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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02C
管理番号 1290144
審判番号 不服2013-11112  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2014-07-23 
事件の表示 特願2008-523844「コンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 1日国際公開、WO2007/013857、平成21年 1月29日国内公表、特表2009-503578〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年7月28日,シンガポール共和国)を国際出願日とする出願であって,平成20年3月28日に翻訳文とともに手続補正書が提出され,平成23年7月29日付けで拒絶理由が通知され,同年11月2日に意見書が提出され,平成24年4月6日付けで拒絶理由が通知され,同年7月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成25年2月5日付けで拒絶査定がなされたところ,同年6月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
なお,審判請求人は,当審における平成25年8月30日付け審尋に対して,同年12月3日に回答書を提出している。

第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年6月12日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
平成25年6月12日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成24年7月10日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲について補正しようとするもので,そのうち,請求項1の補正については次のとおりである。
(1)本件補正前
「(a)不透明でない瞳孔領域と,(b)所定の面積を有し,前記瞳孔領域の周囲を取り囲む略環状の虹彩領域と,(c)前記虹彩領域を取り囲む外周部分と,(d)前記虹彩領域上に印刷され,前記虹彩領域に対して眼の虹彩の構造を少なくとも認識させることができるように前記虹彩領域の面積の一部にわたり広がるとともに,前記外周部分には及んでいない印刷パターンとを備え,前記印刷パターンは,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であり,前記基本パターンは点と線との混合からなり,(e)使用時,前記虹彩領域の直径が装着者の虹彩の直径よりも大きく,それにより,装着者が当該コンタクトレンズを装着しているときに,装着者の眼をより大きく見せるようにすることができるコンタクトレンズを与え,
使用時,前記瞳孔領域の直径が装着者の瞳孔の直径よりも大きく,印刷された前記虹彩領域が当該コンタクトレンズ全体の面積の60?75%の面積を占める,コンタクトレンズ。」

(2)本件補正後
「(a)不透明でない瞳孔領域と,(b)所定の面積を有し,前記瞳孔領域の周囲を取り囲む略環状の虹彩領域と,(c)前記虹彩領域を取り囲む外周部分と,(d)前記虹彩領域上に印刷され,前記虹彩領域に対して眼の虹彩の構造を少なくとも認識させることができるように前記虹彩領域の面積の一部にわたり広がるとともに,前記外周部分には及んでいない印刷パターンとを備え,前記印刷パターンは,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であり,前記基本パターンは点と線との混合からなり,前記印刷パターンが前記虹彩領域の外側部分内に暗像を与えるように構成され,(e)使用時,前記虹彩領域の直径が装着者の虹彩の直径よりも大きく,それにより,装着者が当該コンタクトレンズを装着しているときに,装着者の眼をより大きく見せるようにすることができるコンタクトレンズを与え,
使用時,前記瞳孔領域の直径が装着者の瞳孔の直径よりも大きく,印刷された前記虹彩領域が当該コンタクトレンズ全体の面積の60?75%の面積を占める,コンタクトレンズ。」(下線は補正箇所を示す。)

2 新規事項の追加及び補正の目的について
本件補正により請求項1に付加された「前記印刷パターンが前記虹彩領域の外側部分内に暗像を与えるように構成され,」なる構成は,平成20年3月28日提出の翻訳文の発明の詳細な説明の【0009】,【0016】及び【0021】に記載されており,翻訳文に記載された事項の範囲内においてなされた補正であるから,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
また,本件補正後の請求項1に係る前記補正は,本件補正前の請求項1に記載された「印刷パターン」との発明特定事項を限定するものであって,本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,改正前特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)について,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正によって補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記1(2)にて示したとおりのものと認められる。

(2)引用例
ア 特開2004-21244号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-21244号公報(以下「引用例1」という。)は,本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物であって,当該引用例1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,角膜に直接装着して使用されるコンタクトレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
(1) 古代から女性の化粧の中で,アイ・メイク(eye make)はとても重要な位置を占めてきた。アイシャドウ,アイライン,マスカラ,まつげパーマ,植えまつ毛にいたるまで,アイ・メイクの主眼は目をいかに魅力的に見せるかという一言に集約される。そして,ここ50年ぐらいは目が魅力的であるとは,すなわち目が大きいという図式が女性の中で確立されている。少女マンガの女の子の目は顔の半分を占めているかとみまごうほど大きい。美容整形の手術でも数多く行われているのは,目に関する手術であり,その中でも一番多いのは,二重まぶたへの手術である。また,女性雑誌における化粧特集でも,常に人気があり定番とされるのは“目パッチリメイク術”といった企画である。そして,アイドルや女優においても,目が大きく見えるアイ・メイクを施している。
(2) カラーコンタクトレンズが目の装飾具として用いられている。カラーコンタクトレンズは瞳の色を本来の色とは異なる色に見せることにより,表情を愛らしくするものである。しかし,レンズに着色されている部分(カラー部)の大きさは,装着者の虹彩部とほぼ同径であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように,これまでの美容においては,目に重点が置かれてており,そしてそのポイントは,いかに目を大きく見せるかであった。そして,目を大きく見せることにより,愛らしい表情を実現することである。
ここで,発明者はさまざまな人間の表情を研究した結果,表情にもっとも影響を与える部位は,目のサイズよりも瞳自身のサイズであることを解明した。すなわち,二重まぶたと一重まぶたの相違などよりも,瞳(黒目部分)自身の大きさの方が,表情に与える影響が大きいことである。
そこで,この発明は,瞳自体を大きく見せるといった,これまでにはない発想により愛らしい表情を実現することを課題とする。
【0004】
更に,上記青や緑といったカラーコンタクトレンズでは,その得意な色彩により,職場などでは装着が不適切である。また,カラーコンタクトレンズを装着していることが第三者に明らかである。そこで,この発明は,コンタクトレンズを装着していることを悟られることなく,目を大きくして愛らしい表情を表現することもその課題とする。
なお,この発明に係るカラーコンタクトレンズは男性用としても利用可能である。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】
[1] (カラーコンタクトレンズの提供方法)
上記した課題を解決するため,本発明は「カラーコンタクトレンズの提供方法であって,装着者の目の虹彩部の外径を測定するステップと,測定された虹彩部の外径より0.3mm?1.2mm大きな外径のカラー部を有するカラーコンタクトレンズを提供するステップとを有するカラーコンタクトレンズの提供方法」とする。
この提供方法により,各装着者に最適な外径を備えたカラーコンタクトレンズを提供することが可能になる。そして,装着者は瞳自身を大きく見せることが可能となり,その結果,大きな目の愛らしい表情をすることが可能となる。また,アイラインなどの目元の化粧をより簡略化することができ,化粧時間の短縮,化粧コストの削減をも図ることが可能となる。
【0006】
[2] (サイズ違い)
上記発明を実施する場合,測定した虹彩部の外径より大きなカラー部を備えたカラーコンタクトレンズを,予め数種類用意しておいてもよいし,また,測定後,適宜なカラー部のサイズのカラーコンタクトレンズを作製し,提供する形態であってもよい。
ここで,予め用意するカラーコンタクトレンズとしては,そのカラー部が12.5mm(もしくは12.8mm)?13.8mm(もしくは14.0mm)の範囲が望ましい。そして,各外径のピッチは任意であり,0.2mm間隔の他,0.3mm間隔であってもよい。また,あまりに多くの種類のカラーコンタクトレンズを準備したのでは製造コストがかかることから,コスト低減の観点から12.8mmと13.0mm,もしくは,12.8mmと13.0mmと13.3mmといったように,代表的なサイズのカラー部を備えたカラーコンタクトレンズを2?4種類(もしくは2?6種類)準備する形態が望ましい。
この発明の望ましい実施形態は,「前記したカラーコンタクトレンズの提供方法であって,2?4種類のサイズの異なるカラー部を有するカラーコンタクトレンズを,予め準備しておくことを特徴とするもの」である。
・・・(中略)・・・
【0011】
[4](カラーコンタクトレンズ)
上記発明を実施すべく,第4の発明は,「カラー部を有するコンタクトレンズであって,前記カラー部の最大外径が12.8mm(望ましくは13.0mm以上)?14.0mm(望ましくは13.5mm以下)であることを特徴とするカラーコンタクトレンズ」である。
「カラー部」とは,コンタクトレンズにおいて着色された部分をいい,このカラー部は装着時に装着者の虹彩部を覆うように配置される。カラー部の形状は,円形の他,装着者の虹彩部の形状に応じて適宜な楕円形であってもよい。楕円形の場合,その最大外径は長径をもって特定する。カラー部は,着色された部位を言うが,装着者にその着色を認識させる必要はない。カラー部は,外光は反射するものの,内側からの光は透過可能なインクやフィルムを用いて形成してもよい。コンタクトレンズ上におけるカラー部の位置は,通常,コンタクトレンズを正面から見てほぼ中央である。しかし,中央に限られる必要はなく,装着時に虹彩部を覆う位置であればよい。
【0012】
従来のカラーコンタクトレンズでは,そのカラー部の外径は12・5mm程度であった。そこで本件発明は,カラー部の外径を従来のものより大きな12.8mm(望ましくは13.0mm)?14.0mm(望ましくは13.5mm)とする。これにより,装着者は瞳自体を大きく見せることが可能となり,その結果,より綺麗に,かつ,愛らしい表情が可能となる。
【0013】
望ましい外径としては,装着者の虹彩部の外径より,0.2mm?1.5mm(望ましくは0.3mm?1.0mm)程度大きいものである。0.2mm以下では,瞳を大きくみせる効果が少ない。一方,1.5mm以上大きいカラー部では,あまりに虹彩部が大きくなってしまい,違和感が生じてしまうからである。このように,若干大きなサイズのカラー部を装着することで,装着者はカラーコンタクトの使用を悟られることなく,自然な感じで瞳を大きく見せることが可能となる。
カラー部の外径としては,上記した範囲の他,大柄な女性用(大きな虹彩部を有する女性用)に13.0mm?14.0mmの範囲であってもよい。また,小柄な女性用に12.2mm?13.0mmの範囲であってもよい。
人間の虹彩部には模様がある。そこで,コンタクトレンズの使用を第三者に悟られないために,虹彩の模様を備えたカラーコンタクトレンズが実施形態として望ましい。
【0014】
[5・6](カラー部の色彩・明度特定)
また,本件発明におけるカラー部は,虹彩部と同じ色彩である黒であって,かつ,その明度が同じものが望ましい。これにより,カラーコンタクトレンズを装着していることを,第三者に悟られることがない。
日本人の虹彩部の色彩は,一般的に黒(及び茶色)である。そこで,この発明では,多くの日本人に対応できるようカラー部の色彩を黒(及び茶色)とする。すなわち,第5の発明は,「前記したカラーコンタクトレンズであって,そのカラー部が黒(及び茶色)であることを特徴とするもの」である。
前記したように日本人の虹彩部の色彩はほぼ黒色であるが,その明度は漆黒といわれる黒から明るめの黒,ダークブラウン,ライトブラウンといったように,様々な明度が存在する。そこで,この発明は,装着者ごとの虹彩部の明度に対応できるよう,「前記したカラーコンタクトレンズであって,そのカラー部の明度が装着者の明度とほぼ同一(もしくは近似すること)であることを特徴とするもの」である。なお,日本人であっても茶色の虹彩部を備える装着者も存在することから,本件発明における虹彩部の「黒色」には,黒色のほか,黒色に近似できる茶色を含む形態であってもよい。
【0015】
[7](円環状のカラー部)
コンタクトレンズを正面から見た場合,そのカラー部の形状は円形状であっても,中央部を透明とした円環状であってもよい。円環状の場合,装着者の瞳孔部を覆うことがないため,良好な視界を確保できる利点がある。
円環状のカラー部の場合,その内径があまりに小さくては瞳孔部をカラー部が覆ってしまい良好な視界を確保できない。そこで,カラー部の内径としては,4.5mmより大きいことが望ましい。一方,内径があまりに大きくては,瞳を動かした際に,カラー部の内側に白目部が表れてしまい第三者に違和感を生じさせてしまう。そこで,第7の発明は,「前記したカラーコンタクトレンズであって,前記カラー部の形状が円環状であって,その内径が4.7mm?6.5mm(もしくは9.0mm)程度であることを特徴とするカラーコンタクトレンズ」である。
【0016】
この発明の実施において前記カラー部は,装着者の虹彩部の外枠にカラー部が存在すればよい。従って,この内径のサイズとしては,上記した範囲(4.7mm?6.5mm)に限られることがなく,内径が12.0mm,その外径が13.0mmといったように,リング状のカラー部を備えたカラーコンタクトレンズであっても実施可能である。
カラー部の内径は,必ずしも正確な円形である必要もなく,適宜に撓んだ円形(例えば楕円形)でも実施可能である。その際の内径は,用途に応じて適宜に決定すればよく,最大内径をもって特定する形態のほか,最小内径をもって特定してもよい。また,カラー部の外形は円形のほか,楕円形であってもよい。
・・・(中略)・・・
【0024】
かかる製造法によれば,コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに所定の色素を混合したインクを所定の形状で,所定の形状の凹部に充填し,この凹部のインクをパッドにて採取してコンタクトレンズの成型型にプリントし,プリントされた成型型にてコンタクトレンズの少なくとも一方面の成型を行なう。従って,この製造方法によれば,カラー部の形成が容易となる。」
(ウ)「【0027】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために,以下,本発明のカラーコンタクトレンズについて,その実施例を説明する。図1は,本発明の実施例であるカラーコンタクトレンズ10の正面図である。図示するように本実施例のカラーコンタクトレンズ10は,円形の外形をしており,全体的には無色透明であって所望の光学特性を有する一般的なコンタクトレンズである。その全体径を符号14と示す。
図中に符号2で示す点線は,このカラーコンタクトレンズ10を装着する装着者の虹彩部の外輪(そのサイズを外径)を示すものである。符号11は黒色に着色された円環状のカラー部である。そして,その外径(最大外径)を符号12,内径を符号13と示す。この実施例において,外径12は13.0mm,内径は5.0mm,全体径14は14.0mm,装着者の虹彩部の外径は12.5mmとする。
【0028】
図に示すように,カラーコンタクトレンズ10のカラー部11は,角膜に装着したときに装着者の虹彩部を覆い,更にその外側に0.5mmはみ出している(各端部では0.25mm)。これにより,第三者に対して装着者の瞳自体を大きく見せることが可能となる。また,このカラー部11は黒色であり,かつ,装着者と同じ明度とする。これにより,カラーコンタクトレンズを装着していることを悟られることもない。
【0029】
次に,本件発明のコンタクトレンズの提供方法について説明する。第2実施例では,図1に示したカラーコンタクトレンズ10を予め9種類準備する。その構成は外径12を三種類,明度で三種類のこれを掛け合わせた合計9種類とする。
カラー部11の外径は,12.8mm,13.0mm,13.2mmとする。明度は,漆黒,やや暗い黒,明るい黒とする。
そして,カラーコンタクトレンズの提供者は,装着者の虹彩部の外径を測定する。測定方法としては,瞳部をデジタル撮影し,その画像処理を行なうことで測定する。
なお,測定方法に特に制限はなく,ノギスを用いて測定してもよい。更に,インターネットなどのネットワークを活用し,装着者が自ら撮影した瞳の画像情報(瞳情報)をネットワークを介してカラーコンタクトレンズの提供者に送信し,この画像データを用いて虹彩部の外径を測定する形態であってもよい。
【0030】
次に,提供者は装着者の虹彩部の明度を測定する。測定方法としては,前記同様にデジタル撮影した画像データに基づき,その画像処理を行なうことで明度を特定する。また,漆黒?茶色のカラーサンプルのプレートを用いて,各プレートと装着者の瞳とを逐次対象させて明度を決定してもよい。
装着者の虹彩部が,その外径が12.5mmで,色彩が漆黒の場合,提供者は,明度が同一色である漆黒,カラー部の外径12が13.0mmのカラーコンタクトレンズを選択し,その選択したカラーコンタクトレンズを提供する。
これにより,装着者は自分に最も適した明度とサイズのカラーコンタクトレンズを入手することが可能となる。この実施例の場合,カラー部の外径12は,実際の虹彩部より0.5mm大きいだけなので,第三者に違和感を与えるおそれがない。
・・・(中略)・・・
【0040】
以上,本発明が実施される形態を説明したが,本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。例えば,カラー部の着色はコンタクトレンズの完成後,後からフロントカーブ面に着色するといった手法で形成しても良い。」
(エ)「【0044】
【発明の効果】
本件発明により,次の効果が奏される。
▲1▼ 装着者の瞳(虹彩部)自体を通常より若干大きく見せることが可能となり,その結果,より綺麗に,かつ,愛らしい表情が可能となる。
▲2▼ 装着者の虹彩部と同一の色彩のカラーコンタクトレンズを用いることで,カラーコンタクトレンズの装着を悟られることなく,使用することができる。特に,勤務時間においても使用できることから,勤務時間中も愛らしい表情でいることができる。
▲3▼ 不要な取り外しを回避できることから,取り外しの際に,角膜をいためてしまう危険も低減される。
▲4▼ 目元の化粧を簡略化できる。マスカラなどが不要になることによる化粧コストの低減のほか,目元の肌荒れなどを防止することも可能となる。特に,過敏症の肌ではその効果が大きい。
▲5▼ 従来から行なわれているマスカラやアイラインと本件発明を組み合わせることにより,一層愛らしい表情が可能となる。」

前記(ア)ないし(エ)を含む引用例1の記載全体からみて,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「装着者の虹彩部を覆うように配置されたカラー部を有するコンタクトレンズであって,
前記カラー部は,コンタクトレンズの完成後,後からフロントカーブ面に着色するといった方法により形成されたものであり,
コンタクトレンズの全体径が14.0mmであり,
前記カラー部の形状は中央部を透明とした円環状であり,
前記カラー部の最大外径があまりに小さくては装着者の瞳を大きくみせる効果が少なく,前記カラー部の最大外径があまりに大きくては違和感が生じてしまうので,装着者の瞳を自然な感じで大きく見せるために,前記カラー部の最大外径を,装着者の虹彩部の外径より0.3mm?1.0mm程度大きな13.0mm以上13.5mm以下の範囲とし,
前記カラー部の内径があまりに小さくては装着者の瞳孔部を当該カラー部が覆ってしまい良好な視界を確保できず,前記カラー部の内径があまりに大きくては,装着者が瞳を動かした際に,当該カラー部の内側に白目部が表れてしまい第三者に違和感を生じさせてしまうので,前記カラー部の内径を4.7mm?6.5mmの範囲とし,
人間の虹彩部には模様があるので,前記カラー部を当該虹彩部の模様を備えたものにすることで,本コンタクトレンズの使用を第三者に悟られないようにした,
コンタクトレンズ。」

イ 特表2002-507001号公報
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-507001号公報(以下「引用例2」という。)は,本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物であって,当該引用例2には次の記載がある。(下線は,後述する技術的事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0002】
(技術分野)
本発明は,着色コンタクトレンズに関し,特に,非常に自然な外観を呈しつつ,着用者の虹彩の外見上の色を変えることができる不透明な着色部分を備えたレンズに関する。
【0003】
(発明の背景)
人の眼の色を変更もしくは強調するための初期の試みは,ユーザーの眼の虹彩を覆う,単純に強固に着色した領域を備えた着色コンタクトレンズを採用していた。しかし,この種の不透明な着色を備えたコンタクトレンズは,非常に不自然に見えていた。他の種類の着色コンタクトレンズが開発されており,例えば,Wichterleの米国特許第3,679,504号は,芸術的に描くか或いは写真によって複製した二色以上の色の虹彩を有する不透明なレンズを開示している。しかし,このようなレンズは,商業的に成功することはなかった。自然な外観を備えた不透明なレンズを作る他の試みは,米国特許第3,536,386号(Spivak),同第3,712,718号(LeGrand),同第4,460,523号(Neefe),同第4,719,657号(Bawa),同第4,744,647号(Meshelら),同第4,634,449号(Jenkins),ヨーロッパ特許公報第0309154号(Allergan),英国特許出願公開第2202540A号(IGEL)に開示されている。
【0004】
商業上の成功は,Knapp(米国特許第4,582,402号)に記載された着色コンタクトレンズによって達成された。このKnapp特許は,好ましい実施例として,着色した不透明なドットを備えたコンタクトレンズを開示している。Knappのレンズは,単色印刷されたドット・パターンを使用して,簡単で高価ではないレンズで自然な外観を提供している。不連続なドットのパターンは虹彩を完全には覆ってはいないが,通常の観察者が見ると,マスキング効果によって連続的な色に見えるのに十分な密度のドットを備えている。Knappは,また,よく観察すると,数多くの人の虹彩は複数の色を含んでいることが分かったので,異なる色で異なるパターンを用いて,印刷工程を一回以上繰り返すのがよい,と開示している。印刷したパターンは厳格に均一である必要は無く,虹彩の微細構造を強調できればよい。現在,商業的に成功しているKnappの一色レンズは,虹彩の構造を強調するために,ドットを不規則なパターンで配している。しかしながら,Knappの商業的なレンズもKnapp特許も,より自然に見えるようにするために,複数の色を備えたドットのパターンを如何にして配置するについて,開示も示唆も行っていない。
【0005】
Knappレンズを改良するために様々な工夫がなされている。Jahnkeに付与された米国特許第5,414,477号は,より自然が外観を与えるように,着色剤の明瞭なシェードの二以上の部分に,不連続なインク・パターンを付けることを開示している。
【0006】
より自然に見せることのできるレンズを作る他の試みとして,瞳孔セクション分の周縁から虹彩セクション分の周縁まで放射状に延びる相互に連結する一群のラインを開示している。更に,ヨーロッパ特許第0472496A2は,虹彩の中に見られるラインを複写することを意図したライン・パターンを備えたコンタクトレンズを提示している。
【0007】
このような努力にもかかわらず,人間の虹彩の固有の奥行と質感を提供しつつ,眼の色を強調又は変更することのできる低コストの着色レンズを追求し続けている。」
b 「【0008】
(発明の概要)
本発明は,適切な形態に作られていれば,多色の不透明なパターンによって,より自然に見える虹彩になる,という画期的な発見に基く。Knappの一色レンズとJahnkeの二色レンズを超える外観の改良は驚きである。一色レンズ及び二色レンズと同様に,本発明によるレンズは,着用者の虹彩の外見上の色を基本的に変化させること,例えば,ダークブラウンからライトブルー又はグリーンに変えることができる。本発明の好ましい実施例は,別の色がオーバーラップした三色レンズであるが,三色よりも多くの色も考えられ,更に,三色(又はそれ以上)の色が全てオーバーラップしたレンズも考えられる。
【0009】
本発明の目的は,非不透明な瞳孔セクションと,該瞳孔セクションを囲む虹彩セクションと,該虹彩セクションの上の着色した,不透明な,不連続なパターンとを有する着色コンタクトレンズを提供することにある。パターンの要素は,通常の観察者には識別不可能であり,第1のシェードであるパターンの要素の第1部分つまり最外星形と,第1のシェードとは異なる第2のシェードであるパターンの要素の第2部分つまり外側星形と,第1のシェードとは異なり且つ第2のシェードと異なるか同一であるパターンの要素の第3部分つまり内側星形とから構成されている。最外星形は,虹彩のほぼ外側に配置され且つ外側星形のほぼ外側に配置されており,また,外側星形は,内側星形のほぼ外側に配置されている。第1の凹凸境界は,最外星形と外側星形とを区別しているが,最外星形と外側星形とのオーバーラップが存在している。第2の凹凸境界は,外側星形と内側星形とを区別しているが,外側星形と内側星形とのオーバーラップが存在している。したがって,レンズを装着している者の虹彩の識別可能な色を変えることができ且つ非常に自然な外観を与えることのできるレンズを提供できる。
・・・(中略)・・・
【0013】
用語「非不透明な」は,着色されていないか透明の色で着色されたレンズの部分を説明するために用いられている。
【0014】
用語「第1のシェードとは異なる第2のシェード」(又は類似の言葉)は,両者が例えばブルー,薄い金褐色のような全体的に異なる色からなるか,両方のシェードが,同一の基本色であるが例えばライトブルーとダークブルーのような異なる彩度を有することを意味する目的で用いられている。
【0015】
用語「通常の観察者」は,本発明のレンズを装着した者から約5フィートのところに立って平均20-20の視力を有する人間を意味している。」
c 「【0016】
(好ましい実施例の詳細な説明)
図1は,本発明によるコンタクトレンズ10を示す。コンタクトレンズ10は,レンズの中央の非不透明な瞳孔セクション20と,瞳孔セクション20を囲む環状の虹彩セクション22とを有する。親水性レンズの場合,周縁セクション(図示せず)が虹彩セクション22を囲む。図1に示すように,色付きの,不透明な,不連続なパターンが,虹彩セクション22に配置されている。このパターンは,パターンの隙間のうち虹彩セクション22の殆どの部分を非不透明に残している。虹彩セクション22の不透明でなはい領域は,図1では白く現れている。
【0017】
パターンの要素は,好ましくは,ドットであるのがよく,図1に示すように,幾つかのドットは互いに結合しているのが特に好ましい。虹彩セクション22の或る部分は,他の部分よりも疎のドットで覆われている。この疎に覆われている部分は,ほぼ放射状スポークを形成している。この構成は,レンズを着用する者の虹彩の構造を強調する。
【0018】
勿論,不透明なパターンは,任意の形状,任意の規則性又は任意の不規則性,例えば,円形,正方形,六角形,細長い形状など備えたドットから構成されていてもよい。更に,このパターンの要素は,ドット以外の形状を有していてもよく,この要素が通常の観察者にとって識別できない限り,虹彩の少なくとも約25%を覆うのがよく,また,非不透明のパターンの隙間内で虹彩セクションのかなりの部分を残すのがよい。
【0019】
本発明の改良点は,装着者の虹彩の自然な外観を一色及び二色のカラーレンズよりも大幅に改善する多色パターンにある。この三色(又はそれ以上の色)パターンを作るために,3以上の部分又はカラーゾーンにドット(又は他の要素)を印刷する。これらの要素の第1の部分は,第1のシェードをなし,虹彩セクションのほぼ外側つまり環状の虹彩セクション22の外周縁又はその近傍に配置される。この第1部分を最外星形と言う。好ましい第1の外側部分パターンつまり最外星形を図2に示す。最外星形の色としてブラックが最も頻繁に用いられる。要素の第2の部分は,第1のシェードとは別の第2のシェードをなし,また,この第2の部分は,最外星形のほぼ内側に配置され,最外星形によってほぼ囲まれている。図3は,好ましい第2内側部分パターンつまり外側星形を示す。この外側星形は,数多くの色,例えば,ブルー,グレー,ブラウン,グリーンであってもよい。要素の第3の部分は,第2のシェードとは異なり且つ第1のシェードと同じか或いは異なる第3のシェードをなし,外側星形のほぼ内部に配置され,また,外側星形の部分によってほぼ囲まれている。図4は,好ましい第3の内側パターンつまり内側星形を示す。この内側星形の好ましい色は,薄い金褐色である。本発明の好ましい実施例の図1は,図2,図3,図4の組み合わせを示す。
【0020】
第1の凹凸境界は,パターン要素の最外星形と外側星形とを区別するが,最外星形と外側星形はオーバーラップしている。第2の凹凸境界は,パターン要素の外側星形と内側星形とを区別するが,外側星形と内側星形はオーバーラップしている。三色のレンズを作るために,図2,図3,図4のパターンが一緒になると,図2に示すパターンの凹凸縁が図3に示すパターンと一緒になってオーバーラップし,最外星形と外側星形との感の第1の凹凸境界を形成する。更に,図4に示すパターンの凹凸縁は,図3に示すパターンと一緒になってオーバーラップし,外側星形と内側星形との間の第2の凹凸境界を形成する。
【0021】
或る場合,外側星形は,最外星形のパターンよりもレンズの周縁に向けて更に延びるパターンを含有する。或る場合,外側星形は,内側星形のパターンよりもレンズの瞳孔セクション分に向けて更に延びるパターンを含有する。
・・・(中略)・・・
【0041】
本発明による着色コンタクトレンズを製造する方法は,概略的に,透明なコンタクトレンズの表面の3箇所に着色剤を塗布し,この着色剤に,眼内液からの剥離に対する抵抗力をつけるための処理を施するという各工程を含む。・・・(中略)・・・
【0042】
レンズ表面に不連続パターンを付すために使用される工程は,第1部分つまり最外星形に対応する凹所を有する第1のプレートを用いて,凹所に第1のシェード,好ましくはブラックの着色剤を満たす工程を含む。そして,第1の可撓性パッドを第1のプレートに押し付け,次いでレンズ表面(若しくは側面)に第1の可撓性パッドを押し付けてパターン要素の第1部分を印刷する。
【0043】
次に,第2部分つまり外側星形に対応する凹所を備えた第2プレートを用い,この凹所に第1のシェードとは異なる第2のシェード,好ましくはブルー,グリーン又はブラウンの着色剤を満たす。次に,第2のプレートに第2の可撓性パッドを押し付け,レンズ表面(同一面又は反対面)に第2の可撓性パッドを押し付けてパターン要素の第2部分を印刷する。
【0044】
最後に,第2の部分つまり内側星形に対応する凹所を備えた第3のプレートを用い,この凹所を第3のシェードの着色剤で満たす。この第3のシェードは,第2のシェードとは異なるが,第1のシェードとは同一であっても異なっていてもよく,薄い金褐色であることが望ましい。第3のプレートに第3の可撓性パッドを押し付け,前記レンズ表面(若しくは側面)に第3の可撓性プレートを押し付けて,パターン要素の第3部分を印刷する。
【0045】
上記各工程は,レンズ上の各部分の印刷を一定の順序で行っているが,本発明にとって印刷の順序は重要でなく,如何なる印刷順序であれ,本発明に含まれる。また,上述したプロセスは,他の実施例において挙げた最大及び最小距離,凹凸状の各境界を形成することを含む。」
d 図1ないし4は次のとおりである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


(イ)引用例2の前記記載事項(前記(ア)aの【0004】)に例示された「米国特許第4,582,402号」(以下,便宜上「Knapp特許」という。)には,Knapp特許におけるコンタクトレンズの前面図を示すFIG.1,及び,FIG.1のレンズの虹彩部分の上に付着させる点模様の拡大図を示すFIG.2が記載されており,当該FIG.1及び2は次のとおりである。
FIG.1

FIG.2

前記FIG.1及び2による図示を参酌すると,引用例2において,「Knapp特許は,好ましい実施例として,着色した不透明なドットを備えたコンタクトレンズを開示している。Knappのレンズは,単色印刷されたドット・パターンを使用して,簡単で高価ではないレンズで自然な外観を提供している。不連続なドットのパターンは虹彩を完全には覆ってはいないが,通常の観察者が見ると,マスキング効果によって連続的な色に見えるのに十分な密度のドットを備えている。」(前記(ア)aの【0004】)と説明されたKnapp特許のコンタクトレンズにおけるユーザの眼の虹彩を覆う着色領域が,単色印刷された不連続なドットのみを,マスキング効果によって連続的な色に見えるのに十分な密度で配置したものであることは明らかである。

(ウ)引用例2の前記記載事項(前記(ア)aの【0005】)に例示された「米国特許第5,414,477号」(以下,便宜上「Jahnke特許」という。)には,FIG.1ないし3が記載されているとともに,当該FIG.1ないし3について,図面の簡単な説明において「FIG.1は,現在販売されているKnappレンズの一色ドットパターンに極めて近いドットパターンを図示する。後述するように,このパターンをオーバープリントして本発明によりレンズを製造することができる。
FIG.2は,本発明によるドットの内側部分の好ましいドットパターンを図示する。
FIG.3は本発明によるドットの外側部分の好ましいドットパターンを図示する。」(明細書3欄の「BRIEF DESCRIPTION OF DRAWINGS」)と説明されている。
前記FIG.1ないし3は次のとおりである。
FIG.1

FIG.2

FIG.3


前記図面の簡単な説明の記載及びFIG.1による図示を参酌すると,引用例2において,「より自然に見えるようにするために,複数の色を備えたドットのパターンを如何にして配置するについて,開示も示唆も行っていない」(前記(ア)aの【0004】)と説明された「Knappの商業的なレンズ」(以下,便宜上「Knapp商業レンズ」という。)におけるユーザの眼の虹彩を覆う着色領域が,単色印刷された不連続なドットを均一に配置したものではなく,単色のドットを不均一に配置することで「虹彩の微細構造を強調」(前記(ア)aの【0004】)したものであり,不連続なドット(他のドットと結合していない孤立したドット)と,多数のドットが互いに結合した放射状の模様とを有するものであることは明らかである。
また,前記図面の簡単な説明の記載及びFIG.2,3による図示を参酌すると,引用例2において,「Knappレンズを改良」するものであり,「より自然が外観を与えるように,着色剤の明瞭なシェードの二以上の部分に,不連続なインク・パターンを付ける」(前記(ア)aの【0005】)ものであると説明された「Jahnke特許」におけるユーザの眼の虹彩を覆う着色領域が,Knapp商業レンズと同様に,ドットを不均一に配置することで「虹彩の微細構造を強調」したものであって,不連続なドットと,多数のドットが互いに結合した放射状の模様とを有するものであり,引用例2でいう「Knappレンズを改良」した点が,単色のドットのみから構成するのでなく,二色のドットにより構成する点であることが明らかである。

(エ)引用例2の前記記載事項(前記(ア)aの【0006】)に例示された「ヨーロッパ特許第0472496A2」(以下,便宜上「CIBA-GEIGY特許」という。)には,CIBA-GEIGY特許における,自然な外観を呈する虹彩の図柄(4)及び透明な瞳孔部域(5)を有するコンタクトレンズ(3)の前面の立面図を示すFIG.2が記載されており,当該FIG.2は次のとおりである。
FIG.2


前記FIG.2による図示を参酌すると,引用例2において,「自然に見せることのできるレンズを作る他の試み」であり,「虹彩の中に見られるラインを複写することを意図」した「瞳孔セクション分の周縁から虹彩セクション分の周縁まで放射状に延びる相互に連結する一群のライン」を備えたものである(前記(ア)aの【0006】)と説明されたCIBA-GEIGY特許のコンタクトレンズにおけるユーザの眼の虹彩を覆う着色領域が,不連続なドットとラインとを有するものであり,引用例2でいう「他の試み」が,人間の眼の虹彩中に見えるラインを模した模様として,Knapp商業レンズやJahnke特許のような多数のドットが互いに結合した放射状の模様を用いるのでなく,ラインを用いることであることが明らかである。

(オ)引用例2の図2ないし図4に示された各パターンが合成された図1のパターン(前記(ア)d)は,引用例2の前記記載事項(前記(ア)cの【0017】)及び前記(イ)ないし(エ)を踏まえれば,不連続なドットと,幾つかのドットが互いに結合した放射状の模様とからなるものと認められる。
また,引用例2の前記記載事項中の「パターンの要素は,ドット以外の形状を有していてもよく」(前記(ア)cの【0018】)との記載は,前記(エ)を踏まえれば,人間の眼の虹彩中に見えるラインを模した模様として,図1のような多数のドットが互いに結合した放射状の模様を用いるのでなく,ラインを用いてもよいことを意味していると認められる。

(カ)以上を総合すると,引用例2に接した当業者は当該引用例2の記載から次の技術的事項を把握することができると認められる。
「ユーザの眼の虹彩を覆う着色領域を備えたコンタクトレンズにおいて,より自然な外観を与えるようにするためには,前記着色領域を,Knapp特許のように,単色印刷された不連続なドットのみを,マスキング効果によって連続的な色に見えるのに十分な密度で配置したものとするのではなく,Knapp商業レンズ,Jahnke特許,CIBA-GEIGY特許及び引用例2のように,不連続なドットと,ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様とからなるものとするのが良く,当該模様は,多数のドットが互いに結合した放射状の模様,または,ラインとすることができること。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「透明」,「中央部」,「コンタクトレンズの完成後,後からフロントカーブ面に着色」,「カラー部」,「装着者の虹彩部の外径」及び「コンタクトレンズ」は,それぞれ,本願補正発明の「不透明でない」,「瞳孔領域」,「印刷」,「印刷パターン」,「装着者の虹彩の直径」及び「コンタクトレンズ」に相当する。

イ 引用発明は,内径が「カラー部」の内径より小さく,外径が「カラー部」の最大外径より小さく装着者の虹彩部の外径より大きい円環状の領域,例えば,外径が「カラー部」の最大外径より0.2mm小さい領域であって,透明な「中央部」のうちの一部領域と「カラー部」のうちの一部領域とからなる円環状の領域(以下,便宜上「円環領域」という。)を有しており,当該「円環領域」は,所定の面積を有し,かつ,透明な「中央部」(瞳孔領域)の周囲を取り囲む略環状の領域であるといえるから,当該「円環領域」は,本願補正発明の「所定の面積を有し,瞳孔領域の周囲を取り囲む略環状の虹彩領域」に相当する。
したがって,引用発明は,本願補正発明の「所定の面積を有し,瞳孔領域の周囲を取り囲む略環状の虹彩領域」に相当する領域(「円環領域」)を備えているといえる。

ウ 引用発明において,「コンタクトレンズ」の全体径は14.0mmであり,「カラー部」の最大外径は13.0mm以上13.5mm以下であるから,「カラー部」は「コンタクトレンズ」の最外周にまでは及んでおらず,「カラー部」を取り囲む位置に透明な部位(引用例1の図1において,カラー部11の外側に存在するリング状の部位。以下,便宜上「透明部位」という。)が存在することは明らかである。
当該「透明部位」のうち,「カラー部」の最大外径よりも内径が大きい円環状の部分(以下,便宜上「外側透明部位」という。)は,前記イの「円環領域」(虹彩領域)をも取り囲んでいるから,本願補正発明の「虹彩領域を取り囲む外周部分」に相当する。
したがって,引用発明は,本願補正発明の「虹彩領域を取り囲む外周部分」に相当する領域(「外側透明部位」)を備えているといえる。

エ 引用発明において,「コンタクトレンズの完成後,後からフロントカーブ面に着色」(印刷)するといった方法により形成された「カラー部」(印刷パターン)は前記イの「円環領域」の一部領域を含んでいるから,当該「カラー部」は「円環領域」(虹彩領域)上に印刷されたものといえる。
また,引用発明の「カラー部」は,装着者の瞳を自然な感じで大きく見せるためにその最大外径を所定の範囲としたものであり,その一部領域のみが前記イの「円環領域」に含まれており,かつ,引用発明のコンタクトレンズの使用を第三者に悟られないようにするために人間の虹彩部の模様を備えているから,当該「カラー部」は,「円環領域」(虹彩領域)に対して眼の虹彩の構造を少なくとも認識させることができるように「円環領域」の面積の一部にわたり広がるものであるといえる。
さらに,引用発明において,「カラー部」は前記ウの「外側透明部位」の内側に位置し,両者が接してはいないところ,平成20年3月28日提出の補正書により補正された本願の発明の詳細な説明(以下「本願の発明の詳細な説明」という。)の「好ましい実施形態では,印刷パターン20はレンズ10の外周部35と接触しない。」(【0014】)との記載からみて,本願補正発明の「外周部分には及んでいない印刷パターン」は「印刷パターン」が「外周部分」と接していないことを指していると認められるから,引用発明の「カラー部」(印刷パターン)は「外側透明部位」(外周部分)には「及んでいない」といえる。
したがって,引用発明の「カラー部」が,装着者の瞳を自然な感じで大きく見せるためにその最大外径を所定の範囲としたものであり,その一部領域のみが「円環領域」に含まれており,かつ,引用発明のコンタクトレンズの使用を第三者に悟られないようにするために人間の虹彩部の模様を備えていること,及び,「外側透明部位」と接していないことは,本願補正発明の「印刷パターン」が「虹彩領域上に印刷され,虹彩領域に対して眼の虹彩の構造を少なくとも認識させることができるように虹彩領域の面積の一部にわたり広がるとともに,外周部分には及んでいない」ことに相当する。

オ 引用発明においては,前記イの「円環領域」の外径は「装着者の虹彩部の外径」より大きく,「カラー部」の最大外径は当該「円環領域」の外径より大きいところ,「カラー部」の最大外径が「装着者の虹彩部の外径」より大きいことで,装着者の瞳を自然な感じで大きく見せる効果を得ているのであるから,引用発明は,使用時,「円環領域」(虹彩領域)の外径(直径)が「装着者の虹彩部の外径」(装着者の虹彩の直径)よりも大きく,それにより,装着者が当該コンタクトレンズを装着しているときに,装着者の瞳(装着者の眼)をより大きく見せるようにすることができるものであるといえる。
したがって,引用発明の使用時における前記「カラー部」を有する「コンタクトレンズ」は,本願補正発明の「使用時,虹彩領域の直径が装着者の虹彩の直径よりも大きく,それにより,装着者が当該コンタクトレンズを装着しているときに,装着者の眼をより大きく見せるようにすることができるコンタクトレンズ」に相当する。

カ 引用発明において,「カラー部」の内径は,それがあまりに小さくては装着者の瞳孔部をカラー部が覆ってしまい良好な視界を確保できず,あまりに大きくては,装着者が瞳を動かした際に,透明な「中央部」に白目部が表れてしまい第三者に違和感を生じさせてしまうことから,4.7mm?6.5mmの範囲とされているところ,当該「カラー部」の内径は透明な「中央部」の外径(直径)と一致する。
そして,
本願補正発明において,「使用時,前記瞳孔領域の直径が装着者の動向の直径よりも大きく」されている理由は,本願の発明の詳細な説明の記載によれば,「レンズ10上の印刷パターン20が装着者の周辺視野を妨げてしまうのを防止する」(【0019】)ためであり,引用発明の「カラー部」の内径すなわち透明な「中央部」の外径の下限値4.7mmを設定する理由と同様のものであること,
本願の発明の詳細な説明には,「不透明でない瞳孔領域40の面積は20?30mm^(2)の範囲である。」(【0020】)と記載されており,当該瞳孔領域40が本願の図1に示されているような円形であるとしてその直径を求めると,瞳孔領域40の直径は約5.0?6.2mmの範囲にあって,引用発明の「カラー部」の内径すなわち透明な「中央部」の外径の範囲と概ね一致していること,
室内程度の照度での一般的な瞳孔径が2.5ないし4mm程度であることが当業者に自明であって(例えば,特開平7-239459号公報の【0032】,国際公開第99/04308号のFIG.6,特表2006-502428号公報の【0009】等を参照。),前記透明な「中央部」の外径の範囲4.7mm?6.5mmは当該室内程度の照度での一般的な瞳孔径より大きいこと,
からみて,引用発明の透明な「中央部」の外径(直径)が使用時における装着者の瞳孔部の直径よりも大きいことは明らかである。
したがって,引用発明の使用時における「中央部」の外径は,本願補正発明の「使用時,前記瞳孔領域の直径が装着者の瞳孔の直径よりも大きい」ことに相当する。

キ(ア)引用発明において,コンタクトレンズの全体径は14.0mmであるから,コンタクトレンズ全体の面積は約154mm^(2)(=π×(14.0/2)^(2))である。
(イ)引用発明において,「カラー部」の最大外径より0.2mm小さい前記イの「円環領域」の外径は,12.8mm以上13.3mm以下の範囲である。
また,前記イの「円環領域」のうち「カラー部」と重複する領域については,その内径が「カラー部」の内径と一致するから,前記イの「円環領域」のうち「カラー部」と重複する領域の内径は,4.7mm?6.5mmの範囲である。
したがって,前記イの「円環領域」のうち「カラー部」と重複する領域の面積は,最小で約95.5mm^(2)(=π×(12.8/2)^(2)-π×(6.5/2)^(2)),最大で約122mm^(2)(=π×(13.3/2)^(2)-π×(4.7/2)^(2))である。
(ウ)前記(ア)及び(イ)から,前記イの「円環領域」のうち「カラー部」と重複する領域(以下,便宜上「着色円環領域」という。)は,コンタクトレンズ全体の面積の約62(=95.5÷154×100)?79(=122÷154×100)%の面積を占めるものと算出できる。
(エ)前記(ウ)の「着色円環領域」は,本願補正発明の「印刷された虹彩領域」に相当するところ,コンタクトレンズ全体の面積に占める「着色円環領域」の面積の割合約62?79%は,本願補正発明のコンタクトレンズ全体の面積に占める「印刷された虹彩領域」の面積の割合60?75%と,62?75%の範囲で重複する。

ク 前記アないしキから,本願補正発明と引用発明とは,
「不透明でない瞳孔領域と,所定の面積を有し,前記瞳孔領域の周囲を取り囲む略環状の虹彩領域と,前記虹彩領域を取り囲む外周部分と,前記虹彩領域上に印刷され,前記虹彩領域に対して眼の虹彩の構造を少なくとも認識させることができるように前記虹彩領域の面積の一部にわたり広がるとともに,前記外周部分には及んでいない印刷パターンとを備え,
使用時,前記虹彩領域の直径が装着者の虹彩の直径よりも大きく,それにより,装着者が当該コンタクトレンズを装着しているときに,装着者の眼をより大きく見せるようにすることができるコンタクトレンズを与え,
使用時,前記瞳孔領域の直径が装着者の瞳孔の直径よりも大きく,印刷された前記虹彩領域が当該コンタクトレンズ全体の面積の62?75%の面積を占める,コンタクトレンズ。」である点で一致し,次の点で相違している。

相違点1:本願発明では,「印刷パターン」が,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であり,前記基本パターンが点と線との混合からなるのに対して,引用発明では,「カラー部」がそのようなものであると特定されていない点。

相違点2:本願発明では,「印刷パターン」が「虹彩領域」の外側部分内に暗像を与えるように構成されているのに対して,引用発明では,「カラー部」がそのようなものであると特定されていない点。

相違点3:本願発明では,「印刷された虹彩領域」がコンタクトレンズ全体の面積の60?75%の面積を占めるのに対して,引用発明では,「着色円環領域」がコンタクトレンズ全体の面積の約62?79%の面積を占める点。

(4)判断
前記相違点1ないし3について検討する。
ア 相違点1について
(ア)相違点1に係る本願補正発明の構成である「印刷パターンが,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であり,前記基本パターンが点と線との混合からな」る点について,本願の発明の詳細な説明には次のa及びbの記載があり,図3ないし図5は次のcないしeのとおりである。
a 「【0019】
図3および図4は,図5に示されるパターンを得るために互いに重ね合わされる構成パターン(「基本」パターンおよび「リング」パターン)を示している。「パターン」は,人間の虹彩の自然な見た目および外観をシミュレートするように不規則に或いは不均一に離間される点と線との混合を表わそうとすることを意味する。これらの点および線は図3?図5において見ることができる。また,重ね合わされたパターンは,虹彩領域の外側部分25内で暗像を得るのに役立つ。」
b 「【0023】
着色パターンは,オフセットパッド印刷を使用してレンズの前面上に堆積される。図3および図4に示されるパターンは,最初に,「クリシェ(cliche)」と称されるステンレススチールプレート上でエッチングされる。2つのパターンを組み合わせた後に単一のステンレススチールプレート上で同様にエッチングすることができる。円形凹部は典型的に12?18ミクロン深さである。典型的な印刷動作では,最初に凹部がインクで満たされ,ドクターブレードを用いて過剰なインクがこすり取られる。その後,シリコンゴムパッドが,インクを凹部からレンズ表面上へと移動させ,それにより,パターンをクリシェからレンズ表面上へ移動させるのに役立つ。」
c 【図3】

d 【図4】

e 【図5】


前記aの記載によれば,本願補正発明の「印刷パターン」,基本パターン及びリングパターンが,「人間の虹彩の自然な見た目および外観をシミュレートするように不規則に或いは不均一に離間される点と線との混合を表わそうとする」ようなものであることを把握できる。
また,前記bの記載は,単一の「クリシェ」(ステンレススチールプレート)上にエッチングにより12?18ミクロンの深さの円形凹部で表現された「印刷パターン」(基本パターンとリングパターンとを重ね合わせたもの)に対応する凹部を形成し,当該凹部をインクで満たして,シリコンゴムパッドを用いてインクを前記凹部からコンタクトレンズ表面上に転写するというオフセットパッド印刷により,コンタクトレンズ上に印刷パターンを印刷することを意味していると認められ,本願補正発明が,このようなオフセットパッド印刷により印刷パターンを形成した態様のものを少なくとも包含していることは明らかである。当該態様のコンタクトレンズにおいては,「印刷パターン」が基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であるのか,それとも,最初から最終的な単一の「印刷パターン」としてデザインされたものであるのかによって,コンタクトレンズという物自体の構成に違いは生じない。
そうすると,前記aないしeを含む本願明細書及び図面の全記載からみて,本願補正発明において,「印刷パターンが,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であり,前記基本パターンが点と線との混合からな」るという相違点1に係る構成は,単に,「印刷パターン」が,「人間の虹彩の自然な見た目および外観をシミュレートするように不規則に或いは不均一に離間される点と線との混合を表わ」すようなものであることを規定するに止まる。
(イ)引用発明は,人間の虹彩部には模様があるので,「カラー部」を当該虹彩部の模様を備えたものにすることで,引用発明のコンタクトレンズの使用を第三者に悟られないようにしたものであるところ,引用例2は,より自然な外観を与えるようにするためには,着色領域を,不連続なドットと,ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様とからなるものとするのが良く,当該模様は,多数のドットが互いに結合した放射状の模様,または,ラインとすることができることを開示しているのだから,引用発明において,人間の虹彩部の模様を備えた「カラー部」を,不連続なドットと多数のドットが互いに結合した放射状の模様,または,不連続なドットとラインとからなるパターンとすることで第三者に悟られないようにすることは,引用例2記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)本願の図3ないし5(前記(ア)cないしe)から明確な線を見て取ることができず,ドットのみによって点や線の模様が形成されているように解されることからは,本願補正発明の「線」が,「多数のドットが互いに結合した放射状の模様」を包含しており,まさに引用例2記載の技術的事項における「ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様」に相当する概念と認められるところ,前記(ア)からみて,引用発明において,前記(イ)の「カラー部」(印刷パターン)を,不連続なドット(「点」に相当する。)と「ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様」(「線」に相当する。)とからなるパターンとすることは,「印刷パターンが,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であり,前記基本パターンが点と線との混合からな」るという相違点1に係る本願補正発明の構成とすることに相当するから,引用発明において,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,引用例2記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
また,仮に,本願補正発明の「線」が,「多数のドットが互いに結合した放射状の模様」は包含せず,引用例2記載の技術的事項における「ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様」としての「ライン」に相当する概念であったとしても,引用発明において,前記(イ)の「カラー部」(印刷パターン)を,不連続なドット(「点」に相当する。)と「ライン」(「線」に相当する。)とからなるパターンとすることは,引用例2記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことであるから,引用発明において,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることが,引用例2記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことであるとの結論に,何ら変わりはない。
(エ)なお,本願補正発明の「印刷パターンが,基本パターンとリングパターンとの重ね合わせの結果であ」るという構成が,コンタクトレンズという物自体の構成に違いを生じさせるものでないことは,前記(ア)で述べたとおりであるが,仮に当該構成をコンタクトレンズという物自体の構成として考慮したとしても,引用例2に例示されたJahnke特許の印刷パターンは2つのパターンを重ね合わせたものであり,引用例2の印刷パターン自体も3つのパターンを重ね合わせたものであるから,引用発明において,不連続なドットと「ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様」とからなるパターンを複数重ね合わせて,不連続なドットと「ユーザの眼の虹彩中に見えるラインを模した模様」とからなる「カラー部」のパターンを得ることは,引用例2の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,仮に前記構成をコンタクトレンズという物自体の構成として考慮した場合であっても,引用発明において,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることが,引用例2の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことであるとの結論に変わりはない。

イ 相違点2について
(ア)相違点2に係る本願補正発明の構成である「印刷パターン」が「虹彩領域の外側部分内に暗像を与えるように構成され」ている点について,「暗像」が如何なる像であるのか,特許請求の範囲の記載からは明確に特定し難いから(なお,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は,平成24年4月6日付け拒絶理由通知において,明確性要件に違反するとの拒絶理由を通知されたことに対応して,平成24年7月10日提出の手続補正書によって請求項1から削除されたが,本件補正によって改めて請求項1に追加されたものである。),本願の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌すると,本願の発明の詳細な説明には次のf及び前記(ア)aの記載があり,図1及び図6は次のg及びhのとおりである。
f 「【0014】
添付図面を参照すると,図1は,パターン20が虹彩領域30上に印刷されたコンタクトレンズ10を示しており,虹彩領域30は,不透明でない瞳孔領域40の周囲を取り囲む領域である。レンズが眼上で自然に見えることができるように,印刷パターン20は,虹彩領域の外側部分25内で暗像を提供するように構成されている。・・・(中略)・・・
【0016】
図2は,装着者の眼上に装着された際のコンタクトレンズの断面図を示している。レンズ10の印刷パターン20は装着者の虹彩50を越えて位置している。すなわち,虹彩領域30の直径は,装着者の虹彩50の直径よりも大きい。この印刷パターン20は,符号60において,装着者の虹彩50と重なり合う。これは,装着者の虹彩50の延在部分のように作用することにより装着者の虹彩50を画成するのに役立ち,装着者の眼を更に大きく見せる。」
g 【図1】

h 【図6】


(イ)前記(ア)fからは,「印刷パターン」が,「虹彩領域の外側部分25内に暗像を与えるように構成され」ているのは,「レンズが眼上で自然に見えることができるように」するためであると把握できる。
(ウ)前記(ア)gからは,前記(イ)の「暗像」が与えられる「虹彩領域の外側部分25」が,印刷パターン20のうち虹彩領域30よりも外側に位置する部分25であることを把握できる。
(エ)前記(ア)hからは,印刷パターン20のうち装着者の虹彩50よりも外側に位置する部分(以下,便宜上「低濃度外周領域」という。)の濃度が,装着者の虹彩50よりも内側に位置する部分の濃度よりも薄いことを把握できる。
(オ)本願の発明の詳細な説明の【0016】の記載(前記(ア)f)によれば,虹彩領域30の直径は装着者の虹彩50の直径よりも大きいから,当該虹彩領域30は,本願の図6において,装着者の虹彩50よりも外側に存在する。
そして,前記(ウ)のとおり,「虹彩領域の外側部分25」は虹彩領域30のさらに外側に存在するのだから,前記(エ)からみて,印刷パターン20のうち,「外側部分25」に存在するのは,前記(エ)の「低濃度外周領域」である。
したがって,「虹彩領域の外側部分25」に与えられる「暗像」とは,前記(エ)の「低濃度外周領域」によって,虹彩領域より外側の部分に形成された像を指していることが明らかである。
(カ)前記(イ)及び前記(オ)からみて,本願補正発明の「印刷パターン」が「虹彩領域の外側部分内に暗像を与えるように構成され」ているとは,「印刷パターン」に「低濃度外周領域」が存在し,当該「低濃度外周領域」によって「虹彩領域の外側部分」に「暗像」が形成されており,これによって本願補正発明のコンタクトレンズが眼上で自然に見えるようにされている態様を少なくとも包含していると認められる。
(キ)引用例2の図1(前記(2)イ(エ))からは,引用例2のコンタクトレンズの虹彩セクション22の印刷パターンが,その最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を有するパターンであることを見て取れる。
また,引用例2の【0005】に例示されたJahnke特許のFIG.1(前記(2)イ(カ))からは,Knapp商業レンズの印刷パターンが,その最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を有するパターンであることを見て取れる。
さらに,引用例2の【0006】に例示されたCIBA-GEIGY特許のFig.2(前記(2)イ(キ))からは,CIBA-GEIGY特許のコンタクトレンズの印刷パターンが,その最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を有するパターンであることを見て取れる。
そして,これら引用例2,Knapp商業レンズ及びCIBA-GEIGY特許の印刷パターンが,その最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を有するパターンとされていることで,これら印刷パターンが人間の虹彩を模したものとなっており,当該印刷パターンを形成したコンタクトレンズを装着した際に自然に見えるようにしたものであることが当業者に自明である。
以上より,印刷パターンが形成されたコンタクトレンズにおいて,装着した際に自然に見えるようにするために,印刷パターンを,その最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を有するパターンとすること(以下「周知技術」という。)は,本願出願前に周知であったと認められる。
(ク)引用発明は,人間の虹彩部には模様があるので,「カラー部」を当該虹彩部の模様を備えたものにすることで,引用発明のコンタクトレンズの使用を第三者に悟られないようにしたものであるところ,前記(ク)のとおり,最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を有する印刷パターンとすることで,自然に見えるようにすることは周知技術であったのだから,引用発明において,「カラー部」の最外周部に内側部分よりも濃度の薄い円環状領域を設けることで,装着した際に自然に見えるようにして第三者に悟られないようにすることは,周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
「カラー部」の最外周部に「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」を設けた引用発明においては,「円環領域」(虹彩領域)の外側に「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」が存在し,当該「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」によって「円環領域」(虹彩領域)の外側に形成される像が存在することとなる。
(ケ)前記(ク)の「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」は,前記(エ)の「低濃度外周領域」にほかならず,前記(カ)からみて,引用発明において,前記(ク)の「カラー部」の最外周部に「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」を設けることは,「カラー部」(印刷パターン)を「虹彩領域の外側部分内に暗像を与えるように構成」することに相当するから,当業者は,引用発明において,「カラー部」の最外周部に「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」を設けることで,相違点2に係る本願補正発明の構成を容易に想到し得たものである。
(コ)なお,相違点2に係る本願補正発明の構成について,請求人は,審判請求書の請求の理由の欄において,
「(2)上記補正の根拠
「前記印刷パターンが前記虹彩領域の外側部分内に暗像を与えるように構成され,」との構成要件は,例えば,出願時明細書の段落番号【0019】に記載されており,かつ出願時明細書に添付された図6(Figure 6)において印刷パターン外側部分内における一部の領域(像/image),特に虹彩50の外周の内側の環状領域が,印刷パターン内側部分内の像(image)と比較して,明らかに暗く(darken)なっている(点・線の密度が濃い)ことから導かれる。また,図3(Figure 3)に示される基本パターンの外周部上に図4(Figure 4)に示されるリングパターンをその外縁がはみ出るように重ねれば印刷パターンの外側部分内に暗くされた(点・線の密度が濃い)イメージが形成されることは明らかである。」(3頁14?25行)などと主張しており,当該請求人の主張は,相違点2に係る「暗像」が,「外側部分25」のうちの内側の部分が,基本パターンとリングパターンとを重ね合わせる際に両パターンが重複することで,重複していない部分に比べて濃度が濃くなった部分であることを主張するものと解される。
仮に,請求人が主張するように,本願の発明の詳細な説明に記載されたコンタクトレンズにおいて,基本パターンとリングパターンとに重複する部分(以下「重複部分」という。)が存在し,当該重複部分の濃度が他の部分の濃度より濃くなるのだとしても,本願の図6からは,装着者の虹彩50の外側に位置する部分のうち,装着者の虹彩50に近い側の濃度が他の部分の濃度より濃いという前記請求人主張の構成を読み取ることはできず,かつ,本願の発明の詳細な説明や図面には,図3に示される基本パターンの外径と図1に示される虹彩領域30の外径との大小関係が記載も示唆もされていないから,本願補正発明の「暗像」が,請求人が主張するような,濃度の濃い「重複部分」であると認めることはできない。
また,仮に,本願補正発明の「暗像」が,前記「重複部分」であるとして検討したとしても次のとおりである。
引用発明において,周知技術を適用して,「カラー部」の最外周部に「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」を設ける際に,当該「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」を最外周部分からどの程度の幅で形成するのかは,装着した際に自然に見える効果を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項にすぎないところ,前記(キ)の周知技術においては,「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」の内側には当該円環状領域よりも「濃度の濃い部分」が存在するのであって,引用発明において「内側部分よりも濃度の薄い円環状領域」を最外周部分から0.1mm程度の幅で形成した場合(濃度の薄い円環状領域の幅としての0.1mm程度という値は,例えば,特表2005-514638号公報の【0047】等にみられるように,本願優先日前に普通に採用されていた値である。)には,前記(3)イの「円環領域」の外側に前記濃度の濃い部分が存在することとなる。
したがって,仮に,本願補正発明の「暗像」が,前記「重複部分」であるとした場合であっても,引用発明において,相違点2に係る本願補正発明の構成とすることが,周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとの結論に変わりはない。

ウ 相違点3について
(ア)引用発明において,「カラー部」の最大外径は,それがあまりに小さくては装着者の瞳を大きくみせる効果が少なく,あまりに大きくては違和感が生じてしまうので,装着者の瞳を自然な感じで大きく見せるために,装着者の虹彩部の外径より0.3mm?1.0mm程度大きな13.0mm以上13.5mm以下の範囲とされているところ,当該13.0mm以上13.5mm以下という範囲の中で如何なる値を選択するかは,装着者の瞳を自然な感じで大きく見せるという効果を考慮した上で,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項である。
(イ)前記(ア)からみて,「カラー部」の最大外径として,13.0mm以上13.2mm以下の範囲内の値を採用することは,単なる設計上の事項にすぎないところ,その場合の前記(3)キの「着色円環領域」の外径(すなわち,前記(3)イの「円環領域」の外径)は,「カラー部」の最大外径より0.2mm小さいことから,12.8mm以上13.0mm以下の範囲の値となり,「着色円環領域」の面積は,最小で約95.5mm^(2)(=π×(12.8/2)^(2)-π×(6.5/2)^(2)),最大で約115mm^(2)(=π×(13.0/2)^(2)-π×(4.7/2)^(2))となり,当該「着色円環領域」はコンタクトレンズ全体の面積の約62?75%(相違点3に係る本願補正発明の範囲内の値である。)の面積を占めるものとなる。
したがって,引用発明において,「着色円環領域」(印刷された虹彩領域)の面積がコンタクトレンズ全体の面積中に占める割合を相違点3に係る本願補正発明の範囲内の値とすることは,単なる設計上の事項にすぎない。
(ウ)また,引用例1には,装着者の虹彩部の外径が12.5mmである場合に,「カラー部」の最大外径を13.0mm,「カラー部」の内径を5.0mm,コンタクトレンズの全体径を14.0mmとする実施例が記載されているところ(前記(2)ア(ウ)の【0027】),当該実施例において,「着色円環領域」の外径は12.8mmであり,「着色円環領域」の面積は約109mm^(2)(=π×(12.8/2)^(2)-π×(5.0/2)^(2))であり,コンタクトレンズ全体の面積は約154mm^(2)(=π×(14.0/2)^(2))であるから,当該「着色円環領域」はコンタクトレンズ全体の面積の約71(=109÷154×100)%の面積を占めている。
当該71%の面積は,本願補正発明の「コンタクトレンズ全体の面積の60?75%の面積」という範囲内の値であるから,引用例1には,相違点3に係る本願補正発明の構成が開示されているともいえる。
(エ)なお,本願の発明の詳細な説明には,「印刷パターン20は,コンタクトレンズ10全体の面積の60?75%の面積を占めている。」(【0020】)と記載されていることからは,本願補正発明の「印刷された虹彩領域」とは,「虹彩領域」(図1によれば,虹彩領域30の外径は印刷パターン20の外径よりも小さい。)のうちの印刷された部分を指すのではなくて,「印刷パターン」そのものを指していると解釈する余地があるから,当該解釈を採用した場合について以下検討する。
前記(ア)と同様の理由で,「カラー部」の最大外径として,13.0mm以上13.5mm以下という範囲内で13.0mmという値を採用することは,単なる設計上の事項にすぎないところ,その場合の「カラー部」の面積は,最小で約100mm^(2)(=π×(13.0/2)^(2)-π×(6.5/2)^(2)),最大で約115mm^(2)(=π×(13.0/2)^(2)-π×(4.7/2)^(2))となり,当該「カラー部」はコンタクトレンズ全体の面積の約65?75%(相違点3に係る本願補正発明の範囲内の値である。)の面積を占めるものとなるから,仮に前記解釈を採用したとしても,引用発明において,「カラー部」(印刷された虹彩領域)の面積がコンタクトレンズ全体の面積中に占める割合を相違点3に係る本願補正発明の範囲内の値にすることが,単なる設計上の事項にすぎないことは,前記(イ)と同様である。
また,前記(ウ)の実施例について,「カラー部」の面積を算出すると,約113mm^(2)(=π×(13.0/2)^(2)-π×(5.0/2)^(2))であり,コンタクトレンズ全体の面積154mm^(2)の約73(=113÷154×100)%という相違点3に係る本願補正発明の範囲内の値の面積を占めていることになるから,仮に前記解釈を採用したとしても,引用例1に相違点3に係る本願補正発明の構成が開示されているといえることは,前記(ウ)と同様である。
(オ)前記(ア)ないし(エ)のとおりであるから,引用発明において,相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,単なる設計上の事項にすぎないか,引用例1自身に開示されていることである。

(5)効果について
本願補正発明の奏する効果は,引用例1及び2の記載及び周知技術の奏する効果に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(6)独立特許要件についてのまとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2記載の技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年7月10日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて,前記「第2 1(1)」に本件補正前の請求項1として示したとおりのものと認められる。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2の記載事項については,前記「第2 3(2)」のとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,本願発明と引用発明とは,前記「第2 3(3)カ」にて示した相違点1及び3(ただし「本願補正発明」を「本願発明」に読み替える。)で相違し,その余の点で一致する。
引用発明において,相違点1及び3に係る本願補正発明の構成のような構成とすることは,前記「第2 3(4)ア」及び前記「第2 3(4)ウ」と同様の理由で,引用例2記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たこと,及び,単なる設計上の事項もしくは引用例1自身に開示されていることである。
そして,本願発明の奏する効果は,引用例1及び2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。
したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-18 
結審通知日 2014-02-25 
審決日 2014-03-10 
出願番号 特願2008-523844(P2008-523844)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02C)
P 1 8・ 121- Z (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 邦久  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 コンタクトレンズ  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 正人  
代理人 城戸 博兒  
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