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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H01L
審判 一部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H01L
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01L
審判 一部無効 判示事項別分類コード:857  H01L
管理番号 1288892
審判番号 無効2012-800119  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-03 
確定日 2013-07-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3734447号発明「半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件の主な手続を、整理して以下に示す。
(1)本件特許第3734447号の請求項1ないし10に係る発明についての出願は、平成14年1月18日に出願され、平成17年10月28日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
(2)これに対し、請求人は、平成24年8月6日(受付)に本件特許無効審判を請求し、本件特許の請求項1及び3?9に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めた。
(3)その後、被請求人は平成24年10月26日付けで答弁書を提出するとともに、訂正請求書を提出し、同年10月26日付けの当該訂正請求書を同年12月7日付けで提出した手続補正書により補正して、訂正を求めた。

2 当事者の主張
(1)請求人の主張の概要
審判請求書の記載を総合すると、請求人の主張は、本件特許の請求項1、3、4及び6?8に係る発明は、本件の特許出願前に外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項5及び9に係る発明は、本件の特許出願前に当業者が甲第1号証に記載された発明及び当該分野における技術常識に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。したがって、本件特許は、無効にすべきであるというものと認める。

【証拠方法】
甲第1号証:国際公開第01/088972号パンフレット

(2)被請求人の主張の概要
平成24年10月26日付け審判事件答弁書の記載を総合すると、被請求人の主張は、概略、次のとおりと認める。
「請求人が無効理由を主張する特許第3734447号の請求項に係る発明、すなわち請求項1及び当該請求項1に従属する請求項3?8、並びに請求項9に係る発明は、この答弁書と同日付けで提出した訂正請求書により、すべて削除したので、もはや請求人が主張する無効理由は解消されたことは明らかである。」

3 平成24年10月26日付けの訂正請求の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成24年12月7日付けで提出した手続補正書により補正された同年10月26日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件の明細書を本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり請求項ごとまたは一群の請求項ごとに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。

ア 請求項1ないし8からなる一群の請求項に係る訂正
(ア)訂正事項1
請求項1を削除する。

(イ)訂正事項2
請求項2について、
「前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。」を
「半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行う方法であって、
前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。」と訂正する。

(ウ)訂正事項3
請求項3、4及び6ないし8について、それぞれの請求項が引用する請求項を訂正する。

(エ)訂正事項4
願書に添付された明細書の段落【0017】に記載された
「【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示す構成で実現可能な半導体装置の製造方法が提供される。本発明の半導体装置の製造方法は、半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行うことを特徴とする。」を
「【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示す構成で実現可能な半導体装置の製造方法が提供される。本発明の半導体装置の製造方法は、半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行う方法であって、前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする。」と訂正する。

イ 請求項9及び10に係る訂正
(ア)訂正事項5
請求項9を削除する。

(イ)訂正事項6
請求項10について、
「前記処理チャンバには、金属酸化物に紫外線を照射するための紫外線ランプが、前記処理台に対向配置されていることを特徴とする請求項9記載の半導体装置の製造装置。」を
「半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造装置において、
前記半導体装置が載置される処理台と、前記処理台の下部に配置されて前記半導体装置を加熱するヒータと、を有する処理チャンバと、
前記金属酸化物を還元するカルボン酸が貯蔵される貯蔵槽と、
前記処理チャンバと前記貯蔵槽との間に設けられた処理ガス供給用配管と、
前記処理ガス供給用配管の途中に設けられ、前記貯蔵槽から前記処理チャンバへ前記処理ガス供給用配管を流れるカルボン酸を気化する気化器と、
を有し、
前記処理チャンバには、金属酸化物に紫外線を照射するための紫外線ランプが、前記処理台に対向配置されていることを特徴とする半導体装置の製造装置。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否について
ア 訂正の目的の適否について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(イ)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改め、訂正後の請求項2としたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。

(ウ)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項3、4及び6ないし8がそれぞれ請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用しないものとし、それぞれ訂正後の請求項3、4及び6ないし8としたものである。
したがって、訂正事項3は、訂正事項1により請求項1が削除されたこととの整合を図るためのものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(エ)訂正事項4について
訂正事項4は、願書に添付された明細書の段落【0017】の記載と、訂正事項2により訂正された請求項2の記載との整合を図るためのものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(オ)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(カ)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項10が請求項9の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項9を引用しないものとし、独立形式請求項へ改め、訂正後の請求項10としたものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項1及び訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1及び訂正事項5は、いずれも特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(イ)訂正事項2及び訂正事項6は、それぞれ請求項2及び請求項10について、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、この訂正の前後で当該請求項に係る発明は何ら変更されるものではなく、したがって、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2及び訂正事項6は、いずれも特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(ウ)訂正事項3は、訂正事項1により請求項1が削除されたこととの整合を図るためのものであり、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(エ)訂正事項4は、訂正事項2により訂正された請求項2の記載との整合を図るためのものであり、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(オ)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

4 本件特許無効理由についての当審の判断
(1)本件発明
上記のとおり、本件訂正請求は適法であるから、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを認める。
よって、本件特許の請求項3ないし8に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3ないし8に記載されている事項によって特定される発明であるところ、そのうちの請求項3に係る発明は、本件訂正後の請求項3に記載されている事項により特定されるものであり、請求項3は他の請求項を引用する形式で記載されているので、独立請求項の形式に書き直すと、請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)は以下のとおりである。

「半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行う方法であって、
前記金属は銅であり、前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
なお、請求項3に記載された事項を請求項2に付加することによって、請求項2の記載が変更された箇所を明示するために、当合議体によって、下線を付した。

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の第1ページ第5?7行、第5ページ第8?10行、第14?17行、第19?20行及びTable1、第6ページ第14行?第7ページ第3行、第12ページ第9?27行、第13ページ第14行?第14ページ第27行、第16ページ第1?11行、第18ページ第7?15行、第19?25行、第19ページ第8?15行、第24ページ第26行?第25ページ第10行、第31ページのEXAMPLE7などからみて、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「集積回路の金属配線上の金属酸化物を金属単体に還元する集積回路の製造方法において、
金属銅上に酸化銅被膜を有するシリコン基板をCVD反応器の反応チャンバ内に装填し、反応チャンバを加熱し、最も単純なカルボン酸である蟻酸の蒸気を、窒素ガスと混合して、反応チャンバ内に導入し、基板と接触させて、酸化銅を金属銅に還元し、蟻酸を二酸化炭素と水に酸化させる集積回路の製造方法。」

(3)本件発明3と甲1発明との対比・判断
ア 甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点>
本件発明3は、「前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行う」のに対し、甲1発明の金属酸化物の還元は、その点について特定されていない点。

イ 甲1発明との相違点の判断
上記相違点について検討すると、甲第1号証には、金属酸化物の還元を紫外線を照射しながら行うことに関して記載されておらず、かつ、示唆もされていない。
したがって、本件発明3は、甲1発明であるとはいえない。

(4)本件の請求項4ないし8に係る発明と甲1発明との対比・判断
本件の請求項4及び6ないし8は、いずれも直接又は間接的に請求項2を引用しており、本件の請求項4及び6ないし8に係る発明は、本件発明3の構成要件である「前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行う」を備える発明である。
したがって、これらの発明と甲1発明とは、上記「(3)ア 甲1発明との対比」で示した<相違点>の点で相違するから、これらの発明も、甲1発明であるとはいえない。

また、本件の請求項5は、間接的に請求項2を引用しており、本件の請求項5に係る発明は、本件発明3の構成要件である「前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行う」を備える発明である。
他方、金属酸化物の還元を紫外線を照射しながら行うことは、甲第1号証に記載されておらず、また、技術常識あるいは周知技術といえる証拠もないから、本件の請求項5に係る発明は、本件の特許出願前に当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件特許無効理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求後の請求項3、4及び6ないし8に係る発明は、本件の特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、本件訂正後の請求項5に係る発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件の請求項1及び9に係る発明は、いずれも削除されているから、本件の請求項1及び9に係る発明についての特許を無効とすべき理由は解消している。

5 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は適法であり、かつ、本件訂正請求後の請求項3、4及び6ないし8に係る発明は、本件の特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、本件訂正後の請求項5に係る発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件特許の請求項3ないし8に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
また、他に、本件特許の請求項3ないし8に係る発明についての特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行う方法であって、
前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属は銅であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸のうちいずれか1種であるであることを特徴とする請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記カルボン酸は、その組成に、塩素原子またはフッ素原子を1または2以上含んでいることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記カルボン酸は、不活性ガスと混合して、気体状態で前記金属酸化物に接触させるようにしたことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元に続いて、還元後の表面に絶縁物を被覆することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元に続いて、還元後の表面に導体を被覆することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造装置において、
前記半導体装置が載置される処理台と、前記処理台の下部に配置されて前記半導体装置を加熱するヒータと、を有する処理チャンバと、
前記金属酸化物を還元するカルボン酸が貯蔵される貯蔵槽と、
前記処理チャンバと前記貯蔵槽との間に設けられた処理ガス供給用配管と、
前記処理ガス供給用配管の途中に設けられ、前記貯蔵槽から前記処理チャンバへ前記処理ガス供給用配管を流れるカルボン酸を気化する気化器と、
を有し、
前記処理チャンバには、金属酸化物に紫外線を照射するための紫外線ランプが、前記処理台に対向配置されていることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関し、特に半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の電極材料、配線材料としては、アルミニウムが広く実用されてきた。しかし、近年の半導体装置の微細化や処理の高速化の要求に伴い、電極や配線の形成をアルミニウムで対応することは困難になってきている。そのため、アルミニウムの次世代材料として、エレクトロマイグレーションに強く、比抵抗の小さな銅を利用する試みが進められている。
【0003】
電極材料や配線材料に銅を用いる場合、銅がエッチングの困難な材料であることから、電極や配線はダマシン法により形成される。この場合は、形成される電極や配線のアスペクト比を高くし、半導体装置の微細化、高速化を実現することが可能になる。
【0004】
ところで、このような電極材料や配線材料として用いられる銅は、酸化されやすい性質を有しており、半導体装置の製造過程においては、電極や配線として形成した銅の表面に、酸化銅(CuO)や亜酸化銅(Cu_(2)O)といった銅酸化物が生成する場合がある。この銅酸化物は、電気抵抗の上昇など、半導体装置の特性低下を招く。そのため、電極形成後あるいは配線形成後に、生成してしまった銅酸化物を除去するための清浄化処理が施される。
【0005】
電極や配線の清浄化処理としては、気相または液相で行う方法が検討あるいは実用化されてきている。半導体装置の製造工程において、このような清浄化処理は、銅からなる下層配線を形成した後の化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing,CMP)工程の後処理として行われる。あるいは下層配線まで通じるように絶縁層に形成した埋め込み電極用のビアホールや、その絶縁層に形成した配線用の溝を銅で埋め込んだ後のCMP工程の後処理としても行われる。また、ビアホールや溝に対する物理気相成長(Physical Vapor Deposition,PVD)工程または化学気相成長(Chemical Vapor Deposition,CVD)工程の前処理として行われる場合もある。
【0006】
清浄化処理がCMP工程の後処理として行われる場合、通常、ブラシスクラバーによるパーティクル除去と、絶縁層上に生成した銅酸化物およびビアホールや溝に埋め込まれた銅に生成した銅酸化物の薬液による除去とが行われる。その際用いられる薬液としては、銅酸化物は除去するが金属銅に対してはエッチング作用の少ないものが選択される。例えば、クエン酸(C_(3)H_(4)(OH)(COOH)_(3))やシュウ酸((COOH)_(2))などのカルボン酸、あるいはフッ化水素(HF)などがこのような薬液として用いられる。
【0007】
また、清浄化処理がPVD工程の前処理として行われる場合には、下層配線に通じるビアホールに、PVDによってバリアメタルを堆積する前に行われる。そして、このバリアメタルが堆積されたビアホールに、PVDにより銅シードを堆積し、さらにその上にメッキにより銅を埋め込み、下層配線に接続した埋め込み電極が形成される。すなわち、この段階での清浄化処理により、バリアメタルを介する下層配線と埋め込み電極内の銅との間の電気的信頼性が高められることになる。
【0008】
一方、清浄化処理がCVD工程の前処理として行なわれる場合には、埋め込み電極用のビアホールに銅を埋め込んだ後のCMP工程の終了後に、膜厚数百nmの窒化シリコン(SiN)膜などをCVDによって形成する前に行われる。この窒化シリコン膜の形成により、下層配線や埋め込み電極からの絶縁層への銅の拡散とその銅の酸化が防止される。
【0009】
このように清浄化処理がPVD工程またはCVD工程の前処理として行われる場合、その清浄化処理は、アルゴンのスパッタによって行われることが多い。
また、特開平2001-271192号公報では、銅酸化物に水蒸気あるいは酢酸を作用させることにより、その銅酸化物を除去する方法が提案されている。また、特開平2001-254178号公報では、CVD装置などの処理チャンバに付着した金属薄膜に、カルボン酸またはその誘導体を含むクリーニングガスを作用させることにより、金属を錯体化して除去する方法が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の清浄化処理には、以下に示すような問題点があった。
まず、CMP工程の後処理として行われる清浄化処理では、パーティクル除去および薬液による除去が行われ、その後、付着している薬液除去のため、純水洗浄が行われる。しかし、この純水洗浄において、薬液が次第に除去されることによって洗浄水が酸性から中性に変化してpH値が高くなっていくと、埋め込み電極や配線を形成している銅の浸食が起こるという問題点があった。
【0011】
このとき、薬液濃度が高くpH値が低い場合には、電極や配線の露出面における浸食が若干進行する程度である。しかし、薬液濃度が低くpH値が高い場合には、電極や配線を形成している銅に局所的な浸食が起こって表面に凹凸が生じ、電極や配線の露出面の平坦性を保つことが困難であった。
【0012】
また、PVD工程の前処理として行われる清浄化処理では、アルゴンのスパッタによる物理的な除去方法であるため、薬液を用いることなく気相で処理することができる。しかし、下層配線に通じるように形成されたビアホールの底に露出している下層配線に、一旦除去した汚染物質が再付着する場合がある。また、ビアホールのエッジ部分がスパッタによって削られてしまい、微細な埋め込み電極形成ができなくなるという問題点があった。
【0013】
一方、CVD工程の前処理として行われる清浄化処理では、CMP工程からCVD工程への移行の際に、各処理装置間での移動が必要になるため、配線を形成している銅が大気中にさらされ、銅が酸化されてしまう可能性が高くなる。
【0014】
そのため、この場合には、CVDによる窒化シリコン膜の形成前に、CVD装置内で、前処理として水素(H_(2))やアンモニア(NH_(3))などの還元性ガスによるプラズマ処理が行なわれる。しかし、このプラズマ処理は、温度400℃程度という高温環境下での処理が必要となるため、露出している銅が熱によって再結晶化され、銅表面に凹凸が生じることがある。この場合、その後に窒化シリコンなどの絶縁材料を堆積する際に、局所的に絶縁材料の被覆が悪化するという問題が起きる。
【0015】
また、気体状態の酢酸を用いた従来の清浄化処理では、薬液を使用せず、気相反応で銅酸化物を除去することは可能である。しかし、処理後に銅表面に残留する炭素質などの不純物を除去するために、さらに水蒸気で処理を行う必要があり、処理工程が複雑になる。
【0016】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、半導体装置の電極や配線を形成している金属に生成した金属酸化物を均一かつ効率的に還元して清浄化するための半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示す構成で実現可能な半導体装置の製造方法が提供される。本発明の半導体装置の製造方法は、半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行う方法であって、前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする。
【0018】
このような半導体装置の製造方法によれば、電極や配線を形成している、例えば銅などの金属に、金属酸化物が生成した被処理物2を、処理チャンバ3内に配置し、ヒータ8によって所定の温度に加熱した後、この処理チャンバ3内に、貯蔵槽15に貯蔵されているカルボン酸を、処理ガス供給用配管16を介して導入することで、被処理物2に生成している金属酸化物を金属に還元する。その際、処理チャンバ3に導入されるカルボン酸は、処理チャンバ3への導入前に、気化器18によって気化され、加熱されている被処理物2の金属酸化物は、完全に気体状態となったカルボン酸によって還元される。このとき用いるカルボン酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが用いられる。この気相清浄化処理では、金属酸化物が金属に還元されるとともに、副生成物として、二酸化炭素および水が共に気体状態で生成するので、金属表面への不純物の残留が回避される。
【0019】
また、本発明では、紫外線を照射しながら金属酸化物を還元する。この紫外線照射により、金属酸化物のカルボン酸による還元が促進され、気相清浄化処理における還元温度を低くすることができるようになる。また、カルボン酸として、その組成に、塩素原子またはフッ素原子を1または2以上含んでいるものを用いることによっても、還元温度を低くすることが可能になる。これにより、被処理物2が、その金属表面に凹凸が生じてしまうような高温下にさらされるといった状況が回避されるようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の半導体装置の製造方法における気相清浄化処理について説明する。本発明では、半導体装置の製造過程において、電極や配線を形成している銅に生成した酸化銅あるいは亜酸化銅といった銅酸化物を、気体状態のカルボン酸(RCOOH,R=H,C_(n)H_(2n+1),C_(n)H_(m)X_(2n-m+1)(n,mは自然数、X=F,Cl))を用いて還元する。
【0021】
カルボン酸は、銅酸化物に対して還元剤として作用し、銅酸化物を金属銅(Cu)に還元し、二酸化炭素(CO_(2))および水(H_(2)O)を生成する。例えば、カルボン酸としてギ酸(HCOOH,(メタン酸(methanoic acid))を用いた場合、酸化銅は反応式HCOOH+CuO→Cu+CO_(2)+H_(2)Oに基づいて、亜酸化銅は反応式HCOOH+Cu_(2)O→2Cu+CO_(2)+H_(2)Oに基づいて、それぞれ金属銅に還元される。
【0022】
ここで、ギ酸による酸化銅または亜酸化銅の還元反応における標準ギブズエネルギーは、上記反応式に基づいて生成するH_(2)Oが気体状態の場合には、それぞれ約-132kJ/mol、約-112kJ/molとなる。すなわち、この還元反応は、金属銅を生成する方向に進行し易く、この方向に反応が進行する還元温度で処理を行うことにより、半導体装置の製造過程で電極や配線に生成した酸化銅あるいは亜酸化銅を還元することができるようになる。
【0023】
また、電極や配線が形成される半導体基板である二酸化シリコン(SiO_(2))については、反応式HCOOH+SiO_(2)→Si+CO_(2)+H_(2)+O_(2)の標準ギブズエネルギーが、約+825kJ/molであるため、ギ酸による二酸化シリコンの還元が進行することはほとんどないものと考えられる。したがって、酸化銅あるいは亜酸化銅が選択的に還元される。
【0024】
還元剤として用いるカルボン酸は、上記のギ酸のほか、酢酸(CH_(3)COOH,エタン酸(ethanoic acid))、プロピオン酸(C_(2)H_(5)COOH,(プロパン酸(propanoic acid))、酪酸(C_(3)H_(7)COOH,ブタン酸(butanoic acid))などの比較的沸点の低いものを用いるのが好ましい。これにより、後述する還元反応条件における還元温度を下げることが可能となるので、高温下にさらされることによる銅表面の凹凸の発生を防止することができる。また、カルボン酸に含まれる炭素量が多くなると、反応で生成する二酸化炭素も増加するため、その分、銅表面や二酸化シリコン表面に炭素質が残留する可能性もあり、カルボン酸が含有する炭素量は少ない方が好ましい。なお、還元剤として用いるカルボン酸としては、ギ酸を用いる場合が、最も反応が速やかに進行する。
【0025】
また、還元温度を下げる目的で、構成元素にフッ素(F)または塩素(Cl)を少なくとも1元素含有するカルボン酸のうちの1種を用いることもできる。このような元素を含有するカルボン酸もまた、それが含有されていない場合のカルボン酸に比べて沸点が低いため、同様の効果を得ることができるようになる。例えば、前述したギ酸は、常温常圧条件下では液体状態であって、沸点は100.8℃であるが、塩素またはフッ素を含有する場合には、その沸点が100.8℃より低下する。このようにカルボン酸がフッ素または塩素をその成分に含んでいる場合には、フッ素または塩素は、還元反応でフッ化水素または塩化水素(HCl)として生成されることになる。
【0026】
次に、本実施の形態で用いる気相清浄化処理装置について説明する。図1は気相清浄化処理装置の概略図、図2は被処理物温度と処理ガス導入時期との関係を示す図である。
【0027】
気相清浄化処理装置1は、被処理物2に対して気相清浄化処理を行うための処理チャンバ3と、この処理チャンバ3に隣接する予備チャンバ4を有しており、両者は開閉可能なゲートバルブ5で隔てられている。この予備チャンバ4内には、被処理物2を搬送するためのアーム6が設けられており、予備チャンバ4から処理チャンバ3へ、あるいは処理チャンバ3から予備チャンバ4へと、被処理物2を搬送できるようになっている。気相清浄化処理を行う被処理物2は、はじめに予備チャンバ4に導入される。
【0028】
予備チャンバ4から処理チャンバ3内に搬入された被処理物2は、内部に設けられた石英ガラスからなる処理台7上に載置される。この処理台7の下部には、ヒータ8が設けられており、処理台7上に載置された被処理物2を加熱できるようになっている。
【0029】
また、処理チャンバ3には、カルボン酸を含む処理ガスを内部に導入するための処理ガス導入口9、処理チャンバ3内に不活性な窒素(N_(2))ガスを導入するための処理チャンバガス導入口10、および処理チャンバ3内のガスを排出するための処理チャンバガス排出口11が設けられている。これら処理ガス導入口9、処理チャンバガス導入口10および処理チャンバガス排出口11は、それぞれバルブ9a,10a,11aを備えている。ゲートバルブ5と共に、これらのバルブ9a,10a,11aがすべて閉じられたときは、処理チャンバ3は、密閉状態となる。
【0030】
予備チャンバ4には、被処理物2を外部から予備チャンバ4内に導入するための被処理物導入口12、予備チャンバ4内に窒素ガスを導入するための予備チャンバガス導入口13、および予備チャンバ4内のガスを排出するための予備チャンバガス排出口14が設けられている。これらのうち、予備チャンバガス導入口13および予備チャンバガス排出口14には、それぞれバルブ13a,14aが設けられている。ゲートバルブ5および被処理物導入口12と共に、これらのバルブ13a,14aが閉じられたときは、予備チャンバ4は、密閉状態となる。
【0031】
被処理物2に対する気相清浄化処理を行うための処理ガスに含有されるカルボン酸は、液体状態で貯蔵槽15に貯蔵される。この貯蔵槽15には、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)を導入することができるようになっている。この導入されるガスによって、貯蔵槽15内の液体状態のカルボン酸が、貯蔵槽15から処理チャンバ3へと通じる処理ガス供給用配管16へと排出される。
【0032】
カルボン酸は、貯蔵槽15から処理ガス供給用配管16へと排出されると、この処理ガス供給用配管16の途中に設けられているマスフローコントローラ17で流量調節されるようになっている。このマスフローコントローラ17の下流側には、不活性ガスが導入されるキャリアガス導入口18aおよびヒータを備える気化器18が設けられている。処理ガス供給用配管16を流れるカルボン酸は、この気化器18で完全に気化される。気化されたカルボン酸は、気化器18内で、キャリアガス導入口18aから導入されるキャリアガスと混合され、処理チャンバ3へと導入される。
【0033】
気化器18と処理チャンバ3との間の処理ガス供給用配管16は、その周囲を、リボンヒータや筒状ヒータなどのヒータによって加熱する。気化器18で完全に気化されたカルボン酸が、処理チャンバ3への導入前に処理ガス供給用配管16内で凝縮してしまうのを防ぐためである。
【0034】
上記構成の気相清浄化処理装置1は、清浄化処理前の初期状態では、処理チャンバ3については、バルブ9a,10aおよびゲートバルブ5が閉じられ、ターボ分子ポンプ(Turbo Molecular Pump,TMP)などの排気ポンプによって、処理チャンバ3内の圧力が10^(-6)Pa以下となるよう、排気されている。
【0035】
一方、予備チャンバ4については、常圧の状態で、被処理物導入口12およびバルブ13a,14aが閉じられた状態になっている。これより前に、この予備チャンバ4が、負圧の状態になっている場合には、バルブ13aを開け、予備チャンバガス導入口13から窒素を導入し、予備チャンバ4内を常圧の状態とする。
【0036】
このような気相清浄化処理装置1において、被処理物2の気相清浄化処理を行う場合には、まず、被処理物2を、被処理物導入口12から予備チャンバ4内に導入する。そして、被処理物導入口12を閉じ、バルブ14aを開けて、予備チャンバ4内を、圧力10^(-6)Pa以下となるまで排気する。
【0037】
そして、ゲートバルブ5を開け、アーム6で被処理物2を処理チャンバ3へと搬送し、この被処理物2を処理台7に載置する。その後、ゲートバルブ5およびバルブ11aを閉じて、処理チャンバ3を密閉し、被処理物2をヒータ8によって加熱する。このとき、被処理物2の温度は、図2(a)に示すように、設定温度まで上昇していく。そして、図2(b)に示すように、被処理物2が設定温度に到達した時点で、バルブ9aを開け、気化器18で気化されたカルボン酸を、キャリアガスと共に、処理ガス導入口9から処理チャンバ3内に導入する。処理ガスを処理チャンバ3内に導入し、処理チャンバ3内が設定圧力に到達した時点で、バルブ9aを閉じ、図2(b)に示したように、処理ガスの導入を停止する。被処理物2が設定温度に到達した時点から所定時間加熱を続け、この間、被処理物2の気相清浄化処理を行い、所定時間経過後は、図2(a)に示したように、加熱を終了し、被処理物2を放冷する。
【0038】
気相清浄化処理終了後は、バルブ11aを開けて、処理チャンバ3内を、再び圧力10^(-6)Pa以下まで排気する。次いで、ゲートバルブ5を開け、処理台7上に載置されている被処理物2を、アーム6によって予備チャンバ4へと搬送する。ここで、他の被処理物を続けて処理する場合には、これをアーム6によって処理チャンバ3内に搬送し、上記の処理を繰り返す。
【0039】
気相清浄化処理後の被処理物2を予備チャンバ4から取り出す場合には、予備チャンバ4内に、予備チャンバガス導入口13から窒素ガスを導入して復圧した後、被処理物導入口12を開けて、被処理物2を取り出す。
【0040】
なお、処理ガス供給用配管16に設けられているバルブ16aを閉じ、かつ、バルブ16bを開けた状態で、不活性ガスのみを流通し、ドレイン19aから排出すれば、マスフローコントローラ17内をクリーニングすることができる。
【0041】
また、バルブ9a,16bを閉じておき、バルブ16a,16cを開けた状態で、不活性ガスのみを流通し、ドレイン19bから排出すれば、気化器18内をクリーニングすることもできる。さらに、バルブ9aを閉じ、処理ガスを、処理チャンバ3に導入する前に、ドレイン19bから排出すれば、カルボン酸が完全に気化された状態の処理ガスの流量およびカルボン酸の含有量を定常状態にしておくことも可能になる。この場合は、気相清浄化処理を行うときには、バルブ9aを開けるとともに、バルブ16cを閉じる。これにより、より安定した気相清浄化処理を行うことができるようになる。
【0042】
処理チャンバ3に導入する処理ガスは、処理ガス導入後の気相清浄化処理時におけるカルボン酸の分圧が、カルボン酸の爆発限界濃度を考慮して、50Paから10000Paの範囲となるように設定する。また、導入する処理ガスは、水または酸素(O_(2))の含有量が1体積%以下としておく。この含有量が1体積%を超える場合には、競争反応によって、カルボン酸と銅酸化物の反応が進行しない可能性があるためである。
【0043】
次に、気相清浄化処理装置1による気相清浄化処理を実施した例について説明する。本実施例では、図1に示した被処理物2として、気相清浄化処理の効果の確認を容易とするため、シリコン基板上に成膜した銅の表面を酸化することによって銅酸化膜を形成した処理基板に対して、気相清浄化処理を行った場合について述べる。
【0044】
図3は処理基板の断面の模式図であって、(a)は初期状態、(b)は酸化後の状態をそれぞれ示している。
処理基板20aは、酸化前の初期状態にあっては、図3(a)に示すように、シリコン基板21に形成された二酸化シリコン膜22上に、電界メッキによって銅薄膜23が成膜された構造を有している。
【0045】
処理基板20aを構成する各層の厚みは、シリコン基板21と二酸化シリコン膜22とは、合わせて略0.5mmから略1mm程度であり、また、銅薄膜23は、略1350nmの膜厚で、二酸化シリコン膜22上に成膜されている。
【0046】
この処理基板20aを、温度200℃に設定されたオーブンで60分間、大気中で加熱する。これにより、図3(b)に示すように、処理基板20aに成膜されている銅薄膜23が酸化され、その表面に銅酸化膜24が形成された処理基板20bを得る。この大気酸化により、処理基板20bの銅薄膜23に、膜厚が略270nmの銅酸化膜24が形成される。
【0047】
図4は処理基板の高周波グロー放電発光分析装置による測定結果であって、(a)は初期状態、(b)は酸化後の状態の処理基板の測定結果をそれぞれ示している。
【0048】
分析には、高周波グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Spectrometer,GDS、株式会社リガクSYSTEM3860)を使用し、分析モードを高周波定電力モード、測定ターゲットをCu成分、O成分およびSi成分の3種とし、アノード径4mmφ、電力40W、アルゴン流量200cc/min、サンプリング間隔50msec、測定時間30secで測定を行った。ここでは、得られた測定結果に対しては、スムージング処理(11点)を施している。
【0049】
図3に示した処理基板20a,20bについて、その分析時間に対する発光強度の変化を測定する。図4の測定結果において、横軸は分析時間(sec)を示し、縦軸は各分析時間に対する各成分元素の発光強度(V)を示している。ここで、GDS分析における分析時間は、測定している処理基板20a,20bの深さに変換可能であり、また、各成分元素の発光強度は、各成分元素の元素濃度に変換可能である。すなわち、このGDS分析により、処理基板20a,20bの深さ方向の元素濃度変化についての情報を得ることができる。
【0050】
初期状態の処理基板20aでは、図4(a)に示したように、その分析初期からCu成分が検出されはじめ、O成分およびSi成分は、Cu成分の発光強度の低下に伴い検出されている。さらに分析時間が経過し、Cu成分およびO成分が共に検出されなくなると、Si成分のみが検出されるようになる。これにより、分析初期には、図3(a)に示した銅薄膜23が検出され、その後、銅薄膜23の下にある二酸化シリコン膜22が検出され、最後にシリコン基板21が検出されていることがわかる。
【0051】
一方、大気酸化後の処理基板20bについてGDS分析を行ったところ、図4(b)に示したように、分析初期からCu成分と共にO成分が検出されている。その後、Cu成分については、その発光強度が増加し、以後、発光強度は、図4(a)に示した場合と同様に変化する。また、O成分については、分析初期に検出された後、一旦検出されなくなり、以後、その発光強度は、図4(a)に示した場合と同様に変化する。Si成分についても、図4(a)に示した場合と同様に変化している。これにより、大気酸化によって処理基板20bの銅薄膜23の表面に、銅酸化膜24が形成されていることがわかる。
【0052】
この銅酸化膜24が形成された処理基板20bを用いて、図1に示した気相清浄化処理装置1により、ギ酸による銅酸化膜24の気相清浄化処理を、還元温度(処理基板温度)、処理チャンバ3内の圧力および還元時間をそれぞれ変化させて行った。
【0053】
図5は還元温度200℃で3分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【0054】
還元温度を200℃にし、図1に示した処理チャンバ3内部の圧力を100Torrにした状態で気相清浄化処理を行った場合には、図5(a)に示すように、分析初期からO成分が検出されており、処理基板20bの表面には銅酸化膜24がまだ残っている。すなわち、図4(b)に示したGDS測定結果からほとんど変化が認められていない。
【0055】
また、処理チャンバ3内部の圧力を200Torr、300Torrにして処理チャンバ3内に含まれるギ酸の量を増加させた場合も、図5(b)および図5(c)にそれぞれ示すように、GDS測定結果にはほとんど変化は認められなかった。したがって、気相清浄化処理の還元温度が200℃の場合には、図3(b)に示した処理基板20bの銅酸化膜24を還元することはできない。
【0056】
図6は還元温度300℃で3分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【0057】
還元温度を300℃にし、図1に示した処理チャンバ3内部の圧力を100Torrにした状態で気相清浄化処理を行った場合には、図6(a)に示すように、分析初期からCu成分が検出され、O成分の検出は認められず、O成分は、Cu成分の発光強度の低下に伴い検出されている。これは、図4(a)に示した初期状態の処理基板20aのGDS測定結果にほぼ一致している。
【0058】
また、処理チャンバ3内部の圧力を200Torr、300Torrにして処理チャンバ3内に含まれるギ酸の量を増加させた場合も同様に、図6(b)および図6(c)にそれぞれ示すように、分析初期にO成分は検出されていない。したがって、気相清浄化処理の還元温度を300℃とすることにより、図3(b)に示した処理基板20bの銅酸化膜24を還元することができる。
【0059】
図7は還元温度400℃で3分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【0060】
還元温度を400℃にし、図1に示した処理チャンバ3内部の圧力を100Torrにした状態で気相清浄化処理を行った場合も、図7(a)に示すように、分析初期からCu成分が検出され、O成分の検出は認められず、図3(b)に示した処理基板20bの銅酸化膜24が還元されていることがわかる。
【0061】
また、圧力を200Torr、300Torrにした場合も同様に、図7(b)および図7(c)にそれぞれ示すように、分析初期にO成分は検出されていない。このことから、気相清浄化処理の還元温度を400℃とすることにより、図3(b)に示した処理基板20bの銅酸化膜24を還元することができる。
【0062】
図8は還元温度400℃で1分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torr、(d)は圧力400Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【0063】
還元温度は400℃で、図1に示した処理チャンバ3内部の圧力を100Torrにし、その還元時間を3分間から1分間に短縮した場合であっても、図8(a)に示すように、分析初期からCu成分が検出され、O成分の検出は認められず、図3(b)に示した処理基板20bの銅酸化膜24が還元されていることがわかる。
【0064】
また、圧力を200Torr、300Torrおよび400Torrにした場合も同様に、図8(b)、図8(c)および図8(d)にそれぞれ示すように、分析初期にO成分は検出されず、このことから、気相清浄化処理の還元温度が400℃であれば、還元時間を短縮しても、図3(b)に示した処理基板20bの銅酸化膜24を還元することが可能である。
【0065】
ここで、還元温度が250℃よりも低い場合には、気相清浄化処理における還元反応で充分な反応速度を得ることができない。また、還元温度が400℃を超える場合には、銅結晶粒の成長が促進され、銅表面に凹凸が生じることがあり、実用上は、この400℃が気相清浄化処理の上限温度と考えられる。
【0066】
このように、還元温度が250℃から400℃の範囲の場合には、充分な反応速度を得ることができ、還元時間を3分間または1分間という短時間に設定して還元反応を行うことができる。これにより、気相清浄化処理を効率的に行うことができるとともに、処理基板20a,20bが高温下にさらされる時間も短くなるので、気相清浄化処理における銅表面の凹凸の発生を防止することができる。
【0067】
以上説明したように、半導体装置製造工程において、気体状態のカルボン酸を用いて、電極や配線を形成している銅に生成した銅酸化物を還元する気相清浄化処理を、処理チャンバ内のカルボン酸の分圧を50Paから10000Paの範囲とし、還元温度250℃から400℃、全圧100Torrから300Torrで還元時間3分、特に還元温度400℃の場合には、圧力100Torrから400Torrで還元時間1分の反応条件で処理することにより、電極や配線の表面に凹凸を生じさせることなく、均一に銅酸化物を還元することができる。また、短い還元時間で気相清浄化処理を行うことができる。
【0068】
さらに、本発明に係る気相清浄化処理において生成する二酸化炭素および水は、上記の反応条件においては気体状態であるため、気相清浄化処理後に、これらが不純物として残留することがない。したがって、従来のような水蒸気による処理を必要とせず、気相清浄化処理後の工程に影響を及ぼすことなく、安定した特性を有する半導体装置を製造することが可能になる。
【0069】
なお、上記の説明において、図1に示した気相清浄化処理装置1は、その被処理物2の加熱機構として、処理チャンバ3に設けられたヒータ8のみを有している構成としたが、被処理物2に紫外線(Ultraviolet,UV)を照射しながら気相清浄化処理を行えるように構成することもできる。
【0070】
図9はUV照射可能な気相清浄化処理装置における処理チャンバおよび予備チャンバの概略の断面図、図10はUV照射可能な気相清浄化処理装置における処理チャンバおよび予備チャンバの概略の斜視図である。ただし、図1に示した気相清浄化処理装置1と同一の要素については同一の符号を付し、その説明の詳細は省略する。
【0071】
気相清浄化処理を行う被処理物2にUV照射が可能な気相清浄化処理装置1aには、図9および図10に示すように、処理チャンバ30および予備チャンバ4を有しており、両者は、ゲートバルブ5で隔てられている。この処理チャンバ30には、被処理物2を載置する処理台7およびヒータ8のほか、バルブ9a,10a,11aをそれぞれ備えた処理ガス導入口9、処理チャンバガス導入口10および処理チャンバガス排出口11が設けられている。処理ガス供給用配管16を流通する処理ガスは、処理ガス導入口9から処理チャンバ30内に導入される。
【0072】
処理チャンバ30は、処理台7に対向する位置に、処理ガス導入口9に対応する部分が開口された円盤状のUVランプ31を備え、気相清浄化処理の際、処理台7に載置されている被処理物2の全面に対して、UV照射ができるようになっている。
【0073】
このように、被処理物2にUV照射することにより、カルボン酸による銅酸化物の還元反応を促進して、その反応速度を大きくすることができ、気相清浄化処理をより効率的に行うことができるようになる。
【0074】
また、CVD工程またはPVD工程における各装置を、上記の気相清浄化処理装置1,1aと組み合わせ、気相清浄化処理を、CVD処理またはPVD処理と連続して行うことも可能である。
【0075】
図11は製造過程における半導体装置の断面図である。半導体装置40には、二酸化シリコンからなる第1の絶縁層41に、ダマシン法で形成された銅からなる下層配線42が形成されている。この下層配線42の形成後に、窒化シリコンあるいは炭化シリコン(SiC)などがCVDによって堆積されてエッチストッパ43が形成され、さらにその上層に第2の絶縁層44が形成されている。この第2の絶縁層44およびその下層に形成されているエッチストッパ43のうち、下層配線42に通じるビアホール45が形成される部分は、エッチングによって除去されている。
【0076】
このエッチングにより露出した下層配線42の表面には、下層配線42を形成している銅の酸化を防止するため、窒化チタン(TiN)などの導体46が、PVDによって堆積される。
【0077】
その際、気相清浄化処理とPVD処理とを連続して処理することのできる構成としている場合には、まず、エッチングによって下層配線42を露出させた後、気相清浄化処理によって露出表面を清浄化し、次いで、導体46の堆積を行う。その後に、ビアホール45に電極材料である銅を埋め込むことにより、下層配線42とビアホール45内に埋め込まれる銅との間の電気的信頼性が損なわれることがなくなり、安定した特性の半導体装置を効率的に製造することが可能となる。
【0078】
図12は製造過程における半導体装置の断面図であって、(a)はエッチング後、(b)は電極および配線への銅の埋め込み後の状態をそれぞれ示している。半導体装置50には、図12(a)に示すように、シリコンウェハ51上に形成された二酸化シリコンからなる第1の絶縁層52に、ダマシン法で形成された銅からなる下層配線53が形成されている。この下層配線53の形成後に、窒化シリコンあるいは炭化シリコンなどが、CVDによって堆積されて第1のエッチストッパ54が形成され、さらにその上層に第2の絶縁層55が形成されている。
【0079】
この第2の絶縁層55には、下層配線53に通じるビアホール56および配線用の溝57が形成される。第2の絶縁層55およびその下層に形成されている第1のエッチストッパ54のうち、ビアホール56が形成される部分は、エッチングによって除去されている。このエッチングによって下層配線53を露出させた後、ビアホール56および溝57に、電極材料である銅を埋め込み、図12(b)に示すように、配線58および埋め込み電極59を形成する。次いで、CMP処理によって表面を平坦化し、埋め込まれた銅の酸化防止と拡散防止のため、CVDにより、第2のエッチストッパ60を形成し、全面を被覆する。
【0080】
その際、気相清浄化処理とCVD処理とを連続して処理することのできる構成としている場合には、ビアホール56および溝57に銅を埋め込んでCMP処理を行った後、第2のエッチストッパ60の被覆前に、気相清浄化処理によって銅表面を清浄化し、その後に、第2のエッチストッパ60で被覆するようにする。これにより、電極や配線の銅表面に凹凸を生じさせることなく、平坦な銅表面上に第2のエッチストッパ60を被覆することができるので、第2のエッチストッパ60の被覆が局所的に悪化するといった状況を回避することができる。
【0081】
なお、以上の説明では、半導体装置の電極材料、配線材料に銅を使用している場合の気相清浄化処理について述べたが、本発明に係る気相清浄化処理は、現在広く用いられているアルミニウムや銀といった銅以外の金属、あるいは銅を主材料とする金属材料を使用している半導体装置の製造にも適用することが可能である。
【0082】
(付記1)半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置が内部に配置される処理チャンバ内に、気体状態のカルボン酸を導入し、前記金属酸化物を金属に還元するとともに気体状態の二酸化炭素と水とを生成する気相清浄化処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0083】
(付記2)前記気相清浄化処理における前記カルボン酸の分圧は、50Paないし10000Paの範囲とすることを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
【0084】
(付記3)前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元温度は、略250℃ないし略400℃であることを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
【0085】
(付記4)前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元時間は、略3分間であることを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元温度が、略400℃である場合には、前記還元時間は、略1分間であることを特徴とする付記4記載の半導体装置の製造方法。
【0086】
(付記6)前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元は、前記金属酸化物に紫外線を照射しながら行うことを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
【0087】
(付記7)前記金属は銅であることを特徴とする付記1または6記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)前記カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸のうちいずれか1種であるであることを特徴とする付記1、付記6または7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0088】
(付記9)前記カルボン酸は、その組成に、塩素原子またはフッ素原子を1または2以上含んでいることを特徴とする付記8記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)前記カルボン酸は、不活性ガスと混合して、気体状態で前記金属酸化物に接触させるようにしたことを特徴とする付記1、付記6から9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0089】
(付記11)気体状態で前記金属酸化物に接触させる前記カルボン酸と前記不活性ガスとの混合物における水の含有量は、1体積%以下であることを特徴とする付記10記載の半導体装置の製造方法。
【0090】
(付記12)気体状態で前記金属酸化物に接触させる前記カルボン酸と前記不活性ガスとの混合物の酸素の含有量は、1体積%以下であることを特徴とする付記10記載の半導体装置の製造方法。
【0091】
(付記13)前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元に続いて、還元後の表面に絶縁物を被覆することを特徴とする付記1、付記6から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記14)前記気相清浄化処理における前記金属酸化物の還元に続いて、還元後の表面に導体を被覆することを特徴とする付記1、付記6から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0093】
(付記15)半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を還元する清浄化処理を行う半導体装置の製造装置において、
前記半導体装置が載置される処理台と、前記処理台の下部に配置されて前記半導体装置を加熱するヒータと、を有する処理チャンバと、
前記金属酸化物を還元するカルボン酸が貯蔵される貯蔵槽と、
前記処理チャンバと前記貯蔵槽との間に設けられた処理ガス供給用配管と、
前記処理ガス供給用配管の途中に設けられ、前記貯蔵槽から前記処理チャンバへ前記処理ガス供給用配管を流れるカルボン酸を気化する気化器と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造装置。
【0094】
(付記16)前記処理チャンバには、金属酸化物に紫外線を照射するための紫外線ランプが、前記処理台に対向配置されていることを特徴とする付記15記載の半導体装置の製造装置。
【0095】
(付記17)前記処理チャンバと前記気化器との間の前記処理ガス供給用配管の周囲に、前記処理ガス供給用配管を流れるカルボン酸を凝縮させないための加熱機構を備えることを特徴とする付記15記載の半導体装置の製造装置。
【0096】
(付記18)前記処理ガス供給用配管は、前記気化器の下流側に、前記処理ガス供給用配管を流れる流体を排出するためのドレインを有していることを特徴とする付記15記載の半導体装置の製造装置。
【0097】
(付記19)前記処理ガス供給用配管は、前記気化器の上流側に、前記処理ガス供給用配管を流れる流体を排出するためのドレインを有していることを特徴とする付記15記載の半導体装置の製造装置。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、半導体装置の電極あるいは配線を形成している金属に生成した金属酸化物を、気体状態のカルボン酸によって金属に還元する気相清浄化処理を行うようにした。これにより、電極や配線の表面に凹凸を生じさせることなく、均一に金属酸化物を還元することができる。
【0099】
さらに、本発明の気相清浄化処理では、還元反応の副生成物である二酸化炭素と水とが共に気体状態で生成するようにしたことで、銅表面への不純物の残留を回避することができる。
【0100】
また、気相清浄化処理を、金属酸化物に対して紫外線を照射しながら行うことにより、還元温度を低下させることができ、金属表面に凹凸が生じてしまうような高温下にさらされるといった状況を回避することができる。さらに、気相清浄化処理に用いるカルボン酸の種類を適当に選択することによっても、還元温度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】気相清浄化処理装置の概略図である。
【図2】被処理物温度と処理ガス導入時期との関係を示す図である。
【図3】処理基板の断面の模式図であって、(a)は初期状態、(b)は酸化後の状態をそれぞれ示している。
【図4】処理基板の高周波グロー放電発光分析装置による測定結果であって、(a)は初期状態、(b)は酸化後の状態の処理基板の測定結果をそれぞれ示している。
【図5】還元温度200℃で3分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【図6】還元温度300℃で3分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【図7】還元温度400℃で3分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【図8】還元温度400℃で1分間の気相清浄化処理を行ったときのGDS測定結果であって、(a)は圧力100Torr、(b)は圧力200Torr、(c)は圧力300Torr、(d)は圧力400Torrでそれぞれ還元した場合のGDS測定結果を示している。
【図9】UV照射可能な気相清浄化処理装置における処理チャンバおよび予備チャンバの概略の断面図である。
【図10】UV照射可能な気相清浄化処理装置における処理チャンバおよび予備チャンバの概略の斜視図である。
【図11】製造過程における半導体装置の断面図である。
【図12】製造過程における半導体装置の断面図であって、(a)はエッチング後、(b)は電極および配線への銅の埋め込み後の状態をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1,1a 気相清浄化処理装置
2 被処理物
3 処理チャンバ
4 予備チャンバ
5 ゲートバルブ
6 アーム
7 処理台
8 ヒータ
9 処理ガス導入口
10 処理チャンバガス導入口
11 処理チャンバガス排出口
12 被処理物導入口
13 予備チャンバガス導入口
14 予備チャンバガス排出口
15 貯蔵槽
16 処理ガス供給用配管
17 マスフローコントローラ
18 気化器
19a,19b ドレイン
9a,10a,11a,13a,14a,16a,16b,16c バルブ
20a,20b 処理基板
21 シリコン基板
22 二酸化シリコン膜
23 銅薄膜
24 銅酸化膜
30 処理チャンバ
31 ランプ
40,50 半導体装置
41,52 第1の絶縁層
42,53 下層配線
43 エッチストッパ
44,55 第2の絶縁層
45,56 ビアホール
46 導体
51 シリコンウェハ
54 第1のエッチストッパ
57 溝
58 配線
59 埋め込み電極
60 第2のエッチストッパ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-01-25 
結審通知日 2013-02-04 
審決日 2013-02-28 
出願番号 特願2002-9785(P2002-9785)
審決分類 P 1 123・ 857- YAA (H01L)
P 1 123・ 113- YAA (H01L)
P 1 123・ 853- YAA (H01L)
P 1 123・ 851- YAA (H01L)
P 1 123・ 121- YAA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野田 誠  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 近藤 幸浩
恩田 春香
登録日 2005-10-28 
登録番号 特許第3734447号(P3734447)
発明の名称 半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置  
代理人 植木 一彦  
代理人 黒川 恵  
代理人 井口 司  
代理人 深見 久郎  
代理人 服部 誠  
代理人 小林 浩  
代理人 小林 浩  
代理人 井口 司  
代理人 仲村 義平  
代理人 服部 誠  
代理人 植木 一彦  
代理人 岩田 茂  
代理人 片山 栄二  
代理人 片山 栄二  
代理人 長野 篤史  
代理人 黒川 恵  
代理人 岩田 茂  
代理人 森田 俊雄  

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