えておらず,さらに,タイロッド21は,前記2つの要素75a,75bを貫通してはいるものの,対向厚肉突出部を貫通する構成とはなっていない点。

相違点1-2について検討すると,相違点1-2は,相違点1において訂正発明1が備えるとした「包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部」から「包持部よりも肉厚で突出した」との限定を外したものであるので,実質的に上記相違点1に含まれるものである。

したがって,訂正発明2と甲1発明との相違点は,上記相違点1ないし4と実質的に同じであり,各相違点についての検討及び発明の進歩性判断についても同じである。
すなわち,訂正発明2は,甲1発明,甲第3号証の記載事項,甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)訂正発明3について
訂正発明3は,訂正発明1の事項1-1を「それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材」との発明特定事項(以下「事項3-1」という)に,訂正発明1の「前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段」との発明特定事項(以下「事項1-4」という)を「前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段」との発明特定事項(以下「事項3-2」という)にそれぞれ変更したものに相当するため,以下,事項3-1及び事項3-2についてのみ検討し,上記訂正発明1についての検討と合わせることにより,訂正発明3の進歩性について判断するものとする。
事項3-1は,事項1-1において,一対のクランプ部材がアウターコラムに対して径方向外方に向けて設けられる点を限定するとともに,アウターコラムに対して一体に形成される点の限定を外し,対応厚肉突出部に対する「包持部よりも肉厚で突出した」との限定を外したものに相当する。そして,甲1発明は,一対のクランプ部材がアウターコラムに対して径方向外方に向けて設けられる点を備えている。
事項3-2は,事項1-4において,一対のクランプ部材を,車体側ブラケットを介して変形させる点を限定するとともに,車体側ブラケット及び対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって変形させる点の限定を外したものに相当する。そして,甲1発明は,一対のクランプ部材を,車体側ブラケットを介して変形させる点を備えている。
したがって,訂正発明3と甲1発明とを対比すると,両者は,上記相違点3及び相違点4において相違するほか,以下の点で一応相違する。

[相違点1-3]
訂正発明3では,一対のクランプ部材が,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えているのに対し,甲1発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えていない点。

相違点1-3について検討すると,相違点1-3は,相違点1において訂正発明1が備えるとした「包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部」から「包持部よりも肉厚で突出した」との限定を外し,相違点1における一対のクランプ部材がアウターコラムに一体に形成される点及び締付け用のボルトが対向厚肉突出部を貫通している点を含まないものであるので,実質的に上記相違点1に含まれるものである。

したがって,訂正発明3と甲1発明との相違点は,上記相違点1,相違点3及び相違点4と実質的に同じであり,各相違点についての検討及び発明の進歩性判断についても同じである。
すなわち,訂正発明3は,甲1発明,甲第3号証の記載事項,甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)訂正発明4について
訂正発明4は,訂正発明3の事項3-1を「それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材」との発明特定事項(以下「事項4-1」という)に変更するとともに,訂正発明3に対してさらに「クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触している」との発明特定事項を追加したものに相当する。
事項4-1は,事項3-1において,包持面が,軸方向に連続している点の限定を外したものである。
したがって,訂正発明4と甲1発明とを対比すると,両者は,上記相違点3及び相違点4において相違するほか,以下の点で一応相違する。

[相違点1-4]
訂正発明4では,一対のクランプ部材が,アウターコラムに軸方向に連なり,インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えているのに対し,甲1発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えていない点。

[相違点5]
訂正発明4では,クランプ部材の包持面がインナーコラム外周面に押圧接触しているのに対し,甲1発明では,クランプ部材の保持面がインナーコラム外周面に押圧接触しているものの,あくまで保持面であって包持面ではない点。

相違点1-4について検討すると,相違点1-4は,相違点1において訂正発明1が備えるとした「軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面」から「軸方向に連続して」との限定を外し,「包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部」から「包持部よりも肉厚で突出した」との限定を外し,さらに,相違点1における一対のクランプ部材がアウターコラムに一体に形成される点及び締付け用のボルトが対向厚肉突出部を貫通している点を含まないものであるので,実質的に上記相違点1に含まれるものである。
相違点5について検討すると,相違点5は,クランプ部材のインナーコラム外周面に押圧接触する面が,保持面か包持面かの文言上の相違であって,実質的に上記相違点1に含まれるものである。

したがって,訂正発明4と甲1発明との相違点は,上記相違点1,相違点3及び相違点4と実質的に同じであり,各相違点についての検討及び発明の進歩性判断についても同じである。
すなわち,訂正発明4は,甲1発明,甲第3号証の記載事項及び甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)訂正発明5について
訂正発明5は,訂正発明4に対してさらに「クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触している」との発明特定事項を追加したものに相当する。
訂正発明5と甲1発明とを対比すると,両者は,上記相違点1,相違点3及び相違点4において実質的に相違するほか,以下の点でさらに相違する。

[相違点6]
訂正発明5では,クランプ部材の包持面は前記インナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触しているのに対し,甲1発明では,クランプ部材の保持面がインナーコラム外周面に周方向で連続的に押圧接触しており,また,あくまで保持面であって包持面ではない点。

相違点6の前半部分について検討すると,クランプ部材をインナーコラム外周面に周方向で連続的に押圧接触させるか,断続的に押圧接触させるかという選択は,要求される寸法精度や剛性等を勘案して当業者が設計上適宜なし得る程度の事項と考えられるから,上記相違点6の前半部分に係る構成は,当業者であれば容易になし得たことといえる。
また,上記相違点6の後半部分に係る構成は,実質的に上記相違点1に含まれるものである。
そして,上記相違点1,相違点3及び相違点4についての検討は前述のとおりである。

したがって,訂正発明5は,甲1発明において甲第3,4号証の記載事項及び周知技術を参酌することにより,当業者であれば容易に発明をすることができたものということができる。
すなわち,訂正発明5は,甲1発明,甲第3号証の記載事項,甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)訂正発明6について
訂正発明6は,訂正発明1の事項1-4を「前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段」との発明特定事項(以下「事項6-1」という)にそれぞれ変更するとともに,訂正発明1に対してさらに「鋳物はアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかである」との発明特定事項を追加したものに相当する。
事項6-1は,事項1-4において,一対のクランプ部材を,車体側ブラケットを介して変形させる点を限定するとともに,車体側ブラケット及び対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって変形させる点の限定を外したものに相当する。そして,甲1発明は,一対のクランプ部材を,車体側ブラケットを介して変形させる点を備えている。
したがって,訂正発明6と甲1発明とを対比すると,両者は,上記相違点1,相違点3及び相違点4において相違するほか,以下の点でさらに相違する。

[相違点7]
訂正発明6は鋳物としてアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであるのに対し,甲1発明は同構成を有しない点。

相違点7について検討する。
甲第4号証には,鋳物がアルミ鋳物またはマグネシウム系鋳物の何れかである点が記載されている(記載事項3b及び3c参照)。そうすると,甲1発明において上記相違点7に係る構成とすることは,甲第4号証の記載事項を参酌することにより当業者が容易になし得たことである。
そして,上記相違点1,相違点3及び相違点4についての検討は前述のとおりである。

したがって,訂正発明6は,甲1発明において甲第3,4号証の記載事項及び周知技術を参酌することにより,当業者であれば容易に発明をすることができたものということができる。
すなわち,訂正発明6は,甲1発明,甲第3号証の記載事項,甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.被請求人の主張に対して
訂正発明1ないし6と甲1発明とではステアリング装置のチルト構造が互いに異なっていると主張するが,チルト回動の中心となる部分の具体的構造として,甲第1号証のものに代えて,従来知られているチルト中心ボルトを用いた構造を採用するような設計を行うことは,当業者にとって容易である。
また,甲第3号証の締付鍔4,4’による締め付けは訂正発明1ないし6のような車体側ブラケットを介した締め付けではない,と主張するが,甲第3号証に記載の締付鍔4,4’を甲第1号証に一対のクランプ部材として適用して固定装置72のフランジ17a,17bとともに用いるとの組合せを行うものであるから,甲第3号証のもの自体が車体側ブラケットを介しない締め付けであるとの主張は採用することができない。
また,アウターコラムをその周辺部材とともに鋳物で一体形成する点は甲第4号証のみからでは一般化・抽象化できないと主張するが,甲第4号証には,アウターコラムに対して周辺部材を従来溶接によって接合していたのを寸法精度の確保の手間を省くためにアウターコラム及び周辺部材を全体として鋳物で一体形成する,との技術的思想が明示されていることから,当該思想に基づく技術を取り出して他の関連する発明に適用しようとする動機付けになり得るというべきである。したがって,被請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,訂正発明1ないし訂正発明6は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,その特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用ステアリング装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと、
それぞれ、前記アウターコラムに一体に形成され、前記アウターコラムに軸方向に連なり、軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし、それぞれ、該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し、該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え、前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と、
前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと、該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ、互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能に、互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
車幅方向に配置され、該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して、ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項2】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し、車体側に回動自在に支持されたロアー側のアウターコラムと、
それぞれ、前記アウターコラムに一体に形成され、前記アウターコラムに軸方向に連なり、軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし、それぞれ、該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し、該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と、
前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと、該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ、互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能に、互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
車幅方向に配置され、該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトのチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項3】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと、
それぞれ、前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ、前記アウターコラムに軸方向に連なり、軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし、それぞれ、該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し、該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と、
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ、互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能に、互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
車幅方向に配置され、該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して、ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項4】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと、
それぞれ、前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ、前記アウターコラムに軸方向に連なり、前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし、それぞれ、該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し、該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と、
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ、互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能に、互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
車幅方向に配置され、該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して、ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり、
前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触していることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項5】
前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触していることを特徴とする請求項4に記載の車両用ステアリング装置。
【請求項6】
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと、
それぞれ、前記アウターコラムに一体に形成され、前記アウターコラムに軸方向に連なり、軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし、それぞれ、該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し、該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え、前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と、
前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ、互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能に、互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
車幅方向に配置され、該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して、ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり、
前記鋳物はアルミ鋳物、マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用ステアリング装置に関する。特に本発明は、運転者の運転姿勢に応じて、ステアリングシャフトの傾斜角度および/もしくはステアリングシャフトの軸方向位置を調整できる車両用ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用ステアリング装置には、運転者の運転姿勢に応じて、ステアリングホイールの傾斜角度を調整できると共に、ステアリングホイールの軸方向位置を調整できるチルト・テレスコピック式のステアリング装置がある。
【0003】
例えば、特開平11-278283号公報に開示したチルト・テレスコピック式のステアリング装置では、ロアー側のアウターコラムに、アッパー側のインナーコラムが摺動自在に挿入して嵌合してある。このアッパー側のインナーコラムには、テレスコ調整用溝を有するディスタンスブラケットが取り付けてあり、このディスタンスブラケットは、チルト調整用溝を有する車体側ブラケットの内側に摺接するように構成してある。テレスコ調整用溝及びチルト調整用溝には、締付ボルトが通挿してあり、この締付ボルトの一端には、操作レバーが取り付けてある。
【0004】
これにより、操作レバーを揺動すると、締付ボルトが軸方向に移動して、車体側ブラケットとディスタンスブラケットの締め付けを解除し、締付ボルトをチルト調整用溝に沿って上下方向に移動して、アッパー側のインナーコラムの傾斜角度を調整できると共に、インナーコラムはディスタンスブラケットのテレスコ調整用溝に沿って軸方向に移動して、軸方向位置を調整することができる。
【0005】
チルトおよびテレスコピック調整後には、操作レバーを逆方向に揺動すると、締付ボルトが軸方向に移動して、車体側ブラケットをディスタンスブラケットに押圧し、これにより、アッパー側のインナーコラムをチルトおよびテレスコピック調整後の状態で締め付けることができる。また、このように、一つの操作レバーの揺動により、チルト調整とテレスコピック調整との両方を行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示したチルト・テレスコピック式のステアリング装置では、ロアー側のアウターコラムに、アッパー側のインナーコラムを摺動自在に嵌合し、両コラムの剛性を高くしている。
【0007】
しかしながら、アッパー側のインナーコラムは、ロアー側のアウターコラムに対して必ずしも直接的にクランプしていないため、ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合(即ち、ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合)、アッパー側のインナーコラムは、若干揺動するように動くことがあり、両コラムの剛性は、必ずしも高いとはいえなかった。
【0008】
なお、アッパー側のインナーコラムに設けたディスタンスブラケットに、複数枚の補強板を設けて、剛性を高くすることも考えられるが、部品点数の増加から、製造コストの高騰を招くといった虞れがある。
【0009】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、ステアリングコラムの剛性を著しく高くしたチルトおよび/もしくはテレスコピック位置が調整自在な車両用ステアリング装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明に係る車両用ステアリング装置は、
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したアウターコラムと、
このアウターコラムに一体に形成され、車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とをそれぞれ備えた一対のクランプ部材と、
これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して、ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする。
【0011】
【0012】
さらに、上記の目的を達成するための請求項2に記載の発明に係る車両用ステアリング装置は、
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し、車体側に回動自在に支持されたアウターコラムと、
このアウターコラムに一体に形成され、車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とをそれぞれ備えた一対のクランプ部材と、
これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトのチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする。
【0013】
さらに、上記の目的を達成するための請求項3に記載の発明に係る車両用ステアリング装置は、
ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと、
前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に、前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したアウターコラムと、
このアウターコラムに径方向外方に向けて設けられ、車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とを内周面にそれぞれ備えた一対のクランプ部材と、
これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて、前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と、
前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ、ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と、
該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと、を具備し、
しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して、ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において、
前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする。
【0014】
このように、本願各請求項に記載の発明に係る車両用ステアリング装置においては、インナーコラムをアウターコラムにより直接的にクランプするように構成していることから、ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合(即ち、ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合)であっても、インナーコラムは、若干揺動するように動くことがなく、両コラムの剛性を著しく高くすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置を図面を参照しつつ説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。図2は、図1に示したステアリング装置の縦断面図である。図3は、図2のA-A線に沿った横断面図である。図4は、図2のB-B線に沿った横断面図である。図5(a)は、ロアー側のアウターコラムの平面図であり、図5(b)は、このアウターコラムの側面図であり、図5(c)は、図5(b)のC-C線に沿った横断面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、ステアリングシャフトは、車両後方側端部でステアリングホイール(図示なし)を固設支持するアッパーシャフト1と、これにスプライン嵌合したロアーシャフト2とから伸縮自在に構成してあり、ステアリングコラムは、アッパーシャフト1を上端部で玉軸受31を介して回転自在に支持するアッパー側のインナーコラム3と、ロアーシャフト2を下端部で玉軸受33を介して回転自在に支持すると共にアッパー側のインナーコラム3に嵌合したロアー側のアウターコラム4とから摺動自在に構成してある。アッパーシャフト1には該アッパーシャフトがインナーコラム3に潜り込まないように潜り込み防止用のCーリング35が設けてあり、またロアシャフト2にも該ロアシャフト2がアウターコラム4に潜り込まないように潜り込み防止用Cーリング37が設けてある。
【0017】
このロアー側のアウターコラム4の周囲には、図3および図4にも示すように、チルト調整用溝5を有するブラケット6が設けてある。ブラケット6は車両後方側に車体に接続されるフランジ部6a有し全体として下向きに逆U字形状をしており、対向側板部6b、6cを一体に形成している。
【0018】
図4に示すように、車体側ブラケット6のロアー側には、別体のロアーブラケット7が車体側ブラケット6を包持するように設けてある。ロアーブラケット7は車体に連結される上板部7aとブラケット6の対向側板部6b、6cを接触挟持する下向きの対向側板部7b、7cを形成している。ブラケット6の対向側板部6b、6cの内側に両側端が摺接するように、筒状部8がアウターコラム4の前方端に一体的に形成してある。これらロアーブラケット7の対向側板部7b、7c、ブラケット6の対向側板部6b、6c、および筒状部8には、スペーサ筒9を介して、チルト中心ボルト10aが通挿してあり、ナット10bにより締め付けられている。これにより、ロアー側のアウターコラム4は、このチルト中心ボルト10aを中心として傾動できるようになっている。なお、図2に示すように、ロアーブラケット7には、二次衝突のコラプス時にチルト中心ボルト10が離脱するための離脱用オープンスリット11が形成してある。
【0019】
ロアー側のアウターコラム4はアッパーシャフト1とロアーシャフト2との嵌合部をほぼ覆う位置まで後方に延びており、さらにこの嵌合部よりも後方側にはある長さ範囲にわたりアウタージャケット部4aを一体に有している。アウタージャケット部4aには上方部中央に軸方向のすり割りlが形成してあり、アッパー側のインナーコラム3を包持してクランプするための一対のクランプ部材12a,12bを形成している。クランプ部材12a、12bはそれぞれインナーコラム3の外周面に適合する形状の内周面と車体側ブラケット6の内側に摺接する外側面とを有している。尚、クランプ部材12a、12bの内周面はインナーコラム3の外周面に円周方向180度以上に亘り摺接することが望ましい。また図14に示すように円周方向少なくとも3方向から摺接するようにしても良い。クランプ部材12a,12bには、締付ボルト13が通挿してある。この締付ボルト13のネジ部には、締付ナット14およびロックナット15が螺合してある。
【0020】
この締付ボルト13の頭部側には、操作レバー16が取り付けてあると共に、カムロック機構が設けてある。このカムロック機構は、操作レバー16と一体的に回転する第1カム部材17と、この第1カム部材17の回転に伴って、第1カム部材17の山部または谷部に係合しながら軸方向に移動してロックまたはロック解除する非回転の第2カム部材18とから構成してある。なお、第1カム部材17の突起17aが操作レバーに嵌合してあることにより、第1カム部材17は操作レバー16と一体的に回転できるように構成してあると共に、第2カム部材18の突起18aがチルト調整用溝5に嵌合してあることにより、第2カム部材18は常時非回転に構成してある。また、ブラケット6のフランジ部6aには、二次衝突のコラプス時の離脱用カプセル19a,19bが設けてある。すなわち、ブラケット6は離脱用カプセル19a、19bを介して車体に連結される。
【0021】
以上のように構成してあるため、車両衝突時には、アウターコラム4、インナーコラム3、ロアーシャフト2およびアッパシャフト1から成るステアリングシャフト組立体はブラケット6とともにロアーブラケット7に対して、車両前方に移動する。
【0022】
チルト・テレスコピックの解除時には、操作レバー16を所定方向に揺動すると、第1カム部材17が同時に回転して、第2カム部材18の山部から谷部に係合し、第2カム部材18が図3の左方に移動して、車体側ブラケット6のアウターコラム4への摺接固定を解除する。
【0023】
これにより、チルト調整の場合には、締付ボルト13をチルト調整用溝5に沿って移動し、チルト中心ボルト10を中心として、アウターコラム4およびインナーコラム3を傾動し、ステアリングホイール(図示略)の傾斜角度を所望に調整することができる。
【0024】
テレスコピック調整の場合には、ロアー側のアウターコラム4に対して、アッパー側のインナーコラム3を軸方向に摺動し、ステアリングホイール(図示略)の軸方向位置を所望に調整することができる。なお、アウターコラム4の外周下側の突出部に半径方向内向きのストッパボルト43が設けてある。ストッパボルト43に対向してインナーコラム3には所定長の長溝3bが形成してあり、この長溝3bにストッパボルト43の内端が係合しており、テレスコ位置調整用ストッパおよび回り止め部材となっている。
【0025】
チルト・テレスコピックの締付時には、操作レバー16を逆方向に揺動すると、第1カム部材17が同時に回転して、第2カム部材18の谷部から山部に係合し、第2カム部材18が図3の右方に移動して、締付ボルト13により、車体側ブラケット6がアウターコラム4を押圧する。
【0026】
これにより、これら一対のクランプ部材12a,12bは、互いに近接するように移動して、アッパー側のインナーコラム3を包持するようにクランプする。このように、アッパー側のインナーコラム3をロアー側のアウターコラム4により直接的にクランプするように構成していることから、ステアリングホイール(図示略)に曲げ荷重が作用した場合(即ち、ステアリングホイール(図示略)が上下方向にこじられた場合)であっても、アッパー側のインナーコラム3は、若干揺動するように動くことがなく、両コラム3,4の剛性を著しく高くすることができる。
【0027】
次に、図6に、第1実施の形態の変形例を示す。図6(a)は、第1実施の形態に係るロアー側のアウターコラムの断面図であり、図6(b)は、第1実施の形態の変形例に係るロアー側のアウターコラムの断面図であり、図6(c)は、本変形例に係るロアー側のアウターコラムの作用を示す断面図である。
【0028】
図6(a)に示すように、上述した第1実施の形態において、一対のクランプ部材12a,12bの間の「すり割りl」を形成した箇所では、その隙間が大きすぎ、アウターコラム4とインナーコラム3との間の隙間が大きい場合、クランプ時に、一対のクランプ部材12a,12bが傾斜するといった虞れがある。
【0029】
これに対処するため、図6(b)(c)に示すように、一対のクランプ部材12a,12bの間の「すり割り」を形成した箇所に、それぞれ、一対の突起12c,12dを設けている。これにより、クランプ時には、一対の突起12c,12dが互いに当接することから、一対のクランプ部材12a,12bを平行に維持することができ、充分な保持力を得ることができる。
図14に示す第1実施の形態の第2変形例においては、クランプ部材12a、12bの内周側ほぼ等角配置の3カ所においてインナーコラム3の外周に摺接している。尚、アウターコラム4は図18のようにすり割lを図5よりも前方へ長く伸ばしても良い。またアウターコラム4は鋳物、例えばアルミ鋳物、亜鉛鋳物、マグネシウム系鋳物、鉄系鋳物で作っても良い。
(第2実施の形態)
図7は、本発明の第2実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。図8は、図7に示したステアリング装置の縦断面図である。図9は、図8のD-D線に沿った横断面図である。図10は、図8のE-E線に沿った横断面図である。
【0030】
本第2実施の形態は、上述した第1実施の形態に対して、二次衝突時の離脱方法が異なり、以下の構成を除いてその他の構成は、全て同じである。
【0031】
第2実施の形態において、ブラケット6は車両後方フランジ部6aと前方フランジ部6dとを一体に有しており、ブラケット6はこれらフランジ部で車体側に衝突時にも離脱不可能に固設保持されている。
【0032】
図8に示すように、アウターコラム4に一体のアウタージャケット4aを形成する一対のクランプ部材12a,12bには、締付ボルト13の後方側に、二次衝突のコラプス時に締付ボルト13が離脱するための離脱用オープンスリット20が形成してある。
【0033】
また、チルト中心ボルト10側では、第1実施の形態の筒状部に代えて、アウターコラム4には、フック8が一体的に形成してあり、このフック8の後方側に、二次衝突のコラプス時にチルト中心ボルト10が離脱するための離脱用オープンスリット21が形成してある。
【0034】
本第2実施の形態では、車両衝突時に車体側のブラケット6に対して、アウターコラム4、インナーコラム3、ロアーシャフト2およびアッパシャフト1から成るステアリングシャフト組立体は、車両前方に移動する。
(第3実施の形態)
図11は、本発明の第3実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の縦断面図の要部である。図12は、図11のF-F線に沿った横断面図である。
【0035】
アッパー側のインナーコラム3を摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラム4は、車両後方側に一体に一対のクランプ部材12a,12bを構成するアウタージャケットが設けられているが、本実施形態においてはクランプ部材がインナーコラムをクランプする位置がロアー側のアウターコラム4の下側になっている。
【0036】
図11および図12に示すように、ブラケット6の車両後方側で、クランプ部材がインナーコラムを締め付ける位置には、テレスコピック方向の保持力を増強するため、テレスコ調整用溝25を有する補強用テレスコブラケット26が設けてある。テレスコブラケット26はインナーコラム3に固定されている。また、ブラケット6の外周囲に、チルト時の保持力を増強するため、チルト調整用溝23を有する補強用チルトブラケット24が設けてある。チルトブラケット24はブラケット6に固定されている。
【0037】
本第3実施の形態においても、チルト・テレスコピックの調整時には、操作レバー16を所定方向に揺動すると、第1カム部材17が同時に回転して、第2カム部材18の山部から谷部に係合し、第2カム部材18が図13の左方に移動して、車体側ブラケット6のアウターコラム4への締め付けを解除する。
【0038】
これにより、チルト調整の場合には、締付ボルト13をチルト調整用溝5(および補強用チルトブラケット24のチルト調整用溝23)に沿って移動し、アウターコラム4およびインナーコラム3を傾動し、ステアリングホイール(図示略)の傾斜角度を所望に調整することができる。
【0039】
テレスコピック調整の場合には、テレスコ調整用溝25は締め付けボルト13に沿って移動し、ロアー側のアウターコラム4に対して、アッパー側のインナーコラム3をアッパシャフト1とともに軸方向に摺動し、ステアリングホイール(図示略)の軸方向位置を所望に調整することができる。
【0040】
チルト・テレスコピックの締付時には、操作レバー16を逆方向に揺動すると、第1カム部材17が同時に回転して、第2カム部材18の谷部から山部に係合し、第2カム部材18が図13の右方に移動して、締付ボルト13により、車体側ブラケット6が、補強用チルトブラケット24および補強用テレスコブラケット26を介して、アウターコラム4を押圧する。
【0041】
これにより、これら一対のクランプ部材12a,12bは、互いに近接するように移動して、アッパー側のインナーコラム3を包持するようにクランプする。このように、アッパー側のインナーコラム3をロアー側のアウターコラム4により直接的にクランプするように構成していることから、ステアリングホイール(図示略)に曲げ荷重が作用した場合であっても、アッパー側のインナーコラム3は、若干揺動するように動くことがなく、両コラム3,4の剛性を著しく高くすることができる。
(第4実施の形態)
図13は、本発明の第4実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の縦断面図である。
【0042】
本第4実施の形態では、電動パワーステアリング装置27が設けてある。本実施形態において、電動パワーステアリング装置27のギヤボックス27aがアウターコラム4と一体に形成されており、車両前方端で車体側のロアー取り付けブラケット28にチルト中心ピン29により揺動自在に支持されている。また、ギヤボックス27aと一体のアウターコラム4後方には第1実施の形態同様一対のクランプ部材12a、12b(12bのみ図示)を形成するアウタージャケット4aが一体に形成されている。その他の構成は、上述した第1ないし第3実施の形態と同様である。
【0043】
ロアー側のアウターコラム4は、電動パワーステアリング装置27のギヤボックスと一体的に成型してあるが、別体で構成してもよい。
【0044】
本第4実施形態にあっても、操作レバー16を締め付け解除方向に回動し、クランプ部材のインナーコラム3に対する締め付けを解除してテレスコ調整およびチルト調整ができる。
【0045】
(第5実施の形態)
図15は、本発明の参考例である第5実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。図16は、図15に示したステアリング装置の縦断面図である。図17は、図16のG-G線に沿った横断面図である。第5実施の形態については第1実施の形態と同じ部分については符号のみを示すかもしくは説明を省略し、第1実施の形態と異なる構成を主として以下に説明する。
【0046】
第5実施の形態において、アウターコラム4はクランプ部材12a、12bおよびアウタージャケット4aとは別体である。ロアー側のアウターコラム4はその後方端部におけるアッパー側のインナーコラムの前方端部と互いに嵌合し重なり合う部分において軸方向に延びる2つのスリ割り部L1,L2を径方向に対向して形成してある。
【0047】
一対のクランプ部材12a、12bの下方にはアウターコラム4の後方端部の外周に摺接しかつこれらクランプ部材12a,12bを一体にするアウタジャケット部4aを形成している。これらクランプ部材12a,12bとアウタジャケット部4aの形状および構成はアウターコラム4と別体であることを除いて第1実施の形態と同様である。
【0048】
第5実施の形態においては、このように形成された一対のクランプ部材12a,12bが一体のアウタージャケット部4aは、インナーコラム3とアウターコラム4とが重なり合う部分において外周側のアウターコラム4の外周に配置されアウターコラム4を直接インナーコラム3へとチルト調整位置もしくはテレスコ調整位置に締め付け固定する。
第5実施の形態の上記以外の構成、および作用については第1実施の形態と同じである。また、アウタージャケット4aは鋳物、例えばアルミ鋳物、亜鉛鋳物、マグネシウム系鋳物、鉄系鋳物で作っても良い。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アウターコラムに一体または別体の、一対のクランプ部材がインナーコラムまたはアウターコラムを包持するように設けてあり、しかも、締付手段により、これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて、インナーコラムまたはアウターコラムをこれら一対のクランプ部材により包持してクランプするように構成している。したがって、このようにインナーコラムをアウターコラムにより直接的にクランプするように構成していることから、ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合(即ち、ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合)であっても、インナーコラムは、若干揺動するように動くことがなく、両コラムの剛性を著しく高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。
【図2】
図1に示したステアリング装置の縦断面図である。
【図3】
図2のA-A線に沿った横断面図である。
【図4】
図2のB-B線に沿った横断面図である。
【図5】
第1実施の形態のアウターコラムについて、(a)は、ロアー側のアウターコラムの平面図であり、(b)は、このアウターコラムの側面図であり、(c)は、(b)のC-C線に沿った横断面図である。
【図6】
(a)は、第1実施の形態に係るロアー側のアウターコラムの断面図であり、(b)は、第1実施の形態の変形例に係るロアー側のアウターコラムの断面図であり、(c)は、本変形例に係るロアー側のアウターコラムの作用を示す断面図である。
【図7】
本発明の第2実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。
【図8】
図7に示したステアリング装置の縦断面図である。
【図9】
図8のD-D線に沿った横断面図である。
【図10】
図8のE-E線に沿った横断面図である。
【図11】
本発明の第3実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の縦断面図の要部である。
【図12】
図11のF-F線に沿った横断面図である。
【図13】
本発明の第4実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の縦断面図である。
【図14】
本発明の第1実施の形態の第2変形例に係る図3と同様な断面図である。
【図15】
本発明の参考例である第5実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。
【図16】
図15に示したステアリング装置の縦断面図である。
【図17】
図16のG-G線に沿った横断面図である。
【図18】
本発明の第1実施の形態の第3変形例におけるアウターコラムについて、(a)は、ロアー側のアウターコラムの平面図であり、(b)は、このアウターコラムの側面図であり、(c)は、(b)のC-C線に沿った横断面図である。
【符号の説明】
1 アッパーシャフト
2 ロアーシャフト
3 アッパー側のインナーコラム
4 ロアー側のアウターコラム
5 チルト調整用溝
6 ブラケット
7 ロアーブラケット
8 筒状部
9 スペーサ
10 チルト中心ピン
11 離脱用オープンスリット
12 クランプ部材
13 締付ボルト(締付手段)
14 締付ナット
15 ロックナット
16 操作レバー
17 第1カム部材
18 第2カム部材
19 離脱用カプセル
20,21 離脱用オープンスリット
23 チルト調整用溝
24 補強用チルトブラケット
25 テレスコ調整用溝
26 補強用テレスコブラケット
27 電動パワーステアリング装置
28 ロアーブラケット
29 チルト中心ピン
31,33 玉軸受
35,37 Cーリング
43 ストッパボルト
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-11-14 
結審通知日 2012-11-20 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2000-254210(P2000-254210)
審決分類 P 1 113・ 832- ZA (B62D)
P 1 113・ 121- ZA (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
登録日 2010-10-29 
登録番号 特許第4613402号(P4613402)
発明の名称 車両用ステアリング装置  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 井上 義雄  
代理人 井上 義雄  
代理人 相原 健一  
代理人 伊藤 隆治  
代理人 伊藤 隆治  
代理人 井上 淳子  
代理人 相原 健一  
代理人 井上 淳子  
代理人 大沼 加寿子  

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