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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1291876 |
審判番号 | 不服2013-11317 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-17 |
確定日 | 2014-09-10 |
事件の表示 | 特願2010-283610「装置へのコンテンツの分配を管理するシステムと方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月14日出願公開,特開2011- 76628〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,2000年4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年4月30日 英国)を国際出願日とする特願2000-615887号の一部を平成22年12月20日に新たな特許出願としたものであって, 平成23年1月19日付けで審査請求がなされ,平成24年9月6日付けで手続補正がなされ,平成24年10月24日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成25年1月28日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成25年2月13日付けで審査官により拒絶査定がなされ(発送;平成25年2月15日),これに対して平成25年6月17日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成25年7月4日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成25年7月18日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ,平成25年10月21日付けで回答書の提出があったものである。 第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年6月17日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成25年6月17日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成25年1月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲, 「 【請求項1】 装置へのコンテンツの分配を管理するシステムであって, 複数の要素を装置の階層構造として記憶し,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは前記装置を表すデータベースと, 前記データベース内の前記階層構造を参照して,前記装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムと前記ユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールであって,前記装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを生成するサーバと, 前記装置に関連し,前記サーバから前記プロフィールを受け,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を用いて前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,前記プロフィールに従って前記装置に与えた前記コンテンツを識別する記録を保持させるように構成されている装置管理プログラムと, を備え, 前記装置管理プログラムは,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と前記記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除する前記システム。 【請求項2】 前記各コンテンツ識別子は,対応するコンテンツの名前と,そのコンテンツを得ることができる位置を識別する位置標識とを与える請求項1記載のシステム。 【請求項3】 複数の異なる型のコンテンツの前記分配は,前記システムが管理し,前記コンテンツ識別子は,対応するコンテンツの型を更に識別する請求項2記載のシステム。 【請求項4】 前記コンテンツは,インターネットを介してコンタクトすることができるサーバ上に記憶され,前記位置指標は,URLアドレスである請求項2または3に記載のシステム。 【請求項5】 前記装置が前記コンテンツを受けたとき前記コンテンツを処理するのに必要なコンテンツ情報を関連付けるための多数のパッケージャを更に含む請求項1から4のいずれかに記載のシステム。 【請求項6】 複数の異なる型のコンテンツの前記分配は,前記システムが管理し,コンテンツの型毎にパッケージャを設ける請求項5に記載のシステム。 【請求項7】 コンテンツに関連する情報は,前記コンテンツを前記装置上にインストールするのに用いるインストーラの識別を含む請求項5または6記載のシステム。 【請求項8】 前記データベース上に記憶された前記階層構造をユーザが管理できるようにするインターフェースを与える管理ツールを更に備える請求項1から7のいずれかに記載のシステム。 【請求項9】 前記要素は,1つ以上の部門を含み,各部門は,装置の論理的グループ化を表し,前記管理ツールにより部門を作成し削除することとコンテンツ識別子を各部門に関連付けることができる請求項8記載のシステム。 【請求項10】 前記サーバが生成するプロフィールは,前記装置に関連する全てのコンテンツ識別子と,前記階層構造内で前記装置が依存する部門に関連する全てのコンテンツ識別子とを含む請求項9に記載のシステム。 【請求項11】 前記管理ツールにより人識別子は,前記階層構造内の要素として与えられる個人を識別することができるようにされ,前記管理ツールを用いて前記階層構造内で前記装置と前記装置を所有する個人とを関連付けることができる請求項8から10のいずれかに記載のシステム。 【請求項12】 前記装置管理プログラムは,所定の間隔で前記サーバに接続して前記プロフィールを要求し,前記装置管理プログラムは,前記プロフィールを要求した装置を前記サーバに識別させる請求項1から11のいずれかに記載のシステム。 【請求項13】 複数の異なる型のコンテンツの前記分配は,前記システムが管理し,前記型の少なくとも1つは,コンピュータ・プログラムである請求項1から12のいずれかに記載のシステム。 【請求項14】 前記データベースは,リレーショナル・データベースである請求項1から13のいずれかに記載のシステム。 【請求項15】 請求項1から14のいずれかに記載のシステムに用いられるサーバを制御するコンピュータ・プログラムを提供する記憶媒体であって,前記データベースを参照して前記装置のプロフィールを生成し,前記プロフィールを前記装置管理プログラムに送信するコンピュータ・プログラムを提供する記憶媒体。 【請求項16】 前記プロフィールは,前記装置管理プログラムからの前記プロフィールの要求に応じて生成される請求項15記載の記憶媒体。 【請求項17】 請求項15に記載の記憶媒体であって,更に請求項1から14のいずれかに記載のシステム内の管理ツールとして動作するコンピュータを制御するコンピュータ・プログラムを提供し,前記コンピュータ・プログラムは,前記データベース上に記憶された前記階層構造をユーザが管理できるようにするインターフェースを与える記憶媒体。 【請求項18】 前記階層構造内の要素は,1つ以上の部門を含み,各部門は,装置の論理的グループ化を表し,前記管理ツールにより,部門を生成し削除することとコンテンツ識別子を各部門に関連付けることができる請求項17記載の記憶媒体。 【請求項19】 前記管理ツールにより人識別子は,前記階層構造内の要素として与えられる個人を識別することができるようにされ,前記管理ツールを用いて前記階層構造内で前記装置と前記装置を所有する個人とを関連付けることができる請求項17または18記載の記憶媒体。 【請求項20】 請求項1から14のいずれかに記載のシステム内で用いる装置管理プログラムを装置内に提供する記憶媒体であって,前記装置管理プログラムは,前記サーバからプロフィールを受け,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を用いて前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と,以前のプロフィールに従って前記装置に与えたコンテンツを識別する記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除する記憶媒体。 【請求項21】 請求項20に記載の記憶媒体であって,更に請求項1から14のいずれかに記載のシステム内で用いるパッケージャとして動作するコンピュータを制御するコンピュータ・プログラムを提供し,前記パッケージャは,前記装置が受けたときに前記コンテンツを処理するのに必要なコンテンツ情報に関連する記憶媒体。 【請求項22】 装置へのコンテンツの分配を管理する方法であって, サーバは,複数の要素を装置の階層構造としてデータベース内に記憶するステップであって,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは,前記装置を表すステップと, 前記サーバは,前記データベース内の前記階層構造を参照して,前記装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムと前記ユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む装置のプロフィールであって,前記装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを生成するステップと, 装置管理プログラムを用いて,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を参照して,前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,前記プロフィールに従って前記装置に与えた前記コンテンツを識別する記録を保持するステップと, 前記装置管理プログラムは,後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と前記記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除するステップと, を含む前記方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は, 「 【請求項1】 装置へのコンテンツの分配を管理するシステムであって, 複数の要素を装置の階層構造として記憶し,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは前記装置を表すデータベースと, 前記データベース内の前記階層構造を参照して,前記装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムまたは前記装置のユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールであって,前記装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続されたときに生成するサーバと, 前記装置に関連し,前記サーバから前記プロフィールを受け,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を用いて前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,前記プロフィールに従って前記装置に与えた前記コンテンツを識別する記録を保持させるように構成されている装置管理プログラムと, を備え, 前記装置管理プログラムは,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と前記記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除する前記システム。 【請求項2】 前記各コンテンツ識別子は,対応するコンテンツの名前と,そのコンテンツを得ることができる位置を識別する位置標識とを与える請求項1記載のシステム。 【請求項3】 複数の異なる型のコンテンツの前記分配は,前記システムが管理し,前記コンテンツ識別子は,対応するコンテンツの型を更に識別する請求項2記載のシステム。 【請求項4】 前記コンテンツは,インターネットを介してコンタクトすることができるサーバ上に記憶され,前記位置指標は,URLアドレスである請求項2または3に記載のシステム。 【請求項5】 前記装置が前記コンテンツを受けたとき前記コンテンツを処理するのに必要なコンテンツ情報を関連付けるための多数のパッケージャを更に含む請求項1から4のいずれかに記載のシステム。 【請求項6】 複数の異なる型のコンテンツの前記分配は,前記システムが管理し,コンテンツの型毎にパッケージャを設ける請求項5に記載のシステム。 【請求項7】 コンテンツに関連する情報は,前記コンテンツを前記装置上にインストールするのに用いるインストーラの識別を含む請求項5または6記載のシステム。 【請求項8】 前記データベース上に記憶された前記階層構造をユーザが管理できるようにするインターフェースを与える管理ツールを更に備える請求項1から7のいずれかに記載のシステム。 【請求項9】 前記要素は,1つ以上の部門を含み,各部門は,装置の論理的グループ化を表し,前記管理ツールにより部門を作成し削除することとコンテンツ識別子を各部門に関連付けることができる請求項8記載のシステム。 【請求項10】 前記サーバが生成するプロフィールは,前記装置に関連する全てのコンテンツ識別子と,前記階層構造内で前記装置が依存する部門に関連する全てのコンテンツ識別子とを含む請求項9に記載のシステム。 【請求項11】 前記管理ツールにより人識別子は,前記階層構造内の要素として与えられる個人を識別することができるようにされ,前記管理ツールを用いて前記階層構造内で前記装置と前記装置を所有する個人とを関連付けることができる請求項8から10のいずれかに記載のシステム。 【請求項12】 前記装置管理プログラムは,所定の間隔で前記サーバに接続して前記プロフィールを要求し,前記装置管理プログラムは,前記プロフィールを要求した装置を前記サーバに識別させる請求項1から11のいずれかに記載のシステム。 【請求項13】 複数の異なる型のコンテンツの前記分配は,前記システムが管理し,前記型の少なくとも1つは,コンピュータ・プログラムである請求項1から12のいずれかに記載のシステム。 【請求項14】 前記データベースは,リレーショナル・データベースである請求項1から13のいずれかに記載のシステム。 【請求項15】 請求項1から14のいずれかに記載のシステムに用いられるサーバを制御するコンピュータ・プログラムを提供する記憶媒体であって,前記データベースを参照して前記装置のプロフィールを生成し,前記プロフィールを前記装置管理プログラムに送信するコンピュータ・プログラムを提供する記憶媒体。 【請求項16】 前記プロフィールは,前記装置管理プログラムからの前記プロフィールの要求に応じて生成される請求項15記載の記憶媒体。 【請求項17】 請求項15に記載の記憶媒体であって,更に請求項1から14のいずれかに記載のシステム内の管理ツールとして動作するコンピュータを制御するコンピュータ・プログラムを提供し,前記コンピュータ・プログラムは,前記データベース上に記憶された前記階層構造をユーザが管理できるようにするインターフェースを与える記憶媒体。 【請求項18】 前記階層構造内の要素は,1つ以上の部門を含み,各部門は,装置の論理的グループ化を表し,前記管理ツールにより,部門を生成し削除することとコンテンツ識別子を各部門に関連付けることができる請求項17記載の記憶媒体。 【請求項19】 前記管理ツールにより人識別子は,前記階層構造内の要素として与えられる個人を識別することができるようにされ,前記管理ツールを用いて前記階層構造内で前記装置と前記装置を所有する個人とを関連付けることができる請求項17または18記載の記憶媒体。 【請求項20】 請求項1から14のいずれかに記載のシステム内で用いる装置管理プログラムを装置内に提供する記憶媒体であって,前記装置管理プログラムは,前記サーバからプロフィールを受け,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を用いて前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と,以前のプロフィールに従って前記装置に与えたコンテンツを識別する記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除する記憶媒体。 【請求項21】 請求項20に記載の記憶媒体であって,更に請求項1から14のいずれかに記載のシステム内で用いるパッケージャとして動作するコンピュータを制御するコンピュータ・プログラムを提供し,前記パッケージャは,前記装置が前記コンテンツを受けたときに前記コンテンツを処理するのに必要なコンテンツ情報に関連付けるためのものである記憶媒体。 【請求項22】 装置へのコンテンツの分配を管理する方法であって, サーバは,複数の要素を装置の階層構造としてデータベース内に記憶するステップであって,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは,前記装置を表すステップと, 前記サーバは,前記データベース内の前記階層構造を参照して,前記装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムまたは前記装置のユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む装置のプロフィールであって,前記装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続されたときに生成するステップと, 装置管理プログラムを用いて,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を参照して,前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,前記プロフィールに従って前記装置に与えた前記コンテンツを識別する記録を保持するステップと, 前記装置管理プログラムは,後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と前記記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除するステップと, を含む前記方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。 2.補正の適否 本件手続補正において,補正前の請求項1,及び,請求項22に係る発明の発明特定事項である,「装置のプロフィールを生成するサーバ」に対して,「装置のプロフィールを定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続された時に生成するサーバ」というように,「装置のプロフィール」を「生成する」タイミングとして,「定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続された時」という事項を附加しており,上記引用の附加された内容は,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面に記載された範囲内のものであり,前記「サーバ」の機能を限定するものであるから,本件手続補正は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的とするものである。 そこで,本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。 (1)本件補正発明 補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した記載のとおりのものである。 (2)引用刊行物記載の発明 一方,原審が,平成24年10月24日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用した,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開平10-124419号公報(1998年5月15日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A.「【0041】 【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について以下に説明する。本発明による「クライアントサーバーシステムにおけるソフトウェアの整合配布方法」は,要約すると,クライアントコンピュータが有しているべきソフトウェアとデータの全体のファイル体系をサーバー内に構築し,そのファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイル属性(ファイルサイズや更新日付)を用い,一方,各クライアントコンピュータに配布ツールを稼動させ,自分(クライアントコンピュータ)のファイル体系とサーバーのファイル体系とを比較させ,ファイル属性が異なるファイルについて最新のファイルを取り込むようにさせたものである。」 B.「【0043】図1に示すように,この方法によれば,サーバー2は,それに接続されている各クライアントコンピュータ3が有すべきファイル体系と同一のファイル体系のクライアント配布物管理用ファイル体系7を有している。 【0044】このクライアント配布物管理用ファイル体系7には,配布すべき最新のソフトウェアやデータのファイルを全て格納しておく。また,ファイルのバージョンを示すものとしてファイルの属性(ファイルサイズや更新日付)も含むようにする。 【0045】さらに,サーバー2は,ソフトウェア等を配布すべきクライアントコンピュータ3に関する情報を格納した配布先定義ファイル8を備えるようにする。」 C.「【0047】また,クライアントコンピュータ3には,所期の目的のための処理を行うためのクライアント側ファイル体系10を構築しておく。」 D.「【0052】次に,配布ツール9は,サーバー2のクライアント配布物管理用ファイル体系7の各ファイルの属性情報を取得する(図2におけるステップS110)。 【0053】次に,配布ツール9は,取得した各ファイルの属性情報をクライアント側ファイル体系10の各ファイルの属性情報と比較する(図2におけるステップS120)。 【0054】上記比較により,クライアントコンピュータ3の最新バージョンに更新されていないファイルは,ファイル属性の異なるファイル(差分ファイルという)として判明する。 【0055】上記差分ファイルが発見された場合は,配布ツール9は,サーバー2にアクセスし,クライアント配布物管理用ファイル体系7から差分ファイルを取り出し,クライアント側ファイル体系10の同一ディレクトリーにそのファイルをコピーする(図2におけるステップS130)。」 E.「【0058】また,反対にクライアント側ファイル体系10にあるディレクトリーがクライアント配布物管理用ファイル体系7にない場合は,クライアント側ファイル体系10の同ディレクトリーを削除できるようにする。 【0059】上記ファイルのコピー等の作業を終了すると,配布ツール9は,それまでに行った作業の記録11(ログという)をクライアントコンピュータ3とサーバー2に出力する(図2におけるステップS140)。」 F.「【0072】次に,本実施形態によれば,ファイルの転送等を行ったクライアントコンピュータ3が,ログをサーバー2に送るようにしているので,階層的クライアントサーバーシステムにおいて,センター1が各サーバー2からログを取得することにより,末端のクライアントコンピュータ3のファイル更新状態をセンター1において把握することができる。」 G.「【0085】次に,本願請求項2の「クライアントサーバーシステムにおけるソフトウェア及びデータの整合配布方法」によれば,配布ツールがクライアントコンピュータとサーバーのファイル体系を比較し,差異があった場合にクライアントコンピュータのファイル体系のディレクトリーを追加・削除してサーバーのファイル体系と同一にするので,ディレクトリーの変更を伴うソフトウェア等の配布に対しても柔軟に対応することができる。」 ア.上記Aの「クライアントサーバーシステムにおけるソフトウェアの整合配布方法」という記載から, 引用刊行物1における,クライアントサーバシステムは,“ソフトウェア整合配布を行うクライアントサーバーシステム”であることは明らかである。 イ.上記Aの「クライアントコンピュータが有しているべきソフトウェアとデータの全体のファイル体系をサーバー内に構築し,そのファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイル属性(ファイルサイズや更新日付)を用い」るという記載,及び,上記Bの「クライアント配布物管理用ファイル体系7には,配布すべき最新のソフトウェアやデータのファイルを全て格納しておく。また,ファイルのバージョンを示すものとしてファイルの属性(ファイルサイズや更新日付)も含むようにする」という記載から,「クライアント配布物管理用ファイル体系」には,該「ファイル体系」に格納された「ファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイル属性(ファイルサイズや更新日付)」に関する情報も格納されており,このことから, 引用刊行物1において,“サーバは,クライアントコンピュータが有しているべきソフトウェアとデータの全体のファイル体系を有し,前記ファイル体系は,前記ファイル体系に格納されているファイルについての,前記ファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイル属性(ファイルサイズや更新日付)のデータベースを有する”と言い得るものである。 ウ.上記Bの「サーバー2は,ソフトウェア等を配布すべきクライアントコンピュータ3に関する情報を格納した配布先定義ファイル8を備えるようにする」という記載から, 引用刊行物1においては,“サーバは,クライアントコンピュータに関する情報を格納した配布先定義ファイルを有する”ことが読み取れる。 エ.上記Aの「各クライアントコンピュータに配布ツールを稼動させ,自分(クライアントコンピュータ)のファイル体系とサーバーのファイル体系とを比較させ,ファイル属性が異なるファイルについて最新のファイルを取り込むようにさせたもの」という記載,及び,上記Dの「配布ツール9は,サーバー2のクライアント配布物管理用ファイル体系7の各ファイルの属性情報を取得する」という記載,同じく上記Dの「配布ツール9は,取得した各ファイルの属性情報をクライアント側ファイル体系10の各ファイルの属性情報と比較する」という記載,及び,上記ア.において検討した事項から, 引用刊行物1においては,“クライアントコンピュータが有する配布ツールが,サーバのクライアント配布物管理用ファイル体系からファイルの属性情報を取得し,該ファイルの属性情報と,クライアントコンピュータ側のファイルの属性情報とを比較する”ことが読み取れる。 オ.上記Aの「ファイル属性が異なるファイルについて最新のファイルを取り込む」という記載,及び,上記Dの「比較により,クライアントコンピュータ3の最新バージョンに更新されていないファイルは,ファイル属性の異なるファイル(差分ファイルという)として判明する」という記載,並びに,同じく上記Dの「差分ファイルが発見された場合は,配布ツール9は,サーバー2にアクセスし,クライアント配布物管理用ファイル体系7から差分ファイルを取り出し,クライアント側ファイル体系10の同一ディレクトリーにそのファイルをコピーする」という記載と,上記イ.,及び,エ.において検討した事項とから,「ファイル属性」と,「ファイルの属性情報」とは同一のものであって, 引用刊行物1においては,“配布ツールは,サーバから取得したファイルの属性情報と,クライアント側のファイルの属性情報を比較した結果,ファイルの属性情報の異なるファイル(差分ファイルという)を発見した場合,サーバから,前記差分ファイルを取得し,クライアント側ファイル体系の同一のディレクトリーに,前記差分ファイルをコピーする”ことが読み取れる。 カ.上記Eの「反対にクライアント側ファイル体系10にあるディレクトリーがクライアント配布物管理用ファイル体系7にない場合は,クライアント側ファイル体系10の同ディレクトリーを削除できるようにする」という記載,及び,上記オ.において検討した事項から, 引用刊行物1においては,“配布ツールは,ファイルの属性情報を比較した結果,クライアント側ファイル体系にあるディレクトリーがクライアント配布物管理用ファイル体系にない場合は,クライアント側ファイル体系の同ディレクトリーを削除できるよう”構成されていることが読み取れる。 ここで,“クライアント側ファイル体系のディレクトリーを削除する”ということは,“該ディレクトリーにコピーされているファイルも同時に削除する”ことは明らかである。 キ.上記Eの「ファイルのコピー等の作業を終了すると,配布ツール9は,それまでに行った作業の記録11(ログという)をクライアントコンピュータ3とサーバー2に出力する」という記載,及び,上記Fの「ファイルの転送等を行ったクライアントコンピュータ3が,ログをサーバー2に送るようにしている」という記載から, 引用刊行物1においては,“クライアントコンピュータの配布ツールは,作業記録(ログ)をサーバに出力する”ことが読み取れる。 そして,上記Fの「階層的クライアントサーバーシステムにおいて,センター1が各サーバー2からログを取得することにより,末端のクライアントコンピュータ3のファイル更新状態をセンター1において把握することができる」という記載から, 引用刊行物1においては,“ログが,サーバに保存されている”ことは明らかである。 以上,ア.?キ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。 ソフトウェア整合配布を行うクライアントサーバーシステムであって, サーバは,クライアントコンピュータが有しているべきソフトウェアとデータの全体のファイル体系を有し,前記ファイル体系は,前記ファイル体系に格納されているファイルについての,前記ファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイルの属性情報(ファイルサイズや更新日付)のデータベースと,クライアントコンピュータに関する情報を格納した配布先定義ファイルとを有し, クライアントコンピュータは,サーバのクライアント配布物管理用ファイル体系からファイルの属性情報を取得し,該ファイルの属性情報と,クライアントコンピュータ側のファイルの属性情報とを比較する配布ツールを有し, 前記配布ツールは,サーバから取得したファイルの属性情報と,クライアント側のファイルの属性情報を比較した結果,ファイルの属性情報の異なるファイル(差分ファイルという)を発見した場合,サーバから,前記差分ファイルを取得し,クライアント側ファイル体系の同一のディレクトリーに,前記差分ファイルをコピーし,ファイルの属性情報を比較した結果,クライアント側ファイル体系にあるディレクトリーがクライアント配布物管理用ファイル体系にない場合は,クライアント側ファイル体系の同ディレクトリーを削除できるよう構成され, 更に,前記配布ツールは,作業記録(ログ)をサーバに出力し,前記ログは,サーバに保存される,システム。 (3)本件補正発明と,引用発明との対比 ア.引用発明における「クライアント」,或いは,「クライアントコンピュータ」が,本件補正発明における「装置」に相当し,引用発明における「ソフトウェア」は,本件補正発明における「コンテンツ」に相当するものであって,引用発明において,“ソフトウェアの整合配布を行う”ことは,結局のところ,“ソフトウェアの配布の管理を行う”ことにほかならないので, 引用発明における「ソフトウェア整合配布を行うクライアントサーバーシステム」が, 本件補正発明における「装置へのコンテンツの分配を管理するシステム」に相当する。 イ.引用発明における「ファイルの属性情報」は,引用発明における「クライアントコンピュータ」が,コピーすべき「ファイル」を識別するために用いる情報を含むことは明らかであるから, 引用発明における「ファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイルの属性情報(ファイルサイズや更新日付)のデータベース」と, 本件補正発明における「複数の要素を装置の階層構造として記憶し,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは前記装置を表すデータベース」とは, “コンテンツ識別情報を含むデータベース”である点で共通する。 ウ.引用発明における「ファイル体系の各ファイルの最新バージョンを示すものとしてファイルの属性情報(ファイルサイズや更新日付)のデータベース」は,「サーバ」が有しており,「サーバ」において,「ファイル」の「バージョン」が更新されれば,該「データベース」に含まれる「ファイルの属性情報」が更新されることは明らかであり,該「ファイルの属性情報」は,上記イ.においても検討したとおり,「クライアントコンピュータ」が取得すべき「ファイル」を識別するために用いる情報であるから,「ファイル」,即ち,「ソフトウェア」を識別する「識別情報」を含んでいることは明らかである。 したがって,引用発明において,“サーバが,ソフトウェアの識別情報を含むファイルの属性情報を更新する”ことは明らかであり,引用発明における「ファイルの属性情報」と,本件補正発明における「任意のコンテンツ識別子を含む装置のプロフィール」とは,「コンテンツ識別情報を含む情報」である点で共通するので, 引用発明において,“サーバが,ソフトウェアの識別情報を含むファイルの属性情報を更新する”ことは, 本件補正発明における「装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続されたときに生成するサーバ」と, “コンテンツ識別情報を含む情報を生成するサーバ”である点で共通する。 エ.引用発明における「配布ツール」は,「サーバのクライアント配布物管理用ファイル体系からファイルの属性情報を取得し,該ファイルの属性情報と,クライアントコンピュータ側のファイルの属性情報とを比較する」こと, 「サーバから取得したファイルの属性情報と,クライアント側のファイルの属性情報を比較した結果,ファイル属性の異なるファイル(差分ファイルという)を発見した場合,サーバから,前記差分ファイルを取得し,クライアント側ファイル体系の同一のディレクトリーに,前記差分ファイルをコピーし,ファイルの属性情報を比較した結果,クライアント側ファイル体系にあるディレクトリーがクライアント配布物管理用ファイル体系にない場合は,クライアント側ファイル体系の同ディレクトリーを削除」することを行うものであって,「ディレクトリーを削除」すると言うことは,該「ディレクトリー」に含まれる「ファイル」,即ち,「ソフトウェア」も同時に削除することを意味し,このとき,該“削除されるソフトウェア”は,「サーバ」側の「ファイルの属性情報」に新たに含まれない限り,削除された後は,「クライアントコンピュータ」に再度「コピー」されることはない。 そして,「クライアントコンピュータ」の有する「ソフトウェア」より,“新しいバージョンのソフトウェア”が,「サーバ」に存在した場合,「クライアントコンピュータ」側の,“古いバージョンのソフトウェア”は,前記“新しいバージョンのソフトウェア”に置換される,即ち,前記“古いバージョンのソフトウェア”は削除され,前記“新しいバージョンのソフトウェア”がコピーされることは,引用発明の構成から明らかである。 そして,上記イ.,及び,ウ.において検討したとおり,引用発明において,「バージョン」に関する情報は,「ファイルの属性情報」に含まれるものであるので,上記ウ.において検討したことを踏まえると, 引用発明における「配布ツール」と,本件補正発明における「装置管理プログラム」とは, “サーバのコンテンツ識別情報を含む情報と,装置内の前記情報とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別情報を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除する,コンテンツ管理手段”である点で共通する。 オ.引用発明においても,「配布ツールは,作業記録(ログ)をサーバに出力し,前記ログは,サーバに保存される」ものであり,該「作業」は,「配布ツール」が,「クライアントコンピュータ」にコピーした「ファイル」,或いは,削除した「ディレクトリー」を識別する情報を含むことは明らかであるから,上記エ.に検討した事項と併せると, 引用発明における「前記配布ツールは,作業記録(ログ)をサーバに出力し,前記ログは,サーバに保存される」ことと, 本件補正発明における「サーバから前記プロフィールを受け,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を用いて前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,前記プロフィールに従って前記装置に与えた前記コンテンツを識別する記録を保持させるように構成されている装置管理プログラム」とは, “サーバからのコンテンツ識別情報を含む情報内のコンテンツ識別情報を用いて,前記コンテンツ識別情報を含む情報が示すコンテンツを装置に与え,前記コンテンツ識別情報を含む情報に従って前記装置に与えた前記コンテンツに関する情報を保持させるように構成されるコンテンツ管理手段”である点で共通する。 以上,ア.?オ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 装置へのコンテンツの分配を管理するシステムであって, コンテンツ識別情報を含むデータベースと, 前記コンテンツ識別情報を含む情報を生成するサーバと, 前記サーバからの前記コンテンツ識別情報を含む情報内のコンテンツ識別情報を用いて,前記コンテンツ識別情報を含む情報が示すコンテンツを装置に与え,前記コンテンツ識別情報を含む情報に従って前記装置に与えた前記コンテンツに関する情報を保持させるように構成されるコンテンツ管理手段と, を備え, 前記コンテンツ管理手段は,サーバのコンテンツ識別情報を含む情報と,装置内の前記情報とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別情報を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除するシステム。 [相違点1] “データベース”に関して, 本件補正発明においては,「複数の要素を装置の階層構造として記憶し,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは前記装置を表すデータベース」であるのに対して, 引用発明においては,「クライアントコンピュータに関する情報を格納した配布先定義ファイル」は,「データベース」とは別に有しており,「クライアントコンピュータ」の「階層構造」に関しては言及されていない点。 [相違点2] “コンテンツ識別情報を含む情報”に関して, 本件補正発明においては,「データベース内の階層構造を参照して,装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムまたは前記装置のユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィール」であるのに対して, 引用発明においては,「ファイルの属性情報」に,「データ・ファイル」を“識別する情報”が含まれる点,及び,“複数のソフトウェア”に関する情報が含まれる点には言及されていない点。 [相違点3] “サーバ”に関して, 本件補正発明においては,「前記装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続されたときに生成する」ものであるのに対して, 引用発明においては,「ファイルの属性情報」をどのタイミングで作成するかについても,特に言及されていない点。 [相違点4] “コンテンツ管理手段”に関して, 本件補正発明においては,「装置管理プログラムは,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受ける」ものであるのに対して, 引用発明においては,「配布ツールは」,「ファイルの属性情報」を,「サーバから取得」するものであるが,該「ファイルの属性情報」が,「後続の」ものである点については,言及されていない点。 (4)相違点についての当審の判断 ア.[相違点1]について 原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開平09-069076号公報(1997年3月11日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)に, H.「【0031】以上によって,端末(1)(クライアント2)が所定のサーバ4に接続して端末Noに該当する端末環境情報のダウンロードを受けてファイル3に保存し,このファイル3に保存した端末環境情報(起動する業務プログラム,プトトコル,アドレス情報など)に従い,指定された業務プログラムを起動し,指定されたプロトコル,指定されたアドレス,指定されたサーバやホストに接続してデータの送受信を行い,業務処理を行うことが可能となる。この際,端末毎の端末環境情報を一元管理し,端末増設に伴う環境設定,一斉環境変更などを簡易に行うことが可能となる。 【0032】図3は,本発明の端末環境情報例を示す。図3の(a)は,端末環境情報の構成例を示す。図示のように,階層化してファイル5に登録した様子を表す,右側に記載したように,端末個別情報と,部門個別情報とを分けている。各端末の端末環境情報は,自身の端末の端末Noの端末個別情報と,属する部門部門個別情報とを合わせたものである。」(下線は,当審にて説明の都合上附加したものである。) と記載されているように,「端末」(本件補正発明における「装置」に相当)に関する情報を「階層化」して管理することは,本願の原出願の第1国出願前においても,当業者には知られた技術事項であり,引用刊行物2に記載の発明においては,「装置」が「プログラム」を取得する点については,特に言及されていないが,プログラムを制御する情報を取得する点については示されているので,引用刊行物2に記載の発明における「端末環境情報」は,本件補正発明における「装置のユーザが使用するデータ・ファイル」に相当するものであるから,該「端末環境情報」も「コンテンツ」と言い得るものである。 そうすると,引用発明と,引用刊行物2に記載の発明とは, “装置が,サーバからコンテンツ取得する”点で共通するので,引用発明における「ファイルの属性情報」を,引用発明における「クライアントコンピュータ」が階層構造をなしている場合に,引用刊行物2に記載の発明における技術を採用して,“階層構造として記憶する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,相違点1は,格別のものではない。 イ.[相違点2]について 引用発明においては,「ファイルの属性情報」は,ファイル毎に管理されているものと解されるが,複数の「クライアントコンピュータ」が,異なる「ソフトウェア」を必要とする場合に,該「クライアントコンピュータ」が必要する「ソフトウェア」に関する「ファイルの属性情報」を,「クライアントコンピュータ」毎にまとめて管理するよう構成することに,格別の困難は見出せない。 よって,相違点2は,格別のものではない。 ウ.[相違点3]について 「ファイルの属性情報」をどのタイミングで生成するかについては,システムの使用者が必要に応じて,適宜設定し得る程度の事項である。 よって,相違点3は,格別のものではない。 エ.[相違点4]について 引用発明においても,上記「(3)本件補正発明と,引用発明との対比」のエ.で検討したように,「クライアントコンピュータ」側には存在するが,サーバ側には存在しない「ディレクトリー」がある場合が示されており,引用発明の構成から,該「ディレクトリー」は,当初は,「クライアントコンピュータ」と,「サーバ」の両方に存在していたが,「サーバ」側の更新によって,該「ディレクトリー」が存在しなくなったものである。 したがって,引用発明に明文の記載はないものの,このとき比較される「サーバ」側の「ファイルの属性情報」が,“更新されたファイルの属性情報”,即ち,“後続のファイルの属性情報”である。 よって,引用発明においても,“後続のファイルの属性情報”を用いるよう構成することが示されていると言える。 よって,相違点4は,表現上の差異であって,格別のものではない。 上記で検討したごとく,相違点1?相違点4はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 (5)独立特許要件むすび 以上のとおりであるから,本件補正発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際特許を受けることができない。 3.補正却下むすび したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成25年6月17日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成25年1月28日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次に記載のとおりのものである。 「装置へのコンテンツの分配を管理するシステムであって, 複数の要素を装置の階層構造として記憶し,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは前記装置を表すデータベースと, 前記データベース内の前記階層構造を参照して,前記装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムと前記ユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールであって,前記装置を表す要素に関連する任意のコンテンツ識別子と前記階層構造内でその要素が依存する要素に関連する任意のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィールを生成するサーバと, 前記装置に関連し,前記サーバから前記プロフィールを受け,前記プロフィール内のコンテンツ識別子を用いて前記プロフィールが示すコンテンツを前記装置に与え,前記プロフィールに従って前記装置に与えた前記コンテンツを識別する記録を保持させるように構成されている装置管理プログラムと, を備え, 前記装置管理プログラムは,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受けると,前記後続のプロフィール内のコンテンツ識別子と前記記録とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別子を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除する前記システム。」 第4.引用刊行物に記載の発明 一方,原審拒絶理由に引用された,特開平10-124419号公報(上記「第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物記載の発明」において,「引用刊行物1」としたものに同じ)には,上記「第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物記載の発明」において認定したとおりの引用発明が記載されているものと認める。 第5.本願発明と引用発明との対比 本願発明は,上記「第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定」において検討した「本件補正発明」の発明特定事項である, 「装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムまたは前記装置のユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィール」, を, 「装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムと前記ユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィール」, とし,同じく,本件補正発明における発明特定事項である, 「装置のプロフィールを定期的な間隔でまたは前記装置がネットワークに接続されたときに生成するサーバ」, を, 「装置のプロフィールを生成するサーバ」, としたものであるから,上記「第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)本件補正発明と,引用発明との対比」おいて検討した事項を踏まえると,本願発明と,引用発明との一致点,及び,相違点は次のとおりである。 [一致点] 装置へのコンテンツの分配を管理するシステムであって, コンテンツ識別情報を含むデータベースと, 前記コンテンツ識別情報を含む情報を生成するサーバと, 前記サーバからの前記コンテンツ識別情報を含む情報内のコンテンツ識別情報を用いて,前記コンテンツ識別情報を含む情報が示すコンテンツを装置に与え,前記コンテンツ識別情報を含む情報に従って前記装置に与えた前記コンテンツに関する情報を保持させるように構成されるコンテンツ管理手段と, を備え, 前記コンテンツ管理手段は,サーバのコンテンツ識別情報を含む情報と,装置内の前記情報とを比較して,まだ前記装置に与えられていない新しいコンテンツと今後は前記装置に与えられない古いコンテンツとを決定し,前記関係するコンテンツ識別情報を用いて前記新しいコンテンツを前記装置に与え,前記古いコンテンツを削除するシステム。 [相違点a] “データベース”に関して, 本願発明においては,「複数の要素を装置の階層構造として記憶し,コンテンツ識別子を前記階層構造内の各要素に関連付けることができ,前記要素の1つは前記装置を表すデータベース」であるのに対して, 引用発明においては,「クライアントコンピュータに関する情報を格納した配布先定義ファイル」は,「データベース」とは別に有しており,「クライアントコンピュータ」の「階層構造」に関しては言及されていない点。 [相違点b] “コンテンツ識別情報を含む情報”に関して, 本願発明においては,「データベース内の階層構造を参照して,装置に与えられ前記装置で実行される少なくとも一つのアプリケーション・プログラムまたは前記装置のユーザが使用するデータ・ファイルを含むコンテンツを示す複数のコンテンツ識別子を含む前記装置のプロフィール」であるのに対して, 引用発明においては,「ファイルの属性情報」に,「データ・ファイル」を“識別する情報”が含まれる点,及び,“複数のソフトウェア”に関する情報が含まれる点には言及されていない点。 [相違点c] “コンテンツ管理手段”に関して, 本願発明においては,「装置管理プログラムは,更に,前記サーバから後続のプロフィールを受ける」ものであるのに対して, 引用発明においては,「配布ツールは」,「ファイルの属性情報」を,「サーバから取得」するものであるが,該「ファイルの属性情報」が,「後続の」ものである点については,言及されていない点。 第6.相違点についての当審の判断 本願発明と,引用発明との[相違点a],[相違点b],及び,[相違点c]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1],[相違点2],及び,[相違点4]と同じ内容のものであるから,上記「第2.平成25年6月17日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(4)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-31 |
結審通知日 | 2014-04-01 |
審決日 | 2014-04-30 |
出願番号 | 特願2010-283610(P2010-283610) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 毅 |
特許庁審判長 |
山崎 達也 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 石井 茂和 |
発明の名称 | 装置へのコンテンツの分配を管理するシステムと方法 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |