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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない A63F 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正しない A63F |
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管理番号 | 1294291 |
審判番号 | 訂正2014-390070 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2014-05-27 |
確定日 | 2014-11-10 |
事件の表示 | 特許第4921427号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4921427号(以下「本件特許」という。)は、平成20年6月30日の特許出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、平成24年2月10日にその特許権の設定登録がなされ、平成26年5月27日に本件訂正審判の請求がなされた後、当審において、同年6月12日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年7月3日付けで意見書が提出されたものである。 第2 審判請求の趣旨及び訂正の内容 本件審判請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 そして、本件特許の訂正の内容は、次のとおりである。 1 訂正事項1 本件特許の明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0015】における「したがって、事前判定により短当たりまたは小当たりに当選していると判定されたときには必ず予告演出が実行されることになり、予告演出に対する遊技者の期待感を高めることができる」という記載を、「したがって、事前判定により短当たりまたは小当たりに当選していると判定されたときには予告演出が実行されることがあり、予告演出に対する遊技者の期待感を高めることができる」と訂正する。 2 訂正事項2 本件特許明細書の段落【0016】における「請求項2に記載の発明に係る遊技機によれば、請求項1に記載の遊技機の効果に加えて、演出制御手段は、特別図柄の当該変動表示に係る権利が短当たり遊技または小当たり遊技に当選していると判定されたときに第2の報知態様として当たり種別を確定する演出(大当たり確定演出、小当たり確定演出)を制御する」という記載を、「さらに、請求項1に記載の発明に係る遊技機によれば、演出制御手段は、特別図柄の当該変動表示に係る権利が短当たり遊技または小当たり遊技に当選していると判定されたときに第2の報知態様として当たり種別を確定する演出(大当たり確定演出、小当たり確定演出)を制御する」と訂正する。 第3 当審の判断 1 訂正事項1について (1)訂正の目的 訂正事項1は、その訂正の内容からみて、特許法第126条第1項ただし書第4号を目的とする訂正に該当しないことは明らかであるので、特許法第126条第1項第1号乃至第3号に規定されるいずれを目的とする訂正に該当するか否かについて検討する。 ア 特許請求の範囲の減縮を目的とするか否か 訂正事項1は、本件特許の明細書の記載箇所を訂正の対象とするものであって、本件特許の特許請求の範囲の記載箇所を訂正対象とするものでないから、訂正事項1は、減縮を目的とする訂正に該当しない。 イ 誤記の訂正を目的とするか否か そもそも「誤記」が存在するためには、訂正前の本件特許の明細書の記載に触れた当業者が、誤った記載を認識し、正しい記載を迷いなく想到することが条件である。 しかしながら、訂正前の本件特許明細書の段落【0016】の記載から、上記の条件に該当する「誤記」の存在を認めることはできない。 したがって、本件特許の明細書に誤記の存在が認められない以上、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とする訂正に該当しない。 ウ 明瞭でない記載の釈明を目的とするか否か 審判請求人は審判請求書において、「上記訂正事項1は、請求項1記載の特許発明における『前記事前判定手段による判定結果が、前記第2の大当たりまたは前記小当たりとなったときに、前記予告演出を、前記第2の大当たりまたは前記小当たりとなったことを区別せず、且つ、複数回の前記特別図柄の変動表示にわたって演出内容を連続的に互いに関連付けて制御してなる』に対応する効果欄の記載であるところ、請求項1記載の特許発明においては、第2の大当たりまたは小当たりとなったときに、『必ずしも』予告演出が実行されるとは特定されておらず、効果欄の記載が不明瞭であった。」と主張している。 まず、発明の効果の訂正箇所に対応する、本件特許発明の「前記演出制御手段は、前記事前判定手段による判定結果が、前記第2の大当たりまたは前記小当たりとなったときに、前記予告演出を、前記第2の大当たりまたは前記小当たりとなったことを区別せず、且つ、複数回の前記特別図柄の変動表示にわたって演出内容を連続的に互いに関連付けて制御してなる」という発明特定事項に関して、判定結果が第2の大当たりまたは小当たりとなったときと、予告演出が実行されるときとの関係について検討する。 本件特許発明は、「演出制御手段は、事前判定手段による判定結果が、第2の大当たりまたは小当たりとなったときに、予告演出を」実行するように制御するものであるが、本件特許発明において、第2の大当たりまたは小当たりとなっても、予告演出を実行しない場合があることは、何ら特定されていない。つまり、本件特許発明において、第2の大当たりまたは小当たりとなったときは、実質的に必ず予告演出が実行されるものである。 してみると、本件特許発明においては、「第2の大当たりまたは小当たりとなったときに、『必ずしも』予告演出が実行されるとは特定されて」いないとする請求人の主張は、根拠のないものであるから、請求人の上記主張は採用できない。 そして、本件訂正前の訂正事項1に係る「事前判定により短当たりまたは小当たりに当選していると判定されたときには必ず予告演出が実行されることになり」という記載についてみてみると、この記載は、それ自体明瞭な記載であるといえる。 したがって、訂正事項1は、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正に該当しない。 エ 小括 上記ア乃至ウにおいて検討したとおりであるから、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号乃至第4号に掲げる事項を目的とする訂正に該当しない。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か まず、本件特許明細書における、予告演出が実行されるタイミングに関する記載事項について検討する。 本件特許明細書には、「本発明における予告演出とは、次のような演出のことをいう。予告演出は、第1特別図柄保留記憶手段401または第2特別図柄保留記憶手段402に短当たり遊技または小当たり遊技に係る遊技データが記憶されたと事前判定手段330が判定したことを契機に発生し、短当たり遊技または小当たり遊技のいずれかの当たり遊技に当選したことを報知するものである。即ち、遊技球が第1始動口105あるいは第2始動口120のいずれかに入球すると、当たり抽選が行われる。」(段落【0142】。下線は審決で付した。以下同様。)こと、「以上の内容から、本実施形態においては、特別図柄保留記憶手段401,402に留保された特別図柄の変動表示の権利が、事前判定手段330による判定結果により短当たり遊技または小当たり遊技に当選したと判定されたときに第1の報知態様として予告演出を制御するとともに、特別図柄の当該変動表示に係る権利が短当たり遊技または小当たり遊技に当選していると判定されたときに第2の報知態様として当たり種別を確定する演出(大当たり確定演出、小当たり確定演出)を制御する。すなわち、予告演出を実行させることにより短当たりまたは小当たりに当選する遊技データが記憶されていることを第一に報知し、短当たりまたは小当たりのいずれに当選したかを第二に報知する。これにより、遊技者はいずれの当たりに当選しているかを認識(察知)することができる。したがって、事前判定により短当たりまたは小当たりに当選していると判定されたときには必ず予告演出が実行されることになり、予告演出から両確定演出までにわたる遊技に対する遊技者の期待感を持続させることができる。」(段落【0195】)ことが記載されている。 これらの記載を総合すると、本件特許明細書には、第2の大当たりまたは小当たりとなってときは必ず予告演出が実行される実施形態について記載されているといえる。 次に、本件特許明細書には、「演出制御手段は、特別図柄変動表示手段において特別図柄が変動表示されている間に、図柄表示部による装飾図柄演出(映像による演出)、演出役物による役物演出、音声演出、ランプ演出等、さまざまな演出を制御する。このように制御される演出の中には、上記関連演出が含まれるが、この関連演出は、第1保留データおよび第2保留データの双方が記憶され、かつ、特別遊技状態へ移行する権利を獲得する遊技データが第1保留データに含まれている場合に出現する。ただし、関連演出は、上記の場合にのみ出現するようにしてもよいし、上記の場合に加えて、他の場合にも出現するようにしてもよい。また、関連演出は、上記の場合に必ず出現しなければならないわけではなく、上記の条件を満たす場合に、予め設定された頻度で出現するようにしても構わない。」(段落【0014】)という記載について検討する。 この記載によると、所定の条件を満たす場合に、関連演出が予め設定された頻度で出現すること、すなわち、関連演出は、所定の条件を満たしても出現する場合と出現しない場合のあることが示唆されている。 この点に関連して、請求人は、平成26年7月3日付け意見書において、「明細書の段落【0014】を参酌すれば、第2の大当たりまたは小当たりとなったときには、必ず予告演出が出現する態様と、予め設定された頻度で出現する態様とが記載されており、・・・」(第2頁第25?27行)と主張する。 しかしながら、明細書の段落【0014】には、上記したように、関連演出について、所定の条件を満たしても出現する場合と出現しない場合のあることは示唆されているが、予告演出について、出現する場合と出現しない場合のあることについて、記載も示唆もない。 したがって、請求人の上記意見書における主張は失当である。 これらの記載事項を前提として、本件特許発明について検討する。 上記(1)ウにおいて検討したように、本件特許発明では、第2の大当たりまたは小当たりとなったときは、実質的に必ず予告演出が実行される。 ここで、訂正事項1について検討する。 訂正事項1は、本件特許発明が奏する効果について記載された段落【0015】について、訂正前の「必ず予告演出が実行されることになり」から「必ず」を削除し、「予告演出が実行されることがあり」と訂正するものである。 訂正後の記載は、予告演出が実行されることも実行されないこともあることもあることを含むものであるから、予告演出について、必ず実行されるとあったものが、訂正により、実行されないこともあると、その内容が変更されたものである。 してみると、訂正事項1によって特許明細書の記載を訂正することにより、実質的に「第2の大当たりまたは小当たりとなったときは、必ず予告演出が実行されるもの」であった本件特許発明を、第2の大当たりまたは小当たりとなったときに、予告演出が実行されることも実行されないこともあるものに変更したものと認められる。 ゆえに、訂正事項1は、特許法第126条第6項に規定する「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない」ことを満たしていると認めることはできない。 2 訂正事項2について 本件特許の出願経過において、出願の当初の請求項2が削除され、請求項1のみとなったものの、特許明細書の段落【0016】に「請求項2」という文言が残っておりその記載が不明瞭になっていた。 訂正事項2は、段落【0016】から「請求項2」という文言を削除し、特許請求の範囲の記載に特許明細書の記載を整合させる訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 そして、訂正事項2は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。 第4 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書各号のいずれにも該当せず、また、同条第6項の規定に適合しない訂正事項1を含むものである。 したがって、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-09-10 |
結審通知日 | 2014-09-12 |
審決日 | 2014-09-30 |
出願番号 | 特願2008-171571(P2008-171571) |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Z
(A63F)
P 1 41・ 855- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 長崎 洋一 |
登録日 | 2012-02-10 |
登録番号 | 特許第4921427号(P4921427) |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人 エビス国際特許事務所 |