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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1293295
審判番号 不服2012-20363  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-17 
確定日 2014-10-31 
事件の表示 特願2006-539298「前立腺肥大症に対する手術療法への移行予防用医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月13日国際公開、WO2006/038619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年10月 4日(優先権主張2004年10月 6日、2005年6月 1日)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月12日付けで拒絶理由が通知され、平成24年 1月 5日に意見書、手続補正書が提出されたが、同年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたのち、平成26年 1月 9日付け審尋に対し、同年 3月27日に回答書が提出されたものである。

2.平成24年10月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年10月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、
補正前の
「【請求項1】
1日投与量として2?16mgのシロドシン又はその薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする全般重症度が重症の前立腺肥大症の患者の前立腺肥大症に対する手術療法への移行予防用医薬組成物。
【請求項2】
手術療法が、経尿道的前立腺切除術であることを特徴とする請求項1記載の全般重症度が重症の前立腺肥大症の患者の前立腺肥大症に対する手術療法への移行予防用医薬組成物。
【請求項3】
手術療法の適応対象患者に投与するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の全般重症度が重症の前立腺肥大症の患者の前立腺肥大症に対する手術療法への移行予防用医薬組成物。
【請求項4】
1日投与量として2?16mgのシロドシン又はその薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする全般重症度が重症の前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物。」

「【請求項1】
1日経口投与量として8mgのシロドシン又はその薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする全般重症度が重症の前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物。」
とするものである。

上記補正は、補正前の請求項1?3を削除するとともに、補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「1日投与量として2?16mgのシロドシン」を「1日経口投与量として8mgのシロドシン」と特定するものである。
そうすると、上記請求項1?3についてする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
また、請求項4についてする補正は、補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その発明が解決しようとする課題や発明の産業上の利用分野は、補正前のそれと同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載した発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて、以下、検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな国際公開第99/15202号(以下、「引用例1」という。原査定の引用文献4に相当する。)には、次の事項が記載されている。括弧内に引用箇所を示す。

a-1)「1.α_(1L)アドレナリン受容体サブタイプ高選択的遮断剤を有効成分として含有する、血圧に対し影響を与えない、前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤。
2.少なくともα_(1B)アドレナリン受容体サブタイプに対する親和性の50倍以上のα_(1L)アドレナリン受容体サブタイプに対する親和性を有する、α_(1L)アドレナリン受容体サブタイプ高選択的遮断剤を有効成分として含有する、請求項1記載の前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤。
3.有効成分として含有するα_(1L)アドレナリン受容体サブタイプ高選択的遮断剤が(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-〔2-〔〔2-〔2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ〕エチル〕アミノ〕プロピル〕インドリン-7-カルボキサミド、その薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物である、請求項1または記載の前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤。」(請求の範囲 請求項1?3)

a-2)「(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-〔2-〔〔2-〔2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ〕エチル〕アミノ〕プロピル〕インドリン-7-カルボキサミド(以下KMD-3213という)・・・が極めて高いα_(1L)-AR選択的遮断作用を示すことを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明はα_(1L)アドレナリン受容体サブタイプ高選択的遮断剤を有効成分として含有する、血圧に対し影響を与えない、前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤に関するものである。」(3頁24行?4頁6行)

a-3)「本発明の医薬品組成物を実際の治療に用いる場合、その活性成分であるα_(1L)-AR選択的遮断剤の投与量は対象となる患者の性別、年齢、体重、症状の度合などによって適宜決定されるが、例えば活性成分としてKMD-3213、KMD-3241またはそれらの薬理学的に許容される塩を用いる場合、経口的に、概ね成人1日当たり0.1?100mg、非経口的に、概ね成人1人当たり0.01?100mgの範囲内で投与される。」(8頁6?11行)

a-4)処方例として、活性成分としてKMD-3213を1.0mg含有するカプセル製剤が記載されている。(12頁4?16行)

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布されたことが明らかなCURRENT PHARMACY,(2002),(13),p.1-5,13(以下、「引用例2」という。原査定の引用文献2に相当する。)には、次の事項が記載されている。

b-1)前立腺が肥大し、後部尿道が圧迫されたり、炎症や浮腫が生じたりすることで排尿障害が現れるようになると、「前立腺肥大症」と診断され、治療の対象となります。(1頁 1?3行)

b-2)表中、国際前立腺症状スコア(IPSS)検査法において、IPSSの総合点数が「20?35点=重症で、薬物療法ないしは手術療法が必要」であることが記載されている。(2頁 検査・診断)

b-3)「薬物療法の適応は、自覚症状及びそのQOLに及ぼす影響の程度で決めます。一般に自覚症状の重症度が、軽症の一部から中等症までが薬物療法の良い適応ですが、重症例においても手術の絶対的適応(すぐに手術をしなければならない)でなければ、まず薬物療法を施行し、無効であれば手術療法を考慮します。」(4頁 薬物療法)

b-4)表中、α遮断薬薬剤(塩酸タムスロシンなど)の適応症例は、全ての症例であること、特に軽症から中等症であることが記載されている。(4頁 薬物療法)

b-5)「外科的治療法は、治療効果が高く根本治療であることは事実ですが、合併症(特に心臓など)がある場合は適応できないことがあります。基本的に、薬物療法で改善しない場合に行われます。」(4頁 外科的治療法)

b-6)「問1 前立腺肥大症での排尿障害に対する治療薬の一般的な選択基準について述べてください。
・・・第一選択としてα_(1)受容体遮断薬を使用し、機能的閉塞を解除します。α_(1)受容体遮断薬は速効性があるので、2週間程度投与して有効な場合は継続します。α_(1)受容体遮断薬が無効で、推定前立腺体積が30mL以上ある場合は抗男性ホルモン薬を投与します。」(13頁 問1に対する答え)

b-7)フローチャートに、基本診断後の全般重症度の判定が中等度・重症であった場合、治療の得失について検討して、厳重経過観察、薬物療法、低侵襲な治療、又は手術から自由選択すること、また薬物療法が選択された場合は、α_(1)遮断薬が第一選択薬であり、該薬剤が無効な場合には他の薬剤が使用されることが記載されている。(13頁 問1に対する答え 薬物療法の適用)

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな.医薬ジャーナル,(2004),40,増刊号,p.590-4(以下、「引用例3」という。原査定の引用文献3に相当する。)には、次の事項が記載されている。

c-1)「排尿障害治療薬 排尿症状に対する治療薬としては抗アンドロゲン作用薬剤よりもアドレナリン受容体拮抗剤を中心として市場に出てくると考えられる。・・・1)アドレナリン作動薬【シロドシン(KMD-3213);キッセイ薬品工業/第一製薬,臨床第III相試験】(図1)シロドシンは・・・前立腺肥大症に伴う排尿障害治療薬として共同開発中の交感神経受容体α_(1A)受容体選択的拮抗剤である。本剤のin vivoにおける下部尿路への選択性は塩酸タムスロシンより高く、本剤は既存薬に比べ、より確実な効果を発現させると共に、血圧への影響が少ないことが期待される。」(371頁 右欄 3 排尿障害治療薬 の項 1?下から3行)

引用例1には、(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-〔2-〔〔2-〔2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ〕エチル〕アミノ〕プロピル〕インドリン-7-カルボキサミド、またはその薬理学的に許容される塩を含有する、前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤が記載されており(摘示事項a-1)、a-2))、該治療剤は、経口的に、概ね成人1日当たり0.1?100mgの範囲内で投与される旨が記載されている(摘示事項a-3))。
以上の記載からみて、引用例1には、「成人1日当たり0.1?100mgの範囲内で経口的に投与される、(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-〔2-〔〔2-〔2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ〕エチル〕アミノ〕プロピル〕インドリン-7-カルボキサミド、またはその薬理学的に許容される塩を含有する、前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-〔2-〔〔2-〔2-(2,2,2-トリフルオロエトキキシ)フェノキシ〕エチル〕アミノ〕プロピル〕インドリン-7-カルボキサミド」が、本願補正発明の「シロドシン」に相当することは、本願明細書中の「シロドシン、すなわち、(-)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-((2R)-2-{[2-({2-[(2,2,2-トリフロロエチル)オキシ]フェニル}オキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-7-カルボキシアミド」との記載(段絡0014)や、その化学構造式の記載(段絡0007、段絡0008の式(II)で表される化合物)から明らかである。
そして、本願明細書中、本願製剤は、成人1日当たり、経口投与剤で2?16mg、特に4?8mgの範囲で投与されるように、調製するのが好ましい、と記載されていることから(段落0020)、本願補正発明の「1日投与量」は、「成人1日投与量」を意味するものと認められるから、引用発明の「成人1日当たりの」、「経口的に投与される」量は、本願補正発明の「1日経口投与量」に相当する。
また、前立腺肥大症とは、前立腺が肥大し、排尿障害が現れた状態をいうことは、本願優先日前、広く知られるところであり(摘示事項a-1)、a-2)、b-1))、前立腺肥大症と診断された患者の治療には、前立腺肥大に伴う排尿困難症を治療することが包含されることは明らかであるといえるから、引用発明の「前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤」は本願補正発明の「前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物。」に相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、「経口投与されるシロドシン又はその薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
A.治療対象である前立腺肥大症の重篤度に関し、本願補正発明が、「全般重症度が重症」のものと規定するのに対し、引用発明には、この点について規定がない点
B.シロドシン又はその薬理学的に許容される塩の1日経口投与量に関し、本願補正発明は「8mg」と規定するのに対して、引用発明が「0.1?100mgの範囲内」とする点

(4)判断
そこで、これらの相違点について、以下、検討する。

(相違点Aについて)
引用例2には、国際前立腺症状スコア(IPSS)検査法において重症とされた場合には薬物療法ないしは手術療法が必要であることが記載されている(摘示事項b-2))。そして、手術療法をはじめとする外科的治療法は、基本的に、薬物療法で改善しない場合に行われること(摘示事項b-5))、薬物療法の適応は、自覚症状及びそのQOLに及ぼす影響の程度で決定され、好適とされている軽症の一部から中等症のみならず、重症例においても手術の絶対的適応(すぐに手術をしなければならない)でなければ、まず薬物療法を施行すること(摘示事項b-3))が記載されている。そして、引用例2の薬物療法の項において、α遮断薬がすべての症例に適応可能である旨が記載されている(摘示事項b-4))。
引用例2には、上記に加え、全般重症度が中等度・重症と判定された場合、治療の得失について検討したのちの選択肢の一つとして薬物療法が存在することが記載されている(摘示事項b-7))。そして、薬物療法が適用された場合に、第一選択としてα_(1)受容体遮断薬を使用することが記載されている(摘示事項b-6)、b-7))。
これら記載に接した当業者であれば、IPSSやQOLにおいて重症例と判定された場合はもちろん、全般重症度が重症と判定された場合にあっても、前立腺肥大症における排尿障害に対する治療に際し、第一義的に、手術療法でなく薬物療法が選択されるものと理解すると認められる。
そして、シロドシンは、α_(1L)アドレナリン受容体サブタイプ高選択的遮断剤であるから(摘示事項a-1)、a-2))、全般重症度が重症である前立腺肥大症において第一選択とされるα_(1)受容体遮断薬の一種であるシロドシンを有効成分とする引用発明において、治療対象である前立腺肥大症の重篤度を「全般重症度が重症」とすることは、引用例2の記載に基づいて当業者が容易になし得たことと認める。

(相違点Bについて)
引用例1には、シロドシン又はその薬理学的に許容される塩の投与量に関し、「0.1?100mgの範囲内」との包括的な記載のほか、具体的に、シロドシンを1.0mg含有するカプセル剤の処方例が記載されている(摘示事項a-4))。
ところで、医薬品の薬理作用の強弱が、作用点に到達する薬物の量、及び作用点における生体の感受性の影響を受けること、そのうち前者は、適応濃度及び用量と薬物の吸収、分布、生体内変化、及び排泄によって規定されることは、本願出願優先日前における当業者の技術常識であったと認められる。
引用例3には、シロドシンが、前立腺肥大症に伴う排尿障害治療薬として共同開発中の交感神経受容体α_(1A)受容体選択的拮抗剤であって、すでに臨床第III相試験に付されており、既存薬に比べて望ましい効果を奏し、血圧に対する副作用が少ないものと期待されているところであるから(摘記事項c-1))、前立腺肥大症患者に対し望まれる治療作用を達成することができる経口投与量について、具体的に記載されている処方例の用量を参考にしつつ、上記引用例記載の範囲内において検討して、相違点Bに係る発明特定事項の数値とすることに格別の困難性は見いだせない。

(本願補正発明の効果について)
本願明細書記載の本願補正発明の効果は、全般重症度が重症の前立腺肥大症患者のI-PSSトータルスコア及びQOLスコアを顕著に改善し、手術療法の適応対象患者の症状を、手術療法の適応対象外まで改善し、手術療法への移行を回避することができた(表3、表4、段落0037)、及び同患者の最大尿流量率を改善した(表5)というものである。そして、上記記載からは、I-PSSトータルスコア及びQOLスコアにおいて、シロドシンがタムスロシンより優れた効果を奏したことが理解できる。
しかし、I-PSSトータルスコア、QOLスコア、及び最大尿流量率は、いずれも、前立腺肥大症状の重篤度などを測定する指標であって(摘示事項b-2))、上記指標の値がシロドシンの投与により改善したことは、シロドシンが前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物であるというにすぎない。そして、シロドシンが該効果を有することはすでに上記検討のとおり、当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。

請求人は、平成24年 1月 5日に提出した意見書、及び同年10月17日に提出した拒絶査定不服審判請求書中、シロドシンが中等症、重症のいずれの前立腺肥大症患者に対してもI-PSSトータルスコア及びQOLスコアを改善することができたのに対し、タムスロシンは中等症の患者に対しては同スコアをともに改善することができたが、重症患者に対しては無効であった旨の実験結果を示して、本願補正発明は当業者が予測しえない顕著な効果を奏するものである旨主張する。
しかし、引用例3には、「本剤は既存薬に比べ、より確実な効果を発現させると共に、血圧への影響が少ないことが期待される。」(摘示事項c-1))と記載されている。ここで、本剤がシロドシンを意味することは文脈から明らかであるし、また血圧への影響が薬剤の選択性に関連する事項であることは技術常識であるから、より選択的でより効力の強いシロドシンが、タムスロシンなどの既存薬を用いた場合に比べて、重症患者に対して優れた治療効果を有することは当業者が十分予測しうるところである。
そもそも、引用発明は、上記(2)ですでに検討したとおり、シロドシン、またはその薬理学的に許容される塩を含有する、前立腺肥大に伴う排尿困難症治療剤に関する発明であって、シロドシンがタムスロシンに比べて優れた前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物であることを主張するために提出された、上記意見書、審判請求書記載の実験結果は、引用発明に対する本願補正発明の優れた効果を主張するものではないから、上記判断を何ら左右するものではない。

したがって、本願補正発明は、引用例1?3に記載された発明、並びに本願優先日前の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成24年10月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成24年 1月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項4に係る発明は以下のとおりである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項4】
1日投与量として2?16mgのシロドシン又はその薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする全般重症度が重症の前立腺肥大症患者の治療用医薬組成物。」

(1)引用例等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項、並びに周知技術は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の発明特定事項である「投与量」、「2?16mg」について、各々、概念的に下位である「経口投与量」、「8mg」に限定したものが本願補正発明である(前記「2.(1))。
そして、前記「2.(4)」に記載したとおり、本願補正発明は、引用例1?3に記載された発明、並びに本願優先日前の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該本願補正発明を包含する本願発明も、同様の理由により、引用例1?3に記載された発明、並びに本願優先日前の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願請求項4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
なお、請求人は、平成26年 3月27日に提出した回答書において、さらなる補正をする準備がある旨主張し、補正案を提示する。
しかし、そもそも、当該補正の申し出は、特許法に規定される補正ができる期間が過ぎたのちになされたものであって本来許されないものである。
仮に、補正案記載の補正がなされたとしても、当該補正後の発明は、1日経口投与量として8mgのシロドシン又はその薬理学的に許容される塩を含有する」との本願補正発明の発明特定事項を1日2回投与に分量するというものであり、前立腺肥大症治療に用いられるα_(1)受容体遮断剤を分量使用することは、引用例2 13頁 問2に対する答え 表 α遮断薬一覧表中、塩酸テラゾシン、塩酸プラゾシン、及び、ウラジピル(審決注:ウラピジル の誤記)の前立腺肥大に対する使用方法の項に記載されているように通常行われているところであって、本願補正発明や本願発明と同様に、上記引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと認められるものであるから、改めて補正の機会を与えない。
 
審理終結日 2014-06-23 
結審通知日 2014-07-15 
審決日 2014-08-20 
出願番号 特願2006-539298(P2006-539298)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 穴吹 智子
安藤 倫世
発明の名称 前立腺肥大症に対する手術療法への移行予防用医薬組成物  
代理人 柳 伸子  
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