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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1296753
審判番号 不服2013-17294  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-09 
確定日 2015-01-20 
事件の表示 特願2011-501869「バイオベースポリエチレンテレフタレートポリマー、およびその作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 1日国際公開、WO2009/120457、平成23年10月27日国内公表、特表2011-527348〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成21年3月3日(パリ条約による優先権主張 平成20年3月28日,同年9月14日,アメリカ合衆国(US))にされたとみなされる特許出願であって,平成24年3月1日に特許請求の範囲が補正され,同年9月14日付けで拒絶理由が通知され,平成25年3月18日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され,同年5月8日付けで拒絶査定がされたところ,これに対して,同年9月9日に拒絶査定不服審判が請求される(なお,同年10月17日に,請求書の請求の理由の欄を変更する補正がされている。)と同時に特許請求の範囲が補正されたので,特許法162条所定の審査がされた結果,同年11月14日付けで同法164条3項の規定による報告がされ,同年12月17日付けで同法134条4項の規定による審尋がされ,平成26年6月18日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]
平成25年9月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成25年9月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は特許請求の範囲の全文を変更する補正事項からなるものであるところ,本件補正前の請求項13の記載,並びに,当該請求項に対応する本件補正後の請求項10の記載は,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(平成25年3月18日付け手続補正書)
「【請求項13】
ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを含む飲料又は食品用容器であって,
前記ポリマーは,テレフタレート成分とジオール成分を含み,
前記テレフタレート成分及び前記ジオール成分は,共に,部分的に又は全面的に少なくとも1種のバイオベース材料に由来する,
飲料又は食品用容器。」
・ 本件補正後
「【請求項10】
ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを含む飲料又は食品用容器であって,
前記ポリマーは,テレフタレート成分とジオール成分を含み,
前記テレフタレート成分及び前記ジオール成分は,共に,部分的に又は全面的に少なくとも1種のバイオベース材料に由来し,
前記テレフタレート成分がテレフタル酸であり,前記ジオール成分がエチレングリコールである,飲料又は食品用容器。」

2 本件補正の目的
本件補正は,補正前の請求項13に記載された発明を特定するために必要な事項である「テレフタレート成分」について,これを「テレフタル酸」と限定し,同じく「ジオール成分」について,これを「エチレングリコール」と限定する補正事項を含むものである。そして,本件補正の前後で,請求項13(請求項10)の記載に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。
よって,本件補正は,補正前の請求項13(補正後の請求項10)についてする補正については,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認める。
なお,本件補正は,いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。

3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから,本件補正後の請求項10に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,要するに,本件補正が特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ,以下説示のとおり,本件補正は当該要件に違反すると判断される。
すなわち,本願補正発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(なお,引用文献1は,上記の平成24年9月14日付けで通知された拒絶理由において,「引用文献1」として請求人に提示された刊行物である。)。
・ 引用文献1: 特開2007-197654号公報

4 本願補正発明
本願補正発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲並びに明細書及び図面の記載からみて(明細書及び図面の記載を併せて,以下「本願明細書」という場合がある。),その特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを含む飲料又は食品用容器であって,
前記ポリマーは,テレフタレート成分とジオール成分を含み,
前記テレフタレート成分及び前記ジオール成分は,共に,部分的に又は全面的に少なくとも1種のバイオベース材料に由来し,
前記テレフタレート成分がテレフタル酸であり,前記ジオール成分がエチレングリコールである,飲料又は食品用容器。」

5 本願補正発明が特許を受けることができない理由
(1) 引用発明
ア 引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は当合議体による。以下同じ。)
・ 【特許請求の範囲】
「【請求項1】
主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて,該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであって,該ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が0.5以上であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル。
【請求項2】
ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素原子を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が,該ポリエステルに対して質量比で0.01ppm以上1000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル。…
【請求項10】
請求項1?9に記載のいずれか1項に記載のポリエステルを成形してなる成形体。…」
・ 【0002】
「【背景技術】
従来ポリエステルは,芳香族ポリエステル,脂肪族ポリエステル,全芳香族ポリエステル,半芳香族ポリエステル,ポリ炭酸エステルのいずれのポリエステルも石油由来の原料を重縮合することにより製造されている。しかし,近年環境問題が重視されてきており,化石燃料枯渇問題,大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境負荷の問題に対する対策が必要となっている。これに対しポリエステルの原料として植物から誘導された原料を用いることにより,これらの原料が毎年再生可能な原料であるため原料供給が化石燃料枯渇とは無関係になり,植物の育成により二酸化炭素が吸収されるため二酸化炭素削減に大きく貢献することができる。」
・ 【0005】?【0006】
「【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で製造されるバイオマス資源由来のジカルボン酸やジオールを用いてポリエステルの製造を行おうとすると,通常,原料中に不純物として含有されるアンモニア塩や金属カチオンなどにより重合反応が阻害されて十分な分子量のポリエステルが得られなかったり,得られたポリエステルが着色したりするという問題が生じていることが,本発明者の研究により明らかとなった。
そこで,本発明の目的は,発酵法による原料を用いて高分子量で着色の少ない実用可能なバイオマス資源由来のポリエステルおよびその製造する方法を提供することにある。さらに本発明の特定の窒素原子含有量を有するバイオマス資源から製造されるポリエステルは生分解性に優れるという事実を究明したものである。」
・ 【0007】
「【課題を解決するための手段】
バイオマス資源から製造されたジカルボン酸またはジオールを用いて重合されたポリエステルに存在する不純物が示す挙動を解析および検討を行った結果,原料中およびポリエステルに不純物として含まれる窒素原子含有量が重合速度や樹脂の着色および生分解性に大きな影響を与えるという知見が得られ本発明に到達した。」
・ 【0012】
「本発明は環境問題,化石資源の問題等の解決に貢献し,実用的な物性を有する樹脂を提供することが出来,産業上の利用価値は極めて大である。また,バイオマス資源から製造される本発明のポリエステルは,驚くべきことに同一構造の石油由来の原料から製造したポリエステルとくらべ生分解性が良好であるため,特定の窒素原子含有量とすることにより,生分解性に優れ,着色が少なく,機械的物性に優れた様々な用途展開可能な高分子量ポリエステルを提供することができる。
また,現在の大気圏の地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した,いわゆるジオールまたはジカルボン酸をポリエステルのモノマーとして使用するために,原料が非常に安価に入手できる。植物原料生産が各地に分散して多様化できるので,原料供給が非常に安定していること,および大気圏の地球環境下において為されるために,二酸化炭素の吸収および放出の物質収支の較差が比較的均衡している。しかも環境に非常に優しい,安全なポリエステルと認識できる。このような本発明のポリエステルは,材料の物性,構造および機能において評価できるばかりでなく,化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない,リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する利点を有する。これは,従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる,あらたな視点のポリエステル製造プロセスを提供するものであるから,新たな第2ステージのプラスチックという,全く新たな視点から,プラスチック材料の利用および発展に著しく寄与するものである。本発明のポリエステルは,土壌投棄をやめて仮に焼却処分しても,有害物,悪臭を発生することが少ない。」
・ 【0014】?【0015】
「・ジカルボン酸
ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては,芳香族ジカルボン酸,脂肪族ジカルボン酸或いはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。…
芳香族ジカルボン酸としては,テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ,芳香族ジカルボン酸の誘導体としては,芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル,具体的には,メチルエステル,エチルエステル,プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。この内,芳香族ジカルボン酸としては,テレフタル酸が好ましく,芳香族ジカルボン酸の誘導体としては,ジメチルテレフタレートが好ましい。…」
・ 【0017】
「…本発明において,これらのジカルボン酸は,バイオマス資源から誘導されるものが好ましい。
本発明でいうバイオマス資源とは,植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの,植物体を食べて成育する動物の体や,植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。この中でも,より好ましいバイオマス資源としては,例えば,木材,稲わら,籾殻,米ぬか,古米,とうもろこし,サトウキビ,キャッサバ,サゴヤシ,おから,コーンコブ,タピオカカス,バガス,植物油カス,芋,そば,大豆,油脂,古紙,製紙残渣,水産物残渣,家畜排泄物,下水汚泥,食品廃棄物等が挙げられる。…これらのバイオマス資源は,一般に,窒素原子やNa,K,Mg,Ca等の多くのアルカリ金属,アルカリ土類金属を含有する。」
・ 【0027】?【0028】
「精製によりジカルボン酸中に含まれる不純物の窒素化合物や金属カチオンの量を減らすことが,通常,実用的な重合体を得るために必要である。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸には,バイオマス資源由来,発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素元素が含まれてくる。具体的には,アミノ酸,たんぱく質,アンモニウム塩,尿素,発酵菌由来等の窒素元素が含まれてくる。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸中に含まれる窒素原子含有量は,カルボン酸中に,窒素原子換算として,該カルボン酸に対して上限は通常2000ppm以下,好ましくは,1000ppm以下,より好ましくは100ppm以下,最も好ましくは50ppm以下である。下限は通常,0.01ppm以上,好ましくは,0.05ppm以上,精製工程の経済性の理由からより好ましくは0.1ppm以上,更に好ましくは1ppm以上,特に好ましくは10ppm以上である。多すぎると,重合反応の遅延化や生成ポリマーの着色,一部ゲル化,そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方,少なすぎる系は,好ましい形態であるが,精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。」
・ 【0036】?【0037】
「・ジオール
本発明においてジオール単位とは,芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり,公知の化合物を用いることができるが,脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。…
脂肪族ジオールの具体例としては,例えば,エチレングリコール,1,3-プロピレングリコール,ネオペンチルグリコール,1,6-ヘキサメチレングリコール,デカメチレングリコール,1,4-ブタンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。…
この内,エチレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,3-プロピレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましく,その中でも,エチレングリコール及び1,4-ブタンジオールが好ましく,更には,1,4-ブタンジオ-ルが特に好ましい。…」
・ 【0042】?【0043】
「…バイオマス資源由来から誘導されたジオールには,バイオマス資源由来,発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合,具体的には,アミノ酸,蛋白質,アンモニア,尿素,発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
発酵法により製造したジオール中に含まれる窒素原子含有量は,ジオール中に,原子換算として,上限は通常2000ppm以下,好ましくは,1000ppm以下,より好ましくは100ppm以下,最も好ましくは50ppm以下である。下限は特に制限されないが,通常,0.01ppm以上,好ましくは,0.05ppm以上,精製工程の経済性の理由からより好ましくは,0.1ppm以上である。多すぎると,重合反応の遅延化や生成ポリマーの着色,一部ゲル化,そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方,少なすぎる系は,好ましい形態であるが,精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。…」
・ 【0077】
「… <ポリエステル>
本発明のポリエステルとは,上記に列挙したジカルボン酸単位およびジオール単位の範疇に属する各種化合物を主体とする成分の反応により製造されるポリエステルはすべて本発明のポリエステルに含まれるが,典型的なものとして,以下のポリエステルが具体的に例示できる。」
・ 【0088】
「本発明で製造されるポリエステルの還元粘度(ηsp/c)値は,実用上十分な力学特性が得られる理由から,0.5以上であり,中でも1.0以上が好ましく,更には1.5以上が好ましく,特に2.0以上が特に好ましい。…」
・ 【0095】
「…本発明のポリエステルは,土壌中の生分解速度が,全ての構成単位が石油資源の原料から得られた同じ化学構造のポリエステルの生分解速度より,1.01倍以上,好ましくは1.05倍以上,より好ましくは,1.1倍以上である。」
・ 【0110】?【0114】
「本発明のポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量はポリエステル質量に対して1000ppm以下である。…重合体中のポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は主に原料中の窒素元素に由来するものであるが,ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量が1000ppm以下であると成型時の着色や異物の発生が少なく,成型後製品の熱または光等の劣化や加水分解が起こりにくく好ましい。…その含有量がより少ないとその効果は顕著となる。共有結合された官能基以外でポリエステル中に含まれる窒素原子含有量は,0.01ppm以上が好ましい。…窒素原子含有量が0.01ppm未満では原料の精製の際の負荷がかかりエネルギー上不利であり,環境に対しての影響も無視できない。また窒素原子含有量が1ppm以上であると土壌における生分解速度が促進され好ましい。窒素原子含有量が上記の範囲にある原料を用いることで,通常には,重合反応において,ポリエステルの重合速度を低下させず,かつ,得られるポリエステルの生分解性を促進させることができる。
本発明者は,本発明のポリエステルのより実用的な生分解性速度,衝撃強度,引っ張り降伏強度,引っ張り破断強度,引っ張り破断伸び,或いは曲げ弾性率などの物理的強度,着色,黄色度(YI値)というような物理的な特性,大気または土壌中への有害物の発生などの性能に関して,総合的に解析および評価した結果,バイオマス資源由来という特有の事情に起因する,いわゆるポリエステル中に必然的に混入する多くの原因物質の内,窒素元素が特に生分解の促進に影響する原因物質の一つであるということを突き止めたものである。そして,本発明者らは,実用ポリエステルとして,許容できるポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が0.01ppm以上1000ppm以下であるという事実を突き止めたものである。ポリエステル原料が,バイオマス資源由来という事情からすれば,製造段階で,中和や,精製など多くの工程で,若干の窒素元素が混入することが有り得るという,特有の事情によるものである。
実用ポリエステルとして,許容できるポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が0.01ppm以上1000ppm以下にする理由をさらに詳細に説明する。このポリエステルに混入する窒素原子は,バイオマス資源由来という事情からすれば,主にバイオマス資源から誘導されるジオール単位,ジカルボン酸単位を含まれていたものがそのまま残るばかりでなく,その製造段階で,中和や,精製など多くの工程で,極微量ではあるが,若干のアンモニア,尿素,アミノ酸,タンパク質,硝酸などの窒素元素が混入することが有り得るということである。この窒素元素は,生分解においては,有利に働き,実施例1および比較例1に見るとおり,生分解特性には,有利に作用することがある。一方で,窒素原子が1000ppm以上,例えば5000ppmになれば,ポリエステルの重合に関する,重合速度,重合度を高めるにおいて支障となり,ポリエステルの材料特性の脆弱の原因となる。
しかし,本発明のポリエステルにおいて重要なことは,安全,安心,無害というような,いわゆるグリーンプラの信頼を確保するということが,重要な課題である。本発明の生分解ポリエステルが信頼を確保する為には,窒素原子の存在が微妙に影響をする。
窒素原子を0.01ppm以下というような,超微量に取り除く為には,非常に高度な技術操作を要するばかりでなく,価格において非常に高くなり,この発明を実施するにおいて,支障となる。ポリエステルに残存する窒素原子の量の影響を解析すれば,ごく微量の窒素原子が,生分解性に支障とはならず,むしろ生分解の促進に関与するようにも解することができる挙動を示す。そすれば,ポリエステルに混在する窒素原子に関して,許容できる範囲を模索することが発明の重要な解決すべき課題となる。この窒素原子を含有するポリエステルが,土壌中で生分解すれば,特に一時に多量の,または持続的に一箇所で生分解をさせると,蓄積により,土壌のpHに微妙に影響をして,蓄積すれば微生物への影響,動植物への影響,水質に対する影響というような環境汚染が進むことになることが懸念される。グリーンプラとしての,安全,安心というような信頼を失墜することにない範囲を解析した結果,通常の本発明のポリエステルの使用状態では,窒素原子が0.01?1000ppm程度が,窒素原子の影響を受けることが少なく,pHの影響が自然に消滅する,または自然浄化で自然に回復する適量な範囲であること,およびさらに重要なことは土壌の富裕化による植物への影響を防ぐことができる許容の範囲である。
さらに重要なことは,本発明のポリエステルを嗜好品,飲料のような食品のボトル,容器,食品包装材などに使用した場合に,窒素原子を多量に含むポリエステルは,味覚,不快感,毒性などの影響に対する信頼も考慮していなければならない。グリーンプラとしての信頼性を確保することは,環境への影響ばかりでなく,人体,動植物への食品としての影響も高度に配慮したものでなければならない。勿論窒素原子を含む化合物は,微量では,人体への毒性として作用するようなものではないが,味覚,悪臭,不快感,といような感覚に影響することも懸念されるので,消費者に対する信頼を最大限に配慮しなければならない。本発明のポリエステルは,材料学的な挙動の解析ばかりでなく,その製造から,成形,流通および成形品の安全,生分解,回収,焼却というようなあらゆる場合を想定して,消費者にその信頼性を担保するために工夫された材料である。そのような諸事情を考慮すれば,ポリエステルの,重合,成形,成形品の使用,生分解,および焼却などのそのような総合的な事情を勘案すれば,窒素原子含有量の許容できる最高は1000ppm程度といえる。」
・ 【0135】
「…また得られる成形品は,ショッピングバッグ,ゴミ袋,農業用フィルム等の各種フィルム,化粧品容器,洗剤容器,食品容器,漂白剤容器等の各種容器類,釣り糸,漁網,ロープ,結束材,手術糸,衛生用カバーストック材,保冷箱,緩衝材,医療材料,電気機器材料,家電筐体,自動車材料などの用途への使用が期待される。」
・ 【0206】
「…本実施例の検討において,ポリエステル中の窒素原子の含有量が高いほど生分解性が高い傾向があることが見出された。一方,窒素原子の含有量が多いほどポリエステルの着色や重合阻害が著しくなる傾向があることが判る。また,窒素原子の含有量が多いほど,一部ゲル化により生成したと考えられる有機溶媒に対する不溶物が多くなる傾向があり,これらが製品中へ混入されると製品の景観を損ねたり,物性の低下が引き起こされる。」
イ 上記アのとおり,引用文献1には,特に特許請求の範囲を総合すると,次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて,該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールが共にバイオマス資源から得られたものであって,該ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が0.5以上であり,ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素原子を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が該ポリエステルに対して質量比で0.01ppm以上1000ppm以下であるバイオマス資源由来ポリエステルを成形してなる成形体。」

(2) 対比
ア 本願補正発明と引用発明を対比する。
本願補正発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマー」はポリエステルの一種であり,また,その構成成分であるテレフタレート成分及びジオール成分は共に部分的に又は全面的に少なくとも1種のバイオベース材料に由来するものであるところ,引用発明の「ポリエステル」の原料であるジカルボン酸及びジオールも,共にバイオマス資源(バイオベース材料)から得られたものであるから,本願補正発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマー」は引用発明の「バイオマス資源由来ポリエステル」に一応対応するものであるといえる。
同様に,本願補正発明のテレフタレート成分である「テレフタル酸」はジカルボン酸の一種であるから,引用発明の「ジカルボン酸」に対応し,本願補正発明のジオール成分である「エチレングリコール」はジオールの一種であるから,引用発明の「ジオール」にそれぞれ対応する。
さらに,本願補正発明の「飲料又は食品用容器」も成形体の一態様であるから,引用発明の「成形体」に対応するものである。
イ したがって,本願補正発明と引用発明との一致点,相違点は,それぞれ次のとおりのものと認めることができる。
・ 一致点
「ポリエステルポリマーを含む成形体であって,前記ポリマーのジカルボン酸とジオールは共に部分的に又は全面的に少なくとも1種のバイオベース材料に由来する成形体」である点。
・ 相違点1
ポリエステルポリマーを構成する成分であるジカルボン酸及びジオール並びにこれら成分からなるポリエステルについて,本願補正発明は「テレフタル酸」及び「エチレングリコール」からなる「ポリエチレンテレフタレート(PET)」であると特定するのに対し,引用発明はポリエステル並びにその構成成分を具体的に特定しない点。
・ 相違点2
成形体について,本願補正発明は「飲料又は食品用容器」と特定するのに対し,引用発明は具体的に特定しない点。

(3) 相違点についての判断
ア 引用発明の解決課題
引用文献1の記載(上記(1)ア)から,引用発明について,概ね次のことがいえる。
(ア) 近年環境問題が重視されてきており,化石燃料枯渇問題,大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境負荷の問題に対する対策が必要となっているところ,ポリエステルの原料として再生可能原料であるバイオマス由来原料を用いることにより,原料供給が化石燃料枯渇とは無関係になり,二酸化炭素削減に大きく貢献できることが背景技術としてあった(【0002】など)。
(イ) 引用発明は,上記背景技術のもと,ポリエステル原料であるバイオマス資源から製造されたジカルボン酸及びジオールに不純物として含まれる窒素原子含有量が重合速度や樹脂の着色および生分解性に大きな影響を与えるという知見に基づき,当該窒素原子含有量を特定の範囲(ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素原子を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が該ポリエステルに対して質量比で0.01ppm以上1000ppm以下)とすることで,重合反応においてポリエステルの重合速度を低下させず,かつ,得られるポリエステルの生分解性を促進させるといった課題を解決するものである(【0007】,【0110】など)。
また,引用発明のポリエステルはバイオマス資源から製造されたものであるので,同一構造の石油由来の原料から製造したポリエステルと比べ,生分解性が良好であるといった効果を奏するものである(【0012】,【0095】,【0206】など)。
イ 相違点1について
引用発明のポリエステルは,上述のとおり,その原料がジカルボン酸及びジオールであるところ,引用文献1には,当該ジカルボン酸の例として「テレフタル酸」が,また当該ジオールの例として「エチレングリコール」がそれぞれ好ましいものとして挙げられている(【0015】,【0037】)。
とすると,引用発明において,バイオマス資源由来ポリエステルを具体的に設計しようとした当業者が,その原料であるジカルボン酸及びジオールとして,引用文献1に例示される「テレフタル酸」及び「エチレングリコール」をそれぞれ選択すること,そしてその選択の結果,バイオマス資源由来ポリエステルを「ポリエチレンテレフタレート(PET)」とすることは,容易に想到しうることである。
ウ 相違点2について
引用文献1には,引用発明の成形体の例として「飲料のような食品のボトル,容器」が挙げられている(【0114】,【0135】)。また,「飲料のような食品のボトル,容器」に用いられるポリエステルとしてPETは周知である。
そして,上記イで検討のとおり,引用発明のポリエステルをPETとすることが想到容易であることを併せ踏まえると,引用発明の成形体について,その用途を設定するにあたり,引用文献1の上記例示に基づいて「飲料又は食品用容器」を想到することもまた,容易といえる。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人は,引用文献1はバイオマス由来ポリエステルが生分解性であることを教示するが,本願補正発明は生分解性よりも再利用性に重点を置くものであって引用発明とは課題が異なる旨(主張1),また,引用文献1はバイオマス由来PETを開示しておらず,当業者が引用文献1に開示の膨大なジカルボン酸類のリストからテレフタル酸を選択し,ジオール類のリストからエチレングリコールを選択する動機付けはなく,よって引用文献1の記載からバイオマス由来のPETおよび/またはバイオマス由来のPET容器を想到することはできない,なぜなら,従来PETは石油化学原料由来かバイオマス資源由来かにかかわらず生分解性でなく,PETボトルは完全な条件下であっても分解には5?10年を要することが当業者に公知であったからである旨(主張2)主張する(請求書の補正書4?5頁)。
(イ) しかし,請求人の上記主張は,失当である。
(ウ) まず,上記主張1について検討するに,上記ア(ア)で述べたように,そもそも引用発明は,ポリエステルの原料として石油化学由来原料の代わりに再生可能原料であるバイオマス由来原料を用いることを前提技術ないしは背景技術とするものであり,このことは,請求人主張の本願補正発明が奏するとされる再利用性と何ら変わるものでない。すなわち,引用文献1には,引用発明のポリエステルがリサイクルを含めた循環型社会の実現性に資する旨の記載がうかがえるところ(【0012】),引用発明のポリエステルの原料が石油由来原料から製造されたポリエステルの原料と同一構造を有するものである以上,引用発明は,本願補正発明と同様の課題を解決できるといえる。
(エ) また,上記主張2について検討するに,上記ア(イ)で述べたように,引用発明は,バイオマス資源から製造されたジカルボン酸及びジオールに不純物として含まれる窒素原子含有量が重合速度や樹脂の着色および生分解性に大きな影響を与えるという知見に基づき,当該窒素原子含有量を特定の範囲に設定することで,ポリエステルの重合速度を低下させず,得られるポリエステルの生分解性を促進させるといった課題を解決するものである。そして,引用文献1には,バイオマス資源由来ポリエステルとして,特にポリエチレンテレフタレート(PET)は上記課題を解決できない旨の記載はないのであるから,引用発明のポリエステルについて,ことさらPETを排除すべき理由は見あたらない。
請求人は,PETは石油化学原料由来かバイオマス資源由来かにかかわらず生分解性でない旨主張するが,当該主張には根拠はない。むしろ,上記ア(イ)で述べたように,引用発明が,バイオマス資源由来の原料から製造されたポリエステルが同一構造の石油由来の原料から製造したポリエステルと比べて生分解性が良好であるとの知見に基づいてされたものであることを踏まえると,当業者は,引用文献1の記載から,ポリエステルがPETであるか否かにかかわらず,換言すれば,ポリエステルの原料がテレフタル酸かエチレングリコールかにかかわらず,バイオマス資源由来の原料から製造されるポリエステルの方が石油由来の原料から製造されるポリエステルよりも生分解性が良好であると理解するはずである。すなわち,引用発明のポリエステルの原料として,バイオマス資源由来のテレフタル酸及びエチレングリコールを選択することを阻害する理由はない。
そして仮に,請求人が主張するように,PETの分解には5?10年を要することが当業者に公知であるといえたとしても,そのような事実は,上記判断を左右しない。
オ 小活
よって,本願補正発明は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないといえる。

6 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年3月18日付けで補正された特許請求の範囲及び本願明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを含む飲料又は食品用容器であって,
前記ポリマーは,テレフタレート成分とジオール成分を含み,
前記テレフタレート成分及び前記ジオール成分は,共に,部分的に又は全面的に少なくとも1種のバイオベース材料に由来する,
飲料又は食品用容器。」

2 原査定の理由(平成24年9月14日付け拒絶理由)
原査定の理由は,要するに,本願発明は,引用文献1に記載された発明(引用発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。

3 引用発明
引用発明は,上記第2_5(1)イにおいて認定のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,本願補正発明との比較において,「テレフタレート成分がテレフタル酸であ」ること及び「ジオール成分がエチレングリコールである」ことの限定がないものである(上記第2_1参照)。
そうすると,本願発明の特定事項をすべて含む本願補正発明が,上述のとおり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである以上,本願発明も,同様の理由により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

第4 むすび
以上のとおり,原査定の理由は妥当なものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-25 
結審通知日 2014-08-26 
審決日 2014-09-10 
出願番号 特願2011-501869(P2011-501869)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08G)
P 1 8・ 575- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阪野 誠司牧野 晃久  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 須藤 康洋
大島 祥吾
発明の名称 バイオベースポリエチレンテレフタレートポリマー、およびその作製方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
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