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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1289534
審判番号 不服2013-14503  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-29 
確定日 2014-07-07 
事件の表示 特願2008-268756号「ショーケースの運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月30日出願公開、特開2010- 96447号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年10月17日の出願であって、平成25年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年7月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

2 平成25年7月29日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月29日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲に、
「【請求項1】
断熱壁により構成された本体内に前面が開口した貯蔵室を形成し、該貯蔵室の下部、後部及び上部に設けられたダクト内を通り、貯蔵室の上部前端に設けた吹出口から下方に向けて吹き出され、貯蔵室の下部前端に設けた吸込口に吸い込まれて前記貯蔵室の下部に循環する冷気のエアカーテンで貯蔵室の開口部を覆うことにより貯蔵室内を冷却するショーケースの運転方法において、
前記ダクト内に、冷却容量が異なる複数の冷却器を配置するとともに、冷媒を導入する冷却器を、前記複数の冷却器の中から冷却負荷に応じて選択することを特徴とするショーケースの運転方法。
【請求項2】
選択した冷却器に応じて前記冷気を循環させるためのファンの回転数を変更することを特徴とする請求項1記載のショーケースの運転方法。
【請求項3】
前記冷却負荷は、該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、該ショーケースが設置された周囲の環境情報と、季節情報との少なくとも一つの情報によって設定されることを特徴とする請求項1又は2記載のショーケースの運転方法。
【請求項4】
前記冷却容量が異なる複数の冷却器は、冷却容量の比が1:1.8?2.2:3.6?4.4の3基の冷却器であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のショーケースの運転方法。
【請求項5】
前記冷却容量が異なる複数の冷却器は、冷却容量の比が1:2:4の3基の冷却器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のショーケースの運転方法。」

とあるのを、

「【請求項1】
断熱壁により構成された本体内に前面が開口した貯蔵室を形成し、該貯蔵室の下部、後部及び上部に設けられたダクト内を通り、貯蔵室の上部前端に設けた吹出口から下方に向けて吹き出され、貯蔵室の下部前端に設けた吸込口に吸い込まれて前記貯蔵室の下部に循環する冷気のエアカーテンで貯蔵室の開口部を覆うことにより貯蔵室内を冷却するショーケースの運転方法において、
前記ダクト内に、冷却容量が異なる複数の冷却器を配置するとともに、冷媒を導入する冷却器を、前記複数の冷却器の中から冷却負荷に応じて選択し、
前記冷却負荷は、少なくとも該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、季節情報を含む複数の情報とによって設定されることを特徴とするショーケースの運転方法。
【請求項2】
選択した冷却器に応じて前記冷気を循環させるためのファンの回転数を変更することを特徴とする請求項1記載のショーケースの運転方法。
【請求項3】
前記冷却容量が異なる複数の冷却器は、冷却容量の比が1:1.8?2.2:3.6?4.4の3基の冷却器であることを特徴とする請求項1又は2記載のショーケースの運転方法。
【請求項4】
前記冷却容量が異なる複数の冷却器は、冷却容量の比が1:2:4の3基の冷却器であることを特徴とする請求項1又は2記載のショーケースの運転方法。」

とする補正を含むものである。

本件補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である冷却負荷について、「該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、該ショーケースが設置された周囲の環境情報と、季節情報との少なくとも一つの情報」によって設定することを、「少なくとも該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、季節情報を含む複数の情報」によって設定することと限定して補正後の請求項1とするものであり、かつ、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。)について、以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-87430号公報(以下「引用例」という。)には、以下の各事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】商品陳列棚を照明する手段を備え、営業時、前記照明手段をオンする冷気循環式オープンショーケースにおいて、前記照明手段のオン,オフに応じて前記オープンショーケースの冷却能力を夫々大小に切替える手段を備えたことを特徴とする冷気循環式オープンショーケース。
【請求項2】請求項1に記載のオープンショーケースにおいて、複数の冷却器を備え、前記冷却能力切替手段はこの冷却器の運転台数を増減する手段を持つものであることを特徴とする冷気循環式オープンショーケース。」

(1b)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は冷気循環式のオープンショーケース、特に夜間(閉店時)の冷え過ぎを防止し得るようにした冷気循環式オープンショーケースに関する。なお以下各図において同一の符号は同一もしくは相当部分を示す。」

(1c)「【0002】
【従来の技術】図5はこの種の冷気循環式オープンショーケースの昼間(開店中)における側部断面図である。同図において1は外箱、2は内箱、3はこの外箱1と内箱2との間に形成された冷気ダクト、4はこのダクト3内に設けられた冷却器(エバポレータ)、5はこのダクト3内に冷気を循環させるための送風機、6はこのダクト3の一方の端部となる冷気吹出口、7は同じくこのダクト3の他方の端部となる冷気吸入口、8はこの冷気吹出口6と冷気吸込口7との間に形成されるエアカーテン、9は商品の陳列棚、10は点灯されているケース照明、11は夜間、このショーケースの前面開口部(エアカーテン8の形成部)を閉じるためのナイトカバーである。」

(1d)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術の場合、夜間(閉店中)になるとケース照明OFF,ナイトカバー付となるので冷却負荷が少なくなり、ショーケース庫内の温度が設定値よりも低くなり、冷え過ぎとなって、商品が凍結する等の問題が発生していた。また夜間(閉店中)ではショーケース内の商品も少なくなっており、この少ない商品を冷え過ぎに冷却するのは非常にエネルギのむだでもある。そこで本発明はこのような問題を解消できる冷気循環式オープンショーケースを提供することを課題とする。」

(1e)「【0009】
【作用】ショーケースの冷却器回路を2系統に分けて、冷却器を2個設ける。さらにこの冷却器回路に照明信号による切替え回路を設け、冷却器を昼間(開店中)2個使い、夜間(閉店中)1個使いと自動的に切替えるようにする。また送風機の回路についても照明信号による切替え回路を設け、運転するファンの個数を夜間(閉店中)は自動的に減らすようにする。このようして昼間(開店中)は従来と同様のショーケースとし、夜間(閉店中)ではナイトカバーをかけ照明をOFFすることで、自動的に冷却器の容量と、送風機の運転個数を減少させて冷凍能力をダウンさせ、商品の冷え過ぎを防止し、かつ省エネを計る。」

(1f)「【0010】
【実施例】以下図1ないし図4に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は本発明の一実施例としての冷気循環式オープンショーケースの側部断面図で、この図は図5,図6に対応するものである。図1においては図5,図6に対し、冷気ダクト3内の冷却器が昼夜用冷却器4aと昼用冷却器4bとに2分されている点が異なる。
【0011】図4は冷却器4a,4bの配管回路の構成図である。同図においては20は冷却器配管回路、21は膨張弁、18は昼用冷却器4bをON,OFFする切替電磁弁である。」

(1g)「【0013】図2は図1のショーケースの制御回路の要部構成を示す。同図において12はケース照明回路、13は冷却器電磁弁回路、14はケース送風機回路である。また16は照明スイッチ、Xは切替リレー、Xa1?Xa3はこの切替リレーXのa接点である。図2の動作を述べると、昼間(開店中)は照明スイッチ16はONされ、これによりケース照明10が点灯されると同時に、切替リレーXが付勢されてそのa接点Xa1?Xa3がONし、切替電磁弁18および全ての送風機5(5a,5b)がON状態となる。従って図4から判るように冷却器4a,4bも共にON状態となる。他方、夜間(閉店中)には照明スイッチ16はOFFされ、この場合にはこの図2のそのままの接続となり、ケース照明10は消灯されると共に、切替リレーXもOFFされる。従って切替電磁弁18および昼用送風機5bはOFFし、昼夜用冷却器4aおよび昼夜用送風機5aのみが動作を続ける。」

(1h)図1には、オープンショーケースは外箱(1)と内箱(2)とから形成され、オープンショーケースの前面が開口して、内箱(2)の内部に陳列棚(9)を有するスペースが設けられると共に、陳列棚(9)を有するスペースにはケース照明(10)が配置され、陳列棚(9)を有するスペースの下部、後部及び上部には冷気ダクト(3)が形成され、冷気ダクト(3)には、相対的に断面積の大きい昼夜用冷却器(4a)と相対的に断面積の小さい昼用冷却器(4a)が配置され、陳列棚(9)を有するスペースの上部前端に設けられた冷気吹出口(6)から下部前端に設けられた冷気吸込口(7)に向かってエアーカーテン(8)が形成された態様が記載されている。

(1i)図4には、相対的に断面積の大きい昼夜用冷却器(4a)と相対的に断面積の小さい昼用冷却器(4b)が並列に配管接続された態様が記載されている。

上記記載事項1a?1i及び図示内容を総合して、冷気循環式オープンョーケースの運転方法について着目すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「冷気循環式オープンショーケースは外箱(1)と内箱(2)とから形成され、冷気循環式オープンショーケースの前面が開口して、内箱(2)の内部に陳列棚(9)を有するスペースが設けられと共に、陳列棚(9)を有するスペースにはケース照明(10)が配置され、陳列棚(9)を有するスペースの下部、後部及び上部には冷気ダクト(3)が形成され、陳列棚(9)を有するスペースの上部前端に設けられた冷気吹出口(6)から下部前端に設けられた冷気吸込口(7)に向かってエアーカーテン(8)が形成された冷気循環式オープンショーケースの運転方法において、
冷気ダクト(3)には、相対的に断面積の大きい昼夜用冷却器(4a)と相対的に断面積の小さい昼用冷却器(4b)が配置されて並列に配管接続され、昼間(開店中)はケース照明(10)がオンされると同時に、昼夜用冷却器(4a)、昼用冷却器(4b)が共にON状態となり、夜間(閉店中)にはケース照明(10)はオフされると共に、昼夜用冷却器(4a)のみがON状態となり、ケース照明(10)のオン、オフに応じてオープンショーケースの冷却能力を夫々大小に切替える冷気循環式オープンショーケースの運転方法。」

2-4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、
後者の「冷気循環式オープンショーケース」、「冷気ダクト(3)」、「冷気吹出口(6)」及び「冷気吸込口(7)」は、それぞれ前者の「ショーケース」、「ダクト」、「吹出口」及び「吸込口」に相当する。
後者の「外箱(1)」は、外部空間と接触するものであり、陳列棚(9)を有するスペースの冷却空間に外部空間からの熱が伝わらないようにするものであることは技術常識であることから、前者の「断熱壁」としての機能を有することは明らかである。
後者の「外箱(1)と内箱(2)とから形成され」た「冷気循環式オープンショーケース」は、前者の「本体」をなしているといえる。
後者の「内箱(2)の内部」の「陳列棚(9)を有するスペース」は、前者の「貯蔵室」に相当する。
後者の「陳列棚(9)を有するスペースの上部前端に設けられた冷気吹出口(6)から下部前端に設けられた冷気吸込口(7)に向かってエアーカーテン(8)が形成される」ことは、エアーカーテン(8)が冷気循環式オープンショーケースの開口した前面に形成されているので、前者の「貯蔵室の上部前端に設けた吹出口から下方に向けて吹き出され、貯蔵室の下部前端に設けた吸込口に吸い込まれて前記貯蔵室の下部に循環する冷気のエアカーテンで貯蔵室の開口部を覆う」ことといえる。
後者の「冷気循環式オープンショーケース」は、「陳列棚(9)を有するスペース」を冷却するものであることは明らかであり、前者の「貯蔵室内を冷却するショーケース」といえる。
後者の「冷気ダクト(3)には、相対的に断面積の大きい昼夜用冷却器(4a)と相対的に断面積の小さい昼用冷却器(4b)が配置されて並列に配管接続され」ていることは、前者の「ダクト内に、冷却容量が異なる複数の冷却器を配置する」ことといえる。
後者の「ケース照明(10)が配置され」、「昼間(開店中)はケース照明(10)がオンされると同時に、昼夜用冷却器(4a)、昼用冷却器(4b)が共にON状態となり、夜間(閉店中)にはケース照明(10)はオフされると共に、昼夜用冷却器(4a)のみがON状態とし、ケース照明(10)のオン、オフに応じてオープンショーケースの冷却能力を夫々大小に切替える」ことと、前者の「冷媒を導入する冷却器を、前記複数の冷却器の中から冷却負荷に応じて選択し、前記冷却負荷は、少なくとも該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、季節情報を含む複数の情報とによって設定されること」とは、「少なくともショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報を用いて、冷媒を導入する冷却器を、前記複数の冷却器の中から選択する」の点で共通する。

そこで本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)

「断熱壁により構成された本体内に前面が開口した貯蔵室を形成し、該貯蔵室の下部、後部及び上部に設けられたダクト内を通り、貯蔵室の上部前端に設けた吹出口から下方に向けて吹き出され、貯蔵室の下部前端に設けた吸込口に吸い込まれて前記貯蔵室の下部に循環する冷気のエアカーテンで貯蔵室の開口部を覆うことにより貯蔵室内を冷却するショーケースの運転方法において、
前記ダクト内に、冷却容量が異なる複数の冷却器を配置するとともに、少なくともショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報を用いて、冷媒を導入する冷却器を、前記複数の冷却器の中から選択するショーケースの運転方法。」

そして、両者は、次の点で相違する。

(相違点)
複数の冷却器の中から冷媒を導入する冷却器の選択について、本願補正発明は、冷却負荷に応じて選択し、前記冷却負荷は、少なくとも該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、季節情報を含む複数の情報とによって設定されているのに対して、引用発明は、昼間(開店中)はケース照明(10)がオンされると同時に、昼夜用冷却器(4a)、昼用冷却器(4b)が共にON状態となり、夜間(閉店中)にはケース照明(10)はオフされると共に、昼夜用冷却器(4a)のみがON状態とし、ケース照明(10)のオン、オフに応じてオープンショーケースの冷却能力を夫々大小に切替えている点。

2-5.判断
そこで、上記相違点について検討する。

(相違点の判断)
引用発明の昼間(開店中)はケース照明(10)がオンされると同時に、昼夜用冷却器(4a)、昼用冷却器(4b)が共にON状態となり、夜間(閉店中)にはケース照明(10)はオフされると共に、昼夜用冷却器(4a)のみがON状態とし、ケース照明(10)のオン、オフに応じてオープンショーケースの冷却能力を夫々大小に切替えているのは、夜間(閉店中)になるとケース照明OFF、ナイトカバー付となるので冷却負荷が少なくなることから、ショーケース庫内の温度が設定値よりも低くなり、冷え過ぎとなって、商品が凍結する等の問題や、また夜間(閉店中)ではショーケース内の商品も少なくなっており、この少ない商品を冷え過ぎに冷却するのは非常にエネルギのむだとなる問題(上記記載事項1d)に対応するために採用された構成である。
このことから、引用発明は、ケース照明のON状態とOFF状態(店舗の営業中・非営業中という営業状態)によって、オープンショーケースの冷却負荷の大小を判断し、その結果、冷却器を選択しているものといえるので、本願補正発明は、実質的に冷却負荷に応じて冷却器を選択していることということができる。
さらに、ショーケースにおける冷却負荷が、ケース照明のON状態とOFF状態(店舗の営業中・非営業中という営業状態)のほかに、季節、ショーケースの設置場所、時刻、店舗内の空気調和機の有無等により異なることは技術常識といえ(例えば、特開2001-4261号公報【0013】、【0014】、図2、特開昭63-150570号公報第2ページ左下欄第4?8行、特開2001-21247号公報請求項1、【0007】等参照。)、さらに、ショーケースの冷却負荷を判断するために複数の条件を考慮することもまた普通に行われている周知の事項である(例えば、特開2001-4261号公報【0013】、【0014】、図2における季節情報、時刻情報、外気温情報、特開2001-21247号公報請求項1、【0007】の季節、時間等参照。)。
そうすると、引用発明において、冷気循環式オープンショーケースの冷却負荷を判断するに際して、ケース照明のON状態とOFF状態(店舗の営業中・非営業中という営業状態)の情報に加えて、季節情報を含んだ複数の情報を考慮して冷却負荷を判断するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の効果についても、引用発明、技術常識及び周知の事項から当業者が予測し得ない程の効果を奏するものでもない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、技術常識及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成25年11月18日付けの回答書において、請求項1について、冷却負荷の設定を、「店舗の営業中・非営業中の情報と、季節情報と、ショーケースが設置された周囲の環境情報とによって設定される」とする補正案を示しているが、上述のとおり、冷却負荷としてショーケースの設置場所、店舗内の空気調和器の有無等の環境情報により異なることは技術常識といえるので、上記のように請求項1を補正したとしても、請求項1に係る発明は進歩性を有するものとは認められない。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成25年7月29日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年10月17日に願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された各引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用例」に記載したとおりである。

5 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、冷却負荷の設定について、「少なくとも該ショーケースが設置された店舗の営業中・非営業中の情報と、季節情報を含む複数の情報」によることの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2-4.対比」及び「2-5.判断」に記載したとおり引用発明、技術常識及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、技術常識及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-12 
結審通知日 2014-05-13 
審決日 2014-05-26 
出願番号 特願2008-268756(P2008-268756)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲村 靖  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 永石 哲也
山崎 勝司
発明の名称 ショーケースの運転方法  
代理人 小川 眞一  

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