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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G01N 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する G01N |
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管理番号 | 1292941 |
審判番号 | 訂正2014-390103 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2014-08-13 |
確定日 | 2014-10-03 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第4769987号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4769987号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第4769987号(以下「本件特許」という。)は,特許法第36条の2第1項に規定された外国語書面を願書に添付して平成21年1月26日(パリ条約による優先権主張,平成20年12月1日,台湾)になされた出願であって,平成21年4月15日に翻訳文が提出され,平成23年7月1日に特許権の設定登録がなされ,その後,平成26年8月13日に訂正審判の請求がなされたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は,本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める,との審決を求めるものである。 第3 訂正の内容 本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。 本件特許の明細書の【0021】に記載された「さらに、反応ガスチャンバ140に供給される反応ガス170は、水、酸素、または他の適切な気体であってよい。」とあるのを,「さらに、反応ガスチャンバ140に供給される反応ガス170は、空気、酸素、または他の適切な気体であってよい。」と訂正する。なお,下線は訂正した箇所である。 第4 当審の判断 1 訂正の目的 (1)願書に添付された外国語書面のうちの外国語明細書の [0021] には,本件訂正に係る明細書の記載「さらに、反応ガスチャンバ140に供給される反応ガス170は、水、酸素、または他の適切な気体であってよい。」に対応する記載として,次のとおり記載されている。 「Besides, the reactive gas 170 is supplied to the reactive gas chamber 140 is air, oxygen, or other suitable gases.」 (2)したがって,本件訂正は,「air」を「水」と誤訳したものを「空気」に訂正しようとするものである。 よって,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤訳の訂正」を目的とするものである。 2 外国語書面に記載した事項の範囲内 「水」が「空気」の誤訳であることは明らかであるから,本件訂正は願書に添付された外国語書面に記載した事項の範囲内でなされたものであり,特許法第126条第5項の規定に適合する。 3 特許請求の範囲の拡張又は変更 本件訂正が特許請求の範囲に与える影響について検討する。 まず,特許請求の範囲の請求項1?11の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 計測対象の燃料の濃度の計測装置であって、 触媒層と、 前記触媒層で被覆される拡散層と、 前記計測対象の燃料を含有する燃料チャンバと、 反応ガスを含有する反応ガスチャンバと、 前記反応ガスチャンバ上に配設されたセンサと、を備え、 前記拡散層は、前記燃料チャンバと前記触媒層との間に配設され、 前記触媒層は、前記反応ガスチャンバと前記拡散層との間に配設され、かつ前記反応ガスチャンバに直接接続され、 前記燃料チャンバ内の前記計測対象の燃料は、前記拡散層から前記触媒層へと拡散し、 前記計測対象の燃料と前記反応ガスとの燃焼反応は、前記触媒層内で行われて、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスを消費して気体生成物を生成し、 前記センサは、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの濃度、または、前記気体生成物の濃度を計測する、計測装置。 【請求項2】 前記センサは、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの酸素濃度を計測する酸素センサを含む、請求項1に記載の計測装置。 【請求項3】 前記センサは、前記反応ガスチャンバ内の前記気体生成物の二酸化炭素濃度を計測する二酸化炭素センサを含む、請求項1に記載の計測装置。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の計測装置と、 燃料電池モジュールと、 燃料を貯留する燃料貯留タンクと、 前記燃料貯留タンクから前記計測装置および前記燃料電池モジュールへ燃料を送る燃料循環装置と を備える燃料電池システム。 【請求項5】 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の計測装置を提供する段階と、 計測対象の燃料を前記燃料チャンバに供給する段階と、 前記反応ガスチャンバに反応ガスを供給する段階と、 前記反応ガスチャンバに供給する前記反応ガスの量を減少させて、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの消費率または前記気体生成物の生成率に応じて、前記計測対象の燃料の濃度を推定する段階と、を備える、燃料の濃度の計測方法。 【請求項6】 前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの消費率に応じて、前記計測対象の燃料の濃度を推定する段階は、 前記反応ガスの濃度を前記センサにより直接計測する段階と、 前記反応ガスの濃度と時間との関係に応じて、前記計測対象の燃料の濃度を推定する段階と、を含む、請求項5に記載の計測方法。 【請求項7】 前記計測対象の燃料の濃度は、反応ガスの濃度が所定値に減少する時間に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項8】 前記計測対象の燃料の濃度は、反応ガスの濃度の減少率に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項9】 前記計測対象の燃料の濃度は、気体生成物の濃度が所定値に増加する時間に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項10】 前記計測対象の燃料の濃度は、気体生成物の濃度の増加率に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項11】 前記反応ガスチャンバに供給する前記反応ガスの量の調節は、 前記反応ガスチャンバに供給する前記反応ガスを減少させることで行う、請求項5に記載の計測方法。」 次に,本件訂正は,上記第3のとおりであり,その訂正に係る明細書【0021】の記載箇所は,反応ガスの例を示したものと解される。 したがって,本件訂正は,請求項1ないし11に特定された「反応ガス」の一例として示された「水」を「空気」に訂正する点で,特許請求の範囲と関連する。 ここで,特許請求の範囲には,「反応ガス」を「水」又は「空気」に限定するような記載はない。 また,本件訂正に係る明細書【0021】の記載は「反応ガス」を例示するのみであるから,これは特許請求の範囲に特定された「反応ガス」を限定するものではない。 さらに,明細書の【0026】に「本実験例においては、燃料はメタノール水溶液であり、反応ガスは空気であり、センサは、酸素濃度計測用センサであり、反応ガスチャンバの容積は約5立方センチメータであり、メタノール水溶液の濃度は1%、4%、7%、および10%である。」と記載されており,これは「反応ガス」として「空気」を用いた実験例を示すものと解される。したがって,「反応ガス」として「空気」を用いる例は,本件訂正前の明細書にも記載されていたことである。 また,「反応ガス」として「水」を用いないことは技術常識からも明らかである。 したがって,本件訂正は,特許請求の範囲に記載された「反応ガス」の解釈に影響を及ぼすものではない。 よって,本件訂正は,特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 4 独立特許要件 本件訂正後における請求項1ないし11に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。 よって,本件訂正は,特許法第126条7項の規定に適合しないものではない。 第5 むすび 以上より,本件訂正審判の請求は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 燃料の濃度の計測装置および方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、燃料の濃度の計測装置および方法に係り、より具体的には、簡単且つ正確な燃料の濃度の計測装置および方法に係る。 【背景技術】 【0002】 産業の急速な発展に伴い、石炭、石油、および天然ガスなどの従来のエネルギー源の消費が益々高くなっており、天然エネルギー源の備蓄には限りがあるので、従来のエネルギー源の代替となる新たな代替エネルギー源を研究開発することもあって燃料電池は重要且つ実践的な選択肢になっている。 【0003】 簡潔に言うと、燃料電池は実質的に水電解の逆反応を利用して化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。プロトン交換膜燃料電池は、膜電極接合体(MEA)と2枚の電極板とを主に含む。MEAは、プロトン伝導膜、アノード触媒層、カソード触媒層、アノードガス拡散層(GDL)、およびカソードGDLを含む。アノード触媒層およびカソード触媒層は、それぞれ、プロトン伝導膜の2つの面に配設され、アノードGDLおよびカソードGDLは、それぞれ、アノード触媒層およびカソード触媒層に配設される。さらに、2枚の電極板は、それぞれがアノードGDLおよびカソードGDLに配設されるアノードおよびカソードを含む。 【0004】 現在よく利用されるプロトン交換膜燃料電池は、直接メタノール型燃料電池(DMFC)であり、これは、燃料供給源としてメタノール水溶液を直接取り込み、メタノールと酸素との間の関連する電極反応により電流を生成する。DMFCの反応式を以下に記す。 アノード:CH_(3)OH+H_(2)O→CO_(2)+6H^(+)+6e^(-) カソード:3/2O_(2)+6H^(+)+6e^(-)→3H_(2)O 【0005】 従来のDMFCでは、DMFCの出力安定性は、アノードに伝導するメタノール水溶液の濃度に大きく影響される。アノードに伝導するメタノール水溶液の濃度が適切に制御されていない場合、DMFCの出力電力効率が不安定になるばかりでなく、膜電極接合体(MEA)もまた損失を被る場合がある。加えて、如何にしてアノードに伝導するメタノール水溶液の濃度を最適範囲に制御するかが、この分野での主要な研究開発課題である。 【0006】 燃料の濃度は以下のステップにより制御されうる。先ず、燃料の濃度をセンサにより直接計測し、計測された濃度値に基づいてDMFCに供給する燃料および水分の量を判断する。この方法は、既に、US6,589,671B1、US6,488,837、US2002/076589A1、US2003/0196913A1、およびWO01/35478に開示されている。US6,488,837およびUS2003/0196913A1に開示されている膜電極接合体(MEA)は、メタノール水溶液の濃度を直接計測するセンサとして利用されていることに注意されたい。上述の方法においては、計測精度は、燃料内の不純物により影響される。加えて、計測精度は、膜電極接合体(MEA)の経年劣化または不安定性によっても影響される。 【0007】 幾らかの先行技術(例えばUS6,698,278B2)では、燃料の濃度は、DMFCの温度および電流の計測により推定される。上述の方法においては、燃料の濃度はセンサを利用せずに計測される。しかし、US6,698,278B2に記載されている方法を様々な燃料電池システムに適用すると、燃料の濃度を推定するのに適した較正が必要となる。US6,589,679およびTW94119975がセンサを利用しない燃料の濃度計測法を開示している。 【0008】 メタノール水溶液は物理的特性(例えば、メタノール水溶液を通る音速、燃料の誘電率または密度、等)に関連するので、先行技術のなかには、メタノール水溶液の濃度を、メタノール水溶液を通る音速を計測することで推定したり、燃料の濃度を、燃料の誘電率または密度を計測することで推定したりしているものもある(TWI251954)。しかし、上述の濃度推定法に利用されるセンサは非常に高価であり、センサの精度は燃料の気泡に大いに影響される。従って、センサがサンプルする燃料は静的でなくてはならず、計測時には気泡がないことから、燃料の物理的特性を正確に計測するのは難しい。 【0009】 従来の燃料計測方法では、燃料の濃度の計測が困難である。加えて、計測コストが高く、計測精度が不安定である。故に、簡単で正確な燃料の濃度の計測方法の必要性が叫ばれている。 【発明の概要】 【0010】 本発明は、計測の際に安定性があり、コスト効率のよい燃料の濃度の計測装置に関する。 【0011】 本発明は、簡単で、低コストで、安定性のある、燃料の濃度の計測方法に関する。 【0012】 ここで具体例を示し幅広く記載するように、燃料の濃度の計測装置が提供される。燃料の濃度の計測装置は、触媒層と、拡散層と、燃料チャンバと、反応ガスチャンバと、センサとを備える。拡散層は触媒層に接続されている。燃料チャンバは、計測対象の燃料を含有するのに適している。拡散層は、燃料チャンバと触媒層との間に配設される。反応ガスチャンバは、反応ガスを含有するのに適している。触媒層は反応ガスチャンバと拡散層との間に配設され、燃料チャンバ内の計測対象の燃料は、拡散層を通り触媒層へ拡散して、計測対象の燃料と反応ガスとの燃焼反応が触媒層内で行われて、反応ガスチャンバ内の反応ガスを消費して気体生成物を生成する。センサが反応ガスチャンバ内に配設されて、反応ガスチャンバ内の反応ガスの濃度または気体生成物の濃度を計測する。 【0013】 ここで具体例を示し幅広く記載するように、燃料の濃度の計測方法が提供される。先ず、上述の燃料の濃度の計測装置が提供される。次に、計測対象の燃料を燃料チャンバに供給し、反応ガスを反応ガスチャンバに供給する。その後、反応ガスチャンバに供給する反応ガスの量を調節した後に反応ガスチャンバ内の反応ガスの消費率または気体生成物の生成率に応じて、計測対象の燃料の濃度を推定する。 【0014】 本発明の上述および他の目的、特徴、および利点の理解を促すべく、図面とともに幾らかの実施形態を以下に示す。 【図面の簡単な説明】 【0015】 図面を含めることで本発明のさらなる理解を促し、明細書に組み入れ、明細書の一部とする。図面は、本発明の実施形態を例示し、記載とともに参照することで、本発明の原理の理解を深めることができる。 【0016】 【図1A】本発明の第1実施形態による、燃料の濃度の計測方法の概略図である。 【図1B】本発明の第1実施形態による、燃料の濃度の計測方法の概略図である。 【0017】 【図2】燃料の濃度が1%、4%、7%、および10%のときの、酸素濃度と時間との間の関係を示す。 【0018】 【図3】燃料電池システムに利用される燃料の濃度の計測装置の概略図である。 【発明を実施するための形態】 【0019】 第1実施形態 図1Aおよび図1Bは、本発明の第1実施形態による、燃料の濃度の計測方法の概略図である。図1Aを参照すると、先ず、燃料の濃度の計測装置100が提供される。燃料の濃度の計測装置100は、触媒層110、拡散層120、燃料チャンバ130、反応ガスチャンバ140、およびセンサ150を含む。拡散層120は触媒層110に接続される。燃料チャンバ130は、計測対象の燃料160を含有するのに適している。拡散層120は、燃料チャンバ130と触媒層110との間に配設される。反応ガスチャンバ140は、反応ガス170を含有するのに適している。触媒層110は、反応ガスチャンバ140と拡散層120との間に配設される。センサ150は反応ガスチャンバ140上に配設されて、反応ガスチャンバ140内の反応ガス170の濃度を計測する。当業者であれば、様々な計測対象の反応ガス170について、それぞれ適切なセンサ150を選択することができる。本発明ではセンサ170の種類を特に限定しない。 【0020】 本発明においては、触媒層110の材料は、Pt触媒、高活性化触媒または粘着剤である。例えば、触媒層110の厚みは、1マイクロメータから50マイクロメータの間である。拡散層120の材料は、セラミック、ポリマー、または燃料(メタノール)が通過できる他の材料を含む。例えば、拡散層120の厚みは、10マイクロメータから1000マイクロメータの間である。加えて例えば、反応ガスチャンバ140の容積は、0.1立方センチメータから100立方センチメータの間である。反応ガスチャンバ140の容積は、計測対象の燃料160の濃度、および拡散層120の厚みまたは拡散係数に応じて修正が可能であることに留意されたい。上述の大きさは、単に例である。具体的には、これより高濃度の燃料160の計測においては、感度をより良好にする目的から、より大きい容積の反応ガスチャンバ140の利用が示唆される。反対に、より低濃度の燃料160の計測においては、計測時間を短くする目的から、より小さい容積の反応ガスチャンバ140の利用が示唆される。 【0021】 そして、計測対象の燃料160を、燃料の濃度の計測装置100内の燃料チャンバ130に供給し、燃料の濃度の計測装置100内の反応ガスチャンバ140に反応ガス170を供給する。本実施形態では、燃料チャンバ130に供給される燃料160は、濃度が不明なメタノール水溶液である。代替実施形態では、燃料チャンバ130に供給される燃料160は、エタノール水溶液またはギ酸水溶液などの他の種類の燃料であってもよい。当業者であれば、実際の要件に応じて、適切な燃料および触媒を選択できる。さらに、反応ガスチャンバ140に供給される反応ガス170は、空気、酸素、または他の適切な気体であってよい。燃料160および反応ガス170を燃料の濃度の計測装置100内に供給する際、燃料チャンバ130内の燃料160の一部が拡散層120を通って触媒層110へ拡散し、反応ガス170が触媒層110内にも侵入する。燃料160と反応ガス170との燃焼反応は、触媒層110内で行われて反応ガス170を消費し気体生成物(例えば二酸化炭素)を生成する。上述の燃焼反応式を以下に示す。 3/2O_(2)+CH_(3)OH→CO_(2)+2H_(2)O 【0022】 図1Bを参照すると、反応ガスチャンバ140に供給する反応ガス170の量を、切り替え弁(不図示)または反応ガス170の流量を制御することのできる他の部材により調節することで、反応ガスチャンバ140に供給する反応ガス170の量を低減することができる。好適な実施形態においては、燃料160の濃度計測を開始するときに、反応ガスチャンバ140への反応ガス170の供給を止める。触媒層110に到達する燃料160の単位時間当りの量は、計測対象の燃料160の濃度に比例しており、反応ガスチャンバ140での反応ガス170の消費率は、触媒層110に到達する燃料160の単位時間当りの量と関連する。故に、燃料160の濃度は、反応ガスチャンバ140内の反応ガス170の消費率を計測することで、推定可能である。具体的には、反応ガスチャンバ140に供給する反応ガス170を調節する(低減する、または止める)と、反応ガス170と燃料160との燃焼反応は、反応ガス170が徐々に消費されるよう触媒層110内で行われる。故に、燃料160の濃度は、反応ガスチャンバ140内の反応ガス170の消費率に応じて推定可能である。 【0023】 上述の実施形態において、センサ150を利用して反応ガス170の濃度を計測して、これにより反応ガス170の消費率を推定する。加えて、反応ガス170の消費率は気体生成物(例えば二酸化炭素)の生成率に比例しているので、気体生成物の濃度を計測するセンサは、気体生成物の生成率を推定するように適合されてよい。本実施形態においては、センサ150は、二酸化炭素濃度を計測するセンサである。このようにして、センサ150の出力に応じて二酸化炭素濃度の増加率を計算して、これにより燃料160の濃度を推定する。代替実施形態においては、二酸化炭素濃度が所定値に達する時間を利用することで、燃料160の濃度を推定することもできる。 【0024】 本実施形態では、反応ガスチャンバ140への反応ガス170の供給を止めると、反応ガスチャンバ140内の反応ガス170の濃度変化率(消費率)は、計測対象の燃料160に関連する度合いが高くなる。具体的には、燃料160が高濃度の場合、燃料チャンバ130から触媒層110へと拡散する燃料160の単位時間当たりの量が多くなる。このとき、反応ガス170の消費率は高い。反対に、燃料160が低濃度の場合、燃料チャンバ130から触媒層110へと拡散する燃料160の単位時間当たりの量は少ない。このとき、反応ガス170の消費率は低い。反応ガス170の反応ガスチャンバ140への供給を止めると、反応ガスチャンバ140内の反応ガス170の量は、反応ガスチャンバ140の容積に略等しい。 【0025】 計測対象の燃料160の濃度が反応ガス170の消費率に関連しているので、反応ガスチャンバ140内の反応ガス170の濃度はセンサ150により直接計測でき、燃料160の濃度を、反応ガス170の消費率に応じて迅速に推定することができる。 実験例 【0026】 本実験例においては、燃料はメタノール水溶液であり、反応ガスは空気であり、センサは、酸素濃度計測用センサであり、反応ガスチャンバの容積は約5立方センチメータであり、メタノール水溶液の濃度は1%、4%、7%、および10%である。 【0027】 図2は、燃料の濃度が1%、4%、7%、および10%のときの、酸素濃度と時間との間の関係を示す。図2を参照すると、メタノール水溶液の濃度が1%、4%、7%、および10%のときでは、反応ガスの消費率は非常に異なっている。加えて、同じ濃度のメタノール水溶液に対応する曲線同士は非常に近接しており、異なる濃度のメタノール水溶液に対応する曲線同士を見分けるのは容易である。故に、メタノール水溶液の濃度は、図2の曲線から容易且つ正確に推定することができる。 【0028】 本実験例においては、計測対象の燃料の濃度を、反応ガス濃度が所定値に減少する時間に応じて推定することができる。しかし、燃料の濃度の推定法は、上述の実施形態および実験例に限られない。反応ガス濃度の減少率に応じて、燃料の濃度を推定することも可能である。 第2実施形態 【0029】 図3は、燃料電池システムに利用される燃料の濃度の計測装置の概略図である。図3を参照すると、本発明の燃料電池システム200は、上述の燃料の濃度の計測装置100、燃料循環装置210、燃料貯留タンク220、および燃料電池モジュール230を含む。燃料循環装置210は、燃料貯留タンク220から燃料の濃度の計測装置100および燃料電池モジュール230へ、燃料を送るのに利用される。本実施形態においては、燃料電池モジュール230は、1以上の燃料電池ユニット232を含み、各燃料電池ユニット232は直接メタノール型燃料電池(DMFC)ユニットである。当業者であれば、実際の要件に応じて適切な燃料電池ユニット232を選択することができる。本発明では燃料電池の種類を特に限定しない。 【0030】 本発明はセンサを利用して反応ガスチャンバ内の反応ガス濃度または気体生成物の濃度を直接計測することで、反応ガスの消費率または気体生成物の生成率を推定しているので、計測対象の燃料の濃度を正確に判断することができる。従って、燃料の濃度の計測方法および計測装置は簡単で正確である。加えて、本発明の燃料の濃度の計測値はとても安定しており、燃料の流れ、燃料の気泡、燃料の不純物、膜電極接合体(MEA)の経年劣化等による影響を受けない。 【0031】 本発明を上述の実施形態に関して説明してきたが、当業者には明らかなように、本発明の精神から逸脱せずに、記載された実施形態の変形例を作成することが可能である。故に、本発明の範囲は、上述の詳細な記載によってではなく、以下に記す請求項により定義がなされる。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 計測対象の燃料の濃度の計測装置であって、 触媒層と、 前記触媒層で被覆される拡散層と、 前記計測対象の燃料を含有する燃料チャンバと、 反応ガスを含有する反応ガスチャンバと、 前記反応ガスチャンバ上に配設されたセンサと、を備え、 前記拡散層は、前記燃料チャンバと前記触媒層との間に配設され、 前記触媒層は、前記反応ガスチャンバと前記拡散層との間に配設され、かつ前記反応ガスチャンバに直接接続され、 前記燃料チャンバ内の前記計測対象の燃料は、前記拡散層から前記触媒層へと拡散し、 前記計測対象の燃料と前記反応ガスとの燃焼反応は、前記触媒層内で行われて、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスを消費して気体生成物を生成し、 前記センサは、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの濃度、または、前記気体生成物の濃度を計測する、計測装置。 【請求項2】 前記センサは、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの酸素濃度を計測する酸素センサを含む、請求項1に記載の計測装置。 【請求項3】 前記センサは、前記反応ガスチャンバ内の前記気体生成物の二酸化炭素濃度を計測する二酸化炭素センサを含む、請求項1に記載の計測装置。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の計測装置と、 燃料電池モジュールと、 燃料を貯留する燃料貯留タンクと、 前記燃料貯留タンクから前記計測装置および前記燃料電池モジュールへ燃料を送る燃料循環装置と を備える燃料電池システム。 【請求項5】 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の計測装置を提供する段階と、 計測対象の燃料を前記燃料チャンバに供給する段階と、 前記反応ガスチャンバに反応ガスを供給する段階と、 前記反応ガスチャンバに供給する前記反応ガスの量を減少させて、前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの消費率または前記気体生成物の生成率に応じて、前記計測対象の燃料の濃度を推定する段階と、を備える、燃料の濃度の計測方法。 【請求項6】 前記反応ガスチャンバ内の前記反応ガスの消費率に応じて、前記計測対象の燃料の濃度を推定する段階は、 前記反応ガスの濃度を前記センサにより直接計測する段階と、 前記反応ガスの濃度と時間との関係に応じて、前記計測対象の燃料の濃度を推定する段階と、を含む、請求項5に記載の計測方法。 【請求項7】 前記計測対象の燃料の濃度は、反応ガスの濃度が所定値に減少する時間に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項8】 前記計測対象の燃料の濃度は、反応ガスの濃度の減少率に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項9】 前記計測対象の燃料の濃度は、気体生成物の濃度が所定値に増加する時間に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項10】 前記計測対象の燃料の濃度は、気体生成物の濃度の増加率に応じて推定される、請求項6に記載の計測方法。 【請求項11】 前記反応ガスチャンバに供給する前記反応ガスの量の調節は、 前記反応ガスチャンバに供給する前記反応ガスを減少させることで行う、請求項5に記載の計測方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2014-09-24 |
出願番号 | 特願2009-13776(P2009-13776) |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(G01N)
P 1 41・ 852- Y (G01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 三木 隆 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
右▲高▼ 孝幸 三崎 仁 |
登録日 | 2011-07-01 |
登録番号 | 特許第4769987号(P4769987) |
発明の名称 | 燃料の濃度の計測装置および方法 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |