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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10J
管理番号 1288325
審判番号 不服2013-3099  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2014-06-04 
事件の表示 特願2006-235526「合成ガスを収容及び冷却するための蒸気発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 56808〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成18年8月31日の出願であって、平成24年2月15日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内に請求人(出願人)からの応答はなく、同年10月10日付けで拒絶査定され、これに対し、平成25年2月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、同年6月17日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ、同年11月5日に回答書が提出されたものである。

2.平成25年2月18日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年2月18日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容と目的

平成25年2月18日付け手続補正書による特許請求の範囲の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合の補正であって、特許請求の範囲の請求項1について次のとおり補正することを含むものである。
本件補正前:
「【請求項1】
ガス化処理によって生成された合成ガスから熱を引き出すための合成ガス冷却器であって:
吸入口及び排出口を有するシェル;
合成ガスを受容するために前記シェル内に収容された流体冷却式内側送気管;
前記内側送気管から合成ガスを受容するために前記シェル内に収容された流体冷却式外側送気管;
合成ガスを冷却するために前記内側送気管内に配置された放射性熱伝導表面;及び、
合成ガスを前記外側送気管から排出口に伝達するための手段を備える合成ガス冷却器。」
本件補正後:
「【請求項1】
ガス化処理によって生成された合成ガスから熱を引き出すための合成ガス冷却器であって:
吸入口及び排出口を有するシェル;
合成ガスを受容するために前記シェル内に収容され、流体冷却式管から作製された封入壁で構成されている流体冷却式内側送気管;
前記内側送気管から合成ガスを受容するために前記シェル内に収容され、前記内側送気管を実質的に囲んでいる流体冷却式外側送気管;
合成ガスを冷却するために前記内側送気管内に配置された放射性熱伝導表面;及び、
合成ガスを前記外側送気管から排出口に伝達するための手段を備え、
前記放射性熱伝導表面が、それの表面の大部分が吸入される合成ガスに露出されるように合成ガス冷却器の内部に吊下げられた流体冷却式袖壁の表面から構成されており、
前記袖壁表面が互いに隣接した複数の管の平らな列から構成されている合成ガス冷却器。」

上記請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項3、請求項5、請求項6、及び請求項11に記載された事項を請求項1に追加し、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「流体冷却式内側送気管」、「流体冷却式外側送気管」、及び「放射性熱伝導表面」に限定を付加するものである。そして、当該補正は、請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件の検討

上記のとおり、請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第4項第2号の場合に該当するから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。
当審は、以下の理由によって、本願補正発明は、後記する引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものと判断する。

(2-1)本願補正発明
本願補正発明は、請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、再掲すると、次のとおりである。
「【請求項1】
ガス化処理によって生成された合成ガスから熱を引き出すための合成ガス冷却器であって:
吸入口及び排出口を有するシェル;
合成ガスを受容するために前記シェル内に収容され、流体冷却式管から作製された封入壁で構成されている流体冷却式内側送気管;
前記内側送気管から合成ガスを受容するために前記シェル内に収容され、前記内側送気管を実質的に囲んでいる流体冷却式外側送気管;
合成ガスを冷却するために前記内側送気管内に配置された放射性熱伝導表面;及び、
合成ガスを前記外側送気管から排出口に伝達するための手段を備え、
前記放射性熱伝導表面が、それの表面の大部分が吸入される合成ガスに露出されるように合成ガス冷却器の内部に吊下げられた流体冷却式袖壁の表面から構成されており、
前記袖壁表面が互いに隣接した複数の管の平らな列から構成されている合成ガス冷却器。」

(2-2)引用刊行物とその記載事項

ア.引用刊行物1の記載事項
原査定の拒絶理由において、引用文献5として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公平4-35681号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「実用新案登録請求の範囲
(1)合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器であつて:
固形物を伴つた合成ガス用入口を上部に有する外殻と;
冷却器のほぼ全長にわたつて延びていて上記合成ガスから内部の水へ輻射熱交換を行う気密の内側ウオーターウオールと;
上記外殻内に設けられて上記内側ウオーターウオールとの間に上記全長に延びる環状部分を形成する外側ウオーターウオールと;
上記内側および外側ウオーターウオール間で上記上部に設けられ合成ガス流に対して上記環状部分を閉じる結合部材と;
上記上部に設けられ上記環状部分から合成ガスを放出する出口と;
上記外殻の底部に位置し上記固形物を受けてこれを急冷する水と;
上記外側ウオーターウオールの底部に結合されかつ水中に延びてガス流を上記環状部分に向ける第1バツフル部材と;
上記内側ウオーターウオールの底部に結合され、倒立した円錐台状をなして上記水の液面の少し上まで延び、上記ガスと固形物の流れを水面に向けて加速する絞りを通路に形成する第2バツフル部材にして、水によりガスの流れを冷却するとともにその方向を反転させて固形物を分離するための第2バツフル部材と
から成ることを特徴とする合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器。」(実用新案登録請求の範囲)

(b)「〔従来技術〕
廃熱ボイラには、異なる環境や用途に使用する様々の種類のものがあるが、たとえば粉末石炭のような細かく分割した固形物を処理するガス化装置からの合成ガスの冷却には、ウオーターウオール管内で流れを上昇させる輻射ボイラを使用してきた。このようなボイラは、凝固したスラグや冷却した合成ガスを輻射ボイラの底部に移すようになつてはいるが、商業規模の設備では、輻射ボイラの大きさは、高熱ガスの1系統の生産流にしか使用できないような制限要因となつている。」(3欄3?13行)

(c)「〔考案の概要〕
簡単に言えば、本考案は固形物を伴つた合成ガス用入口をその一端に有する外殻を含む合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器に関している。本考案の装置は、合成ガスとの輻射熱交換を行なう内側ウオーターウオールと、外殻内に設けられ内側ウオーターウオールとともに環状部分を形成する外側ウオーターウオールと、この環状部分からの合成ガス用出口と、合成ガスを内側ウオーターウオールの長さ方向に流しかつ環状部分内へ反転させて出口へ送る装置とを有している。
換言すれば、本考案の廃熱ボイラ兼冷却器は固形物を伴つた合成ガスを導入する軸方向入口をその上部に有する直立外殻と、外殻と同心的に設けられかつ固形物を伴つた合成ガスから輻射熱交換を行なう直立平行管を有する内側ウオーターウオールとを有する。さらに、上部と下部に平行管を結合する第1対のマニホルドと、外殻に同心的に設けられて内側ウオーターウオールとともに環状部分を形成する外側ウオーターウオールを有している。この外側ウオーターウオールは、環状部分を上向きに流れる合成ガスからの熱交換を行なう直立平行管を有している。さらに、本考案の冷却器は、上部と下部において外側ウオーターウオールの平行管を結合する第2対のマニホルドを有している。
・・・・・・・
粉末石炭等からの合成ガスの製造においては、高熱合成ガスをガス冷却器中で冷却しなければならないが、輻射ボイラにおいてそのウオーターウオール管内における流れにより、その熱を除去するようになつている。また高熱合成ガスに伴つた固形物からできた凝固したスラグは、このような輻射ボイラの底部で除去される。しかし、商業規模の設備では、このような輻射ボイラの大きさが、合成ガス流の生産量の制限要因となつていたが、本考案は複数のウオーターウオール熱交換構成で流れを反転させるようにしたことにより、この問題を解決している。」(3欄33行?4欄37行)

(d)「なお「ウオーターウオール」(水壁)という語は、当業者には周知のものであり、ウオーターウオールの構造は、気密面を作る構造を有するとともに、熱交換を行なう流体を保持する通路を備えている。このように、通常のウオーターウオール構造は、円筒状の熱交換ユニツトにおいて使用され、また、このウオーターウオールはフインを有するかまたは互いに結合した平行管により円筒状気密面を形成している。一般にこのような管の端部は円形マニホルドにより互いに結合されて、平行管内へまたは管外へ流れる流体の共通通路を形成している。」(4欄38行?5欄5行)

(e)実施例として、第1図及び第2図とともに、以下のように記載されている。
第1図:

第2図:

「〔実施例〕
以下図面に基づいて本考案の実施例について説明する。
第1図及び第2図は本考案の冷却器である。この冷却器は、上部に軸方向に設けられた入口12を有する外殻11を含んでいる。冷却器は、さらに内側ウオーターウオール15を有し、これは外殻11のまん中の空間を流れ落ちる固形物を含む合成ガスとの輻射熱交換を行なう。
この「ウオーターウオール」とは、この場合、気密壁を形成する接続フイン16を備えた複数の平行管15から成る周知の構造を意味している。
ウオーターウオール15の底部と上部とには、それぞれ一対のマニホルド19,20が設けられている。この一般的な構造は、ウオーターウオール15の管内の流体、たとえば水を循環させて水流を作るもので、輻射形熱交換ボイラと呼ばれている。
さらに、内側ウオーターウオール15と外殻11に同心的に外側ウオーターウオール23が設けられ、2つのウオーターウオール15,23間に環状部分24を形成している。
また、外側ウオーターウオール23の上部及び底部にそれぞれ、マニホルド27,28が設けられている。これらマニホルドは、熱伝達を行なう管23内の流体を循環する通路となる。内側ウオーターウオール15と同様に、外側ウオーターウオール23は、これら管を結合するフイン31を有し、気密面を作つている。外側ウオーターウオール23の上部は、円錐台状部分34を有している。内側ウオーターウオール15の上部マニホルド19の上部と、外側ウオーターウオール23の円錐台状部分34の下面とを結合する接続素子35により、環状部分の上端部は閉じている。
・・・・・・・・
環状部分24の上部近くには、環状部分に延びた出口導管47が設けられている。これは外殻11を貫通し、ガス流通路の両部分により冷却された合成ガスの出口となつている。また、出口47の内側端部の周囲には、環状部分24の気密保全を行なう気密結合として働く小形マニホルド48が設けられている。」(5欄6行?6欄23行)

(f)「本考案の廃熱ボイラ兼冷却器は、図示のような2つの通路ではなくさらに多く通路を設けてもよい。また、冷却器内の適当な位置、たとえば環状部分24の下端近くにさらに別の熱伝達管(図示せず)を設けてもよい。」(6欄41行?7欄1行)

イ.引用刊行物2の記載事項
原査定の拒絶理由において、引用文献8として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-36862号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(g)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 石炭ガス化炉の下方に設置した中空状の圧力容器と、該圧力容器内に収納した筒状のクーラ本体と、前記石炭ガス化炉から前記筒状のクーラ本体に包囲された空間を通って下降して来た石炭ガス化ガスをクーラ本体の下部から圧力容器外へ送出す石炭ガス化ガス出口管と、前記空間内に収納した水冷管壁パネルを設けたことを特徴とする粗ガスクーラ。
【請求項2】 水冷管壁パネルを複数とした請求項1に記載の粗ガスクーラ。」

(h)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、石炭ガス化複合発電設備の石炭ガス化炉で生成された粗ガスを冷却するための粗ガスクーラに関するものである。」

(i)従来の技術として、図6?9とともに、以下のように記載されている。
「【0002】【従来の技術】近年、熱効率を向上させるために、石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスによりガスタービンを駆動して発電を行うと共に石炭ガス化ガスにより加熱されて生成した蒸気により蒸気タービンを駆動して発電を行う石炭ガス化複合発電設備が提案されている。
【0003】而して、上記石炭ガス化複合発電設備においては、蒸気の生成は粗ガスクーラで行われており、従来の粗ガスクーラの一例は、図6?図9に示されている。
【0004】図中、1は石炭ガス化炉であり、該石炭ガス化炉1は内部に炉室2を有するガス化炉本体3とガス化炉本体3の上部に設けられたガス化原料投入口4とガス化炉本体3の下部に設けられた石炭ガス化ガス送出流路5とを備え、ガス化原料投入口4からガス化炉本体3の炉室2へ投入された石炭及び水のスラリー6と酸素若しくは空気7を一緒にし、これにより発生した石炭ガス化ガス8を石炭ガス化ガス送出流路5から下方へ送出し得るようになっている。
【0005】9は石炭ガス化炉1の直下に設置された粗ガスクーラであり、該粗ガスクーラ9は、内部に空間10を有する圧力容器状に形成されると共に下端にスラグ30排出用のバルブ11が設置された円筒状の圧力容器12と、圧力容器12内に収納されたクーラ本体13を備えている。
【0006】クーラ本体13は、縦方向に延びる複数の蒸発管14を略円筒状に配設すると共に隣り合う蒸発管14同士をフィン15により接続して形成した円筒状部16(図8参照)と、蒸発管14の下端部を円筒状部16の径方向へ絞って形成され且つ円筒状部16の下部に連なる断面鼓状の絞り部17と、蒸発管14の上端部を円筒状部16の径方向へ絞って形成され且つ円筒状部16の上部に連なる断面鼓状の絞り部18により形成されている。而して絞り部18においては、隣り合う蒸発管14,14同士を接続するよう、フィン15と一体的に接続されたフィン19が設けられているが(図9参照)、絞り部17の下半分においては、隣り合う蒸発管14,14間には、フィンが接続されず、石炭ガス化ガス8が流通し得るよう隙間20が形成されている(図7参照)。
・・・・・
【0009】又、クーラ本体13は出口側ヘッダ24を介して圧力容器12の天井部から吊下げ、支持されている。」

(j)「【0016】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の粗ガスクーラ9においては、石炭ガス化ガス8を石炭ガス化ガス出口管29で700?900℃まで下降させようとすると、クーラ本体13の受熱面積を広くしなければならず、従って、クーラ本体13により包囲された空間28が大きくなり、延いては粗ガスクーラ9全体が大型化し、しかもプラントのコストアップを招来する、等の問題があった。
【0017】本発明は、クーラ本体で包囲された放射伝熱ゾーンとなる空間の有効利用を図って粗ガスクーラを小型化すると共に石炭ガス化プラントのコストを低減させることを目的としてなしたものである。」

(k)発明の実施の形態として、図1?5とともに、以下のように記載されている。
図1:

図2:

図3:

図4:

図5:

「【0021】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
【0022】図1?図5は本発明の実施の形態の一例を示し、図中、図6?図9に示すものと同一のものには同一の符号が付してある。
【0023】而して本実施の形態例においては、クーラ本体13の絞り部18及び円筒状部16並に絞り部17により形成される空間28内に、複数の水冷管壁パネル31を、空間28の円周方向へ所要のピッチで配設している。
【0024】各水冷管壁パネル31は、クーラ本体13の円筒状部16の径方向へ所要の間隔で配設された、上下方向へ延在する複数の水冷管32を備えており、隣り合う水冷管32同士は上下方向へ所要の間隔で、振れ止め金具(図示せず)により連結されている。
【0025】各水冷管壁パネル31は下端において、シール筒25の径方向外方へ向けて水平に曲折し、絞り部17における隣り合う蒸発管14,14間の隙間20の1箇所を挿通し、シール筒25を貫通して圧力容器12内の空間10内まで延び、その端部には上下方向へ延びる縦向きの入口側ヘッダ33が接続されている。又入口側ヘッダ33には、給水34を供給するための給水管35が接続されている(図1、図2参照)。
【0026】各水冷管壁パネル31は、上端において円筒状部16の径方向外方へ斜め上方へ向けて曲折し、絞り部18におけるフィン19を貫通して圧力容器12内の空間10上部まで延び、その上端部には、斜め上下方向へ延びる出口側ヘッダ36が接続されている。又出口側ヘッダ36には、水冷管32内で発生した蒸気を外部へ取出し得るよう、蒸気取出し管(図示せず)が接続されている。
【0027】次に本発明の作動について説明する。
【0028】石炭ガス化炉1で生成された約1400?1500℃の温度の石炭ガス化ガス8は、スラグ30と共に石炭ガス化ガス送出流路5から圧力容器12へ導入され、クーラ本体13内の空間28内を水冷管壁パネル31により分割されて下降する。この際、石炭ガス化ガス8は、放射伝熱によりクーラ本体13の蒸発管14内を上昇する給水22を加熱して蒸気を生成すると共に水冷管壁パネル31の水冷管32内を上昇する給水34を加熱して蒸気を生成する。而して、蒸発管14内で生成された蒸気は出口側ヘッダ24から外部送給され、水冷管32内で生成された蒸気は出口側ヘッダ36から外部へ送給される。
【0029】空間28内を絞り部17まで下降した石炭ガス化ガス8は隙間20を通り、石炭ガス化ガス出口管29へ送出される。」

(l)「【0030】本発明の実施の形態においては、クーラ本体13の絞り部17及び円筒状部16並に絞り部18内の放射伝熱ゾーンとして機能する空間28内に水冷管壁パネル31を収納しているため、空間28の有効利用を図ることができる。従って、粗ガスクーラ9の圧力容器12の水平断面積を小さくすると共に圧力容器12の高さを低くすることができ、その結果、粗ガスクーラ9の小型化を図ることができ、又石炭ガス化プラントのコストを低減させることができる。」

(m)【0032】【発明の効果】本発明の粗ガスクーラによれば、請求項1、2の何れにおいてもクーラ本体により包囲される空間を放射伝熱ゾーンとして有効利用できるため、圧力容器の水平断面積を小さくすることができると共に圧力容器の高さを低くすることができ、従って粗ガスクーラの小型化を図ることができ、又コストの低減を図ることができる、等種々の優れた効果を奏し得る。」

(2-3)当審の判断

ア.引用発明
上記引用刊行物1の摘記事項(a)によれば、引用刊行物1には、以下の事項が記載されていると認められる。
「合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器であって:
固形物を伴った合成ガス用入口を上部に有する外殻と;
冷却器のほぼ全長にわたって延びていて上記合成ガスから内部の水へ輻射熱交換を行う気密の内側ウオーターウオールと;
上記外殻内に設けられて上記内側ウオーターウオールとの間に上記全長に延びる環状部分を形成する外側ウオーターウオールと;
上記上部に設けられ上記環状部分から合成ガスを放出する出口と;
を備えた、合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器。」(以下、「引用発明」という。)

イ.本願補正発明と引用発明との対比
ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における合成ガスは、上記摘記事項(b)、(c)のとおり、粉末石炭等から生成されるものであって、一般的なガス化処理によるものと解されるから、引用発明における「合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器」は、本願補正発明における「ガス化処理によって生成された合成ガスから熱を引き出すための合成ガス冷却器」に相当するものである。また、引用発明におけるウオーターウオールは、上記摘記事項(d)、(e)によると、熱交換を行う流体を保持する平行管を備えた円筒状気密面を構成するものであり、第1図、第2図からみて、それらは管状の構造と認められるから、引用発明の「内側ウオーターウオール」及び「外側ウオーターウオール」はそれぞれ、本願補正発明における「流体冷却式管から作製された封入壁で構成されている流体冷却式内側送気管」及び「流体冷却式外側送気管」に相当するものといえる。
さらに、引用発明は、「固形物を伴った合成ガス用入口を上部に有する外殻」と「上部に設けられ環状部分から合成ガスを放出する出口」を具備するものであるところ、この合成ガスは、「外殻」(本願補正発明における「シェル」に相当)に設けられた「合成ガス用入口」(本願補正発明における「吸入口」に相当)から冷却器内に入り、最終的には、内側ウオーターウオールと外側ウオーターウオール間に形成された環状部分から「出口」を介して、外殻から外部に放出(排出)されるのであるから、当該外殻が、合成ガスを排出するための排出口を有していることはいうまでもない。加えて、引用発明における上記「出口」は、環状部分から、外殻の当該排出口を経て、合成ガスを外部に排出する役割を担うものであり、本願補正発明における「合成ガスを外側送気管から排出口に伝達するための手段」に相当するものと解するのが妥当である(なお、上記摘記事項(e)には、引用発明を具現化した実施例が示されているところ、第1図に図示された出口(導管)47は、外殻11を貫通して設けられたものであるから、この「外殻11の貫通孔」、及び、「出口(導管)47」は、それぞれ、本願補正発明における「排出口」、及び、「合成ガスを外側送気管から排出口に伝達するための手段」に対応するものとして確認することができる。)。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「ガス化処理によって生成された合成ガスから熱を引き出すための合成ガス冷却器であって:
吸入口及び排出口を有するシェル;
合成ガスを受容するために前記シェル内に収容され、流体冷却式管から作製された封入壁で構成されている流体冷却式内側送気管;
前記内側送気管から合成ガスを受容するために前記シェル内に収容され、前記内側送気管を実質的に囲んでいる流体冷却式外側送気管;及び、
合成ガスを前記外側送気管から排出口に伝達するための手段を備えた、合成ガス冷却器。」
である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。

相違点:
本願補正発明は、合成ガスを冷却するために、内側送気管内に配置された放射性熱伝導表面を備え、該放射性熱伝導表面が、それの表面の大部分が吸入される合成ガスに露出されるように合成ガス冷却器の内部に吊下げられた流体冷却式袖壁の表面から構成されており、該袖壁表面が互いに隣接した複数の管の平らな列から構成されているのに対して、引用発明は、このような放射性熱伝導表面を具備していない点。

ウ.相違点の検討
上記相違点について検討する。
引用刊行物2には、石炭ガス化複合発電設備の石炭ガス化炉で生成された粗ガスを冷却するための粗ガスクーラが開示されており(上記摘記事項(h)参照)、当該粗ガスクーラは、図6?9に示された従来のクーラが有する課題を解決すべく(上記摘記事項(i)、(j)参照)、クーラ本体に包囲された空間内に収納した複数の水冷管壁パネルを具備することを特徴とするものである(上記摘記事項(g)参照)。
具体的には、図1?5に示されるとおり、各水冷管壁パネル31は、クーラ本体13の円筒状部16の径方向へ所要の間隔で配設された、上下方向へ延在する複数の水冷管32から構成され、その上端において円筒状部16の径方向外方へ斜め上方へ向けて曲折し、絞り部18におけるフィン19を貫通して圧力容器12内の空間10上部まで延び、その上端部には、斜め上下方向へ延びる出口側ヘッダ36が接続されているとともに(上記摘記事項(k)参照)、図3より、当該複数の水冷管32は、平らな列から構成されていることが理解できる。
そして、石炭ガス化ガス8は、クーラ本体13内の空間28内を水冷管壁パネル31により分割されて下降するのであるから(上記摘記事項(k)、特に段落【0028】参照)、当該水冷管壁パネルは、石炭ガス化ガスに対し露出した状態で、上下に吊り下げられているものと認められる。
ここで、引用刊行物2に記載された「粗ガス」は、石炭のガス化処理によって生成したガスであって、本願補正発明における「合成ガス」に相当し、同刊行物に記載された「粗ガスクーラ」は、本願補正発明における「合成ガス冷却器」に相当するものであるから、当該引用刊行物2に記載された「水冷管壁パネル」は、本願補正発明における「放射性熱伝導表面」に相当するものであって、かつ、「それの表面の大部分が吸入される粗ガス(合成ガス)に露出されるように、粗ガスクーラ(合成ガス冷却器)の内部に吊下げられた流体冷却式袖壁の表面から構成されており、該袖壁表面が互いに隣接した複数の管の平らな列から構成されている」ものということができる。
そして、引用発明と、引用刊行物2記載の粗ガスクーラとは、合成ガスの冷却装置という同一の技術分野に属するものであるとともに、当該技術分野において、該冷却装置を大型化することなく、冷却効率(冷却能力)を向上させることは自明な課題であるというべきところ(要すれば、特公平2-53713号公報(原査定における引用文献4)の特に2欄21行?3欄17行、特開平10-298560号公報(原査定における引用文献7)の特に段落【0012】?【0016】、特開2004-231741号公報(原査定における引用文献9)の特に段落【0006】、【0007】などを参照されたい。)、このような課題は、引用発明においても当然に内在するものと解するのが相当である。加えて、引用刊行物1には、冷却器内の適当な位置にさらに別の熱伝達管を設けてもよい旨記載されており(上記摘記事項(f)参照)、追加の熱伝達管の設置を排除するものではないし、引用刊行物2記載の「水冷管壁パネル」は、まさに上述した自明な課題への一つの対処法を示したものということができる(上記摘記事項(j)、(l)、(m)参照)。
このような点を考え合わせると、引用発明において、合成ガスの廃熱ボイラ兼冷却器を大型化することなく、冷却効率(冷却能力)を向上させるため、引用刊行物2に記載された「水冷管壁パネル」を採用し、本願補正発明とすることは当業者が容易に想到し得るものと認められる。
そして、本願補正発明は、当該相違点に係る技術的事項を具備することにより、明細書の段落【0020】などに記載される「内側/外側送気管と袖壁との組合せの設計思想は放射性合成ガス冷却器の全体の高さを大幅に減少させることによってコストを大幅に下げることができる。」といった作用効果を奏するものであるが、この作用効果についても、上記引用刊行物1、2の記載事項や当該技術分野における自明な課題に照らすと、当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明

平成25年2月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?18に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1?18にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ガス化処理によって生成された合成ガスから熱を引き出すための合成ガス冷却器であって:
吸入口及び排出口を有するシェル;
合成ガスを受容するために前記シェル内に収容された流体冷却式内側送気管;
前記内側送気管から合成ガスを受容するために前記シェル内に収容された流体冷却式外側送気管;
合成ガスを冷却するために前記内側送気管内に配置された放射性熱伝導表面;及び、
合成ガスを前記外側送気管から排出口に伝達するための手段を備える合成ガス冷却器。」

4.原査定の拒絶理由

原査定の拒絶の理由は、「平成24年2月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由」、すなわち、本願発明は、引用文献1?9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けるこことができない、というものである。
引用文献5:実公平4-35681号公報
引用文献8:特開平10-36862号公報
引用文献1?4、6、7、9は省略

5.引用刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献5、引用文献8はそれぞれ、上記「2.(2-2)」における引用刊行物1、引用刊行物2であり、その記載事項は、上記「2.(2-2)」に記載したとおりである。

6.当審の判断

(1)引用発明
引用刊行物1の記載事項から認定し得る引用発明についても、上記「2.(2-3)ア.」に記載したとおりである。

(2)対比・検討
上記「2.(1)」にて説示したとおり、本願補正発明(上述の本件補正後の発明)は、本願発明(上述の本件補正前の発明)に対して、「流体冷却式内側送気管」、「流体冷却式外側送気管」、及び「放射性熱伝導表面」に関する限定を付与したものであるから、逆に、本願発明は、本願補正発明から、上記限定事項を省いたものであるということができる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(2-3)」において検討したとおり、引用発明及び引用刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち、本願発明と引用発明とは、「合成ガスを冷却するために内側送気管内に配置された放射性熱伝導表面」を具備するか否かにおいて相違し、その余の点で一致するところ、本願発明の当該相違点に係る技術的事項は、上記「2.(2-3)ウ.相違点の検討」の項における説示と同様、引用刊行物2の記載事項に照らすと、当業者が容易に想到し得るものと認められる。そして、本願発明が当該相違点に係る技術的事項を具備することにより奏される作用効果についても、当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものではない。

7.審判請求人の主張

審判請求人は、平成25年11月5日付の回答書において補正案を提示し、特に「前記第1及び第2の封入壁は、互いに独立しており、前記合成ガス冷却器から独立して持ち上げられ及び除去されるように、冷却流がそれぞれを通って循環するための独立した流体循環路を備え」る構成を請求項1に追加することにより、請求項1に係る発明は特許性を具備し得る旨主張するが、このような構成は、本願明細書において引用されている米国特許第4768470号明細書(パテントファミリーである特開昭63-25490号公報参照)のFig.1?3にみられるように既に周知の構造にすぎず、この点に特許性は認められないから、当該請求人の主張を採用することはできない。

8.むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-20 
結審通知日 2014-01-07 
審決日 2014-01-20 
出願番号 特願2006-235526(P2006-235526)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 日比野 隆治
新居田 知生
発明の名称 合成ガスを収容及び冷却するための蒸気発生装置  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
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