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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1291859
審判番号 不服2012-17499  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-07 
確定日 2014-09-10 
事件の表示 特願2007-307542「デジタル権限管理方法及びシステム並びにデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月10日出願公開、特開2008-159041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成19年11月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2006年(平成18年)12月22日,大韓民国)を出願日とする出願であって,平成22年11月24日付けで審査請求がなされ,平成23年12月20日付けで拒絶理由通知(平成24年1月4日発送)がなされ,これに対して平成24年4月4日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされたが,同年4月18日付けで拒絶査定(同年5月8日発送)がなされた。
これに対して,「原査定を取り消す,本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成24年9月7日付けで審判請求がなされると共に同日付けで手続補正がなされた。
そして,平成24年11月16日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされ,平成25年2月14日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年2月19日発送)がなされ,同年5月20日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成24年9月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年9月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成24年9月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成24年4月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項25の記載
「 【請求項1】
送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法において、
(a)前記送受信部が、前記サーバから前記報告に関する制限情報を含む前記測定または報告に関するポリシー情報を受信する段階と、
(b)前記DRMエージェントが、前記受信されたポリシー情報に含まれる前記制限情報によって前記報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合、前記コンテンツの使用を制限する段階と
を含むことを特徴とするデジタル権限管理方法。
【請求項2】
前記デバイスはさらにユーザインターフェースを有し、
前記デジタル権限管理方法は、前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記ユーザインターフェースが、ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力される段階と、
前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意したと入力された場合、前記送受信部が、前記デバイスの登録を要請するメッセージを前記サーバに伝送する段階と、
前記サーバが、前記メッセージを受ければ、前記デバイスを登録する段階と
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項3】
前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記ユーザインターフェースが、ユーザから前記測定または報告に関する設定値を入力される段階と、
前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致する場合、前記送受信部が、前記サーバに前記デバイスの登録を要請するメッセージを伝送する段階と、
前記サーバが、前記メッセージを受ければ、前記デバイスを登録する段階と
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項4】
前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記ユーザインターフェースが、前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致しない場合、前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力される段階と、
前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意したと入力された場合、前記送受信部が、前記デバイスの登録を要請するメッセージを前記サーバに伝送する段階と
をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項5】
前記制限情報は所定時間に該当し、
前記(b)段階は、前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項6】
前記制限情報は、前記コンテンツの所定使用回数に該当し、
前記(b)段階は、前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項7】
前記ポリシー情報は、前記報告を行う周期に関する周期情報をさらに含み、
前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記DRMエージェントが、前記周期情報によって前記測定された使用量を報告する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項8】
前記周期情報は所定時間に該当し、
前記報告する段階は、前記所定時間ごとに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項7に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項9】
前記周期情報は、前記コンテンツの所定使用回数に該当し、
前記報告する段階は、前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるたびに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項7に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項10】
送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法において、
(a)前記送受信部が、選択されたコンテンツに該当し、前記報告に関する制限情報を含む権利オブジェクトを前記サーバから受信する段階と、
(b)前記DRMエージェントが、前記制限情報によって前記選択されたコンテンツの使用量報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限する段階とをさらに含むことを特徴とするデジタル権限管理方法。
【請求項11】
前記制限情報は所定時間に該当し、
前記(b)段階は、前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項10に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項12】
前記制限情報は、前記選択されたコンテンツの所定使用回数に該当し、
前記(b)段階は、前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数使われるまで前記報告が行われていない場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項10に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項13】
コンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデバイスにおいて、
前記報告に関する制限情報を含む前記測定または報告に関するポリシー情報を保存するポリシー情報保存部と、
前記ポリシー情報のうち、前記制限情報によって前記報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合、前記コンテンツの使用を制限するDRMエージェントとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
前記ポリシー情報は、前記サーバから受信され、
ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力されるユーザインターフェースと、
前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意したと入力された場合、前記デバイスの登録を要請するメッセージを伝送する送受信部とをさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ユーザインターフェースは、前記ユーザから前記測定または報告に関する設定値を入力され、前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致しない場合、前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力され、
前記送受信部は、前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致する場合、または前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意すると入力された場合、前記デバイスの登録を要請するメッセージを伝送することを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記制限情報は所定時間に該当し、
前記DRMエージェントは、前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記制限情報は、前記コンテンツの所定使用回数に該当し、
前記DRMエージェントは、前記コンテンツが前記所定使用回数使われるまで前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ポリシー情報は、前記報告を行う周期に関する周期情報をさらに含み、
前記DRMエージェントは、前記周期情報によって前記測定された使用量を前記サーバに報告することを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
前記周期情報は所定時間に該当し、
前記DRMエージェントは、前記所定時間ごとに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記周期情報は、前記コンテンツの所定使用回数に該当し、
前記DRMエージェントは、前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるたびに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
コンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量を報告するデバイスと、
前記デバイスから前記報告を受けるサーバとを備え、
前記サーバは、前記報告に関する制限情報を含む前記測定または報告に関するポリシー情報を前記デバイスに伝送し、
前記デバイスは、前記ポリシー情報のうち、前記制限情報によって前記報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とするデジタル権限管理システム。
【請求項22】
前記ポリシー情報は、報告を行う周期に関する周期情報をさらに含み、
前記デバイスは、前記周期情報によって前記測定された使用量を前記サーバに報告することを特徴とする請求項21に記載のデジタル権限管理システム。
【請求項23】
前記サーバは、前記デバイスに前記報告を要請するメッセージを伝送し、
前記デバイスは、前記メッセージに応答し、前記測定された使用量を前記サーバに報告することを特徴とする請求項21に記載のデジタル権限管理システム。
【請求項24】
前記メッセージは、ドメイン情報、コンテンツID及び時間情報のうち少なくとも一つを含み、
前記デバイスは、前記メッセージによって前記ドメインで共有されるコンテンツの使用量、前記コンテンツIDに該当するコンテンツの使用量、または前記時間内に使われたコンテンツの使用量を報告することを特徴とする請求項23に記載のデジタル権限管理システム。
【請求項25】
請求項1ないし請求項12のうちいずれか一項に記載のデジタル権限管理方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
を、

「 【請求項1】
送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法において、
(a)前記送受信部が、前記サーバから前記報告に関する制限情報を含む前記測定または報告に関するポリシー情報を受信する段階と、前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当し、
(b)前記DRMエージェントが、前記受信されたポリシー情報に含まれる前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限する段階と
を含むことを特徴とするデジタル権限管理方法。
【請求項2】
前記デバイスはさらにユーザインターフェースを有し、
前記デジタル権限管理方法は、前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記ユーザインターフェースが、ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力される段階と、
前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意したと入力された場合、前記送受信部が、前記デバイスの登録を要請するメッセージを前記サーバに伝送する段階と、
前記サーバが、前記メッセージを受ければ、前記デバイスを登録する段階と
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項3】
前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記ユーザインターフェースが、ユーザから前記測定または報告に関する設定値を入力される段階と、
前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致する場合、前記送受信部が、前記サーバに前記デバイスの登録を要請するメッセージを伝送する段階と、
前記サーバが、前記メッセージを受ければ、前記デバイスを登録する段階と
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項4】
前記受信する段階(a)の後、前記制限する段階(b)の前に、
前記ユーザインターフェースが、前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致しない場合、前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力される段階と、
前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意したと入力された場合、前記送受信部が、前記デバイスの登録を要請するメッセージを前記サーバに伝送する段階と
をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項5】
前記制限情報は所定時間に該当し、
前記(b)段階は、前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項6】
前記周期情報は所定時間に該当し、
前記報告する段階は、前記所定時間ごとに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項7】
前記周期情報は、前記コンテンツの所定使用回数に該当し、
前記報告する段階は、前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるたびに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項1に記載のデジタル権限管理方法。
【請求項8】
送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法において、
(a)前記送受信部が、選択されたコンテンツに該当し、前記報告に関する制限情報を含む権利オブジェクトを前記サーバから受信する段階と、前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当し、
(b)前記DRMエージェントが、前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限する段階と
をさらに含むことを特徴とするデジタル権限管理方法。
【請求項9】
コンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデバイスにおいて、
前記報告に関する制限情報を含む前記測定または報告に関するポリシー情報を保存するポリシー情報保存部と、前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当し、
前記ポリシー情報のうち、前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限するDRMエージェントとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
前記ポリシー情報は、前記サーバから受信され、
ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力されるユーザインターフェースと、
前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意したと入力された場合、前記デバイスの登録を要請するメッセージを伝送する送受信部とをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ユーザインターフェースは、前記ユーザから前記測定または報告に関する設定値を入力され、前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致しない場合、前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に対する同意いかんを入力され、
前記送受信部は、前記受信されたポリシー情報と前記入力された設定値とが一致する場合、または前記ユーザから前記受信されたポリシー情報に同意すると入力された場合、前記デバイスの登録を要請するメッセージを伝送することを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ポリシー情報は、前記報告を行う周期に関する周期情報をさらに含み、
前記DRMエージェントは、前記周期情報によって前記測定された使用量を前記サーバに報告することを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
前記周期情報は所定時間に該当し、
前記DRMエージェントは、前記所定時間ごとに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記周期情報は、前記コンテンツの所定使用回数に該当し、
前記DRMエージェントは、前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるたびに前記測定された使用量を報告することを特徴とする請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
コンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量を報告するデバイスと、
前記デバイスから前記報告を受けるサーバとを備え、
前記サーバは、前記報告に関する制限情報を含む前記測定または報告に関するポリシー情報を前記デバイスに伝送し、前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当し、
前記デバイスは、前記ポリシー情報のうち、前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記コンテンツの使用を制限することを特徴とするデジタル権限管理システム。
【請求項16】
前記ポリシー情報は、報告を行う周期に関する周期情報をさらに含み、
前記デバイスは、前記周期情報によって前記測定された使用量を前記サーバに報告することを特徴とする請求項15に記載のデジタル権限管理システム。
【請求項17】
前記サーバは、前記デバイスに前記報告を要請するメッセージを伝送し、
前記デバイスは、前記メッセージに応答し、前記測定された使用量を前記サーバに報告することを特徴とする請求項15に記載のデジタル権限管理システム。
【請求項18】
前記メッセージは、ドメイン情報、コンテンツID及び時間情報のうち少なくとも一つを含み、
前記デバイスは、前記メッセージによって前記ドメインで共有されるコンテンツの使用量、前記コンテンツIDに該当するコンテンツの使用量、または前記時間内に使われたコンテンツの使用量を報告することを特徴とする請求項17に記載のデジタル権限管理システム。
【請求項19】
請求項1ないし請求項8のうちいずれか一項に記載のデジタル権限管理方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そして,本件補正は,
補正前の請求項1,請求項10,請求項13,及び請求項21に記載した発明を特定するために必要な情報である,
「制限情報」を,「前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当し」と限定するとともに,当該限定に対応させて,
補正前の請求項1,請求項13,及び請求項21の「前記報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合」,補正前の請求項10の「前記選択されたコンテンツの使用量報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合」との記載を,それぞれ「前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記コンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合」,「前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合」と限定して,補正後の請求項1,請求項8,請求項9,及び請求項15とするとともに,
補正前の請求項6,請求項7,請求項11,請求項12,請求項16,及び請求項17を削除するものであって,
また,上記補正前の請求項1,請求項10,請求項13,及び請求項21に対する限定によって,本件補正前後の請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

したがって,本件補正の目的は,請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下,「限定的減縮」という。),及び,請求項の削除に該当し,特許法第17条の2第5項第1号及び第2号に掲げられる事項を目的とするものであると解することができる。

2 補正の適否
そこで,補正後の請求項8に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正後の発明
本件補正発明は,上記1に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項

ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前かつ上記優先日前に頒布された刊行物である,特表2003-500722号公報(平成15年1月7日公表。以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
「【0010】
・・・ソフトウエアは、コンピュータプログラム、テキスト、データ、データベース、オーディオ、ビデオ、イメージ、その他デジタル的にまたは信号として表される情報のようなものを含む広い意味で定義され、・・・本発明は、ソフトウエアのベンダーに対してソフトウエアの使用ごとに支払う方式にすることも可能にする。」
「【0011】
特に、本発明は、ユーザー装置上のソフトウエアの使用を管理し、また装置が、ソフトウエアに対する権利の正当なベンダーまたは所有者により許可されない方法で、ソフトウエアのインスタンス、つまりユーザーが使用する個々のソフトウエア、を用いることを防止する管理体制のためのシステム方法または装置を提供する。」
「【0024】
本発明の他の構成において、ユーザー装置の管理プログラムが保護センターと通信する時、この処理を呼び出しと呼ぶ。好ましくは、呼び出し手順の間の最大許容時間間隔は、ユーザー装置において経過する時間、ソフトウエアのインスタンスの使用の数と時間、ユーザー装置が電源オンされる度数およびユーザー装置の使用の測定の組み合わせの少なくとも1つによって決定される。ユーザー装置が最後の呼び出し手順からの最大許容時間間隔の終わりの前に保護センターを用いた呼び出し手順を行うことを怠った時には、ユーザー装置は特定時間にわたり機能を停止され、またはソフトウエアのインスタンスの使用は特定時間帯にわたり否定される。好ましくは、ソフトウエアのインスタンスがユーザー装置において初めて用いられる(即ち、アクセス、インストール、またはその他の形で検出される)時には、呼び出しが行われる。または、呼び出しは保護センターからのリクエストにより生じる。」
「【0129】
呼び出し手順中、管理プログラムはユーザー装置に結合された相互接続機構を介してユーザー装置からのタグテーブルを安全に送り、ユーザー装置に戻されてくる、タグテーブルのタグごとに実行されるべき措置を示す継続メッセージの受け取りを待つ。この方法により、ユーザー装置は使用管理ポリシーの設定に関して配慮する必要がなく、全ての装置に共通な使用管理ポリシー、またはベンダーによって配布されるソフトウエアインスタンスに関連したベンダーの使用管理ポリシーを遵守するだけでよい。」
「【0130】
ユーザー装置の管理プログラムによって実施される呼び出しポリシーは、この装置、この装置で用いられる特定のソフトウエアインスタンス、またはこの装置の特定のユーザに関連付けられてもよい。呼び出しポリシーの例は、以下のものを含むが、これらに限定されるわけではない。ユーザー装置の次の呼び出し時刻は、前回の呼び出しからの経過時間、前回の呼び出し以降の装置起動回数および前回の呼び出し以降に装置が使用された全時間の組み合わせによって求められてもよい。同様に、タグ、またはこのタグに関連したソフトウエアインスタンスに関連した呼び出しポリシーが、前回の呼び出しからの経過時間、ソフトウエアインスタンスが使用された回数およびソフトウエアインスタンスがこの装置で用いられた全時間の関数として、次の呼び出し時刻を求めてもよい。ソフトウエアインスタンスに関連した別の呼び出しポリシーは、ユーザー装置においてソフトウエアインスタンスの使用が試みられる度に、呼び出しを実行することを記してもよい。」
「【0131】
本発明は、呼び出しポリシーによって指定された次の呼び出し時刻以前に、保護センターを呼び出して継続メッセージを保護センターから受け取るのを怠った場合に特定の報復措置を管理プログラムに実行させることによって、前記ユーザー装置または前記ユーザー装置のタグテーブルのタグに適用される呼び出しに適合するように、ユーザー装置およびその管理プログラムを動作させる。前記メッセージが実際に前記呼び出し用の継続メッセージとして保護センターによって送られる場合に限り、ユーザー装置の管理プログラムがこの呼び出しに対する保護センターの継続メッセージとして、呼び出し手順の実行中に、受け取ったメッセージを受け入れることを本発明は保証する。これは、上述のように、保護センターがこの継続メッセージに署名し、ユーザー装置の管理プログラムによる現呼び出しに一意にリンクした識別データをこのメッセージに含めること、および保護センターが前記署名および前記識別データを確認することによって達成される。呼び出しポリシーに従った保護センターの呼び出しを行わないことや、不正な継続メッセージを作成もしくは使用する企てによって、ユーザーまたはユーザー装置が本発明の保護の対象から外れてしまうのを、本発明のこの構成要素が防止する。」
「【0132】
呼び出しポリシーを適合するのに怠った際に前記装置の管理プログラムによって実行されるユーザー装置の前記報復措置の例は、以下の事項を含むが、これらに限定されるわけではない。管理プログラムは、呼び出し手順の実行を除いて、指定期間装置を機能停止させてもよい。ソフトウエアインスタンスに関連した呼び出しポリシーが違反されると、装置がこのソフトウエアインスタンスの使用を指定期間停止してもよい。」
「【0154】
本発明の一般的な運用によれば、一つ以上のソフトウエアベンダーのうちのソフトウエアベンダー100が、ソフトウエアインスタンス(図1には示さず)を作成し、配布する。ソフトウエアインスタンスは、各ユーザー装置104?107で使用されるために、装置104?107でインストールまたは使用される。例えば、ソフトウエアがテープの音楽であれば、テープは図1でテーププレーヤとして図示されているユーザー装置105にインストールされる。ソフトウエアは、ソフトウエアベンダー101から物理的または手動的に搬送され、ユーザー装置104?107に物理的なテープの場合のようにインストールされるか、または公知のデータ伝送機構、すなわちソフトウエアベンダー101からユーザー装置107にソフトウエアのインスタンスをダウンロードする場合のような機構を用いて、ソフトウエアは通信ネットワーク100を介して電子的に伝播されてインストールされる。」
「【0156】
・・・タグサーバー102および保護センター103は、ソフトウエアベンダー101の一部であってもよく、すなわち同一コンピュータシステム内に含まれてもよい。代わりに、一つ以上の共有タグサーバー102および共有保護センター103に依存してサービスを受けるソフトウエアベンダー101の協会が存在してもよい。」
「【0201】
図4は、本発明により構成されたユーザー装置104の好ましい構成を図示する。ユーザー装置104は、ユーザー装置ストレージ200、プロセッサ201、メモリ202、相互接続機構203、入/出力機構204を結合するインターナルバス206を含む。ユーザー213は、ユーザー装置104と相互に作用し合う。ユーザー213は、好ましくは人間であるが、本発明は、この中に説明されている使用管理が、大きな、人間以外の相互作用環境内の電子要素において実行されるシステムに適用することができる。この図において、ユーザー213は、本発明の目的を明確に示すためにソフトウエアのインスタンス111?114と直接に相互作用していることを示されている。実際には、ユーザー213は、プロセッサ201のコントロールの下でソフトウエアのインスタンス111?114との間で直接入出力を行うユーザー入/出力機構204と、実際にインターフェースすることができる。」
「【0203】
相互接続機構203は、コミュニケーションネットワーク100にインターフェースするために用いられ、モデム、ネットワークインターフェースカード、ワイヤレスレシーバ、またはコミュニケーションに用いられる装置であることが考えられる。」
「【0204】
ハード、フロッピー、または光学ディスクドライブ、RAIDアレー、ファイルサーバー、または他の読み/書き格納機構であることの考えられるユーザーストレージ装置200は、本発明により用いられる各種の要素およびデータを保持するのに用いられる。特にこの実施形態に図示されたように、ユーザーストレージ装置200は、ソフトウエアのインスタンス111?114、タグテーブル210、指紋テーブル126、管理プログラム209(図4)およびカーネル208を含むオペレーティングシステム207を保持する。この分野で理解されているようなオペレーティングシステム207は、ユーザー装置104のスタートアップ後に通常メモリ202にロードされ、ユーザー装置104の各種の要素の総合的動作をコントロールするためにプロセッサ201と関連して実行する。あるいは、本発明のオペレーティングシステムおよび要素プロセッサは、本発明を具現化するシステムの構成に組み込むことができる。」
「【0218】
簡単に説明すれば、タグテーブル210のUSAGE_STATUS欄は、一般に管理プログラム209に対し、ソフトウエアのインスタンス111?114が、ユーザー213、または装置104?107に対して使用可能か否かを表示する。ソフトウエアの使用が許される時には、ステータス欄は“CONTINUED”、または“INSTALLED”を示すのに対し、使用が否認される時には、この状態は“GC_DISABLED”の語により示される。“REMOVED”ステータス語が次に続く“INSTALLED”は、ソフトウエアのインスタンス111?114に対するタグTAG_INST_SWnが、以前にはユーザー装置104にインストールされていたがもはやインストールされておらず、したがって使用可能ではないことを示す。ACTION TIME欄は、管理プログラム(SP)209(図2)により行われた最後のステータス判断(例えば、説明されるべき、最後の呼び出しおよびタグ確認手順)のタイムスタンプ(例えば日時)を示す。タグテーブル210のRUN COUNT欄は、タグTAG_INST_SWn(ただし、nはこの例では1から4の数字である)に付随するソフトウエアのインスタンス111?114がユーザー装置104?107に用いられた関数を示す。最後に、タグテーブル210におけるUSE TIME欄は、TAG_INST_SWnに付随するソフトウエアのインスタンス111?114が装置と保護センターとの間の最後の呼び出し手順以来、または他の実施形態ではインストールされて以来経過した使用全時間を示す。」

(イ) 上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。
a 引用例1の段落【0011】の記載等から,引用例1には「権利の正当なベンダーに許可されない方法でユーザがソフトウェアインスタンスを用いることを防止する管理体制のためのシステム方法」が記載されていると言える。
b 引用例1の段落【0201】の記載等から,上記「システム方法」は,「ユーザストレージ装置と相互接続機構とを有するユーザ装置で用いられ」るものであると言える。
c 引用例1の段落【0204】の記載等から,上記「ユーザストレージ装置」は,「管理プログラムが保持された」ものであると言える。
d 引用例1の段落【0024】,段落【0129】,段落【0218】の記載等から,上記「システム方法」は,「ソフトウェアインスタンスの使用時間を含むタグテーブルを呼び出し手順中に保護センターに送る」ものであると言える。
e 引用例1の段落【0154】,段落【0156】の記載等から,上記「システム方法」は,「保護センターと同一コンピュータシステム内に含まれるソフトウェアベンダーから,ソフトウェアインスタンスが通信ネットワークを介してインストールされる段階」を含むものであると言える。
f 引用例1の段落【0131】,段落【0132】の記載等から,上記「システム方法」は,「次の呼び出し時刻以前に,前記保護センターを呼び出して継続メッセージを受け取るのを怠った場合に,前記管理プログラムが前記ソフトウェアインスタンスの使用を停止することを含む報復措置を実行する段階」を含むものであると言える。
g 引用例1の段落【0130】の記載等から,上記「次の呼び出し時刻」は,「前回の呼び出しからの経過時間の関数として求められる」ものであると言える。

(ウ) これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「管理プログラムが保持されたユーザストレージ装置と相互接続機構とを有するユーザ装置で用いられ,ソフトウェアインスタンスの使用時間を含むタグテーブルを呼び出し手順中に保護センターに送る,権利の正当なベンダーに許可されない方法でユーザがソフトウェアインスタンスを用いることを防止する管理体制のためのシステム方法であって,
前記保護センターと同一コンピュータシステム内に含まれるソフトウェアベンダーから,前記ソフトウェアインスタンスが通信ネットワークを介してインストールされる段階と,
次の呼び出し時刻以前に,前記保護センターを呼び出して継続メッセージを受け取るのを怠った場合に,前記管理プログラムが前記ソフトウェアインスタンスの使用を停止することを含む報復措置を実行する段階を含み,
前記次の呼び出し時刻は,前回の呼び出しからの経過時間の関数として求められる,
管理体制のためのシステム方法。」

イ 周知例1
(ア)原査定で周知例として引用された,本願の出願日前かつ上記優先日前に頒布された刊行物である,特開平1-166218号公報(平成1年6月30日公開。以下,「周知例1」という。)には、図面とともに,次の記載がある。
「有償ソフトウェア出荷要求が発生(100)した場合、ディレクトリライターに契約期限を読込ませる。(101)読込んだ契約期限を暗号変換して(102)出荷有償ソフトウェアのディレクトリに書込む。(105)ディレクトリに書込む情報は契約期限の他に、停止有余期間等の付加情報も書込むことが可能である。」(第2ページ右上欄第13行ないし同ページ右上欄第19行)

(イ)上記記載から,周知例1には,次の技術的事項が記載されている。
停止有余期間等の付加情報をソフトウェアのディレクトリに書き込む。

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。

(ア)引用発明の「相互接続機構」は,コミュニケーションネットワークにインターフェースするために用いられるものであるから,本件補正発明の「送受信部」に相当する。

(イ)引用発明の「管理プログラム」は,保護センターの呼出し及び報復措置を実行するものであるから,本件補正発明の「DRMエージェント」に相当する。

(ウ)引用発明の「ユーザ装置」は,管理プログラムが保持されたユーザストレージ装置と相互接続機構とを有するものであるから,本件補正発明の「デバイス」に相当する。

(エ)引用発明におけるソフトウエアとは,コンピュータプログラム,オーディオ,又はビデオのようなものを含む広い意味で定義されるものである。また,引用発明において,「ソフトウェアインスタンスの使用時間」が,ユーザ装置内の何らかの手段によって測定されることは自明である。よって,引用発明の「ソフトウェアインスタンスの使用時間」は,本件補正発明の「コンテンツの使用量」,すなわち「前記測定された使用量」に相当する。

(オ)引用発明の「保護センター」は,ユーザ装置によって呼び出されてソフトウェアインスタンスの使用時間を受け取るものであるから,本件補正発明の「サーバ」に対応付けられる。

(カ)上記(ア)ないし(オ)で検討した内容から,引用発明も本件補正発明と同様に「送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法」と言えるものである。

(キ)引用発明の「前記保護センターと同一コンピュータシステム内に含まれるソフトウェアベンダーから,前記ソフトウェアインスタンスが通信ネットワークを介してインストールされる段階」は,本件補正発明の「受信する段階」に対応付けられるものであるところ,インストールされるソフトウェアインスタンスが何らかの意味においてインストールすることが選択されたソフトウェアインスタンスであることは当業者にとっては自明である。また,ソフトウェアベンダーは保護センターと同一コンピュータシステム内に含まれるものであるから,1つのサーバ内にソフトウェアベンダーと保護センターが存在しているとも言える。
したがって,引用発明と本件補正発明とは,「前記送受信部が、選択されたコンテンツに該当する権利オブジェクトを前記サーバから受信する段階」を含む点で共通する。

(ク)引用発明の「次の呼び出し時刻は,前回の呼び出しからの経過時間の関数として求められる」ことは,少なくとも前回の呼び出しからの経過時間を用いて次の呼び出し時刻を求めることを含むから,引用発明も,本件補正発明の「前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当」する旨の要件を満たしている。

(ケ)引用発明の「次の呼び出し時刻以前に,保護センターを呼び出して継続メッセージを受け取るのを怠った場合に,管理プログラムがソフトウェアインスタンスの使用を停止することを含む報復措置を実行する段階」は,管理プログラムが保護センターを呼び出した際にソフトウェアインスタンスの使用時間を含むタグテーブルを送り,それに対して継続メッセージを受け取る構成において,保護センターを呼び出し,使用時間を含むタグテーブルを送り,継続メッセージを受け取るとの一連の動作の一部である継続メッセージを受け取る動作を怠った場合に,管理プログラムが報復措置を実行するものであるから,本件補正発明の「前記DRMエージェントが、前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限する段階」を含む旨の要件を満たしている。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

【一致点】
「送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し,前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法において,
(a)前記送受信部が,選択されたコンテンツに該当する権利オブジェクトを前記サーバから受信する段階と,前記制限情報は所定時間及び前記コンテンツの所定使用回数のうち少なくとも一つに該当し,
(b)前記DRMエージェントが,前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合,前記選択されたコンテンツの使用を制限する段階と,
をさらに含むことを特徴とするデジタル権限管理方法。」

【相違点】
本件補正発明は,サーバから受信する「選択されたコンテンツに該当する権利オブジェクト」に「報告に関する制限情報」が含まれるのに対して,引用発明は,「制限情報」をいずれから取得するかが特定されていない点。

(4)判断
ア 以下,相違点について検討する。
引用発明においても,「制限情報」を何らかの方法で取得しなければならないことは明らかであるところ,周知例1にも記載されているように,コンテンツの使用を制限するための情報を当該コンテンツ内に格納することは周知技術にすぎない。また,引用発明において,コンテンツの使用を制限するための情報を当該コンテンツ内に格納する構成とすることを阻害する格別の要因はなく,コンテンツの使用を制限するための情報を当該コンテンツ内に格納する構成とすることによる格別の効果もない。
してみれば,引用発明において,コンテンツの使用を制限するための情報である「制限情報」を「選択されたコンテンツに該当する権利オブジェクト」に含ませることは,周知技術の単なる附加にすぎないから,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 請求人は,平成25年5月20日付け回答書において,引用文献1の「報復措置」は,単にユーザー装置が保護センターから継続メッセージを受信することを「怠けた」場合だけ実行されうるものであるので,ユーザー装置のユーザが故意にネットワーク連結を妨害して呼び出しを実行しない場合にはユーザー装置は保護センターから「報復措置」を受信しないはずなので,ユーザはユーザー装置を無制限的に使用できるという従来の技術の問題点を全て有する旨主張している。
しかし,上記(3)ア(ケ)に記載したように,引用発明は,管理プログラムが保護センターを呼び出した際にソフトウェアインスタンスの使用時間を含むタグテーブルを送り,それに対して継続メッセージを受け取る構成において,保護センターを呼び出し,使用時間を含むタグテーブルを送り,継続メッセージを受け取るとの一連の動作の一部である継続メッセージを受け取る動作を怠った場合に,管理プログラムが報復措置を実行するものである。よって,引用発明において,ユーザー装置のユーザが故意にネットワーク連結を妨害した場合には,保護センターを呼び出し,使用時間を含むタグテーブルを送り,継続メッセージを受け取るとの一連の動作が行われず,結果として,継続メッセージを受け取ることを怠ることとなるので,報復措置が実行される。よって,引用発明においては,ユーザー装置のユーザが故意にネットワーク連結を妨害して呼び出しを実行しない場合にはユーザー装置は保護センターから「報復措置」を受信しないはずなので,ユーザはユーザー装置を無制限的に使用できるとの請求人の主張は失当である。

ウ したがって,本件補正発明は,引用例1に記載された発明及び周知例1にみられる周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)特許請求の範囲の明確性
ア 補正後の請求項8には,「(b)前記DRMエージェントが、前記制限情報によって前記所定時間の間に前記報告が行われていない場合または前記選択されたコンテンツが前記所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限する段階」と記載されている。
しかしながら,当該記載における「所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合」とは,どのような場合を指しているのかが明確でない。
すなわち,「ほど」とは、おおよその程度であることを示す助詞であるから,当該記載における「所定使用回数ほど」とは,おおよそ「所定使用回数」程度であることを意味していると解される。してみれば,「所定使用回数ほど使われるまで前記報告が行われていない場合」とは,おおよそ所定使用回数程度使われるまで前記報告が行われていない場合を意味すると解されるから,結局のところ,「所定使用回数」に対して,具体的にどの程度の回数が使われるまで報告が行われていない場合を指しているのかが明確でない。

イ したがって、本件補正発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願出願について

1 本願出願
平成24年9月7日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成24年4月4日付け手続補正書の請求の範囲の請求項1ないし請求項25に記載された事項により特定されるものである。そして,その請求項10に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項10に記載された事項により特定される,上記第2の[理由]1に記載のとおりのものである。再掲すれば次のとおりである。
「送受信部とDRMエージェントとを有するデバイスで使われるコンテンツの使用量を測定し、前記測定された使用量をサーバに報告するデジタル権限管理方法において、
(a)前記送受信部が、選択されたコンテンツに該当し、前記報告に関する制限情報を含む権利オブジェクトを前記サーバから受信する段階と、
(b)前記DRMエージェントが、前記制限情報によって前記選択されたコンテンツの使用量報告が行われていない状態が前記制限情報が表す臨界値まで持続される場合、前記選択されたコンテンツの使用を制限する段階とをさらに含むことを特徴とするデジタル権限管理方法。」

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び原査定で引用された周知例1,及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「制限情報」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を附加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用例1に記載された発明及び周知例1にもみられる周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1に記載された発明及び周知例1にもみられる周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-11 
結審通知日 2014-04-15 
審決日 2014-04-30 
出願番号 特願2007-307542(P2007-307542)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 小林 大介
田中 秀人
発明の名称 デジタル権限管理方法及びシステム並びにデバイス  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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