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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B42D
審判 全部無効 2項進歩性  B42D
管理番号 1293162
審判番号 無効2013-800089  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-05-24 
確定日 2014-11-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第4310416号発明「印刷物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4310416号(以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は3である。)の請求項1から請求項3に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。


第2 手続の経緯の概要
本件特許第4310416号に係る手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成16年 2月24日 特許出願(特願2004-48392号)
平成21年 3月19日 特許査定
平成21年 5月22日 特許第4310416号として設定登録
平成25年 5月24日 無効審判請求
平成25年 8月 9日 審判事件答弁書
平成25年 9月 9日 審理事項通知書
平成25年10月10日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成25年10月24日 口頭審理、口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年11月 7日 上申書(請求人)


第3 本件特許発明
本件特許第4310416号の請求項1から請求項3に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項3に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって,
中央面部(1)は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(4)が印刷されていること,
左側面部(2)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,
右側面部(3)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること,
当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が、前記中央面部(1)の裏面及び当該分離して使用するもの(4)に貼着していること
当該分離して使用するもの(4)の周囲に切り込みが入っていること、
からなることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記印刷物が広告、ダイレクトメールであることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記分離して使用するものが葉書、チケット、クーポン券であることを特徴とする請求項1記載の印刷物。」(以下、請求項1ないし請求項3に係る各発明を、それぞれ、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。なお、請求項2に係る発明は、自ら(請求項2)を引用することはあり得ないから、上記のとおり、請求項1のみを引用する従属項として認定した。)


第4 審判請求人の主張の概要及び証拠方法
1 無効審判請求の根拠
本件特許の請求項1に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証に記載された周知技術等から、あるいは、甲第1、2号証に記載された発明及び甲第4、5号証に記載された周知技術から当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許の請求項2、3に係る各特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術及び甲第5、6号証に記載された周知技術から、あるいは、甲第1、2号証に記載された発明及び甲第4?6号証に記載された周知技術から当業者が容易に発明することができたものであり、いずれも特許法第29条第1項第3号乃至同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである(審判請求書7頁)。

2 本件特許発明
(1)請求項1に係る発明
本件特許の請求項1に係る発明(本件特許発明1)は、以下の構成要件からなる。
A 左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって、
B 中央面部(1)は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(4)が印刷されていること、
C 左側面部(2)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,
D 右側面部(3)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること、
E 当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が、前記中央面部(1)の裏面及び当該分離して使用するもの(4)に貼着していること、
F 当該分離して使用するもの(4)の周囲に切り込みが入っていること、
G からなることを特徴とする印刷物。
(2)請求項2に係る発明
本件特許の請求項2に係る発明(本件特許発明2)は、以下の構成要件からなる。
H 前記印刷物が広告、ダイレクトメールであること
I を特徴とする請求項1又は2記載の印刷物。
(3)請求項3に係る発明
本件特許の請求項3に係る発明(本件特許発明3)は、以下の構成要件からなる。
J 前記分離して使用するものが葉書、チケット、クーポン券であること
K を特徴とする請求項1記載の印刷物(審判請求書7、8頁)。

3 先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明
(1)甲第1号証
甲第1号証(特開2000-158855号公報)には、以下の発明(引用発明1)が記載されている。
「通信情報を表示した用紙32の裏面32aに透明シート4を接着剤33で接着し、透明シート4を接着した用紙32の中央部分34を郵便はがきの大きさに確保し、その両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、その二葉40、42の先端40a、42aを突き合わせた状態で、二葉40、42の透明シート4、4を中央部分34の透明シート4を剥離可能に密着させた重ね合わせ郵便はがき30であって、
用紙32の中央部分34に所望形状の紙片(カードサイズ紙片)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れ、
カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し、その裏面20bに、イベントへの招待や新製品の紹介等の情報を表示することにより、イベントへの招待状や新製品を紹介した各種データ入りの小紙片として利用することができるようにし、
上記透明シート4、4に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成し、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにした重ね合わせ郵便はがき30。」(審判請求書12、13頁)
(2)甲第2号証
甲第2号証(実用新案登録第3070251号公報)には、以下の発明(引用発明2)が記載されている。
「用紙を2つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片2、4どうしをオープンタイプフィルム5により疑似接着してなるとともに、折畳み対向紙片2の内側面に有価証券情報7を印字し、その有価証券情報7の印字部を含む折畳み対向紙片2の一部に、これをプリペイドカード8として抜き取り可能とする加工を施してなるプリペイドカード付きシートS4であって、
上記加工は、有価証券情報7の印字部外周に極細のスリット9を切り込み、そのスリット9の深さは折畳み対向紙片4をその厚さ方向に貫通する深さとし、上記オープンタイプフィルム5に代えて糊状のものを適用したプリペイドカード付きシートS4。」(審判請求書17頁)

4 本件特許発明と先行技術発明との対比
(1)甲1に記載された発明(引用発明1)を主引用発明とした場合
ア 本件特許発明1
(ア)本件特許発明1と引用発明1との一致点及び相違点
a 構成要件Aについて
引用発明1は、本件特許発明1の構成要件Aを充足する(審判請求書24頁)。
b 構成要件Bについて
(a)甲1には、「重ね合わせ郵便はがき30は、第1実施の形態の重ね合わせ郵便はがき1と用紙2の折る位置だけを異ならせたものである。」(【0021】)と記載され、第1実施の形態の重ね合わせ郵便はがき1については、「…重ね合わせ郵便はがき1は、用紙2の略中央8で折り曲げた二葉10、12のうちの一方の片葉10に所望形状の紙片(例えば、通常のカードサイズの形状であり、以下「カードサイズ紙片」という)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れたものである。」(【0016】)と記載されているから、引用発明1の重ね合わせはがき30においても、用紙32の中央部分34にカードサイズ紙片20が形成されている。
また、カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し、その裏面20bに、イベントへの招待や新製品の紹介等の情報を表示することにより、イベントへの招待状や新製品を紹介した各種データ入りの小紙片として利用することができるものであるから(【0017】)、カードサイズ紙片20は、分離して使用するものであり、中央部分34に印刷されている。
したがって、引用発明1は、重ね合わせ郵便はがき30の中央部分34に、分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)が印刷され、本件特許発明1の構成要件Bを充足する(審判請求書24頁)。
(b)第1実施の形態の重ね合わせ郵便はがき1(以下「第1実施形態のはがき1」という。)においては、「カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し…」(段落【0017】)との配載や図1から明らかなように、カードサイズ紙片20が設けられた片葉10が、はがきの表面側(宛名を記載する面側)となるものである。
そして、第2実施形態のはがき30においては、二葉40、42に分割された面がはがきの裏面側となり、分割されていない中央部分34がはがきの表面側となる。
このことは、(審決注:○で囲まれた数字を、以下便宜上「○1」等と表記する。)○1分割された面がはがきの表面側になると、宛名が分割された面に跨って記載され(分割された狭い一方の面のみに宛名を記載するのは現実的でない)、分割された面を開いた後は、宛名が分割されその確認が困難になることや、○2第2実施形態のはがき30と同様の折り形態である甲第4号証の印字・印刷物の構造をはがきに適用した場合に、分割されていない第1紙面部10がはがきの表面側となること(同号証の第1図、第6図他参照)から明らかである。
これより、用紙2の折る位置を異ならせ、第1実施形態のはがき1を第2実施形態のはがき30とするに際し、第1実施形態の片葉10のカードサイズ紙片20は何ら影響を受けず、第2実施形態の中央部分34には、第1実施形態の片葉10と同様にカードサイズ紙片20が設けられることとなる。
したがって、第2実施形態のはがき30は、第1実施形態のはがき1と同様にカードサイズ紙片20を備えていることとなる(口頭審理陳述要領書3、4頁)。
(c)甲1の第1実施形態に、発明の本質的部分でないカードサイズ紙片に関する構成が記載されている以上、甲1の第2実施形態にも、発明の本質的部分でないカードサイズ紙片に関する構成が記載されているとするのが常識的な解釈である(上申書3頁)。
c 構成要件C?Eについて
引用発明1の重ね合わせ郵便はがき30においては、中央部分34の裏面全体が、透明シート4、4を介して、二葉40、42の裏面全体と剥離可能に密着されている。
そして、甲1には、透明シート4、4に代えて、印刷手法により形成されたコーティング層によって用紙の対応面同士を仮接着してもよいことが記載されており(【0025】)、このコーティング層の形成は、本件特許発明1の構成要件C、Dの「一過性の粘着剤が塗布されていること」に相当する。
ここで、カードサイズ紙片20の裏面が二葉40、42の裏面と重なることは明らかである。
よって、引用発明1においては、二葉40、42(左側面部、右側面部)の裏面には、カードサイズ紙片20(分離して使用するもの)の上部、下部、左右側部の内側及び外側に該当する部分を含む全体にコーティング層が形成され(一過性の粘着層が塗布され)、二葉40、42(左側面部、右側面部)の裏面が、中央部分34(中央面部)の裏面のカードサイズ紙片20(分離して使用するもの)に貼着しているから、引用発明1は、本件特許発明1の構成要件C?Eを充足する(審判請求書25頁)。
d 構成要件Fについて
引用発明1においては、カードサイズ紙片20(分離して使用するもの)の周囲には、ミシン目状等のカットライン22が入っているところ、本件特許発明1において、構成要件Fの「切り込み」は、その態様(種類)について限定がなく、また、本件明細書にも「切り込み」の態様(種類)の具体例は記載されていない。
一方、引用発明1の「カットライン」は、「切った線」、すなわち、「切り込み線」の意味であり、「切り込み」に含まれる。
したがって、構成要件Fの「切り込み」は、引用発明1の「カットライン」を含み、引用発明1は、本件特許発明1の構成要件Fを充足する。
ところで、本件明細書には、発明の効果として「…印刷物に付いている葉書、チケット、クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに、印刷物を開くと自動的に手にすることになる。」(【0012】)と記載されていることから、構成要件Fの「切り込み」は、切り取る必要のない「連続した切り込み」であると限定解釈することも考えられる。
しかしながら、用紙を折り畳んで重ね合わせた面を擬似接着し、重ね合わせた面の一方のみに「切り込み」を入れて分離して使用するものを形成した印刷物において、その「切り込み」を「連続した切り込み」とすることは、甲2、甲3に記載されており、本件特許出願前周知である。
〔甲2〕:甲2(【0029】)には、分離して使用するもの(プリペイドカード8)を形成するための「切り込み」を「連続した切り込み(スリット9)」とすることが記載されている。
〔甲3〕:甲3(【0007】)には、分離して使用するもの(剥離部11)を形成するための「切り込み」を「連続した切り込み(ハーフカット8)」とすることが記載されている。
したがって、仮に構成要件Fの「切り込み」が、「連続した切り込み」を意味するとしても、引用発明1において、カットライン22を「連続した切り込み」とすることは、甲2、3に記載された周知技術から、当業者が容易に想到できるものである(審判請求書26ないし28頁)。
e 構成要件Gについて
引用発明1の重ね合わせ郵便はがき30が印刷物であることは明らかであるから、引用発明1は、本件特許発明1の構成要件Gを充足する(審判請求書28頁)。
(イ)被請求人相違点1についての主張の誤り
a 甲1のカードサイズ紙片は、あくまではがきの宛名表示としての機能を果たす必要があることからはがきの表面側に位置する片葉10に設けられているのであって、片葉10の隅部のカットライン16との関係で設けられているのではない(口頭審理陳述要領書6頁)。
b 重ね合わせ郵便はがき30においては、裏面にも表示(記載)がなされることから、これを見るためにはがきを裏返すという動作は常に行われ、また、裏返すという動作自体きわめて簡単に行うことができ、手間が生ずるようなものではない。そして、カードサイズ紙片20を中央部分34に配置しても機能、動作上の障害は何ら発生せず、重ね合わせ郵便はがき30を裏返すという動作は、カードサイズ紙片20を中央部分34に配置することの阻害要因とはなりえない(口頭審理陳述要領書6、7頁)。
(ウ)被請求人相違点2についての主張の誤り
a 「切り込み」の解釈の誤り
構成要件Fの「切り込み」を「連続した切り込み」等に限定解釈することは、リパーゼ判決や訂正請求の趣旨に反して許されない(口頭審理陳述要領書8頁)。
また、「切り込み」には、連続したもの、ミシン目状のもの、一点鎖線状のもの等種々の態様があり、それを「周囲に」という表現だけからは、連続したものには到底特定できない(上申書8頁)。
b 「切り込み」を「連続した切り込み」等と仮定した場合の誤り
甲1のカードサイズ紙片20に、甲2のプリペイドカード8や甲3の剥離部を形成する周知技術を適用する動機付けは十分ある。
そもそも、甲1のカードサイズ紙片を形成するカットラインを連続する切り込みとしても、カードサイズ紙片とそれが形成された片葉との間に段差が生ずることはなく、また、カードサイズ紙片はその全面が片葉と擬似接着しており、剥離のきっかけとなる非接着部分もなく、郵送時に他の郵便はがき等が引っ掛かってカードサイズ紙片が不用意に分離することはあり得ない(口頭審理陳述要領書9、10頁)。
(エ)本件特許発明1の効果
a 引用発明2(甲2)においては、折畳み対向紙片2に設けられたスリット9により、分離して使用するもの(プリペイドカード8)が抜き取り可能となっているから、折畳み対向紙片2と4を剥がすと、分離して使用するものが擬似接着している折畳み対向紙片4に付着し、必然的に、分離して使用するものを切り取ろうとする意思を持たずに、印刷物を開くと自動的に手にする作用効果を奏する。
また、本件特許発明1の「分離して使用するものに対する使用者のアピール力が高く、例えば葉書の場合には、すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなり」といった効果は、甲4、5に示されているように、本件特許出願前、3つ折りの観音開き(葉書き付き)広告用印刷物において周知である。
したがって、本件特許発明1の効果は、引用発明2(甲2)及び甲4、5に記載された周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである(審判請求書28、29頁)。
b 引用発明1においては、カードサイズ紙片(分離して使用するもの)は、二葉40、42の面(左右側面部)ではなく、中央部分34(中央面部)に設けられるものである。
また、本件特許発明の「切り込み」を「連続した切り込み」等に限定して解釈することは誤りであり、仮にこの「切り込み」が「連続した切り込み」等を意味するとしても、引用発明1において、カットライン22を「連続した切り込み」等とすることは、甲2、甲3に記載された周知技術から、当業者が容易に想到できるものである(口頭審理陳述要領書11頁)。
c 甲第2号証(甲2)についての誤り
甲2には、プリペイドカード付きシートS4において、折畳み対向紙片2と4を剥して開くことが示唆されている。
また、甲2のプリペイドカード付きシートの折畳み対向紙片2と4が剥して開くものであることは、特許第4685970号(甲第8号証(甲8))の発明(甲8特許発明)についての特許無効審決(甲第9号証(甲9)、以下「甲9審決」。)においても認定されている(口頭審理陳述要領書12頁)。
したがって、甲2のプリペイドカード付きシートS4において、○1折畳み対向紙片2と4を剥して開くこと、○2その場合は分離して使用するもの(プリペイドカード)が一方の折畳み対向紙片2に付いてくること、○3その結果として分離して使川するものを切り取ろうとする意思を持たず自動的に手にすることができることは、当業者であれば想定できる範囲内である(口頭審理陳述要領書12ないし15頁)。
(オ)まとめ
以上より、引用発明1は、本件特許発明1の構成要件A?Gのすべてを備え、本件特許発明1と同一である。
仮に、本件特許発明1の構成要件Fの「切り込み」が「連続した切り込み」を意味し、引用発明1のカットライン22が「連続した切り込み」でないとしても、引用発明1において、カットライン22を「連続した切り込み」とすることは、甲第2、3号証に記載された周知技術から、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件特許発明1の効果は、引用発明2(甲第2号証)及び甲第4、5号証に記載された周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである(審判請求書29、30頁)。
イ 本件特許発明2
甲4には、甲4の印字・印刷物の構造は、ダイレクトメール用ハガキ、広告用ちらし等に適していること、すなわち、本件特許発明2の構成要件Hが記載されている(甲4明細書第4頁7?9行、第4頁12?15行、第6頁下4行?第7頁1行他)から、引用発明1の重ね合わせ郵便はがき30の折り形態及び重ね合わせ構造を甲4の広告、ダイレクトメール用の印刷物に適用して本件特許発明2とすることは、当業者が容易に想到できる程度のものである(審判請求書31頁)。
ウ 本件特許発明3
広告ちらしに代表される広告用印刷物や宣伝、広告用シートにおいて、その一部を切り取り可能な葉書とし、これを分離して使用するものとすることは、甲5、6に記載されているように本件特許出願前から周知であるから、引用発明1の形態・構造を広告ちらしに適用し、その際に分離して使用するものとしてのカードサイズ紙片20を葉書として、本件特許発明3の構成要件Jとすることは、甲4に記載された技術及び甲5、6の周知技術から当業者が容易に想到できる程度のものである(審判請求書31、32頁)。
(2)甲2に記載された発明(引用発明2)を主引用発明とした場合
ア 本件特許発明1
(ア)本件特許発明1と引用発明2との一致点及び相違点
本件特許発明1と引用発明2は、
「複数の紙片(面部)からなる印刷物であって、
一の紙片(面部)は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されていること、
分離して使用するものが形成された一の紙片と重なる紙片の裏面は、当該分離して使用するものの上部、下部、左側部及び右側部の内側及び外側に該当する部分には一過性の粘着剤が塗布されていること、
当該一の紙片と重なる紙片の裏面が、当該一の紙片の裏面及び当該分離して使用するものに貼着していること、
当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っていること、からなる印刷物。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
a 相違点1
本件特許発明1は、左側面部と中央面部と右側面部の3面からなる印刷物であるに対して、引用発明2は、折畳み対向紙片2、4の2面からなる印刷物である点。
b 相違点2
本件特許発明1は、3面からなる面部の中央面部に分離して使用するものが印刷されているのに対して、引用発明2は、2面からなる紙片(面部)の一方の紙片(面部)に分離して使用するものが印刷されている点。
c 相違点3
本件特許発明1は、左側面部の裏面及び右側面の裏面の両方が、分離して使用するもの及び中央面部に重なり、両側面部の裏面には、当該分離して使用するものの上部、下部、左側部及び右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、両側面部の裏面が、中央面部の裏面及び分離して使用するものの裏面に貼着しているのに対して、引用発明2は、折畳み対向紙片の一方の裏面が、分離しているもの及び他方の折畳み対向紙片に重なり、折畳み対向紙片の一方の裏面には、当該分離して使用するものの上部、下部、左側部及び右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、折畳み対向紙片の一方の裏面が、他方の折畳み対向紙片の裏面及び分離しているものに貼着している点。
そして、本件特許発明1と引用発明2は、前者が3つ折りの観音開きであり、後者が2つ折りであるという折り形態が相違した擬似接着印刷物であり、これに起因して、前者は2つの面(両側面)が分離して使用するものと重なって擬似接着するのに対して、後者は、一つの面が分離して使用するものと重なって擬似接着する点で相違するにすぎないから、相違点1?3おいて、本件特許発明1と引用発明2は、実質的に、折り形態、及び折り重ねた面と分離して使用するものとの重なり方(以下「折り形態等」という。)において相違するにすぎない(審判請求書33ないし36頁)。
(イ)相違点1?3の容易想到性
甲1に記載された引用発明1は、中央部分34と二葉40、42の3面からなる3つ折りの観音開きの印刷物であって、中央面部の中央部分34にカードサイズ紙片20(分離して使用するもの)が印刷され、両側面部の二葉40、42を中央部分34に折り重ねて、二葉40、42(両側面部)を中央部分34(中央面部)及びカードサイズ紙片20(分離して使用するもの)に擬似接着させた印刷物であるから、引用発明1には、相違点1?3に係る構成が示されている。
ところで、甲1には、引用発明1の他に段落【0013】、【0016】、【0025】等の記載より、以下発明(引用発明1の2)が記載されている。
「通信情報を表示した用紙2の裏面2aに透明シート4を接着剤6で接着し、用紙2及び透明シート4を中央8で二葉10、12に折り曲げて、二葉10、12の透明シート4、4同士を重ね合わせ、両透明シート4、4を剥離可能に接着剤14で密着した重ね合わせ郵便はがき1であって、
用紙32の中央部分34に所望形状の紙片(カードサイズ紙片)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れ、カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し、その裏面20bに、イベントヘの招待や新製品の紹介等の情報を表示することにより、イベントヘの招待状や新製品を紹介した各種データ入りの小紙片として利用することができるようにした重ね合わせ郵便はがき1。」
この引用発明1の2と引用発明1の関係を見てみると、両者は、甲1に記載された発明の第1実施の形態と第2実施の形態であり、後者は前者に比べて用紙2の折る位置だけを異ならせたものにすぎない(【0021】)から、引用発明1の2の折り形態等を引用発明1の折り形態等に変更すること、すなわち、「二面(二葉10、12)を折り重ねて擬似接着させ、一方の面部(片葉10)に切り込み(カットライン22)により分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)を形成した印刷物(重ね合わせ郵便はがき)」(引用発明1の2)を、「3つ折りの観音開きに3面(中央部分34、二葉40、42)を折り重ねて擬似接着させ、中央面部(中央部分34)に切り込み(カットライン22)により分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)を形成し、両側面部(二葉40、42)が中央面部(中央部分34)及び分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)に擬似接着するようにした印刷物(重ね合わせ郵便はがき)」(引用発明1)に変更することは、当業者が適宜行う選択事項にすぎない。
また、引用発明2と引用発明1の2は、2つの面(折畳み対向紙片2、4、二葉10、12)を折り重ねて擬似接着させた印刷物であって、一方の面部(折畳み対向紙片4、片葉10)に切り込み(スリット9、カットライン22)により分離して使用するもの(プリペイドカード8、カードサイズ紙片20)を形成し、他方の面部(折畳み対向紙片2、片葉12)が一方の面部(折畳み対向紙片4、片葉10)及び分離して使用するもの(プリペイドカード8、カードサイズ紙片20)と擬似接着し、分離して使用するものを抜き取り可能とした点で共通するから、引用発明2において、引用発明1の2の折り形態等を引用発明1の折り形態等に変更したのと同様の折り形態等の変更を行い、3つ折りの観音開きに3面を折り重ねて擬似接着させ、中央面部に切り込み(スリット9)により分離して使用するもの(プリペイドカード8)を形成し、両側面部が中央面部及び分離して使用するもの(プリペイドカード8)に擬似接着するようとし、引用発明1に示された相違点1?3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得る程度のことである(審判請求書36ないし38頁)。
(ウ)甲1(甲第1号証)に記載された発明について
甲1の引用発明1は、カードサイズ紙片を備えており、そのカード紙片は中央部分34に設けられている(口頭審理陳述要領書18頁)。
(エ)相違点1の容易想到性における被請求人の誤り
a 引用発明2と甲1に記載された技術(発明)とは、用紙を折り重ねて擬似接着させ、折り重ねた面に切り込みを形成して分離して使用するものを設けた印刷物において共通し、分離して使用するものや印刷物について何ら限定されていない本件特許発明を想起するに当たって、引用発明2に甲1に記載された技術(発明)を適用する動機付けは十分にある(口頭審理陳述要領書18頁)。
引用発明2の疑似接着印刷物において、2つ折り形態を3つ折りの観音開き形態に変更することは当業者が適宜行う選択事項にすぎず、その際、引用発明1に示された技術を適用し、左右側面部(二葉40、42)が中央面部(中央部分34)に設けられた分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)に跨って重なるようにし、相違点1?3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得る程度のことである(口頭審理陳述要領書18、19頁)。
引用発明2の折り形態を変更することは当業者が適宜行う選択事項にすぎず、被請求人が主張するような動機付けは不要である(口頭審理陳述要領書19頁)。
b 請求人は、引用発明2に甲1に記載された技術(引用発明1の2や引用発明1等)を適用する動機付けは十分にあるとした上で、引用発明1の2を引用発明1とすること(2つ折りを観音開きの3つ折りとすること)は当業者が適宜行う選択事項にすぎないから、引用発明2においても、2つ折りを観音開きの3つ折りとすることも当業者が適宜行う選択事項にすぎず、その際、引用発明1のような形態(左右側面部が分離して使用するものに跨って重なる形態)とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことであると主張しているのである(口頭審理陳述要領書18ないし20頁)。
(オ)本件特許発明1の効果
本件特許発明1の効果は、引用発明2(甲2)及び甲4、5に記載された周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである(審判請求書39頁)。
イ 本件特許発明2
引用発明2のプリペイドカード付きシートS4においても、プリペイドカード付きシートS1と同様に、絵柄等の印刷を施した用紙1が用意されることは明らかであるところ、その印刷内容をどのようなものにするかは適宜変更し得るものである。
そして、甲5、6に記載されているように、印刷物に広告を設けることは、本件特許出願前周知技術であるから、引用発明2において、印刷物に広告を施し、本件特許発明2の構成要件Hとすることは、甲5、6に記載された周知技術から当業者が容易に想到できる程度のものである(審判請求書39、40頁)。
ウ 本件特許発明3
購入者に交付されるシートからプリペイドカードを分離して使用できるようにすることも、引用発明1(審決注:「引用発明2」の誤りと認める。)において技術的課題のーつとされていたといえる。
そして、広告の一部に返信用葉書を切り取り可能に設けることは、甲5、6に記載されているように本件特許出願前から周知であるから、消費者等が受領してシートや紙面から分離して使用するものとして、引用発明2の「プリペイドカード」に代えて「葉書」を採用すること、すなわち、本件特許発明3の構成要件Jとすることは、甲5、6の周知技術から当業者が容易に想到できる程度のものである(審判請求書41頁)。

5 甲各号証
請求人が本件審判請求にあたり提示した証拠方法は、以下のとおりである。
(1)平成25年5月24日付け審判請求書に添付されたもの
甲第 1号証:特開2000-158855号公報
甲第 2号証:実用新案登録第3070251号公報
甲第 3号証:実用新案登録第3071270号公報
甲第 4号証:実願平2-66333号(実開平4-24387号)のマ
イクロフィルム
甲第 5号証:実用新案登録第3096910号公報
甲第 6号証:実願平1-115348号(実開平3-55272号)の
マイクロフィルム
甲第 7号証:特許第4310416号公報(本件特許公報)
(2)平成25年10月10日付け口頭審理陳述要領書に添付されたもの
甲第 8号証:特許第4685970号公報
甲第 9号証:無効2011-800118号審決
甲第10号証:特開2004-133065号公報(甲9審決の甲第3号
証)
甲第11号証:登録実用新案第3096613号公報(甲9審決の甲第4
号証)
甲第12号証:実用新案登録第2535324号公報(甲9審決の甲第9
号証)
甲第13号証:実願平1-33834号(実開平2-124180号)の
マイクロフィルム(甲9審決の甲第10号証)


第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 甲第1号証に記載された発明(引用発明1)を主引用発明とした場合
(1)引用発明1について
甲第1号証の明細書には、2つの実施形態が記載されている。1つは、段落【0012】から【0020】に記載された、「第1実施の形態」の重ね合わせ郵便はがき1である。もう1つは、段落【0021】から【0024】に記載された、「第2実施の形態」の重ね合わせ郵便はがき30である。
このように1つの文献に複数の発明が記載されている場合には、引用発明1としては、そのうちの1つの発明を特定すべきである。しかるに、請求人は、上記の2つの実施形態の発明を組み合わせたものを、引用発明1としており、これは妥当ではない。
請求人は、観音開き構造を有する、「第2実施の形態」の重ね合わせ郵便はがき30を引用発明1とする趣旨と思われる。そうすると、「第2実施の形態」について記載された、段落【0021】から【0024】には、カードサイズ紙片に関する記載は、?切ない。よって、引用発明1の構成として、カードサイズ紙片に関する構成を含めることはできない。
したがって、引用発明1の認定は、以下のようにすべきである。:
「通信情報を表示した用紙32の裏面32aに透明シート4を接着剤33で接着し、透明シート4を接着した用紙32の中央部分34を郵便はがきの大きさに確保し、その両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、その二葉40、42の先端40a、42aを突き合わせた状態で、二葉40、42の透明シート4、4を中央部分34の透明シート4に剥離可能に密着させた重ね合わせ郵便はがき30であって、
上記透明シート4、4に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成し、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにした重ね合わせ郵便はがき30。」(審判事件答弁書4、5頁)
(2)本件特許発明1が新規性を有すること
ア 構成要件Bについて
(ア)引用発明1は、カードサイズ紙片に関する構成を有しない。
したがって、引用発明1は、本件特許発明1の「分離して使用するもの」に相当する構成を有しないから、本件特許発明1の構成要件Bに相当する構成を有しない(審判事件答弁書5頁)。
(イ)甲第1号証の請求項1には、カードサイズ紙片に関する記載が全くないのであるから、甲第1号証の請求項1の記載を根拠に、カードサイズ紙片の位置を論じることはできない(口頭審理陳述要領書8頁)。
(ウ)万が一、引用発明1(甲第1号証の第2実施形態)において、カードサイズ紙片が備えられていると仮定しても、甲第1号証の「カットライン」は、これからカットするラインであって、既にカットされたラインではない。すなわち、ミシン目状等の、これからカットする位置を示すラインに過ぎない(口頭審理陳述要領書6頁)。
イ 構成要件C?Fについて
引用発明1は、カードサイズ紙片20に関する構成を有しないのであるから、本件特許発明1の「分離して使用するもの」に相当する構成を有しない。
したがって、この点において、引用発明1の構成は、本件特許発明1の構成要件C?Fと相違する(審判事件答弁書5、6頁)。
ウ 小活
以上のとおり、本件特許発明1と引用発明は、構成要件B?Fにおいて相違するので、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当しない(審判事件答弁書6頁)。
(3)本件特許発明1が進歩性を有すること
ア 相違点
本件特許発明1と引用発明1は以下の点で相違する。
(ア)相違点1
分離して使用するものの印刷位置が、本件特許発明1では中央面部(中央部分34)上であるのに対して、引用発明1には、分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)に関する記載がない点。
(イ)相違点2
分離して使用するものの境界が、本件特許発明1では「連続した切り込み」か、それと実質的に同視できるような切り込みであるのに対して、引用発明1には分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)に関する記載がない点(審判事件答弁書6頁)。
イ 相違点が容易に想到できたものではないこと
(ア)相違点1
a 第1実施の形態では、甲第1号証の図1、図6に記載のとおり、隅部10aにカットライン16がある側の一方の片葉10上に、カードサイズ紙片20があるのであって、他方の片葉12上にあるのではない。
したがって、引用発明1に甲第1号証の第1の実施の形態の発明を組み合わせたことによって、仮にカードサイズ紙片20が設けられるとしても、請求人の主張するように中央部分34に設けられるのではなく、両側の二葉40または42上、特に、右側の42の方に、設けられると考えられる。
したがって、引用発明1に甲第1号証の第1の実施の形態の発明を組み合わせたことによって、仮にカードサイズ紙片20が設けられるとしても、その構成は、「分離して使用するもの」が「中央面部」ではなく、左側面部または右側面部に印刷されていることになるため、本件特許発明1の構成要件Bとはならない(審判事件答弁書7ないし9頁)。
b また、甲第1号証には、第1実施の形態について、まず、カードサイズ紙片20を重ね合わせ郵便はがき1から切り取って、次に、「通信情報をさらに詳しく見たいときには、」隅部10aのカットライン16を利用して、一方の片葉10を他方の片葉12から全部引き剥がすという順番が記載されている(【0019】、【0020】)。
そうすると、カードサイズ紙片20と、隅部10aのカットライン16とは、同じ面上にないと、カードサイズ紙片20を切り取った後に、重ね合わせ郵便はがき1を裏返すという動作をしないと、隅部10aのカットライン16を使って一方の片葉10を他方の片葉12から全部引き剥がすことができなくなってしまう。
このような理由から、第1実施の形態では、隅部10aにカットライン16がある側の一方の片葉10上に、カードサイズ紙片20があるのであって、他方の片葉12上にあるのではない。
そうすると、引用発明1(第2実施の形態)においても、カードサイズ紙片20が、重ね合わせ郵便はがき30の両側の二葉40または42上に設けられることは、上記のような理由がある構成なのであって、カードサイズ紙片20を中央部分34に配置してしまうと、カードサイズ紙片20を取り出してから両側の二葉40または42を開くまでに、重ね合わせ郵便はがき30を裏返す手間が生じてしまうという点で、阻害要因が存する(審判事件答弁書10、11頁)。
c 甲第1号証の【0019】?【0020】には、○1カードサイズ紙片20を重ね合わせ郵便はがき30から切り取るという第1の動作と、○2「通信情報をさらに詳しく見たいときには、」隅部10aのカットライン16を利用して、一方の片葉10を他方の片葉12から全部引き剥がすという第2の動作を、順次連続して行うべき一連の動作として、引き続いて説明している。
したがって、これらの2つの動作の間に、「はがきを裏返す」という動作が入ることは、全くの無駄であり、使用者に殊更不便を強いるものに他ならず、発明の組合せの阻害要因となる(口頭審理陳述要領書9、10頁)。
d また、本件特許発明1では、分離して使用するものを、中央面部上の、かつ、左側面部と右側面部の両方に重なる部分に印刷することによって、初めて、左側面部又は右側面部の後から開いた方に、分離して使用するものが付いてきて、かつ、その一部が飛び出しているため、使用者がこれを手に取ることが促され、広告などの印刷物に付いている葉書等を切り取ろうとする意思を持たずに、当該印刷物を開くと自動的に手にすることができるという、顕著な効果を生じさせることを見出したものである(審判事件答弁書12頁)。
e したがって、当業者は、相違点1について、容易に想到することはできなかった(審判事件答弁書13頁)。
(イ)相違点2
a 本件特許明細書の発明の効果の欄の記載(【0012】)及び図3に照らすと、本件特許発明1の構成要件Fの「切り込み」は、最初に左側面部(または右側面部)を開いて、次に他方の右側面部(または左側面部)を開いた時に、分離して使用するものが、自動的に中央面部から分離され、右側面部(または左側面部)に付いてくるように、「連続した切り込み」か、それと実質的に同視できるような切り込みに限定される。
これに対して、甲第1号証では、「ミシン目状等のカットライン22」(【0016】)と記載されており、甲第1号証の引用発明1(第2実施の形態)以外に関する部分(第1実施の形態等)の記載を参酌しても、カットライン22が「連続した切り込み」である場合については何の記載もない。さらに、甲第1号証には、本件特許発明1が有する、「分離して使用するもの」が自動的に切り取られるという効果の発想について、何ら記載も示唆もない。したがって、「連続した切り込み」は、甲第1号証記載の発明(第1実施の形態)の「カットライン22」には含まれないと解される(審判事件答弁書13、14頁)。
b 甲第1号証に、発明が解決しようとする課題として、「…投函したポストの中で段差56部位に、他の郵便はがき58が引っ掛る惧れがあった。このため、引っ掛った郵便はがき58が段差56から一方の片葉52と他方の片葉54との間に侵入して、片葉52と片葉54とが不用意に開封されてしまうという問題等もあった。」(【0004】)と記載されているように、甲第1号証では、郵送時の意図しない開封についての問題意識があった。そのため、甲第1号証では、郵送時に、カットラインから意図せずにカードサイズ紙片が分離することが無いように、「ミシン目状等の」という限定を加えていたものと思われる。実際に、甲第1号証の出願について、出願人は、平成13年11月26日付けの手続補正書により、特許請求の範囲の「カットライン」を、「ミシン目状のカットライン」に限定する補正を行った(乙第1号証)。
仮に甲第1号証記載の発明(第1実施の形態)のカットライン22を、連続した切り込みにしてしまうと、郵送時に、カットラインから意図せずにカードサイズ紙片が分離してしまう危険が増加してしまうから、当業者が、甲第1号証記載の発明(第1実施の形態)のカットライン22を、連続した切り込みにすることについては、阻害要因があった(審判事件答弁書15、16頁)。
c 本件発明1の構成要件Fの「周囲に切り込み」との表現等から解釈しただけでも、構成要件Fの「切り込み」とは、分離して使用するものの周囲の「連続した切り込み」か、それと実質的に同視できるような切り込みを意味することが、一義的に明確に理解することができる(口頭審理陳述要領書11、12頁)。
d 甲第2号証と甲第3号証には、甲第1号証と組み合わせることについて、何らの記載や示唆等もなく、当業者には、組み合わせの動機付けがない(審判事件答弁書15頁)。
e 請求人は、甲第1号証のカードサイズ紙片20に、甲第2号証のプリペイドカード8や甲第3号証の剥離部を形成する周知技術を適用する動機付けの根拠として、「甲1の重ね合わせ郵便はがきと、甲2のプリペイドカード付きシートS4や甲3の剥離部付き重合紙片は、用紙(シート)を折畳んで擬似接着させ、疑似接着させた用紙の一部を分離して使用するものとした点で共通する」ことのみを挙げているが、上記の共通点は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証の発明が、広い意味では技術分野が共通するという程度のことでしかなく、何ら、組合せを示唆するものではない(口頭審理陳述要領書12、13頁)。
f したがって、当業者は、相違点2について、容易に想到することはできなかった(審判事件答弁書16頁)。
(ウ)本件特許発明1の顕著な効果について
a 仮に引用発明1に甲第1号証の第1の実施の形態の発明を組み合わせたことによって、カードサイズ紙片20が設けられるとしても、引用発明1では、本件特許発明1のように、あとから開いた右側面部(または左側面部)に分離して使用するものが付いてきて、しかもその一部が、右側面部(または左側面部)から飛び出てくる効果は得られない(審判事件答弁書17頁)。
b 本件特許発明1では、分離して使用するものを、中央面部上の、かつ、左側面部と右側面部の両方に重なる部分に印刷することによって、左側面部又は右側面部の後から開いた方に、分離して使用するものが付いてきて、かつ、その一部が飛び出しているため、使用者がこれを手に取ることが促され、広告などの印刷物に付いている葉書等を切り取ろうとする意思を持たずに、当該印刷物を開くと自動的に手にすることができるという、顕著な効果を生じさせることを見出したものである。
また、左側面部及び右側面部を非常に素早く開いたときなどには、葉書等が左側面部及び右側面部から剥がれることがあるが、この場合も、印刷物に付いている葉書等を切り取ろうとする意思を持たずに、当該印刷物を開くと自動的に手にすることができるという、顕著な効果を生じさせる(審判事件答弁書18頁)。
c 甲8特許発明は、開くとどちらか一方の側面部のみに分離して使用するものが付いてくるのに対して、本件特許発明では、例えば一態様として、後から開いた側面部に分離して使用するものが付いてくることなどによって葉書を自動的に手にすることができるという顕著な効果を有する。さらに、本件特許発明において、左側面部または右側面部の後から開いた方に、分離して使用するものが付いてくる場合には、その一部が飛び出しているため、使用者がこれを手に取ることが促されるという効果は、甲8特許発明にはない、本件特許発明に特有の効果である(口頭審理陳述要領書15頁)。
d 甲第2号証には、本件特許発明の有する、葉書等の一部が飛び出している顕著な効果や、側面部を非常に素早く開いたときなどに葉書等が側面部から自動的に剥がれる顕著な効果は、何ら記載されていない(口頭審理陳述要領書16頁)。
e(a)甲第2号証の図1、図3、図4、図5では、抜き取り方向を示す矢印が描かれているところ、この矢印からすると、甲第2号証では、外紙2のうちプリペイドカード以外の外側の部分を開くのではなく、プリペイドカードの部分のみを、外紙2から抜き取ることが想定されたものである(審判事件答弁書19頁)。
(b)甲第2号証の発明のプリペイド付きシートを手にした消費者が興味を有しているのは、有価証券情報の印刷されたプリペイドカードの裏面情報のみであって、消費者は、外紙4のうちプリペイドカード以外の外枠部分をまず剥すというような行動に出るはずはなく、真っ先に、目当ての目的物であるプリペイドカードを取得するために、参考図5のように、プリペイドカードを抜き取るのが通常である(審判事件答弁書20頁)。
f 甲第4号証は、広告チラシ等を観音開きの構造にする、というものにすぎず、本件特許発明1の上述の顕著な効果を何ら示唆するものではない(審判事件答弁書21頁)。
g 甲第5号証は、広告チラシ等を観音開きの構造にして葉書を付ける、というものにすぎず、本件特許発明1の上述の顕著な効果を何ら示唆するものではない(審判事件答弁書21頁)。
h 甲第1号証の明細書では、カットラインについて、「ミシン目状等」と記載され、「ミシン目」が例として挙げられている。カードサイズ紙片の周囲のカットラインを「ミシン目」にした場合には、カードサイズ紙片を切り取ろうとする動作をしないと、自動的には、切り取られない(審判事件答弁書21頁)。
(4)本件特許発明2が進歩性を有すること
仮に、構成要件Hが容易に想到し得たものであったとしても、引用発明1の相違点1、2は、いずれも、容易に想到し得たものではないから、本件特許発明2は、引用発明1等から当業者が容易に発明することができたものではない(審判事件答弁書22頁)。
(5)本件特許発明3が進歩性を有すること
仮に、構成要件Jが容易に想到し得たものであったとしても、引用発明1の相違点1、2は、いずれも、容易に想到し得たものではないから、本件特許発明3は、引用発明1等から当業者が容易に発明することができたものではない(審判事件答弁書22頁)。

2 甲第2号証に記載された発明(引用発明2)を主引用発明とした場合
(1)本件特許発明1が進歩性を有すること
ア 相違点について
請求人は、審判請求書36ページ14?16行で、「相違点1?3(に)おいて、本件特許発明1と引用発明2は、実質的に、折り形態、及び折り重ねた面と分離して使用するものとの重なり方(折り形態等)において相違するにすぎない。」と記載してまとめているが、特に、「折り形態」(相違点1)と「折り重ねた面と分離して使用するものとの重なり方」(相違点2及び3)は、別個の相違点であり、区別して論ずべきである。
すなわち、仮に、「折り形態」(相違点1)について、引用発明2を3つ折りの観音開きに変更したとしても、「折り重ねた面と分離して使用するものとの重なり方」(相違点2及び3)については、(審判事件答弁書8頁の)参考図2のような構成とするのか、本件特許発明1のような構成とするのかは、別個の考慮を要する問題が存する(審判事件答弁書23、24頁)。
イ 引用発明1の認定について
引用発明1には、相違点2、3に係る構成は、示されていない(審判事件答弁書24頁)。
ウ 相違点1が容易に想到できたものではないこと
(ア)主引用発明である「引用発明2」と副引用発明である「引用発明1の2」とでは、課題も、利用分野も、スリットの構成も異なるのであり、「引用発明2」に「引用発明1の2」を組み合わせることには、何のメリットも動機付けもない。
仮に、請求人の主張が、主引用発明である「引用発明2」と副引用発明である「引用発明1」を組み合わせることによって、引用発明2を3つ折りの観音開きの構造にする(相違点1)という主張であったとしても、両発明では、課題も、利用分野も、スリットの構成も異なり、また、請求人は、引用発明2を3つ折りの観音開きの構造にすることについては、何の動機付けも主張していない(審判事件答弁書25、26頁)。
(イ)相違点1に関して、引用発明2と甲1に記載された技術(発明)とが、広い意味で技術分野が共通するのみでは、2つの発明を組み合わせる動機付けとしては、不十分である(口頭審理陳述要領書17頁)。
エ 相違点2、3が容易に想到できたものではないこと
(ア)本件特許発明1の相違点2、3に係る構成は、印刷物が3面からなること(相違点1に係る構成)を前提としているのであるから、相違点1について上述したのと同様の理由により、相違点2、3も、容易に想到し得たものとは言えない。
仮に、印刷物が3面からなること(相違点1に係る構成)に想到し得たとしても、分離して使用するものを設けるか否か、また、どの位置に設けるかどうかは、別問題である(審判事件答弁書26頁)。
(イ)甲第2号証の図5において、「スリット折畳み対向紙片4」を延長して3つ折り観音開きにしても、分離して使用するものは、1つの側面部と重なるに過ぎず、本件特許発明のように、分離して使用するものが、左右の両側面部に重なるという構成には至らない(口頭審理陳述要領書19頁)。
オ 本件特許発明1の顕著な効果について
引用発明1を主引用発明とした場合について述べたとおり、本件特許発明1は、甲第1?5号証に全く記載も示唆もされていない顕著な効果を有する(審判事件答弁書27頁)。
(2)本件特許発明2が進歩性を有すること
仮に、構成要件Hが容易に想到し得たものであったとしても、引用発明2の相違点は、いずれも、容易に想到し得たものではない(審判事件答弁書28頁)。
(3)本件特許発明3が進歩性を有すること
仮に、構成要件Jが容易に想到し得たものであったとしても、引用発明2の相違点は、いずれも、容易に想到し得たものではない(審判事件答弁書28頁)。

3 乙各号証
被請求人が本件審判請求にあたり提示した証拠方法は、以下のとおりである。
乙第1号証:特願平10-353823号の手続補正書
乙第2号証:「広辞苑」第四版1977頁


第6 当審の判断
請求人は、本件特許の請求項1に係る特許発明(本件特許発明1)は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証に記載された周知技術等から、あるいは、甲第1、2号証に記載された発明及び甲第4、5号証に記載された周知技術から当業者が容易に発明することができたものであると主張し、また、本件特許の請求項2、3に係る各特許発明(本件特許発明2、3)は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術及び甲第5、6号証に記載された周知技術から、あるいは、甲第1、2号証に記載された発明及び甲第4?6号証に記載された周知技術から当業者が容易に発明することができたものであると主張するので(審判請求書7頁。上記第4の1参照。)、以下、本件特許発明1が甲第1号証に記載された発明と同一であるといえるか否か(本件特許発明1の新規性)、また、本件特許発明1ないし3が、甲第1号証に記載された発明あるいは甲第2号証に記載された発明を主引用発明として当業者が容易に発明することができたものといえるか否か(本件特許発明1ないし3の進歩性)につき、検討する。
1 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア 請求人が提出した、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2000-158855号公報)には、以下の(ア)ないし(カ)の記載がある。
(ア)「【請求項1】 用紙の裏面に通信情報を表示した後、この通信情報の上面から透明シートを積層接着し、用紙を中央で二葉に折り曲げて向かい合う透明シート同士を重ね合わせ、重ね合わせた二葉の透明シート同士を剥離可能に密着させ、二葉のうちの一方の片葉の隅部にカットラインを入れて隅部を一方の片葉から切離し可能としたことを特徴とする重ね合わせ郵便はがき。」
(イ)「【請求項2】 用紙の裏面に通信情報を表示した後、この通信情報の上面から透明シートを積層接着し、用紙の中央部分を郵便はがきの大きさに確保してその両側の二葉を折り曲げ、この折り曲げた二葉の先端を突き合わせた状態で向かい合う透明シート同士を重ね合わせ、重ね合わせた二葉の透明シート同士を剥離可能に密着させ、二葉の各隅部にカットラインを入れて各々の隅部を二葉から切離し可能としたことを特徴とする重ね合わせ郵便はがき。」
(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は重ね合わせ郵便はがきに係り、特に裏面に情報を表示した後、裏面同士を重ね合わせるように折り畳み、重ね合わせた部分を剥離可能に密着した重ね合わせ郵便はがきに関する。」
(エ)「【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る第1実施の形態の重ね合わせ郵便はがきを示す平面図、図2は図1のA-A線断面図、図3は図1のB部拡大図である。
【0013】図1?図3に示すように、重ね合わせ郵便はがき1は、用紙2の裏面2aに通信情報を表示した後、裏面2aに透明シート4を接着剤6で接着し、用紙2及び透明シート4を中央8で二葉10、12に折り曲げて、二葉10、12の透明シート4、4同士を重ね合わせ、両透明シート4、4を剥離可能に接着剤14で密着し、二葉10、12のうちの一方の片葉10の隅部10aにミシン目状等のカットライン16を入れて隅部10aを一方の片葉10から切離し可能としたものである。

【0016】また、重ね合わせ郵便はがき1は、用紙2の略中央8で折り曲げた二葉10、12のうちの一方の片葉10に所望形状の紙片(例えば、通常のカードサイズの形状であり、以下「カードサイズ紙片」という)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れたものである。…
【0017】カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し、その裏面20b(図4(b)参照)に、イベントへの招待や新製品の紹介等の情報を表示することにより、イベントへの招待状や新製品を紹介した各種データ入りの小紙片として利用することができる。

【0019】つぎに、重ね合わせ郵便はがき1を開封する場合について説明する。受取人は、図1に示すカードサイズ紙片20の左下隅21を指でつまんで、矢印aの方向にカードサイズ紙片20を剥がすことにより、カードサイズ紙片20の裏面20b(図4(b)参照)や他方の片葉12(図4(a)参照)に表示されているイベントへの招待や新製品の紹介の通信情報を見ることができる。
【0020】そして、通信情報をさらに詳しく見たいときには、受取人は、図5(a)に示すように一方の片葉10の切り取り隅部10aをカットライン16から矢印bの方向に切離すことで、一方の片葉10と他方の片葉12との間に段差を形成できる。つぎに、図5(b)に示すように、その段差から一方の片葉10を矢印cの方向に剥がし、その段差を利用して一方の片葉10を容易に剥がすことができる。ついで、図6に示すように一方の片葉10を他方の片葉12から全部引き剥がして、二葉10、12の裏面の表示を詳しく見ることができる。」
(オ)「【0021】第2実施の形態図7?図9に基づいて、第2実施の形態の重ね合わせ郵便はがき30について説明する。なお、重ね合わせ郵便はがき30は、第1実施の形態の重ね合わせ郵便はがき1と用紙2の折る位置だけを異ならせたものである。
【0022】この重ね合わせ郵便はがき30は、通信情報を表示した用紙32の裏面32aに透明シート4を接着剤33で接着し、透明シート4を接着した用紙32の中央部分34を郵便はがきの大きさに確保し、その両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、その二葉40、42の先端40a、42aを突き合わせた状態で、二葉40、42の透明シート4、4を中央部分34の透明シート4に剥離可能に密着させ、前記隅部40b、42bにミシン目状等のカットライン44、46を入れて各々の隅部40b、42bを二葉40、42から切離し可能としたものである。

【0024】つぎに、重ね合わせ郵便はがき30を開封する場合について説明する。図8に示すように二葉40、42の隅部40b、42bをカットライン44、46から切離すことにより、切離した部分に段差を形成することができる。つぎに、図5(b)に示すように、二葉40、42を矢印d及び矢印eの方向に引き剥がして、その部分に段差を形成することにより、二葉40、42を中央部分34から容易に引き剥がすことが可能となる。そして、図9に示すように二葉40、42を中央部分34から全部引き剥がすことにより、二葉40、42や中央部分34の裏面に表示されている通信情報を読み取ることが可能となる。」
(カ)「【0025】上記の説明中、用紙2、32の通信情報表示面の上面に透明シート4を積層接着する構成を説明したが、この構成に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成するようにしてもよく、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにしたものも当然に本発明の範囲に含まれる。…」

イ よって、上記アの(ア)、(ウ)、(エ)及び(カ)の記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1の1発明」という。)が記載されていると認められる(第1実施の形態)。

「用紙2の裏面2aに通信情報を表示した後、裏面2aに透明シート4を接着剤6で接着し、用紙2及び透明シート4を中央8で二葉10、12に折り曲げて、二葉10、12の透明シート4、4同士を重ね合わせ、両透明シート4、4を剥離可能に接着剤14で密着し、二葉10、12のうちの一方の片葉10の隅部10aにミシン目状等のカットライン16を入れて隅部10aを一方の片葉10から切離し可能とした重ね合わせ郵便はがき1であって、
用紙2の略中央8で折り曲げた二葉10、12のうちの一方の片葉10に所望形状の紙片(例えば、通常のカードサイズの形状であり、以下「カードサイズ紙片」という)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れ、カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し、その裏面20bに、イベントへの招待や新製品の紹介等の情報を表示することにより、イベントへの招待状や新製品を紹介した各種データ入りの小紙片として利用することができ、
当該重ね合わせ郵便はがき1を開封する場合、受取人は、カードサイズ紙片20の左下隅21を指でつまんで、矢印aの方向にカードサイズ紙片20を剥がすことにより、カードサイズ紙片20の裏面20bや他方の片葉12に表示されているイベントへの招待や新製品の紹介の通信情報を見ることができ、そして、通信情報をさらに詳しく見たいときには、受取人は、一方の片葉10の切り取り隅部10aをカットライン16から矢印bの方向に切離すことで、一方の片葉10と他方の片葉12との間に段差を形成でき、つぎに、その段差から一方の片葉10を矢印cの方向に剥がし、その段差を利用して一方の片葉10を容易に剥がすことができ、ついで、一方の片葉10を他方の片葉12から全部引き剥がして、二葉10、12の裏面の表示を詳しく見ることができ、
用紙2の通信情報表示面の上面に透明シート4を積層接着する構成に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成するようにしてもよく、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにしてもよい、重ね合わせ郵便はがき1。」

ウ また、上記アの(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)の記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1の2発明」という。)が記載されていると認められる(第2実施の形態)。

「通信情報を表示した用紙32の裏面32aに透明シート4を接着剤33で接着し、透明シート4を接着した用紙32の中央部分34を郵便はがきの大きさに確保し、その両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、その二葉40、42の先端40a、42aを突き合わせた状態で、二葉40、42の透明シート4、4を中央部分34の透明シート4に剥離可能に密着させ、前記隅部40b、42bにミシン目状等のカットライン44、46を入れて各々の隅部40b、42bを二葉40、42から切離し可能とした重ね合わせ郵便はがき30であって、
重ね合わせ郵便はがき30を開封する場合、二葉40、42の隅部40b、42bをカットライン44、46から切離すことにより、切離した部分に段差を形成することができ、つぎに、二葉40、42を矢印d及び矢印eの方向に引き剥がして、その部分に段差を形成することにより、二葉40、42を中央部分34から容易に引き剥がすことが可能となり、そして、二葉40、42を中央部分34から全部引き剥がすことにより、二葉40、42や中央部分34の裏面に表示されている通信情報を読み取ることが可能となり、
用紙32の通信情報表示面の上面に透明シート4を積層接着する構成に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成するようにしてもよく、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにしてもよい、重ね合わせ郵便はがき30。」

エ なお、請求人は、審判請求書(12、13頁。上記第4の3(1)参照。)において、甲第1号証には、「『…用紙32の中央部分34を郵便はがきの大きさに確保し、その両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、…用紙32の中央部分34に所望形状の紙片(カードサイズ紙片)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れ』てなる『重ね合わせ郵便はがき30』」の発明(引用発明1)が記載されていると主張し、口頭審理陳述要領書(3、4頁。上記第4の4(1)ア(ア)b(b)参照。)において、「第2実施形態のはがき30においては、二葉40、42に分割された面がはがきの裏面側となり、分割されていない中央部分34がはがきの表面側となる。…第2実施形態の中央部分34には、第1実施形態の片葉10と同様にカードサイズ紙片20が設けられることとなる」などと主張する。
しかしながら、甲第1号証の明細書には、上記エのとおりの「第1実施の形態」、及び、上記オのとおりの「第2実施の形態」の2つの異なる実施形態が記載されているのであって、前記「第2実施の形態」には用紙の中央部分にカードサイズ紙片を設けることは記載や示唆されておらず、また、これらのものを組み合わせたものを引用発明として認定することは適切でない。

(2)甲第2号証
同じく、甲第2号証(実用新案登録第3070251号公報)には、以下のアないしコの記載がある。
ア 「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 用紙を折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。

【請求項5】 用紙を2つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。」
イ 「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、プリペイドカードを添付してなるプリペイドカード付きシートに関する。」
ウ 「【0009】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は…、その目的とするところは、製造過程での不良品の発生が少なく、高速・大量生産に好適で、かつカード購入者にキーワード等の有価証券情報を正確に伝えることができ、また当該有価証券情報を確実に隠蔽できるプリペイドカード付きシートを提供することにある。」
エ 「【0020】
図1は本考案の一実施形態を示したものであり、同図のプリペイドカード付きシートS1は、1枚の用紙1をN型に3つに折畳んでなる、いわゆるN型3つ折りタイプであり、その用紙1の折畳みにより互いに対向し合う紙片2、3、4(以下「折畳み対向紙片」という。)のうち、中紙3と一の外紙2とは剥離可能に擬似的に接着(以下「擬似接着」という。)され、中紙3と他の外紙4とは剥離不能に永久的に接着(以下「永久接着」という。)されている。
【0021】
なお、上記のような中紙3と一の外紙2との擬似接着にはオープンタイプフィルム5を用いている。オープンタイプフィルム5は2枚のフィルム5a、5bからなり、これらを重ねて中紙3と一の外紙2との間に介挿し熱圧着させると、一方のフィルム5aと中紙3、および他方のフィルム5bと一の外紙2は永久接着状態となるが、その両フィルム5a、5bどうしは擬似接着状態となる。したがって、中紙3と一の外紙2とはオープンタイプフィルム5のフィルム5a、5b間から剥離し得る。
【0022】
また、上記のような中紙3と他の外紙4との永久接着にはクローズタイプフィルム6を用いている。クローズタイプフィルム6もまた2枚のフィルム6a、6bからなるが、これらを重ねて中紙3と他の外紙4との間に介挿し熱圧着させると、一方のフィルム6aと中紙3および他方のフィルム6bと他の外紙4だけでなく、両フィルム6a、6bどうしも永久接着状態となる。したがって、中紙3と他の外紙4とは剥離せず一体となっている。
【0023】
図1のプリペイドカード付きシートS1においては、中紙3の擬似接着面3aとその裏面3bならびに両外紙2、4の内側面2a、4aが折畳み対向紙片の内側面となるが、このうち、中紙3の擬似接着面3a側には有価証券情報7が印字されている。
【0024】
中紙3と他の外紙4とは上記の如く剥離せず一体紙となっているが、この一体紙の部分には、その一部を1枚のプリペイドカード8として抜き取り可能とするための抜き型での加工が施されている。この抜き型による加工は有価証券情報7の印字部が極細のスリット9により囲まれるものとする加工であり、該スリット9は少なくとも中紙3と他の外紙4とをその厚み方向に貫通する深さを有している。したがって、本実施形態の場合は、スリット9の内側部分全体が、中紙3と他の外紙4との一体紙のまま、プリペイドカード8として抜き取り可能となっている。つまり、本実施形態のプリペイドカード付きシートS1は、有価証券情報7の印字部を含む中紙3の一部とこれに一体に接着されている他の外紙4の一部とに、これらを1枚のプリペイドカード8として抜き取り可能とする加工を施したものである。

【0026】
図2は図1に示したプリペイドカード付きシートS1の製造工程を示したものであり、この製造工程では先ず(a)に示すように絵柄等の印刷(図示省略)を施した3つ折り用紙1を用意し、この用紙1の一面または両面に印字を行う。この際、印字の内容は少なくとも有価証券情報7を含み、また該有価証券情報7は用紙1を3つに折畳んだときに中紙3となる部分に印字される((b)の工程)。その後、(c)に示すように、上記用紙1をN型に3つに折畳むとともに、その折畳み対向紙片2、3、4のうち、中紙3において有価証券情報7を印字した面と一の外紙2との間にはオープンタイプフィルム5を、また、中紙3と他の外紙4との間にはクローズタイプフィルム6をそれぞれ介挿した後、(d)に示すように抜き型による加工を施す。この加工は他の外紙2から中紙3に達する深さのスリット9(図1参照)により有価証券情報7の印字部が囲まれるものとする。そして、この抜き型による加工後のものを熱圧着すると、図1に示すような本プリペイドカード付きシートS1の製品として完成する。
【0027】
本プリペイドカード付きシートS1の完成品は、オープンタイプフィルム5により中紙3と一の外紙2が擬似接着されており、その両紙2、3はオープンタイプフィルム5のフィルム5a、5b間から剥して開くことができる。この際、一方のフィルム5aは見開き面の片側一面を構成する中紙3に密着し、また、他方のフィルム5bは見開き面の片側他面を構成する一の外紙2に密着して剥離しない。
【0028】
ところで、本プリペイドカード付きシートS1の完成品は、有価証券情報7の具体的内容により各種分野に利用できるが、たとえば、携帯電話サービスのプリペイドカード提供手段として利用する場合には、有価証券情報7を文字や数字の配列等からなるキーワードとして印字し、このキーワードがその有価証券価値分の携帯電話の通話を可能とする情報であるものとすればよい。このような利用形態の場合、本プリペイドカード付きシートS1の購入者は、擬似接着されている中紙3と外紙2を剥すと、それまで隠蔽されていたキーワード(有価証券情報7)を見ることが可能となり、かつ該キーワードの印字部分をそのままプリペイドカード8として抜き取り携帯することができる。そして、当該キーワードを携帯電話サービス会社に連絡すると、カード購入時に購入者が先払いした金額相当の通話サービスを当該携帯電話サービス会社から受けることができる。」
オ 「【0029】
なお、図1の実施形態では、中紙3と一の外紙2のみを擬似接着し、中紙3と他の外紙4とは永久接着としたが、これに代えて、図3に示したプリペイドカード付きシートS2のように、中紙3と他の外紙4をもオープンタイプフィルム5により擬似接着することができる。この場合は、中紙3と一の外紙2、ならびに中紙3と他の外紙4が剥離可能になるので、一または他の外紙2、4の擬似接着面2a、4b側に有価証券情報7を印字することができる。たとえば、他の外紙4の擬似接着面4b側に有価証券情報7を印字した場合には、その有価証券情報7の印字部を含む他の外紙4の一部に、これをプリペイドカード8として抜き取り可能とする抜き型での加工を施すものとする。なお、この場合の抜き型による加工も上記実施形態と同じく、有価証券情報7の印字部外周に極細のスリット9を切り込む加工であるが、そのスリット9の深さは他の外紙4をその厚み方向に貫通する深さとする。したがって、このような構成からなる図3のプリペイドカード付きシートS2では、他の外紙4の一部だけがスリット9の内側部分から抜き取られてプリペイドカード8となる。」
カ 「【0031】
さらに、上記実施形態のプリペイドカード付きシートS1、S2は、いずれも3つ折りタイプの例であるが、本考案は、この3つ折りタイプに限定されず、たとえば、図5に示すような2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4として構成することもできる。同図のプリペイドカード付きシートS4は用紙1をV型に2つに折畳み、その用紙1の折畳み対向紙片2、4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着したものである。この場合、その折畳み対向紙片2の内側面に有価証券情報7が印字され、その有価証券情報7の印字部を含む折畳み対向紙片2の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられるものとする。」
キ 「【0034】
上記実施形態では擬似接着や永久接着の手段としてオープンタイプフィルム5やクローズタイプフィルム6を用いたが、これらの接着手段については、そのようなフィルム形態のものに限定されることはなく、糊状のものを適用することができる。」
ク 上記エ(【0021】)及び上記カに照らして、図5の「2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4」は、「オープンタイプフィルム5」が2枚の「フィルム5a、5b」からなり、これらを重ねて「折畳み対向紙片2」及び「折畳み対向紙片4」との間に介挿し熱圧着させると、一方の「フィルム5a」と「折畳み対向紙片4」、及び、他方の「フィルム5b」と「折畳み対向紙片2」は永久接着状態となるが、「フィルム5a、5b」どうしは擬似接着状態となる、といえる。
ケ 上記エ(【0026】)に照らして図5をみると、図5に示された「2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4」は、「その製造工程では先ず絵柄等の印刷を施した2つ折り用紙1を用意し、この用紙1の一面または両面に印字を行い、その折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され」るといえる。
コ 上記オ及びカに照らして図5をみると、「有価証券情報7」の印字部外周に極細の「スリット9」を切り込む加工を施し、その「スリット9」の深さは「折畳み対向紙片4」及び「フィルム5a」をその厚み方向に貫通する深さとすることがみてとれる。

よって、これらの記載を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「用紙1をV型に2つに折畳み、その用紙1の折畳み対向紙片2、4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着した2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4であって、
オープンタイプフィルム5は2枚のフィルム5a、5bからなり、これらを重ねて折畳み対向紙片2及び折畳み対向紙片4との間に介挿し熱圧着させると、一方のフィルム5aと折畳み対向紙片4、及び、他方のフィルム5bと折畳み対向紙片2は永久接着状態となるが、フィルム5a、5bどうしは擬似接着状態となり、
その製造工程では先ず絵柄等の印刷を施した2つ折り用紙1を用意し、この用紙1の一面または両面に印字を行い、その折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され、有価証券情報7の印字部外周に極細のスリット9を切り込む加工を施し、そのスリット9の深さは折畳み対向紙片4及びフィルム5aをその厚み方向に貫通する深さとし、その有価証券情報7の印字部を含む折畳み対向紙片4の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられ、
擬似接着の手段としてオープンタイプフィルム5を用いる代わりに、糊状のものを適用することができる、2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4。」

(3)甲第3号証
同じく、甲第3号証(実用新案登録第3071270号公報)には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】前面シートと背面シートが再剥離可能な接着手段により重合接着され且つ各シートの重合面の少なくとも一方に写真その他の情報が印刷された重合紙片に於いて、該背面シートに窓形のハーフカットを施して該前面シートから剥離する剥離部を設け、該重合紙片の一辺に1若しくは複数の切り込みを設けて該重合紙片を起立させる起立用折り曲げ片を形成したことを特徴とする剥離部付き重合紙片。」
イ 「【0006】
【考案の実施の形態】
…図1乃至図6は本考案をコンサートのダイレクトメールに適用した例であり、図1の符号1は中央の折り線2で2つ折り可能な葉書用の連続紙を示し、該連続紙1の表面には宛先3とコンサート開催情報などの伝達情報4とが印刷され、その裏面には図2のように出演者の写真などの伝達情報5、6を印刷した。
【0007】
この連続紙1は、シーラー装置により図3のように折り線2で2つ折りされて宛名のある前面シート1aと伝達情報4が表示された背面シート1bとが形成され、これらのシート1a、1b間に市販のテープ状の再剥離可能な接着手段7が介在される。そして、続く工程で両シートの一側のマージナル部1cを切除し、所定長さにカットすると共に背面シート1bの表面から窓形のハーフカット8及び両シートの一辺に切り込み9を施し、更に加熱ローラーなどにより両シート1a、1bの表面から加熱圧着することで、図5の背面外観と図6に示す断面構造を有する葉書の重合紙片10が形成される。該ハーフカット8は背面シート1bの一部を剥離させる剥離部11とするためのもので、図示の場合は該ハーフカット8を閉鎖した環状に形成して完全に背面シート1bから分離しうる剥離部11とした…。」

(4)甲第4号証
同じく、甲第4号証(実願平2-66333号(実開平4-24387号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲
(1)少なくとも一面13に所定の印字・印刷がなされる第1紙面部10の両側方に第2、第3紙面部11、12が連続して折り返し可能に設けられ、該第2、第3紙面部11、12は折り返された両紙面部11、12によって上記第1紙面部10の一面13の略全面を覆う大きさに形成され、
上記第1紙面部10と第2、第3紙面部11、12との重なり合う部分の略周縁には斜め方向の引っ張りによって剥離可能なホットメルト型接着剤2が帯状に塗布され、上記第2、第3紙面部11、12が上記第1紙面部10の一面13側に折り返されて剥離可能に貼着されていることを特徴とする印字・印刷物の構造。」(1頁4ないし17行)
イ 「(産業上の利用分野)
この考案は、ダイレクトメール用ハガキ、名刺あるいは広告用ちらし等に適した新規な印字・印刷物の構造に関する。」(2頁6ないし9行)
ウ 「ここで本考案に係る印字・印刷物の構造はハガキ、名刺、広告用ちらしに適用すればその効果が大きいが、勿論、他の印字・印刷物に適用してもよい。」(4頁12ないし15行)
エ 「また、名刺や広告用ちらしとして使用すると、第2、第3紙面部を第1紙面部から剥離することができる、という従来にはなかった全く新しい構造の名刺や広告用ちらしとなり、顧客に強く印象付けることが可能となる。」(6頁下から4行ないし7頁1行)
オ 「(実施例)

第1図ないし第5図は本考案の一実施例による印字・印刷物の構造を示す。図において、1はダイレクトメール用ハガキで、該ダイレクトメール用ハガキ1は普通ハガキと同寸法のハガキ本体(第1紙面部)10を有し、該ハガキ本体10の両側方には普通ハガキの略半分の幅を有する折返片(第2、第3紙面部)11、12が折り返し可能に連続して設けられ、該両折返片11、12は両者によってハガキ本体10の裏面(一面)13の略全面を覆うようになっている。
また、上記ハガキ本体10の上下縁、及び折返片11、12の外周縁には斜め方向の引っ張りによって剥離可能なホットメルト型接着剤層2が所定の幅で帯状に塗布され、該接着剤層2の内側全面には接着剤層2の剥離強度よりも弱くかつ剥離時に印字・印刷面を損傷しない強度で接着する第2のホットメルト型接着剤層4が塗布され、上記折返片11、12はハガキ本体10の一面13側に折り返されて剥離可能に貼着される。」(7頁2行ないし8頁3行)
カ 「(考案の効果)
以上のように、本考案に係る印字・印刷物の構造によれば、少なくとも一面に所定の印字・印刷がなされる第1紙面部の両側方に第2、第3紙面部を連続して折り返し可能に設け、該第2、第3紙面部を折り返された両紙面部によって上記第1紙面部の一面の略全面を覆う大きさに形成し、上記第1紙面部と第2、第3紙面部との重なり合う部分の略周縁には斜め方向の引っ張りによって剥離可能なホットメルト型接着剤を帯状に塗布し、上記第2、第3紙面部を上記第1紙面部の一面側に折り返して剥離可能に貼着するようにしたので、ダイレクトメール用ハガキの自動印字・印刷及び自動作成を容易にでき、しかも全く新規な構造の名刺や広告用ちらしとして顧客に強く印象付けることができる効果がある。」(11頁4ないし下から2行)

(5)甲第5号証
同じく、甲第5号証(実用新案登録第3096910号公報)には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
左右に開くことが出来るように左右の所定の箇所に切り込みが入っていて、かつ所定の箇所に、剥離可能な接着剤が塗布され、圧着されている広告用印刷物において、当該広告用印刷物の表面の所定の箇所に切り取り可能に葉書きが設けられていることを特徴とする葉書き付き広告用印刷物。」
イ 「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は葉書き付き広告用印刷物に関する。
ウ 「【0008】
…広告用印刷物自体に葉書きが付いていれば、その葉書きにてすぐに注文を出すことが出来ることになり、一般消費者等の多数のレスポンスを期待出来、広告に掲載されている商品等の購買力をより一層高めることが出来、広告としての機能をより効果的に発揮することが出来るものである。」
エ 「【0009】

図1は通常行われている方法で所定の箇所(左、右の上、下、中央部分)に剥離可能な接着剤が塗布され、圧着されていて左右に開くことが出来る広告用印刷物において、切り取り可能に葉書きが設けられている状態を示す図である。
広告用印刷物の表面の右下側に葉書き4が設けられていて、切り取り線であるミシン目5が入れられ、葉書き4を切り取ることが出来るようになっている。広告用印刷物には表面6の所定の箇所に切り込み8,8’が入っており、開く箇所、7,7’より左1,右2に開くことが出来るようになっている。…
【0010】
図2は図1の葉書き付き広告用印刷物から葉書き4を切り取って開いた状態を示す図である。…」

(6)甲第6号証
同じく、甲第6号証(実願平1-115348号(実開平3-55272号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲
1.商品等に関する宣伝,広告表示がされた宣伝,広告用シートであって、該宣伝,広告用シートのシート本体1の一部に、情報を表示するための情報表示部4を有し且つその情報表示部4を内面側として少なくとも2つ折り以上に折り畳み可能な葉書形成体3が、切り取り可能に設けられてなることを特徴とする宣伝,広告用シート。」(1頁4ないし12行)
イ 「(産業上の利用分野)
本考案は、宣伝,広告用シート,さらに詳しくは、いわゆる「ちらし」として新聞に添付して使用され、或いは雑誌中に綴じて使用される宣伝,広告用のシートであって、たとえば通信販売やダイレクトメール等において、アンケートや回答等用として返送しうるような葉書を形成する葉書形成体を具備した宣伝,広告用シートに関する。」(3頁8ないし15行)
ウ 「(実施例)

第1図は一実施例としての宣伝,広告用シートを示し、(イ)はシート本体の正面図、(ロ)は同背面図、(ハ)は介装シートの正面図、(ニ)は(ハ)のA-A線中間省略拡大断面図をそれぞれ示す。
第1図において、1は宣伝,広告用シートの紙製のシート本体で、表面1a及び裏面1bには所定の印刷が施されてなるとともに、その所定位置には、葉書の規格寸法の約2倍の大きさからなる葉書形成用体3が、ミシン目2を介して切り取り可能に設けられてなる。
そして、この葉書形成体3は、2つ折り可能な2枚のシート片3a,3bからなり、両シート片3a,3bの表面側には情報表示部4,4がそれぞれ設けられ、またシート片3aの裏面側には宛先,宛名表示部5が設けられ且つシート片3bの裏面側には送信者の住所,氏名の表示部6が設けられてなる。」(7頁下から5行ないし8頁下から6行)

2 本件特許発明について
(1)本件特許発明1の新規性進歩性について
本件特許発明1の新規性及び進歩性について検討する。
ア 甲第1号証に記載された発明を主引用発明とした場合
(ア)甲1の2発明を主引用発明とした場合
まず、甲第1号証に記載された発明である甲1の2発明を主引用発明とした場合について検討する。
a 対比
本件特許発明1と甲1の2発明を対比する。
(a)甲1の2発明は、「通信情報を表示した用紙32の裏面32aに透明シート4を接着剤33で接着し、透明シート4を接着した用紙32の中央部分34を郵便はがきの大きさに確保し、その両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、その二葉40、42の先端40a、42aを突き合わせた状態で、二葉40、42の透明シート4、4を中央部分34の透明シート4に剥離可能に密着させ、…用紙32の通信情報表示面の上面に透明シート4を積層接着する構成に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成するようにしてもよく、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにしてもよい」ものであるから、
i 甲1の2発明の「(用紙32の)中央部分34」、「(用紙32の)二葉40」及び「(用紙32の)二葉42」は、それぞれ、本件特許発明1の「中央面部」、「左側面部」及び「右側面部」に相当し、
ii 甲1の2発明の「『熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成』し、『用紙32の中央部分34…の両側36、38位置で各二葉40、42を折り曲げ、その二葉40、42の先端40a、42aを突き合わせた状態で、二葉40、42の透明シート4、4を中央部分34…に密着させ』、『このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させる』」との事項と、本件特許発明1の「左側面部(2)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,右側面部(3)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること、当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が、前記中央面部(1)の裏面及び当該分離して使用するもの(4)に貼着していること」とは、「左側面部の裏面に一過性の粘着剤が塗布されていること,右側面部の裏面に一過性の粘着剤が塗布されていること、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が、前記中央面部の裏面に貼着していること」との点において一致する。
(b)甲1の2発明の「重ね合わせ郵便はがき30」と、本件特許発明1の「印刷物」とは、「情報を表示した物」である点で共通する。
(c)よって、両者は、
「左側面部と中央面部と右側面部とからなる情報を表示した物であって,
左側面部の裏面に一過性の粘着剤が塗布されていること,
右側面部の裏面に一過性の粘着剤が塗布されていること,
当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が、前記中央面部の裏面に貼着していること
からなる情報を表示した物。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

・本件特許発明1は、中央面部に、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されており、左側面部の裏面に、当該分離して使用するものの上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布されており、右側面部の裏面に、当該分離して使用するものの上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布されており、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が、当該分離して使用するものに貼着しており、また、当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っているのに対し、甲1の2発明は、中央面部に、そのような分離して使用するものが印刷されているのか否か明らかではない点(以下「相違点1」という。)。
・情報を表示した物が、本件特許発明1では、印刷物であるのに対し、甲1の2発明では、印刷物であるのか否か明らかでない点(以下「相違点2」という。)

(d)上記(c)のとおり、本件特許発明1は、甲1の2発明と、上記相違点1、2において相違するから、本件特許発明1は甲1の2発明であるとはいえない。
b 判断
以下、上記相違点1、2について検討する。
(a)相違点1について
i 甲第1号証の第1実施の形態の「重ね合わせ郵便はがき1」は、図1及び図6に示されるとおり、「カードサイズ紙片20」が、「(隅部10aにカットライン16が形成されている側の)一方の片葉10」に形成されているものであって、「他方の片葉12」に形成されてはいないから、甲1の2発明の「重ね合わせ郵便はがき30」に上記第1の実施の形態に係る発明(甲1の1発明)を適用して「カードサイズ紙片20」を設けるとしても、当該「カードサイズ紙片20」は、請求人が主張するようにその「中央部分34」に設けられるのではなく、まずはその両側の「(カットライン44が形成された)二葉40」あるいは「(カットライン46が形成された)二葉42」に設けられるものと解するのが自然である。
ii また、甲第1号証には、第1実施の形態に関し、まず、「カードサイズ紙片20」を「重ね合わせ郵便はがき30」から切り取り、次に、通信情報をさらに詳しく見たいときには、「隅部10a」の「カットライン16」を利用して、「一方の片葉10」を「他方の片葉12」から全部引き剥がす、と記載されているところ(【0019】、【0020】)、「カードサイズ紙片20」と「(隅部10aに形成された)カットライン16」は、それぞれ同じ面に形成されていないと、「カードサイズ紙片20」を切り取った後に、「重ね合わせ郵便はがき1」を裏返すという動作をしなければ、上記「カットライン16」を用いて「一方の片葉10」を「他方の片葉12」から全部引き剥がすことができなくなるから、上記第1実施の形態において、「カードサイズ紙片20」は、「(隅部10aにカットライン16が形成されている)一方の片葉10」側に設けられており、「他方の片葉12」側に設けられてはいないと解することができる。
しかるところ、第2実施の形態(甲1の2発明)においても、「カードサイズ紙片20」を、仮に「(カットラインが形成されていない)中央部分34」に設けるとすると、当該「カードサイズ紙片20」を切り取った後に「(二葉40、42に形成された)カットライン44、46」を用いて当該「二葉40、42」を「中央部分34」から引き剥がす際、「重ね合わせ郵便はがき30」を裏返すという動作をしなければならないのは、前記第1実施の形態と同様であるから、やはり第2実施の形態においても、前記「カードサイズ紙片20」は、「(重ね合わせ郵便はがき30の)中央部分34」に設けられるのではなく、「重ね合わせ郵便はがき30」両側の「(カットライン44が形成された)二葉40」あるいは「(カットライン46が形成された)二葉42」に設けられるものと解される。
iii 上記i、iiの点に関し、請求人は、口頭審理陳述要領書(6、7頁。上記第4の4(1)ア(イ)参照。)等において、「甲1のカードサイズ紙片は、あくまではがきの宛名表示としての機能を果たす必要があることからはがきの表面側に位置する片葉10に設けられているのであって、片葉10の隅部のカットライン16との関係で設けられているのではない」、あるいは、「重ね合わせ郵便はがき30においては、裏面にも表示(記載)がなされることから、これを見るためにはがきを裏返すという動作は常に行われ、また、裏返すという動作自体きわめて簡単に行うことができ、手間が生ずるようなものではな」く、「カードサイズ紙片20を中央部分34に配置しても機能、動作上の障害は何ら発生せず、重ね合わせ郵便はがき30を裏返すという動作は、カードサイズ紙片20を中央部分34に配置することの阻害要因とはなりえない」と主張する。
確かに、「(はがきを)裏返すという動作自体」は「きわめて簡単に行うことができ」るものであり、「重ね合わせ郵便はがき30を裏返すという動作」それ自体が「カードサイズ紙片20を中央部分34に配置することの阻害要因」になるとまではいえない。
しかしながら、甲1の1発明は、「…重ね合わせ郵便はがき1を開封する場合、受取人は、カードサイズ紙片20の左下隅21を指でつまんで、矢印aの方向にカードサイズ紙片20を剥がすことにより、カードサイズ紙片20の裏面20bや他方の片葉12に表示されているイベントへの招待や新製品の紹介の通信情報を見ることができ、そして、通信情報をさらに詳しく見たいときには、受取人は、一方の片葉10の切り取り隅部10aをカットライン16から矢印bの方向に切離すことで、一方の片葉10と他方の片葉12との間に段差を形成でき、つぎに、その段差から一方の片葉10を矢印cの方向に剥がし、その段差を利用して一方の片葉10を容易に剥がすことができ、ついで、一方の片葉10を他方の片葉12から全部引き剥がして、二葉10、12の裏面の表示を詳しく見ることができ」るものであって、「(用紙2及び透明シート4を中央8で折り曲げて形成される)二葉10、12」のうち、「(隅部10aにミシン目状等の)カットライン16」が形成された側の「片葉10」に「カードサイズ紙片20」が設けられているからこそ、受取人は、「カードサイズ紙片20」を剥がした後、「一方の片葉10」に形成された「切り取り隅部10a」を「カットライン16」から切離して当該「一方の片葉10」を剥がす際に「重ね合わせ郵便はがき30」を裏返す必要が生じないものである。そして、第2実施の形態においても、上記「カードサイズ紙片20」が設けられるとすれば、それは、「隅部40b」、「隅部42b」に「カットライン44」、「カットライン46」が形成された、「重ね合わせ郵便はがき30」を裏返す必要のない、「二葉40」、「二葉42」においてであると解するのが自然であるのは、上記i、iiで述べたとおりである。
iv 以上の検討によれば、甲第1号証の第2実施の形態において、「カードサイズ紙片20」を「重ね合わせ郵便はがき30」のどの部分に設けるかに関し、当業者は通常それを「中央部分34」に設けるとは解さないということができる。
v したがって、甲1の2発明からは、当業者は上記相違点1を容易に想到し得るとはいえない。
vi また、請求人が提出した各甲号証をみても、甲1の2発明において、「カードサイズ紙片20」を「中央部分34」に設けることに関し、当業者が容易に想到し得るといえる記載や示唆は見当たらない。
vii よって、甲1の2発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成となすことを、当業者は容易に想到し得るということはできない。
(b)相違点2について
甲1の2発明は、「(通信情報を表示した用紙32からなる)重ね合わせ郵便はがき」に関するものであるところ、当該「(表示される)通信情報」を印刷により形成して、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件特許発明1は、あとから開いた右側面部(または左側面部)に分離して使用するものが付いてきて、しかもその一部が、右側面部(または左側面部)から飛び出てくるという、請求人が提出した各甲号証に記載された発明あるいはその記載事項からは予測し得ない、顕著な効果が得られるものである。
よって、本件特許発明1は、甲1の2発明を主引用発明とした場合に、当該甲1の2発明及び請求人が提出した各甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)甲1の1発明を主引用発明とした場合
次いで、同じく甲第1号証に記載された発明である甲1の1発明を主引用発明とした場合について検討する。
a 対比
本件特許発明1と甲1の1発明を対比する。
(a)甲1の1発明の「重ね合わせ郵便はがき30」と、本件特許発明1の「印刷物」とは、「情報を表示した物」である点で共通する。
(b)甲1の1発明は、「用紙2の略中央8で折り曲げた二葉10、12のうちの一方の片葉10に所望形状の紙片(カードサイズ紙片)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れ、…用紙2の通信情報表示面の上面に透明シート4を積層接着する構成に代えて熱蒸着可能なコーティング層を用紙の通信情報表示面の上面に印刷手法により形成するようにしてもよく、このコーティング層を向かい合わせてから加熱して対応面同士を仮接着させるようにしてもよい」ものであって、前記「(ミシン目状等の)カットライン22」は、「(カードサイズ紙片20の周囲に入った)切り込み」であるということができるから、
i 甲1の1発明の「(所望形状の)カードサイズ紙片」は、本件特許発明1の「(所定の大きさの)分離して使用するもの」に相当し、
ii 甲1の1発明の上記の事項と、本件特許発明1の「左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって,中央面部(1)は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(4)が印刷されていること,左側面部(2)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,右側面部(3)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること,当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が、前記中央面部(1)の裏面及び当該分離して使用するもの(4)に貼着していること、当該分離して使用するもの(4)の周囲に切り込みが入っていること」とは、「2つの面部を有する情報を表示した物であって、一方の面部には、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが設けられ、他方の面部の裏面には、当該分離して使用するものの上部、下部、側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、当該他方の面部の裏面が、前記一方の面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着しており、当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っている」との点で一致する。
(c)よって、両者は、
「2つの面部を有する情報を表示した物であって、一方の面部には、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが設けられ、他方の面部の裏面には、当該分離して使用するものの上部、下部、側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、当該他方の面部の裏面が、前記一方の面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着しており、当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っている、情報を表示した物。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

・本件特許発明1は、左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって、中央面部に、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷され、左側面部の裏面は、当該分離して使用するものの上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、右側面部の裏面は、当該分離して使用するものの上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が、前記中央面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着しているのに対し、甲1の1発明は、用紙2の略中央8で折り曲げた二葉10、12からなり、そのうちの一方の片葉10にカードサイズ紙片20となるようにカットライン22を入れた点(以下「相違点3」という。)。

(d)上記(c)のとおり、本件特許発明1は、甲1の1発明と、上記相違点3において相違するから、本件特許発明1は甲1の1発明であるとはいえない。
b 判断
上記相違点3について検討する。
甲第1号証の記載及び請求人が提出した他の甲号証をみても、甲1の1発明の「(一方の片葉10にカードサイズ紙片20が設けられた、二葉10、12からなる)重ね合わせ郵便はがき1」を、「(『左側面部』、『中央面部』、『右側面部』とからなるとともに、『カードサイズ紙片20』を前記『中央面部』に設けた)印刷物」となすことに関し、当業者が容易に想到し得るといえる記載や示唆は見当たらない。
したがって、甲1の1発明において、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成となすことを、当業者は容易に想到し得るということはできない。
そして、本件特許発明1は、あとから開いた右側面部(または左側面部)に分離して使用するものが付いてきて、しかもその一部が、右側面部(または左側面部)から飛び出てくるという、請求人が提出した各甲号証に記載された発明あるいはその記載事項からは予測し得ない、顕著な効果が得られるものである。
よって、本件特許発明1は、甲1の1発明を主引用発明とした場合に、当該甲1の1発明及び請求人が提出した各甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(ウ)小括
上記(ア)a(d)及び(イ)a(d)のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明である甲1の2発明あるいは甲1の1発明であるとはいえない。
また、上記(ア)b及び(イ)bのとおり、本件特許の請求項1に係る発明は、甲1の2発明を主引用発明とした場合及び甲1の1発明を主引用発明とした場合とも、当該主引用発明及び請求人が提出した各甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 甲第2号証に記載された発明(甲2発明)を主引用発明とした場合
次に、甲2発明を主引用発明とした場合について検討する。
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
a 甲2発明の「2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4」は、「その製造工程では先ず絵柄等の印刷を施した2つ折り用紙1を用意し、この用紙1の一面または両面に印字を行い、その折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され、有価証券情報7の印字部外周に極細のスリット9を切り込む加工を施し、そのスリット9の深さは折畳み対向紙片4及びフィルム5aをその厚み方向に貫通する深さとし、その有価証券情報7の印字部を含む折畳み対向紙片4の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられ」るから、
(a)甲2発明の「(折畳み対向紙片2と折畳み対向紙片4を有する)2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4」は、本件特許発明1の「左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物」と、「第1、第2の面部を有する印刷物」である点で共通し、
(b)甲2発明の「プリペイドカード8」は、本件特許発明1の「分離して使用するもの」に相当し、
(c)甲2発明の「折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され、有価証券情報7の印字部外周に極細のスリット9を切り込む加工を施し、そのスリット9の深さは折畳み対向紙片4及びフィルム5aをその厚み方向に貫通する深さとし、その有価証券情報7の印字部を含む折畳み対向紙片4の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられ」との事項と、本件特許発明1の「中央面部(1)は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するもの(4)が印刷されていること」とは、「第1の面部は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されている」との点で共通し、
(d)甲2発明は、本件特許発明1の「当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っている」との事項を備える。
b 甲2発明は、「用紙1をV型に2つに折畳み、その用紙1の折畳み対向紙片2、4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着した」ものであって、「オープンタイプフィルム5は2枚のフィルム5a、5bからなり、これらを重ねて折畳み対向紙片2及び折畳み対向紙片4との間に介挿し熱圧着させると、一方のフィルム5aと折畳み対向紙片4、及び、他方のフィルム5bと折畳み対向紙片2は永久接着状態となるが、フィルム5a、5bどうしは擬似接着状態となり」、「擬似接着の手段としてオープンタイプフィルム5を用いる代わりに、糊状のものを適用することができる」ものであり、「折畳み対向紙片2」の裏面は、「(折畳み対向紙片4の一部に設けられた)プリペイドカード8」の上部、下部、側部の内側及び外側に該当する部分に前記「糊状のもの」が塗布され、また、「折畳み対向紙片2」の裏面が、「折畳み対向紙片4」の裏面及び「プリペイドカード8」の貼着しているということができるから、甲2発明の「(抜き取り可能なプリペイドカード8が設けられた)折畳み対向紙片4と折畳み対向紙片2との間に糊状のものを適用して擬似接着し」との事項と、本件特許発明2の「左側面部(2)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分(5,6)に一過性の粘着剤が塗布されていること,右側面部(3)の裏面は、当該分離して使用するもの(4)の上部、下部、右側部の内側及び外側に該当する部分(7,8)に一過性の粘着剤が塗布されていること,当該左側面部(2)の裏面及び当該右側面部(3)の裏面が、前記中央面部(1)の裏面及び当該分離して使用するもの(4)に貼着していること」とは、「第2の面部の裏面は、当該分離して使用するものの上部、下部、側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布されていること,当該第2の面部の裏面が、第1の面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着している」との点で一致する。
c よって、両者は、
「第1、第2の面部を有する印刷物であって,
第1の面部は、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されていること,
第2の面部の裏面は、当該分離して使用するものの上部、下部、側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布されていること,
当該第2の面部の裏面が、第1の面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着していること
当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っていること、
からなる印刷物。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

・本件特許発明1は、印刷物が、左側面部と中央面部と右側面部とからなり、中央面部に分離して使用するものが印刷され、左側面部の裏面及び右側面部の裏面の当該分離して使用するものの上部、下部、左側部の内側及び外側に該当する部分に一過性の粘着剤が塗布され、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面が、前記中央面部の裏面及び当該分離して使用するものに貼着しているのに対し、甲2発明は、印刷物が、用紙1をV型に2つに折り畳んだ2つ折りタイプのものである点(以下「相違点4」という。)。

(イ)判断
上記相違点4について検討する。
a 相違点4につき、請求人は、審判請求書(36ないし38頁。上記第4の4(2)ア(イ)参照。)において、以下のように主張する。
「甲1には、引用発明1の他に段落【0013】、【0016】、【0025】等の記載より、以下発明(引用発明1の2)が記載されている。
『通信情報を表示した用紙2の裏面2aに透明シート4を接着剤6で接着し、用紙2及び透明シート4を中央8で二葉10、12に折り曲げて、二葉10、12の透明シート4、4同士を重ね合わせ、両透明シート4、4を剥離可能に接着剤14で密着した重ね合わせ郵便はがき1であって、
用紙32の中央部分34に所望形状の紙片(カードサイズ紙片)20となるようにミシン目状等のカットライン22を入れ、カードサイズ紙片20は、例えばその表面20aに郵送先の宛名を表示し、その裏面20bに、イベントヘの招待や新製品の紹介等の情報を表示することにより、イベントヘの招待状や新製品を紹介した各種データ入りの小紙片として利用することができるようにした重ね合わせ郵便はがき1。』
この引用発明1の2と引用発明1の関係を見てみると、両者は、甲1に記載された発明の第1実施の形態と第2実施の形態であり、後者は前者に比べて用紙2の折る位置だけを異ならせたものにすぎない(【0021】)。よって、引用発明1の2の折り形態等を引用発明1の折り形態等に変更すること、すなわち、『二面(二葉10、12)を折り重ねて擬似接着させ、一方の面部(片葉10)に切り込み(カットライン22)により分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)を形成した印刷物(重ね合わせ郵便はがき)』(引用発明1の2)を、『3つ折りの観音開きに3面(中央部分34、二葉40、42)を折り重ねて擬似接着させ、中央面部(中央部分34)に切り込み(カットライン22)により分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)を形成し、両側面部(二葉40、42)が中央面部(中央部分34)及び分離して使用するもの(カードサイズ紙片20)に擬似接着するようにした印刷物(重ね合わせ郵便はがき)』(引用発明1)に変更することは、当業者が適宜行う選択事項にすぎない。」
b しかしながら、請求人が主張するように、甲第1号証の第1実施の形態の折り形態を、第2実施の形態の折り形態に変更することを当業者は容易に想到し得るとしても、上記ア(イ)aで述べたとおり、甲第1号証の第2実施の形態では、そもそも、「カードサイズ紙片20」は、「(重ね合わせ郵便はがき30の)中央部分34」に設けられるのではなく、「重ね合わせ郵便はがき30」両側の「(カットライン44が形成された)二葉40」あるいは「(カットライン46が形成された)二葉42」に設けられるものと解されるから、甲2発明において、その折り形態を甲第1号証の第2実施の形態の折り形態に変更したとしても、本件特許発明1に係る上記相違点4のように、分離して使用するものが中央面部に印刷されるものになることはない。
c また、請求人が提出した他の甲号証をみても、甲2発明において、上記相違点4に係る本件特許発明1の構成となすことを、当業者が容易に想到し得る記載や示唆は見当たらない。
d したがって、請求人が提出した各甲号証をみても、甲2発明において、上記相違点4に係る本件特許発明1の構成となすことを当業者は容易に想到し得たとはいえない。

そして、本件特許発明1は、あとから開いた右側面部(または左側面部)に分離して使用するものが付いてきて、しかもその一部が、右側面部(または左側面部)から飛び出てくるという、請求人が提出した各甲号証に記載された発明あるいはその記載事項からは予測し得ない、顕著な効果が得られるものである。

(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、本件特許の請求項1に係る発明は、甲2発明を主引用発明とした場合に、当該甲2発明、甲第1号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ まとめ
上記ア(ウ)のとおり、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、上記イ(ウ)のとおり、甲第2号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、3の進歩性について
次に、本件特許発明2、3の進歩性につき、検討する。
本件特許発明2、3(本件特許の請求項2、3に係る発明)は、それぞれ、本件特許発明1(本件特許の請求項1に係る発明)を引用する従属項であるところ、上記(1)で検討したとおり、本件特許の請求項1に係る発明(本件特許発明1)は、甲第1号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3に係る発明(本件特許発明2、3)も、同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び請求人が提出した他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-29 
結審通知日 2013-12-05 
審決日 2013-12-19 
出願番号 特願2004-48392(P2004-48392)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (B42D)
P 1 113・ 121- Y (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 黒瀬 雅一
藤本 義仁
登録日 2009-05-22 
登録番号 特許第4310416号(P4310416)
発明の名称 印刷物  
代理人 櫻井 彰人  
代理人 藤枡 裕実  
代理人 中所 昌司  
代理人 金山 聡  
代理人 生田 哲郎  
代理人 高橋 隆二  
代理人 佐野 辰巳  

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