ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A62C |
---|---|
管理番号 | 1290234 |
審判番号 | 不服2013-4071 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-04 |
確定日 | 2014-07-29 |
事件の表示 | 特願2008-312764「消火設備」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月17日出願公開、特開2010-131334〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年12月8日の出願であって、平成24年6月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月24日に意見書が提出されたが、同年11月26日付けで拒絶査定がされ、平成25年3月4日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、同年4月17日に請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 平成25年3月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年3月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成25年3月4日付けの手続補正の内容 平成25年3月4日に提出された手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、願書に最初に添付した特許請求の範囲の)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 水成膜泡消火薬剤を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク及び給水源に接続され該水成膜泡消火薬剤と水とを混合して水成膜泡消火薬剤水溶液とする混合器と、該混合器から供給される水成膜泡消火薬剤水溶液を火災現場に放出する消火用ヘッドとを備えた消火設備において、 前記消火用ヘッドの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口及びデフレクタを有しないスプレーヘッドであることを特徴とする消火設備。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成する水成膜泡消火薬剤を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク及び給水源に接続され該水成膜泡消火薬剤と水とを混合して水成膜泡消火薬剤水溶液とする混合器と、該混合器から供給される水成膜泡消火薬剤水溶液を火災現場に放出する消火用ヘッドとを備えた消火設備において、 前記消火用ヘッドの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口及びデフレクタを有しないスプレーヘッドであることを特徴とする消火設備。」 (なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。) 2 本件補正の適否 2-1 本件補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「水成膜泡消火薬剤」という記載を「合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成する水成膜泡消火薬剤」という記載にするものであり、「水成膜泡消火薬剤」を具体的に限定するものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項にさらに限定を加えたものといえ、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2 独立特許要件の検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。 (1)引用文献の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-290377号公報(以下、「引用文献」という。)には、「消火設備」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、順に「記載1a」ないし「記載1c」という。)。 1a 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、消火設備に関するもので、特にスプリンクラ消火設備に部分的に泡消火設備を組み込んだ消火設備に関するものである。 【0002】 【従来の技術】消火設備には、水消火を行うものや、泡消火を行うもの等がある。尚、本願明細書において、泡消火とは、泡ヘッドを用いて泡水溶液を泡状にして放出するものだけでなく、泡ヘッドを用いずにスプリンクラヘッドと同等な噴霧ヘッドを用いて泡水溶液を液状のまま放出するものも含むものとする。」(段落【0001】及び【0002】) 1b 「【0010】 【発明の実施の形態】図1は本実施形態の消火設備の系統図である。図1において、1は閉鎖型スプリンクラヘッドで、水を放水する第1の消火ヘッドの一例である。このスプリンクラヘッド1は、二次側配管2に複数接続されている。二次側配管2の基端側には、流水検知装置3が設けられ、更にその一次側には、配管を介して加圧送水装置として水源4及びポンプ5が設けられる。このスプリンクラヘッド1からポンプ5に至る構成部分は、通常の従来からあるスプリンクラ消火設備と同じである。尚、図において、Aは防護領域としての駐車場に隣接する部分であり、Bは防護領域としての駐車場である。防護領域Aには、スプリンクラ消火設備の部分が設けられる。 【0011】以下に説明する部分が本発明の特徴部分であり新規な部分である。二次側配管2の先端には、逆止弁6を介して延長配管7が設けられる。この延長配管7の基端側には泡消火ユニット8が設けられる。そして延長配管7の泡消火ユニット8の二次側には閉鎖型噴霧ヘッド9(又は閉鎖型泡ヘッド)が設けられる。この閉鎖型噴霧ヘッド9が泡水溶液を放出する第2の消火ヘッドの一例である。 【0012】泡消火ユニット8は、泡原液を貯えた小型の原液タンク10と泡原液と水とを混合して泡水溶液を生成する混合器11とから構成され、延長配管7が敷設される防護領域Bの部分を泡消火設備とさせるためのものである。」(段落【0010】ないし【0012】) 1c 「【0016】このような消火設備において、火災が発生した場合について説明する。防護領域A、つまり駐車場に隣接する部分で火災が発生した場合には、スプリンクラヘッド1が動作して二次側配管2内の水を放水する。二次側配管2内の減圧にともない、流水検知装置3が動作して、図示しない制御盤に流水信号を出力する。また配管2内の減圧により、ポンプ5が起動され、水源4の水が二次側配管2へと供給される。 【0017】続いて防護領域B、つまり駐車場で火災が発生した場合について説明する。この場合には、閉鎖型噴霧ヘッド9が動作して、延長配管7内の泡水溶液を液状又は泡状で放出する。延長配管7内の減圧により二次側配管2も減圧する。従って、前述したように流水検知装置3が動作して流水信号を出力し、またポンプ5が起動される。水源4の水が二次側配管2を介して延長配管7へと供給され混合器11を通過すると、その時に原液タンク10の泡原液が吸い込まれ、水と泡原液とが混合され、所定濃度の泡水溶液が生成される。そして閉鎖型噴霧ヘッド9から泡水溶液が放出され、車両などによる油火災を消火する。」(段落【0016】及び【0017】) (2)引用文献の記載事項 記載1aないし1c及び図面の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に「記載事項2a」ないし「記載事項2e」という。)。 2a 記載1bの「泡消火ユニット8は、泡原液を貯えた小型の原液タンク10と泡原液と水とを混合して泡水溶液を生成する混合器11とから構成され」(段落【0012】)及び図面によると、引用文献には、泡原液を貯えた原液タンク10が記載されている。 2b 記載1bの「図1において、1は閉鎖型スプリンクラヘッドで、水を放水する第1の消火ヘッドの一例である。このスプリンクラヘッド1は、二次側配管2に複数接続されている。二次側配管2の基端側には、流水検知装置3が設けられ、更にその一次側には、配管を介して加圧送水装置として水源4及びポンプ5が設けられる。」(段落【0010】)及び「泡消火ユニット8は、泡原液を貯えた小型の原液タンク10と泡原液と水とを混合して泡水溶液を生成する混合器11とから構成され」(段落【0012】)並びに図面によると、引用文献には、原液タンク10及び加圧送水装置に接続され泡原液と水とを混合して泡水溶液とする混合器11が記載されている。 2c 記載1cの「続いて防護領域B、つまり駐車場で火災が発生した場合について説明する。この場合には、閉鎖型噴霧ヘッド9が動作して、延長配管7内の泡水溶液を液状又は泡状で放出する。延長配管7内の減圧により二次側配管2も減圧する。従って、前述したように流水検知装置3が動作して流水信号を出力し、またポンプ5が起動される。水源4の水が二次側配管2を介して延長配管7へと供給され混合器11を通過すると、その時に原液タンク10の泡原液が吸い込まれ、水と泡原液とが混合され、所定濃度の泡水溶液が生成される。そして閉鎖型噴霧ヘッド9から泡水溶液が放出され、車両などによる油火災を消火する。」(段落【0017】)及び図面によると、引用文献には、混合器11から供給される泡水溶液を車両などによる油火災が発生した防護領域Bに放出する閉鎖型噴霧ヘッド9が記載されている。 2d 記載1aの「この発明は、消火設備に関するもので、特にスプリンクラ消火設備に部分的に泡消火設備を組み込んだ消火設備に関するものである。」(段落【0001】)及び図面によると、引用文献には、消火設備が記載されている。 2e 記載1aの「尚、本願明細書において、泡消火とは、泡ヘッドを用いて泡水溶液を泡状にして放出するものだけでなく、泡ヘッドを用いずにスプリンクラヘッドと同等な噴霧ヘッドを用いて泡水溶液を液状のまま放出するものも含むものとする。」(段落【0002】)、記載1cの「この場合には、閉鎖型噴霧ヘッド9が動作して、延長配管7内の泡水溶液を液状又は泡状で放出する。」(段落【0017】)及び図面によると、引用文献における閉鎖型噴霧ヘッド9は、泡水溶液を液状で放出するものである場合には、泡立て用の空気取込み口を有しない閉鎖型噴霧ヘッド9であることは明らかである。 (3)引用発明 記載1aないし1c、記載事項2aないし2e及び図面の記載を整理すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「泡原液を貯えた原液タンク10と、該原液タンク10及び加圧送水装置に接続され該泡原液と水とを混合して泡水溶液とする混合器11と、該混合器11から供給される泡水溶液を車両などによる油火災が発生した防護領域Bに放出する閉鎖型噴霧ヘッド9とを備えた消火設備において、 前記閉鎖型噴霧ヘッド9は泡立て用の空気取込み口を有しない閉鎖型噴霧ヘッド9である消火設備。」 (4)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明における「貯えた」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「貯留する」に相当し、以下、同様に、「原液タンク10」は「貯留タンク」に、「加圧送水装置」は「給水源」に、「混合器11」は「混合器」に、「車両などによる油火災が発生した防護領域B」は「火災現場」に、「閉鎖型噴霧ヘッド9」は「消火用ヘッド」及び「スプレーヘッド」に、「消火設備」は「消火設備」に、それぞれ、相当する。 また、引用発明における「泡原液」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成する水成膜泡消火薬剤」と、「泡消火薬剤」という限りにおいて、一致する。 さらに、引用発明における「泡水溶液」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「水成膜泡消火薬剤水溶液」と、「泡消火薬剤水溶液」という限りにおいて、一致する。 したがって、両者は、 「泡消火薬剤を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク及び給水源に接続され該泡消火薬剤と水とを混合して泡消火薬剤水溶液とする混合器と、該混合器から供給される泡消火薬剤水溶液を火災現場に放出する消火用ヘッドとを備えた消火設備において、 前記消火用ヘッドの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口を有しないスプレーヘッドである消火設備。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ア 相違点1 「泡消火薬剤」及び「泡消火薬剤水溶液」に関して、本願補正発明においては、「合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成する水成膜泡消火薬剤」及び「水成膜泡消火薬剤水溶液」であるのに対し、引用発明においては、「泡原液」及び「泡水溶液」である点(以下、「相違点1」という。)。 イ 相違点2 本願補正発明においては、消火用ヘッドの少なくとも1つはデフレクタを有しないものであるのに対し、引用発明においては、消火用ヘッドに相当する閉鎖型噴霧ヘッド9はそのようなものか明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。 (5)相違点についての判断 そこで、上記相違点1及び2について、以下に検討する。 ア 相違点1について 下記の泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年12月9日自治省令第26号)第2条第4号及び第14条に規定されるように、泡消火薬剤として、合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成する水性膜泡消火薬剤は周知である(以下、「周知技術1」という。)。 したがって、引用発明において、周知技術1を適用し、「泡原液」を合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成する水性膜泡消火薬剤とし、「泡水溶液」を水成膜泡消火薬剤水溶液として、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 ・泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年12月9日自治省令第26号) 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二十1条の2第2項 の規定に基づき、泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令を次のように定める。 ・・・(略)・・・ 第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 ・・・(略)・・・ 四 水成膜泡消火薬剤 合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤で、油面上に水成膜を生成するものをいう。 ・・・(略)・・・ 第十4条 泡水溶液(水成膜泡消火薬剤に係るものに限る。以下本条において同じ。)の拡散係数は、温度二十度の泡水溶液をJISK八四六四に適合するシクロヘキサンを用いてJISK二二四一に定める切削油剤試験方法により測定した場合において、三・五以上でなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。 イ 相違点2について 消火用ヘッドとして、デフレクタを有するものも有しないものもともに周知である(必要であれば、下記(ア)の特開2005-118356号公報の記載、下記(イ)の特開平8-33730号公報の記載及び下記(ウ)の特開平9-122264号公報の記載を参照。以下、「周知技術2」という。)。 したがって、引用発明において、閉鎖型噴霧ヘッド9をデフレクタを有しないものとすることは、周知技術2の一方を単に選択したにすぎないことから、引用発明において、周知技術2を適用し、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 (ア)特開2005-118356号公報の記載 特開2005-118356号公報には、「噴霧消火装置及び液体消火剤の噴霧方法」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。)。 ・「【0001】 本発明は携行型の噴霧ノズル、固定設備に用いられるスプリンクラーヘッド、水噴霧ヘッド、散水ヘッド等の噴霧消火装置及び液体消火剤の噴霧方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、図6及び図7に示すように、ノズル本体90と、ノズル本体90内に挿入されるアジテータ100とを備えた噴霧消火装置が知られている。ノズル本体90は、先端にノズル口91aが貫設された略管形状のヘッドチップ91と、ヘッドチップ91に螺合された略管形状のボディ92とからなり、アジテータ100はヘッドチップ91内に挿入されており、周縁に螺旋溝100aが形成されてる。また、アジテータ100の軸方向の中心には、ノズル口91aに向かって略直線状に開口するテーパ孔100bが貫設されている。なお、ヘッドチップのノズル口の形状やアジテータの形状を変化させることによって、噴霧量や噴霧範囲を変化させることができる。また、テーパ孔100bが貫設されていない噴霧消火装置も知られている。 【0003】 この噴霧消火装置は、図示しない送水配管等に接続され、送水配管等から供給された水は、螺旋溝100aとヘッドチップ91とによって形成された回転流路101に案内され、ノズル口91aから吐出される。このとき吐出される水は、回転流路101によって大きな回転運動エネルギーを与えられるため、遠心力によって激しく飛び散り、水滴が形成される。また、テーパ孔100bによって形成された直線流路102を経由した水は、直線方向の運動エネルギーを与えられ、水滴を前方に飛ばす作用を奏する。こうして前方に飛ばされた水滴は、蒸発によって周囲から気化熱を奪うことにより火源の温度を下げることができる。」(段落【0001】ないし【0003】) ・上記記載を踏まえると、図6から、噴霧消火装置のノズルはデフレクタを有しないことが看取される。 (イ)特開平8-33730号公報の記載 特開平8-33730号公報には、「消火・燃焼抑制方法及びその装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ・「【0009】 【実施例】この発明の第1実施例を図1により説明する。開口部Mを有する部屋Rの天井SFに水噴霧ノズルWNとガスノズルGNとを近接して配置する。この部屋Rは、縦L、横Wがそれぞれ900mm、高さHが1200mmであり、又、開口部Mは、縦KLが900mm、横KWが225mmに形成されている。 【0010】水噴霧ノズルWNはスパイラルタイプ、ピンタイプ、などが用いられる。スパイラルタイプは、図2に示す様に、ノズル本体NBの流路FRに中央孔CRと旋回孔SPRとを備えたスパイラル部材SPTが配設されおり、該旋回孔SPRにより旋回流を形成しながら水Wを噴霧して、微粒子水滴WDを発生させるものである。 【0011】又、ピンタイプは、図3に示す様に、ノズル本体NBの流路FRにストレーナSRNとオリフイスOFとを設けるとともに、該オリフイスOFの出口に対向してデフレクタDFを配設し、オリフイスOFから柱状となって放出される水WをデフレクタDFに衝突させて微粒子水滴WDを発生させるものである。」(段落【0009】ないし【0011】) ・上記記載(特に、ピンタイプがデフレクタDFにより微粒子水滴WDを発生させているのに対し、スパイラルタイプは旋回流を形成することにより微粒子水滴WDを発生させる旨の記載)を踏まえると、図1ないし3から、消火・燃焼抑制装置のスパイラルタイプのノズルはデフレクタを有しないことが看取される。 (ウ)特開平9-122264号公報の記載 特開平9-122264号公報には、「消火設備」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ・「【0006】 【発明の実施の形態】 実施形態1 この発明の第1実施形態を図1により説明する。防護区域Rの天井面Fに消火ノズルとしての噴霧ノズルWNが設けられている。噴霧ノズルWNはスパイラルタイプ、ピンタイプなどが用いられる。スパイラルタイプは、図2に示す様に、ノズル本体NBの流路FRに中央孔CRと旋回孔SPRとを備えたスパイラル部材SPTが配設されており、旋回孔SPRにより旋回流を形成しながら水Wを噴霧して、微粒子水滴WDを発生させるものである。 【0007】またピンタイプは、図3に示す様に、ノズル本体NBの流路FRにストレーナSPNとオリフィスOFとを設けると共に、オリフィスOFの出口に対向してデフレクタDFを配設し、オリフィスOFから柱状となって放出される水WをデフレクタDFに衝突させて微粒子水滴WDを発生させるものである。」(段落【0006】及び【0007】) ・上記記載(特に、ピンタイプがデフレクタDFにより微粒子水滴WDを発生させているのに対し、スパイラルタイプは旋回流を形成することにより微粒子水滴WDを発生させる旨の記載)を踏まえると、図1ないし3から、消火設備のスパイラルタイプのノズルはデフレクタを有しないことが看取される。 ウ 効果について、 そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明により、引用発明並びに周知技術1及び2からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。 (6)むすび したがって、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 2-3 むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)」の【請求項1】のとおりである。 2 引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-290377号公報(以下、上記「第2[理由]2 2-2(1)と同様に「引用文献」という。)には、上記「第2[理由]2 2-2(1)」のとおりの記載があり、該記載及び図面の記載から、上記「第2[理由]2 2-2(2)」のとおりの記載事項が記載されていると認める。 そして、引用文献には、上記「第2[理由]2 2-2(3)」のとおりの発明(以下、上記「第2[理由]2 2-2(3)」と同様に「引用発明」という。)が記載されていると認める。 3 対比・判断 上記「第2[理由]2 2-1」で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が上記「第2[理由]2 2-2(4)及び(5)」のとおり、引用発明並びに周知技術1及び2(周知技術1及び2については、上記「第2[理由]2 2-2(5)」のとおりである。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様に、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明を全体としてみても、本願発明により、引用発明並びに周知技術1及び2からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-16 |
結審通知日 | 2014-05-27 |
審決日 | 2014-06-09 |
出願番号 | 特願2008-312764(P2008-312764) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A62C)
P 1 8・ 121- Z (A62C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大山 健 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
槙原 進 加藤 友也 |
発明の名称 | 消火設備 |
代理人 | 青山 陽 |