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審決分類 |
審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 C07D |
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管理番号 | 1289867 |
審判番号 | 不服2013-1593 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-29 |
確定日 | 2013-11-07 |
事件の表示 | 特許権存続期間延長登録願2011-700065「タキソテレ三水和物」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成23年4月12日を出願日とする、特許権の存続期間の延長登録の出願であって、平成24年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.本件出願の内容 本件出願は、特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったために、特許第4367829号(以下、「本件特許」という。)の特許発明の実施をすることができなかったとして、1年1月18日の特許権の存続期間の延長登録を求めるものである。 そして、本件出願の願書によれば、その政令で定める処分(以下、「本件処分」という。)の内容は、以下のものとされている。 (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分 薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同条同項の承認 (2)処分を特定する番号 承認番号 22300AMX00068000 (3)処分の対象となった物 処分の対象となった医薬品(販売名): ワンタキソテール点滴静注20mg/1mL 処分の対象となった医薬品の有効成分(一般名): ドセタキセル水和物 (4)処分の対象となった物について特定された用途 乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌 3.本件特許及び本件特許発明 本件特許は、1994年3月18日(特願平6-520721号、優先権主張1993年3月22日、(FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願の一部を、平成15年2月6日に新たな特許出願(特願2003-29438号)として出願され、平成21年9月4日に特許権の設定登録がされたものであって、その特許発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 4-アセトキシ-2α-ベンゾイルオキシ-5β,20-エポキシ-1β,7β,10β-トリヒドロキシ-9-オキソ-11-タキセン-13α-イル(2R,3S)-3-t-ブトキシカルボニルアミノ-3-フェニル-2-ヒドロキシプロピオネート三水和物。」 4.原審の拒絶理由の概要 原審の拒絶の理由は、本件特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当するというものであり、その具体的な理由の概要は、次のとおりである。 ・本件処分の承認書に記載された事項のうち、「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲が、先行処分によって既に実施できるようになっていたから、本件特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったということはできない。 5.判断 承認の対象となる医薬品は、承認書に記載された多数の事項で特定されたものであるのに対し、特許発明は技術的思想の創作を「発明特定事項」によって表現したものである。 したがって、特許法第67条の3第1項第1号の判断において、「特許発明の実施」は、処分の対象となった医薬品その物の製造販売等の行為ととらえるのではなく、処分の対象となった医薬品の承認書に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項(以下、「発明特定事項に該当する事項」という。)によって特定される医薬品の製造販売等の行為ととらえるのが適切である。 ただし、特許法第68条の2は、存続期間が延長された場合の特許権の効力について、「処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての特許発明の実施」以外の行為に特許権の効力が及ばないことを規定しているところ、医薬品の承認においては用途に該当する事項が定められていることから、用途を特定する事項を発明特定事項として含まない特許発明の場合には、「特許発明の実施」は、処分の対象となった医薬品の承認書に記載された事項のうち、特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項及び用途に該当する事項(以下、「発明特定事項及び用途に該当する事項」という。)によって特定される医薬品の製造販売等の行為ととらえるのが適切である。 そして、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」を備えた先行医薬品についての処分(先行処分)が存在する場合には、特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲は、先行処分によって実施できるようになっていたといえ、特許法第67条の3第1項第1号の拒絶理由が生じる。 これを本件についてみると、本件特許発明は、請求項1に記載された化合物についての、いわゆる化学物質発明といわれるものであり、その発明特定事項はもっぱら化合物であって、用途を特定する事項を発明特定事項として含まないことは明らかである。 そこで、本件特許発明について、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項及び用途に該当する事項」を備えた先行医薬品についての処分が存在するか否かについて検討する。 本件医薬品製造販売承認書によれば、本件処分は、平成23年1月14日に受けたとされるものであり、該医薬品の有効成分はドセタキセル水和物であり、該医薬品の効能・効果は、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌であると認められ、これは用途に該当する事項である。そして、上記ドセタキセル水和物は、本件特許発明の発明特定事項である上記化合物に該当する事項である。してみると、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項及び用途に該当する事項」は、「有効成分としてドセタキセル水和物、用途として、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌」であると認められる。 一方、承認番号22100AMX01407000の医薬品製造販売承認(以下、「先行処分」という。)は、平成21年6月26日に受けたとされるものであり、該医薬品の有効成分はドセタキセル水和物であり、該医薬品の効能・効果は、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌であると認められる。(先行処分の内容につき、必要ならば、タキソテール点滴静注用20mgの医薬品インタビューフォームを参照。) してみれば、該先行処分は、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項及び用途に該当する事項」である「有効成分としてドセタキセル水和物、用途として、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌」を備えた先行医薬品についてのものであることが明らかである。 したがって、本件特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項及び用途に該当する事項」によって特定される範囲は、該先行処分によって実施できるようになっていたといえ、本件特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められない。 この点について、審判請求人は、審判請求書において、 「・・・「先行処分」によって本件特許発明の実施が可能になった範囲は、審査官殿が指摘されたように「有効成分としてドセタキセル三水和物、効能・効果(用途)として乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌」となる全ての処分に及ぶものではなく、あくまで、「有効成分としてドセタキセル三水和物、効能・効果(用途)として乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌」を、2つの異なったバイアル、「タキソテール点滴静注用バイアル」(ドセタキセル水和物および適量のポリソルベート80を含む溶液)、及び、「添付溶解液(13%エタノール溶液)」(すなわち、エタノールの水溶液)からなる医薬品の形態で実施する範囲となります。 一方、「本件処分」によって本件特許発明が実施可能となった範囲は、「有効成分としてドセタキセル三水和物、効能・効果(用途)として乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌」を、有効成分としてドセタキセル水和物(三水和物)並びに溶媒(添加物)としてポリソルベート80と無水エタノールの混合液を含む1種類のバイアルからなる医薬品の形態で実施する範囲であって、上記「先行処分」ではこの範囲は実施できませんでした。 ・・・ すなわち、「本件処分」の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」で定められる範囲は「先行処分」によって実施可能であった範囲ではなく、「本件処分」によって初めて実施が可能となった範囲であります。」 などと主張するが、審判合議体の判断は上述のとおりであって、この判断と異なる見解に基づくものと認められる審判請求人の上記主張は、採用することができない。 6.むすび 以上のとおり、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当し、特許権の存続期間の延長登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-27 |
結審通知日 | 2013-06-04 |
審決日 | 2013-06-17 |
出願番号 | 特願2011-700065(P2011-700065) |
審決分類 |
P
1
8・
71-
Z
(C07D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 典之 |
特許庁審判長 |
内藤 伸一 |
特許庁審判官 |
内田 淳子 今村 玲英子 |
発明の名称 | タキソテレ三水和物 |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 竹林 則幸 |