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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1289410
審判番号 不服2013-6878  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-15 
確定日 2014-07-03 
事件の表示 特願2008-205522「端末装置、基地局装置検出方法、無線通信システム、及び基地局装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月18日出願公開、特開2010- 41652〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年8月8日の出願であって、平成24年9月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年12月3日に手続補正がなされ、平成25年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年4月15日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年12月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
第1及び第2の基地局群を備えた無線通信システムにおいて利用される端末装置であって、該第2の基地局群に属する特定の基地局についてアクセスが許容され、該特定の基地局以外の基地局についてアクセスが許容されない端末装置において、
前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から識別子を受信する受信部と、
受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行し、前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する検出部と
を備えることを特徴とする端末装置。」


第3.特許法第29条の2の理由について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特願2010-520882号(以下、「出願1」という。)は、国内優先権主張を伴う出願である。その国内優先権主張の基礎となった出願は、特願2008-184343号(以下、「出願2」という。)である。
本願の出願日(平成20年8月8日)は、出願1の国際出願日(平成21年7月15日)と出願2の出願日(平成20年7月15日)の間に位置しているため、出願1から引用する事項は、出願2の明細書、請求の範囲及び図面にも記載されている事項である必要がある。
したがって、以下の摘記は、出願2の明細書、請求の範囲及び図面から摘記する。なお、出願2の公開公報は発行されていないが、出願1が公開された後は、何人も出願2を閲覧請求することにより、出願2の書類の内容を確認することができる。(特許庁の方式審査便覧58.20「書類、ひな形及び見本の閲覧等について」(URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/binran_mokuji.htm)参照。)

1.引用発明1
出願2の明細書、請求の範囲及び図面には、以下の事項が記載されている。

(a)段落番号【0008】
「【0008】
また、当該ホームセル#aにアクセス権を持たない移動局UEも、同様にホームセル#aをサーチしてしまうという問題点があった。」

(b)段落番号【0021】
「【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る移動局UEは、位置登録処理部11と、対応関係情報管理部12と、アクセス情報管理部13と、待ち受け処理部14とを具備している。」

(c)段落番号【0024】-【0025】
「【0024】
対応関係情報管理部12は、図3に示すように、マクロセル(親マクロセル)#Aと、ホームセル#aとを関連付けて管理するように構成されている。
【0025】
アクセス情報管理部13は、移動局UEに対してアクセス権が設定されているホームセル(例えば、ホームセル#a)を管理するように構成されている。」

(d)段落番号【0031】
「【0031】
一方、待ち受け処理部14は、対応関係情報管理部12によって管理されているマクロセル(親マクロセル)に該当しないセルでは、ホームセルに対するセルサーチ処理を起動しない、すなわち、ホームセルにおける無線品質を測定しないように構成されている。」

(e)段落番号【0035】-【0037】
「【0035】
図4に示すように、ステップS101において、移動局UEは、対応関係情報管理部12を参照して、現在の待ち受けセル(マクロセル)を親マクロセルとするホームセルが存在するか否かについて判定する。
【0036】
存在しないと判定された場合、本動作は、ステップS105に進み、移動局UEは、現在の待ち受けセルにおいて待ち受けを継続する。
【0037】
一方、存在すると判定された場合、ステップS102において、移動局UEは、上述のホームセルにおけるパイロット信号の受信を試みる。」

したがって、出願1の明細書、請求の範囲及び図面、そして出願2の明細書、請求の範囲及び図面には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「従来技術の、当該ホームセル#aにアクセス権を持たない移動局UEも、同様にホームセル#aをサーチしてしまうという問題点を解消するための移動局UEであって、
移動局UEは、位置登録処理部11と、対応関係情報管理部12と、アクセス情報管理部13と、待ち受け処理部14とを具備しており、
対応関係情報管理部12は、マクロセル(親マクロセル)#Aと、ホームセル#aとを関連付けて管理するように構成されており、
アクセス情報管理部13は、移動局UEに対してアクセス権が設定されているホームセル(例えば、ホームセル#a)を管理するように構成されており、
一方、待ち受け処理部14は、対応関係情報管理部12によって管理されているマクロセル(親マクロセル)に該当しないセルでは、ホームセルに対するセルサーチ処理を起動しない、すなわち、ホームセルにおける無線品質を測定しないように構成されており、
ステップS101において、移動局UEは、対応関係情報管理部12を参照して、現在の待ち受けセル(マクロセル)を親マクロセルとするホームセルが存在するか否かについて判定し、
存在しないと判定された場合、本動作は、ステップS105に進み、移動局UEは、現在の待ち受けセルにおいて待ち受けを継続し、
一方、存在すると判定された場合、ステップS102において、移動局UEは、上述のホームセルにおけるパイロット信号の受信を試みる、
移動局UE。」


2.本願発明と引用発明1の一致点・相違点

引用発明1のマクロセルの基地局群が、本願発明の「第1の基地局群」に相当する。
引用発明1のホームセルの基地局群が、本願発明の「第2の基地局群」に相当する。

引用発明1では、アクセス情報管理部13が、移動局UEに対してアクセス権が設定されているホームセル(例えば、ホームセル#a)を管理するように構成されているから、引用発明1のホームセル#aの基地局が、本願発明の「該第2の基地局群に属する特定の基地局」に相当し、本願発明と引用発明1とは、「該第2の基地局群に属する特定の基地局についてアクセスが許容され」ている点で一致している。

引用発明1では、従来技術では、当該ホームセル#aにアクセス権を持たない移動局UEも、同様にホームセル#aをサーチしてしまうという問題点があったとされ、且つ引用発明1では、アクセス情報管理部13は、移動局UEに対してアクセス権が設定されているホームセル(例えば、ホームセル#a)を管理するように構成されているとされているから、移動局UEに対してアクセス権が設定されていないホームセルというものも存在していることが前提であることが明らかである。
引用発明1の、移動局UEに対してアクセス権が設定されていないホームセルの基地局が、本願発明の「該特定の基地局以外の基地局」に相当し、本願発明と引用発明1とは、「該特定の基地局以外の基地局についてアクセスが許容されない」点で一致している。

以上の結果、本願発明の端末装置と引用発明1の移動局UEとは、「第1及び第2の基地局群を備えた無線通信システムにおいて利用される端末装置であって、該第2の基地局群に属する特定の基地局についてアクセスが許容され、該特定の基地局以外の基地局についてアクセスが許容されない端末装置」である点で一致している。

引用発明1のステップS101において、移動局UEは、対応関係情報管理部12を参照して、現在の待ち受けセル(マクロセル)を親マクロセルとするホームセルが存在するか否かについて判定しているから、移動局UEが、現在の待ち受けセル(マクロセル)がどのマクロセルであるかを表す識別子を有していることは明らかである。そして移動局UEは時々刻々移動するものであることを考慮すれば、該識別子は、現在の待ち受けセル(マクロセル)から移動局UEが受信したものであることは明らかである。また、引用発明1の現在の待ち受けセル(マクロセル)の基地局は、本願発明の「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局」に相当する。したがって、本願発明と引用発明1とは、「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から識別子を受信する受信部」を備える点で一致している。

引用発明1のステップS101において、移動局UEは、対応関係情報管理部12を参照して、現在の待ち受けセル(マクロセル)を親マクロセルとするホームセルが存在するか否かについて判定している。対応関係情報管理部12に存在するマクロセル(親マクロセル)#Aは、マクロセルの基地局群に属する基地局のうちホームセル#aに対応付けられた基地局の識別子である。したがって、引用発明1のステップS101において、対応関係情報管理部12を参照して、現在の待ち受けセル(マクロセル)を親マクロセルとするホームセルが存在する場合は、本願発明の「受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合」に相当する。

引用発明1のステップS102の 移動局UEが、上述のホームセルにおけるパイロット信号の受信を試みることは、本願発明の「前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、「受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行」する点で一致している。

引用発明1のステップS101において、対応関係情報管理部12を参照して、現在の待ち受けセル(マクロセル)を親マクロセルとするホームセルが存在しない場合は、本願発明の「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合」に相当する。
引用発明1のステップS105の、移動局UEが、現在の待ち受けセルにおいて待ち受けを継続することは、本願発明の「前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明1は、「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する」点で一致している。

よって、 引用発明1は、本願発明の「受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行し、前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する検出部」を備えている。

以上の検討の結果、本願発明と引用発明1との間に相違点は無く、本願発明は、引用発明1と同一である。


3.まとめ
本願発明は、本願出願の日前の日本語出願であって、その出願後に国際公開がされた出願1の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された引用発明1と同一であり、本願の発明者が出願1に係る引用発明1をしたものと同一でなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が出願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


第4.特許法第29条第2項の理由について

1.引用発明2
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平9-084095号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(f)段落番号【0002】
「【0002】
【発明の属する技術分野】本発明は移動通信装置、固定通信装置、通信システム及び通信方法に関し、例えば米国で提案されているPCS(Personal Communication Service)システムと呼ばれるセルラーシステムと、家庭用又は業務用コードレス電話の親機に相当するホームベースステーシヨン(Home Base Station :以下これをHBSと呼ぶ)との双方で利用可能な移動通信装置に適用して好適なものである。」

(g)段落番号【0029】
「【0029】(1)第1実施例
図13との対応部分に同一符号を付して示す図1において、本発明を適用したPCS端末装置30を示す。このPCS端末装置30は大きく分けて制御部11、PCS通信部12、HBS通信部13、送受信用のアンテナ16、ハンドオフ処理部31、記憶部32及び比較部33によつて構成されている。」

(h)段落番号【0032】
「【0032】一方、PCS基地局装置2とHBS4との間でハンドオフする場合、最初にハンドオフするときには従来と同様にハンドオフ先の信号受信状況を調べてハンドオフを行うが、一度ハンドオフした以降についてはハンドオフしたときの基地局選択信号を記憶しておき、その基地局選択信号が示すエリアにいるときだけハンドオフ先の信号受信状況を調べてハンドオフを行う。このようにすることにより、ハンドオフ可能な位置にいるときだけハンドオフ先の信号受信状況を調べることになり、従来のように闇雲にハンドオフ先の信号受信状況を調べることがなくなる。これにより従来に比してハンドオフ先の信号受信状況を調べる回数が減り、待ち受け時の消費電力を減らすことができる。」

(i)段落番号【0033】
「【0033】このためPCS端末装置30には記憶部32が設けられており、ハンドオフ処理部31の指示に基づいてPCS通信部12から出力されるハンドオフしたときのPCS基地局装置2の基地局選択信号を記憶し得るようになされている。またPCS端末装置30には比較部33が設けられており、ハンドオフ処理部31の指示に基づいてPCS通信部12から出力される基地局選択信号と記憶部32に記憶されている基地局選択信号とを比較することにより、現状ハンドオフ可能な位置にいるか否か判断し得るようになされている。」

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「PCS(Personal Communication Service)システムと呼ばれるセルラーシステムと、家庭用又は業務用コードレス電話の親機に相当するホームベースステーシヨン(Home Base Station :以下これをHBSと呼ぶ)との双方で利用可能な移動通信装置であって、
本発明を適用したPCS端末装置30は大きく分けて制御部11、PCS通信部12、HBS通信部13、送受信用のアンテナ16、ハンドオフ処理部31、記憶部32及び比較部33によつて構成されており、
PCS端末装置30には記憶部32が設けられており、ハンドオフ処理部31の指示に基づいてPCS通信部12から出力されるハンドオフしたときのPCS基地局装置2の基地局選択信号を記憶し得るようになされており、またPCS端末装置30には比較部33が設けられており、ハンドオフ処理部31の指示に基づいてPCS通信部12から出力される基地局選択信号と記憶部32に記憶されている基地局選択信号とを比較することにより、現状ハンドオフ可能な位置にいるか否か判断し得るようになされており、
PCS基地局装置2とHBS4との間でハンドオフする場合、最初にハンドオフするときには従来と同様にハンドオフ先の信号受信状況を調べてハンドオフを行うが、一度ハンドオフした以降についてはハンドオフしたときの基地局選択信号を記憶しておき、その基地局選択信号が示すエリアにいるときだけハンドオフ先の信号受信状況を調べてハンドオフを行うことにより、ハンドオフ可能な位置にいるときだけハンドオフ先の信号受信状況を調べることになり、従来のように闇雲にハンドオフ先の信号受信状況を調べることがなくなり、これにより従来に比してハンドオフ先の信号受信状況を調べる回数が減り、待ち受け時の消費電力を減らすことができる、
移動通信装置。」


2.本願発明と引用発明2の一致点・相違点

引用発明2のPCS基地局装置が複数台存在することは明らかであり、この複数台のPCS基地局装置が、本願発明の「第1の基地局群」に相当する。
引用発明2のHBS4が、本願発明の「第2の基地局」に相当する。
引用発明2のHBS4は、アクセスが許容されるので、本願発明の「特定の基地局」に相当し、本願発明と引用発明2とは、「第2の基地局である特定の基地局についてアクセスが許容され」ている点で一致している。

よって、本願発明の端末装置と引用発明2の移動通信装置とは、「第1の基地局群と第2の基地局を備えた無線通信システムにおいて利用される端末装置であって、該第2の基地局である特定の基地局についてアクセスが許容される端末装置」である点で一致している。

引用発明2では、PCS通信部12から出力される基地局選択信号と記憶部32に記憶されている基地局選択信号とを比較することにより、現状ハンドオフ可能な位置にいるか否か判断しているから、基地局選択信号は、それを送信しているPCS基地局装置を識別する機能を有するので、本願発明の「識別子」に相当する。

引用発明2のPCS通信部12は、基地局選択信号を出力するから、本願発明の「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から識別子を受信する受信部」に相当する。

引用発明2では、PCS基地局装置2とHBS4との間でハンドオフする場合、一度ハンドオフした以降についてはハンドオフしたときの基地局選択信号を記憶しておく。したがって、記憶部32に基地局選択信号が記憶されているPCS基地局装置は、HBS4との間でハンドオフしたことがあるPCS基地局装置と看做されるわけであり、且つその基地局選択信号が記憶部32に記憶されることにより、HBS4との対応づけができている。したがって、記憶部32に記憶されている基地局選択信号は、PCS基地局装置群に属するPCS基地局装置のうちHBS4に対応づけられたPCS基地局装置の基地局選択信号である。

したがって、引用発明2において、PCS通信部12から出力される基地局選択信号と記憶部32に記憶されている基地局選択信号とを比較して、一致する、すなわち現状ハンドオフ可能な位置にいると判断した場合が、本願発明の「受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合」に相当する。
引用発明2のハンドオフ先の信号受信状況を調べることが、本願発明の「前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行」に相当する。
よって、本願発明と引用発明2とは、「受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行」する点で一致している。

引用発明2において、PCS通信部12から出力される基地局選択信号と記憶部32に記憶されている基地局選択信号とを比較して、一致しない、すなわち現状ハンドオフ可能な位置にいないと判断した場合が、本願発明の「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合」に相当する。
引用発明2のハンドオフ先の信号受信状況を調べないことが、本願発明の「前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明2とは、「前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する」点で一致している。

よって、引用発明2は、本願発明の「受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行し、前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する検出部」を備えている。

したがって、本願発明と引用発明2の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「第1の基地局群と第2の基地局を備えた無線通信システムにおいて利用される端末装置であって、該第2の基地局である特定の基地局についてアクセスが許容される端末装置において、
前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から識別子を受信する受信部と、
受信した該識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子である場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理を実行し、前記第1の基地局群に属するいずれかの基地局から受信した識別子が、前記第1の基地局群に属する基地局のうち前記特定の基地局に対応づけられた基地局の識別子でない場合、前記特定の基地局についての基地局検出処理の実行を規制する検出部と
を備えることを特徴とする端末装置。」である点

[相違点]
本願発明では、第2の基地局が群を構成しており、端末装置は、該第2の基地局群に属する特定の基地局についてアクセスが許容され、該特定の基地局以外の基地局についてアクセスが許容されないのに対して、引用発明2では、HBSが群を構成するのか否か不明であり、移動通信装置が、HBS4以外のHBSについてアクセスを許容されないことが明記されていない点。


3.相違点についての検討
刊行物1の段落番号【0005】に「【0005】一方、HBS4は家庭や事務所等に設置されるコードレス電話システムの親機に相当するものである。HBS4はPCS基地局装置の(当審注:「に」の誤記と認められる。)代わつてPCS端末装置と無線通信することにより自分に接続されている有線回線を経由して他の電話と当該PCS端末装置との音声等の通信を可能にする。すなわちHBS4はPCS端末装置とコードレス電話システム、いわゆる閉域通信システムを構築する。この場合、HBS4はPCS端末装置がHBS4を識別し得るように識別信号を定期的に、或いはPCS端末装置からの要求に応じて送信する。一般にPCS基地局装置を経由した無線回線は有線回線よりも通話料金が高い。このためHBS4を各家庭等に設置し、帰宅した後はPCS基地局装置を利用せずHBS4を利用して通話料金を下げることが考えられている。このようなHBS4は数多くの家庭に設置されるためPCS基地局装置の1つのサービスエリア内に千台以上存在する可能性がある。」と記載されている。
したがって、HBSは1台だけではなく、複数台存在している。しかし、帰宅した後はHBS4を利用して通話料金を下げるわけであるから、自宅以外の家庭や自分の事務所以外の事務所に設置されているHBSについては、該HBSには接続しないように構成するのが自然である。
よって、引用発明において、HBSが群を構成し、自宅以外の家庭や自分の事務所以外の事務所に設置されているHBSについては、特定の基地局以外の基地局として、アクセスが許容されないように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明2から当業者が予測できる範囲のものである。


4.まとめ
本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願出願の日前の日本語出願であって、その出願後に国際公開がされた出願1の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された引用発明1と同一であり、本願の発明者が出願1に係る引用発明1をしたものと同一でなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が出願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-02 
結審通知日 2014-05-07 
審決日 2014-05-22 
出願番号 特願2008-205522(P2008-205522)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 161- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田畑 利幸  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 加藤 恵一
江口 能弘
発明の名称 端末装置、基地局装置検出方法、無線通信システム、及び基地局装置  
代理人 林 恒徳  
代理人 土井 健二  

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