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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F04B
管理番号 1293365
審判番号 無効2014-800018  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-01-28 
確定日 2014-10-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第5303114号発明「駆動装置を有する真空ポンプ」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5303114号の請求項1乃至11に係る発明についての出願は,特願2007-55265号(平成19年 3月 6日出願:パリ条約による優先権主張 平成18年 4月 7日,独国)であり,平成25年 6月28日に設定登録(請求項の数11)されたものである。
そして,平成26年 1月28日に山本 一俊より無効審判が請求され,平成26年 5月23日付けで被請求人 プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムべーハーより答弁書が提出された。
平成26年 6月16日付けで審理事項通知書が通知され,同年 7月25日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書が,同年 7月28日付けで請求人より口頭審理陳述要領書がそれぞれ提出され,同年 7月30日付けで再度,審理事項通知書が通知され,同年 8月21日付けで請求人・被請求人より口頭審理陳述要領書(2)がそれぞれ提出され,同年 8月28日に口頭審理が行われたところである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1乃至11に係る発明は,特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項より特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
周辺内に配置されている真空ポンプ(1)であって,
真空ポンプ(1)が,ハウジング(2),内部空間(8)および駆動装置(11)を有し,駆動装置(11)は,内部空間(8)内に配置されている電子/電気部品(9)を操作するための電子回路(16)を含み,この場合,内部空間内に負圧が作用し,および真空ポンプ(1)が,内部空間と周辺とを相互に分離する分離要素を有している,真空ポンプ(1)において,
分離要素が内部空間と周辺とを分離するプリント回路板(10)を含み,プリント回路板(10)は電流/電圧を内部空間内に導通するための手段(12)を有することを特徴とする真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明1」という。)
「【請求項2】
前記導通手段(12)が,プリント回路板(10)の内孔内にはんだ付けされたピンを含むことを特徴とする請求項1の真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明2」という。)
「【請求項3】
前記導通手段が密閉気密プラグ(12c)を含むことを特徴とする請求項1の真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明3」という。)
「【請求項4】
プリント回路板(10)が少なくとも2つの層(10a,10b)を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明4」という。)
「【請求項5】
前記導通手段が,プリント回路板の表面上に固定されたプラグ・コネクタ(12f)を含み,プラグ・コネクタ(12f)はプリント回路板の2つの層間に配置された内部導電層(12b)と電気接触を形成することを特徴とする請求項4の真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明5」という。)
「【請求項6】
分離要素はエラストマー・リング(13)によりハウジング(2)に対してシールされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明6」という。)
「【請求項7】
エラストマー・リング(13)は分離要素のコーティング面(14)上に当接することを特徴とする請求項6の真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明7」という。)
「【請求項8】
分離要素は,ハウジング(2)に向く側に,少なくとも1つの他の電子部品(31)を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明8」という。)
「【請求項9】
前記他の電子部品が温度センサ(30)であり,温度センサ(30)はハウジング(2)と熱接触を形成していることを特徴とする請求項8の真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明9」という。)
「【請求項10】
駆動装置(11)が真空ポンプ(1)に着脱可能に固定され且つ分離要素を少なくとも一部被覆することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明10」という。)
「【請求項11】
真空ポンプ(1)がターボ分子ポンプであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの真空ポンプ(1)。」(以下「本件特許発明11」という。)

第3 請求人及び被請求人の主張の概略
1.請求人の主張
本件特許第5303114号の特許請求の範囲の請求項1乃至7に係る発明(本件特許発明1乃至7)は,その出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,また,特許請求の範囲の請求項8乃至11に係る発明(本件特許発明8乃至11)はその出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明,甲第2号証及び甲第9号証に記載された技術並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,それらの特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

証拠方法
甲第1号証:特開2006-90251号公報
甲第2号証:米国特許第6,350,964号明細書(及びその翻訳文)
甲第3号証:特開2000-146591号公報
甲第4号証:特開昭60-187098号公報
甲第5号証:特開昭58-106898号公報
甲第6号証:特開平4-237976号公報
甲第7号証:特開2002-313780号公報
甲第8号証:特開平6-201893号公報
甲第9号証:特開2004-116316号公報
甲第10号証:特開昭61-104288号公報
甲第11号証:特開昭59-173764号公報
甲第12号証:特開平2-129525号公報
甲第13号証:特開平8-338393号公報
甲第14号証:特開2006-9587号公報
甲第15号証:特開平11-173293号公報
甲第16号証:特開昭62-213053号公報

2.被請求人の主張
(1)本件特許発明1について
・甲第1号証における裏蓋22を甲第2号証のPCB構造体に置換することは当業者にとって容易でない。
・甲第2号証に係る発明と,本件特許発明の属する技術分野には全くの関連性がない。
・甲第2号証のPCB構造体を甲第1号証に記載の発明に適用する動機付けが存在せず,逆に阻害要因が存在する。
(2)本件特許発明2乃至11について
本件特許発明1が,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,当該本件特許発明1をさらに限定する本件特許発明2乃至11も,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは明らかである。

第4 当審の判断
1.甲第1号証乃至甲第3号証の記載事項
(1)甲第1号証
本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2006-90251号公報)には,「真空ポンプ」に関し,図面とともに以下の事項が記載又は示されている。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は,真空容器の排気処理を行う真空ポンプに関する。」

・「【0004】
ところで近年では,真空ポンプ装置の小型化,装置の管理工数の低減,またポンプ本体と制御装置を接続する専用ケーブルの削減が要求されている。
そこで,下記の特許文献1に開示されているような,真空ポンプ本体と制御装置とを一体化した真空ポンプが提案されている。」

・「【0014】
分子ポンプ1の外装体を形成するケーシング2は,円筒状の形状をしており,ケーシング2の底部に設けられたベース3と共に分子ポンプ1の外装体を構成している。そして,分子ポンプ1の外装体の内部には,分子ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物つまり気体移送機構が収納されている。
これら排気機能を発揮する構造物は,大きく分けて回転自在に軸支されたロータ部4とケーシング2に対して固定されたステータ部から構成されている。
また,吸気口5側がターボ分子ポンプ部Tにより構成され,排気口6側がねじ溝式ポンプ部Sから構成されている。」

・「【0016】
シャフト7は,円柱部材の回転軸(ロータ軸)である。シャフト7の上端にはロータ部4が複数のボルト10により取り付けられている。
シャフト7の軸線方向中程には,シャフト7を回転させるモータ部11が配設されている。
また,モータ部11の吸気口5側および排気口6側には,シャフト7をラジアル方向に軸支するための磁気軸受部12および磁気軸受部13が設けられている。
さらに,シャフト7の下端には,シャフト7を軸線方向(スラスト方向)に軸支するための磁気軸受部14が設けられている。」

・「【0019】
ベース3の底部(ステータコラム21の開口部)に裏蓋22が取り付けられている。裏蓋22には,分子ポンプ1の内部配線を引き出すためのコネクタ部23が設けられている。
なお,ケーシング2,ベース3および裏蓋22を外装体とする領域(部分),即ち,気体移送機構が構成されている部分をポンプ本体とする。
本実施の形態に係る分子ポンプ1は,このポンプ本体を制御するための制御装置24がポンプ本体に装着されている。つまり,ポンプ本体と制御装置24が一体化されている。
制御装置24は,ベース3の底部(ステータコラム21の開口部), 即ち裏蓋22と対向する領域に配設されている。
【0020】
ねじ溝式ポンプ部Sの外周部には,ベース3を周方向に囲むようにベーキングヒータ25が装着されている。
ベーキングヒータ25は,ニクロム線などの電熱部材によって構成され,温度コントローラによって電力を供給される。ベーキングヒータ25は,電力を供給されると発熱し,ねじ溝式ポンプ部Sを加熱するようになっている。
吸気口5から吸入されたガスは,ターボ分子ポンプ部Tを移送する間に冷却されるため,ねじ溝式ポンプ部Sに移送される時には,ガスの温度は下がってしまう。一方,ガスの圧力は,ねじ溝式ポンプ部Sに移送される時には,高くなっている。つまり,ねじ溝式ポンプ部Sに移送されるガスは,低温かつ高圧力状態となっている。従って,ねじ溝式ポンプ部Sは,移送されるガスによる固体生成物が析出しやすい状態となっている。
そこで,ねじ溝スペーサ19で移送されるガスによる固体生成物の析出を抑制するために,ベーキングヒータ25を用いてねじ溝式ポンプ部Sを高温に保つようにしている。
【0021】
また,分子ポンプ1の稼働中は,ロータ部4が高速回転し,ロータ翼8やステータ翼18のブレードが,圧縮熱等によって高温になったプロセスガスを受ける。そして,これらの圧縮熱等を受けて,ロータ翼8やステータ翼18のブレードの温度が上昇する。
また,分子ポンプ1は,モータ部11から発生する熱などにより加熱されて高温状態となる。
このようにポンプ本体は,気体分子の衝突熱(圧縮熱)やモータ部11からの発熱,ベーキングヒータ25による加熱などにより高温状態となっている。」

・「【0024】
本実施形態では,ポンプ本体から制御装置24へ伝達する熱を効率的に低減するために,冷却管26をポンプ本体と制御装置24との間に配設している。
ところが,本実施形態のように冷却管26を用いて,部分的に強制冷却を施した場合には,冷却箇所に結露が発生してしまうおそれがある。
この結露とは,冷却部(冷却面)が露点(相対湿度が100%となる温度)以下になるとその冷却面の上に水滴が出現する現象である。
このような結露が制御装置24内に発生すると,制御回路に不具合を生じるおそれがある。
【0025】
そこで,本実施形態では,制御装置24内の結露を抑制するために,制御装置24は,断熱部材27を介してポンプ本体に取り付けられている。即ち,ポンプ本体と制御装置24との間に断熱部材27が配設されている。
断熱部材27は,制御装置24がポンプ本体に取り付けられた際にポンプ本体に接触する部位(領域)に配設されている。
断熱部材27は,発泡材やセラミックなど熱抵抗が高い材料,即ち熱伝導率の小さい材料によって構成されている。
また,制御装置24をポンプ本体に密着させずに,隙間(ギャップ)を介して取り付けるようにしてもよい。この場合,ポンプ本体と制御装置24との間の隙間が断熱部材27として機能(作用)する。
【0026】
このように断熱部材27を配設することにより,ポンプ本体と制御装置24とを熱的に絶縁(分離)することができる。つまり,断熱部材27を設けることにより,制御装置24が受ける冷却管26による冷却の影響を抑制(低減)することができる。
これにより,ポンプ本体と制御装置24との間に急な温度差を緩衝できるため,制御装置24の内部が露点以下まで冷却されるような状態になることを回避することができる。従って,制御装置24内部における結露の発生を適切に抑制することができる。
なお,熱的に絶縁されているポンプ本体と制御装置24においては,それぞれ独立して(個別に)温度管理を行うようにする。
詳しくは,ポンプ本体においては,冷却管26に流す冷媒を調整したり,ベーキングヒータ25の設定温度を調整したりして,温度管理を行うようにする。
一方,制御装置24においては,内部に配設(配置)する素子の位置を調整したり,外部に冷却用のファンを設けたりして温度管理を行うようにする。なお,素子の配置位置の詳細については後述する。
【0027】
ここで,制御装置24内部に設けられている制御回路について説明する。
制御装置24内部には,モータ部11や磁気軸受部12?14の駆動回路,電源回路などが設けられている。さらに,これら駆動回路を制御するための制御回路や分子ポンプ1の制御に用いられる各種情報の格納された記憶素子が搭載されている。
なお,記憶素子には,ポンプ情報として,例えば,ポンプの運転時間,エラーの履歴,温度制御の設定温度等の情報(データ)が格納されている。
一般に電子回路で用いられる電気部品(素子)には,信頼性を考慮した環境温度が設定されている。例えば,上述した記憶素子の環境温度は,概ね60℃程度となっている。なお,このような耐熱特性の低い素子を低耐熱素子と表現する。」

・段落【0016】の記載事項と図1の図示内容からみて,真空ポンプの外装体の内部には,モータ部11や磁気軸受部12,13などの電子/電気部品が収納されていることが理解できる。

・一般に,負圧とは,標準大気圧より圧力が低い状態を意味し,真空ポンプとは,容器内から気体を排出し真空を得るためのポンプである。そして,甲第1号証の真空ポンプは,運動量型で,ポンプ本体が,その外装体の領域(部分)が気体移送機構が構成されている部分であるから(段落【0019】を参照のこと。),外装体の内部内に負圧が作用していることが理解できる。

・段落【0019】の記載事項と図1の図示内容からみて,ポンプ本体はベース3に設けられた裏蓋22によって外装体の周辺と分離されているから,裏蓋22が周辺と分離する外装体とともに分離要素に含まれていることが理解できる。

これらの事項と図示内容を総合すると,甲第1号証には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「真空ポンプであって,
真空ポンプが,ケーシング及びベースを含む外装体,外装体の内部および制御装置を有し,制御装置は,外装体の内部内に配置されているモータ部や磁気軸受部などの電子/電気部品を操作するための駆動回路を含み,この場合,外装体の内部内に負圧が作用し,真空ポンプが,外装体の内部と周辺とを相互に分離する分離要素を有している,真空ポンプにおいて,
分離要素が外装体の内部と周辺とを分離する裏蓋を含み,裏蓋は電流/電圧を外装体の内部内に導通するためのコネクタ部を有することを特徴とする真空ポンプ。」

(2)甲第2号証
本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第2号証(米国特許第6,350,964号明細書)には,「Power distribution printed circuit board for a semiconductor processing system」{半導体処理システムの電力分配プリント回路板}に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている。({}内は,請求人の提示した翻訳文である。}

ア 「A number of radiant heat sources,such as lamps, are located in the lamphead. The lamps are powered through a wiring collar, which is connected to a power supply controller by heavy-duty electrical cabling. The wiringcollar includes numerous terminal block-to-lamp wires and lamp-to-lamp interconnect wires. Assembly and testing of the wiring collar and the lamphead cables can be expensive and time consuming.」(1欄28行?35行)
{多数の放射熱源,たとえばランプが,ランプヘッドの中に設置される。ランプは配線環を介して電力を与えられ,配線環は頑丈な電気ケーブルによって電力供給コントローラへ接続される。配線環は多数の,端子ブロックからランプへの配線およびランプからランプへの相互接続配線を含む。配線環およびランプヘッドケーブルの組み立ておよびテストには,費用がかかり,時間がかかり得る。}

イ 「The PCB structure serves two functions: power distribution and lamphead vacuum barrier. Using the PCB structure as part of a vacuum enclosure allows for a simple design. The PCB structure offers other advantages over current wiring collar designs including reductions in cost, size and complexity. The PCB structure is capable of distributing over 200 kilowatts(kw)of power to the lamphead assembly. The temperature of the PCB structure remains within safe material limits to prevent failure. Vacuum integrity is maintained, while minimizing the volume that needs to be evacuated. The main power cables for the lamphead assembly are external to the vacuum enclosure,eliminating the need for vacuum feedthroughs, and reducing outgassing problems and potential electrical arcing locations. Part cost,part count, assembly time, and test time are reduced.」(3欄48行?62行)
{PCB構造体は2つの機能,すなわち電力分配およびランプヘッド真空障壁として機能する。真空エンクロージャの一部分としてPCB構造体を使用することは,簡単な設計を可能にする。PCB構造体は,電流配線環設計の利点を超えてコスト,サイズ,および複雑度の低減を含む他の利点を提供する。PCB構造体は,200キロワット(kw)を超える電力をランプヘッド組立体へ分配することができる。PCB構造体の温度は,故障を防止するための安全な材料限界の中に留まる。真空完全性は維持され,排気される必要がある容積は最小にされる。ランプヘッド組立体用の主電力ケーブルは真空エンクロージヤの外部にあり,真空フィードスルーの必要性が削除され,ガス抜け問題および潜在的電気アーク発生場所が低減される。部品コスト,部品計数,組み立て時間,およびテスト時間は低減される。}

ウ 「As shown in FIGS. 1A-3B, a semiconductor processing system 10 includes a semiconductor processing chamber 12, a substrate handling or support apparatus 14 located within the semiconductor processing chamber, and a lamphead or heat source assembly 16 located on the semiconductor processing chamber.」(4欄50行?55行)
{図1A?図3Bで示されるように,半導体処理システム10は半導体処理室12,半導体処理室の中に設置された基板操作または支持装置14,および半導体処理室の上に設置されたランプヘッドまたは熱源組立体16を含む。}

エ 「The lamphead assembly 16 overlies the window 20. An O-ring 35 is located between the window and the lamphead to provide a vacuum seal at that interface. The lamphead includes a plurality of lamps 36 that are housed within lamp housing tubes or light pipes 40.」(5欄13行?17行)
{ランプヘッド組立体16は窓20の上に横たわる。Oリング35は窓とランプヘッドとの間に設置され,その界面に真空シールを提供する。ランプヘッドは複数のランプ36を含み,これらのランプはランプハウジング管またはライトパイプ40の中に格納される。}

オ 「 For example, as noted, the lamphead assembly may include 409 tungsten-halogen lamps arranged in 15 different radial zones. The zones can be divided into seven control groups. Each control group is separately powered by a multi-zone lamp driver 61 that is, in turn, controlled by the power supply controller 60. During operation, a total of 200 kw of power may be distributed to the lamps of the lamphead assembly.」(5欄55行?62行)
{たとえば,言及されたように,ランプヘッド組立体は,15個の異なる径方向ゾーンの中に配列された409個のタングステン・ハロゲン・ランプを含む。ゾーンは7つの制御グループへ分割され得る。各々の制御グループは多ゾーンランプ駆動器61によって別々に電力を供給される。また,駆動器61は電力供給コントローラ60によって制御される。稼働中,全部で200kwの電力がランプヘッド組立体のランプへ分配される。}

カ 「The main body of the processing chamber 12 includes a processing gas inlet port 62 and a gas outlet port 67. In use, the pressure within the processing chamber may be reduced to a subatmospheric pressure prior to introducing a process gas through the inlet port 62. The process chamber pressure is maintained by pumping through the gas outlet port 67 by means ofa vacuum pump 66. The pressure is typically reduced to between about 1 Torr and 160 Torr. Certain processes may be run at atmospheric pressure. The process chamber and lamphead will not need to be evacuated for these processes. Another vacuum pump, vacuum pump 68, is provided to reduce the pressure within the lamphead assembly 16. The pressure within the lamphead assembly is reduced by pumping through a conduit or port 69,」(6欄17行?31行)
{処理室12の主本体は,処理ガス入口ポート62およびガス出口ポート67を含む。使用中,処理室内の圧力は,入口ポート62を通して処理ガスを導入する前に大気圧よりも低い圧力へ低減される。処理室圧力は,真空ポンプ66によりガス出口ポート67を通してポンピングすることによって維持される。圧力は,典型的には,約1トールと160トールとの間へ低減される。或る一定のプロセスは大気圧で実行される。これらのプロセスについては,処理室およびランプヘッドが排気される必要はないであろう。ランプヘッド組立体16の中の圧力を低減するため,他の真空ポンプ,すなわち真空ポンプ68が提供される。ランプヘッド組立体の中の圧力は,導管またはポート69を介するポンピングによって低減され,}

キ 「As shown in FIGS. 1A-1B and 3A-3B, the lamphead assembly 16further includes a base plate 70 supporting a printed circuit board (PCB) structure or assembly 72. The base plate 70 and the PCB structure 72 formthe upper surface of the lamphead assembly while the window 20 forms the lower surface of the lamphead assembly. An O-ring 74 is located between the base plate and the PCB to provide a vacuum seal at that interface. An 0-ring 76 is located between the upper chamber wall 44 and the base plate 70 to provide a vacuum seal at that interface. The O-rings are located outside a circle containing the lamps 36. The window 20, and O-ring seal 35 define the lower surface of the vacuum lamphead enclosure. The PCB structure 72, the base plate 70, and the 0-ring seals 74 and 76 define the upper surface of the vacuum lamphead enclosure.」 (6欄38行?52行)
{図1A?図1Bおよび図3A?図3Bで示されるように,ランプへッド組立体16は,プリント回路板(PCB)構造体または組立体72を支持するベースプレート70をさらに含む。ベースプレート70およびPCB構造体72はランプヘッド組立体の上面を形成し,窓20はランプヘッド組立体の下面を形成する。Oリング74はベースプレートとPCBとの間に設置され,その界面に真空シールを提供する。Oリング76は上方室壁44とベースプレート70との間に設置され,その界面に真空シールを提供する。Oリングは,ランプ36を含む円の外側に設置される。窓20およびOリングシール35は,真空ランプヘッドエンクロージヤの下面を規定する。PCB構造体72,ベースプレート70,およびOリングシール74および76は,真空ランプヘッドエンクロージヤの上面を規定する。}

ク 「 A number of power supply terminal blocks 82 are located on the PCB structure. The terminal blocks are electrically connected, as described below, to terminal block pads and power distribution traces of the PCB structure. The terminal blocks are located outside the circle defined by the clamp ring 78. For the 15 zone lamphead described above, there are 30 power supply terminal blocks. The lamps of each zone, in one configuration, are connected in pairs. Thus, for a lamp zone having 30 lamps, for example, there are 15 traces from each of two terminal block pads, providing a supply and return for each lamp pair. There are also 15 lamp-to-lamp interconnect traces, one for each lamp pair. Cables 84 connect the terminal blocks to the multi-zone lamp driver 61. The cables may extend through the top surface of a protective cover 86. The cover 86 covers all exposed electrical connections, protecting personnel from potential electrical shock.」(6欄66行?7欄15行)
{多数の電力供給端子ブロック82がPCB構造体の上に設置される。端子ブロックは,下記で説明されるように,PCB構造体の端子ブロックパッドおよび電力分配トレースへ電気接続される。端子ブロックは,クランプリング78によって規定された円の外側に設置される。上記で説明された15個のゾーンランプヘッドの場合,30個の電力供給端子ブロックが存在する。1つの構成において,各々のゾーンのランプは対として接続される。こうして,たとえば30個のランプを有するランプゾーンの場合,2つの端子ブロックパッドの各々からの15個のトレースが存在し,各々のランプ対のために供給および帰路を提供する。さらに15個のランプからランプへの相互接続トレースが存在し,1つのトレースは各々のランプ対に対応する。ケーブル84は端子ブロックを多ゾーンランプ駆動器61へ接続する。ケーブルは保護カバー86の頂面を通って伸長する。カバー86は全ての露出電気接続をカバーし,可能な感電から人を保護する。}

ケ 「 The PCB structure 72 includes three main layers: a vacuum barrier layer 90, a base PCB layer 92 and a socket layer 94 (See FIG. 3B). The three layers are laminated together, and they are constructed in accordance withwell-known PCB fabrication techniques. The vacuum barrier layer 90 prevents gas transport through the PCB structure. The vacuum barrier layer is about 20 inches long, 19 inches wide and 0.05 inches thick. There are no through holes in the vacuum barrier layer, except for those for the clamp ring bolts and for two alignment dowel pins. The vacuum barrier layer may be made of multiple layers of polyimide laminated together. The base PCB layer 92 includes terminal block pads 95 and power distribution traces 96 fordistributing power to the lamps. The base PCB layer, as discussed below, includes electrically-conductive receptacles 98 for receiving electricalconnectors 36e of the lamps 36. For a 409 lamp system, for example, there are 818 receptacles formed in the base PCB layer, one receptacle for each of two lamp connectors (See FIGS. 4-6).」(7欄37行?56行)
{PCB構造体72は3つの主な層,すなわち真空障壁層90,ベースPCB層92,およびソケット層94を含む(図3Bを参照)。3つの層は一緒に積層され,周知のPCB製造手法に従って構築される。真空障壁層90は,PCB構造体を通るガス運搬を防止する。真空障壁層は約20インチの長さ,19インチの幅,および0.05インチの厚さである。クランプ・リング・ボルトおよび2つの整列ダウエルピンの貫通孔を例外として,貫通孔は真空障壁層の中に存在しない。真空障壁層は,相互に積層されたポリイミドの多数の層から作られる。ベースPCB層92は,端子ブロックパッド95,および電力をランプへ分配するための電力分配トレース96を含む。ベースPCB層は,下記で論述されるように,ランプ36の電気コネクタ36eを受け取るための導電性レセプタクル98を含む。たとえば,409個のランプシステムの場合,ベースPCB層の中に形成された818個のレセプタクルが存在し,1つのレセプタクルが2つのランプコネクタの各々に対応する(図4?図6を参照)。}

コ 「Each lamp electrical connector 36e sits within an electrically conductive receptacle 98 formed within the base PCB layer 92, thereby making electrical contact with the power distribution traces of the PCB base layer.」(8欄57行?61行)
{各々のランプ電気コネクタ36eは,ベースPCB層9 2の中に形成された導電性レセプタクル98の中に位置し,これによってPCBベース層の電力分配トレースと電気接触する。}

サ 「As shown in FIG. 10, in another embodiment, the lamphead assembly can be modified by eliminating the base plate 70 and joining the PCB structure directly to the upper wall 44 of the lamp housing. This simplifies the design as it reduces the number of components, including the base plate 70 and the 0-ring seal 76. 」(10欄21行?26行)
{図10で示されるように,他の実施形態では,ベースプレート70を削除し,PCB構造体をランプハウジングの上方壁44へ直接結合することによって,ランプヘッド組立体が修正され得る。これはベースプレート70およびOリングシール76を含むコンポーネントの数を低減するので,設計を簡単にする。}

シ 「In all methods of implementation, lamp pair current sensing may be added to the iamphead assembly. In one embodiment, current sensing is added through the use of an additional printed circuit board mounted on top of the PCB structure. This circuit board has surface mount current sensing transformers that sense current in each lamp pair. The terminal blocks and main AC power cables are connected to the current sensing board. Current travels through this board into the PCB structure where power is then supplied to the lamps as previously described. Current sensing allows lamp failure detection and reporting. The PCB structure described above eliminates the need for an evacuable wiring collar. The system is thus simpler and less expensive to manufacture. 」(10欄52行?65行)
{実現の全ての方法において,ランプ対電流感知がランプヘッド組立体へ追加される。1つの実施形態では,PCB構造体の頂部に搭載された追加のプリント回路板の使用を介して電流感知が追加される。この回路板は,各々のランプ対の電流を感知する表面搭載電流感知変圧器を有する。端子ブロックおよび主AC電力ケーブルは,電流感知板へ接続される。電流は,この板を通ってPCB構造体の中へ移動し,次いで,前に説明されたように電力がランプへ供給される。電流感知はランプ故障の検出および報告を許す。上記で説明されたPCB構造体は,排気可能な配線環の必要性を削除する。こうして,システムは簡単になり,製造費用は安くなる。}

そうすると,甲第2号証には,半導体処理システムの電力分配プリント回路板に関する発明が記載されており,上記ウの記載によれば,半導体処理システム10は半導体処理室12,基板支持装置14,及び半導体処理室の上に設置されたランプヘッド組立体16を含むものである。そして,上記カの記載によれば,半導体処理室12及びランプヘッド組立体16は,真空ポンプにより減圧されており,上記エ及びキの記載によれば,ランプヘッド組立体16は,上面をプリント回路板(PCB)構造体72及びOリングにより真空シールされ,下面を窓20及びOリングにより真空シールされているから,ランプヘッド組立体16は真空引きされる装置といえるものである。また,上記イの記載によれば,PCB構造体は電力分配及びランプヘッド真空障壁として機能しており,上記ク及びケの記載によれば,PCB構造体72は,真空障壁層90,ベースPCB層92,及びソケット層94を含み,ベースPCB層92は,端子ブロックパッド95,及び電力をランプへ分配するための電力分配トレース96を含み,PCB構造体の上には,端子ブロックパッド及び電力分配トレースへ電気接続される電力供給端子ブロック82が設置されている。さらに,上記オ及びクの記載によれば,端子ブロック82はケーブル84によりランプ駆動器61へ接続され,ランプ駆動器は電力供給コントローラ60によって制御されている。
そして,上記記載事項と図1Aからみて,プリント回路板(PCB)構造体72は,ランプヘッド組立体16の内部空間と周辺とを分離する分離要素であって,真空障壁として機能することが理解できる。

以上の記載事項によれば,甲第2号証には,次の技術が記載されていると認められる。
「ランプヘッド組立体16の内部空間と周辺とを分離し,真空障壁として機能する分離要素として,プリント回路板(PCB)構造体72を使用する技術であって,PCB構造体72は,真空障壁層90,ベースPCB層92,及びソケット層94の3層を含み,PCB構造体72の表面上には,ベースPCB層92に含まれる,電力をランプへ分配するための電力分配トレース96へ電気接続される電力供給端子ブロック82が設置される技術。」

(2)甲第3号証
本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開2000-146591号公報)には,「回路基板装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【0008】この回路基板装置は,金属(例えばニッケルメッキを施した鉄)で板状に形成した回路基板10を備えている。回路基板10の上面ほぼ中央には,金属(例えばアルミナ)で板状に形成した素子配置プレート20が固定されている。回路基板10には,上下方向に侵入した複数の導電性のピン11が設けられており,各ピン11の上部は素子配置プレート20にそれぞれ導線12を介して接続されている。素子配置プレート20の上面には,検出素子30,電気回路素子40及びハニカム構造体50が設けられている。」

・「【0019】回路基板10上面周縁部には,素子配置プレート20を覆うように回路基板10と同じ材料で断面略コ字状に形成された方形状のケース60が溶接により固着され,回路基板10とケース60との間にほぼ真空な密閉空間SSが形成されている。
【0020】上記のように構成した回路基板装置の組み立てについて説明する。検出素子30,電気回路素子40及びハニカム構造体50を素子配置プレート20に組み付けるとともに電気的に配線した後,同素子配置プレート20を回路基板10に組み付け,素子配置プレート20及びピン11の上部に導線12をはんだ付けする。そして,真空中にてケース60を回路基板10の上面に組み付け,密閉空間SSをほぼ真空にする。なお,検出素子30の製造にあたっても,真空中にてガラス蓋30Cを枠体30bに陽極接合して密閉空間Sをほぼ真空にする。」

・「【0030】また,上記実施形態及び変形例においては,回路基板10を金属(ニッケルメッキした鉄)で形成したが,金属以外の材料,例えば合成樹脂で形成してもよい。この場合も,回路基板とケースとで形成される密閉空間の真空度は高いので,上記実施形態と同様な作用及び効果を期待できる。」

上記記載事項によれば,甲第3号証には,回路基板を真空障壁として機能させる技術が記載されていると認められる。

2.対比・判断
(1)[本件特許発明1について]
ア.本件特許発明1(以下「前者」という。)と引用発明(以下「後者」という。)とを対比すると,後者の「ケーシング及びベースを含む外装体」は前者の「ハウジング」に相当し,以下同様に,「外装体の内部」は「内部空間」に,「制御装置」は「駆動装置」に,「モータ部や磁気軸受部などの電子/電気部品」は「電子/電気部品」に,「駆動回路」は「電子回路」に,「電流/電圧を外装体の内部内に導通するためのコネクタ部」は「電流/電圧を内部空間内に導通するための手段」に,それぞれ相当する。
前者の「周辺」とは,ポンプ周辺部を意図し,通常の場合,大気圧下におかれる領域のことであるから(被請求人の提出した平成26年7月25日付け口頭審理陳述要領書の第2頁4?7行を参照のこと。),後者の「真空ポンプ」は前者の「周辺内に配置されている真空ポンプ」に相当する。
後者の「分離要素が外装体の内部と周辺とを分離する裏蓋を含み,裏蓋は電流/電圧を外装体の内部内に導通するためのコネクタ部を有する」態様と,前者の「分離要素が内部空間と周辺とを分離するプリント回路板を含み,プリント回路板は電流/電圧を内部空間内に導通するための手段を有する」態様とは,「分離要素が内部空間と周辺とを分離する部材を含み,部材は電流/電圧を内部空間内に導通するための手段を有する」概念において共通する。
そうすると,両者は,
「周辺内に配置されている真空ポンプであって,
真空ポンプが,ハウジング,内部空間および駆動装置を有し,駆動装置は,内部空間内に配置されている電子/電気部品を操作するための電子回路を含み,この場合,内部空間内に負圧が作用し,真空ポンプが,内部空間と周辺とを相互に分離する分離要素を有している,真空ポンプにおいて,
分離要素が内部空間と周辺とを分離する部材を含み,部材は電流/電圧を内部空間内に導通するための手段を有する,真空ポンプ。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。

<相違点>
分離要素が内部空間と周辺とを分離する部材を含み,部材は電流/電圧を内部空間内に導通するための手段を有する態様に関して,上記「部材」が,本件特許発明1では,「プリント回路板」であるのに対して,引用発明では,「裏蓋」である点。

イ.上記相違点について検討する。
(ア)上述のように,甲第2号証には,真空障壁として機能する分離要素として,プリント回路板(PCB)構造体を使用する技術が記載されている。
そこで,引用発明の「裏蓋」に代えて甲第2号証に記載された「プリント回路板」とすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるのか,すなわち,その動機付けについて検討する。

(イ)まず,甲第1号証が,「真空容器の排気処理を行う真空ポンプ」に関するものであるのに対して,甲第2号証は,「半導体処理システムの電力分配プリント基板」に関するものであり,両者の技術分野に直接的な関連があるものではない。
(ウ)次に,引用発明を開示する甲第1号証の記載によれば,ポンプ本体はケーシング2,ベース3及び裏蓋22を外装体(部分)とする領域からなり(段落【0019】),制御装置24は,断熱部材27を介してポンプ本体に取り付けられているものである(段落【0025】)。そして,「制御装置24内部には,モータ部11や磁気軸受部12?14の駆動回路,電源回路などが設けられている。さらに,これら駆動回路を制御するための制御回路や分子ポンプ1の制御に用いられる各種情報の格納された記憶素子が搭載されている。」(段落【0024】)とあり,制御装置24内部に一括して駆動回路,電源回路,駆動回路を制御する制御回路,記憶素子等が配備されている。裏蓋22部分に設けられる制御に関連する部品類は,分子ポンプ1の内部配線を引き出すためのコネクタ部23にとどまり(段落【0019】),駆動回路,電源回路,駆動回路を制御する制御回路,記憶素子等といったものがない。
また,甲第1号証自体は,制御装置24内の結露を抑制するために,ポンプ本体と制御装置24との間に断熱部材27を配設することを特徴とする発明を開示するものであり(【請求項1】,段落【0007】,【0008】,【0012】,【0025】等参照。),ポンプ本体と制御装置24の関連構成としては,両者の間に断熱部材27を配設したものしか開示がない。
そうすると,そのような断熱部材を介在させずにポンプ本体自体に制御装置を設けること,すなわち,ポンプ本体に,その負圧とされるべき内部の空間を画定するために用いられる裏蓋自体に,制御のための回路等の機能を持たせることは,甲第1号証に接した当業者が想起しないことといえる。
(エ)そして,甲第2号証の記載によれば,従来は,多数の端子ブロックからランプへの配線およびランプからランプへの相互接続配線を含む配線環は,ランプへ電力を与え,頑丈な電気ケーブルによって電力供給コントローラへ接続されていた(「ア」1欄28行?35行参照。)ところ,上記配線環をプリント回路板(PCB)構造体とすることにより,電流配線環設計の利点を超えてコスト,サイズ(小型化)及び複雑度の低減を含むといった利点がもたらされるものである(「イ」3欄48行?53行)。
(オ)したがって,引用発明自体において,制御装置24に設けた制御回路,電源回路等の一部を裏蓋22側に配備しようとする起因は存在しないし,さらに,元々存在した配線環に代えてプリント回路板とすることにより小型化等をもたらした甲第2号証に開示された事項を参照しても,引用発明において,その裏蓋22に代えてプリント回路板を適用しようとすることには,論理上の飛躍があることは否めず,積極的な動機付けはないといえる。
(カ)そうすると,甲第1号証に記載されたものに甲第2号証に記載されたものを適用するには,被請求人が主張するように阻害要因があるとまでは言えなくても,引用発明の「裏蓋」に代えて「プリント回路板」としようとする積極的な動機付けが存在しないのだから,引用発明において,上記相違点における本件特許発明1の構成を採用することが,当業者が容易に想到し得たことということはできない。

(キ)さらに,甲第3号証には,回路基板を真空障壁として機能させる技術が示されているものの,これは引用発明の「裏蓋」に代えて「プリント回路板」としようとする積極的な動機付けを与えるものではない。

(ク)したがって,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術並びに周知技術(甲第3号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)[本件特許発明2乃至11について]
同様に,甲第4号証乃至甲第16号証に記載された事項をみても,いずれも,引用発明の「裏蓋」に代えて「プリント回路板」を採用する積極的な動機付けを与えるものではない。
本件特許発明2乃至11は,直接的または間接的に本件特許発明1を引用して記載された発明であり,本件特許発明1の発明特定事項をすべて備えた発明であるから,上記した理由をふまえれば,甲第1号証乃至甲第16号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1乃至11に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-04 
結審通知日 2014-09-08 
審決日 2014-09-19 
出願番号 特願2007-55265(P2007-55265)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 一彦  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 矢島 伸一
藤井 昇
登録日 2013-06-28 
登録番号 特許第5303114号(P5303114)
発明の名称 駆動装置を有する真空ポンプ  
代理人 清田 栄章  
代理人 ▲廣▼瀬 文雄  
代理人 江崎 光史  
代理人 篠原 淳司  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 豊岡 静男  

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