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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N |
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管理番号 | 1295795 |
審判番号 | 不服2012-24609 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-11 |
確定日 | 2015-01-19 |
事件の表示 | 特願2008-301037「遺体用体液漏出防止剤の供給管」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月26日出願公開、特開2009- 40799〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年4月3日に出願した特願2000-100955号(以下「原出願」という。)の一部を平成20年7月28日に新たな出願とした特願2008-193699号について、さらにその一部を平成20年11月26日に新たな出願としたものであって、原審において平成23年10月24日付け及び平成24年6月11日付けで手続補正がなされ、同年9月3日付けで前記平成24年6月11日付けの手続補正が却下されると同時に拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に拒絶査定不服審判がされると同時に手続補正がなされ、平成25年6月28日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるために審尋を行ったところ、同年9月2日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成24年12月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成24年12月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前(平成23年10月24日付け手続補正後のもの)の請求項1として、 「遺体内に鼻または口から体液漏出防止剤を注入する供給管であって、 鼻または口から挿入されて挿入方向基端部は鼻または口から突出し、先端部は咽喉部に達する長さとされ、 挿入方向基端部には、内部に上記体液漏出防止剤が内蔵された容器に接続可能な接続部が形成され、 挿入方向先端部には、上記体液漏出防止剤を咽喉部に集中的に注入するための注入孔が形成されていることを特徴とする遺体用体液漏出防止剤の供給管。」 とあったものを、以下のように補正して新たな請求項1とすることを含むものである。 「遺体内に鼻または口から体液漏出防止剤を注入する供給管であって、 鼻または口から挿入されて挿入方向基端部は鼻または口から突出し、先端部は咽喉部に達する長さとされ、 挿入方向基端部には、内部に上記体液漏出防止剤が内蔵された容器の出口部を差し込むことによって該容器に接続可能な接続部が形成され、 挿入方向先端部には、上記体液漏出防止剤を咽喉部に集中的に注入するための注入孔が形成されていることを特徴とする遺体用体液漏出防止剤の供給管。」(下線は審決で付した。以下同じ。) 2 補正の目的 本件補正は、「内部に上記体液漏出防止剤が内蔵された容器に接続可能な接続部」につき、「内部に上記体液漏出防止剤が内蔵された容器の出口部を差し込むことによって該容器に接続可能な接続部」との限定を行うものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用刊行物 (1-1)引用刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された実用新案登録第3064506号(以下「刊行物1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 ア「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 両端に連通口(1a)(1b)を有し、内部に、体液凝固剤(2)を内蔵した容器(1)と、 内部に、エーロゾル噴霧体を充填し、必要に応じて殺菌液、若しくは水を内蔵した蓄圧容器(3)と、殺菌液を内蔵した供給管(4)からなり、前記容器(1)と、蓄圧容器(3)と供給管(4)とを一体に連結したことを特徴とする体液漏出防止器。」 イ「【0006】 【考案が解決しようとする課題】 そこでこの考案は、上記の欠点を除去し、確実に体液凝固剤や殺菌液等を遺体内に挿入でき、しかも、その操作も極めて簡単な体液漏出防止器を開発をすることにある。」 ウ「【0012】 この考案の使用方法の一例を述べると、体液凝固剤(2)を内蔵した容器(1)の両端に設けた連通口(1a)(1b)に装着されたキャップを外し、一の連通口(1a)に、蓄圧容器(3)のノズル口(3a)を、直接、あるいは、供給管を介して連通し、他の連通口(1b)には、殺菌液を入れた供給管(4)を連通し、該供給管の他端を遺体の口腔、鼻孔、耳孔、尿道、肛門などに差し込み、蓄圧容器(3)のバルブ開放ボタンを押すことにより、内部のエーロゾル噴霧体の開放により、体液凝固剤(2)、殺菌液、あるいは水を遺体内に圧入するものである。」 エ 図1から、供給管(4)の一端は体液凝固剤(2)を内蔵した容器(1)の連通口(1b)に連結されることが看取できる。 したがって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「一端が体液凝固剤(2)を内蔵した容器(1)の連通口(1b)に連結され、他端を遺体の口腔、鼻孔、耳孔、尿道、肛門などに差し込み、体液凝固剤(2)を遺体内に圧入する供給管(4)。」(以下「引用発明1」という。) (1-2)引用刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された特開平7-265367号公報(以下「刊行物2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 ア「【特許請求の範囲】 【請求項1】安定化二酸化塩素を含む吸水性樹脂粉末であることを特徴とする遺体の体液封止剤。」 イ「【0014】次に、遺体の体液封止について具体的に説明する。前記吸水ポリマーを主とする封止剤は乾燥粉末のままでも使用可能であるが、使用量の誤りを防止するため一定量を包装しておくことが望ましい。例えば、咽喉に対して使用する5gと、鼻孔及び耳孔に対して使用する5gとを、それぞれ縦長の紙袋(所謂ペットシュガー類似の包装状態)に分けて包装しておく等である。そして咽喉に対しては、包装を破ってそのまま咽喉に注ぎ込む。一方の鼻孔および耳孔に対しては、水溶性のシート、例えば繊維の粗い(短い)紙、或いはオブラートに適当量を包み、遺体の各孔部に装填する。」 ウ「【0015】乾燥粉末である封止剤の使用量は、例えば、咽喉奥部に対して5g、鼻孔および耳孔に対してそれぞれ2.5g程度である。この処置は、死亡確認後、医療スタッフが直ちに行っても良い。最も多量に体液が戻るのは咽喉からであり、この部位を抑えれば鼻孔および耳孔は、脱脂綿やガーゼなどを詰める処置であっても構わない。」 したがって、上記記載を含む刊行物全体の記載から、刊行物2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「最も多量に体液が戻るのは咽喉からであり、この部位を乾燥粉末である封止剤で抑えれば鼻孔および耳孔は、脱脂綿やガーゼなどを詰める処置であっても構わないこと。」(以下「技術的事項」という。) (2)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 上記(1-1)イより、引用発明1の「体液凝固剤(2)」は体液漏出防止器に用いる薬剤であるから、本願補正発明の「体液漏出防止剤」に相当する。 イ 引用発明1の「供給管(4)」は、一端が体液凝固剤(2)を内蔵した容器(1)の連通口(1b)に連結され、他端が遺体の口腔、鼻孔、耳孔、尿道、肛門などに差し込み、体液凝固剤(2)を遺体内に圧入するものであるから、本願補正発明の「供給管」とは、遺体内に鼻または口から体液漏出防止剤を注入し、鼻または口から挿入されて挿入方向基端部は鼻または口から突出し、挿入方向基端部には、内部に上記体液漏出防止剤が内蔵された容器の出口部に接続可能な接続部が形成され、挿入方向先端部には、上記体液漏出防止剤を注入するための注入孔が形成されている限度において共通する。 したがって、両者は、 「遺体内に鼻または口から体液漏出防止剤を注入する供給管であって、鼻または口から挿入されて挿入方向基端部は鼻または口から突出し、挿入方向基端部には、内部に上記体液漏出防止剤が内蔵された容器の出口部に接続可能な接続部が形成され、挿入方向先端部には、上記体液漏出防止剤を注入するための注入孔が形成されている遺体用体液漏出防止剤の供給管。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、供給管の先端部が咽喉部に達する長さとされているのに対し、引用発明1は、その点につき明らかでない点。 [相違点2] 本願補正発明は、供給管の挿入方向基端部には、内部に体液漏出防止剤が内蔵された容器の出口部を差し込むことによって該容器に接続可能な接続部が形成されているのに対し、引用発明1は、その点につき明らかでない点。 [相違点3] 供給管の挿入方向先端部の注入孔につき、本願補正発明は、体液漏出防止剤を咽喉部に集中的に注入するよう形成されているのに対し、引用発明1は、その点につき明らかでない点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1及び相違点3について 上記(1)(1-2)によれば、刊行物2には「最も多量に体液が戻るのは咽喉からであり、この部位を乾燥粉末である封止剤で抑えれば鼻孔および耳孔は、脱脂綿やガーゼなどを詰める処置であっても構わないこと。」との技術的事項が記載されているから、引用発明1において、体液漏出防止剤を注入する供給管を設計するに際し、上記技術的事項に照らして、供給管の先端部が咽喉部に達する長さとすることに何ら困難性はない。 そして、供給管の先端部が咽喉部に達する長さであるならば、供給管の先端の注入孔から注入される体液漏出防止剤は咽喉部に集中的に注入されることとなることは明らかである。 よって、引用発明1において、上記技術的事項に照らして、上記相違点1及び相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 イ 相違点2について 管同士の連結に際し、一方の管を他方の管へ差し込むよう連結部をすることは、一般に慣用手段(例えば、特表平10-513085号公報(22頁18行?23頁10行、図1、図2参照。))である。 よって、引用発明1において、上記慣用手段に照らして、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 以上のように、引用発明1、上記技術的事項及び上記慣用手段より、本願補正発明の上記相違点に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到できたことであり、かかる発明特定事項を採用することによる本願補正発明の効果も当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明1、上記技術的事項及び上記慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)補正却下の決定についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年10月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、上記第2の1において本件補正前のものとして記載したとおりのものである。 2 判断 本願発明は、上記第2の3で検討した本願補正発明において、「(挿入方向基端部に形成され、内部に体液漏出防止剤が内蔵された容器に接続可能な)接続部」について、「容器の出口部を差し込む」との限定を除いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、供給管の先端部が咽喉部に達する長さとされているのに対し、引用発明1は、その点につき明らかでない点。 [相違点3] 供給管の挿入方向先端部の注入孔につき、本願発明は、体液漏出防止剤を咽喉部に集中的に注入するよう形成されているのに対し、引用発明1は、その点につき明らかでない点。 上記第2の3(4)での検討に照らして、本願補正発明は、引用発明1、上記技術的事項及び上記慣用手段に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び上記技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び上記技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-01-21 |
結審通知日 | 2014-01-28 |
審決日 | 2014-02-14 |
出願番号 | 特願2008-301037(P2008-301037) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A01N)
P 1 8・ 121- Z (A01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂崎 恵美子 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 黒瀬 雅一 |
発明の名称 | 遺体用体液漏出防止剤の供給管 |
代理人 | 特許業務法人前田特許事務所 |