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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1294058
審判番号 不服2012-12453  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-02 
確定日 2014-11-11 
事件の表示 特願2001-524580「生物学的に活性な物質の、表面改質された粒状組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成13年3月29日国際公開、WO2001/021154、平成15年3月11日国内公表、特表2003-509453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成12年9月21日(パリ条約による優先権主張 1999年9月21日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成22年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成23年7月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年2月27日付けで拒絶査定され、同年7月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月4日付けで前置審査の結果が報告され、当審において平成25年10月10日付けで審尋され、同年12月12日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年7月2日付け手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.平成24年7月2日付け手続補正書による明細書についての補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号に掲げる場合の補正であって、本件補正前の請求項2を削除するとともに、請求項1及び請求項18を次のとおりに補正するものである。(なお、請求項2を削除することに伴い、補正前の請求項3?18は、請求項に付した番号を1つ繰り上げ、請求項2?17と補正されている。)
「【請求項1】
表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物であって、該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有し、そして該粒子が
(a)生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い非水性媒質、ここで該生物学的に活性な物質がニフェジピン、ウルソジオール、ブデソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体より成る群から選択され、
(b)該非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系、ここで該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部が、該生物学的に活性な物質の粒子の表面に吸着している、及び
(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種以上の親水性物質、ここで該1種以上の親水性物質は低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコールである
を含む非水性担体系内に分散されており、
該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に自己分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンションを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有し、かつ該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部とその表面上で結合しており、
非水性媒質が、
動物由来の油;植物油;魚油;遊離の脂肪酸としての魚油;オレイン酸;リノール酸;ポリ不飽和脂肪酸;カプリル/カプリン酸トリグリセライド;カプリル/カプリン/リノール酸トリグリセライド;C_(8-12)の脂肪酸鎖を有する合成中鎖トリグリセライド;プロピレングリコールジカプリレート/カプレート;リノール酸エチルエステル;コレステリル脂肪酸エステル;C_(12-18)脂肪酸モノグリセライド、C_(12-18)脂肪酸ジグリセライド、及びC_(12-18)脂肪酸トリグリセライドであって大豆油、アーモンド油、ひまわり油、オリーブ油及びコーン油とグリセロールとから製造されたもの;医薬的に受容できる芳香族エステル;安息香酸ベンジル;フタル酸ジエチル;没食子酸塩プロピル;トリアセチン;ジアセチン;モノアセチン;クエン酸トリエチル;医薬的に適切な疎水性有機溶媒;周囲温度で液体状態のフッ化炭化水素;及びペルフルブロンより成る群から選択される前記の組成物。
【請求項17】
該非水性担体系を該流体の水性媒質に加えることを含む、請求項1に記載の表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物の製造方法。」

2.(1)請求項1に係る補正は、「非水性媒質」について、具体的な成分を列挙するものであるから、意匠法等の一部を改正する法律(平成18年法律第55号)附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限縮)を目的とするものである。
(2)一方、請求項17(本件補正前の請求項18)については、本件補正前の「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物を流体の水性媒質に加えることを含む、水不溶性の生物学的に活性な物質の投薬形態の製造方法」の発明を、本件補正後の「該非水性担体系を該流体の水性媒質に加えることを含む、請求項1に記載の表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物の製造方法」の発明に補正するものである。
ここで、(i)「流体の水性媒質」に加えるものが、「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物」から「該非水性担体系」に補正され、また(ii)製造されるものが、「水不溶性の生物学的に活性な物質の投薬形態」から「請求項1に記載の表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物」に補正されている。
そして、(i)に関し、本件補正後の「該非水性担体系」とは(a)非水性媒質、(b)リン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系及び(c)親水性物質を含むものであり、この非水性担体系内に「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子」が分散されているものであるから、「該非水性担体系」には「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子」は含まれていない。したがって、「流体の水性媒質」に加えるものは本件補正前後で別異のものとなっている。
また、(ii)に関し、本件補正後の発明で製造される「請求項1に記載の表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物」は、請求項1に「表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物」は「流体の水性媒質に添加した際に自己分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンションを形成でき」るものであることが特定されていることからみて、「流体の水性媒質」を含むものではない。そうすると、何を製造しようとしているのか明確ではないが、少なくとも「流体の水性媒質」を含む「水不溶性の生物学的に活性な物質の投薬形態」でないことは明らかである。
(なお、「非水性担体系」にも「流体の水性媒質」にも、「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子」は含まれていないから、そもそも「請求項1に記載の表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物」は製造し得ないものである。)

3.そうすると、請求項17(本件補正前の請求項18)に係る補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に掲げるいずれの事項をも目的とするものではなく、同項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

4.請求項1に係る補正についても検討しておく。
(1)請求項1に係る補正は、上記2(1)に示したとおり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、さらに同条第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かを検討する。

(2)本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、上記1に示したとおりである。

(3)引用先願
特願2000-593294号(国際出願日:2000年1月14日、優先権主張:1999年1月18日及び同年12月21日 いずれも大韓民国)
※国際公開第2000/041682(2000年7月20日国際公開)
※特表2002-534459号公報
※出願人:エルジー・ケミカル・リミテッド(LG CHEMICAL LIMITED)であって、本願出願時点で、本願の出願人と同一の者ではない。
※発明者:キム、ミュン、ジン(KIM,Myung,Jin)、キム、スン、ジン(KIM,Sun,Jin)、クウォン、キュー、チャン(KWON,Kyu,Chan)及びキム、ジョーン(KIM,Joon)であって、本願に係る発明者と同一の者ではない。

(4)上記出願(以下、「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面(以下、「先願明細書等」という。なお、国際公開に基づく。)には次の記載がある。
ア.「1.親油性物質及び、タンパク質又はペプチド薬物及び抗原からなる群から選ばれる活性成分を含む、0.1?200μmの範囲の平均粒径を有する親油性微細粒子。
2.前記平均粒子が1?50μmの範囲である請求項1に記載の親油性微細粒子。
3.前記薬物が、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、……、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子、……、エリスロポエチン、……、インターフェロン、インスリン、……、インスリン-類似成長因子、……からなる群から選ばれる請求項1に記載の親油性微細粒子。
……
5.前記親油性物質が、脂質、脂質誘導体、……からなる群から選ばれる請求項1記載の親油性微細粒子。
6.前記脂質が、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン又はホスファチジルセリンであり、脂質誘導体は、アラキドイルホスファチジルコリン又はステアロイルホスファチジルコリンである請求項5記載の親油性微細粒子。
……
12.請求項1、8及び10のいずれか一つに記載の親油性微細粒子を親油性媒質に分散することにより調製された分散液剤形。
13.前記親油性媒質が、食用油、鉱油、スクアレン、スクアラン、タラ肝油、モノ-、ジ-又はトリ-グリセリド又はこれらの混合物である請求項12記載の分散液剤形。
14.前記食用油が、トウモロコシ油、オリーブ油、大豆油、紅花油、綿実油、落花生油、胡麻油、ヒマワリ油又はこれらの混合物である請求項13記載の分散液剤形。
……
16.注射用又は経口投与用として用いられる請求項12又は15の分散液剤形。
17.水性注射媒質及び請求項12の分散液剤形を含む水中油滴型エマルジョン剤形。
18.前記水性注射媒質が、蒸留水又は緩衝溶液である請求項17記載の水中油滴型エマルジョン剤形。」(国際公開39?42頁の請求の範囲、公表公報2?4頁の特許請求の範囲)

イ.「本発明は、タンパク質薬物又は抗原を含む親油性物質でコーティングされた微細粒子及び前記薬物又は抗原を生体内に効果的に伝達するための徐放性剤形に関する。」(国際公開1頁6?9行、公表公報段落0001)

ウ.「したがって、本発明の目的は、安定性が改善され、タンパク質薬物又は抗原を効果的に伝達する微細粒子を提供することである。
本発明の他の目的は、前記微細粒子を含む徐放性剤形を提供することである。
本発明の一実施態様に従って、本発明では親油性物質及び、タンパク質又はペプチド薬物及び抗原からなる群から選ばれる活性成分を含む、0.1?200μmの範囲の平均粒径を有する親油性微細粒子が提供される。」(国際公開5頁10?21行、公表公報段落0012?0014)

エ.「本発明の固形親油性微細粒子は親油性物質と活性成分を含む。
本発明に使用され得る活性成分は、タンパク質薬物、ペプチド薬物又は抗原である。代表的なタンパク質又はペプチド薬物としては、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、……、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子、……、エリスロポエチン、……、インターフェロン、インスリン、……、インスリン様成長因子、……などがあるが、これらは本発明に使用され得るタンパク質又はペプチド薬物を限定しない。
……
本発明に使用され得る親油性物質としては、脂質及びその誘導体、……などがある。代表的な脂質としては、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールがある。代表的な脂質誘導体としては、アラキドイルホスファチジルコリン及びステアロイルホスファチジルコリンがある。……。中でも、レシチン、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンのような界面活性を有する親油性物質が好ましい。
……
このようにして得られた本発明の微細粒子は、0.1?200μm、好ましくは1?50μm、さらに好ましくは1?10μmの範囲の平均粒径を有する。」(国際公開6頁3行?9頁17行、公表公報段落0016?0025)

オ.「活性成分を含む本発明の微細粒子は、(1)活性成分が変性せずに完全な活性を保持し、(2)活性成分を長期間にわたって完全に放出し、(3)油のような親油性媒質中に容易に分散され、このようにして得られた分散液は低粘度を有し、活性成分の活性を完全に保持し、(4)体のリン脂質膜と完全に融合して活性成分を体に効果的に輸送し、及び(5)経口投与したとき、小腸に位置するペイヤース板のM細胞に伝達されるという種々の長所を有する。
本発明の微細粒子は、分散液、エマルジョン及びエアロゾルの形態で剤形化され得る。
したがって、本発明は、本発明の親油性微細粒子を親油性媒質に分散させて製造される分散液剤形を提供する。本発明に使用され得る親油性媒質としては、食用油、鉱油、スクアレン、スクアラン、タラ肝油、モノ-、ジ-又はトリ-グリセリド及びこれらの混合物がある。代表的な食用油としては、トウモロコシ油、オリーブ油、大豆油、紅花油、綿実油、落花生油、胡麻油、ヒマワリ油及びこれらの混合物を挙げることができる。また、親油性媒質は、分散剤又は防腐剤をさらに含み得る。分散液剤形は、注射用又は経口投与用として使用され得る。
また、本発明は、水性注射媒質と分散液剤形を含む水中油滴型エマルジョン剤形を提供する水性注射媒質としては、蒸留水及び緩衝溶液がある。エマルジョン剤形においては、親油性微細粒子が油でコーティングされて油相中に残る反面、油中水滴型エマルジョンの形成と安定性を増加させる。エマルジョン剤形は注射用として使用され得る。」(国際公開9頁18行?10頁16行、公表公報段落0026?0028)

カ.「実施例11:親油性微細粒子の製造
ヒト成長ホルモン(hGH)を5mMリン酸緩衝溶液(PBS)に2mg/mlの濃度で溶解した後、ツイーン80をPBS重量に対して0.01重量%の量で加えた。これに、分子量1,000,000のヒアルロン酸ナトリウムを0.2%(w/v)の濃度で溶解した。この溶液を3ml/分の流速で噴霧乾燥機(Buchi 190)に供給して1次粒子を得た。この段階において、入口空気温度は85℃であった。1次粒子の平均粒子径は3μmであった。
レシチンをエタノールに1%(w/v)の濃度で溶解した後、これに1次粒子を1%(w/v)の濃度で懸濁した。この懸濁液を噴霧乾燥器(Buchi 190)に供給して微細粒子(微細粒子11)を得た。得られた微細粒子の平均粒径は7μmであった。
実施例12?24:親油性微細粒子の製造
表IIに示す種々の成分を用いて実施例11の手順を繰り返すことによって種々の固形微細粒子を得た(微細粒子12?24)。

」(国際公開14頁18行?16頁、公表公報段落0040?0043)

キ.「実施例25:微細粒子3の綿実油分散液剤形の製造
実施例3で製造された微細粒子3を綿実油に加え、磁石攪拌機で分散して各々20、50、100、200及び500mg/mlの微細粒子3を含む5個の綿実油分散液を製造した。
実施例26:微細粒子3の食用油分散液剤系の製造
大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油を用いて実施例25の手順を繰り返すことによって各々100mg/mlの微細粒子3を含む大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を得た。
……
実施例30:微細粒子12の綿実油分散液剤形の製造
微細粒子12を用いて実施例25の手順を繰り返すことによって50、100、200、360及び500mg/mlの微細粒子12を含む5個の綿実油分散液を得た。
実施例31:微細粒子12の食用油分散液剤形の製造
微細粒子12を用いて実施例25の手順を繰り返すことによって各々100mg/mlの微細粒子12を含む大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を得た。
実施例32:微細粒子14の食用油分散液剤形の製造
微細粒子14を用いて実施例25の手順を繰り返すことによって各々360mg/mlの微細粒子14を含む綿実油、大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を得た。
実施例33:微細粒子15の食用油分散液剤形の製造
微細粒子15を用いて実施例25の手順を繰り返すことによって各々360mg/mlの微細粒子15を含む綿実油、大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を得た。
実施例34:微細粒子18の食用油分散液剤形の製造
微細粒子18を用いて実施例25の手順を繰り返すことによって各々360mg/mlの微細粒子18を含む綿実油、大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を得た。」(国際公開17頁1行?19頁7行、公表公報段落0044?0053)

ク.「実施例35:微細粒子3のエマルジョン剤形の製造
実施例26で得られた大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を各々4倍体積の0.9%NaCl溶液に加えて20mg/ml微細粒子3を含む油と水の混合物(1:4)を得た。この混合物を混合して均一な白色不透明水中油滴型エマルジョンを得た。
実施例36:微細粒子12のエマルジョン剤形の製造
実施例30で得られた綿実油分散液を用いて実施例35の手順を繰り返すことによって、各々5、20、50、120及び200mg/mlの微細粒子12を含み、各々の油に対する水の比率が1:9、1:4、1:3、1:2及び2:3である5個の均一な白色不透明水中油滴型エマルジョンを得た。
これらのエマルジョン剤形において、固形微細粒子は油相として分散されており、微細粒子を含む油滴は微細粒子の親油性表面によって安定であった。エマルジョンは室温で2週間以上安定であった。
実施例37:微細粒子12のエマルジョン剤形の製造
実施例31で得られた大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液を用いて実施例35の手順を繰り返すことによって均一な白色不透明水中油滴型エマルジョンを得た。
……
実施例41:微細粒子14のエマルジョン剤形の製造
実施例32で得られた綿実油、大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液、及び2倍体積の0.9%NaCl溶液を用いて実施例35の手順を繰り返すことによって、4個の均一な白色不透明水中油滴型エマルジョンを得た。得られた各々の剤形は油と水の混合物(1:2)中に120mg/mlの微細粒子14を含んでいた。
実施例42:微細粒子15のエマルジョン剤形の製造
実施例33で得られた綿実油、大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液、及び2倍体積の0.9%NaCl溶液を用いて実施例35の手順を繰り返すことによって4個の均一な白色不透明水中油滴型エマルジョンを得た。得られた各々の剤形は油と水の混合物(1:2)中に120mg/mlの微細粒子15を含んでいた。
実施例43:微細粒子18のエマルジョン剤形の製造
実施例34で得られた綿実油、大豆油、トウモロコシ油及び胡麻油分散液、及び2倍体積の0.9%NaCl溶液を用いて実施例35の手順を繰り返すことによって微細粒子18の均一な白色不透明水中油滴型エマルジョンを得た。得られた各々の剤形は油と水の混合物(1:2)中に120mg/mlの微細粒子18を含んでいた。」(国際公開19頁9行?21頁34行、公表公報段落0054?0063)

(5)先願明細書等に記載された発明
摘示アの請求の範囲1?14及び摘示イ?オの記載からみて、
「親油性物質及び、タンパク質又はペプチド薬物から選ばれる活性成分を含む、0.1?200μmの範囲の平均粒径を有する親油性微細粒子を親油性媒質に分散することにより調製された分散液剤形であって、
前記親油性物質が、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン又はホスファチジルセリンである脂質、及びアラキドイルホスファチジルコリン又はステアロイルホスファチジルコリンである脂質誘導体からなる群から選ばれ、
前記親油性媒質が、トウモロコシ油、オリーブ油、大豆油、紅花油、綿実油、落花生油、胡麻油、ヒマワリ油又はこれらの混合物である食用油である分散液剤形。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(6)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「親油性物質及び、タンパク質又はペプチド薬物から選ばれる活性成分を含む、0.1?200μmの範囲の平均粒径を有する親油性微細粒子」は、摘示ウに「本発明の目的は、安定性が改善され、タンパク質薬物または抗原を効果的に伝達する微細粒子を提供する」と記載されているように、安定性の改善されたものであるから、補正発明の「表面改質された生物学的に活性な物質の安定な粒子」であって、「該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有」する粒子に相当する。なお、平均粒子サイズについては、摘示エに「さらに好ましくは1?10μmの範囲の平均粒径を有する」と記載されるとともに、摘示カの表IIに平均粒径が5?7μmのものが実際に製造されたものとして記載されていることからみて、補正発明のものと実質的に相違しない。
引用発明の「親油性媒質」は、補正発明の「(a)非水性媒質」に相当する。
引用発明の「親油性物質」は、「レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン又はホスファチジルセリンである脂質、及びアラキドイルホスファチジルコリン又はステアロイルホスファチジルコリンである脂質誘導体からなる群から選ばれ」るものであり、「中でも、レシチン、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンのような界面活性を有する親油性物質が好ましい」(摘示エ)と記載されていることからみて、補正発明の「(b)非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系」に相当する。なお、摘示イに「本発明は、タンパク質薬物又は抗原を含む親油性物質でコーティングされた微細粒子」と記載されていることからみて、補正発明における「該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部が、該生物学的に活性な物質の粒子の表面に吸着している」ものといえる。
引用発明では、「分散液剤形」を「親油性物質及び、タンパク質又はペプチド薬物から選ばれる活性成分を含む、0.1?200μmの範囲の平均粒径を有する親油性微細粒子を親油性媒質に分散することにより調製」するものであるが、本願明細書の段落0067?0068に記載された生物学的活性物質の分散物の製造方法(方法I及びII)からみて、補正発明でも、該粒子の非水性担体系への分散も同様の製造方法により行われることを含んでいるものと解されることから、引用発明の前記点は補正発明の「該粒子」が「(a)非水性媒質及び(b)リン脂質界面活性剤系を含む非水性担体に分散されており」に相当する。
また、引用発明の「分散液剤形」は、摘示アの請求の範囲17?18及び摘示オに記載されているとおり、水性媒質に分散され、水中油滴型エマルジョン剤形となるものであるから、補正発明の「該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンションを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有し、かつ該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部とその表面上で結合しており」に相当する。

そうすると、補正発明と引用発明とは、
「表面改質された生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物であって、該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有し、そして該粒子が
(a)非水性媒質、
(b)該非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系、ここで該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部が、該生物学的に活性な物質の粒子の表面に吸着している、
を含む非水性担体系内に分散されており、
該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンションを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有し、かつ該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部とその表面上で結合しており、
非水性媒質が、
動物由来の油;植物油;魚油;遊離の脂肪酸としての魚油;オレイン酸;リノール酸;ポリ不飽和脂肪酸;カプリル/カプリン酸トリグリセライド;カプリル/カプリン/リノール酸トリグリセライド;C_(8-12)の脂肪酸鎖を有する合成中鎖トリグリセライド;プロピレングリコールジカプリレート/カプレート;リノール酸エチルエステル;コレステリル脂肪酸エステル;C_(12-18)脂肪酸モノグリセライド、C_(12-18)脂肪酸ジグリセライド、及びC_(12-18)脂肪酸トリグリセライドであって大豆油、アーモンド油、ひまわり油、オリーブ油及びコーン油とグリセロールとから製造されたもの;医薬的に受容できる芳香族エステル;安息香酸ベンジル;フタル酸ジエチル;没食子酸塩プロピル;トリアセチン;ジアセチン;モノアセチン;クエン酸トリエチル;医薬的に適切な疎水性有機溶媒;周囲温度で液体状態のフッ化炭化水素;及びペルフルブロンより成る群から選択される前記の組成物。」
の点で一致しているが、次の点で一応相違するものである。

相違点1
補正発明においては、「生物学的に活性な物質」が水不溶性であり、「ニフェジピン、ウルソジオール、ブデソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体より成る群から選択され」るものと特定されているが、引用発明では「タンパク質又はペプチド薬物」と特定されているのみで、水に対する溶解性については特定がない点

相違点2
補正発明では非水性媒質について「生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い」と特定されているが、引用発明ではそのような特定がない点

相違点3
補正発明では「(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種以上の親水性物質、ここで該1種以上の親水性物質は低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコール」を非水性担体系に含んでいるが、引用発明には、このような「親水性物質」について特定されていない点

相違点4
補正発明では、「該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に自己分散」することが特定されているが、引用発明ではそのような「自己分散」について特定がない点

(7)判断
ア.相違点1
補正発明では、「水不溶性の生物学的に活性な物質」について、「ニフェジピン、ウルソジオール、ブデソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体より成る群から選択され」ものと特定していることから、インシュリンは「水不溶性の生物学的に活性な物質」であるといえる。
一方、引用発明の「タンパク質又はペプチド薬物から選ばれる活性成分」は、摘示アの請求の範囲3や摘示エに、「ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、……、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子、……、エリスロポエチン、……、インターフェロン、インスリン、……、インスリン-類似成長因子、……からなる群から選ばれる」ことが記載されており、少なくとも「インスリン」を採用し得るものである。そして、摘示カにおいて、実施例20(表II参照)としてインスリンを使用した親油性微細粒子を製造していることが記載されているといえる。
そうすると、これらのことにかんがみれば、相違点1において両者が実質的に相違しているものということはできない。

イ.相違点2
引用発明では、親油性媒質として、「トウモロコシ油、オリーブ油、大豆油、紅花油、綿実油、落花生油、胡麻油、ヒマワリ油又はこれらの混合物である食用油」と特定されているが、これは、本願発明の非水性媒質として挙げられた「植物油」に該当する。そして、引用発明においても、親油性微細粒子は食用油中に分散されたままである(摘示キの実施例参照)ことにかんがみれば、生物学的に活性な物質(タンパク質又はペプチド薬物から選ばれる活性成分)は親油性媒質(非水性媒質)に溶解しないかまたは溶解し難いものと解される。
そうすると、両者は相違点2において実質的に相違しているものということはできない。

ウ.相違点3
補正発明において、非水性担体系に含まれる「(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種以上の親水性物質、ここで該1種以上の親水性物質は低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコール」は、「該組成物の全量の10%以下の量」と特定されているとおり、下限が特定されていないものである。
そして、本願明細書においても、
「ここで用いる用語「担体系」とは、……。担体系は、(i)……水不溶性の生物学的剤が不溶性または溶解性が乏しい非水性媒質殻の少なくとも1種の成分,(ii)界面活性剤からの少なくとも1腫の成分と、所望により(iii)親水性成分からの少なくとも1種の成分を含む。」(段落0031)
「本発明の好ましい組成物において、非水性担体系は、少なくとも1種の非水性媒質成分、少なくとも1種の界面活性剤成分、及び所望によって少なくとも1種の親水性成分からなる。」(段落0033)
「親水性成分(所望によって使用する場合)は担体成分の約10%以下を構成する。……
本発明の典型的な担体系は、1種以上の適切な疎水性油、及び少なくとも1種の表面改質剤を含む界面活性剤系、及び所望によって1種以上の親水性成分よりなる。」(段落0039?0040)
「本発明の他の態様において、0.01?10μmの範囲の平均サイズの水不溶性の表面改質された生物学的活性物質の安定な粒子、及び界面活性剤系、ならびに所望によって組成物の全重量の約10%以下の量の、1種以上の親水性物質を含む組成物が提供され」(段落0049)
「所望により、少量の低分子量親水性物質、例えば一価または多価アルコール、例えばエタノールまたはグリセロールも添加できる。」(段落0063)
と記載されているように、親水性物質は「所望により」使用されることが記載されていることに加え、実施例でも
「実施例III;イトラコナゾールと卵リン脂質を含むオレイン酸エチルないの混合物を……ホモジナイザー内で高圧均質化にかけた。……。約0.6ミクロンの体重重み付け平均粒子サイズの微細のサスペンションが生じた。」(段落0083)
と記載されているように「親水性物質」は必ずしも使用していないことからみて、下限として「0%」、すなわち、親水性物質は使用しない場合も含むものと解される。
なお、先願明細書の実施例12?24(摘示カ)においては、溶媒としてエタノール(親水性物質に該当)を使用しており、その後噴霧乾燥してはいるものの最終的に得られた親油性微細粒子にエタノールが残存している可能性は否定できず、そうすると、実施例30?34(摘示キ)で当該微細粒子を使用して製造された分散液剤形も組成物の全量の10%以下の量のエタノールを含むものともいえる。
そうすると、引用発明において「親水性物質」が特定されていないことは相違点にはなり得ない。

エ.相違点4
本願明細書には以下の記載がある。
「表面活性物質のこれらの組成物への添加は、それらを生物学的流体、特に胃及び胃腸液、血液及びリンパ液のような水性環境内に放出されたときに容易に分散できるようにする。」(段落0037)
「本発明の一態様において、生物学的に活性な水不溶性または溶解性が乏しい物質の約0.01?約10μmの体重重み付け平均粒子サイズの粒子は、表面改質剤で安定化され、該物質が不溶性化または溶解性の乏しい非水性媒質中に分散されている。活性物質は、この組成物からの水不溶性物質の表面改質された準ミクロンまたはミクロン大の粒子として水性環境に放出され得る。
本発明の他の態様において、水不溶性の生物学的に活性な物質の上述の組成物が、水性媒質、例えばインビボ環境の流体媒質に添加され、そして自己分散して非水性液的及び表面改質粒子を形成する(図1を参照)。活性物質は、自己分散物からのインビボ環境に放出され得る。」(段落0046?0047)
「界面活性剤及び補助界面活性剤のタイプ及び量は、これらの成分の相対的な溶解性及び/または極性に基づく。配合組成は、それぞれの生物学的に活性な薬剤にそれぞれ関して最適化される。本発明に関するとき、表面改質剤の機能のいくつかは、
-……
-粒子の表面上へ接着し、またはそれを被覆し、そしてそれゆえ自己分散が起こるときに、粒子と非水性担体系と水性環境との間の界面を改質する。
-自己分散が起こるときに、粒子と非水性担体系と水性環境との間の界面適合性を増す。
-組成物の自己乳化または自己分散能力を促進する。」(段落0065)
上記した本願明細書の記載によれば、界面活性剤の選択により自己乳化が生じるものと解される。そして、実施例III(段落0083)には、「イトラコナゾール(水不溶性の生物学的に活性な物質)」、「卵リン脂質(リン脂質界面活性剤の系)」及び「オレイン酸エチル(生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い非水性物質)」からなる微細粒子サスペンジョンが記載されているところ、このサスペンジョンは流体の水性媒質に添加した際に自己分散するものと解される。
そうすると、引用発明の「分散液剤形」も同様の組成(特にリン脂質界面活性剤を含む)を有するものである上に、摘示アの請求の範囲17?18及び摘示オ、クに記載されているとおり、水性媒質に分散され、水中油滴型エマルジョン剤形となるものであることからすれば、「流体の水性媒質」に添加した際に自己分散(乳化)するものと解される。
なお、補正発明には、「(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種の親水性物質」と特定されており、「低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコール」である「親水性物質」の存在が自己分散性を与えるかのように記載されているが、上記したとおり、(c)の親水性物質は所望により添加する成分、すなわち必ずしも添加しなくてもよい成分であるとともに、本願明細書の実施例III(段落0083)には、親水性物質を添加しない例が記載されていることから、自己分散性に(c)の親水性物質は必ずしも必要ないものと解される。
ちなみに、実施例IV(段落0084?0089)には、親水性物質に該当するエタノールやプロピレングリコールを添加した例が記載され、自己分散性についても触れているが、これらは次の点で補正発明の実施例に該当しない。
・「成分の要求される量(ミリグラム単位)を20mLの透明なガラスバイアルに測り取り、そして完全な溶解が観察されるまで混合した。」(段落0085)と記載されているように、「非水性物質」は「生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い」ものではないこと。
・(b)の「リン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系」を使用していないこと。
・(c)の「親水性物質」に該当するエタノール(エタノール性NaOHを含む)及びプロピレングリコールの添加量は明らかに組成物の全量の10%を超えていること。
したがって、両者は相違点4で実質的に相違するものではない。

(8)むすび
補正発明は、先願明細書等に記載された発明と同一であるから、特許法第184条の13により読み替えて適用する同法第29条の2の規定により特許を受けることができないので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
したがって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1?18に係る発明は、平成23年7月4日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「表面改質された水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物であって、該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有し、そして該粒子が
(a)生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い非水性媒質、ここで該生物学的に活性な物質がニフェジピン、ウルソジオール、ブデソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体より成る群から選択され、
(b)該非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系、ここで該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部が、該生物学的に活性な物質の粒子の表面に吸着している、及び
(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種以上の親水性物質、ここで該1種以上の親水性物質は低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコールである
を含む非水性担体系内に分散されており、
該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に自己分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンションを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有し、かつ該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部とその表面上で結合している、前記の組成物。」

第4 当審の判断
1.特許法第29条の2について
原査定で引用した出願16は特願2000-593294号であって、前記第2の4(3)で引用した先願と同じである。
そして、この出願16の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面には、同4(4)で摘示したとおりの記載があり、同4(5)に示したとおりの発明(引用発明)が記載されている。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は前記補正発明とは「非水性媒質」を具体的に列挙していない点で異なるだけであるから、前記4(6)での判断を踏まえれば、両者は、
「表面改質された生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物であって、該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有し、そして該粒子が
(a)非水性媒質、
(b)該非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系、ここで該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部が、該生物学的に活性な物質の粒子の表面に吸着している、
を含む非水性担体系内に分散されており、
該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に自己分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンションを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有し、かつ該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部とその表面上で結合している前記の組成物。」
の点で一致し、同4(6)で認定した相違点1?4の点で一応相違するものである。
ここで、相違点1?4については、前記4(7)で判断したとおり、実質的に相違点とすることはできない。
そうすると、本願発明は、先願明細書等に記載された発明であるから、特許法第184条の13により読み替えて適用する同法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

2.進歩性について
(1)引用刊行物及びその記載事項
原査定で引用した引用例6は特開昭63-23811号公報であって、同文献には次の記載がある。
サ.「1) 最高3μmの粒径を有する極めて微細に粉砕された物質1.5重量%までを、混合物全体に基づき1.0?4.5重量%の乳化剤を含有する8?30重量%の油相中に分散させ、そしてこの混合物を注射用水64?90重量%を用いて乳化し、等張となしそして高圧ホモジナイザーを用いて均質化することにより得られる、最大粒径5μmを有する固体/液体/液体分散系からなる、難溶性物質の非経口投与用医薬製剤。」(特許請求の範囲第1項)

シ.「本発明は非常に微細に粉砕された物質を油相中に分散させ、続いて乳化および均質化することにより調製される、非常に難溶性の物質の、生理学的に受容されうる親水性および親油性媒体中における非経口投与用医薬製剤に関する。」(1頁右下欄16行?2頁左上欄3行)

ス.「本発明は生理学的に受容される親水性および親油性媒体中に非常に溶解し難い物質に対する製剤であって、かつ良好に受容され、比較的多量の静脈投与が可能であり、できるだけ多くの化合物に対して使用できそして少なくとも短期間安定である製剤を開発するという目的に基づくものである。」(2頁左下欄3?9行)

セ.「本発明による操作には油性および水性媒体中に溶解し難い化合物、例えばある種の細胞増殖抑制剤、抗生物質およびスピロノラクトンが適当である。……
油相としては注射用製剤に製剤上使用されうるすべての親油性媒体、例えば綿実油、落花生油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、コーン油、中鎖トリグリセリド、オリーブ油、ヒマシ油、大豆油および水素化された液体状植物油が使用されうる。好適にはMiglyol^((R))812(C_(8)?C_(12)脂肪酸との飽和トリグリセリド)が製剤全体の好ましくは9?20重量%の量で使用される。
乳化剤または乳化剤混合物の成分としては、非経口投与に際して受容されうる乳化剤、例えば卵レシチン、大豆レシチン、水素化された卵レシチン、水素化された大豆レシチン、……が使用されうる。大豆レシチンが製剤全体の好ましくは1.3?3.0重量%の量で使用されるのが好ましい。」(2頁右下欄4行?3頁左上欄12行)

ソ.「等張化するための添加剤と乳化剤との組み合わせにより、活性化合物粒子が油相中に残留するか否かが影響されることが示された。すなわち、たとえ、文献上知られているように、レシチンで安定化された乳剤が電解質により脱安定化されうるとしても、等張化用添加剤として好ましくは一価の電解質例えばNaClを用い、そして乳化剤としてレシチンまたはレシチンとコレステロールとを用いる場合は、固体粒子が油相を去らず、かつ粒子が電解質の添加にも拘らず静脈投与用乳剤にとって必要とされる5μmより小さい寸法範囲内にあることが示された」(3頁右上欄10行?左下欄4行)

タ.「本発明による製剤の特別の長所は、生理学的に良好に受容されうる物質のみを使用することによる良好な受容性、製造中に物質に熱的負荷がかからないこと、そして水相中における分解反応が防止できることである」(3頁左下欄15行?右下欄2行)

チ.「本発明により製造するには、不飽和脂肪酸含量の高いレシチン、好ましくはEpikuron^((R))170(特別に精製された大豆レシチン)を用いて、ただしこの場合好ましくは電解質を添加するが、のみならず不飽和脂肪酸を10?30%しか含有しないものを用いても操作できる。前者は乳化および均質化に関し問題がより少ないという長所を有する。」(3頁右下欄13行?4頁左上欄3行)

ツ.「実施例 1
バッチ量(g)
ジヒドロキシアントラキノン 0.200
Miglyol^((R))812 3.800
Epikuron^((R))170 0.480
コレステロール 0.048
0.9% NaCl 35.472
40.000
Miglyol^((R))812中のジヒドロキシアントラキノンの10%懸濁液を……粒径が3μmより小さくなるまで粉砕した。この懸濁液の必要量のジヒドロキシアントラキノンを含有する量を三角フラスコ中でMiglyol^((R))812と混合して全油相の半量を形成させ、そしてMiglyol^((R))812中のレシチンの24%溶液を用いて反応混合物を充填した。続いて常に攪拌しながらはじめにコレステロールをそして次に注射用水を添加しそして乳化完了後塩化ナトリウムを添加した。高圧均質化は、付加的に微調整用バルブを備えたフレンチ受圧器(……)中で行われた。」(4頁左上欄12行?右上欄15行)

(2)引用刊行物に記載された発明
引用例6には、「最高3μmの粒径を有する極めて微細に粉砕された物質1.5重量%までを、混合物全体に基づき1.0?4.5重量%の乳化剤を含有する8?30重量%の油相中に分散させ」(摘示サ)と記載され、「乳化剤」は「例えば卵レシチン、大豆レシチン、水素化された卵レシチン、水素化された大豆レシチン」(摘示セ)が使用されることが記載されている。
また、「本発明は非常に微細に粉砕された物質を油相中に分散させ、続いて乳化および均質化することにより調製される、非常に難溶性の物質の、生理学的に受容されうる親水性および親油性媒体中における非経口投与用医薬製剤に関する。」(摘示シ)及び「本発明は生理学的に受容される親水性および親油性媒体中に非常に溶解し難い物質に対する製剤であって」(摘示ス)と記載されていることからみて、「最高3μmの粒径を有する極めて微細に粉砕された物質」とは「親水性及び親油性媒体中に非常に溶解し難い物質」であり、そして「医薬製剤」に関するものであることを考慮すると、「生物学的に活性な物質」であるといえる。
そうすると、引用例6には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているといえる。
「最高3μmの粒径を有する極めて微細に粉砕された親水性及び親油性媒体中に非常に溶解し難い生物学的に活性な物質を、乳化剤を含有する油相中に分散させた混合物であって、
乳化剤は、卵レシチン、大豆レシチン、水素化された卵レシチン、又は水素化された大豆レシチンである混合物」

(3)対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「最高3μmの粒径を有する極めて微細に粉砕された生物学的に活性な物質」は、本願発明の「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子」であり「該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有し」に相当する。なお、安定性については摘示ス、タから明らかである。
引用例発明の「乳化剤」は「卵レシチン、大豆レシチン、水素化された卵レシチン、又は水素化された大豆レシチン」であるから、本願発明の「非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系」に相当する。なお、レシチンがリン脂質の一種であり界面活性作用を有することは当業者に自明である。
引用例発明の「油相」は「注射用製剤に製剤上使用されうるすべての親油性媒体、例えば綿実油、落花生油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、コーン油、中鎖トリグリセリド、オリーブ油、ヒマシ油、大豆油および水素化された液体状植物油が使用されうる。好適にはMiglyol^((R))812(C_(8)?C_(12)脂肪酸との飽和トリグリセリド)」(摘示セ)であるから、本願発明の「非水性媒質」に相当する。
引用例発明の「混合物」は本願発明の「組成物」に相当する。
また、引用例発明の混合物は、次いで注射用水を用いて乳化するものであるから、本願発明の「該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンジョンを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有」するものに相当する。
そうすると、本願発明と引用例発明とは、
「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含む組成物であって、該粒子が0.01?10μmの平均粒子サイズを有し、そして該粒子が
(a)生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い非水性媒質、
(b)非水性媒質内に溶解する少なくとも1種のリン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系
を含む非水性担体系内に分散されており、
該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に分散して、非水性担体系の成分及び該水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子を含むサスペンジョンを形成でき、ここで該粒子は0.01?10μmの範囲のサイズを有する、前記の組成物」
の点で一意し、次の点で一応相違するものである。

相違点A
本願発明においては、「水不溶性の生物学的に活性な物質の安定な粒子」は「表面改質された」ものであり、「該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部が、該生物学的に活性な物質の粒子の表面に吸着している」ものであり、「該リン脂質界面活性剤系の少なくとも一部とその表面上で結合している」ものであると特定されているが、引用例発明にはそのような特定がない点

相違点B
本願発明では、「該生物学的に活性な物質が、ニフェジピン、ウルソジオール、ブテソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体からなる群から選択され」るものであることが特定されているが、引用例発明では「親水性及び親油性媒体中に非常に溶解し難い生物学的に活性な物質」と特定されているだけである点

相違点C
本願発明では「(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種以上の親水性物質、ここで該1種以上の親水性物質は低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコール」を非水性担体系に含んでいるが、引用例発明には,このような「親水性物質」について特定されていない点

相違点D
本願発明では、「該担体系により該組成物は、流体の水性媒質に添加した際に自己分散」することが特定されているが、引用例発明ではそのような「自己分散」について特定がない点

(4)判断
ア.相違点Aについて
引用例6の摘示サにおける「難溶性物質の非経口投与用医薬製剤」の製造方法、摘示ソの固体粒子の安定化の説明及び摘示ツの実施例の記載からみて、乳化剤であるレシチン(リン脂質)の少なくとも一部は「難溶性物質」の表面に吸着/結合(表面改質)しているものと理解できる。このような表面改質がされていなければ、固体粒子(難溶性物質)が油相を去るという脱安定化が生じ、固体/液体/液体分散系が得られないものと解される。
そうすると、相違点Aの点で両者は相違するものとはいえない。

イ.相違点Bについて
引用例6には「本発明による操作には油性および水性媒体中に溶解し難い化合物、例えばある種の細胞増殖抑制剤、抗生物質およびスピロノラクトンが適当である。」(摘示セ)と記載されているところ、「油性及び水性媒体中に溶解し難い化合物」として、本願発明で特定されている「ニフェジピン、ウルソジオール、ブテソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体」は周知のものである。
したがって、本願発明では、引用例発明の「親水性及び親油性媒体中に非常に溶解し難い生物学的に活性な物質」として、単にそのような物質として周知の「ニフェジピン、ウルソジオール、ブテソナイド、ペクリタクセル、カンプトテシン、ピロキシカム、イトラコナゾール、アシクロビル、フェノビブレート、シクロスポリン、インシュリン、及びこれらの誘導体」を選択しただけのものであり、当業者が容易に想到し得たものである。また、これらの物質を選択できないとする特段の理由も見当たらない。
さらに、これらの「生物学的に活性な物質」を採用することで格別の効果を奏するものとも認められない。

ウ.相違点Cについて
本願発明において、非水性担体系に含まれる「(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種以上の親水性物質、ここで該1種以上の親水性物質は低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコール」は、「該組成物の全量の10%以下の量」と特定されているとおり、下限が特定されていないものである。
そして、本願明細書においても、
「ここで用いる用語「担体系」とは、……。担体系は、(i)……水不溶性の生物学的剤が不溶性または溶解性が乏しい非水性媒質殻の少なくとも1種の成分,(ii)界面活性剤からの少なくとも1腫の成分と、所望により(iii)親水性成分からの少なくとも1種の成分を含む。」(段落0031)
「本発明の好ましい組成物において、非水性担体系は、少なくとも1種の非水性媒質成分、少なくとも1種の界面活性剤成分、及び所望によって少なくとも1種の親水性成分からなる。」(段落0033)
「親水性成分(所望によって使用する場合)は担体成分の約10%以下を構成する。……
本発明の典型的な担体系は、1種以上の適切な疎水性油、及び少なくとも1種の表面改質剤を含む界面活性剤系、及び所望によって1種以上の親水性成分よりなる。」(段落0039?0040)
「本発明の他の態様において、0.01?10μmの範囲の平均サイズの水不溶性の表面改質された生物学的活性物質の安定な粒子、及び界面活性剤系、ならびに所望によって組成物の全重量の約10%以下の量の、1種以上の親水性物質を含む組成物が提供され」(段落0049)
「所望により、少量の低分子量親水性物質、例えば一価または多価アルコール、例えばエタノールまたはグリセロールも添加できる。」(段落0063)
と記載されているように、親水性物質は「所望により」使用されることが記載されていることに加え、実施例でも
「実施例III;イトラコナゾールと卵リン脂質を含むオレイン酸エチルないの混合物を……ホモジナイザー内で高圧均質化にかけた。……。約0.6ミクロンの体重重み付け平均粒子サイズの微細のサスペンションが生じた。」(段落0083)
と記載されているように「親水性物質」は必ずしも使用していないことからみて、下限として「0%」、すなわち、親水性物質は使用しない場合も含むものと解される。
そうすると、引用例発明において「親水性物質」が特定されていないことは相違点にはなり得ない。

エ.相違点Dについて
本願明細書には以下の記載がある。
「表面活性物質のこれらの組成物への添加は、それらを生物学的流体、特に胃及び胃腸液、血液及びリンパ液のような水性環境内に放出されたときに容易に分散できるようにする。」(段落0037)
「本発明の一態様において、生物学的に活性な水不溶性または溶解性が乏しい物質の約0.01?約10μmの体重重み付け平均粒子サイズの粒子は、表面改質剤で安定化され、該物質が不溶性化または溶解性の乏しい非水性媒質中に分散されている。活性物質は、この組成物からの水不溶性物質の表面改質された準ミクロンまたはミクロン大の粒子として水性環境に放出され得る。
本発明の他の態様において、水不溶性の生物学的に活性な物質の上述の組成物が、水性媒質、例えばインビボ環境の流体媒質に添加され、そして自己分散して非水性液的及び表面改質粒子を形成する(図1を参照)。活性物質は、自己分散物からのインビボ環境に放出され得る。」(段落0046?0047)
「界面活性剤及び補助界面活性剤のタイプ及び量は、これらの成分の相対的な溶解性及び/または極性に基づく。配合組成は、それぞれの生物学的に活性な薬剤にそれぞれ関して最適化される。本発明に関するとき、表面改質剤の機能のいくつかは、
-……
-粒子の表面上へ接着し、またはそれを被覆し、そしてそれゆえ自己分散が起こるときに、粒子と非水性担体系と水性環境との間の界面を改質する。
-自己分散が起こるときに、粒子と非水性担体系と水性環境との間の界面適合性を増す。
-組成物の自己乳化または自己分散能力を促進する。」(段落0065)
上記した本願明細書の記載によれば、界面活性剤の選択により自己乳化が生じるものと解される。そして、実施例III(段落0083)には、「イトラコナゾール(水不溶性の生物学的に活性な物質)」、「卵リン脂質(リン脂質界面活性剤の系)」及び「オレイン酸エチル(生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い非水性物質)」からなる微細粒子サスペンジョンが記載されているところ、このサスペンジョンは流体の水性媒質に添加した際に自己分散するものと解される。
そうすると、引用発明の「混合物」も同様の組成(特にリン脂質界面活性剤を含む)を有するものである上に、摘示サに記載されているとおり、注射用水を用いて乳化され、固体/液体/液体分散系となるものであることからすれば、「流体の水性媒質」に添加した際に自己分散(乳化)するものと解される。
なお、引用例には、「高圧ホモジナイザーを用いて均質化すること」(摘示サ)が記載されているが(摘示ツの実施例も同様である。)、これは、混合物を注射用水を用いて乳化した後のことであり、特別の操作をしなくても乳化するものと解される。
ところで、本願発明には、「(c)該組成物の全量の10%以下の量の、該組成物に自己分散性を与える1種の親水性物質」と特定されており、「低分子量一価アルコールまたは低分子量多価アルコール」である「親水性物質」の存在が自己分散性を与えるかのように記載されているが、上記したとおり、(c)の親水性物質は所望により添加する成分、すなわち必ずしも添加しなくてもよい成分であるとともに、本願明細書の実施例III(段落0083)には、親水性物質を添加しない例が記載されていることから、自己分散性に(c)の親水性物質は必ずしも必要ないものと解される。
ちなみに、実施例IV(段落0084?0089)には、親水性物質に該当するエタノールやプロピレングリコールを添加した例が記載され、自己分散性についても触れているが、これらは次の点で本願発明の実施例に該当しない。
・「成分の要求される量(ミリグラム単位)を20mLの透明なガラスバイアルに測り取り、そして完全な溶解が観察されるまで混合した。」(段落0085)と記載されているように、「非水性物質」は「生物学的に活性な物質が溶解しないかまたは溶解し難い」ものではないこと。
・(b)の「リン脂質界面活性剤より成る界面活性剤の系」を使用していないこと。
・(c)の「親水性物質」に該当するエタノール(エタノール性NaOHを含む)及びプロピレングリコールの添加量は明らかに組成物の全量の10%を超えていること。
したがって、両者は相違点Dで実質的に相違するものではない。

(5)まとめ
上記したとおり、本願発明は、当業者が引用例発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項及び同法第29条の2の規定により特許をすることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、原査定のとおり拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-17 
結審通知日 2014-06-18 
審決日 2014-07-01 
出願番号 特願2001-524580(P2001-524580)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 広介  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 冨永 保
加賀 直人
発明の名称 生物学的に活性な物質の、表面改質された粒状組成物  
代理人 佐藤 利光  
代理人 大関 雅人  
代理人 刑部 俊  
代理人 小林 智彦  
代理人 川本 和弥  
代理人 新見 浩一  
代理人 清水 初志  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 山口 裕孝  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 春名 雅夫  
代理人 井上 隆一  
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