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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1291164 |
審判番号 | 不服2013-5671 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-27 |
確定日 | 2014-08-20 |
事件の表示 | 特願2012- 37961「分散コンピュータシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月28日出願公開、特開2012-123833〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成7年4月24日(パリ条約による優先権主張平成6年4月28日、アメリカ合衆国)の特許出願である特願平7-98882号の分割出願(特願2009-101935号)の分割出願(特願2010-185225号)の一部を平成24年2月23日に新たな特許出願としたものであって、平成24年6月20日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月25日付けで手続補正がなされ、同年11月22日付けで拒絶査定がなされ、平成25年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成25年3月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔結論〕 平成25年3月27日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.補正内容 平成25年3月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の請求項1に変更する補正事項を含むものである。 そして、補正前の請求項1及び補正後の請求項1の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。 なお、<補正後の請求項1>における下線は補正箇所を表している。 <補正前の請求項1> 「 【請求項1】 少なくとも1つのクライアントと少なくとも1つのサーバーとを含む分散計算システムを使用したアイテムの発注を実現する方法であって、 販売のため現在提供されているとして前記アイテムと前記アイテムを特定するアイテム識別子とを前記クライアントを介し表示又は説明する情報を含む前記アイテムのデータを、前記サーバーからのデータストリームを介し受信するステップと、 前記アイテムのデータの少なくとも一部をユーザに提示するステップと、 前記アイテムのデータの少なくとも一部の提示に応答して、前記ユーザにより実行される1つのアクションに係る制御イベントを受信するステップと、 前記1つのアクションに対して、前記クライアントの永久メモリから前記ユーザのパーソナル情報を抽出し、前記サーバーから前記データストリームを介し以前に受信した前記アイテムのデータと、以前に前記永久メモリに格納された前記ユーザのパーソナル情報とを合成し、前記アイテムの注文を生成し、前記クライアントから前記アイテムの注文を送信することに応答するステップと、 を有する方法。」 <補正後の請求項1> 「 【請求項1】 少なくとも1つのクライアントと少なくとも1つのサーバーとを含む分散計算システムを使用したアイテムの発注を実現する方法であって、 実行可能なコードを含む分散計算アプリケーションのコードモジュールと、販売のため現在提供されているとして前記アイテムと前記アイテムを特定するアイテム識別子とを前記クライアントを介し表示又は説明する情報を含む前記アイテムのデータとを、前記サーバーからのデータストリームを介し受信するステップと、 前記アイテムのデータの少なくとも一部をユーザに提示するステップと、 前記アイテムのデータの少なくとも一部の提示に応答して、前記ユーザにより実行される1つのアクションに係る制御イベントを受信するステップと、 前記実行可能なコードを実行するステップと、を有し、 前記実行可能なコードの実行は、前記クライアントの永久メモリから前記ユーザのパーソナル情報を抽出し、前記サーバーから前記データストリームを介し以前に受信した前記アイテムのデータと、以前に前記永久メモリに格納された前記ユーザのパーソナル情報とを合成し、前記アイテムの注文を生成し、前記クライアントから前記アイテムの注文を送信することによって前記1つのアクションに応答する方法。」 2.本件補正に対する判断 本件補正の内の上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、平成6年法律第116号改正附則第6条第1項によりなお従前の例によるものとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.」の<補正後の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。 (2)引用例 ア.原審の拒絶の理由で引用された、特開平4-127688号公報(平成4年4月28日出願公開。以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。 (ア)「(1)テレビ放送に重畳されている文字放送を分離し、該分離した文字放送をテレビ受信機の画面に表示する文字放送受信機において、 前記テレビ放送の画面に文字放送を字幕表示する機能と、 所定操作により電話回線と接続する機能と、 少なくとも当該文字放送受信機の所持者等の住所、氏名および前記文字放送によるテレビショッピングの商品番号のデータを記憶する機能とを有し、 前記テレビショッピングの商品購入操作によりそのテレビショッピングにて商品を紹介している販売会社等の電話機を自動ダイヤルで呼び出すとともに、その字幕表示されている商品の番号および前記記憶されている当該購入者の住所および氏名等をその販売会社等に送信するようにしたことを特徴とする文字放送受信機。」(特許請求の範囲) (イ)「[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記テレビ放送によるテレビショッピングにあっては、購入しようとする商品番号および販売先の電話番号等を記憶しておく必要がある。したがって、例えばその商品紹介時間が非常に短かったりすると、その商品を購入しようか、迷っている間に次の商品が紹介されることになり、購入したい商品番号や電話番号を控えることができず、商品購入ができないということもある。 この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的はテレビショッピングによる商品購入を極めて簡単に行なうことができるようにした文字放送受信機を提供することにある。」(第1頁右下欄第14行?第2左上欄第7行) (ウ)「次に、上記構成の文字放送受信機による商品購入を第4図および第5図のテレビ画面を参照して説明する。なお、この文字放送受信機EEPROM部14には当該設置している家の住所や名前が記憶されている。 まず、放送局18からは、販売会社17の依頼に基づいたテレビショッピングが放送されるとともに、このテレビショッピングに応じた文字放送が行われているものとする。すると、その放送局18のテレビ放送を受信しているテレビ受像機には、そのテレビショッピングが放送されるが、例えばリモコン12の「字幕」キー12cが操作されると、そのテレビ受像機の画面20aにはそのテレビショッピングの他に文字番組が字幕表示される(第4図に示す)。すなわち、販売会社17の販売商品、例えば絵画や花瓶等が画面20aに表示されるとともに、この画面20aの下部には文字放送によりその販売商品の番号(例えば「123」)および価格(例えば「100,000円」)等が表示される。なお、その文字放送による商品番号や価格等はテロップにより流れ、何回か表示されるようにしてもよい。また、放送局18からは販売商品を順次紹介する放送が行われることから、上述同様に、その販売商品、商品番号および価格が画面20aに順次表示されることになる。 ここで、購入商品が表示されているとき、当該リモコン12の「購入」キー12c(審決注:上記「リモコン12の「字幕」キー12c」という記載や引用例の第2図の記載を参酌すると「「購入」キー12c」は「「購入」キー12a」の誤記と認められる。)が操作されると、CPU9にてそのリモコン信号のコードが解析され、例えば第5図に示す表示処理が行われる。このとき、その表示データは例えば文字放送のデータとして放送局18側から送信するようにし、この文字放送を受信した文字放送受信機にて当該EEPROM部14に記憶するようにしてもよい。そして、画面20aに表示されている番号の商品を購入するために、その表示にしたがって「YES」キー12bが操作されると、CPU9にてそのリモコン信号のコードが解析され、NCU部16の制御が実行され、EEPROM部14に記憶されている販売会社の電話番号が自動ダイヤルされる。なお、販売会社の電話番号のデータは、例えば文字放送のデータとして放送局18側から送信され、予め文字放送受信機のEEPROM部14に記憶されている。 続いて、当該文字放送受信機と販売会社17の間で回線が接続されると、当該文字放送受信機のCPU9にて上記購入商品の番号、当該住所および氏名等のデータがEEPROM部14から読み出されるとともに、これらデータがモデム部15を介して販売会社17側に伝送される。すると、販売会社17においては、伝送されたデータに基づいて購入申込を受け付けることができ、例えば後日の商品とともに、代金請求書を発送するがことが可能となる。この場合、商品購入者は、例えば商品着払い、あるいは銀行振込にて代金を払うことになる。 このように、放送局からはそのテレビショッピングの放送とともに、文字放送のデータでその商品番号や価格を送信しており、一方不特定多数者の文字放送受信機においては、テレビショッピングに上記文字放送を字幕で付加し、またリモコン等のボタン操作によりそのテレビショッピングの販売会社との間で回線を接続し、購入商品の番号、当該購入者の住所および氏名を自動的に送信するようにしたので、テレビショッピングの商品を購入しようとする場合、簡単な操作でその商品購入申込ができ、その都度商品番号や販売会社等の申し込み先を記憶したり、メモリする必要がなく、商品の購入ができなかったりすることもなく、商品の選択にも十分なゆとりがとれる。」(第3頁左上欄第17行?第4頁左上欄第3行) イ.そして、上記記載事項を引用例の関連図面と技術常識に照らせば、次のことがいえる。 (ア)引用例でいう「テレビショッピング」は、「少なくとも1つの文字放送受信機と少なくとも1つの放送局の装置とを含むシステムを使用した商品の発注」を実現するものである。 (イ)引用例の文字放送受信機は、放送局の装置から、第4図に示されるようなテレビ画面を表示するためのデータを受信するものであり、そのデータは、「販売のため現在提供されているとして商品と前記商品を特定する商品番号とを文字放送受信機を介し表示又は説明する情報を含む前記商品のデータ」とも呼び得るものである。また、そのデータを伝送するものといえる「テレビショッピングの放送及びテレビショッピングに応じた文字放送」は、データを流れとして送るものであるから「データストリーム」の一種であるといえる。 (ウ)引用例の第4図に示されるテレビ画面は、「商品のデータの少なくとも一部」をユーザに提示するものである。 (エ)上記摘記事項ア.の(ア)に示される「商品購入操作」は、上記摘記事項ア.の(ウ)に示されるリモコン12の「YES」キー12bの操作を指すものと解されるが、その「YES」キー12bの操作は、その操作に応じた「制御イベント」と呼び得る情報を文字放送受信機へ送り、文字放送受信機は、それを受信する。 (オ)上記摘記事項ア.の(ア)に示される「前記テレビショッピングの商品購入操作によりそのテレビショッピングにて商品を紹介している販売会社等の電話機を自動ダイヤルで呼び出すとともに、その字幕表示されている商品の番号および前記記憶されている当該購入者の住所および氏名等をその販売会社等に送信する」という機能は、上記摘記事項ア.の(ウ)に示される「「YES」キー12bが操作されると、CPU9にてそのリモコン信号のコードが解析され、NCU部16の制御が実行され、EEPROM部14に記憶されている販売会社の電話番号が自動ダイヤルされる。・・・続いて、当該文字放送受信機と販売会社17の間で回線が接続されると、当該文字放送受信機のCPU9にて上記購入商品の番号、当該住所および氏名等のデータがEEPROM部14から読み出されるとともに、これらデータがモデム部15を介して販売会社17側に伝送される。」という処理に対応するものと解されるが、それらの処理は、当然に何らかの「実行可能なコード」の実行によってなされるものである。 (カ)上記(オ)で言及した「当該文字放送受信機と販売会社17の間で回線が接続されると、当該文字放送受信機のCPU9にて上記購入商品の番号、当該住所および氏名等のデータがEEPROM部14から読み出されるとともに、これらデータがモデム部15を介して販売会社17側に伝送される。」という処理は、「文字放送受信機のEEPROM部14からユーザの住所および氏名等のデータを抽出し、放送局の装置からデータストリームを介し以前に受信した商品のデータと、以前に前記EEPROM部14に格納された前記ユーザの住所および氏名等のデータとを合成し、前記商品の注文を生成し、前記文字放送受信機から前記商品の注文を送信することによって商品購入操作に応答する」ことに他ならない。 以上を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用例記載発明」という。)が記載されているといえる。 「少なくとも1つの文字放送受信機と少なくとも1つの放送局の装置とを含むシステムを使用した商品の発注を実現する方法であって、 販売のため現在提供されているとして前記商品と前記商品を特定する商品番号とを前記文字放送受信機を介し表示又は説明する情報を含む前記商品のデータを、前記放送局の装置からのデータストリームを介し受信するステップと、 前記商品のデータの少なくとも一部をユーザに提示するステップと、 前記商品のデータの少なくとも一部の提示に応答して、前記ユーザにより実行される商品購入操作に係る制御イベントを受信するステップと、 実行可能なコードを実行するステップと、 を有し、 前記実行可能なコードの実行は、前記文字放送受信機のEEPROM部14から前記ユーザの住所および氏名等のデータを抽出し、前記放送局の装置から前記データストリームを介し以前に受信した前記商品のデータと、以前に前記EEPROM部14に格納された前記ユーザの住所および氏名等のデータとを合成し、前記商品の注文を生成し、前記文字放送受信機から前記商品の注文を送信することによって前記商品購入操作に応答する方法。」 (3)対比 本願補正発明と引用例記載発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア.引用例記載発明の「商品」、「商品番号」は、それぞれ、本願補正発明の「アイテム」、「アイテム識別子」に相当する。 イ.引用例記載発明の「ユーザにより実行される商品購入操作」は、本願補正発明の「ユーザにより実行される1つのアクション」に相当する。 ウ.引用例記載発明の「EEPROM部14」は、本願補正発明の「永久メモリ」に相当する。 エ.引用例記載発明の「ユーザの住所および氏名等のデータ」は、本願補正発明の「ユーザのパーソナル情報」に相当する。 オ.引用例記載発明の「文字放送受信機」と本願補正発明の「クライアント」は、アイテムの発注を実現する方法において使用されるシステムにおける「ユーザ側の装置」である点で共通し、引用例記載発明の「放送局の装置」と本願補正発明の「サーバー」は、同システムにおける「中央側の装置」である点で共通する。 したがって、本願補正発明と引用例記載発明の間には以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「少なくとも1つのユーザ側の装置と少なくとも1つの中央側の装置とを含むシステムを使用したアイテムの発注を実現する方法であって、 販売のため現在提供されているとして前記アイテムと前記アイテムを特定するアイテム識別子とを前記クライアントを介し表示又は説明する情報を含む前記アイテムのデータを、前記中央側の装置からのデータストリームを介し受信するステップと、 前記アイテムのデータの少なくとも一部をユーザに提示するステップと、 前記アイテムのデータの少なくとも一部の提示に応答して、前記ユーザにより実行される1つのアクションに係る制御イベントを受信するステップと、 実行可能なコードを実行するステップと、 を有し、 前記実行可能なコードの実行は、前記クライアントの永久メモリから前記ユーザのパーソナル情報を抽出し、前記サーバーから前記データストリームを介し以前に受信した前記アイテムのデータと、以前に前記永久メモリに格納された前記ユーザのパーソナル情報とを合成し、前記アイテムの注文を生成し、前記クライアントから前記アイテムの注文を送信することによって前記1つのアクションに応答する方法。」である点。 (相違点1) 本願補正発明の「ユーザ側の装置」、「中央側の装置」は、それぞれ「クライアント」、「サーバ」であり、本願補正発明の「システム」は、「分散計算システム」であるのに対し、引用例記載発明の「ユーザ側の装置」、「中央側の装置」は、それぞれ「クライアント」、「サーバ」と呼び得るものであるとは限らず、引用例記載発明の「システム」は、「分散計算システム」と呼び得るものであるとは限らない点。 (相違点2) 本願補正発明の「実行可能なコードを実行するステップ」において実行される「実行可能なコード」は、「実行可能なコードを含む分散計算アプリケーションのコードモジュール」として「サーバーからのデータストリームを介し受信するステップ」において受信されるものであるのに対し、引用例記載発明の「実行可能なコードを実行するステップ」において実行される「実行可能なコード」は、そのようなものではない点。 (4)判断 ア.相違点1について 下記(ア)?(ウ)の事情を総合すると、引用例記載発明の「ユーザ側の装置」、「中央側の装置」を、それぞれ「クライアント」、「サーバ」と呼び得るものとし、引用例記載発明の「システム」を、「分散計算システム」と呼び得るものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (ア)本願明細書の【背景技術】の欄で出願人(請求人)自身が認めている事項からも明らかなように、「クライアント」と呼ばれる「ユーザ側の装置」と「サーバー」と呼ばれる「中央側の装置」を含む、「分散計算システム」と呼ばれるシステム自体は本願の優先日前に周知であった。 また同【背景技術】の欄の中の段落【0007】、【0008】の記載からも明らかなように、引用例記載発明と同じく放送局と視聴者局で構成されるテレビジョンシステムにおいて、その放送局を「サーバー」に対応付け、「視聴者局」を「クライアント」に対応付けることも、当業者にとって普通のことであった。 (イ)一方、引用例記載発明のシステムも、「中央側の装置」としての「放送局の装置」と、「ユーザ側の装置」、「視聴者局」としての「文字放送受信機」を含むものであり、該「放送局の装置」と「文字放送受信機」は、いずれも、それらが具備する機能からみて、当然にコンピュータを含むものである。 そして、上記(2)のア.の(イ)に摘記した引用例の記載から把握される引用例記載発明の課題に照らせば、上記「放送局の装置」と「文字放送受信機」のそれぞれを「クライアント」、「サーバー」に対応付けて、それぞれ「クライアント」、「サーバー」と呼び得るものとすることに対する阻害要因がないことは明らかである。 (ウ)以上のことは、引用例記載発明の「ユーザ側の装置」、「中央側の装置」を、それぞれ「クライアント」、「サーバ」と呼び得るものとし、引用例記載発明の「システム」を、「分散計算システム」と呼び得るものとすることが当業者にとって容易であったことを意味する。 イ.相違点2について 下記(ア)?(ウ)の事情を総合すると、引用例記載発明の「実行可能なコードを実行するステップ」において実行される「実行可能なコード」を、「実行可能なコードを含む分散計算アプリケーションのコードモジュール」として「サーバーからのデータストリームを介し受信するステップ」において受信されるもの、とすることも、当業者が容易になし得たことというべきである。 (ア)本願明細書の上記段落【0007】、【0008】にも記載されており、また、前置報告書(平成25年7月24日付けの審尋に添付して請求人にも送付した)で審査官が引用文献2として引用した国際公開第93/10605号(特表平07-505020号公報参照)(以下、「周知例」という。)の「BACKGROUND OF THE INVENTION」の欄の中に含まれる第2ページ第15?19行や第3ページ第1?4行の記載(下に摘記した記載)からも明らかなように、放送局と視聴者局で構成されるテレビジョンシステムにおいて、視聴者局のコンピュータで使用されるソフトウェアを放送局側からダウンロードさせるようにすること自体は、本願の優先日前に周知であった。 <周知例第2ページ第15?19行の記載> 「This system, in one enbodiment, contemplates the use of the vertical blanking interval of the standard NTSC television signal for downloading to a remate viewer's handheld device game play or other interactive instructions.」(公表公報での訳:このシステムは、1つの実施例において、標準的なNTSCテレビジョン信号の垂直帰線インターバルを使用して、遠隔視聴者のハンドヘルド装置にゲームプレイ又は他の対話式命令をダウンロードすることを意図している。) <周知例第3ページ第1?4行の記載> 「The second category maintains the software in random access memory in the viewer's hand held device where the program must be downloaded into the device prior to the event starting.」(公表公報での訳:第2の分類は、ソフトウェアを視聴者のハンドヘルド装置のランダムアクセスメモリに維持するもので、事象がスタートする前にプログラムをダウンロードしなければならない。) (イ)一方、引用例記載発明の「実行可能なコードを実行するステップ」において実行される「実行可能なコード」も視聴者局のコンピュータで使用されるソフトウェアであるから、そこに上記(ア)で言及した周知の技術(視聴者局のコンピュータで使用されるソフトウェアを放送局側からダウンロードさせるようにする技術)が有用かつ採用可能であることは当業者に明らかであり、引用例記載発明の上記「実行可能なコード」を放送局側からダウンロードさせるようにすること自体は当業者が容易に推考し得たことである。 そして、そのようにする際に、上記「実行可能なコード」をどのような形態でダウンロードさせるようにするか(「実行可能なコード」の形態とするか「実行可能なコード」を生成可能なソースコードの形態とするか、コードモジュールの形態とするか否か、等の事項)は、当業者が適宜決定し得た事項である。 (ウ)以上のことと、上記ア.で述べたように引用例記載発明の「システム」を、「分散計算システム」と呼ばれるものとすること自体は当業者が容易になし得たことであることとを併せ考えると、引用例記載発明の「実行可能なコードを実行するステップ」において実行される「実行可能なコード」を、「実行可能なコードを含む分散計算アプリケーションのコードモジュール」として「サーバーからのデータストリームを介し受信するステップ」において受信されるもの、とすることは格別のことではない。 ウ.本願補正発明の効果について 本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例に記載された事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであり、本願補正発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。 (5)まとめ 以上によれば、本願補正発明は、引用例記載発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条第1項によりなお従前の例によるものとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反する。 したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成24年10月25日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「(2)」の欄に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、限定事項の一部を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の欄に記載したとおり、引用例記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-19 |
結審通知日 | 2014-03-25 |
審決日 | 2014-04-07 |
出願番号 | 特願2012-37961(P2012-37961) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 雅也 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
山田 正文 小曳 満昭 |
発明の名称 | 分散コンピュータシステム |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |