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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1291815
審判番号 無効2012-800120  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-07 
確定日 2014-08-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4911727号発明「半導体装置の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第4911727号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第4911727号に係る出願は、平成14年12月27日に出願した特願2002-379270号の一部を平成20年10月17日に新たな特許出願としたものであって、平成24年1月27日にその請求項1?3に係る発明について特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、住友金属鉱山株式会社(以下、「請求人」という。)から平成24年8月7日付けで請求項1?3に係る発明の特許について、無効審判の請求がなされたものであり、その後の手続の経緯は,以下のとおりである。

審判請求書 平成24年 8月 7日
審判事件答弁書 平成24年10月19日
審理事項通知書 平成25年 1月22日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成25年 2月21日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成25年 2月21日
口頭審理(特許庁審判廷) 平成25年 3月 7日
審決の予告 平成25年 3月18日
訂正請求書 平成25年 5月17日
意見書 平成25年 5月17日
弁駁書 平成25年 6月24日

2.審判請求人の主張

審判請求人が主張する無効理由の要旨は、次のとおりである。
なお、請求人は、証拠方法として、甲第1号証?甲第18号証、参考資料として甲第19号証?甲第24号証を提出している。

甲第1号証 特許第4911727号公報
甲第2号証 特開2002-9196号公報
甲第3号証 特開2002-16181号公報
甲第4号証 特開昭63-164327号公報
甲第5号証 特開昭63-86322号公報
甲第6号証 特開平8-162352号公報
甲第7号証 特開2001-68810号公報
甲第8号証 特開2002-198462号公報
甲第9号証 特開昭60-234380号公報
甲第10号証 特開昭61-243193号公報
甲第11号証 特公昭61-42796号公報
甲第12号証 特開2002-83893号公報
甲第13号証 特開2002-289739号公報
甲第14号証 特開2002-305378号公報
甲第15号証 特開平6-97318号公報
甲第16号証 特開2000-91743号公報
甲第17号証 平成14年11月10日発行 「MATERIAL STAGE」11月号第51頁
甲第18号証 特開平10-116935号公報
甲第19号証 特開平10-177004号公報
甲第20号証 特開平11-323598号公報
甲第21号証 特開2001-85559号公報
甲第22号証 特開平10-335779号公報
甲第23号証 日本プレーティング協会編「現場技術者のための実用めっき(I)」(槇書店、昭和58年7月20日増補1刷)
甲第24号証 東京鍍金材料協同組合技術委員会編「めっき技術ガイドブック」(昭和62年12月16日)

(1)無効理由1

本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲第2号証に開示された発明及び甲各号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項(特許法第123条第1項2号)の規定により無効にされるべきである。

(2)無効理由2

本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲第3号証に開示された発明及び甲各号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項(特許法第123条第1項2号)の規定により無効にされるべきである。

(3)無効理由3

本件特許請求の範囲の請求項1に「略同一平面」との記載があり、本件特許の請求項1?3に係る発明が不明確であるため、本件特許の請求項1?3に係る発明は特許法第36条第6項第2号(特許法第123条第1項4号)の規定により無効にされるべきである。

(4)口頭審理において、請求人は、「甲第4号証の剥離処理は、後で剥がせる程度の活性化処理であるという意味である。」と主張した。

3.被請求人の主張

被請求人の主張の要旨は、次のとおりである。
なお、被請求人は、証拠方法として、乙第1号証?乙第3号証を提出している。

乙第1号証 JIS工業用語大辞典[第5版]の抜粋
乙第2号証 図解めっき用語辞典[初版]の抜粋
乙第3号証 プリント回路技術用語辞典[初版]の抜粋

(1)無効理由1について

本件発明1?3は、甲第2号証に記載された発明及び甲各号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到することはできず、特許法第29条第2項違反は認められない。

(2)無効理由2について

本件発明1?3は、甲第3号証に記載された発明及び甲各号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到することはできず、特許法第29条第2項違反は認められない。

(3)無効理由3について

本件発明1?3は、何ら不明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号違反は認められない。

(4)口頭審理において、合議体からの質問に対し、被請求人は、「本願発明の活性化処理については、通常のメッキについての周知の処理を含む。」と回答した。

4.平成24年5月17日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)について

以下、本件訂正請求について検討する。

(1)本件訂正請求の内容

1.特許請求の範囲の請求項1に「上記ステンレス基板(1)の露出面に対し、不活性膜を除去する工程と、
上記ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として金をメッキ成長させ、」とあるのを、
「上記ステンレス基板(1)の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、
上記ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。)

2.願書に添付した明細書の段落【0009】に「上記ステンレス基板1の露出面に対し、不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板1の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜11として金をメッキ成長させ、」とあるのを、
「上記ステンレス基板1の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板1の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜11として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、」と訂正する。

3.願書に添付した明細書の段落【0013】の「上記ステンレス基板1の露出面に対し、不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板1の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜11として金をメッキ成長させ、」とあるのを、
「上記ステンレス基板1の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板1の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜11として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、」と訂正する。

(2)本件訂正請求に対する審判請求人の主張

本件訂正請求の適否について審判請求人は特に主張していない。

(3)本件訂正請求の適否

(3-1)訂正事項1について

訂正事項1は、訂正前の「不活性膜を除去する工程」について、「化学エッチングにより不活性膜を除去する工程」と限定し、また、「実装用金属薄膜(11)として金をメッキ成長させ」ることについて、「実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ」と限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書等には、【0018】に「 次いで、基板1の一面側のレジストパターン層6で覆われていない露出面に対し、必要に応じて化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理を行った後、図2(d)に示すごとく基板1のレジストパターン層66により規定された露出面に0.05?1μm厚で金を成長させて、実装用金属薄膜11を形成する。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3-2)訂正事項2、3について

訂正事項2、3は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0009】、【0013】を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1についてと同様の理由により、訂正事項2、3も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3-3)まとめ

以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第134条の2ただし書きに適合し、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。

5.本件特許発明

上記のとおり訂正を認めるので、本件特許の請求項1?3に係る発明は、平成25年5月17日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1に記載された発明を「本件特許発明1」、請求項2に記載された発明を「本件特許発明2」、請求項3に記載された発明を「本件特許発明3」という。)。

「【請求項1】
ステンレス基板(1)の一面側に、半導体素子(S)搭載用のアイランド部(2a)および上記半導体素子(S)の電極(L)と接続される電極部(2b)を形成するための所定パターンから成るレジストパターン層(6)を形成する工程と、
上記ステンレス基板(1)の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、
上記ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜(11)上に電鋳工程によりリード層(12)を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜(11)とこの上面に一体に積層される上記リード層(12)の少なくとも二層構造から成る上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)を独立して形成する工程と、
上記ステンレス基板(1)より上記レジストパターン層(6)を除去する工程と、
上記アイランド部(2a)に上記半導体素子(S)を搭載した後、上記半導体素子(S)の上記電極(L)と上記電極部(2b)とを電気的に接続する工程と、
上記ステンレス基板(1)上の上記半導体素子(S)搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層(4)を形成する工程と、
上記ステンレス基板(1)を引き剥がし除去して、上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)の上記実装用金属薄膜(11)の各裏面が、上記樹脂層(4)の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程
とを順に行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

「【請求項2】
上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)を形成後、少なくとも上記電極部(2b)の上記リード層(12)上に、メッキ工程によってボンディング用金属膜(13)を一体に成長形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」

「【請求項3】
上記ボンディング用金属膜(13)は、金、銀、スズで形成したことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。」

6.甲各号証、乙各号証の記載内容

(1)甲第2号証(特開2002-9196号公報)

甲第2号証には、以下の記載がある。

・「【請求項1】 少なくとも一面に導電性を有する基板1の該一面側に、所定のパターンニングを施したレジストパターン層6を形成する工程と、上記基板1のレジストパターン層6を除く露出面に導電性金属を電着することで、基板1上に半導体素子搭載用の金属層2aと1以上の電極層2bとをそれぞれ独立して並設形成する工程と、基板1より上記レジストパターン層6を除去する工程と、上記金属層2a上に半導体素子Sを搭載した後、半導体素子上の電極と上記電極層2bとを電気的に接続する工程と、上記基板1上において半導体素子S搭載部分を樹脂層4で封止する工程と、上記基板1を除去して、金属層2aと電極層2bの各裏面が露出した樹脂封止体を得る工程とを有する半導体装置の製造方法。」

・「【請求項4】導電性金属を電着する前の工程で、基板1の表面を活性化処理した後電着工程を行うようにした請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」

・「【0016】図2及び図3は上記半導体装置の製造方法を工程ごとに示しており、図2(a)はステンレスやアルミ、銅等の導電性の金属板、例えば本実施例の場合SUS430により形成された0.1mm厚の基板1の両面に約50μm厚のアルカリタイプの感光性フィルムレジストをラミネートする等して、感光性レジスト層5,5を密着させる工程であり、次いで図2(b)のごとく基板1の一面側の感光性レジスト層5上に所定パターンのフィルムFを配した状態で紫外線照射による両面露光を行った後現像処理を行い図2(c)に示すような、基板1の一面側に所定のパターンニングを施したレジストパターン層6とその裏面に硬化したレジスト層5を得る。
【0017】次いで、基板1の一面側のレジストパターン層6で覆れていない露出面に対し、必要に応じて化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理を行った後、基板1に電鋳を行い、図2(d)に示すごとく基板1のレジストパターン層6により規定された露出面より導電性金属の電着物を成長させ、半導体搭載用の金属層2aと1の金属層2aに対して1以上の独立した電極層2bを各々対として、複数組を並列形成する。なお、電着物としてはニッケルやニッケル-コバルト合金銅その他種々の金属が考えられるが、本実施例においては、スルファミン酸ニッケルの無光沢浴を使用し、レジストパターン層6の厚さ範囲内の、40?50μmの厚さで電着させた。上記表面活性化処理の工程については、必須の工程ではない。
【0018】次いで、必要に応じて各金属層2aおよび電極層2bの表面に結着力向上用の金メッキ等を0.3?0.4μm厚で行い、基板1の両面よりレジストパターン層6及びレジスト層5を除去することで、図2(e)の状態となる。なお、レジストの除去法としてはアルカリ溶液による膨潤除去の方法等が考えられる。
【0019】次いで図3(a)に示すごとく、半導体素子Sを公知の手法により金属層2a上に接着して搭載するとともに、上記半導体素子S上の電極Lにこれと対応する電極層2bとを、図3(b)のごとく、金線等の導電性のワイヤ3を用いて超音波ボンディング装置等により結線する。ここで、ワイヤ3を結線するにあたり、各電極層2bにはボンディング装置からの引き離し力が作用し、基板1から浮き上がろうとするが、上記のごとく、電鋳工程に先立って、基板1の露出面に対し表面活性化処理を行うことにより、基板1と電着層との密着力を予め向上させているため、結線時における電極層2bの脱落や浮き上がりを効果的に予防でき、製造工程時の不良品形成率を低減できる。
【0020】次いで基板1上の半導体素子S搭載部分を、図3(c)のごとく熱硬化性エポキシ樹脂等の樹脂層4でモールドし、基板1上に樹脂封止体を形成する。具体的には基板1一面側をモールド金型(上型)に装着するともに、モールド金型内にエポキシ樹脂をキャビティにより圧入するもので、基板1上に並列して形成した、複数組の半導体素子搭載部が樹脂層4により連続して封止された形態となる。この場合基板1自体が樹脂モールド時における下型の機能を果たす。なお、モールド時に複数の基板1を並列に配置して、エポキシ樹脂をライナを通して各基板1と上金型との間に圧入するようにすれば、効率良く多数の樹脂封止を行うことが可能である。
【0021】次いで、図3(d)のごとく、樹脂封止体から基板1を除去することにより、樹脂封止体の底面には複数組の金属層2aと電極層2bの各裏面が露出するとともに、金属層2a,電極層2bの各裏面と樹脂層4の底面は略同一平面となっている。上記基板1を除去する方法としては、樹脂封止体から基板1を引き剥がす等強制的に剥離除去する方法の他、例えば基板1等を構成する材質に応じては、樹脂封止体側への影響のない溶剤等により基板1を溶解して除去する方法も含まれるものである。なお、本工程後必要に応じて、各電極層2bあるいは電極層2bと金属層2aの裏面のみに実装用に金,銀等の導電性金層の薄膜をフラッシュメッキ等の周知の方法により、0.3?0.5μm厚で形成するようにしても良い。」

これらの記載によると、甲第2号証には、

「ステンレス基板1の一面側に、所定のパターンニングを施したレジストパターン層6を形成する工程と、ステンレス基板1の露出面を化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理する工程と、上記ステンレス基板1のレジストパターン層6を除く露出面に導電性金属を電着することで、ステンレス基板1上に半導体素子搭載用の金属層2aと1以上の電極層2bとをそれぞれ独立して並設形成する工程と、ステンレス基板1より上記レジストパターン層6を除去する工程と、上記金属層2a上に半導体素子Sを搭載した後、半導体素子上の電極と上記電極層2bとを電気的に接続する工程と、上記ステンレス基板1上において半導体素子S搭載部分を樹脂層4で封止する工程と、上記ステンレス基板1を除去して、金属層2aと電極層2bの各裏面が、樹脂層4の底面と略同一平面で露出した樹脂封止体を得る工程と、電極層2bと金属層2aの裏面のみに実装用に金の薄膜をフラッシュメッキ等のにより0.3?0.5μm厚で形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲第3号証(特開2002-16181号公報)

甲第3号証には、以下の記載がある。

・「【請求項5】 可撓性平板状の金属基板に、パターニングされた金属層を形成した電着フレームを形成する工程と、
前記電着フレームのパターニングされた前記金属層に複数の半導体素子を隣接して搭載する工程と、
前記パターニングされた金属層に搭載される各半導体素子間に形成された外部導出用の金属層に、前記隣接する各半導体素子の電極パッドをワイヤで所定間隔を設けて電気的に共通接続するワイヤボンディング工程と、
前記電着フレームに搭載されて配線がなされた半導体素子を樹脂封止する樹脂封止工程と、
前記金属基板を剥離して樹脂封止体を得る剥離工程と、
前記半導体素子が複数封止された樹脂封止体を、パターニングされた金属層の切断マークで個々の半導体装置に切断する切り出し工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

・「【0034】先ず、リードレス表面実装型の半導体装置を製造するにあたり、図3(a)に示した可撓性平板状の金属基板9を用意する。金属基板9は、薄いステンレス鋼板であり、その厚さは、0.1mmである。金属基板9には、金属基板9の自動搬送用の孔9a,9b等が形成され、金属基板9を自動搬送させるための孔が形成され、かつ金属基板9を金型に固定するための孔が形成されている。
【0035】図3(b)は、金属基板9に金属層によるパターンが形成され、半導体素子が搭載されるパターンが形成される電着フレームを示している。電着フレームは、金属基板9の片面に搭載された半導体素子を樹脂封止することで、金属基板9の片面に樹脂封止体が形成される。」

・「【0052】なお、電着フレームの形成は、上記の実施形態による製造方法に限定されることなく、金属基板の金または金と他の金属とを混合した薄膜層を形成した後、パターニングして、その後、NiまたはNi・Coの薄膜金属層を電着して形成してもよい。
【0053】金属基板の金または金と他の金属を混合した薄膜層は、金属基板の一方の面にレジスト膜を全面に形成して、他方の面にレジスト膜をパターンニングして、半導体素子の搭載部と外部導出用の金属層とを形成する金属基板面を露呈させて、他はレジスト膜で覆って選択的に金薄膜層に電着して形成する。
【0054】その後、パターンニングしたレジスト膜を除去して、金薄膜層が選択的に形成された面、全面にNiまたはNi・Coの薄膜金属層を形成し、続いて、NiまたはNi・Co薄膜金属層を選択的に除去する。
【0055】このような製造工程を経て、先の実施形態で説明したように、金属基板9に金属層8aと金属層8bとを形成する。その後の製造工程は、先に説明した製造工程と同様であるので説明を省略する。」

これらの記載によると、甲第3号証には、

「可撓性平板状のステンレス基板の一面に、レジスト膜をパターンニングして、半導体素子の搭載部と外部導出用の金属層とを形成する金属基板面を露呈させて、選択的に金薄膜層を形成した後、パターンニングしたレジスト膜を除去して、金薄膜層が選択的に形成された面、全面にNiまたはNi・Coの薄膜金属層を形成し、続いて、NiまたはNi・Co薄膜金属層を選択的に除去して電着フレームを形成する工程と、前記電着フレームのパターニングされた前記金属層に複数の半導体素子を隣接して搭載する工程と、前記パターニングされた金属層に搭載される各半導体素子間に形成された外部導出用の金属層に、前記隣接する各半導体素子の電極パッドをワイヤで所定間隔を設けて電気的に共通接続するワイヤボンディング工程と、前記電着フレームに搭載されて配線がなされた半導体素子を樹脂封止する樹脂封止工程と、前記金属基板を剥離して、金属層8a,8bの露呈面が、樹脂封止体11の底面と面一である樹脂封止体を得る剥離工程と、前記半導体素子が複数封止された樹脂封止体を、パターニングされた金属層の切断マークで個々の半導体装置に切断する切り出し工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」の発明(以下「引用例2記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)甲第4号証(特開昭63-164327号公報)

甲第4号証には、以下の記載がある。

・「第4図は、本出願人が先に提案した電鋳技術を用いたリードフレームの製造方法を説明するための断面図で、特開昭61-234060号公報に記載されたものである。
まず第4図(a)に示すように、ステンレス等の導電性金属からなる基板1の表面に所望のパターンを有するレジスト層2を形成する。基板1は同図の紙面に向かつて垂直方向に長尺になつたテープ状のもので、レジスト層2が形成されていない非レジスト部2aは製造すべきリードフレームの形状と同じパターンを有しており、図示せぬが基板1の両端にはスプロケツト孔形成用の非レジスト部が紙面に向かって垂直方向に所定間隔を存して多数形成される。
次にこの基板1を剥離処理して、基板1の非レジスト部2aに相当する表面を活性化した後、同図(b)に示すように、該非レジスト部2a上に金、すず、半田等の接触材3を塗布もしくはメッキにより形成し、その後に電鋳を施して、同図(c)に示すように、接触材3上に電鋳金属層4を形成する。
このようにして一枚の板状に形成された基板2及び金属層の積層体の一部にプレス加工を施し、同図(d)に示すように、フインガ5相当部分を折り曲げる。この折り曲げ形状は、平坦なフインガ基部5aと、フインガ基部5aから斜めに延びる起立部5b、及び起立部5bから平行に延びる先端部5cから構成されるものであるが、先端部5cの下面には同時にバンプ5dをプレスにより形成する。
次いで第二次の電鋳を施し、同図(e)に示すように前記電鋳金属層4上に新たな電鋳金属層6を形成する。この際、フインガ5の起立部5bは傾斜した位置にあるため電鋳金属層6の成長速度は遅く、また先端部5cは細い頚部によって起立部5bに連結されているため、この部分で電鋳金属層6はより成長し、よってフインガ5は先端部5c、フインガ基部5a、起立部5bの順でその肉厚が大きく形成される。
最後に同図(f)に示すように、基板1を接触材3から剥がすと、レジスト層2は基板1に残り、接触材3及び両電鋳金属層4、6は基板1から離れ、図示の如き形状のバンプ付きフインガを有するリードフレームが得られる。これは、前述のように予め非レジスト部2aの表面に剥離処理が施されているためである。」(第(2)頁左上欄第2行から同頁左下欄第6行)

(4)甲第9号証(特開昭60-234380号公報)

甲第9号証には、以下の記載がある。

・「「実施例」
(1) 0.1mmtのSUS304機械研磨剤(Rmax0.07μm)をアルカリ脱脂、電解脱脂、酸による活性化処理を施した後、以下に示すめつき浴及びめつき条件によりAu、Ag、Pd、Rh、Pt、Inの各めつきを施した。」(第(3)頁右上欄第9行から第14行)

(5)甲第10号証(特開昭61-243193号公報)

甲第10号証には、以下の記載がある。

・「種々のステンレス鋼を次の(1)?(3)の工程で前処理した後、(4)の工程で純金ストライクめっきを、また(5)の工程で純金めっきをそれぞれ施し、本発明法によりステンレス鋼に純金めっきを行った。」(第(3)頁右下欄第14行から第18行)

・「酸性電解浴中にステンレス鋼を浸漬した後、該ステンレス鋼を陰極として、電流密度10A/dm^(2)で20秒間陰極電解を行い、表面を活性化した。」(第(4)頁左上欄第12行から第15行)

(6)甲第11号証(特公昭61-42796号公報)

甲第11号証には、以下の記載がある。

・「 ステンレス鋼に金属メツキを施す場合ステンレス鋼の表面は通常特有の強固な不働態皮膜で覆われているため、メツキ前に次のような各種の方法により活性化処理を行うことが不可欠となつている。」(第1欄第12行から第16行)

・「 本発明においては単に被メツキステンレス鋼を塩酸に浸漬するのみでなく電気エネルギーを投入して陰極処理を行い塩酸溶液中の塩素イオンの活性化エネルギーを増大させるので、低濃度の塩酸溶液でもステンレス鋼表面を均一に活性化することができる。また溶液中に存在する錫イオン、インジウムイオン及びコバルトイオンの1種又は2種以上は陰極電解処理の際ステンレス鋼表面に極微量核状析出して、これがステンレス鋼表面との間に局部電池を形成してアノード部分となり、カソード部分となる活性化したステンレス鋼表面の活性状態を維持して不働態化を防止するものと考えられる。
このような前処理を受けたステンレス鋼表面には密着性の優れた、強固かつ平滑美麗な金属メツキを施すことができる。」(第2欄第26行から第3欄第14行)

・「実施例 2
実施例1で記述した脱脂工程まで同様で、その後Coイオン(Co^(2+))を0.005mol/l含んだ5.5mol/l塩酸でその素材を陰極電解処理(20A/dm^(2)×30秒)を行い、水洗後Auストライク(青化金1.2g/l、KCN20g/l、Na3PO_(4)4g/l;Dc1A/dm^(2)、浴温65℃)0.1μ、その後青化金8.5g/l、KCN11g/lの液組成を用い、メツキ条件、浴温60?70℃、陰極電流密度0.5A/dm^(2)で1μのAuメツキを行つた。」(第5欄第22行から第31行)

7.当審の判断

(1)無効理由1について

本件特許発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、後者における「ステンレス基板1の一面側に、所定のパターンニングを施したレジストパターン層6を形成する工程」は、前者における「ステンレス基板(1)の一面側に、半導体素子(S)搭載用のアイランド部(2a)および半導体素子(S)の電極(L)と接続される電極部(2b)を形成するための所定パターンから成るレジストパターン層(6)を形成する工程」に相当する。
また、後者における「ステンレス基板1の露出面を化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理する工程」は、前者における「ステンレス基板(1)の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程」に相当する。
また、後者における「ステンレス基板1のレジストパターン層6を除く露出面に導電性金属を電着することで、ステンレス基板1上に半導体素子搭載用の金属層2aと1以上の電極層2bとをそれぞれ独立して並設形成する工程」と、前者における「ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜(11)上に電鋳工程によりリード層(12)を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜(11)とこの上面に一体に積層される上記リード層(12)の少なくとも二層構造から成るアイランド部(2a)および電極部(2b)を独立して形成する工程」とは、「ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に電鋳工程によりリード層を積層して成長させ、アイランド部(2a)および電極部(2b)を独立して形成する工程」である点で共通する。
また、後者における「金属層2a上に半導体素子Sを搭載した後、半導体素子上の電極と電極層2bとを電気的に接続する工程」は、前者における「アイランド部(2a)に半導体素子(S)を搭載した後、上記半導体素子(S)の電極(L)と電極部(2b)とを電気的に接続する工程」に相当する。
また、後者における「ステンレス基板1上において半導体素子S搭載部分を樹脂層4で封止する工程」は、前者における「ステンレス基板(1)上の半導体素子(S)搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層(4)を形成する工程」に相当する。
また、後者における「ステンレス基板1を除去して、金属層2aと電極層2bの各裏面が、樹脂層4の底面と略同一平面で露出した樹脂封止体を得る工程」と、前者における「ステンレス基板(1)を引き剥がし除去して、アイランド部(2a)および電極部(2b)の実装用金属薄膜(11)の各裏面が、樹脂層(4)の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程」とは、「ステンレス基板を引き剥がし除去して、アイランド部および電極部の各裏面が、樹脂層の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程」である点で共通する。

したがって、両者は、「ステンレス基板の一面側に、半導体素子搭載用のアイランド部および上記半導体素子の電極と接続される電極部を形成するための所定パターンから成るレジストパターン層を形成する工程と、上記ステンレス基板の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板の不活性膜を除去した露出面に電鋳工程によりリード層を積層して成長させ、上記アイランド部および上記電極部を独立して形成する工程と、上記ステンレス基板より上記レジストパターン層を除去する工程と、上記アイランド部に上記半導体素子を搭載した後、上記半導体素子の上記電極と上記電極部とを電気的に接続する工程と、上記ステンレス基板上の上記半導体素子搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層を形成する工程と、 上記ステンレス基板を引き剥がし除去して、上記アイランド部および上記電極部の各裏面が、上記樹脂層の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程とを順に行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
アイランド部および電極部の形成について、本件特許発明1では、「アイランド部および電極部を独立して形成する工程」において、ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、実装用金属薄膜(11)上に電鋳工程によりリード層(12)を積層して成長させ一体化して、実装用金属薄膜(11)とこの上面に一体に積層されるリード層(12)の少なくとも二層構造から成るアイランド部(2a)および電極部(2b)を独立して形成し、「ステンレス基板(1)を引き剥がし除去して、アイランド部(2a)および電極部(2b)の実装用金属薄膜(11)の各裏面が、樹脂層(4)の底面と略同一平面で露出した状態で形成される」のに対し、引用例1記載の発明では、「アイランド部および電極部を独立して形成する工程」において、ステンレス基板1のレジストパターン層6を除く露出面に導電性金属を電着することで、ステンレス基板1上に半導体素子搭載用の金属層2aと1以上の電極層2bとをそれぞれ独立して並設形成し、「ステンレス基板1を除去して、金属層2aと電極層2bの各裏面が、樹脂層4の底面と略同一平面で露出した樹脂封止体を得る工程」のあとに、電極層2bと金属層2aの裏面のみに実装用に0.3?0.5μm厚で金の薄膜をフラッシュメッキ等している点。

相違点について検討すると、甲第4号証には、ステンレス等の基板1を剥離処理して、基板1の非レジスト部2aに相当する表面を活性化した後、該非レジスト部2a上に金、すず、半田等の接触材3を塗布もしくはメッキにより形成し、その後に電鋳を施して、接触材3上に電鋳金属層4を形成するリードフレームの製造方法が記載されている。ここで剥離処理は、甲第4号証において引用される特開昭61-234060号公報によれば、カセイソーダや塩化メチレン等の溶剤を用いておこなう処理であり、ステンレス基板に酸化被膜を形成するようなものとは認められず、また、甲第9?11号証に記載されているように、ステンレスに金メッキをする際に、不活性膜を除去することは周知の事項であり、さらに、甲第4号証に「基板1を接触材3から剥がすと、レジスト層2は基板1に残り、接触材3及び両電鋳金属層4、6は基板1から離れ、図示の如き形状のバンプ付きフインガを有するリードフレームが得られる。これは、前述のように予め非レジスト部2aの表面に剥離処理が施されているためである。」と記載されていることから、「ステンレス等の基板1を剥離処理して、基板1の非レジスト部2aに相当する表面を活性化」は、後で剥がせる程度に活性化処理を行うとの意味であると認められる。
甲第2号証と甲第4号証は、いずれも、半導体装置の製造における、半導体素子搭載用の金属層と電極を、ステンレス基板の非レジスト部に、電鋳により金属層を形成した後、ステンレス基板を剥がすことにより形成するものである点で共通し、また、製造方法において、工程数をできるだけ少なくするという課題は、常に存在するものであるから、引用例1記載の発明において、金の層を有する電極層と金属層を形成するために、「アイランド部および電極部を独立して形成する工程」において、ステンレス基板1のレジストパターン層6を除く露出面に導電性金属を電着することで、ステンレス基板1上に半導体素子搭載用の金属層2aと1以上の電極層2bとをそれぞれ独立して並設形成し、「ステンレス基板1を除去して、金属層2aと電極層2bの各裏面が、樹脂層4の底面と略同一平面で露出した樹脂封止体を得る工程」のあとに、電極層2bと金属層2aの裏面のみに実装用に金の薄膜をフラッシュメッキする代わりに、「アイランド部および電極部を独立して形成する工程」において、非レジスト部上に接触材を金メッキにより形成し、その後に電鋳を施して、電鋳金属層を形成することは、甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。
また、「不活性膜を除去する工程」について、「化学エッチングにより」と限定しているが、引用例1記載の発明も同様であること、甲第9?11号証に記載されているように、ステンレスに金メッキをする際に、化学エッチングにより不活性膜を除去することも周知であることから、「不活性膜を除去する工程」として「化学エッチング」を用いることが、当業者にとって想到困難なことであるとは認められない。
また、引用例1記載の発明においては、「実装用に金の薄膜をフラッシュメッキ等のにより0.3?0.5μm厚で形成」しているから、本件特許発明1において、「実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長」させている点も、当業者にとって格別な差異であるとは認められない。

したがって、本件特許発明1は、引用例1記載の発明、甲第4号証の記載事項および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

本件特許発明2、3について、検討すると、甲第2号証段落【0018】には、「次いで、必要に応じて各金属層2aおよび電極層2bの表面に結着力向上用の金メッキ等を0.3?0.4μm厚で行い」と、本件特許発明2、3において限定される事項が記載されているので、本件特許発明2、3も、引用例1記載の発明、甲第2号証、甲第4号証の記載事項および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、無効理由1については、理由がある。

(2)無効理由2について

本件特許発明1と引用例2記載の発明とを対比すると、後者における「可撓性平板状のステンレス基板の一面に、レジスト膜をパターンニング」は、前者における「ステンレス基板(1)の一面側に、半導体素子(S)搭載用のアイランド部(2a)および上記半導体素子(S)の電極(L)と接続される電極部(2b)を形成するための所定パターンから成るレジストパターン層(6)を形成する工程」に相当する。
また、後者における「半導体素子の搭載部と外部導出用の金属層とを形成する金属基板面を露呈させて、選択的に金薄膜層を形成した後、パターンニングしたレジスト膜を除去して、金薄膜層が選択的に形成された面、全面にNiまたはNi・Coの薄膜金属層を形成し、続いて、NiまたはNi・Co薄膜金属層を選択的に除去して電着フレームを形成する工程」と、前者における「ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜(11)上に電鋳工程によりリード層(12)を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜(11)とこの上面に一体に積層される上記リード層(12)の少なくとも二層構造から成る上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)を独立して形成する工程と、上記ステンレス基板(1)より上記レジストパターン層(6)を除去する工程」とは、「ステンレス基板の露出面に実装用金属薄膜として金をメッキ成長させ、実装用金属薄膜とこの上面に一体に積層されるリード層の少なくとも二層構造から成るアイランド部(2a)および電極部(2b)を独立して形成する工程」である点で共通する。
また、後者における「電着フレームのパターニングされた前記金属層に複数の半導体素子を隣接して搭載する工程と、前記パターニングされた金属層に搭載される各半導体素子間に形成された外部導出用の金属層に、前記隣接する各半導体素子の電極パッドをワイヤで所定間隔を設けて電気的に共通接続するワイヤボンディング工程」は、前者における「アイランド部(2a)に上記半導体素子(S)を搭載した後、上記半導体素子(S)の上記電極(L)と上記電極部(2b)とを電気的に接続する工程」に相当する。
また、後者における「電着フレームに搭載されて配線がなされた半導体素子を樹脂封止する樹脂封止工程」は、前者における「ステンレス基板(1)上の上記半導体素子(S)搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層(4)を形成する工程」に相当する。
また、後者における「金属基板を剥離して、金属層8a,8bの露呈面が、樹脂封止体11の底面と面一である樹脂封止体を得る剥離工程」は、前者における「ステンレス基板(1)を引き剥がし除去して、上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)の上記実装用金属薄膜(11)の各裏面が、上記樹脂層(4)の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程」に相当する。

したがって、両者は、「ステンレス基板の一面側に、半導体素子搭載用のアイランド部および上記半導体素子の電極と接続される電極部を形成するための所定パターンから成るレジストパターン層を形成する工程と、ステンレス基板の露出面に実装用金属薄膜として金をメッキ成長させ、実装用金属薄膜とこの上面に一体に積層されるリード層の少なくとも二層構造から成るアイランド部および電極部を独立して形成する工程と、上記アイランド部に上記半導体素子を搭載した後、上記半導体素子の上記電極と上記電極部とを電気的に接続する工程と、 上記ステンレス基板上の上記半導体素子搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層を形成する工程と、上記ステンレス基板を引き剥がし除去して、上記アイランド部および上記電極部の上記実装用金属薄膜)の各裏面が、上記樹脂層の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程とを順に行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。」である点で一致し、次の各点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明1においては、「ステンレス基板(1)の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程」があるのに対し、引用例2記載の発明においては該工程がない点。

[相違点2]
「ステンレス基板の露出面に実装用金属薄膜として金をメッキ成長させ、実装用金属薄膜とこの上面に一体に積層されるリード層の少なくとも二層構造から成るアイランド部および電極部を独立して形成する工程」について、本件特許発明1においては、「ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜(11)上に電鋳工程によりリード層(12)を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜(11)とこの上面に一体に積層される上記リード層(12)の少なくとも二層構造から成る上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)を独立して形成する工程と、上記ステンレス基板(1)より上記レジストパターン層(6)を除去する工程」であるのに対し、引用例2記載の発明においては「半導体素子の搭載部と外部導出用の金属層とを形成する金属基板面を露呈させて、選択的に金薄膜層を形成した後、パターンニングしたレジスト膜を除去して、金薄膜層が選択的に形成された面、全面にNiまたはNi・Coの薄膜金属層を形成し、続いて、NiまたはNi・Co薄膜金属層を選択的に除去して電着フレームを形成する工程」である点。

相違点1について検討すると、甲第2号証に、ステンレス基板1の表面を化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理してから露出面に導電性金属を電着することが記載されていることや、甲第4号証に「ステンレス基板を剥離処理して、活性化した後に、金等をメッキ、その後電鋳を施して、電鋳金属層を形成する」ことが記載されていること、甲第9?11号証に記載されているように、ステンレスに金メッキをする際に、化学エッチングにより不活性膜を除去することは周知の事項であることから、引用例2記載の発明において、金薄膜層を形成する前に、「ステンレス基板の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程」を加えることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

相違点2について検討すると、甲第4号証には「ステンレス基板を剥離処理して、活性化した後に、金等をメッキ、その後電鋳を施して、電鋳金属層を形成する」ことが記載されており、引用例2記載の発明において「半導体素子の搭載部と外部導出用の金属層とを形成する金属基板面を露呈させて、選択的に金薄膜層を形成した後、パターンニングしたレジスト膜を除去して、金薄膜層が選択的に形成された面、全面にNiまたはNi・Coの薄膜金属層を形成し、続いて、NiまたはNi・Co薄膜金属層を選択的に除去して電着フレームを形成する工程」に代えて、金薄膜層を形成した後、パターンニングしたレジスト膜を除去せずに、続けて薄膜金属層を形成した後、レジスト膜を除去するようにすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
また、「実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長」させている点も、甲第2号証に、「実装用に金,銀等の導電性金層の薄膜をフラッシュメッキ等の周知の方法により、0.3?0.5μm厚で形成する」ことが記載されているので、当業者にとって、格別なことであるとは認められない。

したがって、本件特許発明1は、引用例2記載の発明、甲第2号証、甲第4号証の記載事項および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

本件特許発明2、3について、検討すると、甲第2号証段落【0018】には、「次いで、必要に応じて各金属層2aおよび電極層2bの表面に結着力向上用の金メッキ等を0.3?0.4μm厚で行い」と、本件特許発明2、3において限定される事項が記載されているので、本件特許発明2、3も、引用例2記載の発明、甲第2号証、甲第4号証の記載事項および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、無効理由2については、理由がある。

(5)無効理由3について

本件請求項1における「略同一平面」との表現は、不可避的に生じる凹凸を含む程度の意味であると認められ、これを数値で表すことは無理であるし、構成が不明になるほどのものであるとは認められない。
よって、無効理由3については、理由がない。

8.むすび

以上のとおりであるから、本件特許発明1?3についての特許は、無効理由1、2により無効とすべきものである。

本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、小型・薄型化を図れ、かつ信頼性の高い樹脂封止型の半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種樹脂封止型の半導体装置として、母型基板上に半導体素子S搭載用の金属層と外部導出用の電極層から成る電鋳製のリード材を形成し、リード材上に半導体素子Sを搭載の後結線処理を行い、母型基板上で樹脂封止した後母型基板のみを除去し個々に切断して構成することは公知である(特許文献1参照)。特許文献1に係る半導体装置は、上記リード材を構成する半導体素子Sが搭載される金属層と外部導出用の電極層の各裏面が樹脂封止体から露出して構成され、ガラスエポキシ基板やセラミック基板等の基板を使用することなく、半導体装置の高さを低くし装置全体を小型化することができるとともに、放熱性にも優れるという利点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002-9196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る半導体装置においては、当該半導体装置を実装するにあたって、電極導通の信頼性向上のために、あらかじめ外部導出用の電極層等に導電性に優れた金や銀等の金属薄膜11を形成しておくことが好ましいが、その場合樹脂封止後に切断された個々の半導体装置をバレルメッキ等の方法で、樹脂封止体裏面から露出した金属層および電極層に金やスズ,ハンダ,パラジウムの薄膜を形成する方法が採られている。
【0005】
しかしながらこの場合、半導体装置の製造工程と半導体装置完成後のメッキ工程とは全くの別工程となるために、このことが量産性を阻害する要因となるとともに、バレルメッキ時におけるメッキ装置内での揺動、回転によって、半導体装置内部の半導体素子Sと電極層間の結線個所に外れや断線等の電気的不良を生ずる虞もある。
【0006】
この発明の目的は、半導体装置の小型、薄型形状の形態は維持したまま実装時の外部電極部2b分の導通性を向上させることにある。また、この発明の目的は、上記半導体装置を量産性に優れかつ安価に生産できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、ステンレス基板1の一面側に、半導体素子S搭載用のアイランド部2aおよび上記半導体素子Sの電極Lと接続される電極部2bを形成するための所定パターンから成るレジストパターン層6を形成する工程と、上記ステンレス基板1の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板1の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜11として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜11上に電鋳工程によりリード層12を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜11とこの上面に一体に積層される上記リード層12の少なくとも二層構造から成る上記アイランド部2aおよび上記電極部2bを独立して形成する工程と、上記ステンレス基板1より上記レジストパターン層6を除去する工程と、上記アイランド部2aに上記半導体素子Sを搭載した後、上記半導体素子Sの上記電極Lと上記電極部2bとを電気的に接続する工程と、上記ステンレス基板1上の上記半導体素子S搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層4を形成する工程と、上記ステンレス基板1を引き剥がし除去して、上記アイランド部2aおよび上記電極部2bの上記実装用金属薄膜11の各裏面が、上記樹脂層4の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程とを順に行う半導体装置の製造方法にある。
【0010】
また、上記アイランド部2aおよび上記電極部2bを形成後、少なくとも上記電極部2bの上記リード層12上に、メッキ工程によってボンディング用金属膜13を一体に成長形成することを特徴とする。さらに、上記ボンディング用金属膜13は、金、銀、スズで形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、ステンレス基板1の一面側に、半導体素子S搭載用のアイランド部2aおよび上記半導体素子Sの電極Lと接続される電極部2bを形成するための所定パターンから成るレジストパターン層6を形成する工程と、上記ステンレス基板1の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、上記ステンレス基板1の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜11として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜11上に電鋳工程によりリード層12を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜11とこの上面に一体に積層される上記リード層12の少なくとも二層構造から成る上記アイランド部2aおよび上記電極部2bを独立して形成する工程と、上記ステンレス基板1より上記レジストパターン層6を除去する工程と、上記アイランド部2aに上記半導体素子Sを搭載した後、上記半導体素子Sの上記電極Lと上記電極部2bとを電気的に接続する工程と、上記ステンレス基板1上の上記半導体素子S搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層4を形成する工程と、上記ステンレス基板1を引き剥がし除去して、上記アイランド部2aおよび上記電極部2bの上記実装用金属薄膜11の各裏面が、上記樹脂層4の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程とを順に行う半導体装置の製造方法にあるので、ステンレス基板1上でアイランド部2aや電極部2b等の電鋳製部品を電鋳工程で形成する際に、レジストパターン6形成後に、実装用の接触面となる実装用金属薄膜11の形成とその後積層されるリード層12との形成を、連続した工程の中で行うことができ、量産性に優れ、安価な生産を行うことが可能となる。また、少なくとも電極部2bのリード層12上面に、ボンディング用金属膜13をメッキ工程によって一体に成長形成させているので、電極結線時の信頼性を向上させるためのボンディング用金属膜13を効率良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施例)図1乃至図3に本発明に係る半導体装置の構成および製造方法の第1実施例を示す。図1は、本発明に係るリードレス表面実装型の半導体装置を示しており、同図(a)は断面図、同図(b)は底面図である。同図において、Sは半導体素子Sであって、アイランド部2a上に接着されて搭載されている。Lは半導体素子S上に形成された電極であり、上記アイランド部2aと独立して並設された対応する電極部2b2bと金等の導電性のワイヤ3により結線され、電気的に接続されている。上記半導体素子Sの搭載部分は熱硬化性エポキシ樹脂等の樹脂層4にて封止されており、上記アイランド部2aと電極部2bの各裏面が樹脂層4と同一平面で露出した樹脂封止体が構成されている。
【0016】
ここで、図1(a)において、上記アイランド部2aおよび電極部2bは、上端部周縁をそれぞれ庇状に張り出し形成して構成されており、樹脂封止体としての樹脂層4に対する喰い付き効果によって、アイランド部2a,電極部2bと樹脂層4との結着力が向上し、樹脂剥れやズレを効果的に防止できる構成となっている。また、アイランド部2aおよび電極部2bは、それぞれ裏面側が金,スズ,ハンダ,パラジウム等の導電性に優れた実装用金属薄膜11が0.05?1μm程度の厚さで形成され、その上面にニッケル等の電鋳金属から成るリード層12が一体に積層された二層構造からあらかじめ形成されており、さらには、本実施例の場合、リード層12の上面に、金,銀等から成るワイヤ3との結線力向上のためのボンディング用金属膜13が0.3?0.4μm厚程度形成されている。このボンディング用金属膜13については必須の構成ではない。
【0017】
図2及び図3は上記半導体装置の製造方法を工程ごとに示しており、図2(a)はステンレスやアルミ,銅等の導電性の金属板、例えば本実施例の場合SUS430により形成された基板1の両面に約50μm厚のアルカリタイプの感光性フィルムレジストを熱圧着等の方法でラミネートする等して、感光性レジスト層5,5を密着させる工程であり、次いで図2(b)のごとく基板1の一面側の感光性レジスト層5上に所定パターンのフィルムFを配した状態で紫外線照射による両面露光を行った後現像処理を行い図2(c)に示すような、基板1の一面側に所定のパターンニングを施したレジストパターン層6とのその裏面に硬化したレジスト層5を得る。
【0018】
次いで、基板1の一面側のレジストパターン層6で覆われていない露出面に対し、必要に応じて化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理を行った後、図2(d)に示すごとく基板1のレジストパターン層66により規定された露出面に0.05?1μm厚で金を成長させて、実装用金属薄膜11を形成する。本実施例の場合、微細パターン部の金メッキ処理において、金メッキの成長不良や付着不良の発生を事前に防止する目的で、上記化学エッチング等の化学処理を行い、基板1上の不活性膜を除去する工程を付加しているが、基板1の材質、メッキする金属の選択によっては、この工程は省略可能である。
【0019】
次いで、図2(e)のごとく、ニッケルや銅,ニッケル-コバルト等の合金等から選択される電鋳金属、本実施例の場合はニッケルを上記金属薄膜11上面に、一体に積層して電着することでリード層12を形成し、上記金属薄膜11とリード層12の二層構造から成る、半導体搭載用のアイランド部2aと、該アイランド部2aに対して1以上の独立した電極部2bを、各々対として複数組を並列形成する。なお、本実施例においては、本工程で電着形成されるリード層12をレジストパターン層6の厚みを越えて(例えば60?80μm厚で)形成することで、アイランド部2aおよび電極部2bの上端部周縁に庇状の張り出しを形成するようにしている。
【0020】
次いで、必要に応じて各アイランド部2aおよび電極部2bの表面に後述のワイヤボンディング時の結着力向上用の金メッキ等を0.3?0.4μm厚で行い、ボンディング用金属膜13を形成して、基板1の両面よりレジストパターン層6及びレジスト層5を除去することで、図2(f)の状態となる。なお、レジストの除去法としてはアルカリ溶液による膨潤除去の方法等が考えられる。また、ボンディング用金属膜13は金の他、銀,スズ等でも良い。
【0021】
次いで、図3(a)に示すごとく、半導体素子Sを公知の手法によりアイランド部2a上に接着して搭載するとともに、上記半導体素子S上の電極Lにこれと対応する電極層2bとを、図3(b)のごとく、金線等の導電性のワイヤ3を用いて超音波ボンディング装置等により結線する。この時、電極層2bの上面に上記のごとくボンディング用金属膜13としての金メッキを形成しておけば、結線力が一層向上し、結線ミスを低減できる。
【0022】
次いで、基板1上の半導体素子S搭載部分を、図3(c)のごとく熱硬化性エポキシ樹脂等の樹脂層4でモールドし、基板1上に樹脂封止体を形成する。具体的には基板1の一面側をモールド金型(上型)に装着するとともに、モールド金型内にエポキシ樹脂をキャビティにより圧入するもので、基板1上に並列して形成した、複数組の半導体素子S搭載部が樹脂層4により連続して封止された状態となる。この場合基板1自体が樹脂モールド時における下型の機能を果たす。なお、モールド時に複数の基板1を並列に配置して、エポキシ樹脂をライナを通して各基板1と上金型との間に圧入するようにすれば、効率良く多数の樹脂封止を行うことが可能である。
【0023】
ここで、上記のごとくアイランド部2aおよび電極部2bの上端部を、庇状に張り出し形成しておけば、樹脂層4による封止状態において、樹脂層4はくい込み状に位置した状態で硬化しているため、この喰い付き効果により、後工程の樹脂封止体からの基板1の剥離作業時に基板1を引き剥がし除去する際、アイランド部2aおよび電極部2bは樹脂層4側に確実に残留し、基板1とともにくっついて引き離されることはなく、ズレや欠落等が効果的に防止でき、製造工程時の歩留まりが向上するとともに、さらに、完成した半導体装置自体の信頼性も向上する。
【0024】
次いで、図3(d)のごとく、樹脂封止体から基板1を除去することにより、樹脂封止体の底面には複数組のアイランド部2aと電極部2bの各裏面が露出するとともに、アイランド部2a,電極部2bの各裏面と樹脂層4の底面は略同一平面となっている。すなわち、アイランド部2aおよび電極部2bを搭載する実装用金属薄膜11が樹脂層4の底面と略同一平面で露出する状態となっている。上記基板1を除去する方法としては、樹脂封止体から基板1を引き剥がす等強制的に剥離除去する方法の他、例えば基板1等を構成する材質に応じては、樹脂封止体側への影響のない溶剤等により基板1を溶解して除去する方法も含まれるものである。
【0025】
次いで、図3(e)のごとく樹脂封止体を切断線X-Xに沿って1つの半導体素子Sの対毎に切断して切り離すダイシングの工程を経て、個々の樹脂封止体すなわち半導体装置が完成するものである。
【0026】
このように製造した半導体装置およびその製造方法によれば、ダイシングによる切り離し工程が終了した時点で、各半導体装置の裏面から露出する全ての電極層2bには導電性に優れた金等の実装用金属薄膜11が形成されているため、その後のバレルメッキ等の工程に移ることなく、すぐにこの状態で搬送することができる。また、金属薄膜11とリード層12とは、連続した電鋳工程の中で積層して一体化形成するため、量産性にも優れている。
【0027】
(他の実施例)次に図4は他の実施例における半導体装置の断面図を示しており、第1実施例における半導体素子S搭載用アイランド部2aおよび電極部2bの各上端部周縁の庇状の張り出しを形成しない形状とした。この場合、製造工程中、電鋳による各リード層12形成時に、レジストパターン層6の厚みの範囲内で電鋳を行うようにすれば良い。また、本実施例に示すように、リード層12上面にはボンディング用金属膜13を必ずしも形成する必要は無い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は、本発明の半導体装置の第1実施例を示す断面図,(b)はその裏面図である。
【図2】(a)乃至(f)は、本発明の第1実施例に示す半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図3】(a)乃至(e)は、図2(f)に続く半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 導電性基板
2a アイランド部
2b 電極部
4 樹脂層
6 レジストパターン層
11 実装用金属薄膜
12 リード層
13 ボンディング用金属膜
S 半導体素子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス基板(1)の一面側に、半導体素子(S)搭載用のアイランド部(2a)および上記半導体素子(S)の電極(L)と接続される電極部(2b)を形成するための所定パターンから成るレジストパターン層(6)を形成する工程と、
上記ステンレス基板(1)の露出面に対し、化学エッチングにより不活性膜を除去する工程と、
上記ステンレス基板(1)の不活性膜を除去した露出面に実装用金属薄膜(11)として0.05?1μm厚で金をメッキ成長させ、上記実装用金属薄膜(11)上に電鋳工程によりリード層(12)を積層して成長させ一体化して、上記実装用金属薄膜(11)とこの上面に一体に積層される上記リード層(12)の少なくとも二層構造から成る上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)を独立して形成する工程と、
上記ステンレス基板(1)より上記レジストパターン層(6)を除去する工程と、
上記アイランド部(2a)に上記半導体素子(S)を搭載した後、上記半導体素子(S)の上記電極(L)と上記電極部(2b)とを電気的に接続する工程と、
上記ステンレス基板(1)上の上記半導体素子(S)搭載部分を樹脂でモールドして樹脂層(4)を形成する工程と、
上記ステンレス基板(1)を引き剥がし除去して、上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)の上記実装用金属薄膜(11)の各裏面が、上記樹脂層(4)の底面と略同一平面で露出した状態で形成される工程
とを順に行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
上記アイランド部(2a)および上記電極部(2b)を形成後、少なくとも上記電極部(2b)の上記リード層(12)上に、メッキ工程によってボンディング用金属膜(13)を一体に成長形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
上記ボンディング用金属膜(13)は、金、銀、スズで形成したことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-07-04 
結審通知日 2013-07-08 
審決日 2013-07-19 
出願番号 特願2008-268083(P2008-268083)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (H01L)
P 1 113・ 537- ZAA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 雄一  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 平田 信勝
小関 峰夫
登録日 2012-01-27 
登録番号 特許第4911727号(P4911727)
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 森山 航洋  
代理人 山口 昭則  
代理人 杉山 公一  
代理人 隈部 泰正  
代理人 森山 航洋  
代理人 隈部 泰正  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 飯田 秀郷  

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