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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1289288
審判番号 不服2013-18444  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-25 
確定日 2014-07-15 
事件の表示 特願2008-224345「樹脂製品形成装置、樹脂シート成形装置、樹脂シートトリミング装置、シート搬送装置、樹脂製品製造方法、及び、シート搬送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 58877、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年9月2日の出願であって、平成24年11月15日付け及び平成25年6月10日付けで手続補正書が提出された後、同年8月1日付けで前記平成25年6月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定がされるとともに、これと同日付けで拒絶査定がなされ(拒絶査定の謄本の送達(発送)日 平成25年8月7日)、これに対して、平成25年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許法第17条の2第1項第4号の規定に係る手続補正(前置補正)がなされたものである。


第2 平成25年9月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
特許請求の範囲に係る本件補正は、請求項1に関して、本件補正前(平成24年11月15日付け手続補正に係る)の
「【請求項1】
搬送方向へ連続した樹脂シートから樹脂製品を形成する装置において、
前記樹脂シートをシート送り方向へ搬送するシート送り装置と、
搬送した前記樹脂シートから前記樹脂製品を形成する手段と、
前記シート送り方向に沿った平坦な上面を有し、前記樹脂シートの幅方向への移動を規制しながら搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、該樹脂シートを前記シート送り装置に受け取らせるために前記平坦な上面に沿って案内する受入部材と、
前記受入部材の平坦な上面から空気を噴出して前記樹脂シートを前記受入部材から浮かせるシート浮上手段と、
を具備することを特徴とする樹脂製品を形成する装置。」を、
本件補正後において、
「【請求項1】
搬送方向へ連続した樹脂シートから凹凸のある樹脂製品を形成する装置において、
前記樹脂シートの幅方向の両端部を保持するための保持機構を有し、該保持機構で前記樹脂シートの幅方向の両端部を保持して前記樹脂シートをシート送り方向へ搬送するシート送り装置と、
搬送した前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構で保持した状態で前記樹脂シートから前記凹凸のある樹脂製品を形成する手段と、
前記シート送り方向に沿った平坦な上面を有し、前記樹脂シートの幅方向への移動を規制しながら搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、該樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるために前記平坦な上面に沿って前記樹脂シートを案内する受入部材と、
前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるための前記受入部材の平坦な上面から空気を噴出して前記樹脂シートを前記受入部材から浮かせるシート浮上手段と、
を具備することを特徴とする樹脂製品を形成する装置。」
とする補正(以下「補正事項1」という。)を含むものである(下線は、補正個所を明示するために、当審で加入した。)。

2 補正の適否
上記の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「樹脂製品を形成する装置」について、その形成対象が「凹凸のある」樹脂製品であり、さらに、同じく発明を特定するために必要な事項である「シート送り装置」と「受入部材」について、シート送り装置は「前記樹脂シートの幅方向の両端部を保持するための保持機構を有し、該保持機構で前記樹脂シートの幅方向の両端部を保持」するものであり、前記樹脂製品の形成は「前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構で保持した状態」でなされること、また、受入部材は「前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるため」のものであるとの限定を付加するものであって、本件補正の前後において、それぞれの請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変わるところがないから、補正事項1は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
また、本件補正において、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-103438号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱成形装置および熱成形方法に関し、特に、接触加熱成形を行う熱成形装置および熱成形方法に関する。」
(イ)「【0023】
【発明の実施の形態】…図1は本発明にかかる熱成形装置の概略構成を示した構成図である。同図において、本熱成形装置10は、樹脂シート供給部11と、樹脂シート予備加熱部12と、樹脂シート搬送部13と、樹脂シート熱成形部14と、樹脂シートトリミング部15とを備える構成となっている。この樹脂シート供給部11は、ペイオフリール11aと、ピンチロール11bと、樹脂シートガイド11cとを備えている。ペイオフリール11aには、樹脂シートSが巻き回しされた樹脂シートロール11a1が備え付けられている。この樹脂シートSは、樹脂シートロール11a1からペイオフリール11aおよびピンチロール11bの回転駆動により巻き出されて、樹脂シートガイド11cにて搬送経路を形成されることにより後工程に供給される。
【0024】樹脂シート予備加熱部12は、樹脂シートガイドロール12aと、プレヒータロール12bとを備えている。上記樹脂シートガイド11cを通過した樹脂シートSは、樹脂シートガイドロール12aにてプレヒータロール12bに巻き回されるように導かれ、このプレヒータロール12bの外周に接触する。プレヒータロール12bは、所定の手法によりその外周が加熱されているため、樹脂シートSは、プレヒータロール12bの外周に接触することによって、加熱されることになる。本実施形態では、この加熱を予備加熱と言い、当該予備加熱を実施することから、この範囲を樹脂シート予備加熱部12と言う。そして、この加熱された樹脂シートSは、樹脂シートガイドロール12aおよびプレヒータロール12bの回転動作によって樹脂シート搬送部13に供給される。
【0025】樹脂シート搬送部13は、樹脂シート搬送ガイドロール13aと、加熱テーブル13bと、加熱テーブル駆動部13cとを備えるとともに、加熱テーブル13bの上面は鏡面板13b1が形成されている。上述したように、樹脂シートSは樹脂シート予備加熱部12から樹脂シート搬送部13に供給される。この樹脂シート搬送部13は、加熱テーブル13bの上面にある鏡面板13b1に樹脂シートSを略密着させて、後工程の樹脂シート熱成形部14に搬送する。このとき、樹脂シート搬送ガイドロール13aは、鏡面板13b1と所定の押圧を形成して略当接した位置関係に設置される。
【0026】樹脂シート予備加熱部12から供給された樹脂シートSは、この樹脂シート搬送ガイドロール13aと鏡面板13b1との間に供給される。そして、樹脂シートSを樹脂シート熱成形部14に搬送するに際して、樹脂シート搬送ガイドロール13aを回転動作させるとともに、この回転動作に同期して、加熱テーブル13bを樹脂シート熱成形部14の方向に対して移動させる。この加熱テーブル13bの移動は、図示しない駆動モータや駆動軸が配設された加熱テーブル駆動部13cにて行なわれる。これにより、樹脂シートSは、樹脂シート搬送ガイドロール13aにて鏡面板13b1上に押し付けられつつ、加熱テーブル13bの移動に伴う当該鏡面板13b1の移動によって、この鏡面板13b1の上面に載置されることになる。
【0027】このとき、上述したように、樹脂シートSは、樹脂シート搬送ガイドロール13aにて鏡面板13b1上に押し付けられているため、略密着して鏡面板13b1上に載置されることになる。ここで、図においては、樹脂シート熱成形部14に搬送された加熱テーブル13b、および、鏡面板13b1を点線枠にて示している。この加熱テーブル13bは、所定の手法によって加熱されており、鏡面板13b1に載置された樹脂シートSは、接触加熱されることによって可塑化することになる。…
【0028】樹脂シート熱成形部14は、上テーブル14aと、成形型14bと、上テーブル14aにリンク構造を介して接続する上テーブル駆動部14cと、真空発生部14dと、送りロール14eとを備えている。樹脂シート搬送部13によって鏡面板13b1上に樹脂シートSが略密着されて載置された加熱テーブル13bが樹脂シート熱成形部14に搬送されると、上テーブル14aが、上テーブル駆動部14cの動作によって、樹脂シートSに向かって下降する。この上テーブル14aの樹脂シートSに対面する側には、雌型である成形型14bが型面を樹脂シートSに向けて配設されており、各雌型の型間は上テーブル14aの下降によって樹脂シートSに略当接する。
【0029】これにより、樹脂シートSと成形型14bの内面とは略密封された状態になる。このとき、真空発生部14dを作動させることにより、この略密封状態の空間から空気を吸引すると、樹脂シートSは、成形型14bの型内面に吸い付けられる。これによって、樹脂シートSに対する熱成形が行なわれる。真空発生部14dの作動により熱成形品が樹脂シートSに形成されると、上テーブル駆動部14cの動作によって、上テーブル14aが上昇し、熱成形が終了する。熱成形が終了した樹脂シートSは、送りロール14eによって、樹脂シートトリミング部15に搬送される。」

上記の記載を総合すると、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「樹脂シート供給部11と、樹脂シート予備加熱部12と、樹脂シート搬送部13と、樹脂シート熱成形部14と、樹脂シートトリミング部15とを備える熱成形装置10であって、
樹脂シート供給部11は、ペイオフリール11aと、ピンチロール11bと、樹脂シートガイド11cとを備えており、ペイオフリール11aには、樹脂シートSが巻き回しされた樹脂シートロール11a1が備え付けられており、この樹脂シートSは、樹脂シートロール11a1からペイオフリール11aおよびピンチロール11bの回転駆動により巻き出されて、樹脂シートガイド11cにて搬送経路を形成されることにより後工程に供給され、
樹脂シート予備加熱部12は、樹脂シートガイドロール12aと、プレヒータロール12bとを備えており、上記樹脂シートガイド11cを通過した樹脂シートSは、樹脂シートガイドロール12aにてプレヒータロール12bに巻き回されるように導かれ、このプレヒータロール12bの外周に接触し、プレヒータロール12bは、所定の手法によりその外周が加熱されているため、樹脂シートSは、プレヒータロール12bの外周に接触することによって、加熱されることになり、この加熱された樹脂シートSは、樹脂シートガイドロール12aおよびプレヒータロール12bの回転動作によって樹脂シート搬送部13に供給され、
樹脂シート搬送部13は、樹脂シート搬送ガイドロール13aと、加熱テーブル13bと、加熱テーブル駆動部13cとを備えるとともに、加熱テーブル13bの上面は鏡面板13b1が形成されており、樹脂シート予備加熱部12から供給された樹脂シートSは、加熱テーブル13bの上面にある鏡面板13b1に略密着され、後工程の樹脂シート熱成形部14に搬送され、樹脂シート搬送ガイドロール13aと鏡面板13b1との間に供給され、樹脂シートSを樹脂シート熱成形部14に搬送するに際して、樹脂シート搬送ガイドロール13aを回転動作させるとともに、この回転動作に同期して、加熱テーブル13bを樹脂シート熱成形部14の方向に対して移動させ、これにより、樹脂シートSは、樹脂シート搬送ガイドロール13aにて鏡面板13b1上に押し付けられつつ、加熱テーブル13bの移動に伴う当該鏡面板13b1の移動によって、この鏡面板13b1の上面に載置されることになり、このとき、樹脂シートSは、樹脂シート搬送ガイドロール13aにて鏡面板13b1上に押し付けられているため、略密着して鏡面板13b1上に載置されることになり、
樹脂シート熱成形部14は、上テーブル14aと、成形型14bと、上テーブル14aにリンク構造を介して接続する上テーブル駆動部14cと、真空発生部14dと、送りロール14eとを備えており、樹脂シート搬送部13によって鏡面板13b1上に樹脂シートSが略密着されて載置された加熱テーブル13bが樹脂シート熱成形部14に搬送されると、上テーブル14aが、上テーブル駆動部14cの動作によって、樹脂シートSに向かって下降し、この上テーブル14aの樹脂シートSに対面する側には、雌型である成形型14bが型面を樹脂シートSに向けて配設されており、各雌型の型間は上テーブル14aの下降によって樹脂シートSに略当接し、これにより、樹脂シートSと成形型14bの内面とは略密封された状態になり、このとき、真空発生部14dを作動させることにより、この略密封状態の空間から空気を吸引すると、樹脂シートSは、成形型14bの型内面に吸い付けられ、これによって、樹脂シートSに対する熱成形が行なわれ、真空発生部14dの作動により熱成形品が樹脂シートSに形成されると、上テーブル駆動部14cの動作によって、上テーブル14aが上昇し、熱成形が終了し、熱成形が終了した樹脂シートSは、送りロール14eによって、樹脂シートトリミング部15に搬送される、熱成形装置10。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された実願昭53-157344号(実開昭55-74762号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。
(ア)「本考案は鋼ストリツプ,紙,プラスチツクフイルム等の帯状体を非接触状態で方向転換させるため使用する非接触支持装置の改良に関するものである。」(第1頁第16?19行)
(イ)「以下本案の具体例を図面に基いて説明する。
第1図および第2図は本考案の非接触支持装置の一例であり、鋼ストリツプを180°方同転換させる例を示す。図において1はガイドすべきストリツプのうち最大幅のストリツプよりも長い胴長をもち、内部に密閉状の圧力室2を有する支持装置本体、3は該支持装置本体1を構成する壁面の一部であって円弧状(半円状)に形成された帯状体転換用ガイド面、4は該ガイド面3に穿設された複数の流体噴出孔、5はガイド面3に対向する支持装置本体1の壁面に接続される流体供給管、6はガイド面3に沿ってガイドされながら180°方向転換される走行ストリップ、9は支持装置本体1に沿つて設けられたサイドガイドであつて、該サイドガイド9は図示の如くガイド面3にわたる部分がテーパー付矩形の断面に形成することが好ましいが、場合によつては単なる矩形状断面に形成してもよい。該サイドガイド9は移動桿10によってストリツプの幅変化に応じて支持装置本体1の軸方向に移動可能になつている。なお移動桿10の先は図示していないが適宜の移動のための駆動装置に連結している。」(第3頁第16行?第4頁第17行)
(ウ)「第2図の例では支持装置本体1の断面形状が半円状で、かつストリツプ6の入・出側に円弧状ガイド面3に続いて直線面部7を設け、該直線面部7にも複数の流体噴出孔8を穿設している。これはストリツプ6が支持装置本体1の入・出側位置において、支持装置本体1に接触しないようにするためと、またガイド面3とストリツプ6と、サイドガイド9とでつくる空間内に流体を効果的に閉ぢ込めて流体クツシヨン効果を大ならしめようとするためである。」(第5頁第2?11行)
(エ)「次に第4図は本考案の他の例を示すもので、ストリツプ16を90゜方向転換する際の支持装置である。支持装置本体11は内部に圧力室12を有し、かつ4分円状のガイド面13及びこれに続く直線面部17を設けている。ガイド面13には複数の流体噴出孔14、直線面部17には同じく流体噴出孔18がそれぞれ穿設され、支持装置本体11には流体供給管15が接続している。またガイド面13には、第1図と同様の移動可能なサイドガイド19 および移動桿(図示せず)が設けられている。」(第5頁第16行?第6頁第5行)

ウ 前置報告において拒絶の理由に引用された実公平1-36595号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。
(ア)「(産業上の利用分野)
本考案は、成形適温に昇熱して軟かになつている樹脂シートを成形の対象にする熱成形機のプリブロー装置に係り、樹脂シートが成形ステーシヨンに供給され且つチヤンバーが口縁を該樹脂シートの一方の面に向かつて移動するのと関係的に樹脂シートの四周を弾力的にシールし、圧縮エアーにより予張するプリブローを高速度で施し得るようにすると共に、成形が済んだ樹脂シートの送り出しを可能にし、さらに第1シール部材の対応間隔の変更に伴つて第2シール部材の第1シール部材間に入る巾を変更できるようにしたものである。」(第1頁第1欄第21行?同第2欄第7行)
(イ)「(実施例)
添付図面は本考案の一実施例を示す。
第1図は本考案の概要側面図、第2図は第1シール部材24と第2シール部材33,33aの斜視図、第3図は前側の第2シール部材33の一部切欠斜視図、第4,5図は前側の第2シール部材33のシール動作を示した側面図、第6図は第1図A-A線で切断した前側の第2シール部材33の正面図、第7図は同拡大切断面図である。
以下、連続樹脂シートSをシートSと称する。
第1図は熱成形機1の一例を示し、加熱ステーシヨンIと成形ステーシヨンIIを設け、両ステーシヨンI,IIを通る一対のクランプチエン2,2をガイドする案内レール3,3(第6図)を配置し、巻込みリール4から案内ロール5を経て繰出すシートSの両側耳縁を、第1図の左側に設けられたクランプチエン2,2の始端部に供給してクランプさせる。クランプチエン2,2は公知のように間欠移動を生ずるものであつて、シートSを加熱ステーシヨンIに停止して加熱し、次いで成形ステーシヨンIIに停止させて成形物Saを成形し、成形の終了と共に該シートSを図の右方に運び出す。第1図はシートSの下面だけを加熱する加熱板6を持つ加熱器7をシリンダ8により上下に移動できるようにしたものを示す。」(第2頁第4欄第43行?第3頁第5欄第23行)
(ウ)「成形ステーシヨンIIには一定のレベルに送られて停止するシートSの一方の面(下面)に口縁10を移動して、第6図のように少し許り突き上げるチヤンバー9を設け、該チヤンバー9を上下動作を行わせるチヤンバーシリンダ12のロツド13上に連結する。チヤンバー9には吸排気管11を設けると共に内部に成形型シリンダ14のロツド15に設けたベース16上に成形型17を取付ける。」(第3頁第5欄第30?38行)
(エ)「本実施例においては、加熱ステーシヨンにおいて成形適温に加熱されたシートSが第4図のように成形ステーシヨンに移動して停止すると、その停止直前からチヤンバーシリンダ12のロツド13が上方に伸長して口縁10によりシートSの下面を少し突き上げる。このとき第1シール部材24のシール板23と第2シール部材33,33aの・・・シール板がシートSの上面に待機しているから、口縁10がシートSを突き上げ、前記各シール板を板ばね22、ばね30及びレール用シリンダ31の弾力により撓ませて柔軟にシートSをシールする。(第5,6図)。
このときチヤンバー9の吸排気管11から圧縮エアーを吹き込むと、シートSは第6図のように口縁10の内周面を膨らませてプリブローを生じる。このときに成形シリンダ14のロツド15を伸長し、プリブローされたシートSを成形型により突き上げ、同時に多数の真空吸引(図示せず)を設けた成形型17を該成形型を取付けたベース16に連結した真空吸引管11aから真空吸引を施し、シートSを成形型17に密着する真空成形を公知の通りに行う。
この成形が終わると前記の真空吸引を中断し、要すれば真空吸引管11aから加圧エアーを少し吹き込み、同時にチヤンバーシリンダ12及び成形型シリンダ14の各ロツドを収縮し、かつシール用シリンダ31のロツド32を収縮し、後側の第2シール部材33aがシートSの成形品Saの送り出しを妨害しない高さにしてシートSを送り出す。」(第4頁第7欄第13行?同第8欄第13行)

上記の記載を総合すると、引用刊行物3には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「連続樹脂シートS(シートS)を成形の対象にする熱成形機であって、
シートSの下面だけを加熱する加熱板6を持つ加熱器7をシリンダ8により上下に移動できるようにした加熱ステーシヨンIと、内部に成形型17を取付けたチヤンバー9を備える成形ステーシヨンIIとを設け、
両ステーシヨンI,IIを通る一対のクランプチエン2,2をガイドする案内レール3,3を配置し、
巻込みリール4から案内ロール5を経て繰出すシートSの両側耳縁を、クランプチエン2,2の始端部に供給してクランプさせてシートSを間欠移動させ、シートSを加熱ステーシヨンIに停止して加熱し、次いで成形ステーシヨンIIに停止させて、シートSの内周面を膨らませてプリブローされたシートSを成形型により突き上げ、同時に多数の真空吸引を設けた成形型17により真空吸引を施し、シートSを成形型17に密着させる真空成形を行い、成形の終了と共に成形品Saが成形されたシートSを運び出す熱成形機。」

(2)対比
補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「熱成形装置10」は、「樹脂シート熱成形部14」が「上テーブル14aと、成形型14bと…を備えており」、「上テーブル14aの樹脂シートSに対面する側には、雌型である成形型14bが型面を樹脂シートSに向けて配設されており、各雌型の型間」が「上テーブル14aの下降によって樹脂シートSに略当接し、…樹脂シートSに対する熱成形が行なわれ」るものであるから、
(ア)引用発明1の「樹脂シートS」及び「熱成形装置10」は、それぞれ、補正発明の「樹脂シート」及び「(搬送方向に連続した樹脂シートから凹凸のある樹脂製品を形成する)装置」に相当し、
(イ)引用発明1の「樹脂シート熱成形部14」と、補正発明の「搬送した前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構で保持した状態で前記樹脂シートから前記凹凸のある樹脂製品を形成する手段」とは、「前記樹脂シートから前記凹凸のある樹脂製品を形成する手段」である点で共通する。
イ 引用発明1は、「樹脂シートS」が「樹脂シートガイド11cにて搬送経路を形成されることにより後工程に供給され」るから、引用発明1の「樹脂シートガイド11c」と、補正発明の「前記シート送り方向に沿った平坦な上面を有し、前記樹脂シートの幅方向への移動を規制しながら搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、該樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるために前記平坦な上面に沿って前記樹脂シートを案内する受入部材」とは、「搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、前記樹脂シートを案内する受入部材」である点で共通する。

よって、補正発明と引用発明1とは、
「搬送方向へ連続した樹脂シートから凹凸のある樹脂製品を形成する装置において、 前記樹脂シートから前記凹凸のある樹脂製品を形成する手段と、 搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、前記樹脂シートを案内する受入部材と、を具備する樹脂製品を形成する装置。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

補正発明は、「樹脂シートの幅方向の両端部を保持するための保持機構を有し、該保持機構で前記樹脂シートの幅方向の両端部を保持して前記樹脂シートをシート送り方向へ搬送するシート送り装置」を具備するとともに、「凹凸のある樹脂製品を形成する手段」が、「搬送した前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構で保持した状態」で前記樹脂シートから前記凹凸のある樹脂製品を形成し、また、「(搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、前記樹脂シートを案内する)受入部材」が、「前記シート送り方向に沿った平坦な上面を有し、前記樹脂シートの幅方向への移動を規制しながら」搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、「該樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるために前記平坦な上面に沿って」前記樹脂シートを案内し、さらに、「前記樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるための前記受入部材の平坦な上面から空気を噴出して前記樹脂シートを前記受入部材から浮かせるシート浮上手段」を具備するものであるのに対し、引用発明1は、そのような「(『保持機構』を有する)シート送り装置」を具備しておらず、また、「受入部材(樹脂シートガイド11c)」が、上記のようなシート送り方向に沿った平坦な上面を有し、樹脂シートの幅方向への移動を規制しながら搬送中の前記樹脂シートを受け入れ、樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるために前記平坦な上面に沿って該樹脂シートを案内するものではなく、さらに、受入部材の平坦な上面から空気を噴出して前記樹脂シートを前記受入部材から浮かせるシート浮上手段を具備するものでもない点(以下「相違点」という。)。

(3)判断
上記相違点につき検討する。
上記(1)ウによれば、引用刊行物3には、「加熱ステーシヨンIと、…成形ステーシヨンIIとを設け、両ステーシヨンI,IIを通る一対のクランプチエン2,2をガイドする案内レール3,3を配置し、…シートSの両側耳縁を、クランプチエン2,2の始端部に供給してクランプさせてシートSを間欠移動させ」る「熱成形機」の発明(引用発明2)が記載され、「加熱ステーシヨンI」と「成形ステーシヨンII」において「シートS」の両側耳縁をクランプしてガイドするものが示されており、引用発明1に上記引用発明2を適用して、その「樹脂シート搬送部13」及び「樹脂シート熱成形部14」に「樹脂シートS」の両側耳縁をクランプしてガイドする保持機構を設けることは、当業者が容易になし得ることといえる。
しかしながら、引用発明1の「熱成形装置10」は、「樹脂シートガイド11c」と「(樹脂シート搬送ガイドロール13a及び加熱テーブル13bを有する)樹脂シート搬送部13」との間に、「(樹脂シートガイドロール12a及びプレヒータロール12bを備える)樹脂シート予備加熱部12」が設けられているから、たとえ上記のように「樹脂シート搬送部13」及び「樹脂シート熱成形部14」に「樹脂シートS」の両側耳縁をクランプしてガイドする保持機構を設けたとしても、その「受入部材(樹脂シートガイド11c)」が、補正発明のように、「樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるために前記平坦な上面に沿って前記樹脂シートを案内する」ものになることは想定し難い。
なお、上記(1)イによれば、引用刊行物2には、空気などの流体を噴出させて被搬送物を浮上(非接触)状態で搬送する装置や方法が開示されているが、引用刊行物2に上記開示があるとしても、引用発明1において、その「受入部材(樹脂シートガイド11c)」が、「樹脂シートの幅方向の両端部を前記保持機構に保持させるために前記平坦な上面に沿って前記樹脂シートを案内する」ものになることが想定し難いのは上述したとおりである。
よって、本願の発明をみることなく、引用発明1に、引用刊行物2に記載された事項及び引用刊行物3に記載された発明を適用して、補正発明の上記相違点に係る構成を当業者が容易に想到できたということはできない。

また、補正発明は、引用刊行物1ないし3をはじめ、原査定及び前置報告において拒絶の理由としてあげられたその他の引用刊行物に記載されている発明あるいは記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願の発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願の各請求項に係る発明については、原査定の拒絶の理由及び前置報告の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-06-30 
出願番号 特願2008-224345(P2008-224345)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 立人  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 畑井 順一
吉野 公夫
発明の名称 樹脂製品形成装置、樹脂シート成形装置、樹脂シートトリミング装置、シート搬送装置、樹脂製品製造方法、及び、シート搬送方法  
代理人 横井 俊之  
代理人 池田 建志  

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