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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1292374
審判番号 不服2013-19016  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-01 
確定日 2014-09-30 
事件の表示 特願2010-280460号「脳ペースメーカー及びそれに利用した電極」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月15日出願公開、特開2012-50802号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I 手続の経緯
本願は、平成22年12月16日(パリ条約に基づく優先権主張 平成22年8月31日、中国)の出願であって、拒絶理由通知に指定された期間内に平成24年12月17日付けの手続補正書により特許請求の範囲について補正がなされたところ、平成25年6月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。

II 平成25年10月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年10月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「【請求項1】
少なくとも一本の電極線を備える脳ペースメーカーに利用した電極において、
単一の前記電極線は、本体及び絶縁層を含み、
前記絶縁層は前記本体の外表面に被覆され、前記本体の一つ端部が前記絶縁層から露出し、
露出した前記端部が人体の皮下に植込まれて用いられ、電気刺激を伝達するように患者の細胞に接触して構成され、
前記本体は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤを含むことを特徴とする脳ペースメーカーに利用した電極。」(下線部は補正個所を示す。)

2 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「端部」について、「人体の皮下に植込まれて用いられ、」との限定を付加するものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
また、補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明とが、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有するものであり、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)、以下に検討する。

3-1 引用例の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特表2010-504128号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1-1)「【請求項14】
植込み型装置であって:
組立体ブロックと;
該組立体ブロックから放射状に延びる複数のリードと、
を有し、
該複数のリードの各々は、少なくとも1つの電極を包含し、該電極は、三次元空間内において分布される、
装置。」
(1-2)「【0001】
本発明は、電極装置に係り、より特には、植込み型の多電極(複数電極)装置、及びそのカプセル化及び植え込みに対する装置に係る。」
(1-3)「【0004】
・・・図1を参照すると、個人100の脳110の標的範囲112は、脳110において外科的に植え込まれるリード120によって運ばれる1つ又はそれより多くの電極122を介して電気的に刺激される。したがって、かかる治療は、一般的に脳深部電気刺激法(DBS)と称される。電気パルスは、典型的には、個人の胸において植え込まれるペースメーカー状の神経刺激器130を使用して、植込み型装置122に対して供給され、個人の皮膚下において信号ワイヤ128によって接続される。」
(1-4)「【0007】
本発明は、植込み型多電極装置、及び関連される方法及び器具を与える。一実施例において、本発明は、植込み型装置を有し、該装置は、組立体ブロック、及び組立体ブロックから放射状に延びる複数のリードを有する。該複数のリードの各々は、少なくとも1つの電極を包含し、該電極は、三次元空間内において分布される。組立体ブロックは、植込み組織内において組立体ブロックを固定するよう返し部を有する。」
(1-5)「【0017】
・・・、本発明は、埋込み型の多電極装置を与える。図3A-Cは、本発明に従った実例的装置の全体図及び詳細図である。図3A中、装置300は、組立体ブロック320及び複数の可撓性のリード340,342,344,346,348を有する。組立体ブロック320からは、1つ又はそれより多くのリードワイヤ328が延在し、複数のリードは、三次元空間において分布される。・・・」
(1-6)「【0019】
より「散開された(fanned out)」三次元分布において複数のより小さなリードを使用することによって、標的範囲312の体積は、既知の装置を使用して可能であるよりも更に正確に一致され得る。即ち、本発明における複数のより小さなリードは、既知の単一リード装置と略同一の最大電力(power)を送ることができる一方、複数のリードのより正確な配置は、より少ない電力の使用を可能にする。加えて、各リードは、1つ又はそれより多くの電極を有し得る。例えば、図3Bに示される通り、リード342は、その遠位端部に近接して単一電極342Aを有する。これに対して、図3Cは、長さに沿って分布される3つの電極346A-Cを有するリード346の詳細図である。上述された通り刺激信号を送る一方、1つ又はそれより多くの電極は、電極が植え込まれる範囲における神経刺激のレベルを測定及び/又は記録するよう代替的に使用され得る、ことが認識されるべきである。」
(1-7)「【0020】
上述された通り、本発明の複数の電極は、標的範囲に対してより近いため、(同一の臨床効果を達成するための)刺激振幅は、既知の電極装置に対するものより小さい。・・・」
(1-8)「【0023】
図3Aにおいて示される通り、組立体ブロック320は、個人の脳組織内において組立体ブロック320を固定するよう1つ又はそれより多くの返し部(barbs)350,352を任意で有し得る。一実施例において、1つ又はそれより多くの返し部は、植込み中、組立体ブロック320に対して折り畳まれるよう、あるいは組立体ブロック320内に包含されるよう適合され得、装置300が適所になり次第、組立体ブロック320から突出する。・・・」
(1-9)図3Bの記載から、リード342の先端に単一電極342Aが配置されていることが窺える。

上記(1-3)の「電気パルスは、典型的には、個人の胸において植え込まれるペースメーカー状の神経刺激器130を使用して、植込み型装置122に対して供給され、個人の皮膚下において信号ワイヤ128によって接続される。」との記載からみて、引用例1には、埋め込み型装置122、信号ワイヤ128及び神経刺激器130を備えた装置が記載されている(以下、当該装置を「神経刺激装置」という。)。
上記(1-4)の「本発明は、植込み型装置を有し、該装置は、組立体ブロック、及び組立体ブロックから放射状に延びる複数のリードを有する。」との記載と上記(1-5)の「図3A中、装置300は、組立体ブロック320及び複数の可撓性のリード340,342,344,346,348を有する。」との記載を併せてみて、埋め込み型装置として、組立体ブロック320及び複数の可撓性のリード340,342,344,346,348を有する装置300が記載されている。そして、この埋め込み型装置としての装置300は、上記(1-3)の「電気パルスは、典型的には、個人の胸において植え込まれるペースメーカー状の神経刺激器130を使用して、植込み型装置122に対して供給され、個人の皮膚下において信号ワイヤ128によって接続される。」との記載における植込み型装置122に対応すると認められるから、神経刺激装置に利用されるものといえる。
したがって、引用例1には、「複数のリード340,342,344,346,348を備える神経刺激装置に利用した装置300」が記載されている。

上記(1-5)の「組立体ブロック320からは、1つ又はそれより多くのリードワイヤ328が延在し、」との記載、上記(1-6)の「本発明における複数のより小さなリードは、既知の単一リード装置と略同一の最大電力(power)を送ることができる」及び「図3Bに示される通り、リード342は、その遠位端部に近接して単一電極342Aを有する。」との記載を総合してみて、リード342は、組立体ブロック320から遠位端部に近接して設けられた単一電極342Aまで電力を伝達する部材(以下、「電力伝達部材」という。)を有するといえる。
また、上記(1-3)の「個人100の脳110の標的範囲112は、脳110において外科的に植え込まれるリード120によって運ばれる1つ又はそれより多くの電極122を介して電気的に刺激される。」との記載及び上記(1-9)の図示内容とを併せてみて、電力伝達部材は、その一端部に単一電極342Aを有し、当該電力伝達部材の外表面に絶縁層が被覆され、一方、単一電極342Aの外表面に当該絶縁層が被覆されずに露出しているといえる。
したがって、引用例1には、「電力伝達部材と単一電極342Aと絶縁手段を含み、前記絶縁層は電力伝達部材の表面に被覆され、前記絶縁層から露出した単一電極342Aが前記電力伝達部材の一端部に配置され」るようにしたリード342が記載されている。
また、単一電極342Aは、個人100の脳110に埋め込まれて用いられ、電気的に刺激するように標的範囲112に配置されているといえる。

以上から、引用例1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「複数のリード340,342,344,346,348を備える神経刺激装置に利用した装置300において、
リード342は、電力伝達部材と単一電極342Aと絶縁層を含み、
前記絶縁層は電力伝達部材の外表面に被覆され、前記絶縁層から露出した単一電極342Aが前記電力伝達部材の一端部に配置され、
露出した単一電極342Aが個人100の脳110に埋め込まれて用いられ、電気的に刺激するように標的範囲112に配置される、
神経刺激装置に利用した装置300。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2009/065171号(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(2-1)「TECHNICAL FIELD
This invention relates to implants having electrodes and/or contacts for conducting electrical signals and/or delivering energy directly to one or more parts of a patient's body.(技術分野
この発明は、患者の体の1つ又はそれ以上の部分に直接的に電気信号を伝える及び/又はエネルギーを供給する電極及び/又は接点を有するインプラントに関するものである。)(和文は当審による訳文。以下同様。)」(1欄3?5行)
(2-2)「DETAILED DESCRIPTION
The following describes a number of new techniques for manufacturing an electrode array using carbon nanotubes (CNTs), as well as an implantable medical lead for a cochlear implant comprising an electrode array that is manufactured according to the various techniques as described by the present invention.
An electrode array will be understood to include one or more electrodes. Each electrode will be understood to include an electrode contact and an elongate element, such as a conductive filament or wire or strand of conductive filaments or wires (collectively referred to herein as wire) that is electrically connected to the electrode contact.
According to one aspect of the present invention, the electrodes are formed from at least one or more CNTs.(詳細な記述
次に、この発明により記述されるような種々の技術に従って生産される電極配列を構成する人工内耳のための移植可能な医学的リードと同様に、カーボンナノチューブ(CNTs)を用いた電極配列を生産する多くの新たな技術を記述する。
.電極配列は1つ又はそれ以上の電極を含むことが理解されるであろう。それぞれの電極は、ひとつの電極コンタクトと、電極コンタクトに接続された、電導性フィラメント又はワイヤあるいは電導性フィラメントまたはワイヤの束、又は電極コンタクトに電気的に接続されたワイヤ(まとめて、ここではワイヤと呼ばれる。)のような細長い要素とを含むことが理解されるであろう。
この発明の1つの局面によれば、電極は少なくともひとつ又はそれ以上のCNTsから形成される。)」(5欄1?12行)

上記(2-1)及び(2-2)の記載を併せてみて、引用例2には、人工内耳のリードのようなインプラントに用いられる導電性ワイヤとしてカーボンナノチューブの束を用いること、すなわち、人体内に配置される電力伝達手段を複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤとする発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。

(3)同じく原査定の拒絶の理由に例示された、特表2007-521912号公報(以下、「周知例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(3-1)「【0001】
本発明は、医療用途に用いる延伸させたストランド充填管ワイヤに関し、特には電圧をヒト組織に印加する必要がある場合のかかるワイヤに関する。」
(3-2)「【0022】
図2Aを参照すると、本発明により形成したリードを利用した装置の1例を説明している。埋込み型心臓細動除去器(ICD)32には、心拍数が不規則になると、心臓にショックを与えるのに使用する細長いリードを含む。・・・リード43によりICD 32の長さを伸長させ、リード43には3本のワイヤ44を含む。1本のワイヤ44の端部46にはかえし42をその上に実装するが、該端部は露出させる。ワイヤ端部46をセンサとして機能させて、心臓の活動を監視し、必要に応じて心臓にショック療法を開始させる。
【0023】
図2A及び図2Bを参照すると、リード43を絶縁材料48の層で被覆するが、該絶縁材料を任意の適当な生体適合性のある材料、例えば、ウレタン等から形成して、電気的に導体を絶縁してもよい。絶縁材料48を、リード43の長さに、ワイヤ端部36及び接触部分50A及び50Bを除き、十分に延在させる。リード43の1本のワイヤ44を、端部46及び接触部分50A及び50Bで体内組織に接触させ、それにより体内組織と接合させて、必要に応じて電気ショックを提供する。・・・」

上記(3-1)及び(3-2)の記載を併せてみて、周知例には、埋込み型心臓細動除去器(ICD)32の、3本のワイヤ44を含むリード43を、ワイヤ端部36及び接触部分50A及び50Bを除き絶縁材料48で被覆することにより、リード43のワイヤ44を、端部46及び接触部分50A及び50Bで体内組織に接触させ、それにより体内組織と接合させて、必要に応じて電気ショックを提供すること、すなわち、電力伝達手段の一端部部分が絶縁層から露出する構成について、前記電力伝達手段の導電性のワイヤそれ自体の一つの端部が前記絶縁層から露出する技術が記載されている。

3-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「リード340,342,344,346,348」は、本願補正発明の「電極線」に相当し、以下同様に、「神経刺激装置」は「脳ペースメーカー」に、「装置300」は「電極」に、「絶縁層」は「絶縁層」に、それぞれ相当する。
引用発明の「電力伝達部材と単一電極342A」とからなるものと本願補正発明の「本体」とは、「電力伝達手段」である限りにおいて一致する。
引用発明の「リード342は、電力伝達部材と単一電極342Aと絶縁層を含み」と本願補正発明の「単一の前記電極線は、本体及び絶縁層を含み」とは、「単一の前記電極線は、電力伝達手段及び絶縁層を含み」である限りにおいて一致する。
引用発明の「前記絶縁層は電力伝達部材の外表面に被覆され」と本願補正発明の「前記絶縁層は前記本体の外表面に被覆され」とは、「前記絶縁層は前記電力伝達手段の外表面に被覆され」である限りにおいて一致する。
引用発明の「前記絶縁層から露出した単一電極342Aが前記電力伝達部材の一端部に配置され」と本願補正発明の「前記本体の一つ端部が前記絶縁層から露出し」とは、「前記電力伝達手段の一端部部分が前記絶縁層から露出し」である限りにおいて一致する。
引用発明の「露出した単一電極342Aが個人100の脳110に埋め込まれて用いられ、電気的に刺激するように標的範囲112に配置され」と本願補正発明の「露出した前記端部が人体の皮下に植込まれて用いられ、電気刺激を伝達するように患者の細胞に接触して構成され」とは、「露出した前記端部部分が人体の皮下に植込まれて用いられ、電気刺激を伝達するように患者の細胞に接触して構成され」である限りにおいて一致する。

以上から、両発明は、
「少なくとも一本の電極線を備える脳ペースメーカーに利用した電極において、
単一の前記電極線は、電力伝達手段及び絶縁層を含み、
前記絶縁層は前記電力伝達手段の外表面に被覆され、前記電力伝達手段の一端部部分が前記絶縁層から露出し、
露出した前記端部部分が人体の皮下に植込まれて用いられ、電気刺激を伝達するように患者の細胞に接触して構成される脳ペースメーカーに利用した電極。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
電力伝達手段について、本願補正発明は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤを含むものであるのに対し、引用発明はそのようなワイヤを含むかどうか不明な点。

(相違点2)
電力伝達手段の一端部部分が絶縁層から露出する構成について、本願補正発明は、本体の一つ端部が絶縁層から露出するものであるのに対し、引用発明は、絶縁層から露出した単一電極342Aが電力伝達部材の一端部に配置されるものである点。

3-3 判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
上記3-1(2)欄に記載したとおり、引用例2には、引用例2発明(人体内に配置される電力伝達手段を複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤとする発明)が記載されている。
したがって、引用発明に引用例2発明を適用し、引用発明の人体内に配置される電力伝達手段である電力伝達部材と単一電極342Aをカーボンナノチューブからなるものとすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

(相違点2について)
電力伝達手段の一端部部分が絶縁層から露出する構成について、前記電力伝達手段の導電性のワイヤそれ自体の一つの端部が前記絶縁層から露出するものは周知技術である(必要であれば、上記3-1(3)欄の記載を参照。)。
したがって、引用発明の電力伝達手段の一端部部分が絶縁層から露出する構成について、電力伝達部材の一端部が絶縁層から露出するものとすることは、当業者が必要に応じて適宜容易になし得る程度の事項にすぎない。

また、本願補正発明による効果も、引用発明、引用例2発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成24年12月17日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも一本の電極線を備える脳ペースメーカーに利用した電極において、
単一の前記電極線は、本体及び絶縁層を含み、
前記絶縁層は前記本体の外表面に被覆され、前記本体の一つ端部が前記絶縁層から露出し、
露出した前記端部が電気刺激を伝達するように患者の細胞に接触して構成され、
前記本体は、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤを含むことを特徴とする脳ペースメーカーに利用した電極。」

IV 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II3-1に記載したとおりである。

V 対比・判断
本願発明は、前記IIの「1 補正後の本願発明」欄の本願補正発明から、「端部」の限定事項である「人体の皮下に植込まれて用いられ、」との特定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記IIの「3-3 相違点の判断」欄に記載したとおり、引用発明、引用例2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-02 
結審通知日 2014-05-07 
審決日 2014-05-21 
出願番号 特願2010-280460(P2010-280460)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61N)
P 1 8・ 121- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 宏和  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 松下 聡
高木 彰
発明の名称 脳ペースメーカー及びそれに利用した電極  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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