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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C25D |
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管理番号 | 1295162 |
審判番号 | 不服2014-4091 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-03 |
確定日 | 2015-01-06 |
事件の表示 | 特願2008- 11372「基板処理装置用の部品及び皮膜形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日出願公開、特開2009-173965、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年1月22日の出願であって、平成25年3月4日付けの拒絶理由通知に対して、同年5月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年3月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成26年3月3日付け手続補正の適否 1 補正の内容 平成26年3月3日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という)は、平成25年5月13日に提出された手続補正書により補正された本件補正の前(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし7を補正して、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4とするものであり、本件補正前の請求項1ないし7と本件補正後の請求項1ないし4は、それぞれ以下のとおりである(当審注:下線は審判請求人が補正箇所を示したものである。)。 (本件補正前) 「【請求項1】 プラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、 アルミニウムを主成分とする基材と、 前記基材を有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成されたアルマイト皮膜とを備え、 前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸させ、前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させることを特徴とする基板処理装置用の部品。 【請求項2】 前記アルミニウムを主成分とする基材はシリコンを含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置用の部品。 【請求項3】 前記アルマイト被膜には封孔処理が施されず、開口通路が確保されることを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置用の部品。 【請求項4】 前記シリコンの含有質量%が0.4以上且つ0.8以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置用の部品。 【請求項5】 前記有機酸を主成分とする溶液はシュウ酸含有溶液であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置用の部品。 【請求項6】 前記基板処理装置用の部品はクーリングプレートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置用の部品。 【請求項7】 プラズマ処理を施す基板処理装置用の部品へアルマイト皮膜を形成する皮膜形成方法において、 アルミニウムを主成分とする基材を準備し、 前記基材を有機酸を主成分とする溶液中に浸漬して陽極酸化し、 前記陽極酸化によって前記基材の表面にアルマイト皮膜を形成し、 前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸し、 前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させることを特徴とする皮膜形成方法。」 (本件補正後) 「【請求項1】 基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、 アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材と、 前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成され、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜とを備え、 前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、 前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸させ、前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させることを特徴とする基板処理装置用の部品。 【請求項2】 前記合金におけるシリコンの含有質量%が0.4以上且つ0.8以下であることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置用の部品。 【請求項3】 前記基板処理装置用の部品はクーリングプレートであり、該クーリングプレートは複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置用の部品。 【請求項4】 基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品へアルマイト皮膜を形成する皮膜形成方法において、 アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材を準備し、 前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬して陽極酸化し、 前記陽極酸化によって前記基材の表面に、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜を形成し、 前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸し、 前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させ、 前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであることを特徴とする皮膜形成方法。」 2 補正事項の整理 本件補正による補正事項を整理すると、以下のとおりである。 (1) 補正事項1 補正前の請求項1の「プラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」を「基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」と補正すること。 (2) 補正事項2 補正前の請求項1の「アルミニウムを主成分とする基材」を、「アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材」と補正すること。 (3) 補正事項3 補正前の請求項1の「有機酸を主成分とする溶液」を、「シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液」と補正すること。 (4) 補正事項4 補正前の請求項1の「アルマイト皮膜」について、「前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜」と補正すること。 (5) 補正事項5 補正前の請求項1の「アルマイト皮膜」について、「前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、」と補正すること。 (6) 補正事項6 補正前の請求項2、3及び5を削除するとともに、補正前の請求項4、6、7を、それぞれ、補正後の請求項2、3、4に繰り上げること。 (7) 補正事項7 補正前の請求項4の「前記シリコンの含有質量%」を、「前記合金におけるシリコンの含有質量%」と補正すること。 (8) 補正事項8 補正前の請求項6の「前記基板処理装置用の部品はクーリングプレートであること」を、「前記基板処理装置用の部品はクーリングプレートであり、該クーリングプレートは複数の貫通孔を有すること」と補正すること。 (9) 補正事項9 補正前の請求項7の「プラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」を「基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」と補正すること。 (10) 補正事項10 補正前の請求項7の「アルミニウムを主成分とする基材」を、「アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材」と補正すること。 (11) 補正事項11 補正前の請求項7の「有機酸を主成分とする溶液」を、「シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液」と補正すること。 (12) 補正事項12 補正前の請求項7の「アルマイト皮膜」について、「前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜」と補正すること。 (13) 補正事項13 補正前の請求項7の「アルマイト皮膜」について、「前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、」と補正すること。 (14) 補正事項14 補正前の明細書段落【0009】、【0010】及び【0018】を削除すること。 (15) 補正事項15 補正前の明細書段落【0008】を「上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置用の部品は、基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材と、前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成され、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜とを備え、前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸させ、前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させることを特徴とする。」と補正すること。 (16) 補正事項16 補正前の明細書段落【0011】を「請求項2記載の基板処理装置用の部品は、請求項1記載の基板処理装置用の部品において、前記合金における前記シリコンの含有質量%が0.4以上且つ0.8以下であることを特徴とする。」と補正すること。 (17) 補正事項17 補正前の明細書段落【0014】を「請求項3記載の基板処理装置用の部品は、請求項1又は2記載の基板処理装置用の部品において、前記基板処理装置用の部品はクーリングプレートであり、該クーリングプレートは複数の貫通孔を有することを特徴とする。」と補正すること。 (18) 補正事項18 補正前の明細書段落【0015】を「上記目的を達成するために、請求項4記載の皮膜形成方法は、基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品へアルマイト皮膜を形成する皮膜形成方法において、アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材を準備し、前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬して陽極酸化し、前記陽極酸化によって前記基材の表面に、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜を形成し、前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸し、前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させ、前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであることを特徴とする。」と補正すること。 (19) 補正事項19 補正前の明細書段落【0016】を、「本発明によれば、アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材と、基材を有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって基材の表面に形成されたアルマイト皮膜とを備え、アルマイト皮膜にはエチルシリケートが含浸されている。基材が有機酸を主成分とする溶液中に浸漬されると、該基材の表面から内側に向けて酸化膜が成長する一方、基材の表面から外側に向けての酸化膜成長量が少ない。すなわち、表面から外側に向けての酸化物の結晶柱の伸長量が少ないので、結晶柱同士の衝突による圧縮応力の発生を大幅に抑制できる。また、エチルシリケートがアルマイト皮膜に含浸されて該アルマイト皮膜内にはエチルシリケートのシリコンが分散してシリコン粒として存在するので、アルマイト皮膜への切削油等の浸透が防止される。これにより、水和封孔の促進が抑制され、アルマイト皮膜の耐熱性が確保される。さらに、アルマイト皮膜の表面において開口する伸長孔にエチルシリケートから生成される化合物が充填されないので、各伸長孔において化合物が膨張することが無く、アルマイト皮膜への圧縮応力の発生を防止することができる。したがって、部品が高温になり、若しくは切削油等に触れてもアルマイト皮膜の破損によるパーティクルの発生を確実に防止することができる。また、アルマイト皮膜には封孔処理が施されず、開口通路が確保される。アルマイト皮膜には複数のポア(開口通路)が発生するが、このポアに封孔処理、例えば水和封孔処理を施すと、各ポアにおいて酸化物が膨張した場合に該酸化物の逃げ場を確保することができず、圧縮応力が発生してしまう。アルマイト皮膜への封孔処理を施さないことにより、この圧縮応力の発生を防止することができるので、部品が高温になっても皮膜の破損によるパーティクルの発生をより確実に防止することができる。」と補正すること。 3 補正の適否 (1) 新規事項の追加の有無、シフト補正の有無及び補正の目的の適否について ア 新規事項の追加の有無について (ア) 補正事項1ないし3 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0008】には、「上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置用の部品は、基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材と、前記部品を電源の陽極に接続し且つ有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成された皮膜とを備え、前記皮膜にはエチルシリケートが含浸されていることを特徴とする。」と記載されており、また、同段落【0050】には、「具体的には、表面にシリコンを含有するアルミニウム基材56が剥き出しとなったクーリングプレート36を直流電源の陽極に接続して、有機酸、例えば、シュウ酸を主成分とする酸性溶液(以下、「シュウ酸含有溶液」という。)に浸漬し、クーリングプレート36の表面を酸化する(陽極酸化処理)。」(当審注:下線は当審が付与した。以下同じ。)と記載されているから、補正事項1ないし3は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (イ) 補正事項4 当初明細書等の段落【0042】、【0043】には、「図2は、基板処理装置用の部品の表面に形成される一般的なアルマイト皮膜の構成を示す断面斜視図である。 図2において、アルマイト皮膜48は、部品のアルミニウム基材49上に形成されたバリア層50と、該バリア層50の上に形成されたポーラス層51とを備える。」と記載されていることからすると、請求項1に係る発明の「アルマイト皮膜」も、基材上に形成されたバリア層と該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有することは自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではないから、補正事項4は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (ウ) 補正事項5 当初明細書等の段落【0018】には、「請求項3記載の基板処理装置用の部品によれば、皮膜には封孔処理が施されない。」と記載され、また、同段落【0052】には、「また、アルマイト皮膜57では、ポア59は封孔されず、開口通路62が確保される。」と記載されている。 さらに、当初明細書等の段落【0062】には、「図5の処理によれば、アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とするクーリングプレート36が直流電源の陽極に接続され且つシュウ酸含有溶液中に浸漬され、該浸漬によってクーリングプレート36の表面に形成されたアルマイト皮膜57にはエチルシリケートが含浸される。これにより、アルマイト皮膜57において結晶柱同士の衝突による圧縮応力の発生を抑制できる。また、各ポア59において開口通路62を確保することができ、ポーラス層等において圧縮応力が発生することがない。」と記載されていることからすると、補正発明においては、アルマイト皮膜の結晶柱同士が衝突しないものと認められるから、開口通路の径が、アルマイト皮膜の表面側からバリア層側まで略同じであることは、自明での事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、補正事項5は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (エ) 補正事項6 補正事項6は、補正前の請求項2、3及び5を削除するとともに、補正前の請求項2、3及び5を削除したことにより、補正の請求項4、6、7をそれぞれ、補正後の請求項2、3、4に繰り上げるものであるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (オ) 補正事項7 補正事項7は、補正事項2に係る補正によって生じる記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、上記(ア)において検討したものと同様に、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (カ) 補正事項8 当初明細書等の段落【0014】には、「請求項7記載の基板処理装置用の部品は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置用の部品において、前記基板処理装置用の部品は円板状のクーリングプレートであり、該クーリングプレートは複数の貫通孔を有することを特徴とする。」と記載されているから、補正事項8は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (キ) 補正事項9ないし13 補正事項9ないし13は、補正事項1ないし5と同じ内容であるから、上記(ア)ないし(ウ)において検討したものと同様に、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (ク) 補正事項14 補正事項14は、補正事項6によって補正前の請求項2及び3を削除したことに伴って、対応する発明の詳細な説明の記載を削除するものであるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (ケ) 補正事項15 補正事項15は、補正事項1ないし5に係る補正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、上記(ア)ないし(ウ)において検討したものと同様に、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (コ) 補正事項16 補正事項16は、補正事項6及び7に係る補正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、上記(エ)及び(オ)において検討したものと同様に、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (サ) 補正事項17 補正事項17は、補正事項6及び8に係る補正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、上記(エ)及び(カ)において検討したものと同様に、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (シ) 補正事項18 補正事項18は、補正事項6及び9ないし13に係る補正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、上記(エ)及び(キ)において検討したものと同様に、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (ス) 補正事項19 補正事項19は、【発明の効果】の欄を補正するものであって、補正事項5に係る補正によって生じる記載の不一致を解消して、記載の整合を図るとともに、当該補正事項5に係る補正によって生じる補正発明の効果に係る記載を追加するものである。 また、当初明細書等段落【0018】には、「請求項3記載の基板処理装置用の部品によれば、皮膜には封孔処理が施されない。皮膜には複数のポア(孔)が発生するが、このポアに封孔処理、例えば水和封孔処理を施すと、各ポアにおいて酸化物が膨張した場合に該酸化物の逃げ場を確保することができず、圧縮応力が発生してしまう。皮膜への封孔処理を施さないことにより、この圧縮応力の発生を防止することができるので、部品が高温になっても皮膜の破損によるパーティクルの発生をより確実に防止することができる。」と記載されているから、補正事項19は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 イ シフト補正の有無について 補正事項1ないし13は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしている。 ウ 補正の目的の適否について (ア) 補正事項1ないし5 補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である「プラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」について、「基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」との限定を付加するものであり、補正事項2は、請求項1に記載した発明特定事項である「アルミニウムを主成分とする基材」について、「アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする」との限定を付加するものであり、補正事項3は、請求項1に記載した発明特定事項である「有機酸を主成分とする溶液」について、「シュウ酸を含む」との限定を付加するものであり、補正事項4は、「アルマイト皮膜」について、「前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有する」との限定を付加するものであり、補正事項5は、「アルマイト皮膜」について、「前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、」との限定を付加するものである。 そして、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の技術分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項1ないし5は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 補正事項6 補正事項6における、補正前の請求項2、3及び5を削除することは、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 また、補正事項6は、補正前の請求項2、3及び5を削除したことにより、補正の請求項4、6、7をそれぞれ、補正後の請求項2、3、4に繰り上げるものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (ウ) 補正事項7 補正事項7は、補正事項2に係る補正によって生じる記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (エ) 補正事項8 補正事項8は、「クーリングプレート」について、「複数の貫通孔を有する」との限定を付加するものである。 そして、本件補正前の請求項6に係る発明と、本件補正後の請求項3に係る発明の産業上の技術分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項8は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (オ) 補正事項9ないし13 補正事項9ないし13は、補正事項1ないし5と同じ内容であって、本件補正前の請求項7に係る発明と、本件補正後の請求項4に係る発明の産業上の技術分野及び解決しようとする課題は同一であるから、上記(ア)において検討したものと同様に、補正事項9ないし13は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (2) 独立特許要件について 上記(1)ウのとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいるから、本件補正後の請求項1ないし4に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 補正発明 本件補正後の請求項1ないし4に係る発明は、平成26年3月3日付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、 アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材と、 前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成され、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜とを備え、 前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、 前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸させ、前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させることを特徴とする基板処理装置用の部品。」 イ 刊行物の記載事項 (ア) 刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において公知となった特開2002-212787号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「高耐食性Al合金部材およびその製法」(発明の名称)について、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体マイクロデバイス製造装置、あるいは塩素や臭素の如きハロゲン系ガスやそのプラズマを用いる反応容器または装置、もしくはそれら設備の周辺部材などとして使用される、含水雰囲気下または乾燥ガス雰囲気下の耐ガス腐食性に優れたAl合金部材とその製法に関するものである。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得た本発明に係るAl合金部材とは、ポーラス層を有する陽極酸化皮膜が形成されたAl合金部材であって、前記ポーラス層は、表面に開口した多数の細孔を有し、該細孔は、基材側底部の内径が10nm以上で、底部から連なる孔径10nm以上の部分が長さ方向に0.5μm以上連続しており、且つ、該細孔の50%以上が、5原子%以上のSiを含むSi-O結合を有するSi含有化合物で充填されているところに要旨を有している。」 「【0009】また本発明の製法は、前記優れた耐食性を示すAl合金部材を効率よく製造する方法として位置付けられるもので、Al合金基材を、蓚酸を含む酸性水溶液中において50?110Vの電解電圧で陽極酸化処理し、該処理により形成された陽極酸化皮膜に、Si-O結合を有するSi含有化合物を含む有機溶剤溶液を供給した後、前記有機溶剤を乾燥除去し、次いで100℃以上で焼成するところに要旨を有している。」 「【0023】細孔がSi-O含有化合物で充填された状態を実現する方法としては、Si-O結合を含む化合物を溶解した有機溶剤溶液を刷毛や布を用いて塗布した後、100℃以上で焼成する方法が例示される。あるいは、対象とする部材の形状に応じて塗布に変えて前記溶液中に浸漬した後に引き上げ、100℃以上で焼成する方法も適用できる。・・・」 「【0033】実施例1 表1に本発明の実施例を示す。基板は市販のAl合金「A6061」を用いた。電解液は蓚酸浴(No.1?8、No.11?14)、蓚酸-硫酸混合浴(No.10)、またはりん酸浴(No.9)を用いた(何れも浴温20℃)。表1記載の電圧電解で陽極酸化処理を施し、陽極酸化皮膜(膜厚0.1?50μm)を形成した(尚、No.5、No.6を除いては基材側と表面側の細孔径は同一である)。No.1?10(本発明例)は、陽極酸化処理後のAl基板をSi-O結合およびCH_(3)基、C_(6)H_(5)基を有するラダー型シリコーンオリゴマーをメチルイソブチルケトンに20質量%溶解した液に浸漬してから引き上げ、その後所定の温度(表1記載)で30分間焼成してSi含有化合物を陽極酸化皮膜の細孔に充填した。充填率及びSi含有量は表1に示す通りである。」 「【0041】 【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るAl合金部材は高温の塩素や臭素の如きハロゲン系の腐食性ガス雰囲気下、あるいは常温の塩酸や臭素酸の如く、水や湿気を含む腐食性ガス雰囲気下、特に含水雰囲気下においても優れた耐食性を示すと共に、本発明によってその様な高耐食性Al合金を効率よく製造することが可能となった。本発明に係るAl合金部材の好適な用途である半導体製造装置の部材の寿命を著しく向上させることができる。また塩素系ガスあるいは臭素系ガスを使用する工程や該部材が水洗される工程を含む半導体製造プロセスに用いることができる。」 (イ) 刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において公知となった特開平6-316787号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「アルマイトの表面処理法」(発明の名称)について、以下の記載がある。 「【0007】本発明は、陽極酸化したアルミニウムを、SiX_(n)(OR)_(4-n)(ここでXはHまたはCH_(3)、RはCH_(3)またはC_(2)H_(5)、nは0または1)で表されるアルコキシシランのうち少なくとも一種を含み、当該アルコキシシラン1molに対し0.5mol以上0.8mol以下のH_(2)Oと0.01mol以下のHClとを含むアルコール溶液に浸すことによってアルマイト皮膜の微細孔を充填するものである。」 「【0009】この溶液は調合後室温で24時間以上放置し熟成させることが好ましい。この熟成によって縮合度が低いSi-O-Si骨格の分子が生成し、これが小分子であるので直径5nm程度の微孔でも容易に侵入し、微孔中のOH-と反応して縮合度を増し微孔を埋める。その後100?150℃の温度で乾燥し溶媒を除去することによって緻密な皮膜となる。」 ウ 引用発明 上記イ(ア)の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「ハロゲン系ガスのプラズマを用いる半導体製造装置に使用されるAl合金部材において、 Al合金「A6061」からなる基材と、 前記基材を蓚酸を含む酸性水溶液中で陽極酸化処理することによって形成されたポーラス層を有する陽極酸化皮膜を備え、 前記ポーラス層は、表面に開口した多数の細孔を有し、前記陽極酸化処理後の基材側と表面側の細孔径は同一であり、 前記陽極酸化処理後、Si-O結合を有するSi含有化合物を含む有機溶剤溶液中に浸漬した後に引き上げ、100℃以上で焼成することによって、前記Si含有化合物が前記細孔に充填されている、Al合金部材。」(以下、「引用発明」という。) エ 対比 補正発明と引用発明とを対比する。 (ア) 引用発明において、ハロゲン系ガスのプラズマを用いる半導体製造装置は、基板にプラズマ処理を施すものであることは自明の事項であるから、引用発明の「ハロゲン系ガスのプラズマを用いる半導体製造装置に使用されるAl合金部材」は、補正発明の「基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品」に相当する。 (イ) 本願明細書(段落【0012】、【0056】等参照)には、補正発明における「アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材」として、JIS規格のA6061合金を用いることが記載されているから、このJIS規格のA6061合金は、「アルミニウムにシリコンを含む合金」であるといえる。他方、引用発明における「基材」は、「Al合金「A6061」」であり、この「A6061」は、JIS規格のアルミニウム合金の記号であることは明らかである。 したがって、引用発明の「Al合金「A6061」からなる基材」は、補正発明の「アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材」に相当する。 (ウ) 引用発明の「蓚酸を含む酸性水溶液」、「陽極酸化皮膜」は、補正発明の「シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液」、「アルマイト皮膜」にそれぞれ相当する。 また、引用発明において、「前記基材を蓚酸を含む酸性水溶液中で陽極酸化処理する」際には、基材を蓚酸を含む酸性水溶液中に浸漬することは明らかである。 さらに、引用発明において、「前記基材を蓚酸を含む酸性水溶液中で陽極酸化処理することによって形成されたポーラス層を有する陽極酸化皮膜」は、基材の表面に形成されることは、自明の事項である。 そして、Al合金から成る基材を陽極酸化処理することにより形成した陽極酸化皮膜が、基材上に形成されたバリア層と、このバリア層上に形成されたポーラス層とを有することは、技術常識であるから、引用発明の「陽極酸化皮膜」は、基材の表面に形成され、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有しているものと認められる。 したがって、引用発明の「前記基材を蓚酸を含む酸性水溶液中で陽極酸化処理することによって形成されたポーラス層を有する陽極酸化皮膜」は、補正発明の「前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成され、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜」に相当する。 (エ) 引用発明の「前記ポーラス層」の「表面に開口した多数の細孔」は、「陽極酸化処理後」においては、「基材側と表面側の細孔径は同一であ」るから、上記「細孔」の径は、陽極酸化皮膜の表面側からバリア層側まで略同じであると認められる。 そうすると、引用発明の「陽極酸化処理後」における「前記ポーラス層」の「表面に開口した多数の細孔」は、補正発明の「開口通路」に相当する。 (オ) 以上から、補正発明と引用発明との一致点と相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、 アルミニウムにシリコンを含む合金を主成分とする基材と、 前記基材を、シュウ酸を含む有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記基材の表面に形成され、前記基材上に形成されたバリア層と、該バリア層の上に形成されたポーラス層とを有するアルマイト皮膜とを備える基板処理装置用の部品。」 <相違点> 補正発明は、「前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され、 前記開口通路の径は、前記アルマイト皮膜の表面側から前記バリア層側まで略同じであり、 前記アルマイト皮膜にエチルシリケートを含浸させ、前記エチルシリケートのシリコンを前記アルマイト皮膜内に分散させてシリコン粒として存在させる」のに対し、引用発明は、「前記ポーラス層は、表面に開口した多数の細孔を有し、前記陽極酸化処理後の基材側と表面側の細孔径は同一であ」るものの、「前記陽極酸化後、Si-O結合を有するSi含有化合物を含む有機溶剤溶液中に浸漬した後に引き上げ、100℃以上で焼成することによって、前記Si含有化合物が前記細孔に充填されている」点 オ 相違点についての判断 (ア) 補正発明は、「前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され」るものである。 ここで、補正発明における「封孔処理」について、本願明細書段落【0003】には、【背景技術】として、「一般にアルミニウム部材は基板処理装置で所定の処理のために用いられる腐食性ガスやプラズマに対する耐食性が低いため、該アルミニウム部材からなる構成部品、例えば、クーリングプレートの表面には耐食性を有するアルマイト皮膜が形成される(例えば、特許文献1参照)。また、形成されたアルマイト皮膜はポア(孔)を有しており、通常、該ポアを封止する封孔処理が施される。」と記載されている。 また、同段落【0016】には、【発明の効果】として、「また、アルマイト皮膜には封孔処理が施されず、開口通路が確保される。アルマイト皮膜には複数のポア(開口通路)が発生するが、このポアに封孔処理、例えば水和封孔処理を施すと、各ポアにおいて酸化物が膨張した場合に該酸化物の逃げ場を確保することができず、圧縮応力が発生してしまう。アルマイト皮膜への封孔処理を施さないことにより、この圧縮応力の発生を防止することができるので、部品が高温になっても皮膜の破損によるパーティクルの発生をより確実に防止することができる。」と記載されている。 そうすると、補正発明における「封孔処理」とは、アルマイト皮膜のポア(孔)を封止する処理のことであって、このポアに封止処理、例えば水和封孔処理を施すと、各ポアにおいて酸化物が膨張した場合に該酸化物の逃げ場を確保することができず、圧縮応力が発生してしまうのに対して、補正発明は、アルマイト皮膜への封孔処理を施さないことにより、この圧縮応力の発生を防止することができるので、部品が高温になっても皮膜の破損によるパーティクルの発生をより確実に防止することができるという効果を奏するものである。 (イ) 他方、引用発明は、「前記陽極酸化処理後、Si-O結合を有するSi含有化合物を含む有機溶剤溶液中に浸漬した後に引き上げ、100℃以上で焼成することによって、前記Si含有化合物が前記細孔に充填されている」から、陽極酸化皮膜の細孔には、Si含有化合物が充填されている、すなわち、陽極酸化皮膜に封孔処理が施されているものと認められる。 (ウ) また、刊行物2における上記イ(イ)には、「陽極酸化したアルミニウムを、SiX_(n)(OR)_(4-n)(ここでXはHまたはCH_(3)、RはCH_(3)またはC_(2)H_(5)、nは0または1)で表されるアルコキシシランのうち少なくとも一種を含み、当該アルコキシシラン1molに対し0.5mol以上0.8mol以下のH_(2)Oと0.01mol以下のHClとを含むアルコール溶液に浸すことによってアルマイト皮膜の微細孔を充填する」ことが記載されており、ここで、上記アルコキシシランのRがC_(2)H_(5)、nが0の場合、Si(OC_(2)H_(5))_(4)(エチルシリケート)であるから、刊行物2においては、陽極酸化したアルミニウムをエチルシリケートを含むアルコール溶液に浸すことによって、アルマイト皮膜の微細孔を充填している、すなわち、アルマイト皮膜に封孔処理が施されているものと認められる。 (エ) そうすると、補正発明は、アルマイト皮膜に封孔処理を施さないものであるのに対して、引用発明及び刊行物2に記載された事項は、いずれも陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)に封孔処理が施されているものであるから、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用したとしても、上記相違点に係る補正発明の「前記アルマイト皮膜には封孔処理が施されずに、開口通路が確保され」るとの発明特定事項を導き出すことはできない。 (オ) そして、補正発明は、上記相違点に係る発明特定事項を有することにより、上記(ア)のとおりの効果を奏するものである。 (カ) したがって、補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ 本件補正後の請求項2ないし4に係る発明について (ア) 本件補正後の請求項2及び3は、補正発明の発明特定事項を全て有するものであるから、上記オで検討したものと同じ理由により、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件補正後の請求項4は、補正発明と同様の発明特定事項を有するものであるから、上記オで検討したものと同じ理由により、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 4 むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 上記「第2」のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりものである。 そして、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-12-15 |
出願番号 | 特願2008-11372(P2008-11372) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C25D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 向井 佑 |
特許庁審判長 |
鈴木 正紀 |
特許庁審判官 |
松嶋 秀忠 河本 充雄 |
発明の名称 | 基板処理装置用の部品及び皮膜形成方法 |
代理人 | 別役 重尚 |