• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B24B
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B24B
管理番号 1294665
審判番号 無効2008-800096  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-05-28 
確定日 2010-03-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第3337680号「ワークの研磨装置」の特許無効審判事件についてされた平成21年 2月 3日付け審決に対し、東京高等裁判所において「請求項3ないし4に係る発明についての特許を無効とする。」との部分について、審決取消の決定(平成21年行ケ第10067号、平成21年6月1日)があったので、請求項3ないし4に係る部分について、更に審理の上、次のとおり審決する。 
結論 特許第3337680号の請求項3ないし4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判の総費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成13年 1月19日 本件出願
平成14年 8月 9日 設定登録(特許第3337680号)
平成20年 5月28日 無効審判請求
平成20年 8月25日 答弁書
平成20年10月30日 両者・口頭審理陳述要領書、口頭審理
平成20年11月25日 請求人・上申書(以下「上申書1」という。)
平成20年11月25日 被請求人・上申書
平成20年11月27日 無効理由通知
平成21年 1月 5日 請求人・意見書
平成21年 1月 5日 被請求人・意見書、訂正請求書
平成21年 2月 3日 一次審決(請求項1有効、請求項3、4無効)
平成21年 3月16日 審決取消訴訟
(平成21年行ケ第10066号)
平成21年 3月16日 審決取消訴訟
(平成21年行ケ第10067号)
平成21年 5月 8日 訂正審判請求
(訂正2009-390062号)
平成21年 5月28日 訂正審判審決(請求項3、4の訂正認容)
平成21年 6月 1日 請求項3、4無効部分につき差戻決定
(平成21年行ケ第10067号)
平成21年 7月22日 請求人・上申書(以下「上申書2」という。)
第2.本件発明
平成21年1月5日付け訂正請求は、「訂正を認める」とした平成21年2月3日の一次審決が確定していないため、当該訂正は、確定していない。
本件特許に関し、平成21年5月8日付けで訂正審判が請求され、平成21年5月28日に、訂正を認容する審決がなされ、訂正が確定した。
よって、差戻決定の対象である本件特許の請求項3ないし4に係る発明は、訂正された明細書によれば、以下のとおりである。
なお、各請求項のA?F(d)等の分説は、便宜上付したものである。
「【請求項3】
B:一端側にワークが取り付けられる回転軸と、
C:この回転軸を、この回転軸の軸心を中心として回転させる回転手段と、
D′:前記回転軸を、前記軸心に沿った方向、及び、前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段と、
E′:前記回転軸を、これの一端側が円弧軌道に沿って移動可能なように揺動させる揺動手段と、
を有する揺動機構を具備しているとともに、
F′:前記揺動機構の駆動を制御する制御部と、
A′:中に多数の研磨粒子を有する研磨媒体が収容されるタンクと、
を具備しており、
F′:前記制御部は、
F(a):(a) 前記回転軸が垂直な状態の研磨開始位置に配置されるように、前記移動手段、及び前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置に配置し、
F(b):(b) 前記回転軸を回転させるように前記回転手段を制御するとともに、前記回転軸を軸心に沿って移動させるように前記移動手段を制御し、さらに、前記回転軸が垂直な状態から水平面に対して傾斜した状態に移行するような揺動を行うように前記揺動手段を制御し、
前記移動手段と揺動手段との駆動により、回転軸が自身の軸心に沿って移動されるとともに回転軸の一端が円弧軌道に沿って揺動され、前記回転軸の移動と揺動とにより、前記ワークを楕円の円弧状の軌道に沿って揺動させ、
F(c):(c) 前記回転軸が傾斜した状態の円弧移動終点位置に前記回転軸が到達した際に、前記揺動手段を停止するように制御するとともに、(a)の状態に戻すように(b)と逆方向に回転軸を軸心に沿って移動させるように移動手段を制御し、これらの制御により前記ワークを前記回転軸の軸心に沿って直線軌道に沿って移動させ、
F(d):(d) 前記移動手段が(a)の状態に戻された際に、(a)の状態に戻すように前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置と同様な状態にし、
(b)(c)(d)の動作を順に繰り返すように前記回転手段、揺動手段、及び移動手段を制御し、
F(e):(e) ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい場合には、前記制御とは別の制御がされ、前記回転軸を回転させるように前記回転手段を制御するとともに、前記回転軸が軸心に直交するように移動されるように前記移動手段を制御する
G:ワークの研磨装置。
【請求項4】
F〃:前記制御部は、前記ワークが前記軸心を中心として回転される動作と、前記ワークが前記軸心に沿った方向に移動される動作と、前記ワークが前記軸心と交差する方向に移動される動作と、前記ワークが揺動手段による前記円弧軌道に沿って移動される動作とを有する動作グループから1つ又は複数の動作を選定し、選定された単一の動作、又は選定された動作の組み合わされた動作を、前記研磨媒体中で前記ワークが行い前記研磨媒体により研磨されるように、前記揺動機構の駆動を制御することができることを特徴とする請求項3に記載のワークの研磨装置。」
第3.請求人の主張
1.請求人の主張の概要
請求人は、後記2.の証拠に基づき、本件特許の請求項3ないし4に係る発明(以下「本件発明3ないし4」という。)を無効とするとの審決を求めている。
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。
(1)請求項3ないし4に係る発明は、証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(2)請求項3ないし4に係る発明は、ワークの動き及び動作グループの選択が矛盾しているから、特許法第36条第4項又は第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。
(3)請求項4に係る発明は、公知技術であり、特許法第29条第1項(当審注、「第○号」は記載なし。)に該当するから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
2.証拠
請求人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲第 1号証:特開2000-15553号公報
甲第 2号証:特公平8-18248号公報
甲第 3号証:特開平11-216660号公報
甲第 4号証:東京地方裁判所平成18年(ワ)第25907特許権侵害行為差止等請求事件(以下「別件訴訟」という。)原告準備書面(3)
甲第 5号証:別件訴訟原告準備書面(5)
甲第 6号証:甲第4号証に添付された実演映像(CD-R複製)
甲第 7号証:別件訴訟原告準備書面(6)
甲第 8号証:最初の拒絶理由通知[発送日 平成13年11月13日]
甲第 9号証:最初の拒絶理由に対する意見書
甲第10号証:最初の拒絶理由に対する補正書
甲第11号証:最後の拒絶理由通知
甲第12号証:最後の拒絶理由に対する意見書
甲第13号証:最後の拒絶理由に対する補正書
甲第14号証:特開平11-58215号公報
甲第15号証:別件訴訟の有限会社ミュウテック代表者の陳述書
甲第16号証:別件訴訟被告第2準備書面
甲第17号証:別件訴訟被告第3準備書面
甲第18号証:別件訴訟被告第4準備書面
甲第19号証:別件訴訟被告第5準備書面
甲第20号証:別件訴訟被告第6準備書面
甲第21号証:別件訴訟被告第7準備書面
甲第22号証:株式会社チップトン発行「バレル研磨の手引き」
甲第23号証:雑誌「アルトピア」VOL.28 NO.7
甲第24号証:ジャイロ研磨装置の仕様書
甲第25号証:米国特許第3599374号明細書
3.請求人の具体的主張
請求人は、具体的には、以下に摘記したとおり主張している。なお、原文の丸囲み数字は「丸1」のように置き換えて表記した。
ア.審判請求書第15ページ第33行?第16ページ第16行
「(iii)請求項1に係る特許発明と先行技術発明との対比
甲第1号証と甲第2号証では、研磨材を流動する点については研磨材を流動しない甲第3号証とは異なる。しかし甲第1号証では、研磨材中で自転軸を回転させ、自転軸に取り付けたワークを回転させ、前記アームを前記基台を中心として前記研磨媒体収容層の内側壁面又は内底壁面に対して向かって揺動手段により揺動可能に設置するとともに揺動した適宜位置で固定可能としたことを特徴とするバレル研磨装置であって、かつ、前記アームを軸方向に沿って進退手段により進退可能とするとともに進退した適宜位置で固定可能としたことを特徴とするバレル研磨装置である。すなわち、研磨材中でワークを取り付けたアームを回転させ、そのアームを揺動させ適宜位置で固定し、さらにアームを進退可能とし適宜位置で固定できる操作が表現されている。
甲第2号証では、研磨材中で、ワークを傾け自転及び公転を行い、直接ではないが、ワークを付けた支持軸の支持台が昇降自在となっている。
甲第3号証では、ワークを取り付けた回転シャフトをシャフトの軸心を含む面に沿って前後左右の振動をさせ、進退手段を介してシャフトを進退可能としている。
以上のことより、研磨材中でワークを回転させながら、ワークを取り付けた回転軸を揺動させまた軸心に沿った進退運動をさせることは公知であり、さらに回転軸を適宜位置で固定することも公知である。ワークを付けた回転軸を揺動しつつ進退運動をさせれば、ワークは甲第9号証のような楕円の円弧運動を取り、さらには回転軸の揺動を止めれば回転軸の軸心に沿ってワークが移動することになる。したがって、本件請求項1の特許発明は、かかる公知技術である研磨材中でのワークの動きの中の一つの動きを取り出したにすぎない。また、甲第9号証に見られるワークと研磨材との接触態様は、公知技術のワークの動きにおいて、当然に予想される事項であり、新たな作用効果を奏するものではない。」
イ.審判請求書第17ページ第42行?第18ページ第8行
「(iii)請求項3が請求項1と異なる個所はB′(c′)(当審注、上記第3.のD′)とD′(f)(当審注、上記第3.のF(e))である。ここで、B′(c′)の「丸1 前記回転軸を、前記軸心に沿った方向、及び/又は、丸2 前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段と、」とについては、丸1のみが可能の場合D′(f)の動作はできず、丸2のみが可能な場合にはD′(c)(当審注、上記第3.のF(c))の動作はできない。さらにDは研磨材中でのワークの運動パターンを特定したものであるが、丸2のみが可能な場合、ワークの運動パターンは楕円の円弧運動とはなりえない。したがって請求項3は、特許法第29条第2項だけでなく、特許法第123条第1項第4号に準用する特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に違背して特許されたものである。」
ウ.審判請求書第19ページ第30行?第20ページ第1行
「(iii)そうとすると、請求項4は、請求項3の従属請求項であり、前記請求項3の無効理由はすべて請求項4に適用されることになる。すなわち、請求項4は、特許法第条123第1項第2号に準用する同法第29条第2項だけでなく、特許法第123条第1項第4号に準用する特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に違背して特許されたものである。
さらに、公知技術である回転軸の回転、揺動、移動の各動作をそれぞれ別の運動として選択的な組み合わせでもよいことになり、回転軸の回転、揺動、移動を一体的にしてワークに楕円の円弧運動をさせるという請求項1及び請求項3とは矛盾することになってしまう。したがって請求項4は、特許法第123条第1項第4号に準用する特許法第36条第4項第1号または同条第6項第2号にも違背して特許されたものである。さらに回転軸の回転、揺動、移動の各動作並びに各動作をそれぞれ選択的に組み合わせるワークの運動は、公知技術であって、特許法第123条第1項第2号において準用する特許法第29条第1項に違背して特許されたものである。」
エ.陳述要領書第2ページ第39行?第3ページ第2行
「(g)このようなワークの研磨面と研磨媒体の流動に着目し、研磨媒体の流動方向に対し研磨面を傾斜させるとする引用文献(甲第14号証)があります。甲第14号証は、甲第1号証の出願人(発明者)と同一であり、甲第1号証の基本となる発明が示されています。なお、本発明者は長年にわたり研磨作業に携わり、研磨方法や研磨機等の研究をしてきまして、研磨面を効率よく研磨するためには、研磨媒体に対し研磨面を傾斜させ、研磨媒体の流動させることが重要であるとの結論に達していました。」
オ.上申書1第3ページ第7?41行
「(A‐2)研磨媒体を流動させず、研磨媒体中で、ワークをこの第1動作から第2動作を経て、第3動作を繰り返す方法と全く同一の先行技術は、調査した範囲内では見当たりません。しかし、回転軸を下降運動(回転軸に沿った運動)させつつ、この回転軸を揺動運動(振り子運動)させれば、回転軸の先端に取り付けられたワークは、必然的に円弧運動が生じますし、さらに、回転軸の下降時間と揺動時間を同期させれば、甲第9号証参考図1乃至3に示すような運動が生じます。なお、研磨材中でワークを自転させながら上下運動や振り子運動をさせることは公知であります。さらに、一連の動作と全く同じ動きをする先行技術は見当たりませんが、研磨材を流動させることなく、ワークを研磨材中で自転させながら公転運動させ、研磨材に対するワークの研磨面を傾斜させて研磨する第1動作と同じである公用技術は存在します。甲第23号証にこれを示します。甲第23号証は、1998年7月に出版されたアルミニウムの総合雑誌「アルトピア」の中の記事「アルミホイール用乾式研磨機サプライズ」であります。本証の図2「サプライズの運動」をご参照ください。アルミホイールであるワークは研磨材中で自転しています。そして図2の上段の研磨槽を上から見た図において、自転軸そのものが公転しています。この公転は、請求項1でのワークが回転軸に沿って研磨槽に入っていくことと同じです。さらに同図において公転する方向に研磨面の角度を調整し、研磨面の揺動運動をさせています。従いまして、本証は、請求項1の第1動作を表していると思います。すなわち、本証の研磨機は研磨材を流動させることなく、ワークであるアルミホイールを研磨槽の底面に対し略垂直にして、自転させつつ、公転させ、さらに左右に陽動させて研磨面であるアルミホイールの装飾面が研磨材と傾斜して当たるように揺動させています。この場合、ワークであるアルミホイールを研磨槽の底面に対し略垂直にしているため、研磨槽の底面ではなく建壁(垂直面)に対し揺動運動させて傾斜を作り研磨材の流動を起こさせるようにします。)本証でのアルミホイールの動きは研磨槽の底面に対し水平な動き(横向き)となっています。しかしこのワークの動きを縦型(同図において研磨槽を横置にしたとすれば)にすれば、請求項1と同じ動きが連続して再現することになります。詳細は別紙資料1に示します。
したがって、請求項1の一連の動作は、公知技術の上下運動、振り子運動の動きの中から一部を取り出したものであり、さらに、研磨材に対するワークの動きが同じである公用技術は存在しております。従いまして、請求項1の特許が新規性を有しているとは言い難いと思います。なお、この「アルミホイール用乾式研磨機サプライズ」なる研磨機は、大手自動車メーカーのメッキラインにおいて長年稼動していました。」
カ.意見書第3ページ第23?末行
「本件特許の研磨メカニズムは、研磨材に対しワークを傾斜させ、かつ傾斜角を順次変化させて研磨することを特徴としたものであります。
甲第23号証においては、研磨材に対しワークを公転により水平運動させ、ワークの揺動運動(角度調整)により、ワークと研磨材の傾斜角を順次変化させて研磨する機構となっています。本件特許においては、この甲第23号証の機構を単に縦型にしたものであり、またワークと研磨材の傾斜角を順次変化させて研磨する研磨メカニズムは何ら相違はありません。」
キ.上申書2第8ページ第21?34行
「(3)上記のとおり、請求項3の訂正は、「特許明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に明示的に記載された事項、あるいはそれらの記載から自明な事項」でないばかりか、「特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの」又は「特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの」となっており、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項に違背するものであり、同法第123条第1項第8号に該当し、この訂正請求は却下すべきものと思います。
(4)さらに言及いたしますと、請求項3は、本審判の被請求人自身が6通りの解釈があることを述べています。この6通りの解釈を訂正に1通りの解釈にすること自体が、特許法第126条第3項及び第4項に違背するものであると思います。
3.請求項4の訂正について
(1)前述しましたように、本審判の被請求人は、請求項4について請求項3の付加的請求項であるか置換的請求項であるか二転三転しまして、訂正請求時には付加的請求項であるとしました。付加的請求項であれば、請求項3が、前述のようにその訂正は却下すべきものであり、請求項4も無効理由を有するものとなります。」
ク.上申書2第9ページ第25?36行
「第4.まとめ
1.これまで主張してきましたように、本審判の披請求人である原告は、請求項4に関しては、請求項4の付加請求項か置換請求項かで、二転三転した身勝手な主張であり、訂正の請求の適否を問題とする以前の段階で、特許権者としての権利の濫用であると思います。また、請求項3については、6通りの解釈があるものと認めています。こうした経過の下で、特許法上での規定はありませんが、訂正の請求を権利濫用あるいは条理上として却下できるのではないかと思います。
2.次に、「特許を受けようとする発明が明確であること」が看過され、特許権になり、無効審判等に対する措置として、その特許権が不明確であるにもかかわらず、これを「明りょうでない記載の釈明」を目的とした訂正の請求をすることは、特許法第123条第1項第4号の規定を形骸化することになってしまいます。
3.請求項3及び4は、訂正の請求をするまでもなく、その記載は明確ではなく、特許法第123条第1項第4号の規定により無効にすべきものと思います。」
第4.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。
その理由は、以下のとおりである。
ア.答弁書第3ページ第9?16行
「すなわち、それらの無効理由の根拠とされる甲各号証はいずれも、それぞれ単一の研磨方法を実現する手段や、単純にその2種程度を組み合わせて装置とした従来技術が開示されているに過ぎないものであって、後述する本件特許の請求項1記載発明のように、それぞれの機能を有する研磨手段を有機的に組合せて制御装置により同一の装置内において多角的に作動できるようにすることによって、研磨するワークの形状や材質等に対応して最適の研磨、特にワーク表面全体に渡って均一な研磨を実現し得るという技術思想については何ら示唆ないし開示されているものではなく、したがって、その主張は当を得ていない。」
イ.口頭審理調書「被請求人 2」
「イ)本件特許発明の請求項3は、「及び/又は」は3とおりの解釈、さらに長物ワーク(ワークの長手方向の寸法が長手方向と直交する方向の寸法より大きいワーク)とそれ以外のワークで2とおりの解釈、計6とおりの解釈がある。
・長物ワークで、軸心移動の場合は想定していない。
・長物ワークで、直交移動の場合は、(b)から(d)の動きはしない。
・長物ワークで、「及び」は想定していない。
・それ以外のワークで軸心移動は、請求項1と同じ動きをする。
・それ以外のワークで直交移動の場合は想定していない。
・それ以外のワークで「及び」の場合は(b)から(d)の動きと直交移動とを同時に行う。
ウ)本件特許発明の請求項4は、請求項3の(b)から(d)の動きを司る制御部Aと請求項4の動きを司る制御部Bとを共に有するものを想定している。制御部Aと制御部Bとは、選択的に用いられることが可能であるから矛盾はしない。制御部Aを有さず、制御部Bのみを有するものは対象外である。」
ウ.意見書第2ページ第10行?第3ページ第2行
「2.「請求項3の『及び/又は』に関し、(b)(c)(d)の動作と、『ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい場合』の『回転軸が軸心に直交するように移動』動作を、ともに行うためには、『装置』としては、『及び』であると解される。(訂正案においても同様)」について
この場合の、ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい、いわゆる長物ワークにおける軸心に沿った方向の移動は、本件特許明細書の実施例の記載(明細書段落0103-0107)からも明らかなように、研磨作用に直接機能しているものではなく、長物ワークを研磨開始位置、すなわち、所定の研磨高さ位置に配置するための移動であり、他方、軸心に直交するように移動するのは、回転軸の回転制御と相俟ってワークの効果的な研磨作用を行うための移動であることが明らかでありますから、明細書段落0103記載のとおり、前記(b)(c)(d)の動作とは別異の動作を規定したものであります。
さらには、この点は、請求項の記載自体に「前記回転軸が垂直な状態の研磨開始位置に配置されるように、前記移動手段、及び前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置に配置」する旨の記載があることからも明らかであるといえます。
したがって、通常の寸法のワークの研磨においては、(b)(c)(d)記載のように通常の制御がなされ、また、いわゆる長物ワークの場合には、前記通常の制御とは別の制御がされて、(e)記載のように軸心と直交する方向へ移動する制御がなされることが明確であり、前項の理由と同様に、訂正によって無効理由は解消するものと確信します。」
第5.当審の判断
1.本件発明3
(1)第36条について
請求人は、本件発明3に対し、第36条第4項又は第6項第2号の無効理由を主張している。
本件発明3は、上記第2.で分説したF(b)?F(d)の事項(以下「特定3動作」という。)をするとともに、長物ワークの場合には、特定3動作をせず、軸心直交移動のみの動きをするものである(上記第4.のイ、ウ)。
本件発明3は、装置の「構造」に関し、「前記回転軸を、前記軸心に沿った方向、及び、前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段と」なる事項を有し、「軸心に沿った方向」と「軸心に直交する方向」との両方向に移動可能であるから、特定3動作、軸心直交移動のみの動き、いずれも可能である。
したがって、本件発明3において、装置の「構造」と「動き」との関係は整合しており、特許法第36条第4項又は第6項第2号に適合する。
請求人は、被請求人の主張は二転三転しており権利の濫用である、訂正を認めることは特許法第123条第1項第4号の規定を形骸化するものであると主張する(上記第3.のキ、ク)。
しかし、明りょうでない記載の釈明を目的として訂正をすることは、特許法の規定に即したものであって、無効理由とはされていないことから、請求人の主張は根拠がない。
(2)第29条について
請求人は、本件発明3に対し、第29条第2項の無効理由をも主張している。
(2-1)本件発明3
本件発明3は、上記第2.の請求項3に記載されたとおりである。
(2-2)証拠記載事項
これに対し、請求人が提出した各証拠には、以下の事項が記載されている。
ア.甲第1号証
甲第1号証には、上記第2.で分説したA?F(a)を有し、ワークの初期位置決めのための制御(段落0041?0042。かっこ内は証拠の該当部分。以下同様。)を行い、研磨媒体が流動(段落0012)する「バレル研磨装置」が記載されている。
なお、甲第1号証に、上記第2.で分説したA?F(a)が記載されていることは、請求人、被請求人間に争いはない(口頭審理調書「両当事者確認事項 2」)。
イ.甲第2号証
甲第2号証には、同じくA(研磨槽23)、B(支持軸6)、C(モーター19)、E(円柱軸受け3、モーター28)を有し、自転公転中にワークが昇降(第4欄第3?6行)する「ジャイロ研磨機械」が記載されている。
ウ.甲第3号証
甲第3号証には、同じくA(研磨媒体収容槽30)、B(回転シャフト51)、C(回転駆動部50)、D(スライド板20、電動機12)、ワーク振動手段(段落0015)を有し、自転、振動中にワークが昇降(段落0021)する「バレル研磨装置」が記載されている。
エ.甲第14号証
甲第14号証には、同じくA(研磨媒体収容槽20)、B(ワーク支持アーム60)、C(モータ61)、D(スライド板50、第二駆動モータ52)を有し、ワークの初期位置決めのための制御(段落0023?0024)を行い、研磨媒体が流動(段落0018)する「バレル研磨装置」が記載されている。
オ.甲第22号証
甲第22号証は、「バレル研磨の手引き」と題するB5版、約40ページの小冊子であり、最終ページに「92/04」との表記があり(平成20年11月27日の面接記録)、その形態、内容からみて、本件出願前に頒布された刊行物に該当すると認める。
甲第22号証には、「バレル研磨」が、「回転・振動又は遠心流動,ジャイロ(自公転)ハイ・スピン(正逆自公転ストローク:乾式)レシプロ(上下左右往復)エディフロー(渦流式)トーナフロー(竜巻流動:乾式)運動を与え工作物と研磨石の間に生ずる相対運動差により表面仕上を行う加工法」であることが記載されている。
カ.甲第23号証
甲第23号証は、「アルトピア」と題する雑誌であり、本件出願前に頒布された刊行物に該当すると認める。
甲第23号証(特に図2)には、同じくA(研磨タンク)、B(自転用の軸)、C(自転モーター)、E(公転モーター)を有し、自転しながら公転(第31ページ左欄末行?右欄第1行)する「ホイール用の乾式流動方法を利用した商品名サプライズなる研磨装置」が記載されている。
キ.甲第24号証
甲第24号証は、株式会社チップトンが、1999年4月に株式会社ビービーエフヤマテに納品した「ジャイロ研磨装置」の仕様書である。
かかる書類は、一般に企業の内部書類であるところ、頒布された刊行物であることを示す証拠は提出されていない。
また、かかる「ジャイロ研磨装置」が、公然知られたものであること、公然実施をされたものであることを示す証拠も提出されていない。
よって、その記載内容を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の根拠としては、採用できない。
ク.甲第25号証
甲第25号証には、同じくA(請求項1の回転ボウル)、B(請求項1のスピンドル本体)、C(請求項1のスピンドル本体を回すモーター)、D(請求項1のスピンドルの軸に沿って位置を調整する手段)、E(請求項20のピボット運動)を有し、自転、公転、揺動(請求項1、20)する「回転式表面加工機」が記載されている。
(2-3)対比・判断
これら証拠のいずれにも、本件発明3の特定3動作は、記載されていない。
ところで、特定3動作のうち、F(b)の「回転軸の移動と揺動による楕円の円弧状」動作は、研磨効果上重要な動作であり、F(c)の「軸心方向の移動」動作と、F(d)の「揺動」動作は、前記F(b)の動作を行うために戻すためのものである(口頭審理調書「被請求人 4」)。
そして、本件発明3は、かかる特定3動作のための制御部を有することにより、「大きいワークや、複雑な形状を有するワークに対しても所定の均一な研磨が行われ、ワークの耐食性の向上及び表面硬度を上げることができる」(特許明細書段落0073)なる効果を生じるものである。
請求人は、かかる特定3動作は、当業者が適宜なしうる事項であり、作用効果も格別なものではない旨、主張する(上記第3.の3.ア、エ、オ、カ)。
しかしながら、特定3動作のうちF(b)の「回転軸の移動と揺動による楕円の円弧状」動作の実現のためには、Dの「移動手段」とEの「揺動手段」の「同期制御」が必要であるが、これについての記載ないし示唆は、いずれの証拠にもない。
かかる「同期制御」の実現のためには、そのための経費が生じることは明らかであり、また、戻すための動作も、F(c)の軸心方向の移動とF(d)の揺動と2段階のため、戻し時間が長くなり研磨効率の低下が予想される。
本件発明3は、経費、効率の観点からは通常行わない特定3動作を、あえて行うものであるから、当業者が適宜なしうる事項とすることはできない。
効果については、研磨媒体内での動作が異なる以上、その程度はともかく、研磨効果に何らかの差違が生じることは、明らかである。
よって、請求人の主張は採用できない。
したがって、請求人の主張、証拠によっては、本件発明3が、容易に発明をすることができたとすることはできない。
2.本件発明4
(1)第36条について
請求人は、本件発明4に対し、第36条第4項又は第6項第2号の無効理由を主張している。
本件発明4は、本件発明3に従属するものであり、両発明の関係について、被請求人は、口頭審理において、本件発明4の「制御部」は本件発明3の「制御部」に付加されるものと主張した(前記第4.のイ)。
当審においても、本件発明4の「制御部」は、本件発明3の「制御部」に付加されるものであると認める。
本件発明4は、本件発明3に従属するものであり、本件発明3については、上記1.(1)のとおり特許法第36条第4項又は第6項第2号に適合し、請求項4で限定した事項についても、明確であって、本件発明4は、全体として、特許法第36条第4項又は第6項第2号に適合する。
(2)第29条について
請求人は、本件発明4に対し、第29条第1項又は第2項の無効理由をも主張している。
本件発明4は、特定3動作のための制御部を有するものであるから、上記1.(2-3)同様の理由により、第29条第1項又は第2項の理由によっては、無効とすることはできない。
第8.むすび
以上のとおり、差戻決定の対象である本件発明3、4に係る特許は、請求人が、審判請求書に記載した理由及び証拠によって、これを無効とすることはできない。また、他に、無効とすべき理由を発見しない。
審判の総費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 【参考】平成21年2月3日付け審決(一次審決)は、以下のとおり。
「無効2008-800096
静岡県袋井市山崎4747
請求人 有限会社 村松研磨工業
静岡県磐田市白羽275-16
代理人弁理士 山本 健男
静岡県磐田市見付1585番地の11
被請求人 株式会社 ミュウテック
東京都港区虎ノ門一丁目12番9号 鈴榮特許綜合事務所内
代理人弁理士 鈴江 武彦
東京都港区虎ノ門一丁目12番9号 鈴榮特許綜合事務所内
代理人弁理士 蔵田 昌俊
東京都港区虎ノ門一丁目12番9号 鈴榮特許綜合事務所内
代理人弁理士 河野 哲
東京都港区虎ノ門一丁目12番9号 鈴榮特許綜合事務所内
代理人弁理士 峰 隆司
長野県松本市清水二丁目8番52号 原山邦章税務法律事務所
代理人弁護士 原山 邦章
上記当事者間の特許第3337680号発明「ワークの研磨装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結 論
訂正を認める。
特許第3337680号の請求項3ないし4に係る発明についての特許を無効とする。
特許第3337680号の請求項1に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その3分の1を請求人の負担とし、3分の2を被請求人の負担とする。
理 由
第1.手続の経緯
平成13年 1月19日 本件出願
平成14年 8月 9日 設定登録(特許第3337680号)
平成20年 5月28日 無効審判請求
平成20年 8月25日 答弁書
平成20年10月30日 両者・口頭審理陳述要領書、口頭審理
平成20年11月25日 請求人・上申書
平成20年11月25日 被請求人・上申書(訂正案あり)
平成20年11月27日 無効理由通知
平成21年 1月 5日 請求人・意見書
平成21年 1月 5日 被請求人・意見書、訂正請求書
第2.訂正請求について
1.訂正請求の内容
被請求人は、当審が通知した無効理由に応答して、訂正請求書を提出し、訂正を求めた。
被請求人が求めた訂正の内容は、後記第3.に当審で付した下線部のとおり、(ア)請求項3の「前記揺動機構の駆動を制御する制御部と中に多数の」を「前記揺動機構の駆動を制御する制御部と、中に多数の」に、「移動手段を制御するとともに、ワークの長手方向の寸法が・・・大きい場合、前記回転軸を」を「移動手段を制御し、(e)ワークの長手方向の寸法が・・・大きい場合には、前記制御とは別の制御がされ、前記回転軸を」にそれぞれ訂正、(イ)請求項4の「制御することを特徴」を「制御することができることを特徴」に訂正する、というものである。
2.訂正請求についての当審の判断
訂正請求について検討する。
訂正事項(ア)、(イ)は、ともに、ワークに対応した制御内容を明確に、すなわち、多様な解釈の余地のあった研磨装置の動きを特定するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
請求人は、かかる訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものであると主張する(後記第4.の3.カ.)が、多様な解釈の余地のあった研磨装置の動きを特定するものであるから、「拡張、変更」に該当しないことは明らかである。
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項の規定にも適合するので、上記訂正を認める。
第3.本件発明
本件特許の請求項1、3ないし4に係る発明は、訂正された明細書によれば、以下のとおりである。
なお、各請求項のA?F(d)等の分説は、被請求人が付したものであるが、両当事者合意のもと(口頭審理調書「両当事者確認事項 1」)、これを採用した。
「【請求項1】
A:中に多数の研磨粒子と液体とからなる研磨媒体が収容されるタンクと、
B:一端側にワークが取り付けられる回転軸と、
C:この回転軸を、この回転軸の軸心を中心として回転させる回転手段と、
D:前記回転軸を前記軸心に沿って移動させる移動手段と、
E:前記回転軸を、これの一端側が円弧軌道に沿って移動可能なように揺動させる揺動手段と、
F:前記回転手段、前記移動手段、及び前記揺動手段を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、
F(a):(a)前記回転軸が垂直な状態の研磨開始位置に配置されるように、前記移動手段、及び前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置に配置し、
F(b):(b)前記回転軸を回転させるように前記回転手段を制御するとともに、前記回転軸を軸心に沿って移動させるように前記移動手段を制御し、さらに、前記回転軸が垂直な状態から水平面に対して傾斜した状態に移行するような揺動を行うように前記揺動手段を制御し、
前記移動手段と揺動手段との駆動により、回転軸が自身の軸心に沿って移動されるとともに回転軸の一端が円弧軌道に沿って揺動され、前記回転軸の移動と揺動とにより、前記ワークを楕円の円弧状の軌道に沿って揺動させ、
F(c):(c)前記回転軸が傾斜した状態の円弧移動終点位置に前記回転軸が到達した際に、前記揺動手段を停止するように制御するとともに、(a)の状態に戻すように(b)と逆方向に回転軸を軸心に沿って移動させるように移動手段を制御し、これらの制御により前記ワークを前記回転軸の軸心に沿って直線軌道に沿って移動させ、
F(d):(d)前記移動手段が(a)の状態に戻された際に、(a)の状態に戻すように前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置と同様な状態にし、
(b)(c)(d)の動作を順に繰り返すように前記回転手段、揺動手段、及び移動手段を制御するワークの研磨装置。
【請求項3】
B:一端側にワークが取り付けられる回転軸と、
C:この回転軸を、この回転軸の軸心を中心として回転させる回転手段と、
D′:前記回転軸を、前記軸心に沿った方向、及び/又は、前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段と、
E′:前記回転軸を、これの一端側が円弧軌道に沿って移動可能なように揺動させる揺動手段と、
を有する揺動機構を具備しているとともに、
F′:前記揺動機構の駆動を制御する制御部と、
A′:中に多数の研磨粒子を有する研磨媒体が収容されるタンクと、
を具備しており、
F′:前記制御部は、
F(a):(a) 前記回転軸が垂直な状態の研磨開始位置に配置されるように、前記移動手段、及び前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置に配置し、
F(b):(b) 前記回転軸を回転させるように前記回転手段を制御するとともに、前記回転軸を軸心に沿って移動させるように前記移動手段を制御し、さらに、前記回転軸が垂直な状態から水平面に対して傾斜した状態に移行するような揺動を行うように前記揺動手段を制御し、
前記移動手段と揺動手段との駆動により、回転軸が自身の軸心に沿って移動されるとともに回転軸の一端が円弧軌道に沿って揺動され、前記回転軸の移動と揺動とにより、前記ワークを楕円の円弧状の軌道に沿って揺動させ、
F(c):(c) 前記回転軸が傾斜した状態の円弧移動終点位置に前記回転軸が到達した際に、前記揺動手段を停止するように制御するとともに、(a)の状態に戻すように(b)と逆方向に回転軸を軸心に沿って移動させるように移動手段を制御し、これらの制御により前記ワークを前記回転軸の軸心に沿って直線軌道に沿って移動させ、
F(d):(d) 前記移動手段が(a)の状態に戻された際に、(a)の状態に戻すように前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置と同様な状態にし、
(b)(c)(d)の動作を順に繰り返すように前記回転手段、揺動手段、及び移動手段を制御し、
F(e):(e) ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい場合には、前記制御とは別の制御がされ、前記回転軸を回転させるように前記回転手段を制御するとともに、前記回転軸が軸心に直交するように移動されるように前記移動手段を制御する
G:ワークの研磨装置。
【請求項4】
F〃:前記制御部は、前記ワークが前記軸心を中心として回転される動作と、前記ワークが前記軸心に沿った方向に移動される動作と、前記ワークが前記軸心と交差する方向に移動される動作と、前記ワークが揺動手段による前記円弧軌道に沿って移動される動作とを有する動作グループから1つ又は複数の動作を選定し、選定された単一の動作、又は選定された動作の組み合わされた動作を、前記研磨媒体中で前記ワークが行い前記研磨媒体により研磨されるように、前記揺動機構の駆動を制御することができることを特徴とする請求項3に記載のワークの研磨装置。」
第4.請求人の主張
1.請求人の主張の概要
請求人は、後記2.の証拠に基づき、本件特許の請求項1、3ないし4に係る発明(以下「本件発明1、3ないし4」という。)を無効とするとの審決を求めている。
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。
(1)請求項1、3ないし4に係る発明は、証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(2)請求項3ないし4に係る発明は、ワークの動き及び動作グループの選択が矛盾しているから、特許法第36条第4項又は第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。
(3)請求項4に係る発明は、公知技術であり、特許法第29条第1項(当審注、「第○号」は記載なし。)に該当するから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
2.証拠
請求人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲第 1号証:特開2000-15553号公報
甲第 2号証:特公平8-18248号公報
甲第 3号証:特開平11-216660号公報
甲第 4号証:東京地方裁判所平成18年(ワ)第25907特許権侵害行差止等請求事件(以下「別件訴訟」という。)原告準備書面(3)
甲第 5号証:別件訴訟原告準備書面(5)
甲第 6号証:甲第4号証に添付された実演映像(CD-R複製)
甲第 7号証:別件訴訟原告準備書面(6)
甲第 8号証:最初の拒絶理由通知[発送日 平成13年11月13日]
甲第 9号証:最初の拒絶理由に対する意見書
甲第10号証:最初の拒絶理由に対する補正書
甲第11号証:最後の拒絶理由通知
甲第12号証:最後の拒絶理由に対する意見書
甲第13号証:最後の拒絶理由に対する補正書
甲第14号証:特開平11-58215号公報
甲第15号証:別件訴訟の有限会社ミュウテック代表者の陳述書
甲第16号証 別件訴訟被告第2準備書面
甲第17号証 別件訴訟被告第3準備書面
甲第18号証 別件訴訟被告第4準備書面
甲第19号証 別件訴訟被告第5準備書面
甲第20号証 別件訴訟被告第6準備書面
甲第21号証 別件訴訟被告第7準備書面
甲第22号証:株式会社チップトン発行「バレル研磨の手引き」
甲第23号証:雑誌「アルトピア」VOL.28 NO.7
甲第24号証:ジャイロ研磨装置の仕様書
甲第25号証:米国特許第3599374号明細書
3.請求人の具体的主張
請求人は、具体的には、以下に摘記したとおり主張している。なお、原文の丸囲み数字は「丸1」のように置き換えて表記した。
ア.審判請求書第15ページ第33行?第16ページ第40行
「(iii)請求項1に係る特許発明と先行技術発明との対比
甲第1号証と甲第2号証では、研磨材を流動する点については研磨材を流動しない甲第3号証とは異なる。しかし甲第1号証では、研磨材中で自転軸を回転させ、自転軸に取り付けたワークを回転させ、前記アームを前記基台を中心として前記研磨媒体収容層の内側壁面又は内底壁面に対して向かって揺動手段により揺動可能に設置するとともに揺動した適宜位置で固定可能としたことを特徴とするバレル研磨装置であって、かつ、前記アームを軸方向に沿って進退手段により進退可能とするとともに進退した適宜位置で固定可能としたことを特徴とするバレル研磨装置である。すなわち、研磨材中でワークを取り付けたアームを回転させ、そのアームを揺動させ適宜位置で固定し、さらにアームを進退可能とし適宜位置で固定できる操作が表現されている。
甲第2号証では、研磨材中で、ワークを傾け自転及び公転を行い、直接ではないが、ワークを付けた支持軸の支持台が昇降自在となっている。
甲第3号証では、ワークを取り付けた回転シャフトをシャフトの軸心を含む面に沿って前後左右の振動をさせ、進退手段を介してシャフトを進退可能としている。
以上のことより、研磨材中でワークを回転させながら、ワークを取り付けた回転軸を揺動させまた軸心に沿った進退運動をさせることは公知であり、さらに回転軸を適宜位置で固定することも公知である。ワークを付けた回転軸を揺動しつつ進退運動をさせれば、ワークは甲第9号証のような楕円の円弧運動を取り、さらには回転軸の揺動を止めれば回転軸の軸心に沿ってワークが移動することになる。したがって、本件請求項1の特許発明は、かかる公知技術である研磨材中でのワークの動きの中の一つの動きを取り出したにすぎない。また、甲第9号証に見られるワークと研磨材との接触態様は、公知技術のワークの動きにおいて、当然に予想される事項であり、新たな作用効果を奏するものではない。
(iv)さらに、本件訴訟事件の準備書面である甲第5号証の2ページにおいて、被請求人は、以下のように述べている。
「そして、原告(被請求人)サンプル装置を含め、こうしたコンピュータープログラムによる「シーケンサ制御」は、特殊なものではなく、市販されているプログラム設計・編集ソフトにより如何様にも変更することができるようになっている。したがって被告(被請求人)研磨装置のコンピュータープログラムを改変することにより、容易に構成要件Gを充足する「制御」を行わしめることができる。」として、その方法を甲第6号証にて実演している。ここで構成要件Gとは、甲第4号証に記載されているが、前記表1の請求項1記載のDの部分である。さらに、甲第7号証において、被請求人は、「しかし、原告(被請求人)は、被告研磨装置の制御盤を操作することによって本件特許と同一の操作ができると主張しているのではない。原告の平成19年8月29日付の準備書面及び同年10月30日付準備書面において示したように、被告(請求人)研磨装置は、シーケンサ制御されており、そのプログラム回路を改変することで、本件特許の構成要件を従属する動作をさせることが可能であると主張しているのである。そしてシーケンサプログラムの改変は、当業者であれば、市販されているプログラム設計・編集ソフトを用いてパソコン上で極めて容易に行うことができると主張しているのである。」と主張している。なお、請求人の研磨装置は、回転軸を回転させながら揺動運動と前進(上下)運動を連動させることなくワークを動かし、研磨材中で研磨するものであり、公知技術を使用しているにすぎないことを主張し、請求人研磨装置は、本特許発明の権利侵害していないことと東京地裁が判断している。
以上のように被請求人は、請求項1に係る特許発明について特許法第29条第2項のいわゆる進歩性に違背していることを自ら認めているものである。」
イ.審判請求書第17ページ第42行?第18ページ第8行
「(iii)請求項3が請求項1と異なる個所はB′(c′)(当審注、上記第3.のD′)とD′(f)(当審注、上記第3.のF(e))である。
ここで、B′(c′)の「丸1 前記回転軸を、前記軸心に沿った方向、及び/又は、丸2 前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段と、」とについては、丸1のみが可能の場合D′(f)の動作はできず、丸2のみが可能な場合にはD′(c)(当審注、上記第3.のF(c))の動作はできない。さらにDは研磨材中でのワークの運動パターンを特定したものであるが、丸2のみが可能な場合、ワークの運動パターンは楕円の円弧運動とはなりえない。したがって請求項3は、特許法第29条第2項だけでなく、特許法第123条第1項第4号に準用する特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に違背して特許されたものである。」
ウ.審判請求書第19ページ第30行?第20ページ第1行
「(iii)そうとすると、請求項4は、請求項3の従属請求項であり、前記請求項3の無効理由はすべて請求項4に適用されることになる。すなわち、請求項4は、特許法第条123第1項第2号に準用する同法第29条第2項だけでなく、特許法第123条第1項第4号に準用する特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に違背して特許されたものである。
さらに、公知技術である回転軸の回転、揺動、移動の各動作をそれぞれ別の運動として選択的な組み合わせでもよいことになり、回転軸の回転、揺動、移動を一体的にしてワークに楕円の円弧運動をさせるという請求項1及び請求項3とは矛盾することになってしまう。したがって請求項4は、特許法第123条第1項第4号に準用する特許法第36条第4項第1号または同条第6項第2号にも違背して特許されたものである。さらに回転軸の回転、揺動、移動の各動作並びに各動作をそれぞれ選択的に組み合わせるワークの運動は、公知技術であって、特許法第123条第1項第2号において準用する特許法第29条第1項に違背して特許されたものである。」
エ.陳述要領書第2ページ第39行?第3ページ第2行
「(g)このようなワークの研磨面と研磨媒体の流動に着目し、研磨媒体の流動方向に対し研磨面を傾斜させるとする引用文献(甲第14号証)があります。甲第14号証は、甲第1号証の出願人(発明者)と同一であり、甲第1号証の基本となる発明が示されています。なお、本発明者は長年にわたり研磨作業に携わり、研磨方法や研磨機等の研究をしてきまして、研磨面を効率よく研磨するためには、研磨媒体に対し研磨面を傾斜させ、研磨媒体の流動させることが重要であるとの結論に達していました。」
オ.上申書第3ページ第7?41行
「(A‐2)研磨媒体を流動させず、研磨媒体中で、ワークをこの第1動作から第2動作を経て、第3動作を繰り返す方法と全く同一の先行技術は、調査した範囲内では見当たりません。しかし、回転軸を下降運動(回転軸に沿った運動)させつつ、この回転軸を揺動運動(振り子運動)させれば、回転軸の先端に取り付けられたワークは、必然的に円弧運動が生じますし、さらに、回転軸の下降時間と揺動時間を同期させれば、甲第9号証参考図1乃至3に示すような運動が生じます。なお、研磨材中でワークを自転させながら上下運動や振り子運動をさせることは公知であります。さらに、一連の動作と全く同じ動きをする先行技術は見当たりませんが、研磨材を流動させることなく、ワークを研磨材中で自転させながら公転運動させ、研磨材に対するワークの研磨面を傾斜させて研磨する第1動作と同じである公用技術は存在します。甲第23号証にこれを示します。甲第23号証は、1998年7月に出版されたアルミニウムの総合雑誌「アルトピア」の中の記事「アルミホイール用乾式研磨機サプライズ」であります。本証の図2「サプライズの運動」をご参照ください。アルミホイールであるワークは研磨材中で自転しています。そして図2の上段の研磨槽を上から見た図において、自転軸そのものが公転しています。この公転は、請求項1でのワークが回転軸に沿って研磨槽に入っていくことと同じです。さらに同図において公転する方向に研磨面の角度を調整し、研磨面の揺動運動をさせています。従いまして、本証は、請求項1の第1動作を表していると思います。すなわち、本証の研磨機は研磨材を流動させることなく、ワークであるアルミホイールを研磨槽の底面に対し略垂直にして、自転させつつ、公転させ、さらに左右に陽動させて研磨面であるアルミホイールの装飾面が研磨材と傾斜して当たるように揺動させています。この場合、ワークであるアルミホイールを研磨槽の底面に対し略垂直にしているため、研磨槽の底面ではなく建壁(垂直面)に対し揺動運動させて傾斜を作り研磨材の流動を起こさせるようにします。)本証でのアルミホイールの動きは研磨槽の底面に対し水平な動き(横向き)となっています。しかしこのワークの動きを縦型(同図において研磨槽を横置にしたとすれば)にすれば、請求項1と同じ動きが連続して再現することになります。詳細は別紙資料1に示します。
したがって、請求項1の一連の動作は、公知技術の上下運動、振り子運動の動きの中から一部を取り出したものであり、さらに、研磨材に対するワークの動きが同じである公用技術は存在しております。従いまして、請求項1の特許が新規性を有しているとは言い難いと思います。なお、この「アルミホイール用乾式研磨機サプライズ」なる研磨機は、大手自動車メーカーのメッキラインにおいて長年稼動していました。」
カ.意見書第3ページ第23行?第5ページ第10行
「本件特許の研磨メカニズムは、研磨材に対しワークを傾斜させ、かつ傾斜角を順次変化させて研磨することを特徴としたものであります。
甲第23号証においては、研磨材に対しワークを公転により水平運動させ、ワークの揺動運動(角度調整)により、ワークと研磨材の傾斜角を順次変化させて研磨する機構となっています。本件特許においては、この甲第23号証の機構を単に縦型にしたものであり、またワークと研磨材の傾斜角を順次変化させて研磨する研磨メカニズムは何ら相違はありません。
(2)請求項3について
丸1 被請求人の平成20年11月25日の上申書の訂正案(以下上申書訂正案とする。)において、F(d)の段で、「制御し、」とし、F(e)の段で、「には、前記制御とは別の制御がされ」のように訂正されています。
(略)
そうとしますと、「前記制御とは別の制御がされ」とする訂正は、ワークの形状により新たな制御内容が加えられることになり、この研磨装置に別の制御機構が新たに設けられることになります。従いまして、事実上特許請求の範囲を拡張し、変更するものとなり、特許法第123条第1項第8号に違背するものになると解されます。
(略)
(3)請求項4について
丸1 上申書訂正案において、被請求人は、「制御することを特徴とする」を「制御することができることを特徴とする」と訂正しています。ここで「制御すること」と「制御することができる」とは、その意義は大きく異なります。前者は、「制御をする」だけですが、後者は「制御することもあるが、制御しない場合もある」あるいは、「制御できる場合もあり、制御できない場合もある」との意義になります。すなわち、前者では、「制御」だけですが、後者では、「制御するかしないか」の選択肢が含まれてきます。そうしますと、本訂正も事実上特許請求の範囲を拡張することになります。従いまして本訂正も、特許法第123条第1項第8号に違背するものになると解されます。」
第5.当審で通知した無効理由
口頭審理、両者から提出された上申書を踏まえ、当審で通知した無効理由は以下のとおりである。
「1.請求項3において、「ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい場合」の制御内容が不明確である。制御部によりなされる(b)(c)(d)の動作と、両立しうるのか疑問である。
2.請求項3の「及び/又は」に関し、(b)(c)(d)の動作と、「ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい場合」の「回転軸が軸心に直交するように移動」動作を、ともに行うためには、「装置」としては、「及び」である必要があると解される。(訂正案においても同様)
3.請求項4は、請求項3との関係が不明確である。なお、請求項3の制御部を置換するものとすると、進歩性に疑義がある。
4.請求項3ないし4に係る特許は、被請求人の平成20年11月25日の上申書の訂正案によれば、いずれの証拠にも記載がない、(b)「垂直」軸線移動と揺動の組み合わせによる「楕円の円弧状」動作を含み、この点が特徴と解されるところ、甲第23号証の「水平」揺動による「円弧状」動作との違いによる技術的意義、有利な効果が不明確である。
乙第1号証は、本来研磨したい面の研磨量でなく、全体の研磨量を測定している等、効果を示すものとして適切か疑問があるところ、実験成績のみでなく、研磨メカニズムの差違についても、説明願いたい。」
第6.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。
その理由は、以下のとおりである。
ア.答弁書第3ページ第9?16行
「すなわち、それらの無効理由の根拠とされる甲各号証はいずれも、それぞれ単一の研磨方法を実現する手段や、単純にその2種程度を組み合わせて装置とした従来技術が開示されているに過ぎないものであって、後述する本件特許の請求項1記載発明のように、それぞれの機能を有する研磨手段を有機的に組合せて制御装置により同一の装置内において多角的に作動できるようにすることによって、研磨するワークの形状や材質等に対応して最適の研磨、特にワーク表面全体に渡って均一な研磨を実現し得るという技術思想については何ら示唆ないし開示されているものではなく、したがって、その主張は当を得ていない。」
イ.答弁書第18ページ第19行?第21ページ第13行
「(5-3)本件特許の請求項3記載の発明の構成について
請求人は、請求項3記載の発明について、発明が明確でないとして、無効理由を主張している。
すなわち、請求人は、B(c′)における回転軸を軸心に沿った方向に移動させることと、軸心に直交する方向に移動させることとについて、一方のみが可能な場合には他方の動作ができない旨主張し、さらに後者のみが可能な場合には、特定された運動パターンである楕円の円弧軌道とはなり得ない旨主張(請求書第18頁第1?6行)している。
しかしながら、本件特許の請求項3記載の発明における回転軸の作動構成は、回転軸がその軸方向およびまたは軸と直交する方向に移動できることを特定したものであって、回転軸が種々の所望する動作ができるように選択的に移動できるように構成したものであることは技術的にも当然理解できるものである。したがって、請求人が主張するような一方のみが移動する場合というのは、円弧運動を意図している研磨動作においては、きわめて特殊な想定であって、それをもって発明が明確でないなどということは当らない。
また、この構成は、請求項3記載の発明において、その研磨すべきワークの形状を特定したものであって、本件特許の図面における図8に示されるような、長手方向の寸法が長手方向と直交する方向の寸法より大きいワークの場合に、その明細書の段落【0103】以下に説明されているようにそのワークを移動して研磨動作するものであることが明らかであるから、それをもって発明が明確でないなどということは誤解に基づく主張であって、失当である。したがって、請求項3の記載は、発明が明確でないということはない。
換言すれば、出願過程で請求項3から派生した請求項4について補正されていない状態で特許されたのは、その意見書の引用形式によるものではなく、審査官の判断の翻意によるものであると考えられる。
(略)
(5-4)本件特許の請求項4記載の発明の構成について
請求人は、本件特許の請求項4が請求項3の従属項であることを根拠として、また、前記別件の侵害訴訟事件においてその記載の取り扱いについて争われたことに言及して、請求項項4の構成が、請求項3の構成に付加したものであると結論付けているが、その主張は理由がない。
すなわち、請求項4の記載について、「に代えて」等の置換であることを明示する記載がない以上、「付加」と解するのが妥当ではないかとの主張もあり得る。また、この点につき請求項が一見して明瞭でないように見受けられる記載であることも認める。
しかしながら、以下に述べるように、置換であると明確に把握できる記載であると確信する。
すなわち、特許庁審査基準においても、請求項の記載形式として、独立形式と引用形式とが挙げられており、後者については、略して「従属項」といわれるが、この記載形式により請求項における重複記載を避けて請求項の記載を簡明にすることが多用されている。
そして、引用形式の請求項、すなわち従属項には、付加方式と置換方式とがある。審査基準においても言及されている通り、引用形式の記載の仕方によって、「典型的な引用形式請求項」は、先行する請求項の構成を全て含み、さらに構成を付加した付加方式であり、一方、「これ以外の引用形式請求項」は、本件特許のように先行請求項の構成の一部を置換する置換方式である。
したがって、引用形式の請求項において、前者では、先行請求項の構成はそっくり包含されるものであり、一方、後者では、先行請求項における置き換えられた構成は、その故に、当然に包含されないものというべきである。
ここで、請求項4の実際の記載における、請求項3の引用形式について言及すると、被請求人としても、確かに請求人の主張するような問題点なしとはしないが、当業者が本件請求項4記載の発明をその記載から実際に把握しようとするときに、形式的には一般の引用形式であるとしても、その内容は、明らかに先行する引用請求項3記載の「制御部」の構成を置換した発明に他ならないものであることは明らかであることから、付加方式のようにその置換前の「制御部」を請求項4に取り込むことはあり得ず(すなわち想定できず)、請求人がいうように、単に形式的に引用して無理やり読み込めば、たちまち矛盾を生ずることが明らかであって、もはやその時点で当然にその矛盾の不合理を認識できるものである。そして、第4項記載の発明については、「に代えて」の記載がないとしても、請求項3の「制御部」を置換した内容として把握するのが自然であって、当然解釈としてそのような把握が認められるべきである。
本件特許の請求項4は、前述したとおり、「前記制御部は、」として、請求項3の「制御部」を置換して引用した記載を採用したものであり、この「制御部」を「前記ワークが前記軸心を中心として回転される動作と、・・・組み合わされた動作を、前記研磨媒体中で前記ワークが行い前記研磨媒体により研磨されるように、前記揺動機構の駆動を制御する」構成に置き換えたものであることがその記載ぶりからも明らかであって、「前記制御部に代えて」等の記載がなくても置換したものであることは明らかで、何ら不明瞭ではない。そして、その「制御部」は、その記載のように前記請求項3の制御部とは異なる、すなわち、置換した内容を記載しているのであるから、いわゆる置換方式によるものであることは明らかであって、請求人が主張するような矛盾が生ずることからも、請求項3の制御部の構成を含むことはあり得ないから、そのように把握するのが自然であり、当然解釈としてもそのように把握されるべきである。無効とまではいえないというべきである。」
ウ.陳述要領書第20ページ第1?9行
「(5-4)請求項3記載の発明と請求項4記載の発明との関係について
請求項3記載の発明における「制御部」の構成は、一般の形状のワークに対する構成と長尺物ワークに対する構成とからなっている。
これに対して、請求項4記載の発明における「制御部」の構成は、その両構成を包含していることから「置換」と読むべきものである。
請求人は、本件特許の請求項4が請求項3の従属項であることを根拠として、請求項4の構成が、請求項3の構成に付加したものであると主張し、訴訟事件においてそのことが認められたと主張しているが、当事者双方のそれぞれの主張に対して、裁判所の確定的な判断が示されたものでもない。」
エ.陳述要領書第22ページ第2?22行
「このように、請求項4における前記制御部は、前記ワークが前記軸心を中心として回転される動作と、前記ワークが前記軸心に沿った方向に移動される動作と、前記ワークが前記軸心と交差する方向に移動される動作と、前記ワークが揺動手段による前記円弧軌道に沿って移動される動作とを有する動作グループから1つ又は複数の動作を選定し、選定された単一の動作、又は選定された動作の組み合わされた動作を、前記研磨媒体中古前記ワークが行い前記研磨媒体により研磨されるように、前記揺動機構の駆動を制御することを特徴とする請求項3に記載のワークの研磨装置であって、それぞれが公知の動作であると仮定しても、同一の装置において、その制御部を制御することによって、研磨すべきワークの種類によって、単なる動作の寄せ集めでなく、それぞれの動作を組み合わせることによってそれぞれのワークに最適な研磨動作を選択し研磨できるという機能を具有する、従来公知の発明にはない、独創的な発明を構成するものであると確信する。
さらに、請求項4記載の発明が、前記請求項3記載の構成の一部を「置換」したものであっても、本件特許明細書および図面の記載全体から、前記請求項3記載の技術思想を背景としたものであることは明らかであるから、請求項3と同様に当然に進歩性を有しているものといえる。
仮に、記載形式を重視して、「付加」としか読めないとしても、請求項3記載発明と重複する部分が生ずるだけであり、構成上も、技術思想上も、請求項3記載発明との矛盾は生じない。
また、この場合に請求項3の技術思想を含むものであることは、請求項の記載上明らかとなり、進歩性を有するものであることはいうまでもない。」
オ.口頭審理調書「被請求人 2」
「イ)本件特許発明の請求項3は、「及び/又は」は3とおりの解釈、さらに長物ワーク(ワークの長手方向の寸法が長手方向と直交する方向の寸法より大きいワーク)とそれ以外のワークで2とおりの解釈、計6とおりの解釈がある。
・長物ワークで、軸心移動の場合は想定していない。
・長物ワークで、直交移動の場合は、(b)から(d)の動きはしない。
・長物ワークで、「及び」は想定していない。
・それ以外のワークで軸心移動は、請求項1と同じ動きをする。
・それ以外のワークで直交移動の場合は想定していない。
・それ以外のワークで「及び」の場合は(b)から(d)の動きと直交移動とを同時に行う。
ウ)本件特許発明の請求項4は、請求項3の(b)から(d)の動きを司る制御部Aと請求項4の動きを司る制御部Bとを共に有するものを想定している。制御部Aと制御部Bとは、選択的に用いられることが可能であるから矛盾はしない。制御部Aを有さず、制御部Bのみを有するものは対象外である。」
カ.意見書第2ページ第10行?第3ページ第2行
「2.「請求項3の『及び/又は』に関し、(b)(c)(d)の動作と、『ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい場合』の『回転軸が軸心に直交するように移動』動作を、ともに行うためには、『装置』としては、『及び』であると解される。(訂正案においても同様)」について
この場合の、ワークの長手方向の寸法が、長手方向と直交する方向の寸法より大きい、いわゆる長物ワークにおける軸心に沿った方向の移動は、本件特許明細書の実施例の記載(明細書段落0103-0107)からも明らかなように、研磨作用に直接機能しているものではなく、長物ワークを研磨開始位置、すなわち、所定の研磨高さ位置に配置するための移動であり、他方、軸心に直交するように移動するのは、回転軸の回転制御と相俟ってワークの効果的な研磨作用を行うための移動であることが明らかでありますから、明細書段落0103記載のとおり、前記(b)(c)(d)の動作とは別異の動作を規定したものであります。
さらには、この点は、請求項の記載自体に「前記回転軸が垂直な状態の研磨開始位置に配置されるように、前記移動手段、及び前記揺動手段を制御し、この制御により前記ワークを前記研磨開始位置に配置」する旨の記載があることからも明らかであるといえます。
したがって、通常の寸法のワークの研磨においては、(b)(c)(d)記載のように通常の制御がなされ、また、いわゆる長物ワークの場合には、前記通常の制御とは別の制御がされて、(e)記載のように軸心と直交する方向へ移動する制御がなされることが明確であり、前項の理由と同様に、訂正によって無効理由は解消するものと確信します。」
第7.当審の判断
1.本件発明1
(1)本件発明1
本件発明1は、上記第3.の請求項1に記載されたとおりである。
(2)証拠記載の発明
これに対し、請求人が提出した各証拠には、以下の事項が記載されている。
ア.甲第1号証
甲第1号証には、上記第3.で分説したA?F(a)を有し、ワークの初期位置決めのための制御(段落0041?0042。かっこ内は証拠の該当部分。以下同様。)を行い、研磨媒体が流動(段落0012)する「バレル研磨装置」が記載されている。
なお、甲第1号証に、上記第3.で分説したA?F(a)が記載されていることは、請求人、被請求人間に争いはない(口頭審理調書「両当事者確認事項 2」)。
イ.甲第2号証
甲第2号証には、同じくA(研磨槽23)、B(支持軸6)、C(モーター19)、E(円柱軸受け3、モーター28)を有し、自転公転中にワークが昇降(第4欄第3?6行)する「ジャイロ研磨機械」が記載されている。
ウ.甲第3号証
甲第3号証には、同じくA(研磨媒体収容槽30)、B(回転シャフト51)、C(回転駆動部50)、D(スライド板20、電動機12)、ワーク振動手段(段落0015)を有し、自転、振動中にワークが昇降(段落0021)する「バレル研磨装置」が記載されている。
エ.甲第14号証
甲第14号証には、同じくA(研磨媒体収容槽20)、B(ワーク支持アーム60)、C(モータ61)、D(スライド板50、第二駆動モータ52)を有し、ワークの初期位置決めのための制御(段落0023?0024)を行い、研磨媒体が流動(段落0018)する「バレル研磨装置」が記載されている。
オ.甲第22号証
甲第22号証は、「バレル研磨の手引き」と題するB5版、約40ページの小冊子であり、最終ページに「92/04」との表記があり(平成20年11月27日の面接記録)、その形態、内容からみて、本件出願前に頒布された刊行物に該当すると認める。
甲第22号証には、「バレル研磨」が、「回転・振動又は遠心流動,ジャイロ(自公転)ハイ・スピン(正逆自公転ストローク:乾式)レシプロ(上下左右往復)エディフロー(渦流式)トーナフロー(竜巻流動:乾式)運動を与え工作物と研磨石の間に生ずる相対運動差により表面仕上を行う加工法」であることが記載されている。
カ.甲第23号証
甲第23号証は、「アルトピア」と題する雑誌であり、本件出願前に頒布された刊行物に該当すると認める。
甲第23号証(特に図2)には、同じくA(研磨タンク)、B(自転用の軸)、C(自転モーター)、E(公転モーター)を有し、自転しながら公転(第31ページ左欄末行?右欄第1行)する「ホイール用の乾式流動方法を利用した商品名サプライズなる研磨装置」が記載されている。
キ.甲第24号証
甲第24号証は、株式会社チップトンが、1999年4月に株式会社ビービーエフヤマテに納品した「ジャイロ研磨装置」の仕様書である。
かかる書類は、一般に企業の内部書類であるところ、頒布された刊行物であることを示す証拠は提出されていない。
また、かかる「ジャイロ研磨装置」が、公然知られたものであること、公然実施をされたものであることを示す証拠も提出されていない。
よって、その記載内容を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の根拠としては、採用できない。
ク.甲第25号証
甲第25号証には、同じくA(請求項1の回転ボウル)、B(請求項1のスピンドル本体)、C(請求項1のスピンドル本体を回すモーター)、D(請求項1のスピンドルの軸に沿って位置を調整する手段)、E(請求項20のピボット運動)を有し、自転、公転、揺動(請求項1、20)する「回転式表面加工機」が記載されている。
(3)対比・判断
これら証拠のいずれにも、本件発明1の上記第3.で分説したF(b)?F(d)の事項(以下「特定3動作」という。)は、記載されていない。
ところで、特定3動作のうち、F(b)の「回転軸の移動と揺動による楕円の円弧状」動作は、研磨効果上重要な動作であり、F(c)の「軸心方向の移動」動作と、F(d)の「揺動」動作は、前記F(b)の動作を行うために戻すためのものである(口頭審理調書「被請求人 4」)。
そして、本件発明1は、かかる特定3動作のための制御部を有することにより、「大きいワークや、複雑な形状を有するワークに対しても所定の均一な研磨が行われ、ワークの耐食性の向上及び表面硬度を上げることができる」(特許明細書段落0073)なる効果を生じるものである。
請求人は、かかる特定3動作は、当業者が適宜なしうる事項であり、作用効果も格別なものではない旨、主張する(上記第4.の3.ア、エ、オ、カ)。
しかしながら、特定3動作のうちF(b)の「回転軸の移動と揺動による楕円の円弧状」動作の実現のためには、Dの「移動手段」とEの「揺動手段」の「同期制御」が必要であるが、これについての記載ないし示唆は、いずれの証拠にもない。
かかる「同期制御」の実現のためには、そのための経費が生じることは明らかであり、また、戻すための動作も、F(c)の軸心方向の移動とF(d)の揺動と2段階のため、戻し時間が長くなり研磨効率の低下が予想される。
本件発明1は、経費、効率の観点からは通常行わない特定3動作を、あえて行うものであるから、当業者が適宜なしうる事項とすることはできない。
効果については、研磨媒体内での動作が異なる以上、その程度はともかく、研磨効果に何らかの差違が生じることは、明らかである。
よって、請求人の主張は採用できない。
請求人は、また、甲第4ないし7号証をもとに、被請求人は、本件発明1が甲第1ないし3号証に基づき容易に発明をすることができたことを自ら認めていると主張する(上記第4.の3.ア)。
しかし、請求人は、本件発明1を知った上で、その者が、既知の装置の制御部を「特定3動作のための制御部」とすることは容易と主張しているにすぎないから、請求人の主張は採用できない。
したがって、請求人の主張、証拠によっては、本件発明1が、容易に発明をすることができたとすることはできない。
2.本件発明3
(1)第36条について
請求人は、本件発明3に対し、第36条第4項又は第6項第2号の無効理由を主張している。
本件発明3は、本件発明1と同じ、特定3動作をするとともに、長物ワークの場合には、特定3動作をせず、軸心直交移動のみの動きをするものである(上記第6.のオ、カ)。
ところで、本件発明3には、その装置の「構造」に関し、「前記回転軸を、前記軸心に沿った方向、及び/又は、前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段と」との記載があり、「軸心に沿った方向」と「軸心に直交する方向」とが「及び/又は」とで接続されている。
すなわち、かかる「移動手段」は、回転軸を、ア.「軸心に沿った方向、及び、軸心に直交する方向に移動させる手段」、イ.「軸心に沿った方向のみに移動させ、軸心に直交する方向に移動しえない手段」、ウ.「軸心に沿った方向に移動しえず、軸心に直交する方向に移動させる手段」の、いずれかの「移動手段」である。
ア.の「移動手段」を有する装置によれば、特定3動作、軸心直交移動のみの動き、いずれも可能である。
イ.の「移動手段」を有する装置によれば、「軸心に直交する方向に移動させない」のであるから、本件発明3の「軸心直交移動のみの動き」は、不可能である。
ウ.の「移動手段」を有する装置によれば、「軸心に沿った方向に移動させず」であるから、本件発明3の「回転軸を軸心に沿って移動させるように前記移動手段を制御」すること、すなわち特定3動作は、不可能である。
よって、イ.、ウ.の場合は、本件発明3の装置の「構造」と「動き」とが矛盾することとなり、本件発明3は不明確である。また、この点は、請求人も主張している(前記第4.イ)。
そこで、「及び/又は」は「及び」とする必要があるとの無効理由を通知した(前記第5.の2.)が、被請求人は、意見書において、本件発明3の動きの説明にとどまり、「及び/又は」を訂正せずとも、不明確とはならない旨の具体的主張はなされなかった(前記第6.のカ)。
したがって、本件発明3は、依然として不明確であるから、本件発明3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)第29条について
請求人は、本件発明3に対し、第29条第2項の無効理由をも主張している。
本件発明3は、上記(1)のとおり不明確であり、適切な判断は困難であるが、本件発明3が、特定3動作のための制御部を有するものであるとすれば、上記1.(3)同様の理由により、第29条第2項の理由によっては、無効とすることはできない。
3.本件発明4
(1)第36条について
請求人は、本件発明4に対し、第36条第4項又は第6項第2号の無効理由を主張している。
本件発明4は、本件発明3に従属するものであり、両発明の関係について、被請求人は、当初、本件発明4の「制御部」は本件発明3の「制御部」を置換するものであると主張していた(前記第6.のイ)が、口頭審理において、本件発明4の「制御部」は本件発明3の「制御部」に付加されるものと主張した(前記第6.のオ)。
当審においても、本件発明4の「制御部」は、本件発明3の「制御部」に付加されるものであると認める。
しかし、本件発明4は、本件発明3に従属するものである以上、本件発明3が上記2.(1)のとおり不明確であるから、同様の理由により、本件発明4も不明確である。
したがって、本件発明4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)第29条について
請求人は、本件発明4に対し、第29条第1項又は第2項の無効理由をも主張している。
本件発明4は、上記(1)のとおり不明確であり、適切な判断は困難であるが、本件発明4が、特定3動作のための制御部を有するものであるとすれば、上記1.(3)同様の理由により、第29条第1項又は第2項の理由によっては、無効とすることはできない。
第8.むすび
以上のとおり、本件発明3、4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたから、特許法第123条第4項に該当し、無効とすべきものである。
本件発明1については、請求人が、審判請求書に記載した理由及び証拠によって、これを無効とすることはできない。また、他に、無効とすべき理由を発見しない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その3分の1を請求人が、3分の2を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
平成21年 2月 3日
審判長 特許庁審判官 千葉 成就
特許庁審判官 鈴木 孝幸
特許庁審判官 尾家 英樹」
 
審理終結日 2009-08-25 
結審通知日 2009-08-28 
審決日 2009-09-14 
出願番号 特願2001-12269(P2001-12269)
審決分類 P 1 123・ 537- Y (B24B)
P 1 123・ 536- Y (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 雄二  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 尾家 英樹
小椋 正幸
登録日 2002-08-09 
登録番号 特許第3337680号(P3337680)
発明の名称 ワークの研磨装置  
代理人 峰 隆司  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 山本 健男  
代理人 原山 邦章  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ