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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1295935
審判番号 不服2013-15770  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-14 
確定日 2015-01-07 
事件の表示 特願2011- 14529「処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日出願公開、特開2011-139079〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年7月13日(パリ条約による優先権主張2001年7月15日、米国)を国際出願日とする出願である特願2003-514593号を平成23年1月26日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成25年4月9日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。これに対し、同年8月14日付けで上記査定を不服として本件審判が請求され、同時に手続補正書が提出され特許請求の範囲及び明細書が補正され、平成25年10月11日付けの当審の審尋に対し、平成26年4月11日付けで回答書が提出されている。

第2 平成25年8月14日付け手続補正書による補正について

1. 補正の内容
上記平成25年8月14日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書について補正するものである。
(1) 特許請求の範囲についての補正
本件補正のうち、特許請求の範囲についてするものは、補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

ア. 補正前
「【請求項1】
基板処理システムであって、
複数の開口を有し、基板を前記複数の開口を介して運搬することができる、チャンバと、
複数の開口中の、第1の開口に結合された基板キャリアオープナーと、
複数の開口中の、第2の開口に結合された熱処理チャンバと、
前記チャンバ内に含まれ、専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレードと、専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレードと、
を備えた基板処理システム。
・・・
【請求項15】
基板ハンドラーであって、
専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレードと、
専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレードと、
を備えた基板ハンドラー。
【請求項16】
基板クランプ・ブレードと熱い基板を運搬するように構成されたブレードとが、垂直に積み重ねられた、請求項15に記載の基板ハンドラー。
・・・」

イ. 補正後
「【請求項1】
基板処理システムであって、
複数の開口を有し、基板を前記複数の開口を介して運搬することができる、チャンバと、
複数の開口中の、第1の開口に結合された基板キャリアオープナーと、
複数の開口中の、第2の開口に結合された熱処理チャンバと、
前記チャンバ内に含まれ、専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレードと、専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレードとを有するウエハ・ハンドラーと、
を備えた基板処理システム。
・・・
【請求項15】
基板ハンドラーであって、
専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレードと、
専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレードと、
を備えた基板ハンドラー。
【請求項16】
冷基板運搬専用基板クランプ・ブレードと専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレードとが、垂直に積み重ねられた、請求項15に記載の基板ハンドラー。
・・・」

(2) 明細書についての補正
本件補正のうち、明細書についてするものは、補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

ア. 補正前
「【0001】
本出願は、2001年7月15日に出願された発明の名称が「Processing System(処理システム)」(代理人整理番号第6022/L号)である米国特許仮出願第60/305,679号に基づいて優先権を主張するものであり、その米国特許仮出願第60/305,679号は、その全てが、ここに援用される。」

イ. 補正後
「【0001】
本願は、2001年7月15日に出願された発明の名称が「Processing System(処理システム)」(代理人整理番号第6022/L号)である米国特許仮出願第60/305,679号に基づいて優先権を主張するものであり、その米国特許仮出願第60/305,679号は、その全てを、ここに援用する。」

2. 補正の適否
上記1.(1)ア.及びイ.から、本件補正の特許請求の範囲についてするものは、以下の補正事項1及び2である。
・補正事項1
本件補正前の請求項1で特定された「専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレード」と、「専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレード」が、本件補正により、両方の「ブレード」を「ウエハ・ハンドラー」が有するものであることを明りょうにした点。
・補正事項2
本件補正前の請求項15を引用する請求項16で特定される、「基板クランプ・ブレード」及び「熱い基板を運搬するように構成されたブレード」を、本件補正により、請求項15で特定される事項と整合するように、それぞれ「冷基板運搬専用基板クランプ・ブレード」及び「専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレード」とした点。
上記補正事項1及び2は、いずれも補正前の記載を明りょうなものとするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の不明瞭な記載の釈明を目的とするものに該当する。

上記1.(2)ア.及びイ.から、本件補正の明細書についてするものは、以下の補正事項3で及び4である。
・補正事項3
本件補正前の「本出願は」を、本件補正により「本願」とするもので、不明りょうな記載の釈明を目的とするものであることは、明らかである。
・補正事項4
本件補正前の「・・・その全てが、ここに援用される。」を、本件補正により「その全てを、ここに援用する。」とするもので、不明りょうな記載の釈明を目的とするものであることは、明らかである。
上記補正事項3及び4は、いずれも補正前の記載を明りょうなものとするものであるから不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。
また、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。
よって、本件補正は適法である。

第3 本願発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項15に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1.(2)の請求項15に記載された事項により特定されるものであると認める。

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、上記特願2003-514593号の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-176910号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

1. 引用文献記載事項

ア.
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、搬送アームにより半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板(以下「基板」という。)の保持や受け渡しを行う基板搬送装置およびそれを備えた基板処理装置に関する。」

イ.
「【0003】ところで、上記のように搬送アームが加熱処理部の高温雰囲気内に進入したり、そこから加熱されて高温となった基板を受け取って保持することにより搬送アーム自体が熱せられる。そして、その後、そのように熱せられた搬送アームが冷却処理部内の常温の基板を受け取ると、搬送アームに蓄積されていた熱が基板を加熱して基板の精密な温度管理が行えなくなり、例えばその基板がレジストパターンの現像工程の途中であった場合などは現像ムラの原因となるなど、処理済み基板の品質を悪化させるという問題あった。」

ウ.
「【0019】つぎに、上記基板搬送ロボット6の具体的な構成を図1?図6に基づいて説明する。なお、図2?図4は第1の実施の形態における上記基板搬送ロボット6を示す図であって、図2は斜視図、図3は一部断面正面図、図4は図2のIV-IV線矢視断面図であり、図5および図6はそれぞれ冷却板25および搬送アーム10,11におけるヒートパイプ250および110,111の配置を示す平面図である。
【0020】基板搬送ロボット6は図示しない水平、垂直および旋回駆動機構によって、X軸方向の並進、Z軸方向の昇降およびZ軸方向を軸としての旋回が自在(図1参照)なように構成された基台20の両側面には、スライドレール21,21が延設されている。これらスライドレール21,21には、それらに対して摺動自在な断面凹状のスライド部材22,22が嵌め合わされており、スライド部材22,22の外方には、それぞれ支持部材23,24が固定されている。これら支持部材23,24のうち支持部材23上には、未処理ないし処理済みの基板Wを前記各処理ユニット1?3に供給ないし取り出しをする上段アーム10が固定される一方、支持部材24上には未処理ないし処理済みの基板Wを各処理ユニット1?3へ供給ないし取り出しをする下段アーム11が固定されている。
【0021】これら両搬送アーム10,11の構造は、図2および図6に示すように内径が上記基板Wより若干大きくなるように形成された円弧状の基板保持部10a,11aと、この基板保持部10a,11aを支持する基部10b,11bとが一体となった金属(熱伝導性のよい材質)製部材から構成されている。そして、上記基板保持部10a,11aの内周面には各々3本の支持ピン26…が設けられており、この支持ピン26…上に基板Wが載置されて搬送されることになる。
【0022】また、上記支持部材23の高さは、上記支持部材24の高さより若干高くなるように構成されているので、上段アーム10と下段アーム11との間には若干の隙間が形成されることになる。そして、その隙間には、前記基台20上に設けられた固定用部材28に、その下面が固定された冷却板25が設けられている。なお、この冷却板25の詳細は後述する。
【0023】さらに、前記基台20の下部には下段アーム駆動用のモータ30が設けられており、このモータ30の軸には駆動ローラ31が固定されている。さらに、前記スライドレール21の下部両端部近傍には、従動ローラ33,33が設けられており、また上記駆動ローラ31の近傍にはガイドローラ34が設けられている。そして、上記4つのローラ31,33,33,34間にはワイヤ35が巻架されており、このワイヤ35の両端は上記支持部材24の下端に固定されている。これにより前記モータ30を駆動すると支持部材24(下段アーム)が進退することになる。
【0024】一方、上記下段アーム駆動用のモータ30とは反対側の基台20の側面には、上段アーム駆動用のモータ40と、上記と同様に配置された各ローラおよびワイヤ(図示せず)とが設けられ、これによって支持部材23(上段アーム10)が進退するような構造となっている。なお、搬送アーム10,11が、図2に示す状態のように、処理ユニット1?3へ進出していない状態が待機状態であり、図3に2点鎖線で示す状態が進出状態である。そして搬送アーム10,11は両状態間を矢符のように進退するのである。」

エ.
「【0028】同様に、図6に示すように上段アーム10および下段アーム11のそれぞれの内部にも、その一端が放熱部110a,120a、他端が受熱部110b,120b、それらの間が断熱部110c,120cとなっている、ヒートパイプ250と同様の構造を持つ2本のヒートパイプ110,120が設けられている。そして、搬送アーム10,11それぞれの基板保持部10a,11aの受熱領域AA2内にはそれらに沿ってヒートパイプ110,120の受熱部110b,120bが位置し、それにつながる基部10b,11b内にはヒートパイプ110,120の断熱部110c,120cが位置し、さらに基部10b,11b内のX軸の負側端部付近の放熱領域EA2においてヒートパイプ110,120の放熱部110a,120aがY軸方向に延設されている。」

オ.
「【0031】受熱部250bおよび110b,120b(冷却板25における受熱領域AA1および搬送アーム10,11における受熱領域AA2)において熱せられた作動液Fは蒸発し潜熱(気化熱)を伴って、空洞CAを通って放熱部250aおよび110a,120a(冷却板25における放熱領域EA1および搬送アーム10,11における放熱領域EA2)に至り、そこで潜熱を放出して液化する。そして放出された潜熱は放熱部250aおよび110a,120aの表面を通じて外部に放出される一方、液化した作動液Fはウィック251および111,121内を毛細管現象により再度受熱部250bおよび110b,120bに向かって移動していく。このような一連の工程を常時繰り返すことによって、受熱領域AA1およびAA2に位置する受熱部250bおよび110b,120bによって受け取った熱がヒートパイプ250および110,120を介して高い熱伝導率で伝導することによって放熱部250aおよび110a,120aに至り、それらの位置する放熱領域EA1またはEA2で放熱されることにより、結果的に受熱領域AA1またはAA2が冷却される。
【0032】なお、このヒートパイプ250および110,120は管壁253および113,123ならびに螺旋管252および112,122がテフロン(登録商標)樹脂製、ウィック251および111,121が金属製であることにより可撓性を備えており、さらに螺旋管252および112,122を設けることにより折り曲げて配置しても、その作動液Fはその移動を阻害されず、ウィック251および111,121を介して螺旋管252および112,122の襞に沿って移動できるものとなっている。
【0033】そこで、この装置では搬送アーム10,11内および冷却坂25内においてヒートパイプ250および110,120を上記のように折り曲げて配置し、効率よく受熱および放熱することができるように張り巡らせている。
【0034】ところで、上記基板搬送ロボット6は各処理ユニット1?3のいずれかに対して、基板Wの受け渡しを行う場合には、モータ40または30を駆動して上段アーム10または下段アーム11の基板保持部10a,11aを、対象とするいずれかの処理ユニット1?3内に進入(進出状態)させて基板Wの受け渡しを行った後、その搬送アーム10,11を後退させて図2および図3に示す待機位置に戻すのであるが、上記対象とする処理ユニット1?3が加熱ユニット3aである場合には、その加熱ユニット3aに対して受け渡しを行った搬送アーム10,11は熱せられる。
【0035】しかし、この装置では搬送アーム10,11内に上記のようにヒートパイプ110,120が設けられており、基板保持部10a,11aで受け取った熱を直ちにその搬送アーム10,11の放熱部110a,120aに導き放熱するので基板保持部の温度上昇が抑えられる。そのため、次にその搬送アーム10,11が基板Wの受け渡しを行うために冷却ユニット3bに進入しても、その搬送アーム10,11はさほど高温になっていないので、冷却ユニット3b内の冷却されて常温近くまで温度が低下している基板Wを取り出す場合やその逆の場合等にも、その基板Wや冷却ユニット3bの内部雰囲気にあまり熱的影響を与えない。
【0036】また、加熱ユニット3aに搬送アーム10,11のうちのいずれかが基板Wを渡すために進入した後、後退して待機位置に位置する場合にも、その搬送アーム自体は上記の理由によりあまり高温になっていないため、冷却板25や他方の搬送アーム10,11にあまり熱的影響を及ぼさない。また、第1の実施の形態では搬送アーム10,11に冷却流路として内部にウィック251および111,121等による図7に示す構造を備えたヒートパイプ110,120を用いているので、後述する第2および第3の実施の形態における簡単な構造の冷却流路と比較して冷却効率がよい。」

カ.
「【0064】また、上記第1の実施の形態における基板搬送ロボット6では内部にヒートパイプを備える搬送アームとして上段アーム10および下段アーム11の2本を備えるものとしたが、ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アームを1本とし、他方の搬送アームはそれらを備えないものとしたり、逆にそれらを有する搬送アームを3本以上備えるものとしてもよい。すなわち、この発明では、従来のように搬送アーム間の熱分離を目的として搬送アームの本数を増加させる必要はなくなるが、搬送シーケンス上の目的などで3本以上の搬送アームを設けてあるような場合に、それらに対してこの発明を適用することを禁ずるものではない。搬送装置が複数台存在する場合にも同様である。」

2. 引用文献記載発明
上記摘記事項カ.に「上記第1の実施の形態における基板搬送ロボット6では内部にヒートパイプを備える搬送アームとして上段アーム10および下段アーム11の2本を備えるものとしたが、ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アームを1本とし、他方の搬送アームはそれらを備えないものとしたり、・・・してもよい。」と記載されていることから、「第1の実施の形態における基板搬送ロボット6」において「ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アームを1本とし、他方の搬送アームはそれらを備えない」態様が、引用文献に記載されているといえる。そして、上記摘記事項ア.ないしカ.を技術常識を考慮しつつ上記態様に着目して、本願発明に照らして整理すると、引用文献には以下の発明(以下、「引用文献記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板搬送ロボット(6)であって、
ヒートパイプまたは冷却流路を備えない搬送アームと、
ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アームと、
を備えた基板搬送ロボット(6)。」

第5 対比・判断

1. 対比
本願発明と引用文献記載発明を対比する。
引用文献記載発明の「基板搬送ロボット(6)」は、本願発明の「基板ハンドラー」に相当する。
同様に、引用文献記載発明の「搬送アーム」は、本願発明の「ブレード」に相当する。
また、引用文献記載発明の「ヒートパイプまたは冷却流路を備えない搬送アームと、ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アームと、を備え」ることは、上記対応関係を踏まえ、「ヒートパイプまたは冷却流路を備えないブレードと、ヒートパイプまたは冷却流路を備えるブレードと、を備え」ることと表現できるところ、これは本願発明の「専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレードと、専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレードと、を備え」ることと、「基板を運搬するブレードを二本備え」ることである限りにおいて共通する。
そうすると、本願発明と引用文献記載発明とは以下の点で一致し、かつ相違する。

(1) 一致点
「基板ハンドラーであって、
基板を運搬するブレードを二本備えた基板ハンドラー。」

(2) 相違点
「二本のブレード」を、本願発明は「専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用基板クランプ・ブレード」と、「専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用ブレード」としたのに対し、引用文献記載発明は、「ヒートパイプまたは冷却流路を備えない搬送アーム」及び「ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アーム」であるものの、それぞれが搬送する「基板」を、その熱さや冷たさによって制限するものか明らかではない。

2. 判断
上記摘記事項オ.の「この装置では搬送アーム10,11内に上記のようにヒートパイプ110,120が設けられており、基板保持部10a,11aで受け取った熱を直ちにその搬送アーム10,11の放熱部110a,120aに導き放熱するので基板保持部の温度上昇が抑えられる。そのため、次にその搬送アーム10,11が基板Wの受け渡しを行うために冷却ユニット3bに進入しても、その搬送アーム10,11はさほど高温になっていないので、冷却ユニット3b内の冷却されて常温近くまで温度が低下している基板Wを取り出す場合やその逆の場合等にも、その基板Wや冷却ユニット3bの内部雰囲気にあまり熱的影響を与えない。」(段落【0035】)との記載から、引用文献記載発明の「搬送アーム」が「ヒートパイプまたは冷却流路」を備えるのは、熱い基板を運搬することにより昇温した「搬送アーム」を冷却するためであることは明らかである。さらに、上記摘記事項イ.の「ところで、上記のように搬送アームが加熱処理部の高温雰囲気内に進入したり、そこから加熱されて高温となった基板を受け取って保持することにより搬送アーム自体が熱せられる。そして、その後、そのように熱せられた搬送アームが冷却処理部内の常温の基板を受け取ると、搬送アームに蓄積されていた熱が基板を加熱して基板の精密な温度管理が行えなくなり、例えばその基板がレジストパターンの現像工程の途中であった場合などは現像ムラの原因となるなど、処理済み基板の品質を悪化させるという問題あった。」(段落【0003】)との記載から、温度差が大きい「高温の基板」と「常温の基板」を同じ「搬送アーム」で取り扱うことで「基板の精密な温度管理が行えなくなり」、「処理済み基板の品質を悪化させる」との問題点が生じること、そして、当該問題点を解決するために、温度差のある「高温の基板」と「常温の基板」を扱う「搬送アーム」を共用するのではなく、それぞれ異なるものとすれば良いことを、引用文献の上記記載は、当業者に対して、少なくとも示唆するものであるといえる。
そうすると、引用文献記載発明の「2本の搬送アーム」において、「高温の基板」対策が施された「ヒートパイプまたは冷却流路を備える搬送アーム」を「専ら、熱い基板を運搬する熱基板運搬専用」とし、そのような対策が施されていない「ヒートパイプまたは冷却流路を備えない搬送アーム」を「専ら、冷たい基板を運搬する冷基板運搬専用」とすることは、上記示唆に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
さらに、基板を搬送する装置において、「クランプ機構」を基板を把持するための機構として採用することは、以下の刊行物にも記載されているとおり、従来周知のものである。引用文献記載発明の「ヒートパイプまたは冷却流路を備えない搬送アーム」に「基板」を把持する機構として、「クランプ機構」を適用することは、従来周知の手段を採用したにすぎない。
・特開平2-20041号公報(特に、4ページ左上欄3行ないし右上欄7行の「第1図を参照する。・・・ウエハ12を保持する。」及びFIG.1の記載。)
・特開2000-343475号公報(特に、段落【0044】ないし【0046】及び【図11】ないし【図12】)

3. 小結
上記2.で検討したように、本願発明は、引用文献記載発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、作用・効果の点で当業者が予測し得た以上のものを奏するとも認められない。

第6 むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用文献記載発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-11 
結審通知日 2014-08-12 
審決日 2014-08-25 
出願番号 特願2011-14529(P2011-14529)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 悟史  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 処理システム  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  

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