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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1293209
審判番号 不服2013-10948  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2014-10-22 
事件の表示 特願2010-254258「有機層及びホトルミネセント層を有する光源」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日出願公開,特開2011- 29210〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年4月28日に出願した特願2004-132855号(パリ条約による優先権主張2003年4月29日,米国)の一部を平成22年11月12日に新たな特許出願としたものであって,平成23年10月31日付けで拒絶理由が通知され,平成24年5月8日に意見書が提出され,同年7月17日付けで拒絶理由が通知され,平成25年1月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年2月6日付けで拒絶査定がなされたところ,同年6月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
なお,審判請求人は,当審における平成25年10月4日付け審尋に対して,平成26年4月7日に回答書を提出している。

第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年6月12日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
平成25年6月12日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成25年1月24日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲について補正しようとするもので,そのうち,請求項1の補正については次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
(1)本件補正前
「【請求項1】
1対の電極(120,130)の間に配置された有機発光層(110)と,該有機発光層(110)と電極(120,130)との間に配置された少なくとも1つの電荷ブロッキング層(116,126)とから構成された,第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光デバイス(100)と,
前記有機発光デバイス(100)によって放出された光の一部を吸収して第2のスペクトルを有する光を放出する蛍光体層(115)と,
を備え,
前記蛍光体層(115)によって吸収される部分の光は,前記有機発光デバイス(100)によって放出された光の全部よりも少なく,前記蛍光体層(115)が光を散乱する蛍光体粒子を含んでおらず,蛍光体層によって吸収されない前記有機発光デバイスからの放出光が前記第2のスペクトルを有する光と混合して均一な色の光を生じることを特徴とする光源(200,300,400)。」
「【請求項10】
前記蛍光体層(115)が,クマリン460,クマリン6,ナイルレッド,ペリレンとベンゾピレン,クマリン染料,ポリメチン染料,キサンチン染料,オキソベンツアントラセン染料,ペリレンビス(ジカルボキシミド)染料,ピラン及びチオピランからなる群から選択される有機ホトルミネセント材料からなる,請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の光源(200,300,400)。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
1対の電極(120,130)の間に配置された有機発光層(110)と,該有機発光層(110)と電極(120,130)との間に配置された少なくとも1つの電荷ブロッキング層(116,126)とから構成された,第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光デバイス(100)と,
前記有機発光デバイス(100)によって放出された光の一部を吸収して第2のスペクトルを有する光を放出する蛍光体層(115)であって,ペリレンとベンゾピレン,クマリン染料,ポリメチン染料,キサンチン染料,オキソベンツアントラセン染料,ペリレンビス(ジカルボキシミド)染料,ピラン及びチオピランからなる群から選択される有機ホトルミネセント材料からなる蛍光体層(115)と,
を備え,
前記蛍光体層(115)によって吸収される部分の光は,前記有機発光デバイス(100)によって放出された光の全部よりも少なく,前記蛍光体層(115)が光を散乱する蛍光体粒子を含んでおらず,蛍光体層によって吸収されない前記有機発光デバイスからの放出光が前記第2のスペクトルを有する光と混合して均一な色の光を生じることを特徴とする光源(200,300,400)。」

2 新規事項の追加及び補正の目的について
本件補正により請求項1に付加された,蛍光体層(115)が「ペリレンとベンゾピレン,クマリン染料,ポリメチン染料,キサンチン染料,オキソベンツアントラセン染料,ペリレンビス(ジカルボキシミド)染料,ピラン及びチオピランからなる群から選択される有機ホトルミネセント材料からなる」なる点は,願書に最初に添付した明細書の【0043】及び【0059】に記載されており,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされた補正であるから,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
また,本件補正後の請求項1に係る前記補正は,本件補正前の請求項10について,その発明特定事項である「有機ホトルミネセント材料」の具体的材質の選択肢から「ナイルレッド」を削除するとともに,当該選択肢中の「クマリン染料」と重複する物質であった「クマリン460」及び「クマリン6」を削除して「クマリン染料」に統一し,かつ,当該請求項10のうち請求項1の記載のみを引用するものを独立形式の記載に改めて本件補正後の請求項1とするものであって,本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,改正前特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)について,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 独立特許要件について
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正によって補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記1(2)にて示したとおりのものと認める。

(2)引用例
ア 特開2001-223078号公報
(ア)特開2001-223078号公報(以下「引用例1」という。)は,原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された,本願の優先権主張の日(以下「本願優先日」という)前に頒布された刊行物であって,当該引用例1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【請求項1】 第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光素子と,前記有機発光素子によって放出された光の一部を吸収しかつ第2のスペクトルを有する光を放出する蛍光体層とを含んでいて,前記蛍光体層によって吸収される部分の光は前記有機発光素子によって放出された光の全部ではないことを特徴とする光源。
【請求項2】 前記蛍光体層が光を散乱させる離散蛍光体粒子から成る請求項1記載の光源。
・・・(中略)・・・
【請求項6】 前記有機発光素子によって放出された光が前記蛍光体層によって放出された光と混合されて第3のスペクトルを有する光を生じる請求項1記載の光源。」
b 「【0001】
【発明の分野】本発明は照明用途に関するものであって,更に詳しく言えば,有機発光素子と比較的大きい面積を有し得るホトルミネセンス材料の層とを組合わせて成る光源に関する。
・・・(中略)・・・
【0005】
【発明の概要】本発明の一側面に係わる光源は,第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光素子と,前記有機発光素子によって放出された光の一部を吸収しかつ第2のスペクトルを有する光を放出するホトルミネセンス材料の層とを含んでいる。無機蛍光体から成り得るホトルミネセンス材料の層は,有機発光素子によって放出された光の全部を吸収しないのが通例である。有機発光素子によって放出された光はホトルミネセンス材料によって放出された光と混合され,それによって第3のスペクトルを有する光が得られる。
【0006】本発明の実施例は,公知の素子に比べて利点を有する。たとえば,ホトルミネセンス材料として蛍光体が使用されれば,有機発光素子から放出された光は散乱を受け,従って光源の全面積にわたる光出力の一様性が改善される。また,多くの蛍光体は長期にわたって比較的安定であるため,本発明の実施例に係わる光源は長期にわたって良好な色安定性を有する。」
c 「【0008】
【好適な実施の態様の詳細な説明】一般的な照明用途にとっては,高い演色指数(CRI)及び3000?6500°Kの範囲内の色温度を有する薄くて平坦かつ安価な拡大白色光源が得られれば望ましい場合が多い。
・・・(中略)・・・
【0011】本発明の実施の態様に係わる光源は,青色又は紫外(UV)スペクトル領域内の光を放出する有機発光素子と,蛍光体粒子のごときホトルミネセンス材料の被膜とを組合わせたものから成っている。ホトルミネセンス材料(たとえば,蛍光体粒子)は,有機発光素子から放出される青色光又は紫外光を吸収してより長い波長の光を再放出するように選択されるのが通例である。蛍光体粒子の粒度は,蛍光体から再放出される光を蛍光体により吸収されない青色光又は紫外光と効果的に混合し,そして光源から放出される光の最終色を均質にする良好な色の混合をもたらすのに十分な光の散乱を可能にするように選定されるのが通例である。更にまた,蛍光体粒子の吸収及び発光スペクトル特性及び強度は,非吸収光と蛍光体放出光とから成る組合せスペクトルがたとえば3000?6500°Kの範囲内の色温度及び60より高いCRIを有する白色光を生じるように選定されるのが通例である。
【0012】図9は,典型的な有機発光素子の構造を示している。有機発光素子100は,2つの電極(たとえば,陰極120及び陽極130)の間に配置された有機発光層110を含んでいる。有機発光層110は,陽極及び陰極の間に電圧を印加すると光を放出する。「有機発光素子」という用語は,一般に,有機発光層,陰極及び陽極の組合せを指す。有機発光素子100は,図9に示されるごとく,ガラス又は透明なプラスチック〔たとえば,PET(マイラ(MYLAR)),ポリカーボネートなど〕のごとき基板125上に形成することができる。
【0013】陽極及び陰極が有機発光層110中に電荷キャリヤ(すなわち,正孔及び電子)を注入すると,それらは再結合して励起分子又は励起子を生成する。かかる分子又は励起子が消滅する時に光が放出される。かかる分子によって放出される光の色は,分子又は励起子の励起状態と基底状態とのエネルギー差に依存する。通例,印加電圧は約3?10ボルトであるが,30ボルト又はそれ以上にも達し得る。また,外部量子効率(放出光子/入射電子)は0.01?5%の範囲内にあるが,10%,20%,30%又はそれ以上にも達し得る。有機発光層110は約50?500ナノメートルの厚さを有するのが通例であり,また電極120及び130の各々は約100?1000ナノメートルの厚さを有するのが通例である。
・・・(中略)・・・
【0016】本発明の実施の態様においては,各種の有機発光層110を使用することができる。図9に示された実施の一態様に従えば,有機発光層110は単一の層から成る。有機発光層110は,たとえば,ルミネセンスを示す共役重合体,電子輸送分子及び発光材料を添加した正孔輸送重合体,並びに正孔輸送分子及び発光材料を添加した不活性重合体から成り得る。
【0017】図10?13に示された本発明のその他の実施の態様に従えば,有機発光層110は正孔注入,正孔輸送,電子注入,電子輸送及びルミネセンスの機能を果たす2つ以上の二次層から成る。機能する素子を得るために必要なのは発光層のみである。とは言え,追加の二次層は一般に正孔及び電子が再結合して光を生じるための効率を向上させる。従って有機発光層110は,たとえば,正孔注入用二次層,正孔輸送用二次層,発光用用二次層及び電子注入用二次層を含む1?4の二次層から成り得る。また,1つ以上の二次層は正孔注入,正孔輸送,電子注入,電子輸送及びルミネセンスのごとき1つ以上の機能を達成する材料から成り得る。」
d 「【0031】次に図1を見ると,本発明の実施の一態様に係わる光源200が示されている。ここで言う「光源」とは,有機発光素子100をホトルミネセンス層と組合わせたものを一般的に意味する。図1に示されるごとく,蛍光体粒子は透明な基板125上にホトルミネセンス層115として配置されている。有機発光素子100から放出された光の一部は蛍光体粒子によって吸収され,そしてより長い波長の光として再放出される。蛍光体粒子層115中における散乱により,より長い波長の光は吸収されない青色光又は紫外光と混合される結果,均質な白色光が放出される。通例,蛍光体粒子層115は有機発光素子100によって放出された光の約30?90%を吸収する。この割合は,一般に,有機発光素子及び蛍光体のスペクトル,蛍光体の量子効率,並びに所望の色に基づいて選定される。」
e 「【0037】上記のごとく,本発明の光源は有機発光層からの光を吸収して通例はより長い波長を有する光を放出するホトルミネセンス材料の層を含んでいる。かかるホトルミネセンス材料は無機蛍光体から成るのが通例であるが,有機染料のごとき有機ホトルミネセンス材料から成っていてもよい。本発明の実施の態様に従えば,蛍光体材料は有機発光素子100からの青色光を吸収し,そしてより低い波長の光を再放出する。その結果,3000?6500°Kの範囲内の色温度が良好な演色性と共に得られることになる。」
f 「【0043】・・・(中略)・・・ホトルミネセンス層中において使用し得る有機染料の実例としては,クマリン460(青色),クマリン6(緑色)及びナイルレッドが挙げられる。」

(イ)前記(ア)aないしfを含む引用例1の記載全体からみて,引用例1には,次の発明が記載されていると認められる。
「陰極120及び陽極130と,前記陰極120及び陽極130との間に配置された有機発光層110とを含み,青色又は紫外スペクトル領域内の第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光素子100と,
前記有機発光素子100によって放出された光の一部を吸収しかつより長い波長の第2のスペクトルを有する光を放出する,有機ホトルミネセンス材料の層である蛍光体層115であって,前記有機ホトルミネセンス材料がクマリン6(緑色)又はクマリン460(青色)である蛍光体層115とを含んでおり
前記蛍光体層115によって吸収される部分の光は前記有機発光素子100によって放出された光の全部ではなく,前記蛍光体層115によって吸収されない光が前記蛍光体層115によって放出された光と混合されて第3のスペクトルを有する光を生じるよう構成された光源200。」(以下「引用発明」という。)

イ 周知技術
(ア)特開2003-45666号公報
特開2003-45666号公報(以下「周知例1」という。)は,原査定の拒絶の理由において周知例(「引用文献2」)として例示された,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該周知例1には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0022】
【発明の実施の形態】図1は,発光効率の向上を目的として多層に積層された素子構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構造を示す。有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は,図外の基板上に形成された陽極層10に,正孔輸送層20,電子ブロック層30,発光層40,正孔ブロック層50及び電子輸送層60の各薄膜層が,陽極層10と陰極層70との両電極層間で順次積層されて成る多層積層構造であり,発光層40は,発光層ドープ剤41と発光層ホスト剤42とを有して構成されている。」
b 「【0038】また,電子ブロック層30は,陰極層70から発光層40へ注入された電子がそのまま陽極層10へ通過してしまうことを防ぐため電子をブロックするための層であり,電子ブロック性物質で構成される。」
c 「【0073】また,正孔ブロック層50は,陽極層10から発光層40へ注入された正孔がそのまま陰極層70へ通過してしまうことを防ぐため正孔をブロックするための層であり,正孔ブロック性物質で構成される。」
d 「【0104】図2で示される有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は,本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の第1の実施形態を示す。図1の電子ブロック層30と正孔ブロック層50とが省略されているが,図2において,正孔輸送層20に電子ブロック効果を,電子輸送層60に正孔ブロック効果をそれぞれ持たせて,発光効率を維持させることができる。」

(イ)特開2002-184581号公報
特開2002-184581号公報(以下「周知例2」という。)は,原査定の拒絶の理由において周知例(「引用文献3」)として例示された,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該周知例2には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0100】
【実施例】[第1の実施例]図1は本発明の第1の実施例における有機EL素子を示す模式的な断面図である。
【0101】図1に示す有機EL素子100の作製時には,予めガラス基板1上にIn_(2)O_(3)-SnO_(2)(ITO)からなる陽極2を形成し,この陽極2上に,10^(-4)Pa台の真空度で蒸着法により,正孔注入層3,正孔輸送層4,混合物発光層5,正孔阻止層6および電子注入層7を順に形成して有機薄膜層10を形成する。さらに,この有機薄膜層10上に,インジウムとマグネシウムとの合金(Mg:In)からなる陰極8を形成する。」
b 「【0126】ここで,この場合においては,正孔阻止層6を構成するBCPのイオン化ポテンシャル(6.7eV)と混合物発光層5を構成するTCTAのイオン化ポテンシャル(5.7eV)との差が1.0eVと非常に大きく,BCPから構成される正孔阻止層6とTCTAから構成される混合物発光層5との間のエネルギー障壁が1.0eVと非常に大きい。このため,後述するように,混合物発光層5から正孔阻止層6に正孔が注入されるのを防止することが可能となり,混合物発光層5に正孔を蓄積しておくことが可能となる。」
c 「【0138】さらに,特にこの場合においては,前述のように混合物発光層5を構成するTCTAのイオン化ポテンシャルと正孔阻止層6を構成するBCPのイオン化ポテンシャルとの差が大きく混合物発光層5と正孔阻止層6との間のエネルギーギャップが大きいため,混合物発光層5に正孔を蓄積しておくことが可能となる。このため,TCTAから構成される混合物発光層5においては,効率よく正孔と電子が結合する。したがって,このようなTCTAから構成される混合物発光層5においては,良好な発光効率で青色発光を実現することが可能となる。」

(ウ)特開平11-273867号公報
特開平11-273867号公報(以下「周知例3」という。)は,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該周知例3には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0015】以下,本発明の有機電界発光素子について,図面を参照しながら説明する。図1は本発明に用いられる一般的な有機電界発光素子の構造例を模式的に示す断面図であり,1は基板,2は陽極,4は正孔輸送層,5は発光層,6は正孔阻止層,8は陰極を各々表わす。」
b 「【0045】発光層5の上には正孔阻止層6が設けられる。正孔阻止層6は,発光層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と,陰極から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては,電子移動度が高く正孔移動度が低いこと,および,正孔を効率的に発光層内に閉じこめるために,発光層のイオン化ポテンシャルより0.2eV以上大きいイオン化ポテンシャルの値を有する必要がある。正孔輸送層は電子輸送能力を持たない材料で構成されることから,正孔阻止層は正孔と電子を発光層内に閉じこめて,発光効率を向上させる機能を有する。」
c 「【0062】・・・(中略)・・・尚,図1とは逆の構造,すなわち,基板上に陰極8,正孔阻止層6,発光層5,正孔輸送層4,陽極2の順に積層することも可能であり,既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。」

(エ)前記(ア)ないし(ウ)からみて,次の技術的事項が本願優先日前に周知であったと認められる。
「陰極及び陽極と,当該陰極及び陽極の間に配置された発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において,陽極から発光層へ注入された正孔が陰極へ通過してしまうことを防ぐ正孔ブロック層を陰極と発光層との間に設けたり,陰極から発光層へ注入された電子が陽極へ通過してしまうことを防ぐ電子ブロック層を陽極と発光層との間に設けることによって,有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させること。」(以下「第1周知技術」という。)

(オ)特開平3-152897号公報
特開平3-152897号公報(以下「周知例4」という。)は,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該周知例4には次の記載がある。(下線は,後述する第2周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「すなわち,本発明は有機エレクトロルミネッセンス材料部(以下,有機EL材料部と記す)及び該エレクトロルミネッセンス材料の発光を吸収し可視光の蛍光を発光する蛍光材料部を有するエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を提供するものである。」(3頁左上欄4?9行)
b 「次いで本発明のおける蛍光材料部は,上記の有機EL材料部に存在する発光層からの発光を吸収して,波長変換できる蛍光色素を含有するものであればよい。
ここで,蛍光色素としては市販のレーザー色素等が好ましいが,固体状態(樹脂中での分散状態も含む)で強い蛍光性を有するものであれば,特に制限はない。
具体的には紫外光から青色に変化する色素としては,1,4-ビス(2-メチルスチリン)ベンゼン,トランス-4,4’-ジフェニルスチルベン等のスチルベン系色素,7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン等のクマリン系色素が挙げられる。
また,青色のEL光を励起光として緑色に変換する場合は,2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフロルメチルキノリジノ(9,9a,1-gh)クマリン(クマリン153)等のクマリン色素が挙げられる。
青色から緑色にかけての波長の励起光を吸収し,橙色から赤色にかけての色へ変換する色素としては4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチルリン)-4H-ピラン(DCM)等のシアニン系色素,1-エチル-2-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-ピリジウム-パーコラレイト(ピリジンI)等のピリジン系色素,ローダミンB,ローダミン6G等のキサンテン系色素,他にオキサジン系が挙げられる。
この蛍光材料部は,上述に例示するような蛍光色素を蒸着あるいはスパッタリング法で製膜された膜,適当な樹脂を結着性樹脂としてその中に分散させた膜等いずれの形態であってもよい。・・・(中略)・・・
また,膜厚を調整することで,有機EL材料部の発光層から発光される励起光の透過強度を変化させることができる。膜厚を薄くすると蛍光材料部を通して見た光は,EL励起光の透過成分と蛍光成分が混ざり白色光に近いものになる。膜厚を適当に調整すれば色度的に完全な白色光を得ることも可能である。
一方,膜厚を厚くするとEL透過成分が少なくなり,蛍光成分のみの光を得ることが可能となる。
以上のようにして,本発明の蛍光材料部を得ることができる。
本発明のEL素子は,上述の励起光を発光する有機EL材料部及び変換光を発光する蛍光材料部からなるものである。その構成は有機EL材料部で発光した励起光が減衰されず,効率良く蛍光材料部に吸収され,かつ蛍光材料部が発光した励起光が減衰されず,外部へ取り出せる構成である必要がある。そのためには,蛍光材料部は有機EL材料部の両電極間内部以外に存在させなけらばならない。具体的に例示すると次の如くである。
○1(審決注:○囲み数字の1を「○1」と記載した。)蛍光材料部を有機EL材料部の透明電極あるいは半透明電極上に積層する。例えば,波長変換蛍光材料部/透明あるいは半透明電極/発光層及び正孔,電子注入層/電極/支持基板,あるいは電極/発光層及び正孔,電子注入層/透明あるいは半透明電極/波長変換蛍光材斜部/透明支持基板の構成のEL素子が挙げられる。」(9頁左下欄6行?10頁右上欄17行)
c 「〔実施例〕
次に本発明を実施例よりさらに詳しく説明する。
実施例1
(1)有機EL材料部の製造
・・・(中略)・・・
(2)波長変換蛍光材料部の製造
・・・(中略)・・・
まず上記の構造のクマリン153を4mgとポリメチルメタクリレート(PMMA)1.2gをジクロロメタンl1gに溶解し,クマリン153が分散されたPMMAのジクロロメタン溶液を作製した。クマリンの分散濃度は対PMMA比1.3×10^(-2)モル/lであった。
次によく洗浄された25mm×75mm×1.1mmの大きさのガラス基板上にこの溶液を5ml滴下し,前面に展開した。これを大気中に一昼夜放置し自然乾燥した。
その後真空乾燥機で真空度0.1Torr,温度50℃の条件で2時間乾燥し溶媒のジクロロメタンを完全に除去した。その結果クマリン153が上記濃度分散された膜厚80μmのPMMA薄膜ができた。」(10頁右下欄9行?11頁左下欄末行)

(カ)特開2000-256565号公報
特開2000-256565号公報(以下「周知例5」という。)は,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該周知例5には次の記載がある。(下線は,後述する第2周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,蛍光変換膜用樹脂組成物と,蛍光変換膜およびカラー化有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。さらに詳しくは,蛍光変換効率が高くかつ色度の安定性に優れた蛍光変換膜を得るための樹脂組成物とそれを用いた蛍光変換膜および,該蛍光変換膜と有機エレクトロルミネッセンス素子と組合せてなる耐久性に優れたカラー化有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。」
b 「【0009】
【発明の実施の形態】本発明は,(a)フォトレジスト材料100重量部,(b)蛍光顔料または蛍光染料10?60重量部,(c)酸化防止剤および/または光安定剤0.1?10重量部からなる蛍光変換膜用樹脂組成物である。そして,この蛍光変換膜用樹脂組成物における(a)成分のフォトレジスト材料としては,蛍光変換膜を構成する蛍光変換層として,蛍光体層を平面的に分離配置するために,フォトリソグラフィー法を適用することのできる感光性樹脂を使用する。このような感光性樹脂としては,例えば,アクリル酸系樹脂や,メタクリル酸系樹脂,ポリケイ皮酸ビニル系樹脂,硬ゴム系樹脂などの反応性ビニル基を有する感光性樹脂(光硬化型レジスト材料)の1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0013】つぎに,本発明の蛍光変換膜用樹脂組成物における(b)成分の蛍光顔料または蛍光染料としては,蛍光色素とバインダー樹脂からなるものが好ましい。この蛍光色素としては,例えば,近紫外光から青紫色のエレクトロルミネッセンス素子の発光を,青色発光に変換する蛍光色素として,1,4-ビス(2-メチルスチリル)ベンゼン,トランス-4,4-ジフェニルスチルベンなどのスチルベン系色素や,7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン〔別称;クマリン4〕などのクマリン系色素が挙げられる。
【0014】また,青色,青緑色または白色のエレクトロルミネッセンス素子の発光を,緑色発光に変換する蛍光色素としては,2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフロルメチルキノリジノ(9,9a,1-gh)クマリン〔別称;クマリン153〕や,3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン〔別称;クマリン6〕,3-(2’-ベンゾイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン〔別称;クマリン7〕などのクマリン系色素,ベーシックイエロー51,ソルベントイエロー11,ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素が挙げられる。
【0015】さらに,青色,緑色または白色のエレクトロルミネッセンス素子の発光を,橙色?赤色の発光に変換する蛍光色素としては,4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチルリル)-4H-ピランなどのシアニン系色素や,1-エチル-2-〔4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル〕-ピリジニウム-パークロレートなどのピリジン系色素,ローダミンBやローダミン6Gなどのローダミン系色素およびオキサジン系色素などが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0035】そして,この蛍光変換膜用樹脂組成物を製造する際には,上記各成分の分散性を高めるため,溶媒を用いて溶解させて混合するとよい。ここで用いるのに適した溶媒としては,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,2-アセトキシ-1-メトキシプロパン,1-アセトキシ-2-エトキシエタン,シクロヘキサノン,トルエンなどが好ましい。」
c 「【0042】
【実施例】つぎに,本発明を実施例により,さらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
(1)蛍光変換膜用樹脂組成物の製造
蛍光色素として,クマリン6とローダミン6Gおよび,ローダミンBを,それぞれ1重量部用い,これらをバインダー樹脂のベンゾグアナミン樹脂〔シンロ化社製〕100重量部に加え,さらに,これに溶媒としてエチレングリコールモノエチルエーテル100重量部を加えて溶解させることにより,(b)成分の溶液を得た。ついで,この溶液に,フォトレジスト材料としてアクリル系感光性樹脂〔新日鉄化学社製:V259PA〕200重量部を加え,攪拌することにより,(a)成分と(b)成分からなる溶液を得た。
【0043】つぎに,下記の製膜操作の直前に,この溶液に,(c)成分の酸化防止剤として下記,
【0044】
【化10】
・・・(中略)・・・
【0045】で表されるフェノール系化合物1重量部を加えて攪拌し,蛍光変換膜用樹脂組成物の溶液を製造した。
(2)蛍光変換膜の製造
上記(1)において得られた蛍光変換膜用樹脂組成物の溶液を用いて,スピンコーター法により,ガラス基板〔2.5cm×5cm〕上に,製膜した。製膜条件としては,スピンコーターの回転数を600rpmとし,回転時間を20秒間として製膜した結果,膜厚20μm以下の蛍光変換膜が得られた。」

(キ)特開2001-126870号公報
特開2001-126870号公報(以下「周知例6」という。)は,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該周知例6には次の記載がある。(下線は,後述する第2周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,発光体から発する近紫外領域ないし可視領域の光を異なる可視光に変換するための蛍光色変換膜に関する。本発明はまた,該蛍光色変換膜を用いた蛍光色変換膜フィルター,および該蛍光色変換膜フィルターを備えた有機発光素子に関する。これらの蛍光色変換膜,または該蛍光色変換膜を用いた蛍光色変換膜フィルターは,例えば,発光型のマルチカラーまたはフルカラーディスプレイ,表示パネル,バックライト等,民生用や工業用の表示機器に好適に用いられる。」
b 「【0017】
【発明の実施の形態】1.蛍光色変換膜
本発明にもとづく蛍光色変換膜は,発光体から得られる近紫外線領域ないし可視領域の光を吸収して異なる可視光を発する有機蛍光色素と,分子量調節剤と,前記有機蛍光色素および前記分子量調節剤を支持するマトリクス樹脂とを含む。以下,蛍光色変換膜の各構成要素について具体的に説明する。
【0018】1)有機蛍光色素
本発明にもとづく蛍光色変換膜に含まれる有機蛍光色素は,発光体から発する近紫外領域ないし可視領域の光,特に,青色ないし青緑色領域の光を吸収して異なる可視光を発するものであればよい。一般に,有機発光素子としては,青色ないし青緑色領域の光を発光するものが入手しやすいが,これを単に赤色フィルターに通して赤色領域の光に変更しようとすると,もともと赤色領域の波長の光が少ないため,極めて暗い出力光になってしまう。そのため,少なくとも赤色領域の蛍光を発する1種以上の有機蛍光色素を用い,これを緑色領域の蛍光を発する1種以上の有機蛍光色素と組み合わせることが好適である。すなわち,赤色領域の光は,該素子からの光を蛍光色素によって赤色領域の光に変換させることより,十分な強度の出力が可能となる。
【0019】一方,緑色領域の光は,赤色領域の光と同様に,該素子からの光を別の有機蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力してもよいし,あるいは該素子の発光が緑色領域の光を十分に含むならば,該素子からの光を単に緑色フィルターに通して出力してもよい。さらに,青色領域の光に関しては,有機発光素子の光を単に青色フィルターに通して出力させることも可能である。
【0020】蛍光体から発する青色から青緑色領域の光を吸収して,赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては,例えばローダミンB,ローダミン6G,ローダミン3B,ローダミン101,ローダミン110,スルホローダミン,ベーシックバイオレット11,ベーシックレッド2等のローダミン系色素,シアニン系色素,1-エチル-2-[4-(p-ジメチルアミノフェニル)-13-ブタジエニル]-ピリジウム-パークロレート(ピリジン1)等のピリジン系色素,あるいはオキサジン系色素等が挙げられる。さらに,各種染料(直接染料,酸性染料,塩基性染料,分散染料等)も蛍光性があれば使用することができる。
【0021】また,発光体から発する青色ないし青緑色領域の光を吸収して,緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては,例えば3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン(クマリン6),3-(2’-ベンゾイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン(クマリン7),3-(2’-N-メチルベンゾイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン(クマリン30),2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1-gh)クマリン(クマリン153)等のクマリン系色素,あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51,さらにはソルベントイエロー11,ソルベントイエロー116等のナフタルイミド系色素等が挙げられる。さらに,各種染料(直接染料,酸性染料,塩基性染料,分散染料等)も蛍光性があれば使用することができる。
【0022】なお,本発明に用いる有機蛍光色素を,ポリメタクリル酸エステル,ポリ塩化ビニル,塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂,アルキッド樹脂,芳香族スルホンアミド樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂の混合物等に予め練り込んで顔料化して,有機蛍光顔料としてもよい。また,これらの有機蛍光色素や有機蛍光顔料(本発明書中で,前記2つを合わせて有機蛍光色素と総称する)は単独で用いてもよく,蛍光の色相を調整するために二種以上を組み合わせて用いてもよい。
・・・(中略)・・・
【0053】本発明の蛍光色変換膜は,当該技術において知られているスピンコート,キャスト,浸漬塗布等の方法を用いて,適当な基板に塗布することにより形成することができる。塗布は,有機蛍光色素と,マトリクス樹脂を形成する成分と,上記一般式(I)で示される分子量調節剤とを含む溶液または,分散液を用いて行う。蛍光色変換膜の厚さは,有機蛍光色素の含有量に依存するが,好ましくは0.1?50μm,より好ましくは1.0?10μmである。蛍光色変換膜のパターニングにはフォトリソグラフィー法を用いて行うことができる。」
c 「【0071】
【実施例】(実施例1)図1に示される蛍光色変換膜フィルター,および図2に示される有機発光素子を以下のようにして製造した。
<蛍光色変換膜フィルターの作製>
(カラーフィルター層の作製)・・・(中略)・・・
【0074】(蛍光色変換膜フィルター)先に得られたカラーフィルター層の上に,有機蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部),ローダミン6G(0.3重量部),ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部に加え,さらに,分子量調節剤として一般式(I-1)に示した化合物を0.3重量部加えて溶解させた。得られた溶液に透明性光重合性樹脂である「V259PA/P5」(商品名,新日鐡化成工業株式会社)の100重量部を加えて溶解させ,塗布溶液を得た。この塗布溶液をスピンコート法を用いて上記カラーフィルター層上に塗布し,90℃のオーブンで乾燥させることにより,蛍光色変換膜5を得た。さらに,先の工程で得られた積層体の上にポリビニルアルコールをスピンコートすることにより塗布し,乾燥させ,酸素遮断膜を形成した。
【0075】次に,赤色のカラーフィルター層上の蛍光色変換膜5を,幅0.104mm,空隙0.226mmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して高圧水銀灯を光源とする露光機にて露光し,さらにアルカリ水溶液で現像処理することにより,ストライプパターンを形成した。現像処理の時に酸素遮断膜は水洗いすることで取り除かれる。次いで,160℃のオーブンで加熱し,膜厚1μmの赤色フィルター層2と膜厚6μmの蛍光色変換膜5とを透明基板1上に積層してなる蛍光色変換膜フィルターを得た。」

(ク)前記(オ)ないし(キ)からみて,次の技術的事項が本願優先日前に周知であったと認められる。
「有機エレクトロルミネッセンス材料部と,該エレクトロルミネッセンス材料の発光を吸収し可視光の蛍光を発光する有機蛍光色素を含有する蛍光材料部とを有するエレクトロルミネッセンス素子において,前記有機蛍光色素を含む組成物を溶媒に溶解して塗布用溶液を作成し,当該塗布用溶液を塗布するという方法により,前記蛍光材料部を形成すること。」(以下「第2周知技術」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「陰極120及び陽極130」,「有機発光層110」,「青色又は紫外スペクトル領域内の第1のスペクトルを有する光」,「有機発光素子100」,「より長い波長の第2のスペクトルを有する光」,「蛍光体層115」,「クマリン6(緑色)又はクマリン460(青色)」,「有機ホトルミネセンス材料」,「蛍光体層115によって吸収される部分の光」,「蛍光体層115によって吸収されない光」,「第3のスペクトルを有する光」及び「光源200」は,本願補正発明の「1対の電極(120,130)」,「有機発光層(110)」,「第1のスペクトルを有する光」,「有機発光デバイス(100)」,「第2のスペクトルを有する光」,「蛍光体層(115)」,「クマリン染料」,「有機ホトルミネセント材料」,「蛍光体層(115)によって吸収される部分の光」,「蛍光体層によって吸収されない前記有機発光素子100からの放出光」,「均一な色の光」及び「光源(200,300,400)」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「陰極120及び陽極130と,前記陰極120及び陽極130との間に配置された有機発光層110とを含み,青色又は紫外スペクトル領域内の第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光素子100」と,本願補正発明の「1対の電極(120,130)の間に配置された有機発光層(110)と,該有機発光層(110)と電極(120,130)との間に配置された少なくとも1つの電荷ブロッキング層(116,126)とから構成された,第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光デバイス(100)」とは,「1対の電極の間に配置された有機発光層を有し,第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光デバイス」である点で一致する。

ウ 引用発明の「有機発光素子100によって放出された光の一部を吸収しかつより長い波長の第2のスペクトルを有する光を放出する,有機ホトルミネセンス材料の層である蛍光体層115であって,前記有機ホトルミネセンス材料がクマリン6(緑色)又はクマリン460(青色)である蛍光体層115」と,本願補正発明の「有機発光デバイス(100)によって放出された光の一部を吸収して第2のスペクトルを有する光を放出する蛍光体層(115)であって,ペリレンとベンゾピレン,クマリン染料,ポリメチン染料,キサンチン染料,オキソベンツアントラセン染料,ペリレンビス(ジカルボキシミド)染料,ピラン及びチオピランからなる群から選択される有機ホトルミネセント材料からなる蛍光体層(115)」とは,「有機発光デバイスによって放出された光の一部を吸収して第2のスペクトルを有する光を放出する蛍光体層であって,クマリン染料である有機ホトルミネセント材料からなる蛍光体層」である点で一致する。

エ 引用発明の「前記蛍光体層115によって吸収される部分の光は前記有機発光素子100によって放出された光の全部ではなく」という構成は,本願補正発明の「前記蛍光体層(115)によって吸収される部分の光は,前記有機発光デバイス(100)によって放出された光の全部よりも少なく」という発明特定事項に相当する。

オ 引用発明の「前記蛍光体層115によって吸収されない光が前記蛍光体層115によって放出された光と混合されて第3のスペクトルを有する光を生じる」という構成は,本願補正発明の「蛍光体層によって吸収されない前記有機発光デバイスからの放出光が前記第2のスペクトルを有する光と混合して均一な色の光を生じる」という発明特定事項に相当する。

カ 前記アないしオから,本願補正発明と引用発明とは,
「1対の電極の間に配置された有機発光層を有し,第1のスペクトルを有する光を放出する有機発光デバイスと,
前記有有機発光デバイスによって放出された光の一部を吸収して第2のスペクトルを有する光を放出する蛍光体層であって,クマリン染料である有機ホトルミネセント材料からなる蛍光体層と,
を備え,
前記蛍光体層によって吸収される部分の光は,前記有機発光デバイスによって放出された光の全部よりも少なく,蛍光体層によって吸収されない前記有機発光デバイスからの放出光が前記第2のスペクトルを有する光と混合して均一な色の光を生じるよう構成された光源。」である点で一致し,次の点で相違している。

相違点1:本願補正発明の有機発光デバイス(100)が「有機発光層(110)と電極(120,130)との間に配置された少なくとも1つの電荷ブロッキング層(116,126)」を有しているのに対して,引用発明の有機発光素子100はそのような構成を有していない点。

相違点2:本願補正発明の蛍光体層(115)が「光を散乱する蛍光体粒子」を含んでいないのに対して,引用発明では,蛍光体層115中における有機ホトルミネセンス材料(クマリン6(緑色)又はクマリン460(青色))の形状は特定されておらず,したがって,蛍光体層115が「光を散乱する蛍光体粒子」を含むのか否かは特定されていない点。

(4)判断
前記相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
前記(2)イ(エ)で認定したとおり,第1周知技術は,陰極と,陽極と,当該陰極及び陽極の間に配置された発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において,陽極から発光層へ注入された正孔が陰極へ通過してしまうことを防ぐ正孔ブロック層を陰極と発光層との間に設けたり,陰極から発光層へ注入された電子が陽極へ通過してしまうことを防ぐ電子ブロック層を陽極と発光層との間に設けることによって,有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させるという技術であるところ,引用発明の有機発光素子100においても,その発光効率が高いほうが望ましいことは自明であるから,引用発明の有機発光素子100において,陽極130から有機発光層110へ注入された正孔が陰極120へ通過してしまうことを防ぐ正孔ブロック層を陰極120と有機発光層110との間に設けたり,陰極120から有機発光層110へ注入された電子が陽極130へ通過してしまうことを防ぐ電子ブロック層を陽極130と有機発光層110との間に設けることによって,その発光効率を向上させることは,第1周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして,前記正孔ブロック層及び前記電子ブロック層は,いずれも,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項の「有機発光層と電極との間に配置」された「電荷ブロッキング層」に該当する。
したがって,引用発明を,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項の如き構成とすることは,第1周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)前記(2)イ(ク)で認定したとおり,第2周知技術は,有機エレクトロルミネッセンス材料部と,該エレクトロルミネッセンス材料の発光を吸収し可視光の蛍光を発光する有機蛍光色素を含有する蛍光材料部とを有するエレクトロルミネッセンス素子において,前記有機蛍光色素を含む組成物を溶媒に溶解して塗布用溶液を作成し,当該塗布用溶液を塗布するという方法により,前記蛍光材料部を形成するというものであるところ,当該第2周知技術を用いて形成された蛍光材料部が「光を散乱する蛍光体粒子」を含んでいないことは明らかである。

(イ)引用例1の請求項1には,蛍光体層中でのホトルミネセンス材料の形状について特段の特定がなされておらず(前記(2)ア(ア)aを参照。粒子である旨の限定がなされているのは,請求項1の記載を引用する請求項2である。),また,引用例1の【0011】に「蛍光体粒子のごときホトルミネセンス材料の被膜」(前記(2)ア(ア)bを参照。)と記載されていること等からみて,引用発明において蛍光体層115中の有機ホトルミネセンス材料の形状が粒子に限られないことは明らかである。
また,引用例1には,蛍光体層115の製造方法について特定の方法に限定される旨の記載はなく,引用発明の蛍光体層115を形成する際に任意の製造方法を採用できることもまた明らかである。
そうすると,引用発明の蛍光体層115の製造方法として第2周知技術を採用し,すなわち,有機ホトルミネセンス材料(クマリン6(緑色)又はクマリン460(青色))を含む組成物を溶媒に溶解して塗布用溶液を作成し,当該塗布用溶液を塗布するという方法によって蛍光体層115を形成し,もって引用発明を相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項の如き構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといわざるを得ない。

(ウ)なお,蛍光体層(115)中でのホトルミネセント材料の形状について,本件補正後の本願明細書には,「蛍光体粒子の粒度は通常,蛍光体から再放出される光を蛍光体によって吸収されない青色光又はUV光と効果的に混合し,該デバイスによって放出される光の最終色が均一であるような良好な色の混合をもたらすのに十分な光散乱を可能とするように選定される。」(【0017】)との記載や,「蛍光体粒子層115中における散乱によって,より長い波長の光は吸収されない青色光又は紫外光と混合して,均一な白色光が放出される。」(【0037】)との記載や,「図1及び図2の実施形態の両方について,光源の発光範囲全体にわたる色の混合及び輝度の均一性を促進させるため,TiO_(2)又はSiO_(2)粒子といった散乱粒子を蛍光体粉末の混合物中に添加することができる。更に,図3は,光源400の別の実施形態を示しており,ここでは,別個の散乱粒子層135が蛍光体粉末層125の上に形成され,色の混合を向上させるようにする。」(【0039】)との記載があり,当該各記載からは,ホトルミネセント材料として適切な粒度の蛍光体粒子を用いた蛍光体層115とすることで,光が十分に散乱し,蛍光体層によって吸収されない有機発光デバイスからの放出光が,蛍光体層115が放出する第2のスペクトルを有する光と十分に混合して,最終的に得られる光の均一性を向上させることができることを把握できるが,蛍光体層(115)が「光を散乱する蛍光体粒子」を含んでいない場合にどのような利点があるのかについては,本件補正後の本願明細書に記載も示唆もないから,本願補正発明において,蛍光体層(115)が「光を散乱する蛍光体粒子」を含んでいないという構成を採用することについての格別の技術上の意義は見出せない。

(5)効果について
本願補正発明の奏する効果は,引用例1の記載及び第1,第2周知技術の奏する効果に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(6)独立特許要件についてのまとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明及び第1,第2周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年1月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として示したとおりのものと認める。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項及び引用発明,並びに,第1,第2周知技術については,前記第2〔理由〕3(2)ア及びイのとおりである。

3 対比・判断
前記第2〔理由〕2で述べたとおり,本願補正発明は,本願発明を特定するために必要な事項について限定を付加したものに相当する。
そして,本願発明の構成要件をすべて含みさらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2〔理由〕3で述べたとおり,引用発明及び第1,第2周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で,引用発明及び第1,第2周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び第1,第2周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-22 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-10 
出願番号 特願2010-254258(P2010-254258)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 有機層及びホトルミネセント層を有する光源  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
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