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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1289219
審判番号 不服2013-14610  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-30 
確定日 2014-06-26 
事件の表示 特願2007-108135「制御プログラム、制御方法、制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月 6日出願公開、特開2008-269053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年4月17日の出願であって、平成24年2月20日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年5月1日付けで手続補正書の提出がなされ、同年8月28日付けで最後の拒絶理由の通知がなされ、同年11月5日付けで手続補正書の提出がなされ、平成25年4月23日付けで平成24年11月5日付け手続補正に対して補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して平成25年7月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、当審において、同年10月4日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年12月16日付けで回答書の提出がなされたものである。



第2 平成25年7月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年7月30日付けの手続補正(以下、「本件補正1」という)を却下する。

[理 由]
1.補正の内容
本件補正1は、特許請求の範囲についてする補正であり、平成24年5月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という)を、平成25年7月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という)とする次の補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所)

<補正前の請求項1>
「コンピュータに、
第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う、
ことを実行させることを特徴とする制御プログラム。」

<補正後の請求項1>
「コンピュータに、
第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が交信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークの向きと前記第3のマークの向きとが前記第2のノードの属性と前記第3のノードの属性との異同に応じてずらされた配置制御を行う、
ことを実行させることを特徴とする制御プログラム。」

本件補正1では、補正前の請求項1は補正後の請求項1に対応し、補正後の請求項1に係る本件補正1は、補正前の請求項1の「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御」を「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が交信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークの向きと前記第3のマークの向きとが前記第2のノードの属性と前記第3のノードの属性との異同に応じてずらされた配置制御」とする事項(以下、「補正事項」という)を含むものである。


2.補正の目的の適否について
ここで前記補正事項について検討すると、補正前は「前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御」を行うもの、即ち、マークの「なす角」が「通信情報に基づく大きさ」となるものであったのに対し、補正後は「前記第1のマークを中心とする前記第2のマークの向きと前記第3のマークの向きとが前記第2のノードの属性と前記第3のノードの属性との異同に応じてずらされた配置制御」を行うもの、即ち、マークの「向き」がノードの「属性」の「異同に応じてずらされた」ものとされたため、補正前の「なす角が前記通信情報に基づく大きさとなる」との限定が削除されたものとなることから、当該補正事項は特許請求の範囲の減縮を目的としたものとはいえない。
また、前記補正事項が、特許法第17条の2第5項でいう「請求項の削除」(第1号)、「誤記の訂正」(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)、のいずれかを目的とするものに該当しないことは明らかである。


3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正1は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、以上の判断は、「特許法17条の2第4項4号は,『明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)』と規定しているから,『明りょうでない記載の釈明』を目的とする補正は,法律上,審査官が拒絶理由中で特許請求の範囲が明りょうでない旨を指摘した事項について,その記載を明りょうにする補正を行う場合に限られており,原告の主張する『新規事項の追加状態を解消する』目的の補正が特許法17条の2第4項4号に該当する余地はない。」という知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10159号審決取消請求事件の判決において判示された内容を踏まえて行ったものである。



第3 補正却下の決定を踏まえた検討

1.本願の明細書及び特許請求の範囲
平成25年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成24年11月5日付けの手続補正は平成25年4月23日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の明細書及び特許請求の範囲は、平成24年5月1日付けの手続補正(以下、「本件補正2」という)により補正されたものである。


2.拒絶査定の概要
平成25年4月23日付けの拒絶査定の概要は、以下のとおりである。

「・・・(前略)・・・
この出願については、平成24年 8月28日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
・・・(後略)・・・」


3.平成24年8月28日付けの拒絶理由の概要
平成24年8月28日付けの拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

理 由

【理由1】 平成24年 5月 1日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



1. 補正後の請求項1において「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う」と記載されているが、そもそも当初明細書等には、「角」、「通信情報」という語句が用いられておらず、「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う」構成も記載されていない。
よって、請求項1についての上記構成を含む補正はいわゆる新規事項の追加に該当する。
請求項8、10についての補正も同様である。

2. 補正後の請求項7において「第1のノードのマークを中心とする、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとの間のなす角の大きさを前記通信情報に基づいて制御する処理」、「前記処理によってなす角の大きさが調整された配置関係で、前記第1のノードのマーク、第2のノードのマーク、第3のノードのマークを配置した図を出力する処理」と記載されているが、そもそも当初明細書等には、「角」、「通信情報」という語句が用いられておらず、「第1のノードのマークを中心とする、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとの間のなす角の大きさを前記通信情報に基づいて制御する処理」及び「前記処理によってなす角の大きさが調整された配置関係で、前記第1のノードのマーク、第2のノードのマーク、第3のノードのマークを配置した図を出力する処理」についても記載されていない。
よって、請求項7についての補正はいわゆる新規事項の追加に該当する。
請求項9、11についての補正も同様である。


【理由2】 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-11
・引用文献 1
・備考
引用文献1には、人脈マップを表示する際に、受信者のノードを中心としてその周りに発信者のノードを配置すること、受信者ノードに対する各発信者ノードの配置角度を、例えば360度を発信者ノード個数で割った値を各発信者ノードの配置角度として算出し、互いの角度が配置角度となるように発信者ノードを配置すること、すなわち、発信者ノードのなす角が「発信者」という通信情報に基づくこと、が記載されており(特に、【0093】-【0098】、図7)、本願発明は当業者が容易に為し得たものである。

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2000-66970号公報

・・・(後略)・・・」


4.特許法第17条の2第3項について
(1)本件補正2の補正事項
本件補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1には、
「コンピュータに、
第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う、
ことを実行させることを特徴とする制御プログラム。」
が記載された。
そこで、上記請求項1に記載された「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う」という事項(以下、「本件補正2事項」という)が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

審判請求人は、平成24年5月1日付け意見書において、請求項1に対する補正の根拠として、
「上記の請求項1に対する補正は、本願明細書の0039、0045?0048段落、図17、図18などの記載に基づくものであるため、新規事項を追加するものではありません。」
と主張しているものの、本願明細書及び図面には、「ノード」、「マーク」、「角」及び「通信情報」の用語が記載がされていないが、本願発明の課題との関係を踏まえれば、本件補正2事項の「第1のマーク」は図17の「本人(鈴木)」が対応し、「第2のマーク」と「第3のマーク」は、図17の「本人(鈴木)」以外の例えば「XX株式会社田中」と「YY株式会社橋本」が対応するものと認められることから、上記「角」は、「本人(鈴木)」を中心とする「XX株式会社田中」と「YY株式会社橋本」のなす角であると認められる。
一方、本願明細書の段落【0039】乃至【0050】及び図17には、人脈構成図の作成時に該当者の業種に対応した雛形DBを参照して、「営業」や「出荷」などの属性の配置が予め設定された3重円を作成し、該当者「鈴木さん」の電子メール配信から繋がりがあるとされたXX株式会社の営業担当の「田中さん」は、上記雛形の「営業」の領域に配置し、YY株式会社の出荷担当の「橋本さん」は、上記雛形の「出荷」の領域に配置することが記載されている。これとは別に、電子メールの配信数に基づく親密度より、親密度が高ければ「鈴木さん」と「田中さん」の間の矢印のように矢印を太く短くすることが記載されている。
してみると、本願明細書及び図面には、「鈴木さん」を中心とする「XX株式会社田中」と「YY株式会社橋本」のなす角は、雛形で予め決定されていることが記載され、電子メールの配信数のような通信情報に基づく大きさに関係することは記載されていない。
よって、上記本件補正2事項は、当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。


(2)小括
したがって、本件補正2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


5.特許法第29条第2項について

仮に、平成24年5月1日付けの補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとした場合、本件特許出願が進歩性を有するものであるか否かについて検討する。

(1)本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成24年5月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項8に記載された、次のとおりのものである。

「コンピュータが、
第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う、
ことを特徴とする制御方法。」


(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-66970号(以下、「引用文献」という)には、下記の事項が記載されている。

「【0090】例えば、メーリングリスト宛ての電子メールであって、本文に受信者の名前が記載されていないものまで人脈強度値に値を加算したくないと考えた場合、ユーザは、メールの人脈関係係数「C(TMS)」及び「C(TMP)」の係数値を0に変更する。この結果、集計値「V(TMS)」及び「V(TMP)」に値が集計されていても、人脈関係係数「C(TMS)」及び「C(TMP)」が0であるため、人脈強度値に影響を与えなくすることができる。
【0091】人脈情報管理部25により設定される人脈強度値517は、値が大きいほど発信者と宛先の人脈強度が高いものと判別される。例えば、図6に示す人脈情報500において発信者「吉府」-宛先「佐藤」の関係が、人脈強度の最も高い関係であると判別される。
【0092】図14に戻って、人脈情報管理部25は、このようにして生成した人脈関係情報500を人脈情報記憶部33に供給する(ステップS34)。すなわち、人脈情報管理部25は、生成した人脈関係情報500を人脈情報記憶部33に記憶させる。
【0093】人脈情報管理部25は、生成した人脈情報500に従って、図7に示すような人脈マップを生成する(ステップS35)。図7に示すような人脈マップは、受信者ノードを中心とし、その周りに発信者ノードが配置される。受信者ノードと発信者ノードとは、矢印で結ばれ、その矢印の長さが短いほど互いの人脈強度が大きい。なお、人脈強度を各ノードを結ぶ矢印の太さにより表してもよい。以下、人脈情報管理部25が、図7に示すような人脈マップを生成する手順について詳細に説明する。
【0094】人脈情報管理部25は、受信者のノードを人脈マップの中心に配置する。すなわち、人脈情報管理部25は、図16(a)に示すように受信者である「吉府」を人脈マップの中心に配置する。
【0095】人脈情報管理部25は、受信者のノードの右横に発信者のノードを人脈強度値の高い順に直線に配置する。すなわち、人脈情報管理部25は、図16(b)に示すように、受信者である「吉府」の右横に、人脈強度値の高い順に発信者である「田中」、「鈴木」、・・・「西田」を配置する。
【0096】人脈情報管理部25は、受信者ノードに対する各発信者ノードの配置角度を算出する。例えば、人脈情報管理部25は、360度を発信者ノード個数で割った値を各発信者ノードの配置角度とする。すなわち、人脈情報管理部25は、360度を8つの発信者ノードで割った値である45度を配置角度とする。
【0097】人脈情報管理部25は、人脈強度値の最も高い発信者ノードを固定し、2番目以降の発信者ノードを人脈強度値の高い順に反時計回りに、互いの角度が配置角度となるように配置する。すなわち、人脈情報管理部25は、図16(c)に示すように、45度の配置角度毎に、人脈強度値の高い順に発信者である「田中」、「鈴木」、・・・「西田」を反時計回りに配置する。人脈情報管理部25は、配置した各発信者ノードと受信者ノードと矢印で接続する。
【0098】人脈情報管理部25は、このように生成した人脈情報マップを出力装置40に供給して表示させる(ステップS36)。
【0099】なお、人脈マップにおける各ノードの位置は、ユーザの指定で変更可能である。例えば、任意の発信者を中心ノードにし、上記のノード配置方法によって人脈マップを生成することも可能である。
【0100】また、人脈マップにおける各ノードの属性情報を併せて表示してもよい。すなわち、人脈情報管理部25は、人脈情報情報500を参照して人物属性IDを取得し、取得した人物属性IDを有する人物属性情報を人脈属性記憶部33から取得する。人脈情報管理部25は、取得した人物属性情報を人脈マップに合成し、図17に示すように出力装置40に表示させる。
【0101】この結果、ネットワークを介して受信した電子メールやニュースグループ等のメッセージ情報から、効率的に人脈情報を生成することができる。その際、人物属性を入力する必要がないため、利用者等の労力を軽減することができる。また、発信者及び受信者間の人脈強度を所定の係数に基づいて数値化することにより、発信者及び受信者間の関係の強さを視覚的に表示することができる。」

ここで、上記引用文献の記載事項について検討する。
(a)段落【0094】には、人脈情報管理部が、受信者のノードを人脈マップの中心に配置する例として、受信者である「吉府」を人脈マップの中心に配置することが記載されている。よって、引用文献には、「人脈情報管理部が、受信者ノードとして受信者「吉府」を人脈マップの中心に配置」することが記載されている。

(b)段落【0095】には、人脈情報管理部が、受信者のノードの右横に発信者のノードを人脈強度値の高い順に直線に配置する例として、受信者である「吉府」の右横に、人脈強度値の高い順に発信者である「田中」、「鈴木」、・・・「西田」を配置することが記載されている。よって、引用文献には、「人脈情報管理部が、受信者ノードの右横に発信者ノードとして人脈強度値の高い順に発信者「田中」、「鈴木」・・・「西田」を配置」することが記載されている。

(c)段落【0096】には、人脈情報管理部が、360度を発信者ノード個数で割った値を各発信者ノードの配置角度とすることが記載され、段落【0097】には、人脈情報管理部が、人脈強度値の最も高い発信者ノードを固定し、2番目以降の発信者ノードを人脈強度値の高い順に反時計回りに、互いの角度が配置角度となるように配置することが記載されている。よって、引用文献には、「人脈情報管理部が、人脈強度値の最も高い発信者ノードを固定し、2番目以降の発信者ノードを人脈強度値の高い順に反時計回りに、360度を発信者ノード個数で割った値を各発信者ノードの配置角度となるように配置」することが記載されている。
上記(a)乃至(c)及び関連図面の記載から、引用文献には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「人脈情報管理部が、
受信者ノードとして受信者「吉府」を人脈マップの中心に配置し、
受信者ノードの右横に発信者ノードとして人脈強度値の高い順に発信者「田中」、「鈴木」、・・・「西田」を配置し、
人脈強度値の最も高い発信者ノードを固定し、2番目以降の発信者ノードを人脈強度値の高い順に反時計回りに、360度を発信者ノード個数で割った値を各発信者ノードの配置角度となるように配置する方法。」


(3)対比
(3-1)本願発明と引用発明との対応関係について
あ.引用発明の受信者「吉府」は受信者ノードを表すものであり、発信者「田中」、「鈴木」はそれぞれ発信者ノードを表すものである。
してみると、引用発明の受信者ノードとしての受信者「吉府」は、本願発明の「第1のノードを表す第1のマーク」に相当し、引用発明の発信者ノードとしての発信者「田中」は、本願発明の「第2のノードを表す第2のマーク」に相当し、引用発明の発信者ノードとして発信者「鈴木」は、本願発明の「第3のノードを表す第3のマーク」に相当している。

い.引用文献の段落【0084】乃至【0088】には、電子メールにおいて同一の発信者及び宛先の組のレコードを集約して集計した値に人脈関係係数を乗算した値を人脈強度値とすることが記載されているので、引用発明の「人脈強度値」は電子メールの通信情報に基づいて設定された値であるといえる。

う.引用発明において、発信者「田中」と発信者「鈴木」の配置について検討すると、発信者「田中」と発信者「鈴木」は、受信者「吉府」を中心に配置され、かつ、発信者「田中」と発信者「鈴木」のなす角は、360度を発信者ノード個数で割った値である「配置角度」により設定されることになる。そして、発信者ノード個数は、受信者「吉府」が電子メールを受信した発信者数の値の大きさであることから、引用発明の「配置角度」は電子メールの通信情報の大きさに基づいて設定された値であるといえる。
してみると、上記あ.の対応関係を踏まえれば、引用発明も「前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御」を行っているといえる。

え.引用発明では、発信者ノードは「人脈強度値」及び「発信者ノード個数」によって配置されるものであるが、上記い.及びう.に記載したように、引用発明の「人脈強度値」及び「発信者ノード個数」は、何れも電子メールの通信情報に基づいて設定される値であることから、上記あ.の対応関係を踏まえれば、引用発明も「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する」ことを行っているといえる。

(3-2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、下記の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「第1のノードを表す第1のマークと、該第1のノードとの関係が通信情報を用いて特定された第2のノードのマークと、第3のノードのマークとを配置する際に、前記第1のマークを中心とする前記第2のマークと前記第3のマークのなす角が前記通信情報に基づく大きさとなる配置制御を行う、
ことを特徴とする制御方法。」

(相違点)
本願発明は、「コンピュータ」により配置制御を行うものであるのに対し、引用発明は、「人脈情報管理部」により配置制御を行うものである点で相違する。


(4)当審の判断
(4-1)相違点について
引用文献には、図1に引用発明の「人脈情報管理部」が人脈情報管理システム内に設けられていることが記載され、また、段落【0124】に「なお、この発明の人脈情報管理システムは、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。」ことが記載されているので、引用発明の「人脈情報管理部」を「コンピュータ」により構成することは格別なことではない。

(4-2)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献の記載から当業者が予測できる範囲のものである。


(5)小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献の記載に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおり、本件補正2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献の記載に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-18 
結審通知日 2014-04-22 
審決日 2014-05-09 
出願番号 特願2007-108135(P2007-108135)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 誠  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 辻本 泰隆
金子 幸一
発明の名称 制御プログラム、制御方法、制御装置  
代理人 山口 昭則  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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