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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1293630
審判番号 不服2013-17132  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-05 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2010-544900号「太陽電池及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年2月4日国際公開、WO2010/013972、平成23年4月7日国内公表、特表2011-511453号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、2009年7月31日(パリ条約による優先権主張 2008年8月1日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月29日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書、請求の範囲、及び図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され、平成24年7月31日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年11月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成25年4月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
そして、当審において、平成25年11月26日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年12月6日付け審尋を行ったところ、審判請求人は指定期間内に回答書を提出しなかったものである。

II.平成25年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年9月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、すなわち、
「 【請求項1】
第1導電型を有する基板の入射面に前記第1導電型と反対導電型である第2導電型のエミッタ層を形成する段階と、
前記エミッタ層上には少なくとも一層の反射防止膜を形成し、
前記入射面と対向し光が入射されない前記基板の裏面には前記基板の一部が露出した少なくとも一つの露出部を備えた少なくとも一層の保護膜を形成する段階と、
前記エミッタ層と電気的に接続される第1電極を形成する段階と、
前記露出部を通じて露出した前記基板の上に形成され、前記基板と電気的に接続される複数の第2電極を形成する段階と、
を含み、
前記反射防止膜及び前記保護膜は前記反射防止膜及び前記保護膜の層の数と同一の数の複数のチャンバーを準備し、前記膜を前記複数のチャンバーで独立的に形成し、
前記保護膜は、
前記基板の裏面上に複数の開口部と複数の遮断部を備えたマスクを位置させる段階、そして
前記開口部と向い合う前記基板の部分に膜が形成され前記遮断部と向い合う前記基板の部分を露出する複数の露出部が形成され、前記複数の露出部を有する前記保護膜を形成する段階,
を含む太陽電池の電極形成方法。」
を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、すなわち、
「【請求項1】
第1導電型を有する基板の入射面に前記第1導電型と反対導電型である第2導電型のエミッタ層を形成する段階と、
前記エミッタ層上には少なくとも一層の反射防止膜を形成し、
前記入射面と対向し光が入射されない前記基板の裏面には前記基板の一部が露出した少なくとも一つの露出部を備えた少なくとも一層の保護膜を形成する段階と、
前記エミッタ層と電気的に接続される第1電極を形成する段階と、
前記エミッタと電気的に接続される複数の第2電極を形成する段階と、
を含み、
前記反射防止膜及び前記保護膜は前記反射防止膜及び前記保護膜の層の数と同一の数の複数のチャンバーを準備し、前記膜を前記複数のチャンバーで独立的に形成し、
前記保護膜は、
前記基板の裏面上に複数の開口部と複数の遮断部を備えたマスクを位置させる段階、そして
前記開口部と向い合う前記基板の部分に膜が形成され前記遮断部と向い合う前記基板の部分を露出する複数の露出部が形成され、前記複数の露出部を有する前記保護膜を形成する段階,を含み、
前記第1電極を形成する段階と前記第2電極を形成する段階は、
前記反射防止膜の上に第1ペーストを塗布して第1電極パターンを形成する段階と、
前記保護膜と前記露出部を通じて露出した前記基板の上に第2ペーストを塗布して第2電極用導電層パターンを形成する段階と、
前記第1電極パターンと前記第2電極用導電層パターンを備えた前記基板を熱処理して、前記エミッタ層と電気的に接続される複数の第1電極と、前記基板と電気的に接続される少なくとも一つの第2電極を備えた第2電極用導電層を一度に形成する段階、とを含み、
前記マスクは前記基板と一緒に前記複数のチャンバー各々に移動する太陽電池の電極形成方法。」(下線部は補正箇所を示す。)
に補正する補正事項を含むものである。

2.新規事項の有無
2-1.本件補正が、特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて検討する。

(1)前記「1.本件補正の内容」からして、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「マスク」について、「前記マスクは前記基板と一緒に前記複数のチャンバー各々に移動する」との限定を付加する補正事項を含むものである。
審判請求人は、上記補正事項の技術的意義につき、審判請求書において、『補正後の請求項1に係る発明は、・・・「前記マスクは前記基板と一緒に前記複数のチャンバー各々に移動する」との構成を備えております。したがって、本願発明は、上記構成を備えることにより、各チャンバーにおけるマスクと基板との位置合せをする時間を減らすことができ、太陽電池の電極形成行程全体の工程時間を短縮することができ、また、マスクと基板を同時に移動することによってマスクと基板との間の位置がずれることを防止することができます。』(「(4)本件の請求項1に係る発明について」の項)と主張する。
そうすると、上記補正事項は、マスクを基板に対して所定位置に保ったままマスクと基板を同時に複数のチャンバー各々に移動することを意味するといえる。

(2)審判請求人は、上記補正事項の補正の根拠につき、審判請求書において、『補正事項2については、補正前の請求項1に記載される「前記基板の裏面上に複数の開口部と複数の遮断部を備えたマスクを位置させる段階」の「マスク」について、さらに、「前記マスクは前記基板と一緒に前記複数のチャンバー各々に移動する」と限定するものです。ここで、補正事項2は、本願明細書の例えば、段落〔0077〕、〔0092〕、図6の記載を根拠とするものです。』(「2.補正の根拠の明示 (1)補正後の請求項1について」の項)と主張する。
審判請求人が上記補正事項の補正の根拠とする当初明細書等の記載は以下のとおりである。
「【0077】
既に説明したように、各保護膜191-193が形成される度に基板110が配置されるチャンバー203-205が変更されるので、各保護膜191-193の形成のために当該のチャンバー203-205に基板110が移動されて、露出部181の形成のために各チャンバー203-205には同一であるマスク300が位置する。」

「【0092】
また、各保護膜191-193を形成するために当該のチャンバー203-205に基板110の位置が移動するによってマスク300また移動して同一であるパターンの第1保護膜191ないし第3保護膜193が形成されるので、第1保護191乃至第3保護膜193に露出部181を形成するための別途の工程が必要なく製造時間さらに一層減る。」

【図6】

(3)当初明細書等の段落【0077】の記載からして、該段落【0077】には、基板110上に保護膜191?193を順次形成するために、基板110がチャンバー203からチャンバー205へ順次移動され、露出部181を形成するために、各チャンバー203?205において、同一のマスク300が所定位置に配置されることが記載されているといえる。

当初明細書等の段落【0092】の「基板110の位置が移動するによってマスク300また移動して」との記載は日本語として明確とはいえないものの、基板110が移動されるとともに、マスク300も移動される程度の事項を意味すると解されることからすれば、該記載を含む当初明細書等の段落【0092】の記載からして、該段落【0092】には、基板110上に保護膜191?193を順次形成するために、基板110が、チャンバー203からチャンバー205へ順次移動されるとともに、マスク300も、チャンバー203からチャンバー205へ順次移動されて、同一パターンの第1保護膜191?第3保護膜193が形成されるので、第1保護膜191?第3保護膜193に露出部181を形成するための別途の工程が必要なく製造時間がさらに一層減ることが記載されているといえる。

当初明細書等の図6には、基板110上に保護膜191?193と露出部181を形成するために、各チャンバー203?205において、マスク300が基板に対して概略同じ位置に配置されることが記載されているといえる。

以上によれば、審判請求人が補正の根拠とする当初明細書等の段落【0077】、【0092】、図6には、基板110上に保護膜191?193を順次形成するために、基板110が、チャンバー203からチャンバー205へ順次移動されるとともに、マスク300も、チャンバー203からチャンバー205へ順次移動され、さらに、露出部181を形成するために、各チャンバー203?205において、同一のマスク300が概略同じ位置に配置されて、同一パターンの第1保護膜191?第3保護膜193が形成されるので、第1保護191?第3保護膜193に露出部181を形成するための別途の工程が必要なく製造時間がさらに一層減ることが記載されているといえる。
しかしながら、「基板110が、チャンバー203からチャンバー205へ順次移動されるとともに、マスク300も、チャンバー203からチャンバー205へ順次移動され、さらに、露出部181を形成するために、各チャンバー203?205において、同一のマスク300が概略同じ位置に配置され」る場合、基板110とマスク300とを所定位置に保ったまま移動する態様と基板110とマスク300とを離して別々に移動する態様の2つの態様があるところ、当初明細書等には、これらのうちの一方であるのか、或いは両方であるのかについての記載はなく、また、当初明細書等の記載から基板110とマスク300とを所定位置に保ったまま移動する態様であることが自明であるというべき根拠も見出せない。
さらに、当初明細書等には、「別途の工程」が具体的にどのような行程であるのかについての記載はなく、また、当初明細書等の記載から「別途の工程」の内容が自明であるというべき根拠も見出せない。
以上のとおり、本件補正により追加された「前記マスクは前記基板と一緒に前記複数のチャンバー各々に移動する」構成、すなわち、基板110に対してマスク300を所定位置に保ったままマスク300と基板100を同時に複数のチャンバー各々に移動することにより、各チャンバーにおけるマスクと基板との位置合せをする時間を減らすことができるという効果を奏し得るという技術事項は、当初明細書等に記載されておらず、かつ、これらから自明な事項でもない。
そうすると、本件補正における上記補正事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。

2-2.むすび
したがって、本件補正は、特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成24年11月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
「 【請求項1】
第1導電型を有する基板の入射面に前記第1導電型と反対導電型である第2導電型のエミッタ層を形成する段階と、
前記エミッタ層上には少なくとも一層の反射防止膜を形成し、
前記入射面と対向し光が入射されない前記基板の裏面には前記基板の一部が露出した少なくとも一つの露出部を備えた少なくとも一層の保護膜を形成する段階と、
前記エミッタ層と電気的に接続される第1電極を形成する段階と、
前記露出部を通じて露出した前記基板の上に形成され、前記基板と電気的に接続される複数の第2電極を形成する段階と、
を含み、
前記反射防止膜及び前記保護膜は前記反射防止膜及び前記保護膜の層の数と同一の数の複数のチャンバーを準備し、前記膜を前記複数のチャンバーで独立的に形成し、
前記保護膜は、
前記基板の裏面上に複数の開口部と複数の遮断部を備えたマスクを位置させる段階、そして
前記開口部と向い合う前記基板の部分に膜が形成され前記遮断部と向い合う前記基板の部分を露出する複数の露出部が形成され、前記複数の露出部を有する前記保護膜を形成する段階,
を含む太陽電池の電極形成方法。」

IV.引用文献の記載事項
原査定で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平2-143569号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

引ア:「[産業上の利用分野]
本発明は光電変換素子に関し、特にその光電変換効率を総体的に向上するための改良に関する。
[従来の技術]
光電変換素子の効率向上の試みは様々な観点から成されているが、ある意味では一種機械的ないし物理的な構造上の工夫により、総体的に変換効率を改善するため、特に結晶シリコン系太陽電池で採られている手法に、pn接合構造等、基本的にその内部で光電変換を営む層状の半導体光電変換部の上下両表面の中、いずれか一方の表面それ自体を粗面にするというものがある。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄3行)

引イ:「[作 用]
先にも述べたように、本発明の光電変換素子においても、実質的にその内部で光電変換を営む層状光電変換部自体には種々の構造が考えられ、おおよそ、従来提示されている光電変換素子中に設けられている層状光電変換部と同様の構造群は、原則として全て、本発明で言う層状光電変換部として用いることができる。
例えば基本的な結晶系、非結晶系のpn接合構造を始め、ヘテロ接合構造や、さらには三層以上、もっと多くの層を積層して形成された光電変換構造等も含むことができる。pin接合等は多層積層構造の最も簡単な場合である。」(2頁右下欄11?3頁左上欄3行)

引ウ:「[実 施 例]
第1図には本発明に従って構成された光電変換素子の一実施例が断面構造で示されている。
図示の場合、基本的に光の入射により光電変換機能を営む層状光電変換部10には、便宜的に第一の半導体層11と第二の半導体層12の積層構造から成るものが例示されている。
第一の半導体層11と第二の半導体層12とは、光発生したキャリアを分離できるように組込み電界を形成できる関係にあれば良く、その最も古典的な関係は公知、既存のpn接合である。」(3頁右下欄1?11行)

引エ:「第二半導体層12がシリコンの場合、保護層30を上記のように二層構造とし、第二半導体層12に接する面側を酸化シリコン、外側を窒化シリコンとして構成すると、第二半導体層12の表面電子状態を特に良好に保つことができ、さらに外側の窒化シリコンの上に、数十Åから数百Å程度の厚さの酸化シリコン膜を設けて三層構造とすると、その後に形成される表面凹凸層40との接着性を向上させることもできる。」(4頁左下欄10?18行)

引オ:「第4図はこのように、層状光電変換部10にあって入射面とは反対側の面(裏面)に保護層30と表面凹凸層40を形成した実施例を示している。
この実施例においても、層状光電変換部10中の構成自体は任意であり、図示されているように、第一半導体層11の上に第1,2図示実施例において示された第二半導体層12が整流性の接合を形成するように設けられている場合や、第3図示実施例において示されているように、第一半導体層11の表面領域に電気的に誘起される反転層14が第一半導体層11とあいまって光電変換機能に寄与するような場合を含む外、種々の構造であって良く、また、その光入射面側の付帯構成には、この種の公知既存の光電変換素子において既に採用されている種々の工夫が適宜、任意に取込まれていて良い。
例えば層状光電変換部10の光入射面側の表面領域ないし第二半導体層12の表面領域の上には、光透過性で反射防止機能の高い反射防止膜70が保護膜を兼ねて備えられていて良く、取り出し電極51はこの反射防止膜70に適宜所定のパターンに従って開けられた開口を介し、層状光電変換部10に電気的にオーミック接触するようになっていて良い。
また、このオーミック接触部分には、先に第3図に即して説明したように、特に第二半導体層12が反転層14で形成されるような場合には、良好なオーミック接触を採るための不純物領域54に相当する領域を備えて良い。
対して層状光電変換部10の光入射面とは反対側の面には、本発明に従い、保護層30を介した後、表面凹凸層40が形成され、さらにその上にもう一方の取り出し電極52を形成する電極面が形成されている。
この場合、当該電極面52は裏面反射膜を兼ね、層状光電変換部10中を通過してきた光を再度、光電変換部10中に戻す働きし、本発明により備えられた表面凹凸層40は、これに際して反射光を散乱し、その光路長を実効的に長くするべく機能する。
もちろん、この電極面52は、保護層30と表面凹凸層40に一連に、かつ要所に開けられた開口を介し、光電変換部10の表面にオーミック接触している。」(7頁右上欄4行?右下欄7行)

引カ:

引a:引アの「本発明は光電変換素子に関し、特にその光電変換効率を総体的に向上するための改良に関する。・・・光電変換素子の効率向上の試みは様々な観点から成されているが、・・・特に結晶シリコン系太陽電池で採られている手法に・・・というものがある。」との記載からして、引用文献に記載された光電変換素子は太陽電池の場合を含むといえる。

引b:引ウの「第1図には本発明に従って構成された光電変換素子の一実施例が断面構造で示されている。・・・第一の半導体層11と第二の半導体層12とは、・・・既存のpn接合である。」との記載からして、引用文献には、第1図に記載された実施例における光電変換素子の第一半導体層11と第二半導体層12とがpn接合することが記載されているといえる。
そして、引イの「おおよそ、従来提示されている光電変換素子中に設けられている層状光電変換部と同様の構造群は、原則として全て、本発明で言う層状光電変換部として用いることができる。例えば基本的な結晶系、非結晶系のpn接合構造を・・・も含むことができる。」との記載及び引オの「第4図はこのように、層状光電変換部10にあって入射面とは反対側の面(裏面)に保護層30と表面凹凸層40を形成した実施例を示している。この実施例においても、層状光電変換部10中の構成自体は任意であり、図示されているように、第一半導体層11の上に第1,2図示実施例において示された第二半導体層12が整流性の接合を形成するように設けられている場合・・・を含む」との記載からして、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子の第一半導体層11と、第一半導体層11の上、すなわち入射面の第二半導体層12とが、第1図に記載された実施例における光電変換素子の第一半導体層11と第二半導体層12と同様に、pn接合することが記載されているといえる。
そうすると、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子について、第一半導体層11の入射面に第一半導体層11とpn接合する第二半導体層12を形成することが記載されているといえる。

引c:引オの「第4図はこのように、層状光電変換部10にあって入射面とは反対側の面(裏面)に保護層30と表面凹凸層40を形成した実施例を示している。」との記載、引オの「例えば層状光電変換部10の光入射面側の表面領域ないし第二半導体層12の表面領域の上には、光透過性で反射防止機能の高い反射防止膜70が保護膜を兼ねて備えられていて良く」との記載、引オの「この電極面52は、保護層30と表面凹凸層40に一連に、かつ要所に開けられた開口を介し、光電変換部10の表面にオーミック接触している。」との記載及び第4図の図示内容からして、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子について、第二半導体層12上には反射防止膜70を形成し、第一半導体層11の入射面と対向する第一半導体層11の裏面には第一半導体層11の一部が露出した複数の開口を備えた構造の保護層30を形成することが記載されているといえる。
また、引エの第1図に記載された実施例における光電変換素子についての「第二半導体層12がシリコンの場合、保護層30を上記のように二層構造とし、・・・さらに・・・三層構造とする・・・こともできる。」との記載が第4図に記載された実施例における光電変換素子について当てはまることが明らかだから、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子について、第二半導体層12上には反射防止膜70を形成し、第一半導体層11の入射面と対向する第一半導体層11の裏面には第一半導体層11の一部が露出した複数の開口を備えた2,3層の構造の保護層30を形成することも記載されているといえる。

引d:引オの「取り出し電極51はこの反射防止膜70に適宜所定のパターンに従って開けられた開口を介し、層状光電変換部10に電気的にオーミック接触するようになっていて良い。」との記載及び第4図の図示内容からして、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子について、第二半導体層12と電気的にオーミック接触する取り出し電極51を形成することが記載されているといえる。

引e:引オの「対して層状光電変換部10の光入射面とは反対側の面には、本発明に従い、保護層30を介した後、表面凹凸層40が形成され、さらにその上にもう一方の取り出し電極52を形成する電極面が形成されている。」との記載、引オの「この電極面52は、保護層30と表面凹凸層40に一連に、かつ要所に開けられた開口を介し、光電変換部10の表面にオーミック接触している。」との記載及び第4図に取り出し電極52の複数の突出部が保護層30の複数の開口を通じて露出した第一半導体層11の上に形成されている態様が示されていることからして、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子について、保護層30の複数の開口を通じて露出した第一半導体層11の上に形成され、第一半導体層11とオーミック接触する取り出し電極52の複数の突出部を形成することが記載されているといえる。

引f:引d、引eからして、引用文献には、第4図に記載された実施例における光電変換素子について、引b?引eの事項の段階を含む電極形成方法が記載されているといえる。
そして、引用文献に記載された光電変換素子は太陽電池の場合を含む(引a)から、引用文献には、引b?引eの事項の段階を含む太陽電池の電極形成方法が記載されているといえる。

以上によれば、引用文献には以下の発明が記載されている。
「第一半導体層11の入射面に第一半導体層11とpn接合する第二半導体層12を形成する段階と、
第二半導体層12上には反射防止膜70を形成し、
第一半導体層11の入射面と対向する第一半導体層11の裏面には第一半導体層11の一部が露出した複数の開口を備えた2,3層の構造の保護層30を形成する段階と、
第二半導体層12と電気的にオーミック接触する取り出し電極51を形成する段階と、
前記複数の開口を通じて露出した第一半導体層11の上に形成され、第一半導体層11とオーミック接触する取り出し電極52の複数の突出部を形成する段階と、
を含む太陽電池の電極形成方法。」(以下、「引用発明」という。)

V.対比・判断
1.対比
引用発明の「第一半導体層11」は、特定の導電型を有することが明らかであるから、本願発明の「第1導電型を有する基板」に相当する。

本願明細書の発明の詳細な説明の「一般的な太陽電池はp型とn型のように互いに異なる導電型(conductive type)の半導体からなる基板(substrate)及びエミッタ層(emitter layer)、そして基板とエミッタ層にそれぞれ接続された電極を備える。この時、基板とエミッタ層の界面にはp-n接合が形成されている。」(【0002】)との記載からして、本願発明のエミッタ層は、基板と異なる導電型であって、基板とエミッタ層の界面にp-n接合が形成されるものといえる。
そうすると、「第一半導体層11」の導電型と反対導電型であることが明らかであって、「第一半導体層11」との界面にp-n接合が形成される引用発明の「第一半導体層11とpn接合する第二半導体層12」は本願発明の「第1導電型を有する基板の入射面に前記第1導電型と反対導電型である第2導電型のエミッタ層」に相当し、引用発明の「第一半導体層11の入射面に第一半導体層11とpn接合する第二半導体層12を形成する段階」は本願発明の「第1導電型を有する基板の入射面に前記第1導電型と反対導電型である第2導電型のエミッタ層を形成する段階」に相当する。

引用発明の「反射防止膜70」、「開口」、「保護層30」は、本願発明の「反射防止膜」、「露出部」、「保護膜」に、それぞれ相当するとともに、引用発明の「第一半導体層11の入射面と対向する第一半導体層11の裏面」は光が入射されない面といえるから、引用発明の「第二半導体層12上には反射防止膜70を形成し、第一半導体層11の入射面と対向する第一半導体層11の裏面には第一半導体層11の一部が露出した複数の開口を備えた2,3層の構造の保護層30を形成する段階」は本願発明の「前記エミッタ層上には少なくとも一層の反射防止膜を形成し、前記入射面と対向し光が入射されない前記基板の裏面には前記基板の一部が露出した少なくとも一つの露出部を備えた少なくとも一層の保護膜を形成する段階」に相当する。

引用発明の「取り出し電極51」、「取り出し電極52の複数の突出部」は、本願発明の「第1電極」、「第2電極」に、それぞれ相当するから、引用発明の「第二半導体層12と電気的にオーミック接触する取り出し電極51を形成する段階」は本願発明の「前記エミッタ層と電気的に接続される第1電極を形成する段階」に相当し、引用発明の「前記複数の開口を通じて露出した第一半導体層11の上に形成され、第一半導体層11とオーミック接触する取り出し電極52の複数の突出部を形成する段階」は、本願発明の「前記露出部を通じて露出した前記基板の上に形成され、前記基板と電気的に接続される複数の第2電極を形成する段階」に相当する。

以上によれば、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
「第1導電型を有する基板の入射面に前記第1導電型と反対導電型である第2導電型のエミッタ層を形成する段階と、
前記エミッタ層上には少なくとも一層の反射防止膜を形成し、
前記入射面と対向し光が入射されない前記基板の裏面には前記基板の一部が露出した少なくとも一つの露出部を備えた少なくとも一層の保護膜を形成する段階と、
前記エミッタ層と電気的に接続される第1電極を形成する段階と、
前記露出部を通じて露出した前記基板の上に形成され、前記基板と電気的に接続される複数の第2電極を形成する段階と、
を含む太陽電池の電極形成方法。」

そして、両発明は以下の点で相違する。
(相違点)
反射防止膜及び保護膜の形成につき、
本願発明では、「前記反射防止膜及び前記保護膜は前記反射防止膜及び前記保護膜の層の数と同一の数の複数のチャンバーを準備し、前記膜を前記複数のチャンバーで独立的に形成し、
前記保護膜は、
前記基板の裏面上に複数の開口部と複数の遮断部を備えたマスクを位置させる段階、そして
前記開口部と向い合う前記基板の部分に膜が形成され前記遮断部と向い合う前記基板の部分を露出する複数の露出部が形成され、前記複数の露出部を有する前記保護膜を形成する段階」を含む方法により形成するのに対して、
引用発明では、どのような段階を含む方法により形成するのか不明である点。

2.判断
そこで、相違点について検討する。
例えば、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-231969号公報に、従来技術として「図2に示される従来の製膜装置は、基材8に膜の形成を行う製膜室1a、1b、1c、1dを有する。この製膜室1a、1b、1c、1dは、それぞれ1種類の膜しか形成することがきず、基材に複数の膜を形成する場合には、製膜室の数が、その膜数分だけ必要となる。さらに各製膜室は、それぞれ電極2、3とガス導入口4を有する。」(【0051】)と記載されているように、基材に形成する膜の数だけチャンバーを準備することは、本願の優先権主張日前に周知の技術であったといえるから、引用発明において、反射防止膜70及び保護層30を形成するにあたり、上記周知技術に倣って、「前記反射防止膜及び前記保護膜は前記反射防止膜及び前記保護膜の層の数と同一の数の複数のチャンバーを準備し、前記膜を前記複数のチャンバーで独立的に形成」する構成とすることに格別の困難性は見出せない。
加えて、例えば、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2008-135565号公報に「反射防止膜3の形成方法は、PECVD(plasma enhanced chemical vapor deposition)法、蒸着法、スパッタ法などを用いて形成する。なお、反射防止膜3は、・・・表面電極4を形成するために所定のパターンでパターニングしておく。パターニング法としては・・・・反射防止膜3形成時にマスクを予め形成しておき、反射防止膜3形成後にこれを除去する方法を用いることができる。」(【0057】)と記載され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2006-73849号公報に、従来技術として「パターニングの従来技術に、マスクによる方法がある・・・メタルマスク方式と呼ばれるパターニングに於いては、メタルマスクの開口部に半導体層、裏面電極層が堆積形成される。」(【0007】?【0008】)と記載されているように、マスクを用いて膜を形成することは、本願の優先権主張日前に周知の技術であったといえる。
しかも、上記周知技術において、マスクが開口部と遮断部を備えるとともに、マスクの開口部と向き合う面上には膜が形成され、マスクの遮断部と向き合う面上には膜が形成されずに、面が露出した開口(露出部)が形成されることは明らかである。
そうすると、引用発明において、第一半導体層11の裏面に複数の開口を備えた2,3層の構造の保護層30を形成する段階を「前記保護膜の層の数と同一の数の複数のチャンバーを準備し、前記膜を前記複数のチャンバーで独立的に形成」する構成とするにあたり、上記周知技術に倣ってマスクを用いて保護層30を形成するようにし、「前記基板の裏面上に複数の開口部と複数の遮断部を備えたマスクを位置させる段階、そして 前記開口部と向い合う前記基板の部分に膜が形成され前記遮断部と向い合う前記基板の部分を露出する複数の露出部が形成され、前記複数の露出部を有する前記保護膜を形成する段階」を含む構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎない。
以上によれば、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、本願発明による効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-13 
結審通知日 2014-06-17 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2010-544900(P2010-544900)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
横林 秀治郎
発明の名称 太陽電池及びその製造方法  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 健一  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 河合 章  

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