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審決分類 審判 全部無効 特126 条1 項  A23K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23K
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A23K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A23K
審判 全部無効 2項進歩性  A23K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23K
管理番号 1295139
審判番号 無効2011-800073  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-28 
確定日 2014-11-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3970917号「菜種ミールの製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成25年5月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10200号、平成26年5月29日言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第3970917号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成19年 1月24日 本件特許出願
同年 6月15日 設定登録
平成23年 4月28日 本件無効審判請求
同年 7月21日 答弁書、訂正請求書
同年 8月26日 弁駁書
同年12月22日 審理事項通知書
平成24年 2月 3日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 2月 3日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 2月14日 上申書(被請求人)
同年 2月17日 上申書(請求人)
同年 2月17日 口頭審理
同年 3月28日 一次審決
同年 5月 2日 審決取消訴訟提起
(平成24年(行ケ)第10161号)
同年 6月29日 訂正審判請求(訂正2012-390085号)
同年 9月20日 審決取消決定
同年10月12日 答弁書、訂正請求書
同年12月 3日 弁駁書
平成25年 2月22日 答弁書
同年 5月29日 二次審決
二次審決の結論は、「平成24年10月12日付け訂正請求において、明細書(訂正事項10、11、18、19)、特許請求の範囲(請求項3に係る訂正事項3)を認める。特許第3970917号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」というものであった。
平成25年 7月12日 審決取消訴訟提起
(平成25年(行ケ)第10200号)
平成26年 5月29日 審決取消判決(以下「前判決」という。)
同年 7月 9日 上申書(請求人)
同年 9月 3日 審理終結通知

以下、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。また、「・・・」は記載の省略を意味し、証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。

第2 請求人の主張
請求人は、「特許第3970917号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠として甲1ないし21、参考資料1ないし4を提出し、次の無効理由を主張する。
[無効理由1]
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第1項第3号又は同条第2項)。
[無効理由2]
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第1項第3号又は同条第2項)。
[無効理由3]
(1)本件特許の請求項1及び5に係る発明は、甲3ないし5のいずれかに記載された発明であるか、甲3ないし5のいずれかに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第1項第3号又は同条第2項)。
(2)本件特許の請求項2に係る発明は、甲3又は4のいずれかに記載された発明であるか、甲3又は4のいずれかに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第1項第3号又は同条第2項)。
(3)本件特許の請求項3及び4に係る発明は、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
[無効理由4]
請求項3、4の「苦みの改善された」、請求項3の「35?48メッシュ以下の画分を含まない」との記載は明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、請求項3は「35?48メッシュ以下の画分を含まない」とのみ記載し、含有成分を規定していないため、発明の詳細な説明に開示のない発明を包含しており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[無効理由5]
訂正により追記された、請求項1、2、4、5の「そのまま」は、意味が不明確であり、該当する実施例の開示がなく、請求項1ないし4の「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%」を得ることができないから、特許法第36条第6項第1、2号、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

<証拠>
甲1:A. DAVIN, “Fractionation of oleaginous seed meals by screening and characterization of the products”, Qual Plant Plant Foods Hum. Nutr., vol.33, (1983), p.153-160
甲2:特公昭55-1783号公報
甲3:米国特許出願公開第2003/0170343号明細書
甲4:Debra D.L.Thiessen, PEA AND CANOLA MEAL PRODUCTS WITH THIN DISTILLERS'SOLUBLES IN DIETS FOR RAINBOW TROUT (ONCORHYNCHUS MYKISS) A Thesis Submitted to the College of Graduate Studies and Research In Partial Fulfillment of the Requirements For the Degree of Master of Science in the Department of Animal and Poultry Science University of Saskatchewan Saskatoon, Saskatchewan, (Spring, 2001), p.87, 98
甲5:C.F.M.de Lange, et al.,Digestible energy contents and apparent ileal amino acid digestibilities in regular or partial mechanically dehulled canola meal samples fed to growing pigs, CANADIAN JOURNAL OF ANIMAL SCIENCE, vol.78, No.4, (December 1998), p.641-648
甲6:平成24年11月28日付け実験成績証明書(その2)
甲7:平田忠雄及び岩永勇二による報告書
甲8:食用油脂入門 新訂版、平成16年10月29日発行、96、214頁
甲9:配合飼料講座 下巻 製造篇、昭和54年3月1日発行、282、283、285頁
甲10:J-オイルミルズ CSR報告書 2007、40-41頁
甲11:食用油製造の実際、昭和63年7月5日発行、68、71、72頁
甲12:平成24年9月6日付け実験成績証明書(添付資料として「参考資料1:DVD」を添付)
甲13:特開2000-316472号公報
甲14:油脂、2007年1月号、105頁
甲15:日本飼養標準 乳牛(2006年版)、97頁
甲16:日本標準飼料成分表(2001年版)、70-71頁
甲17:我が国の油脂事情、2005年9月発行、39頁
甲18:WORLD POULTRY、Vol.23、No.10、2007、24-25頁
甲19:BAILEY’S INDUSTRIAL OIL AND FAT PRODUCTS、Sixth Edition、volume2、2005年発行、84頁
甲20:Journal of Animal and Feed Sciences、9、200、123-136、124-125頁
甲21:特許第4477700号公報
参考資料1:配合飼料講座編纂委員会編、「配合飼料講座 下巻 製造篇」,(昭和54年3月1日発行),チクサン出版社、p.79
参考資料2:平成23年7月21日付け訂正請求により、訂正明細書の実施例1ないし3は請求項1の範囲外となり、実施例ではなくなったことを説明するための資料
参考資料3:訂正明細書の実施例1ないし3の菜種ミールの粒度分布が、甲第1号証における粉砕処理された菜種ミールの粒度分布と酷似した分布であることを示す資料
参考資料4:口頭審理技術説明用資料

甲1ないし5、参考資料1は審判請求書とともに、参考資料2及び3は平成23年8月26日付け弁駁書とともに、参考資料4は平成24年2月17日付け上申書とともに、甲6ないし21は平成24年12月3日付け弁駁書とともに、それぞれ提出されたものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成立しない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠として乙1ないし12を提出し、無効理由がいずれも成り立たないと主張する。

<証拠>
乙1:独立行政法人農業技術研究機構編、「日本標準飼料成分表 2001年版」中央畜産会発行、(平成14年2月15日)、p.70-71、98-99
乙2:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構編、「日本標準飼料成分表(2009年版)」中央畜産会発行、(平成22年2月25日)、p.94-95、118-119
乙3:S. M. McCurdy, et al.,Processing of Canola Meal for Incorporation in Trout and Salmon Diets, Journal of the American Oil Chemists' Society, Vol.69, No.3, (March 1992), p.213-220
乙4:シンフォニアテクノロジー株式会社WEBページ[online]、「振動スクリーン、JIS標準ふるい規格(細目用)」[平成24年2月4日検索]、インターネット、http://www.sinfo-t.jp/vibrator/screen/net2.htm
乙5:Wikipedia WEBページ[online],「Mesh(scale)」、[平成24年2月4日検索]、インターネット、http://en.wikipedia.org/wiki/Mesh_(scale)
乙6:カルゴンカーボンジャパン株式会社WEBページ[online]、「篩目開きと粒度メッシュ」[平成24年2月4日検索]、インターネット、http://www.calgoncarbon-jp.com/product/catalog/list.html
乙7:飼料原料図鑑編集委員会編、「飼料原料図鑑」株式会社芝光社発行、(平成9年6月1日)、p.68-69
乙8:実験報告書
乙9:実験報告書(第二回)
乙10:続・新化学工学講座第2回配本「篩分」第21?22頁
乙11:食用油製造の実際 株式会社幸書房 昭和63年7月5日発行 第68?71頁
乙12:日本工業規格JIS Z9080:2004(官能評価分析-方法)の抜粋

第4 訂正請求について
1.訂正の内容
平成24年10月12日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、具体的な訂正事項は以下のとおりである(以下、本件訂正前の明細書、特許請求の範囲を「本件明細書」といい、本件訂正後の明細書、特許請求の範囲を「訂正明細書」という。)。
なお、本件訂正の請求がされたため、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第134条の2第4項の規定により、平成23年7月21日付け訂正請求は、取り下げたものとみなされる。

(1)訂正事項1
請求項1について、
「菜種粕を32?60メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの製造方法。」を、
「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの製造方法。」と訂正する。

(2)訂正事項2
請求項2について、
「菜種粕を48?60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.53%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。」を、
「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま48?60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。」と訂正する。

(3)訂正事項3
請求項3について、
「35?48メッシュ以下の画分を含まない苦みの改善された菜種ミール。」を、
「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕の35?48メッシュ以下の画分を含まない、35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された菜種ミール。」と訂正する。

(4)訂正事項4
請求項4について、
「菜種粕を35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。」を、
「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られ、窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。」と訂正する。

(5)訂正事項5
請求項5について、
「菜種粕を32?60メッシュのいずれかの篩にかけることからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法。」を、
「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法。」と訂正する。

(6)訂正事項6
本件明細書の段落【0011】の2行目に記載の「菜種粕を」を、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」に訂正する。

(7)訂正事項7
本件明細書の段落【0011】の2行目に記載の「60」を、「48」に訂正する。

(8)訂正事項8
本件明細書の段落【0013】の1行目に記載の「菜種粕を」を、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」に訂正する。

(9)訂正事項9
本件明細書の段落【0013】の1行目に記載の「6.53」を、「6.64」に訂正する。

(10)訂正事項10
本件明細書の段落【0014】の1行目に記載の「35?48」の前に、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕の」を付加するよう訂正する。

(11)訂正事項11
本件明細書の段落【0014】の1行目に記載の「含まない」の後に、「、35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも」を付加するよう訂正する。

(12)訂正事項12
本件明細書の段落【0014】の2行目に記載の「菜種粕を」を、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」に訂正する。

(13)訂正事項13
本件明細書の段落【0014】の2行目に記載の「得られる、」を「得られ、窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて」に訂正する。

(14)訂正事項14
本件明細書の段落【0015】の1行目に記載の「菜種粕を」を、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」に訂正する。

(15)訂正事項15
本件明細書の段落【0015】の1行目に記載の「60」を、「48」に訂正する。

(16)訂正事項16
本件明細書の段落【0015】の1行目に記載の「かけることからなる」を、「かけて、粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる」に訂正する。

(17)訂正事項17
本件明細書の段落【0017】の4行目に記載の「6.53」を、「6.64」に訂正する。

(18)訂正事項18
本件明細書の段落【0021】の5?6行目に記載の「なお、圧搾粕を砕いて、有機溶剤抽出した時と同様の粒度分布を持たせた物を本発明の製造方法の原料としてもよい。」を削除する。

(19)訂正事項19
本件明細書の段落【0034】の4?6行目に記載の「この方法により、菜種粕の水分をほとんど変えることなく、N分5.34?7.27%、原料菜種粕N分の約0.8?1.2倍の間で任意に調節された菜種ミールを得ることが可能となった。」を削除する。

2.訂正についての判断
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的、特許請求の範囲の拡張又は変更
前判決で、訂正事項1について、次のとおり判示された。
「訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。」
上記判決は当合議体を拘束する。
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.新規事項の追加
(ア)「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕」は、圧搾と有機溶剤による抽出という2段階の搾油工程(以下「2段階搾油工程」という。)を経て得られる菜種粕(以下「2段階搾油菜種粕」という。)であるところ、本件明細書【0021】には、「菜種からの搾油は、通常、2工程に分かれている。まず、菜種を圧搾機により搾油し、続いて、圧搾粕に残された油分をn-ヘキサンなどの有機溶剤を用いて抽出し、上記圧搾油と抽出油を合わせて精製する。2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は、搾油工程で一部が造粒されることにより、特徴のある粒度分布を持つようになる。」と、上記2段階搾油工程及び2段階搾油菜種粕が記載されている。
よって、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕」は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
(イ)「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」については、本件明細書の実施例1の表1(38.8=10.4+12.0+9.0+7.4)及び実施例3の表6(55.6=15.6+18.2+10.2+11.6)に記載された32メッシュ篩下以下の細粒度の画分の重量%の総和に基づき上限・下限が導き出されたものである。
よって、「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
(ウ)「そのまま・・・篩にかけて」に関し、前判決で、「本件明細書の上記記載内容に照らせば、2段階搾油菜種粕は、搾油工程で一部が造粒されることにより、特徴のある粒度分布を持つようになること、そのため、2段階搾油菜種粕にさらに機械粉砕など何らかの処理を施すことなく、2段階搾油菜種粕をそのまま篩にかけることにより、画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができ、篩上と篩下とで性状が異なる菜種ミールが得られることが記載されているものと認められる。」と判示された。すなわち、本件明細書に、2段階搾油菜種粕をそのまま篩にかけることが記載されていると認定されており、この認定がなされた判決は、当合議体を拘束する。
なお、前判決は、新規事項の追加の有無について判示するものではないことを勘案したとしても、本件明細書の【0020】?【0022】、【0031】の記載や、本件明細書には、実施例の記載を含め、篩分けの対象が、訂正事項1所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものであることを示唆する記載はないことを考慮すると、2段階搾油菜種粕にさらに機械粉砕など何らかの処理を施すことなく、2段階搾油菜種粕をそのまま篩にかけることが本件明細書に記載されていると認められる。
よって、「そのまま・・・篩にかけて」は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
(エ)「32?48メッシュのいずれかの篩」について、本件明細書【0022】の「上記菜種粕を32?60メッシュ、好ましくは35?60メッシュ、さらに好ましくは35?48メッシュ、特に好ましくは35?42メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画する。」との記載より、メッシュの上限として48メッシュの篩を把握できる。
よって、「32?48メッシュのいずれかの篩」は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
(オ)請求人は、前判決において、「「そのまま・・・篩にかけて」とは、訂正事項1所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施すことなく、上記所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕そのものを篩にかけることを意味する」と認定されたことを踏まえると、本件明細書の実施例には、「12メッシュや20メッシュの篩にかけたもの」を篩にかけることしか記載されていないから、この実施例に基づき、「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である」を追記する訂正は、新規事項の追加に該当する旨を主張する(平成26年7月9日付け上申書2ページ17行?3ページ12行)。
しかし、前判決は、請求人が摘示する認定の前提として、「本件明細書の実施例(【0030】(実施例1)、【0043】(実施例2)、【0045】(実施例3))のいずれについても、篩分けの対象が、上記所定の粒度分布の2段階搾油菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものであることを示す記載はない。」と認定しているのであるから、本件明細書の実施例が、所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕そのものを篩にかける例であるとの前提に立っていることは明らかである。
よって、「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である」が、本件明細書に記載した事項の範囲内のものであるという、上記(イ)の判断は、前判決の認定に反するものではなく、上記請求人の主張は採用することができない。

ウ.小括
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
ア.訂正前の請求項2における「菜種粕を」を「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」と訂正する部分については、訂正事項1と同様のものであるから、その適否の判断も訂正事項1と同様である。
イ.訂正前の請求項2における「窒素含量6.53%以上」を「窒素含量6.64%以上」と訂正する部分については、窒素含量の下限値を引き上げて、窒素含量の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件明細書の実施例3に関する【表6】の記載によれば、48メッシュ篩下の細粒度菜種ミールの窒素含量を6.64%(=(6.53×0.0.102+6.73×0.116)/(0.102+0.116))と算出できるから、本件明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求人は、他の計算式により計算すれば、6.64とは異なる値が求まるから、「6.53%以上」を「6.64%以上」とする訂正は新規事項を追加するものであると主張する(平成24年12月3日付け審判事件弁駁書9ページ1行?下から3行)が、他の計算によって他の値が求まるとしても、上記のとおり、6.64%を算出することができる以上、「6.53%以上」を「6.64%以上」とする訂正は新規事項を追加するものとはいえない。
ウ.よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3における「35?48メッシュ以下の画分を含まない」を「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕の35?48メッシュ以下の画分を含まない」として、菜種ミールの原料である菜種粕を「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕」(2段階搾油菜種粕)であって、その粒度分布が所定の「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である」ものに限定し、その菜種粕の35?48メッシュ以下の画分を含まないことを明瞭にするとともに、「苦みの改善された」について、比較の対象が「35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミール」であることを明瞭にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、前記(1)イ.(ア)及び(イ)に示したように、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。更に、本件明細書【0014】の「該菜種ミールは、菜種粕を35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールであることが好ましい。」との記載によれば、35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールに比べて35?48メッシュ以下の画分を含まない菜種ミールの「苦み」が「改善」されることが記載されているといえる。
よって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4
ア.訂正前の請求項4における「菜種粕を」を「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」と訂正する部分については、訂正事項1と同様のものであるから、その適否の判断も訂正事項1と同様である。
イ.訂正前の請求項4における「苦みの改善された」を「窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された」と訂正する部分は、粗粒度菜種ミールを、「窒素含量4.90%以上5.80%以下」のものに限定し、「苦みの改善された」について、比較の対象が「前記菜種粕」、すなわち、篩にかける前の菜種粕であることを明瞭にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、本件明細書の実施例1に関する【表1】の記載より、48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールの窒素含量を5.80%(=(6.13×0.082+5.78×0.200+5.34×0.330+5.90×0.104+6.76×0.120)/(0.082+0.200+0.330+0.104+0.120))と算出でき、実施例3に関する【表6】の記載より、35メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールの窒素含量を4.90%(=(5.18×0.022+4.91×0.094+4.66×0.328+5.37×0.156)/(0.022+0.094+0.328+0.156))と算出できるとともに、本件明細書【0014】の「該菜種ミールは、菜種粕を35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールであることが好ましい。」との記載によれば、35?48メッシュのいずれかの篩にかける前の菜種粕に比べて35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールの苦みが改善されることが記載されているといえるから、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求人は、「窒素含量4.90%以上5.80%以下であり」を追記する訂正について、他の計算式により計算すれば、上記と異なる値が求まるから、該訂正は新規事項を追加するものであると主張する(平成24年12月3日付け審判事件弁駁書9ページ下から2行?11ページ2行)が、他の計算によって他の値が求まるとしても、上記のとおり、4.90%、5.80%を算出することができる以上、「窒素含量4.90%以上5.80%以下であり」を追記する訂正は新規事項を追加するものとはいえない。
ウ.よって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5
ア.訂正前の請求項5における「菜種粕を」を「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」と訂正し、訂正前の請求項5における「32?60メッシュ」を「32?48メッシュ」と訂正する部分については、「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である」とする事項を含まないほかは、訂正事項1と同様のものであるから、その適否の判断も訂正事項1と同様である。
イ.訂正前の請求項5における「いずれかの篩にかける」を「いずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画する」と訂正する部分は、篩分けによりどのように分画されるかを限定することにより、篩分けを概念的に下位にしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件明細書の実施例4に関する【表7】には、32メッシュ篩上の菜種ミールの窒素含量が、篩分け無しの通常品に対して0.95倍であり、32メッシュ篩下の菜種ミールの窒素含量が、篩分け無しの通常品に対して1.125倍であり、48メッシュ篩上の菜種ミールの窒素含量が、篩分け無しの通常品に対して0.986倍であり、48メッシュ篩下の菜種ミールの窒素含量が、篩分け無しの通常品に対して1.199倍であることが記載されているから、上記のとおり訂正する部分は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求人は、上記【表7】に記載された数値は、平均値に加え、±SDの値が付記されているから、平均値の1点に基づく数値範囲を追記する訂正は新規事項を追加するものである旨主張する(平成24年12月3日付け審判事件弁駁書12ページ14行?18行)が、平均値自体が記載されている以上、当該平均値に基いて上記のとおり数値範囲を画定することは、新規事項の追加に該当しない。
ウ.よって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6、7
訂正事項6、7は、訂正事項1と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項8、9
訂正事項8、9は、訂正事項2と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)訂正事項10、11
訂正事項10、11は、訂正事項3と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)訂正事項12、13
訂正事項12、13は、訂正事項4と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(10)訂正事項14、15、16
訂正事項14、15、16は、訂正事項5と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(11)訂正事項17
訂正事項17は、訂正事項2と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(12)訂正事項18
訂正事項18は、訂正事項1ないし5と整合させるための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(13)訂正事項19
訂正事項19は、特許請求の範囲に記載された発明と直接に関係しない付加的な事項を削除することにより、特許請求の範囲に記載された発明を明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.訂正についての結論
以上のとおり、本件訂正は、改正前特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第5 訂正発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「訂正発明1」ないし「訂正発明5」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの製造方法。
【請求項2】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま48?60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。
【請求項3】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕の35?48メッシュ以下の画分を含まない、35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された菜種ミール。
【請求項4】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られ、窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。
【請求項5】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法。

第6 無効理由について
1.無効理由1
(1)甲1の記載及び甲1に記載された発明
甲1には、以下の記載がある(請求人が提出した<甲第1号証の抄訳>に基づく訳文を示す。)。

「要約:篩分け(サイズ スクリーニング)は、粒子サイズ(粒径)の関数として組成にバラツキを有する油性種子ミール(油性種子ひき割り)から異る画分を分離する。スクリーニングの前に種々の異なる型の粉砕機を用いた研究の結果、衝撃式粉砕機及び石臼が菜種ミール用にベストであることが示されている。 ・・・ 他のいろいろな原材料に拡張されることができる。」(153頁「Abstract」の欄)

「前書き
油性種子の工業用ミール(油分抽出後)は、重要な蛋白源であるが、種々の理由、例えば、抗栄養因子の存在等のため軽視されている。抗栄養因子の問題がない場合は、種子外皮残渣が他の拒絶の原因となる。
粉砕前に種子脱皮をすることも可能であるが、これは高価な技術であり、また、続いて圧搾プロセスによる油分抽出を受ける際に、場合によっては、材料の浸透容量の損失を来たすことがある。
プレボら(Prevot et al.)(1973)[1]は、ヒマワリ・ミールの篩分けが、外皮残渣の部分的な排除によって、画分中の蛋白質含有量を増加させることができることを示している。この技術は、動物飼料用のベストな材料を提供する。現在は、人間の食料用としての潜在的価値を向上させるため、他の油性ミールへの応用のための精密なスクリーニング条件を究明する研究が行われている。」(153頁「Introduction」の欄)

「材料及び方法
パイロットプラント規模(5?100kg)で加工されるミールは、製造者が動物飼料用に供給するのと同じ工業製品であった。脱皮製品(ヒマワリ及びピーナツの純粋な核種)のため、ヘキサンによる直接油分抽出によって研究室で調製された1?3kgのミールのサンプルに調査がなされなければならなかった。
菜種ミールに関する粉砕研究のため、その研究室で利用できるパイロット粉砕機が用いられ、かつ以下のものが含まれた。
-衝撃式粉砕機:2段階回転スピード付き(1500及び3000rpm)農家用粉砕機設計(型0415.02、7.5H.P.-フランス、サンリス 60、ルート デ クレピー 3、ロウ製)
-シリンダー粉砕機:専門研究所において小麦をすり潰すために用いられるパイロット粉砕機(1.5H.P.-フランス、パリ 75、ルー セント-オノレ 225、ソキャム製)
-石臼:コミュニティ・コーヒー・ミル(変更可能な嵌め合い用の隙間を有する設計、3/4H.P.-スイス、ウスター、ゼルウイガーS.A.製)
分類の効果に関する調査のため、ミールの粉砕が、上述のロウ粉砕機を3000rpmにして、又はゼルウイガー粉砕機を「9」の設定にして行われた。
分画スクリーニングは、偏心砂ふるい(型ヴィトロ-タミス 450-0.5H.P.-フランス、パリ 75、ルー セント-クロイ デ ラ ブレトンネリエ 24、タミソル製)上に置かれた、メッシュサイズが63μm?8mmのステンレス鋼のふるい(直径45cm)上で行われた。具体的な画分の粒径は、2つの値に指定された(テキスト及び表1を参照);これは、より小さな網目のふるいでは通過しないが、より大きな網目のふるいでは通過する粒径に対応している。」(153頁下から7行?154頁下から2行)

「結果と考察
菜種ミールの粉砕と篩分けに関する研究
図1は、 ・・・
・・・
異なる画分に関する生化学的研究によって、結果として得られる組成は、用いる粉砕機に拘わらず、主に粒径に依存することが示された。図2は、その格付け(グレイディング)が250?630μmで最適であり、蛋白質含有量が45%から36%に減少し、かつ粗繊維含有量が13%から25%に増加することを示している。0.8mmを超えると、粉砕処理は効果がなく、かつ材料はさらなる加工を必要とすることになる。
これらの結果は、寸法分布と共に、衝撃式粉砕機及び石臼が、シリンダー粉砕機よりも良い結果をもたらすことを示している(選択画分、すなわち200μm未満で20?25%の収率、47%の蛋白質含有量及び10%の粗繊維含有量)。
・・・
種々のミールのスクリーニング;前もって脱皮することの影響
図3は、種々の油性種子ミールに格付け(グレイデイング)がなされ得ることを示している。大豆、菜種、及びピーナツの工業用脱皮種子ミールの画分は、より均一でより高い窒素含有量を有している。スクリーニングは窒素含有量の低い極めて大きな粒子の少量を取り除いている。研究所においてピーナツ及びヒマワリの核種から調製されたミールは、依然として均一性が高く、この場合、大きなメッシュでのスクリーニングは、その核種の繊維部分を取り除くために適している。
全体の種子ミール(又は、粉砕の前に十分に洗浄されなかった種子からのミール)のために、篩分けは、最高の蛋白質含有量及び最低の粗繊維含有量を有する選択画分を生み出す。しかしながら、これは、小さなサイズの粒子(200μm未満)だけのスクリーニングからしか得られず、結果として収率も少ない。蛋白質及び粗繊維が部分的に分離された重要な中間的画分がある。これらのプロセスを使用すると、結果として、単胃動物又は反芻動物の飼料として当初のミールより価値の高いいくつかの画分が得られる。」(155頁18行?160頁6行)

「結論
油性ミールの篩分けは、異なる最終用途のために種々の画分を提供する。例えば、最小の画分(最高の蛋白質含有量及び最低のセルロース含有量)は、粉末製品又は押出製品として直接用いられることができる。画分は、さらに加工されて、可溶性の非蛋白質成分の除去により濃縮されることができる。中間的な画分は、分離品を調製するために用いられることができる。最も粗い画分は、セルロースの高い含有量のため反芻動物飼料に適する。油分抽出の前の油性種子脱皮は、蛋白質含有量の高いミールの割合を増加するが、ミールの篩分けを排除することはない。」(160頁7行?16行)

表1には、「表1 ヒマワリ・ミールのサイズ分布及び技術的格付け」と題し、粒径63μm未満、63?80μm、80?100μm、100?120μm、120?160μm、160?200μm、200?250μm、250?315μm、315?400μm、400?500μm、500?630μm、630?800μm、800?1000μm、1000?2000μm、2000μm以上で分画できる網目の篩で分画スクリーニングがなされたことが記載されている。

図1には、説明欄に「図1 粉砕された菜種ミールの粒度分布:(0)粉砕無しの工業用ミール;(1)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.6mm);(2)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.2mm);(3)石臼粉砕ミール(Zellweger);(4)衝撃式粉砕ミール(Law,3000rpm);(5)衝撃式粉砕ミール(Law,1500rpm)」と記載され、上記(0)ないし(5)の各菜種ミールの粒径サイズ分布のグラフが示されている。

図2には、説明欄に「図2 菜種ミール画分の化学組成。粉砕なしの工業用ミール:△蛋白質含量;▲粗繊維含量。ゼルウィガーで粉砕されたミール:●蛋白質含量;○粗繊維含量。ロウ(3000rpm)で粉砕されたミール:×蛋白質含量;○×(審決注:○の中に×)粗繊維含量。」と記載され、各菜種ミール画分の蛋白質及び繊維含量(%)が示されている。

上記図1及び図2のグラフを作成するにあたりなされた分画スクリーニングは、表1の場合と同様、粒径63μm未満、63?80μm、80?100μm、100?120μm、120?160μm、160?200μm、200?250μm、250?315μm、315?400μm、400?500μm、500?630μm、630?800μm、800?1000μm、1000?2000μm、2000μm以上が分画できる網目の篩にかけ、より小さな網目の篩では通過しないが、より大きな網目の篩では通過する粒径に対応する各菜種ミール画分を得る分画スクリーニングであるといえ、甲1には、上記分画スクリーニング方法及び上記各菜種ミール画分が記載されているといえる。

したがって、甲1には、次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。
「(0)粉砕無しの工業用ミール(以下「サンプル(0)」という。)、(1)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.6mm)(以下「サンプル(1)」という。)、(2)シリンダー粉砕ミール(Socam,クリアランス:0.2mm)(以下「サンプル(2)」という。)、(3)石臼粉砕ミール(Zellweger)(以下「サンプル(3)」という。)、(4)衝撃式粉砕ミール(Law,3000rpm)(以下「サンプル(4)」という。)又は(5)衝撃式粉砕ミール(Law,1500rpm)(以下「サンプル(5)」という。)それぞれを、粒径63μm未満、63?80μm、80?100μm、100?120μm、120?160μm、160?200μm、200?250μm、250?315μm、315?400μm、400?500μm、500?630μm、630?800μm、800?1000μm、1000?2000μm、2000μm以上が分画できる網目の篩にかけ、粒径がより小さな網目の篩では通過しないがより大きな網目の篩では通過する粒径に対応する各菜種ミールを分画する、菜種ミールの分画スクリーニング方法。」

また、甲1には、次の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。
「サンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)それぞれを、粒径63μm未満、63?80μm、80?100μm、100?120μm、120?160μm、160?200μm、200?250μm、250?315μm、315?400μm、400?500μm、500?630μm、630?800μm、800?1000μm、1000?2000μm、2000μm以上が分画できる網目の篩にかけ、粒径がより小さな網目の篩では通過しないがより大きな網目の篩では通過する粒径に対応する、上記各菜種ミール画分。」

(2)訂正発明1について
ア.訂正発明1と甲1発明Aとの対比
甲1発明Aのサンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)は、篩分前の菜種ミール(油分抽出後)であるから、甲1発明Aのサンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)と、訂正発明1の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲1発明Aの「各菜種ミールを分画する」ことは、各菜種ミールを篩にかけ分画することを意味するから、甲1発明Aの「各菜種ミールを分画する」ことと、訂正発明1の「菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけ」ることとは、「篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画する」点で共通する。
甲1発明Aの「菜種ミールの分画スクリーニング方法」は、各菜種ミールを分画スクリーニングして各画分の菜種ミールを製造する方法といえるから、訂正発明1の「菜種ミールの製造方法」に相当する。
よって、訂正発明1と甲1発明Aとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点A]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画する菜種ミールの製造方法。

[相違点A1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明1では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲1発明Aでは、「サンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)それぞれ」である点。

[相違点A2]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画することが、
訂正発明1では、いずれか1つの篩を使用して篩の上下二分割し、篩上の粗粒度菜種ミールと篩下の細粒度菜種ミールに分画するのに対し、
甲1発明Aでは、粒径63μm未満、63?80μm、80?100μm、100?120μm、120?160μm、160?200μm、200?250μm、250?315μm、315?400μm、400?500μm、500?630μm、630?800μm、800?1000μm、1000?2000μm、2000μm以上が分画できる網目の篩、すなわち、14種類の篩を使用し分画して15種類の菜種ミール画分に分級している点。

[相違点A3]
用いる篩が、
訂正発明1では、32?48メッシュのいずれかであるのに対し、
甲1発明Aでは、粒径63μm未満、63?80μm、80?100μm、100?120μm、120?160μm、160?200μm、200?250μm、250?315μm、315?400μm、400?500μm、500?630μm、630?800μm、800?1000μm、1000?2000μm、2000μm以上が分画できる網目の篩、すなわち、14種類の篩の全てである点。

イ.判断
(ア)相違点A1について
相違点A1に係る訂正発明1の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」とは、篩分けの対象が、2段階搾油菜種粕であって、その粒度分布が所定の「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である」菜種粕そのものであって、上記菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものではないことを意味している。よって、2段階搾油工程の後、菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕は、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕には含まれないと解される。なお、この解釈は、前判決が訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕について示した判断(後記(4)イ.参照。)及び前判決が「そのまま・・・篩にかけて」の明確性について示した判断(後記7.参照。)に沿うものでもある。
上記解釈を踏まえて、以下、検討する。
甲1発明Aのサンプル(0)は、甲1の図1に示される粒度分布を参照すれば、32メッシュ(目開き500μm)篩下の含量が38.8?55.6%である菜種粕とは、明らかに粒度分布が相違するから、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。
また、甲1発明Aのサンプル(1)ないしサンプル(5)のそれぞれは、サンプル(0)全体を機械粉砕して得られるものであるから、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。
そこで、甲1発明Aの篩分けの対象である菜種ミールに代えて、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるかについて検討すると、甲1は、「スクリーニングの前に種々の異なる型の粉砕機を用いた研究」に関する文献であり、上記サンプル(0)及びサンプル(1)ないしサンプル(5)の5種の粉砕ミールは、このような研究のために準備されたサンプルであるから、その全体を機械粉砕せずに、粒度が大きな粒子についてのみ適度な粒度に機械粉砕する整粒を行った上で篩にかけることは予定されていない。
したがって、甲1発明Aの篩分けの対象である菜種ミールに代えて、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けはない。
請求人は、甲1発明Aのサンプル(0)について、整粒を行ったものを使用する動機付けがある旨を主張する(平成26年7月9日付け上申書11ページ25行?31行)。
しかし、整粒工程を経た菜種粕は、機械破砕された粒子と機械破砕されていない粒子との混合物となるのに対し、甲1発明Aのサンプル(0)は、「スクリーニングの前に種々の異なる型の粉砕機を用いた研究」のため、サンプル(1)ないしサンプル(5)の5種の粉砕ミールと比較される「粉砕無しの工業用ミール」である。よって、サンプル(0)について、部分的にせよ機械粉砕を伴う整粒を行ったものを使用する動機付けはないから、上記請求人の主張は採用することができない。
よって、相違点A1に係る訂正発明1の構成は、甲1発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲1発明Aであるとはいえず、また、甲1発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)訂正発明2について
ア.訂正発明2と甲1発明Bとの対比
甲1発明Bのサンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)は、篩分前の菜種ミール(油分抽出後)であるから、甲1発明Bのサンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)と、訂正発明2の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲1発明Bの「各菜種ミール」を分画することは、各菜種ミールを篩にかけ分画することを意味するから、甲1発明Bの「各菜種ミール」を分画することと、訂正発明2の「菜種粕をそのまま48?60メッシュの篩にかけ」ることとは、「篩分前の菜種ミールを篩で分画する」点で共通する。
甲1発明Bの「各菜種ミール画分」は、篩分後の菜種ミールであるから、甲1発明Bの「各菜種ミール画分」と、訂正発明2の「細粒度菜種ミール」とは、「篩分後の菜種ミール」である点で共通する。
よって、訂正発明2と甲1発明Bとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点B]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる、篩分後の菜種ミール。

[相違点B1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明2では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲1発明Bでは、「サンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)それぞれ」である点。

[相違点B2]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画することが、
訂正発明2では、いずれか1つの篩の上下二分割し、篩下の細粒度菜種ミールに分画するのに対し、
甲1発明Bでは、上記[相違点A2]で述べたように、14種類の篩を使用し分画して15種類の菜種ミール画分に分級している点。

[相違点B3]
用いる篩の種類及び取得する画分、並びに、分画された画分の窒素含量が、
訂正発明2では、篩の種類が、48?60メッシュのいずれかで、その篩下の画分である細粒度菜種ミールを取得するものであり、画分の窒素含量が、6.64%以上7.27%以下であるのに対し、
甲1発明Bでは、目開きが、63、80、100、120、160、200、250、315、400、500、630、800、1000、2000μmである篩の全てであり、その篩下の画分である細粒度菜種ミールを取得するものでなく、画分の窒素含量が、6.64%以上7.27%以下であるかも明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点B1について
相違点B1は相違点A1と同じであり、相違点B1についての判断も相違点A1についての判断と同じである。
よって、相違点B1に係る訂正発明2の構成は、甲1発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明2は、甲1発明Bであるとはいえず、また、甲1発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)訂正発明3について
ア.訂正発明3と甲1発明Bとの対比
上記(3)ア.における検討を踏まえ、訂正発明3と甲1発明Bを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点C]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる、篩分後の菜種ミール。

[相違点C1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明3では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」であるのに対し、
甲1発明Bでは、「サンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)」である点。

[相違点C2]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画することが、
訂正発明3では、いずれか1つの篩の上下二分割し、篩上の粗粒度菜種ミールに分画するのに対し、
甲1発明Bでは、上記[相違点A2]で述べたように、14種類の篩を使用し分画して15種類の菜種ミール画分に分級している点。

[相違点C3]
用いる篩の種類及び取得する画分、並びに、分画された画分の味が、
訂正発明3では、篩の種類が、35?48メッシュのいずれかで、その篩上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものであり、画分の味が、篩分前の菜種ミールに比べて苦みが改善されたものであるのに対し、
甲1発明Bでは、目開きが、63、80、100、120、160、200、250、315、400、500、630、800、1000、2000μmである篩の全てであり、その篩上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものではなく、画分の味が、篩分前の菜種ミールに比べて苦みが改善されたものかも明らかでない点。

イ.判断
上記のとおり相違点C1ないしC3が存在するから、訂正発明3は、甲1発明Bであるとはいえない。
また、前判決において、甲1を主引例とする訂正発明3の容易想到性について、次のとおり判示された。
「2段階搾油工程の後、菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕は、2段階搾油工程の後整粒工程を経たにとどまる菜種粕とは、物として異なるものであり、訂正発明3の篩分けの対象である「菜種粕」には含まれないというべきである。」
「甲1発明の篩分けの対象であるミールに代えて、訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けはない。」
「甲1発明から訂正発明3の構成に想到することが容易であるとはいえない」
上記判決は、当合議体を拘束する。
よって、訂正発明3は、甲1発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)訂正発明4について
ア.訂正発明4と甲1発明Bとの対比
上記(3)ア.における検討を踏まえ、訂正発明4と甲1発明Bを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点D]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる、篩分後の菜種ミール。

[相違点D1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明4では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲1発明Bでは、「サンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)それぞれ」である点。

[相違点D2]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画することが、
訂正発明4では、いずれか1つの篩の上下二分割し、篩上の粗粒度菜種ミールに分画するのに対し、
甲1発明Bでは、上記[相違点A2]で述べたように、14種類の篩を使用し分画して15種類の菜種ミール画分に分級している点。

[相違点D3]
用いる篩の種類及び取得する画分、並びに、分画された画分の窒素含量及び味が、
訂正発明4では、篩の種類が、35?48メッシュのいずれかで、その篩上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものであり、画分の窒素含量が、4.90%以上5.80%以下であり、画分の味が、苦みが改善されたものであるのに対し、
甲1発明Bでは、目開きが、63、80、100、120、160、200、250、315、400、500、630、800、1000、2000μmである篩の全てであり、その篩上の画分である粗粒度菜種ミールを取得するものではなく、画分の窒素含量が、4.90%以上5.80%以下であるかが明らかでなく、画分の味が、菜種ミールに比べて苦みが改善されたものかも明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点D1について
相違点D1は相違点A1と同じであり、相違点D1についての判断も相違点A1についての判断と同じである。
よって、相違点D1に係る訂正発明4の構成は、甲1発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明4は、甲1発明Bであるとはいえず、また、甲1発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)訂正発明5について
ア.訂正発明5と甲1発明Aとの対比
上記(2)ア.における検討を踏まえ、訂正発明5と甲1発明Aを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点E]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画する菜種ミールの画分を得る方法。

[相違点E1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明5では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲1発明Aでは、「サンプル(0)、サンプル(1)、サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)又はサンプル(5)それぞれ」である点。

[相違点E2]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて分画することが、
訂正発明5では、いずれか1つの篩を使用して篩の上下二分割し、篩上の粗粒度菜種ミールと篩下の細粒度菜種ミールに分画するのに対し、
甲1発明Aでは、上記[相違点A2]で述べたように、14種類の篩を使用し分画して15種類の菜種ミール画分に分級している点。

[相違点E3]
用いる篩の種類が、
訂正発明5では、32?48メッシュのいずれかであるのに対し、
甲1発明Aでは、目開きが、63、80、100、120、160、200、250、315、400、500、630、800、1000、2000μmである篩の全てである点。

[相違点E4]
菜種ミールの画分を得る方法が、
訂正発明5は、「粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法」であるのに対し、
甲1発明Aは、そのような菜種ミールの窒素含量の調整方法であるか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点E1及び相違点E4について
篩分けの対象が篩分けの結果に影響することは明らかであることから、相違点E1と相違点E4は密接な関連を有するといえるので、これら相違点についてまとめて検討する。
相違点E1に係る訂正発明5の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」とは、篩分けの対象が、2段階搾油菜種粕そのものであって、該菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものではないことを意味している。よって、2段階搾油工程の後、菜種粕全体に機械粉砕を施した菜種粕は、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕には含まれないと解される。
上記解釈を踏まえて、以下、検討する。
甲1発明Aのサンプル(1)ないしサンプル(5)のそれぞれは、サンプル(0)全体を機械粉砕して得られるものであるから、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。
そして、甲1は、「スクリーニングの前に種々の異なる型の粉砕機を用いた研究」に関する文献であり、上記サンプル(1)ないしサンプル(5)の5種の粉砕ミールは、このような研究のために準備されたサンプルであるから、その全体を機械粉砕せずに、粒度が大きな粒子についてのみ適度な粒度に機械粉砕する整粒を行った上で篩にかけることは予定されていない。
したがって、甲1発明Aの篩分けの対象であるサンプル(1)ないしサンプル(5)に代えて、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けはない。
一方、甲1発明Aのサンプル(0)は、「粉砕無しの工業用ミール」であるから、搾油工程の後、菜種粕全体に機械粉砕を施したものではないと認められるものの、具体的にどのような製造方法により得られたものであるかは、甲1に記載がなく、不明である。よって、甲1発明Aのサンプル(0)は、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕と同じであるとはいえない。
仮に、甲1発明Aのサンプル(0)が、2段階搾油菜種粕であって、訂正発明5の篩分けの対象である「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」に相当するものであったとしても、サンプル(0)を篩にかけて、窒素含量がサンプル(0)の窒素含量に対して0.95?0.986倍の粗粒度菜種ミールと、窒素含量がサンプル(0)の窒素含量に対して1.125?1.199倍の細粒度菜種ミールとに分画することについては、甲1に記載も示唆もない。
この点に関し、甲1の図2には、サンプル(0)について、画分ごとの蛋白質及び繊維含量が示されているが、粒径2000μm以上の画分の蛋白質含量は示されていない。そして、甲1の図1に示されるサンプル(0)の粒度分布を参照すると、粒径2000μm以上の画分の割合が大きい。そうすると、サンプル(0)を篩にかけた場合に、篩上画分と篩下画分それぞれの蛋白質含量、ひいては、篩上画分と篩下画分それぞれの窒素含量がサンプル(0)の窒素含量に対してどのようになるかは不明である。よって、サンプル(0)を篩にかけて、篩上画分と篩下画分それぞれの窒素含量を調整することは、甲1に記載も示唆もない。
したがって、相違点E1に係る訂正発明5の構成は、甲1発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえず、仮に、甲1発明Aのサンプル(0)が、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕に相当するものであったとしても、相違点E4に係る訂正発明5の構成は、甲1発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明5は、甲1発明Aであるとはいえず、また、甲1発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

2.無効理由2
(1)甲2の記載及び甲2に記載された発明
甲2には、以下の記載がある。

「本発明の目的は、含油種子から蛋白分に富む油粕と繊維分に富む油粕とを効率的に製造し以つて、動物の飼料等としてそれぞれ有効な用途を持つた油粕を提供することにある。」(1頁2欄29?32行)

「このようにしてはずされた表皮部と実部とを両者の比重差または粒度差を利用してスクリーン、風力等の手段により分離する。この目的のためには分級フルイ、乾式遠心分離機、風力分級機等を使用することができるが、分級フルイが好ましい。
スクリーンのメツシユは、前の工程における粉砕の程度に対応させて選択すればよい。
かくして表皮部、即ち、繊維分に富む油粕と実部、即ち、蛋白分に富む油粕とを効率的に得ることができる。」(2頁3欄下から4行?同頁4欄6行)

「このように、本発明は従来の方法によるよりも繊維分が高い油粕と蛋白分が高い油脂(当審注:「粕」の誤記と認める。)とを製造できるものであつて、油粕を目的に応じて有効に利用することができるため、用途の拡大につながるとともに、資源の活用という面からも、その産業上の価値はきわめて高い。」(2頁4欄31行?36行)

「実施例 1
菜種に対し通常の圧抽法によつて採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得た。
このものに、1重量%の抽出油滓を添加混合したのち奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずした。次いで、48メツシユ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し、48メツシユ上として繊維分に富む油粕、48メツシユ下として蛋白分に富む油粕をそれぞれ得た。
比較のため対照として上記の方法において油滓を添加せず、他は同様にして処理を行つた。以上によつて得られた各油粕の分析値を第1表に示す。

第1表 単位:%
本 発 明 対 照
表皮部 実部 表皮部 実部
収率 50.1 49.9 54.5 45.5
粗蛋白含量 31.8 45.5 36.7 40.9
粗繊維含量 17.7 11.1 15.4 13.2

第1表に示す如く、本発明の方法による実部の収率は対照によるものとの比率で9.7%も上昇し、実部の粗蛋白含量は分離前の油粕に対し対照は6.0%しか増加しないのに比べ、本発明によれば17.9%も多くなり、また表皮部の粗繊維含量は対照が6.9%しか増加しないのに比べ、本発明によれば22.9%も多くなつており、分離効率がきわめて高かつた。」(2頁4欄37行?3頁5欄23行)

以上によれば、甲2には、実施例1の「対照」に係る発明として、次の発明(以下「甲2発明A」という。)が記載されていると認められる。
「菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずし、次いで、48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し、48メッシュ上の繊維分に富む油粕、48メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法。」

また、甲2の実施例1の「対照」は、実部の粗蛋白含量40.9%を蛋白質換算係数6.25で除して窒素含量に換算すると6.544%(=40.9%/6.25)であるから、甲2には、次の発明(以下「甲2発明B」という。)が記載されていると認められる。
「菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずし、次いで、48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し、48メッシュ上の繊維分に富む油粕、48メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法によって得られる、48メッシュ下の窒素含量6.544%(無水物換算)の蛋白分に富む油粕。」

さらに、甲2には、次の発明(以下「甲2発明C」という。)が記載されていると認められる。
「菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずし、次いで、48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し、48メッシュ上の繊維分に富む油粕、48メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法によって得られる、48メッシュ上の繊維分に富む油粕。」

(2)訂正発明1について
ア.訂正発明1と甲2発明Aとの対比
甲2発明Aの「菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずし」たものと、訂正発明1の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種粕」である点で共通する。
甲2発明Aの「48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し」と、訂正発明1の「32?48メッシュのいずれかの篩にかけて」とは、「篩分前の菜種粕を篩にかける」点で共通する。
甲2発明Aの「48メッシュ上の繊維分に富む油粕」と、訂正発明1の「粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール」とは、「粒径が該篩上の粗粒度菜種ミール」である点で共通し、また甲2発明Aの「48メッシュ下の蛋白分に富む油粕」と、訂正発明1の「粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」とは、「粒径が該篩下の細粒度菜種ミール」である点で共通する。
甲2発明Aの「48メッシュ上の繊維分に富む油粕、48メッシュ下の蛋白分に富む油粕をそれぞれ得る方法」は、訂正発明1の「菜種ミールの製造方法」に相当する。
よって、訂正発明1と甲2発明Aとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点F]
篩分前の菜種粕を篩にかけて、粒径が該篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が該篩下の細粒度菜種ミールとに分画する、菜種ミールの製造方法。

[相違点F1]
篩分けの対象である篩分前の菜種粕が、
訂正発明1では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲2発明Aでは、菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものである点。

[相違点F2]
篩の種類が、
訂正発明1では、「32?48メッシュのいずれか」であるのに対し、
甲2発明Aでは、「48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーン」である点。

イ.判断
(ア)相違点F1について
訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(2)イ.(ア)に示したとおりである。
甲2発明Aにおいてスクリーン(篩)にかける対象である菜種粕は、菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものであるのに対して、訂正発明1において篩分けの対象である菜種粕は、その全体が機械粉砕されたものではないから、両者は物として異なるものである。そして、甲2発明Aは、上記のとおり、菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものをスクリーン(篩)にかけることを前提とするものであるから、このような菜種粕に代えて、上記のような訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点F1に係る訂正発明1の構成は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明1は、甲2発明Aであるとはいえず、また、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)訂正発明2について
ア.訂正発明2と甲2発明Bとの対比
甲2発明Bの「菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずし」たものと、訂正発明2の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種粕」である点で共通する。
甲2発明Bの「48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンにより両者を分離し」と、訂正発明2の「48?60メッシュの篩にかけて」とは、「篩分前の菜種粕を篩にかける」点で共通する。
甲2発明Bの「48メッシュ下の窒素含量6.544%の蛋白分に富む油粕」と、訂正発明2の「窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」とは、「篩下の所定の窒素含量の細粒度菜種ミール」である点で共通する。
よって、訂正発明2と甲2発明Bとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点G]
篩分前の菜種粕を篩にかけて得られる、篩下の所定の窒素含量の細粒度菜種ミール。

[相違点G1]
篩分けの対象である篩分前の菜種粕が、
訂正発明2では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲2発明Bでは、菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものである点。

[相違点G2]
篩の種類が、
訂正発明2では、「48?60メッシュの篩」であるのに対し、
甲2発明Bでは、「48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーン」である点。

[相違点G3]
所定の窒素含量が、
訂正発明2は、「6.64%以上7.27%以下」であるのに対し、
甲2発明Bは、無水物換算で「6.544%」である点。

イ.判断
(ア)相違点G1について
相違点G1は相違点F1と同じであり、相違点G1についての判断も相違点F1についての判断と同じである。
よって、相違点G1に係る訂正発明2の構成は、甲2発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明2は、甲2発明Bであるとはいえず、また、甲2発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)訂正発明3について
ア.訂正発明3と甲2発明Cとの対比
甲2発明Cの「菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕(粗蛋白含量38.6%、粗繊維含量14.4%。いずれも無水物換算。以下同様)を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずし」たものと、訂正発明3の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種粕」である点で共通する。
訂正発明3の「35?48メッシュ以下の画分を含まない」菜種ミールは、35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られる篩上の画分の菜種ミールであるから、甲2発明Cの「48メッシュ上の繊維分に富む油粕」と、訂正発明3の「35?48メッシュ以下の画分を含まない」菜種ミールとは、「篩にかけて得られる、篩上の粗粒度菜種ミール」である点で共通する。
よって、訂正発明3と甲2発明Cとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点H]
篩分前の菜種粕を篩にかけて得られる、篩上の粗粒度菜種ミール。

[相違点H1]
篩分けの対象である篩分前の菜種粕が、
訂正発明3では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」であるのに対し、
甲2発明Cでは、菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものである点。

[相違点H2]
篩の種類が、
訂正発明3では、35?48メッシュのいずれかの篩であるのに対し、
甲2発明Cでは、48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーンである点。

[相違点H3]
篩上の粗粒度菜種ミールが、
訂正発明3では、篩分前の菜種粕に比べて苦みの改善されたものであるのに対し、
甲2発明Cでは、篩分前の菜種粕に比べて苦みの改善されたものか明らかでない点。

イ.判断
上記のとおり相違点H1ないしH3が存在するから、訂正発明3は、甲2発明Cであるとはいえない。
また、前判決において、甲2を主引例とする訂正発明3の容易想到性について、次のとおり判示された。
「甲2発明においてスクリーン(篩)にかける対象である菜種粕は、菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものであるのに対して、訂正発明3において篩分けの対象である菜種粕は、その全体が機械粉砕されたものではなく、粒度が大きな粒子についてのみ適度な粒度に機械粉砕する整粒を行った上で篩にかけるものであるから、両者は物として異なるものである。そして、甲2発明は、上記のとおり、菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものをスクリーン(篩)にかけることを前提とするものであるから、このような菜種粕に代えて、上記のような訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。」
「甲2発明から訂正発明3の構成を想到することが容易であるといえない」
上記判決は、当合議体を拘束する。
よって、訂正発明3は、甲2発明Cに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)訂正発明4について
ア.訂正発明4と甲2発明Cとの対比
上記(4)ア.における検討を踏まえ、訂正発明4と甲2発明Cを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点I]
篩分前の菜種粕を篩にかけて得られる、篩上の粗粒度菜種ミール。

[相違点I1]
篩分けの対象である篩分前の菜種粕が、
訂正発明4では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲2発明Cでは、菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものである点。

[相違点I2]
篩の種類が、
訂正発明4では、「35?48メッシュのいずれかの篩」であるのに対し、
甲2発明Cでは、「48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーン」である点。

[相違点I3]
篩上の粗粒度菜種ミールが、
訂正発明4では、「窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された」ものであるのに対し、
甲2発明Cでは、窒素含量がそのように特定されておらず、苦みの改善されたものか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点I1について
相違点I1は相違点F1と同じであり、相違点I1についての判断も相違点F1についての判断と同じである。
よって、相違点I1に係る訂正発明4の構成は、甲2発明Cに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明4は、甲2発明Cであるとはいえず、また、甲2発明Cに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)訂正発明5について
ア.訂正発明5と甲2発明Aとの対比
上記(2)ア.における検討を踏まえ、訂正発明5と甲2発明Aを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点J]
篩分前の菜種粕を篩にかけて、粒径が該篩上で所定の窒素含量の粗粒度菜種ミールと、粒径が該篩下で所定の窒素含量の細粒度菜種ミールとに分画する、菜種ミールの画分を得る方法。

[相違点J1]
篩分けの対象である篩分前の菜種粕が、
訂正発明5では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲2発明Aでは、菜種に対し通常の圧抽法によって採油を行い、菜種粕を得、奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものである点。

[相違点J2]
篩の種類が、
訂正発明5では、「32?48メッシュのいずれか」であるのに対し、
甲2発明Aでは、「48メッシュ(目開0.297m/m)のスクリーン」である点。

[相違点J3]
菜種ミールの画分を得る方法が、
訂正発明5は、「粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法」であるのに対し、
甲2発明Aは、菜種ミールの窒素含量の調整方法であるか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点J1について
訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(6)イ.(ア)に示したとおりである。
これに対し、甲2発明Aにおいてスクリーン(篩)にかける対象である菜種粕は、菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものであるから、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。
そして、甲2発明Aは、上記のとおり、菜種粕全体を奈良式衝撃式粉砕機にかけて、表皮部と実部とをはずしたものをスクリーン(篩)にかけることを前提とするものであるから、このような菜種粕に代えて、上記のような訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点J1に係る訂正発明5の構成は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点J3について
甲2には、「スクリーンのメッシュは、前の工程における粉砕の程度に対応させて選択すればよい。」と記載されているものの、これは篩分前の工程における粉砕後表皮部と実部とに分離し選別することが記載されているだけであり、用いる篩の目開きにより蛋白質含量を調整した菜種ミールを得ることについて、記載がなく、示唆もない。
したがって、甲2発明Aにおいて、篩を用いて分画し各画分の窒素含量が所定の倍率になるよう調整された各画分を得ることを、当業者が容易に想到し得たとは認められない。
よって、相違点J3に係る訂正発明5の構成は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明5は、甲2発明Aであるとはいえず、また、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3.無効理由3のうちの甲3に基づく無効理由
(1)甲3の記載及び甲3に記載された発明
甲3には、以下の記載がある(請求人が提出した<甲第3号証の抄訳>に基づく訳文を示す。)。

「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され-焙られた菜種ミールは、商業的な供給者(Can-Amera Foods, Nipawin, Saskatchewan)から得た。この物質は、60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)を通じて篩にかけられた。篩分けにより作られた菜種ミール細粒の実験室分析は、次のようである。水分11パーツ、蛋白質41.6パーツ、フィチン酸塩2.4パーツ、その他非蛋白質、非フィチン酸塩乾燥物質45.6パーツ。」([0043])

したがって、甲3には、次の発明(以下「甲3発明A」という。)が記載されていると認められる。
「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミールを60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)を通じて篩にかけることによる、水分11パーツ、蛋白質41.6パーツ、フィチン酸塩2.4パーツ、その他非蛋白質、非フィチン酸塩乾燥物質45.6パーツの篩下の菜種ミール細粒の製造方法。」

また、甲3には、次の発明(以下「甲3発明B」という。)が記載されていると認められる。
「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミールを60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)を通じて篩にかけることによって作られた、水分11パーツ、蛋白質41.6パーツ、フィチン酸塩2.4パーツ、その他非蛋白質、非フィチン酸塩乾燥物質45.6パーツが含有されている篩下の菜種ミール細粒。」

(2)訂正発明1について
ア.訂正発明1と甲3発明Aとの対比
甲3発明Aの「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」と、訂正発明1の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲3発明Aの「60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)を通じて篩にかける」と、訂正発明1の「32?48メッシュのいずれかの篩にかけて」とは、「篩分前の菜種ミールを篩にかける」点で共通する。
甲3発明Aの「篩下の菜種ミール細粒」と、訂正発明1の「粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」とは、「粒径が該篩下の細粒度菜種ミール」である点で共通し、甲3発明Aの「菜種ミール細粒の製造方法」は、訂正発明1の「菜種ミールの製造方法」に相当する。
よって、訂正発明1と甲3発明Aとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点K]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて、粒径が該篩下の細粒度菜種ミールに分画する、菜種ミールの製造方法。

[相違点K1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明1では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲3発明Aでは、「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」である点。

[相違点K2]
用いる篩の種類、分画される画分の種類が、
訂正発明1では、篩の種類が、32?48メッシュのいずれかで、分画される画分は、篩下の細粒度菜種ミール及び篩上の粗粒度菜種ミールであるのに対し、
甲3発明Aでは、篩の種類が、60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)で、分画される画分は、篩下の細粒度菜種ミールである点。

イ.判断
(ア)相違点K1について
訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(2)イ.(ア)に示したとおりである。
甲3発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」であるから、菜種ミール全体をハンマー粉砕し、ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られるという処理がなされたものと認められ、かつ、その粒度分布は不明である。そうすると、甲3発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。そして、甲3発明Aは、上記のとおり、ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミールを篩にかけることを前提とするものであるから、このような菜種ミールに代えて、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点K1に係る訂正発明1の構成は、甲3発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点K2について
篩の目開きにつき、甲3発明Aの「60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)」の目開きは、233μm(=0.0092インチ*0.0254メートル/1インチ)であり、訂正発明1の篩の目開き(32?48メッシュであるから目開き500μm?300μm)とは異なるものであるから、訂正発明1と甲3発明Aとでは目開きの異なる篩を用いるものである。そして、甲第3号証には、そもそも篩分けにより篩上の粗粒度菜種ミールを得ることは記載されていない。そうすると、甲3発明Aにおいて、訂正発明1の篩を用い、篩下の細粒度菜種ミールのみならず篩上の粗粒度菜種ミールも得ることの動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点K2に係る訂正発明1の構成は、甲3発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、訂正発明1は、甲3発明Aであるとはいえず、また、甲3発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)訂正発明2について
ア.訂正発明2と甲3発明Bとの対比
甲3発明Bの「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」と、訂正発明2の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲3発明Bの「60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)を通じて篩にかける」と、訂正発明2の「48?60メッシュの篩にかけて」とは、「篩分前の菜種ミールを篩にかける」点で共通する。
甲3発明Bの「篩下の菜種ミール細粒」は、蛋白質含量が41.6パーツであって所定の窒素含量を有しているといえるから、訂正発明2の「窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」とは、「所定の窒素含量の篩下の細粒度菜種ミール」の点で共通する。
よって、訂正発明2と甲3発明Bとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点L]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる、所定の窒素含量の篩下の細粒度菜種ミール。

[相違点L1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明2では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲3発明Bでは、「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」である点。

[相違点L2]
篩の種類、篩により分画された篩下画分の窒素含量が、
訂正発明2では、篩の種類が、48?60メッシュで、画分の窒素含量が、6.64%以上7.27%以下(含水)であるのに対し、
甲3発明Bでは、篩の種類が、60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)で、画分の窒素含量については、蛋白質は41.6パーツ含有されているが、窒素含量は明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点L1について
相違点L1は相違点K1と同じであり、相違点L1についての判断も相違点K1についての判断と同じである。
よって、相違点L1に係る訂正発明2の構成は、甲3発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点L2について
篩の目開きにつき、甲3発明Bの「60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)」の目開きは、233μm(=0.0092インチ*0.0254メートル/1インチ)であり、訂正発明2の篩の目開き(48?60メッシュであるから目開き300μm?250μm)とは異なるものであるから、訂正発明2と甲3発明Bとでは目開きの異なる篩を用いるものである。そして、甲第3号証には、そもそも篩分けにより所望の蛋白質含量の画分を得ることについては記載も示唆もない。そうすると、甲3発明Bにおいて、訂正発明2の篩を用い、訂正発明2所定の窒素含量の菜種ミールを得ることの動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点L2に係る訂正発明2の構成は、甲3発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、訂正発明2は、甲3発明Bであるとはいえず、また、甲3発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)訂正発明5について
ア.訂正発明5と甲3発明Aとの対比
上記(2)ア.における検討を踏まえ、訂正発明5と甲3発明Aを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点M]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて、篩下で所定の窒素含量の細粒度菜種ミールに分画する、細粒度菜種ミール画分を得る方法。

[相違点M1]
篩分けの対象である篩分前の篩分前の菜種ミールが、
訂正発明5では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲3発明Aでは、「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」である点。

[相違点M2]
篩の種類が、
訂正発明5では、「32?48メッシュのいずれか」であるのに対し、
甲3発明Aでは、60-60メッシュのワイヤー・スクリーン(0.0075インチワイヤ径、かつ0.0092インチ開口サイズ)である点。

[相違点M3]
菜種ミールの画分を得る方法が、
訂正発明5は、「粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法」であるのに対し、
甲3発明Aは、菜種ミールの窒素含量の調整方法であるか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点M1について
訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(6)イ.(ア)に示したとおりである。
これに対し、甲3発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、「ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミール」であるから、菜種ミール全体をハンマー粉砕し、ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られるという処理がなされたものと認められ、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。そして、甲3発明Aは、上記のとおり、ハンマー粉砕前に脱溶媒化され焙られた菜種ミールを篩にかけることを前提とするものであるから、このような菜種ミールに代えて、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点M1に係る訂正発明5の構成は、甲3発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点M2及び相違点M3について
上記(2)イ.(イ)で述べたのと同様に、甲3発明Aにおいて、訂正発明5の篩を用い、篩下の細粒度菜種ミールのみならず篩上の粗粒度菜種ミールも得ることの動機付けがあるとはいえない。さらに、上記(3)イ.(イ)で述べたのと同様に、甲3発明Aにおいて、訂正発明5の篩を用い、訂正発明5所定の窒素含量に調整した菜種ミールを得ることの動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点M2及び相違点M3に係る訂正発明5の構成は、甲3発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、訂正発明5は、甲3発明Aであるとはいえず、また、甲3発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

4.無効理由3のうちの甲4に基づく無効理由
(1)甲4の記載及び甲4に記載された発明
甲4には、以下の記載がある(請求人が提出した<甲第4号証の抄訳>に基づく訳文を示す。)。

「菜種ミール細粒(Saskatchewan Wheat Pool (Saskatoon, SK)から入手)は、従来の菜種ミールを60メッシュスクリーンで篩にかけることにより製造された。」(87頁18行?20行)

表3.15には、見出しに「代替蛋白質源として大豆ミール、脱皮されたエンドウ豆、空気?分類されたエンドウ豆蛋白質、又は菜種ミール細粒を使ったニジマスの成長比較のために使用された原料の栄養成分(n=4)」と記載され、同表より、菜種ミールの粗蛋白質量が388(gkg^(-1)DM)、菜種ミール細粒の粗蛋白質量が429(gkg^(-1)DM)であることが見てとれる。そして、脚注に、「原料の水分含量(gkg^(-1))は以下のとおり:・・・菜種ミール細粒(115)・・・」と記載されている。

したがって、甲4には、次の発明(以下「甲4発明A」という。)が記載されていると認められる。
「従来の菜種ミールを60メッシュスクリーンで篩にかけることによる、篩下の菜種ミール細粒で、栄養成分は粗蛋白含量429(gkg^(-1)DM)、菜種ミール細粒の水分含量115(gkg^(-1))の製造方法。」

また、甲4には、次の発明(以下「甲4発明B」という。)が記載されていると認められる。
「従来の菜種ミールを60メッシュスクリーンで篩にかけることにより製造された菜種ミール細粒で、栄養成分は粗蛋白含量429(gkg^(-1)DM)、菜種ミール細粒の水分含量115(gkg^(-1))。」

(2)訂正発明1について
ア.訂正発明1と甲4発明Aとの対比
甲4発明Aの「従来の菜種ミール」と、訂正発明1の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲4発明Aの「篩下の菜種ミール細粒」は、訂正発明1の「篩下の細粒度菜種ミール」に相当する。
よって、訂正発明1と甲4発明Aとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点N]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて、篩下の細粒度菜種ミールを分画する、菜種ミールの製造方法。

[相違点N1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明1では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲4発明Aでは、「従来の菜種ミール」である点。

[相違点N2]
用いる篩の種類、分画される画分の種類が、
訂正発明1では、篩の種類が、32?48メッシュのいずれかで、分画される画分は、篩下の細粒度菜種ミール及び篩上の粗粒度菜種ミールであるのに対し、
甲4発明Aでは、篩の種類が60メッシュスクリーンであり、分画される画分は、篩下の細粒度菜種ミールである点。

イ.判断
(ア)相違点N1について
訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(2)イ.(ア)に示したとおりである。
甲4発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、「従来の菜種ミール」というのみであり、その具体的な製造方法や粒度分布は不明である。
よって、甲4発明Aの菜種ミールに代えて、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点N1に係る訂正発明1の構成は、甲4発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点N2について
甲4には、60メッシュスクリーン以外の篩を用いることの記載はなく、篩分けにより篩上の粗粒度菜種ミールを得ることも記載されていない。そうすると、甲4発明Aにおいて、訂正発明1の篩を用い、篩下の細粒度菜種ミールのみならず篩上の粗粒度菜種ミールも得ることの動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点N2に係る訂正発明1の構成は、甲4発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、訂正発明1は、甲4発明Aであるとはいえず、また、甲4発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)訂正発明2について
ア.訂正発明2と甲4発明Bとの対比
甲4発明Bの「従来の菜種ミール」と、訂正発明2の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲4発明Bの「60メッシュスクリーン」は、訂正発明2の「48?60メッシュの篩」に相当する。
甲4発明Bの「菜種ミール細粒」は、60メッシュスクリーンを通過し、粗蛋白含量429(gkg^(-1)DM)であって所定の窒素含量を有しているといえるから、甲4発明Bの「菜種ミール細粒」と、訂正発明2の「窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」とは、「所定の窒素含量の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」の点で共通する。
よって、訂正発明2と甲4発明Bとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点O]
篩分前の菜種ミールを48?60メッシュの篩にかけて得られる、所定の窒素含量の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。

[相違点O1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明2では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲4発明Bでは、「従来の菜種ミール」である点。

[相違点O2]
所定の窒素含量が、
特許発明2は、6.64%以上7.27%以下(含水)であるのに対し、
甲4発明Bは、粗蛋白含量429(gkg^(-1)DM)、菜種ミール細粒の水分含量115(gkg^(-1))であるが、窒素含量は明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点O1について
相違点O1は相違点N1と同じであり、相違点O1についての判断も相違点N1についての判断と同じである。
よって、相違点O1に係る訂正発明2の構成は、甲4発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明2は、甲4発明Bであるとはいえず、また、甲4発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)訂正発明5について
ア.訂正発明5と甲4発明Aとの対比
上記(2)ア.における検討を踏まえ、訂正発明5と甲4発明Aを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点P]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて、篩下で所定の窒素含量の細粒度菜種ミールを分画する、細粒度菜種ミール画分を得る方法。

[相違点P1]
篩分けの対象である篩分前の篩分前の菜種ミールが、
訂正発明5では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲4発明Aでは、「従来の菜種ミール」である点。

[相違点P2]
篩の種類が、
訂正発明5では、「32?48メッシュのいずれか」であるのに対し、
甲4発明Aでは、60メッシュスクリーンである点。

[相違点P3]
菜種ミールの画分を得る方法が、
訂正発明5は、「粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法」であるのに対し、
甲4発明Aは、菜種ミールの窒素含量の調整方法であるか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点P3について
甲4には、用いる篩の目開きにより蛋白質含量を調整した菜種ミールを得ることについて記載されておらず、また本願出願当時の技術常識を勘案しても、示唆されているとすることはできない。
そうすると、甲4発明Aの細粒度菜種ミール画分を得る方法を、蛋白質含量さらには窒素含量を調整する方法とすることは、当業者が容易に想到し得たとは認められない。
よって、相違点P3に係る訂正発明5の構成は、甲4発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明5は、甲4発明Aであるとはいえず、また、甲4発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

5.無効理由3のうちの甲5に基づく無効理由
(1)甲5の記載及び甲5に記載された発明
甲5には、以下の記載がある(請求人が提出した<甲第5号証の抄訳>に基づく訳文を示す。)。

「菜種ミールを16%水分に調節し、8インチディスクミルを用いて粉砕した。(略)粉砕されたミールは、次に、部分的に脱皮された繊維低含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約40%)と、高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約60%)を得るために、35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーンを使用して篩にかけられた。10個のサンプル(通常菜種ミールサンプル5個、低繊維菜種ミールサンプル5個)に加え、1個の高繊維菜種ミールサンプルを評価した。後者は、5個の菜種ミールサンプルそれぞれを機械的脱皮して得られた5個の高繊維画分の混合物(等量ベースで混合)である。」(642頁右欄7行?19行)

「表1.普通の菜種ミールサンプル、機械的に後処理で脱皮された菜種ミールサンプル、高繊維菜種ミール及び大麦の化学組成(%)

^(y)普通の菜種ミール、
^(x)部分的に機械的に後処理で脱皮された菜種ミール、
^(w)高繊維菜種ミール」(644頁表1抜粋)

「機械的脱皮は、菜種ミールサンプルの総エネルギーに大きな影響を与えなかった(表1)。しかし、部分的に機械的脱皮されたものは、明らかに粗蛋白質含量を、平均しておよそ7.9%(40.6vs43.8%;表1)増加させた。」(644頁右欄19行?22行)

上記記載によれば、甲5には、「繊維低含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約40%)」と、「高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約60%)」を製造する方法が記載されているといえ、甲1、甲2の記載を参酌すれば、前者が篩下、後者が篩上の菜種ミールであるといえる。

したがって、甲5には、次の発明(以下「甲5発明A」という。)が記載されていると認められる。
「粉砕されたミールを35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーンを使用して篩にかけることによる、篩下の繊維低含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約40%)と、篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約60%)の製造方法。」

また、甲5には、次の発明(以下「甲5発明B」という。)が記載されていると認められる。
「粉砕されたミールを35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーンを使用して篩にかけることによって得られた、篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約60%)。」


(2)訂正発明1について
ア.訂正発明1と甲5発明Aとの対比
甲5発明Aの「粉砕されたミール」と、訂正発明1の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲5発明Aの「35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーン」は、参考資料1、乙5によれば、目開き500μmの篩であるから、訂正発明1の「32メッシュ篩」に相当する。
甲5発明Aの「篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約60%)」は、訂正発明1の「粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール」に相当し、同じく、「篩下の繊維低含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約40%)」は、「粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミール」に相当する。
よって、訂正発明1と甲5発明Aとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点Q]
篩分前の菜種ミールを32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの製造方法。

[相違点Q1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明1では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲5発明Aでは、「粉砕されたミール」である点。

イ.判断
訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(2)イ.(ア)に示したとおりである。
甲5発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、「粉砕されたミール」であるから、菜種ミール全体を粉砕したものと認められ、かつ、その粒度分布は不明である。そうすると、甲5発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。そして、甲5発明Aは、上記のとおり、粉砕されたミールを篩にかけることを前提とするものであるから、このような菜種ミールに代えて、訂正発明1の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点Q1に係る訂正発明1の構成は、甲5発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、訂正発明1は、甲5発明Aであるとはいえず、また、甲5発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)訂正発明3について
ア.訂正発明3と甲5発明Bとの対比
甲5発明Bの「粉砕されたミール」と、訂正発明3の「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」とは、「篩分前の菜種ミール」である点で共通する。
甲5発明Bの「篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール(オリジナルサンプルの約60%)」と、訂正発明3の「35?48メッシュ以下の画分を含まない」菜種ミールとは、「篩にかけて得られる、篩上の粗粒度菜種ミール」である点で共通する。
よって、訂正発明3と甲5発明Bとの一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点R]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる、篩上の粗粒度菜種ミール。

[相違点R1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明3では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」であるのに対し、
甲5発明Bでは、「粉砕されたミール」である点。

[相違点R2]
用いる篩の種類が、
訂正発明3では、35?48メッシュの篩のいずれかであるのに対し、
甲5発明Bでは、「35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーン」で目開き500μmである点。

[相違点R3]
篩上の粗粒度菜種ミールが、
訂正発明3では、「35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された」ものであるのに対し、
甲5発明Bでは、苦みの改善されたものか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点R1について
甲5発明Bの篩分けの対象である菜種ミールは、「粉砕されたミール」であるから、菜種ミール全体を粉砕したものと認められ、かつ、その粒度分布は不明である。そうすると、甲5発明Bの篩分けの対象である菜種ミールは、訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。そして、甲5発明Bは、上記のとおり、粉砕されたミールを篩にかけることを前提とするものであるから、このような菜種ミールに代えて、訂正発明3の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点R1に係る訂正発明1の構成は、甲5発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点R2について
甲5発明Bは、篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミールを得ることを目的とするものであるから、「35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーン」(目開き500μm)に代えて、目開きがより細かく、篩上の菜種ミールに低い外皮及び低い繊維含量の粒径の小さな菜種ミールも混入してしまう、訂正発明3の35?48メッシュ(目開き425μm?300μm)の篩を適用しようという動機付けはない。
よって、相違点R2に係る訂正発明3の構成は、甲5発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)相違点R3について
甲5発明Bの「篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール」の、篩分前の菜種ミールの粗蛋白質含量に対する調整倍率について、甲第5号証の表1より、高繊維菜種ミール(HF^(w))は、5個の菜種ミールサンプルを機械的脱皮して得られた5個の高繊維画分の等量ベースでの混合物で、その粗蛋白質含量は40.4%であり、窒素含量に換算すると40.4%/6.25であるから、高繊維菜種ミール(HF^(w))の窒素含量の篩分前菜種ミール(R)サンプル5個の平均の窒素含量に対する調整倍率を計算すると、(40.4%/6.25)/(40.6%/6.25)=0.995倍であり、粗蛋白質含量はあまり変わらないといえる。
そうすると、蛋白質に結合する性質のある苦み成分のタンニンの含量もあまり変わらないといえ、甲5発明Bの「篩上の高い外皮及び高い繊維含量の菜種ミール」は、篩分前の菜種ミールに比べて苦みが改善されているとはいえない。
よって、相違点R3に係る訂正発明3の構成は、甲5発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(エ)小括
したがって、訂正発明3は、甲5発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)訂正発明4について
ア.訂正発明4と甲5発明Bとの対比
上記(3)ア.における検討を踏まえ、訂正発明4と甲5発明Bを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点S]
篩分前の菜種ミールを篩にかけて得られる、篩上の粗粒度菜種ミール。

[相違点S1]
篩分けの対象である篩分前の菜種ミールが、
訂正発明4では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲5発明Bでは、「粉砕されたミール」である点。

[相違点S2]
用いる篩の種類が、
訂正発明4では、35?48メッシュの篩のいずれかであるのに対し、
甲5発明Bでは、「35メッシュ(USA Sieve Series)スクリーン」で目開き500μmである点。

[相違点S3]
篩上の粗粒度菜種ミールが、
訂正発明4では、「窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された」ものであるのに対し、
甲5発明Bでは、窒素含量がそのように特定されておらず、苦みの改善されたものか明らかでない点。

イ.判断
相違点S1についての判断は相違点Q1についての判断と同じであり、相違点S2についての判断は相違点R2についての判断と同じであり、相違点S3についての判断は相違点R3についての判断と同じである。
よって、相違点S1ないしS3に係る訂正発明4の構成は、いずれも甲5発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、訂正発明4は、甲5発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)訂正発明5について
ア.訂正発明5と甲5発明Aとの対比
上記(2)ア.における検討を踏まえ、訂正発明5と甲4発明Aを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点T]
篩分前の菜種ミールを32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上で所定の窒素含量の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で所定の窒素含量の細粒度菜種ミールとに分画する、菜種ミール画分を得る方法。

[相違点T1]
篩分けの対象である篩分前の篩分前の菜種ミールが、
訂正発明5では、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま」であるのに対し、
甲5発明Aでは、「粉砕されたミール」である点。

[相違点T2]
菜種ミールの画分を得る方法が、
訂正発明5は、「粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法」であるのに対し、
甲5発明Aは、菜種ミールの窒素含量の調整方法であるか明らかでない点。

イ.判断
(ア)相違点T1について
訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕の解釈については、前記1.(6)イ.(ア)に示したとおりである。
甲5発明Aの篩分けの対象である菜種ミールは、「粉砕されたミール」であるから、菜種ミール全体を粉砕したものと認められ、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕とは、物として異なるものである。そして、甲5発明Aは、上記のとおり、粉砕されたミールを篩にかけることを前提とするものであるから、このような菜種ミールに代えて、訂正発明5の篩分けの対象である菜種粕を用いる動機付けがあるとはいえない。
よって、相違点T1に係る訂正発明5の構成は、甲5発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)相違点T2について
甲5には、篩分けにより所望の蛋白質含量又は繊維含量の画分を得ることや、用いる篩の目開きにより蛋白質含量又は繊維含量を調整することについて、記載がなく、また本願出願当時の技術常識を勘案しても、示唆されているとすることはできない。
そうすると、甲5発明Aの細粒度菜種ミール画分を得る方法を、蛋白質含量を調整する方法とすることも、当業者が容易に想到し得たとは認められない。
よって、相違点T2に係る訂正発明5の構成は、甲5発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、訂正発明5は、甲5発明Aであるとはいえず、また、甲5発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

6.無効理由4
(1)請求項3及び請求項4の「苦みの改善された」について、本件訂正後の請求項3に、「35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された」と記載され、同請求項4に「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕・・・前記菜種粕に比べて苦みの改善された」と記載されており、何と比較して苦みが改善されたのかは明確である。
また、請求項3の「35?48メッシュ以下の画分を含まない」菜種ミールとは、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」を35?48メッシュのいずれかの篩にかけ、該篩下の画分を含まない、すなわち該篩上の画分の菜種ミールを意味することは明らかである。
よって、訂正発明3及び訂正発明4は明確であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

また、請求項3は「35?48メッシュ以下の画分を含まない」とのみ記載するものではなく、篩分けの対象である菜種粕について、「菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕」であることが特定されている。そして、上記篩分けの対象である菜種粕を35?48メッシュのいずれかの篩にかけることにより、該篩上の画分の菜種ミールとして、苦みの改善された粗粒度菜種ミールが得られたことが発明の詳細な説明に記載されている。
よって、訂正発明3は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

7.無効理由5
請求人は、特許請求の範囲の「そのまま」との記載は、「ガム質(油滓)添加」を含むのか否かが不明瞭であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨を主張する(平成26年7月9日付け上申書10ページ12行?15行)。
しかし、前判決で、「「そのまま・・・篩にかけて」とは、訂正事項1所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施すことなく、上記所定の粒度分布を持つ2段階搾油菜種粕そのものを篩にかけることを意味するものであることは明らかであり、「そのまま」の技術的意義が不明であるとの被告の主張は理由がない。」と判示され、該判決は当合議体を拘束する。上記請求人の主張は、前判決の拘束力に反するものであって、採用できない。
よって、「そのまま」の意味は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

また、請求人は、発明の詳細な説明に記載された実施例は、「ガム質(油滓)添加」処理を行っていると推察されるから、「そのまま・・・篩にかけて」に該当しないので、訂正発明1ないし5は、実施例によってサポートされていない旨を主張する(平成26年7月9日付け上申書8ページ6行?10ページ11行)。
しかしながら、発明の詳細な説明の実施例(【0030】(実施例1)、【0043】(実施例2)、【0045】(実施例3))のいずれについても、篩分けの対象が、所定の粒度分布の2段階搾油菜種粕に、さらに機械粉砕など何らかの処理を施したものであることを示す記載はない。
よって、上記実施例は、「そのまま・・・篩にかけて」に該当するものであって、訂正発明1ないし5は発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

さらに請求人は、実施例において整粒工程を行わない2段階搾油菜種粕を使用しているとすれば、「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%」を得ることができないから、特許法第36条4項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張する(平成24年12月3日付け審判事件弁駁書28ページ7行?13行)。
しかし、実施例1の篩分けの対象である菜種粕について、「菜種粕((株)J-オイルミルズ製)」(【0030】)と記載されており、(株)J-オイルミルズより入手可能な菜種粕により「32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%」である菜種粕を得ることができるといえる。
よって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条4項第1号に規定する要件を満たしている。

第7 結び
以上のとおり、請求人が主張する無効理由及び提出した証拠によっては訂正発明1ないし5についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
菜種ミールの製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、菜種ミールの製造方法に関し、より詳細には、産業的利用価値の高い菜種ミールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菜種から油分を搾り取った後に残る菜種粕は、現在、菜種ミールとして飼料や肥料用途へ利用されている。しかし、菜種ミールは、大豆ミールと比べると、蛋白質含量が低い、栄養価が低い、動物の嗜好性が悪い、色が悪いなどの点で劣っている。この原因は、菜種ミールが繊維質や苦味物質を多く含み、蛋白質分が比較的少ないことにある。
【0003】
菜種ミールに含まれる窒素分やミネラルは、栄養源として飼肥料用途に重要な成分であるが、その含有量は菜種種子そのものの組成に影響され、収穫時期や品種によってばらつきが生じる。栄養分が低い菜種から得られる菜種ミールは、製品規格値を下回るリスクが増す。逆に、栄養分が高い場合、飼肥料として利用した際に有効量よりも過剰となり、環境負荷物質の排出量が増加する要因となってしまう。
【0004】
菜種ミールの持つ栄養分の量をコントロールする方法として、加熱の度合いによって水分を調節する方法がある。しかし、菜種ミールは、水分が高くなく、調整幅が狭い。したがって、加熱は根本的な解決法となっていない。
【0005】
菜種ミール中の蛋白質分を調整する施策として、Ileal apparent protein and amino acid digestibilities and endogenous nitrogen losses in pigs fed soybean and rapeseed products (W.Grala,et.al.Journal of Animal Science,1998,76,557-568、非特許文献1)やNitrogen utilization in pigs fed diets with soybean and rapeseed products leading to different ileal endogenous nitrogen losses (W.Grala,et.al.Journal of Animal Science,1998,76,569-577、非特許文献2)では、菜種を脱皮してから搾油した際の菜種ミールの栄養価が評価されている。
【0006】
特開2000-316472(菜種胚芽の分離方法及び菜種胚芽油脂、特許文献1)には、菜種胚芽を機械的に砕き、風力分級機や篩によって菜種胚芽のみを得る方法が記載されている。また、国際公開WO2000/027222(油糧種子又は穀類の特定組織の分級法、及び微細粉化物、特許文献2)には、菜種種子などの油糧種子の特定組織を分級する方法が記載されている。
【非特許文献1】Journal of Animal Science,1998,76,557-568
【非特許文献2】Journal of Animal Science,1998,76,569-577
【特許文献1】特開2000-316472
【特許文献2】国際公開WO2000/027222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1および2のように粒径の小さい菜種を脱皮してから搾油する方法は、高コストになりやすく、産業的利用に向いていない。
【0008】
特許文献1の方法により菜種胚芽を分離した後、菜種ミールに利用しようとすると、菜種胚芽画分とそれ以外の画分とを別々に搾油する必要がある。したがって、抽出機、原料保管用サイロなどの設備が通常の2倍必要となり、作業の手間も増える。
【0009】
特許文献2の方法は、食品としての舌触り、保水性、懸濁保持性などの改善が図られるものの、高蛋白質含量の菜種ミールは得られない。
【0010】
このように、従来の方法は、菜種ミールの栄養調整のために産業的利用可能な技術とは言い難い。そこで、本発明の目的は、菜種粕から蛋白質を代表とした栄養価を調節した菜種ミールを簡便かつ安価に製造する方法であって、しかも廃棄部分の少ないかあるいは全く出ない製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、意外にも以下の発明によれば上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの製造方法を提供するものである。本明細書では、32?60メッシュのいずれかの篩にかけた際に篩上と篩下とに得られる二種類の菜種ミールを区別するために、篩上の粒度の比較的大きい菜種ミールを粗粒度菜種ミールといい、篩下の粒度の比較的小さい菜種ミールを細粒度菜種ミールという。なお、本明細書では、Tyler標準篩を採用する。
【0013】
本発明は、また、菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま48?60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールを提供する。
【0014】
本発明は、また、菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕の35?48メッシュ以下の画分を含まない、35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された菜種ミールを提供する。該菜種ミールは、菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られ、窒素含4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールであることが好ましい。
【0015】
本発明は、また、菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、搾油後の菜種粕を篩うという簡便かつ安価な操作で、細粒度菜種ミールと粗粒度菜種ミールという粒度の揃った二種類の菜種ミールを製造することができる。
【0017】
32?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールは、蛋白質含量が高い。しかも、飼料としての利用価値の高い特定のアミノ酸を通常の菜種ミールよりも高い比率で含有するので栄養価も優れる。細粒度菜種ミールは、色目も改善される。さらに、48?60メッシュ篩下のより細粒度の菜種ミールは、窒素含量6.64%以上7.27%以下のより高蛋白質含量の菜種ミールとなる。
【0018】
一方、32?60メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールは、栄養価を維持しながら、嗜好性、特に苦味が改善される。これは、苦味物質が除去されるとともに、残存する苦味物質が搾油時に造粒されてマスキングされたと考えられる。このようなものは、菜種の皮と子実部を分離した後に搾油する従来方法では得られない。本発明の製造方法によれば、従来は苦味物質のために製品価値が低かったものを、良質の製品に転換することができる。さらに、過剰な窒素分が調整されることで、飼肥料として利用した際の環境負荷が軽減される。このように、得られる二種類の菜種ミールの産業上利用性は非常に高く、捨てる部分が少ないか全くない。したがって、本発明の製造方法は、廃棄物を出さない点でも環境に優しい方法といえる。
【0019】
本発明の菜種粕を32?60メッシュのいずれかの篩にかけることからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法によれば、菜種ミールの窒素含量の移行が任意に調整可能である。これは、収穫時期や品種に応じて、窒素含量および栄養価の低い原料菜種粕を得た場合に、窒素含量および栄養価を高めるのに有用である。また、窒素含量および栄養価が高い原料菜種粕を得た場合に、窒素含量を適正量に調整した菜種ミールおよびそれを配合した飼肥料を調製することで、環境負荷物質を発生させないようにするのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、発明の菜種ミールの製造方法の一実施の形態を説明する。本発明の製造方法の原料として用いる菜種粕は、菜種から搾油した残渣を意味する。菜種の品種は特に限定されず、すべての菜種を用いることができる。好ましくは、エルカ酸やグルコシノレートが低減された品種であり、キャノーラ種が例示される。
【0021】
菜種からの搾油は、通常、2工程に分かれている。まず、菜種を圧搾機により搾油し、続いて、圧搾粕に残された油分をn-ヘキサンなどの有機溶剤を用いて抽出し、上記圧搾油と抽出油を合わせて精製する。2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は、搾油工程で一部が造粒されることにより、特徴のある粒度分布を持つようになる。これを篩で篩うことで、画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができる。
【0022】
上記菜種粕を32?60メッシュ、好ましくは35?60メッシュ、さらに好ましくは35?48メッシュ、特に好ましくは35?42メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画する。これにより、篩上と篩下とで菜種ミールの性状が異なるものが得られる。なお、本発明は、上記の篩が含まれる限り、複数の篩を使用することを妨げるものではない。本発明は、また、分画して得られた粗粒度菜種ミールをさらに分級し、また、分画して得られた細粒度菜種ミールをさらに分級することを妨げるものではない。したがって、これらの分級物も本発明に含まれる。
【0023】
具体的には、32?60メッシュの篩下には窒素含量6%以上で、蛋白含量37.50%以上の栄養価の優れた細粒度菜種ミールが選別される。細粒度菜種ミールは、消化率が向上する。細粒度菜種ミールは、色目が薄くて、飼料原料として好適である。
【0024】
さらに48?60メッシュ篩下に限定された細粒度菜種ミールは、原料となる菜種粕の窒素含量が5.8%以上のときに窒素含量7%以上で蛋白含量43.75%以上、原料となる菜種粕の窒素含量が5.8%以下のときでも窒素含量6.5%以上で蛋白含量40.625%以上となり、原料菜種粕に対して窒素含量及び蛋白含量を平均して約1.2倍高めることができる。
【0025】
上記特性を有する細粒度菜種ミールは、通常の菜種ミールよりも蛋白質などの栄養価が高いために、飼肥料としての添加量が少なくてすむほか、豚、牛、鳥、魚の飼養効率の改善に有効である。
【0026】
一方、32?60メッシュ篩上には、細粒度菜種ミールほど窒素含量および蛋白質含量が高くは無いが、栄養価が維持されつつも、過剰となることがない粗粒度菜種ミールが選別される。通常の菜種ミールにおける蛋白質含量は、収穫時期や品種でばらつきが見られるが、本発明の範囲内で篩のメッシュを調節することで、細粒度菜種ミールへの窒素含量や蛋白質の移行量を調節することができる。
【0027】
粗粒度菜種ミールは、タンニンのような苦味物質の含有量が篩分け無しの通常品よりやや低い。さらに、粗粒度菜種ミールは、搾油時に苦味物質が種皮と混ざって粒状となるため、苦味物質が含まれていても、その含量から予想されるほど苦くはなくなる。この種皮と混ざって粒状となった部分は粗粒度菜種ミール中において栄養価が比較的高く、この部分の存在が粗粒度菜種ミールの栄養価の維持に役立つ。苦味の低減と高栄養価は、家畜の嗜好性を改善し、家畜の成長促進につながる。
【0028】
粗粒度菜種ミールは、種皮が比較的多く含まれるため繊維質分が高くなる。これは、繊維分が必要とされる牛などの飼料や、土壌改良剤用として好ましい。グルコシノレートは通常品より低減される。グルコシノレートは、畜産動物に対して有害であるので、本発明の製造方法により低グルコシノレートの菜種ミールが得られることは有益である。上記特性を有する粗粒度菜種ミールは、主に、鶏、牛、豚、魚の嗜好性の改善に有効であり、また、一般に環境負荷の少ない飼肥料原料となる。
【0029】
本発明は、また、菜種粕を32?60メッシュ、好ましくは35?60メッシュ、さらに好ましくは35?48メッシュ、さらに好ましくは35?42メッシュのいずれかの篩にかけることからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法を提供する。この方法によれば、窒素含量は、4.5?7.5%の間で任意の適当な値に調整される。本調整方法の使用例は、以下の二通りである。まず、菜種の収穫時期や品種に応じて、菜種粕の窒素含量が高く、環境負荷が高すぎる場合、本調整方法によって上記メッシュ篩上に得られる画分を採用することにより、窒素含量が低く調整された環境負荷の低い飼肥料が得られる。次に、菜種粕の窒素含量が低く、栄養価が低すぎる場合、本調整方法によって上記メッシュ篩下に得られる画分を採用することにより、窒素含量の高く調整された栄養価の高い飼肥料が得られる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例および比較例を用いて、本発明をより詳細に説明する。しかし、実施例の内容が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕
上から順に12メッシュ(目開き1.4mm、以下、メッシュをMということがある)、20M(目開き850μm)、32M(目開き500μm)、35M(目開き425μm)、48M(目開き300μm)および60M(目開き250μm)の篩を積み上げ、その最上部に菜種粕((株)J-オイルミルズ製)を500g載せ、手作業にて10分間篩分けした。
【0031】
篩分けの結果を観察すると、12メッシュ上には、皮と子葉および胚軸部とが一度はがれた後に造粒されたものが大部分を占めた。12メッシュ以下では、造粒物が減少した。20?32メッシュでは、皮部分が最も多くなった。菜種ミール通常品(篩分け無し)、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールを粉砕機により粉砕し、色差計(製品名:カラーリーダーCR-10、コニカミノルタ(株)製)を用いて色目評価を行った。図1に菜種ミールの色調の測定結果を示す。特に35メッシュ下の画分において、白色および黄色が強く、明るい色調となっていた。
【0032】
篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その際、水分は、飼料分析基準の加熱乾燥法、N分は基準油脂分析試験法のケルダール法、そして、油分は基準油脂分析試験法のエーテル抽出法により求めた。蛋白分は、測定されたN分に蛋白質換算係数6.25を乗じて求めた。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示すとおり、12?35メッシュ篩上を合わせた粗粒度菜種ミールと、48メッシュ篩上?60メッシュ篩下を合わせた細粒度菜種ミールとの間には、窒素含量と蛋白質含量に有意差が見られた。特に、48メッシュ下の画分は、N分7%を超える高蛋白質菜種ミールとなった。
【0035】
菜種ミール通常品、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールのアミノ酸分析を行った。その結果を図2に示す。細粒度菜種ミールのアミノ酸組成では、とりわけ筋力増強に役立つアルギニン、メチオニン、トリプトファンおよびグルタミン酸の割合が、単純なN分の増加よりもさらに2?4%程度増加していることがわかった。Distribution of Napin and Cruciferin in Developing Rape Seed Embryos (Hoglund et al.,Plant Physiol.1992,98,509-515)によれば、菜種における主要な蛋白質は、クルシフェリン、ナピンといった貯蔵蛋白質であり、その他の蛋白質も含め、種子、胚軸および子葉において偏りが無いとされている。したがって、本発明の製造方法により得られる細粒度菜種ミールのアミノ酸組成が通常品と異なることは意外なことである。
【0036】
表1に示した菜種ミール通常品、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールのタンニン、グルコシノレート、繊維質、水溶性窒素指数(NSI)の分析を行った。タンニンは、Folin-Denis法に従うタンニン酸としての量で示す。グルコシノレートは、HPLCによるAOCS公定法により、繊維質およびNSIは、基準油脂分析試験法の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
粗粒度菜種ミールは、苦味物質であるタンニンの量が通常品よりも若干下がっており、繊維質は若干高めになり、NSIは若干低めの数値となった。反対に、細粒度菜種ミールでは対照的な数値となった。グルコシノレートについては、粗粒度菜種ミールで特に減っており、粗粒度菜種ミール、細粒度菜種ミールともに、飼料原料として問題になるレベルの量では無いことが確認された。
【0039】
菜種ミール通常品、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールについて、4人のパネラーによる味覚テストを行った。評価基準は、表3の香ばしさ、苦味、甘味および好ましさの4項目を採用した。いずれの項目も、得点が高いほど、好ましい傾向を示す。
【表3】

【0040】
パネラー評価結果の平均値を表4に示す。
【表4】

今回の試験で用いた粗粒度菜種ミールにおいて細粒度菜種ミールの混入は5%以下であった。すなわち、嗜好性の高いミールは、32?60メッシュ篩下が5%以下であるといえた。
【0041】
家畜の嗜好性は、香ばしく、甘味があるものに対して高く、反対に苦い物に対しては低くなる。そして、家畜が美味しいと感じる物は、基本的にはヒトが好む物と同様の傾向を持つと考えられている。今回の試験結果から、粒度が細かい画分は、通常品と比較して苦味が強く、総合得点も低く、一方、粒度が粗い画分は、苦味が少なく、総合的に優れていた。また、粗粒度菜種ミールと細粒度菜種ミールの境界を48メッシュの篩で行った際にも同様の傾向となった。
【0042】
粗粒度菜種ミールの評価は、表2に示すタンニン低下量からの予測を超えるものであった。搾油過程で菜種ミールが造粒されることで、残存する苦味物質がマスキングされたためと考えられ、このようなものは脱皮してから搾油した菜種ミールからでは得ることができない。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1の菜種粕とは異なる場所で製造された菜種粕を用いて、実施例1と同様の操作で菜種ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を、表5に示す。
【0044】
【表5】

実施例1と同様に、35メッシュ篩上と35メッシュ篩下とで、窒素含量および蛋白質含量に有意差が見られた。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1および実施例2の菜種粕とは異なる場所で製造された菜種粕を用いて、実施例1と同様の操作で菜種ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を表6に示す。
【0046】
【表6】

実施例1と同様に、35メッシュ篩上と35メッシュ篩下とで、窒素含量および蛋白質含量に有意差が見られた。
【0047】
〔実施例4〕
産地や製造工場の異なる原料菜種粕23検体について、それぞれ実施例1と同様の操作で菜種ミールを製造し、篩分けされた画分の窒素含量(N分)を測定した。そして菜種粕のN分が篩分けで増減する割合について計算し、粗粒度菜種ミールと細粒度菜種ミールの境界点によるN分の移行を確認した(表7)。
【0048】
【表7】

【0049】
今回用いた23検体の原料菜種粕は、産地、製造工場などによって窒素含量がばらつき、最低で5.63%、最高で6.15%であった。篩分けをした各画分においては、どのような菜種粕を用いた際にもN分が確実に移行しており、原料によらず、N分が特定の比率で精度良く調整されていた。本方法により、菜種ミールは窒素含量5.627±0.177?7.129±0.142%、原料菜種粕の約0.95?1.20倍の間で任意に調節されていた。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1の菜種粕に変えて、脱脂大豆((株)J-オイルミルズ製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で大豆ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を表8に示す。
【0051】
【表8】

脱脂大豆を篩分けしても、表8に示すとおり、画分の違いによる窒素含量および蛋白質含量に偏りは見られなかった。
【0052】
〔比較例2〕
実施例1の菜種粕に変えて、ハイプロ脱脂大豆((株)J-オイルミルズ製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で大豆ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を表9に示す。
【0053】
【表9】

ハイプロ脱脂大豆を篩分けしても、表9に示すとおり、画分の違いによる窒素含量および蛋白質含量に偏りは見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に従う粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミール、ならびに従来の菜種ミール通常品の色の評価を示すグラフである。
【図2】本発明に従う粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミール、ならびに従来の菜種ミール通常品のアミノ酸分析の結果を示すグラフである。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの製造方法。
【請求項2】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま48?60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.64%以上7.27%以下の粒径48?60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。
【請求項3】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕の35?48メッシュ以下の画分を含まない、35?48メッシュ以下の画分を含む菜種ミールよりも苦みの改善された菜種ミール。
【請求項4】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕であって、32メッシュ篩下の含量が38.8?55.6%である前記菜種粕をそのまま35?48メッシュのいずれかの篩にかけて得られ、窒素含量4.90%以上5.80%以下であり、かつ前記菜種粕に比べて苦みの改善された粒径35?48メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。
【請求項5】
菜種を圧搾機により搾油し、続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用いて抽出して得られる菜種粕をそのまま32?48メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上で窒素含量を前記菜種粕の窒素含量に対して0.95?0.986倍に調整する粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下で窒素含量が前記菜種粕の窒素含量に対して1.125?1.199倍に調整する細粒度菜種ミールとに分画することからなる、菜種ミールの窒素含量の調整方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-09-03 
結審通知日 2014-09-08 
審決日 2014-09-25 
出願番号 特願2007-13358(P2007-13358)
審決分類 P 1 113・ 841- YA (A23K)
P 1 113・ 536- YA (A23K)
P 1 113・ 85- YA (A23K)
P 1 113・ 121- YA (A23K)
P 1 113・ 537- YA (A23K)
P 1 113・ 113- YA (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 茜  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 紀本 孝
千壽 哲郎
登録日 2007-06-15 
登録番号 特許第3970917号(P3970917)
発明の名称 菜種ミールの製造方法  
代理人 中嶋 伸介  
代理人 中嶋 伸介  
代理人 岩永 勇二  
代理人 平田 忠雄  

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