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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F03G
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 F03G
管理番号 1296788
審判番号 不服2013-4417  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-06 
確定日 2015-02-06 
事件の表示 特願2010-276373「重力発電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開、特開2012- 21521〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年12月10日(パリ条約の例による優先権主張2010年7月16日、台湾)の出願であって、平成24年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月5日付けで拒絶査定がなされ、平成25年3月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において同年6月19日付けで書面による審尋がなされ、同年9月12日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成25年3月6日付けの手続補正について
1 平成25年3月6日付けの手続補正の内容
平成25年3月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)のうち、特許請求の範囲についての補正は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年6月14日付け手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものであり、発明の詳細な説明についての補正は、段落【0048】の記載を削除するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
多数の重力物体、ロータを有する発電機、ベルトコンベア、多数の磁性部材、及びベルトコンベア動力供給機構を備える重力発電装置であって、
前記重力物体は、それぞれ磁性を有し、
前記重力物体が重力により重力軌道を通る際、前記ロータを回転させて電力を発生させ、
前記ベルトコンベアは、前記重力物体を最低地点から最高地点へ搬送した後、重力物体が重力により前記重力軌道へ通し、
前記磁性部材は、前記重力軌道に配置されてコイルに巻きつかれ、
前記コイルが前記ベルトコンベア動力供給機構に接続し、
前記ベルトコンベア動力供給機構は、前記ベルトコンベアへ動力を供給し、
前記重力軌道が有する重力伝動機構により、前記重力物体を最高地点周辺で前記重力伝動機構と係合させて、重力により前記重力伝動機構が下方へ引っ張られ、前記発電機の前記ロータが前記重力伝動機構に駆動させること、
前記重力物体が前記重力軌道を通る際、前記磁性部材の磁束量を変化させ、前記磁性部材の前記コイルに誘導電流を発生させ、前記ベルトコンベア動力供給機構に電磁誘導電流を供給すること、
を特徴とする重力発電装置。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記重力軌道に対して水平に配置され、
前記コイルが互いに直列に接続されて、
前記重力物体が前記重力軌道を通る際、直列接続の前記コイルに電磁誘導電流を発生させ、
前記ベルトコンベア動力供給機構に電磁誘導電流を供給すること、
を特徴とする請求項1に記載の重力発電装置。
・・・(略)・・・」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
多数の重力物体、ロータを有する発電機、ベルトコンベア、多数の磁性部材、及びベルトコンベア動力供給機構を備える重力発電装置であって、
前記重力物体は、それぞれ磁性を有し、
前記重力物体が重力により重力軌道を通る際、前記ロータを回転させて電力を発生させ、
前記ベルトコンベアは、前記重力物体を最低地点から最高地点へ搬送した後、重力物体が重力により前記重力軌道へ通し
前記磁性部材は、前記重力軌道に配置されてコイルに巻きつかれ、
前記コイルが前記ベルトコンベア動力供給機構に接続し、
前記ベルトコンベア動力供給機構は、前記ベルトコンベアへ動力を供給し、
前記重力軌道が有する重力伝動機構により、前記重力物体を最高地点周辺で前記重力伝動機構と係合させて、重力により前記重力伝動機構が下方へ引っ張られ、前記発電機の前記ロータが前記重力伝動機構に駆動させること、
前記重力物体が前記重力軌道を通る際、前記磁性部材の磁束量を変化させ、前記磁性部材の前記コイルに誘導電流を発生させ、前記ベルトコンベア動力供給機構に電磁誘導電流を供給すること、
を特徴とする重力発電装置。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記重力軌道に対して平行に配置され、
前記コイルが互いに直列に接続されて、
前記重力物体が前記重力軌道を通る際、直列接続の前記コイルに電磁誘導電流を発生させ、
前記ベルトコンベア動力供給機構に電磁誘導電流を供給すること、
を特徴とする請求項1に記載の重力発電装置。
・・・(略)・・・」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項2については、本件補正前の請求項2の「水平」という記載を「平行」という記載に補正するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
特許請求の範囲の請求項2以外の請求項については、補正されていない。
発明の詳細な説明については、段落【0048】の記載を削除するものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、本件補正は、適法なものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1(2)」の【請求項1】のとおりである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

「この出願については、平成24年 2月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
発明の詳細な説明の記載からでは、本願請求項1?9に係る重力発電装置が、発電装置として機能する(すなわち、継続的に発電できる)ための構成が、依然として不明である。
出願人は意見書において、上記拒絶理由通知書の理由1の指摘に対して、「一部の電力を変換してベルトコンベア動力供給機構へ投入する設計は、ベルトコンベア動力供給機構に必要な外部のエネルギ供給を減らすためです。この外部のエネルギは、必ずしも電気エネルギでなくともよく、できれば電気エネルギでないほうが好ましいです。このような設計は、全体の発電電力(電力A+B)から一部の電力(電力B)を取り出して発電用途として用い、発電用途として用いない電力(電力A)が電力の一部しか占めないため、重力発電装置が外部のエネルギに頼る比率を減らし、比較的少ない外部エネルギの供給により重力発電装置を駆動し続けることができます。そのため十分合理的です。上述したことから明らかなように、本願は実施可能であり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしております。」と主張している。しかしながら、発明の詳細な説明には、ベルトコンベア動力供給機構(実施の形態では、ベルトコンベアモータ)に、重力発電装置の外部からエネルギを供給することは何ら開示されていないし、明細書の全記載(例えば段落0048、0049等)を参酌すると、ベルトコンベア動力供給機構については、むしろ外部エネルギを必要としていないことを前提にしていると解される。
したがって、出願人の上記主張は採用できない。
以上のとおりであるから、上記理由1は解消しておらず、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

また、「平成24年 2月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1」の概要は、次のとおりである。

「【1】この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

発明の詳細な説明の記載からでは、本願請求項1?11に係る重力発電装置が、発電装置として機能する(すなわち、継続的に発電できる)ための構成が不明である。
発明の詳細な説明の段落0024、0042等によると、ベルトコンベア動力供給機構はベルトコンベアモータであって、その駆動電流は、コイル105に発生した誘導電流と発電機106によって発生する電流とによって賄われるものと解される。
しかしながら、そもそもコイル105及び発電機106から得られる電気エネルギーは、ベルトコンベア動力供給機構に投入された電気エネルギーの一部が変換されたものであるから、これがベルトコンベア動力供給機構に投入する電気エネルギーを超えないことは技術常識である。そうであるとすると、仮に始動時において外部から電気エネルギーを投入したとしても、結局のところその後コイル105及び発電機106から得られる電気エネルギーは減衰してしまい、ベルトコンベア動力供給機構を駆動するには足りないものとなってしまうから、本願請求項1?11に係る重力発電装置は、発電装置として機能し得ないものである。(ベルトコンベア動力供給装置に投入する電気エネルギーを超えて、コイル105及び発電機106から電気エネルギーを得られるのなら、それはいわゆる永久機関である。)
なお、ベルトコンベア動力供給機構に、始動時のみならず始動後も継続的に外部から電気エネルギーを投入すれば、重力発電装置自体は駆動し続けるものと認められるが、重力発電装置から得られる電気エネルギーは、外部から投入される電気エネルギーよりも当然小さいものになってしまうから、わざわざこの重力発電装置を駆動する意味がない。(外部から投入する電気エネルギーを、この重力発電装置を介さずに、直接利用すればよい。)
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

3 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、概ね次の記載がある(以下、順に、「記載3a」ないし「記載3g」という。なお、下線は当審で付したものである。)。

3a 「【0001】
本発明は、重力発電装置に関する。
【0002】
電力は人々の日常生活にとって必要不可欠なエネルギ源であり、各種産業も電力供給がなければ発展することができない。」(段落【0001】及び【0002】)

3b 「【0004】
発電所で使用する発電機は、発生する誘導電流が非常に大きいため、上述したような一般の発電機とは構造が大きく異なる。図6を参照する。図6に示すように、従来技術による発電所で使用される発電機の構造は、回転軸として用いるロータ601が永久磁石又は電磁石6011を上に有し、固定子として用いる導電線が巻回された環状磁芯602が周設され、回転軸によりロータ601が回転されると、固定子602に巻回された導電線に誘導電流が発生する。実際に発電機で発電する際は、回転軸の動力として様々なエネルギー源を利用することができる。
【0005】
しかし、従来の発電方式には、以下(1)?(4)の問題点がある。
(1)エネルギ源が将来枯渇したり、取得にかかるコストが高い(例えば、火力発電)。
(2)取り返しのつかないほど自然環境を汚染させる可能性がある(例えば、原子力発電)。
(3)特殊な環境条件に頼る必要があり、人為的な方式により発電量を制御することが困難である(例えば、水力発電及び風力発電)。
(4)自然災害が発生したときのリスクが高く、発電における管理が困難である(例えば、原子力発電所における放射能漏れや放射性廃棄物の処理など)。
【0006】
例えば、火力発電は、石油又は石炭を燃料として大量に消費するため、燃料にかかるコストが高い上、燃料の運送及び燃焼により排出される排気ガスを処理することが困難である。また、過度の開発により石油及び石炭が枯渇する虞がある。また、水力発電の場合、エネルギ源として高所から低所へ流れる大量の水を利用するが、天候に左右される降水量を制御することが困難であるため(例えば、台湾の気候は、冬の降水量は少なく、夏の降水量が多い)、消費電力がピークのときに十分な電力を供給することができない虞がある。また、原子力発電は、放射能が漏れる虞がある上、ウランの埋蔵量も少ない。風力発電機は、風力が強い地域又は季節のときにしか使用することができない上、風力発電機の羽根が損壊しないように、風速が所定範囲のときにしか使用できない。
【0007】
環境を保護しながら半永久的に使用でき、未だ普及していない発電方式としては、太陽光発電、潮力発電、海洋温度差発電、地熱発電、バイオマス発電などがある。これらの発電方式は、自然の力を直接利用し、環境を汚染させることが少ない上、エネルギ源が将来枯渇する虞もない。しかし、発電機のエネルギ源が特定の地理領域又は環境条件により左右される。人為的な方法により、ピーク時間帯及びオフピーク時間帯の発電量を制御することは困難であるため、発電量が不足したり多すぎたりし、安定した供給電力が必要な産業にとって、理想的な発電方式ではない。また、このような特殊な発電所は建設コストが高く、経済性が好ましくない。
【0008】
そのため、エネルギ源が安定し、環境を汚染させず、産業の経済性が高い上、様々な地理環境の条件下でも使用でき、産業の発展に役立つ発電方式が求められていた。」(段落【0004】ないし【0008】)

3c 「【0009】
本発明の主な目的は、重い物を高い所から落とすことにより、位置エネルギを運動エネルギに変えて発電機を駆動し、電気エネルギを発生させ、発生された誘導電流により重い物を搬送する重力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、1組の多数の重力物体、発電機、ベルトコンベア及びベルトコンベア動力供給機構を備える重力発電装置であって、1組の多数の前記重力物体は、それぞれ磁性を有し、前記発電機は、1組の多数の前記重力物体が重力により重力軌道を通り、前記発電機のロータを回転させて電力を発生させ、前記ベルトコンベアは、前記重力物体のそれぞれを最低地点から最高地点へ搬送し、重力により前記重力軌道へ通し、前記ベルトコンベア動力供給機構は、前記ベルトコンベアへ動力を供給し、前記重力軌道が有する重力伝動機構により、前記重力物体のそれぞれを高所で前記重力伝動機構と係合させ、重力により前記重力伝動機構が下方へ引っ張られ、前記発電機の前記ロータを駆動させることを特徴とする重力発電装置が提供される。
【0011】
1組又は多数組の多数の磁性部材をさらに備え、前記磁性部材は、前記重力軌道に対して平行に配置され、前記磁性部材には、コイルが巻回され、多数の前記磁性部材の前記コイルが互いに直列に接続されることにより、前記重力物体のそれぞれが前記重力軌道を通る際、多数の前記磁性部材が発生させる磁束量を変化させ、前記磁性部材それぞれの前記コイルに誘導電流を発生させ、直列接続の前記コイルに電磁誘導電流を発生させ、直列接続の前記コイルを前記ベルトコンベア動力供給機構に接続し、前記ベルトコンベア動力供給機構に電磁誘導電流を供給することが好ましい。
【0012】
多数組の多数の前記重力物体と多数の前記重力軌道とを互いに並列に配列し、1組の多数の前記重力物体が1つの前記重力軌道に対応し、互いに隣接した各組の前記重力物体が交互に前記ロータを引っ張ることにより、前記ロータに均一な力を与えて前記発電機を駆動させ、前記重力伝動機構と係合された伝動ギアは、前記発電機の前記ロータを回転させ、前記発電機は、多数組の前記伝動ギアを有し、1組の前記伝動ギアは、1組の前記重力伝動機構に対応し、前記重力伝動機構それぞれの回転により、各組の前記伝動ギアを駆動して前記ロータを回転させ、前記発電機の個数が1つ又は複数であることが好ましい。
【0013】
互いに並列するように配置された各組の多数の前記重力物体に対して、前記ベルトコンベア及び前記重力伝動機構をそれぞれ有し、前記重力軌道それぞれの両側には、1組の多数の前記磁性部材がそれぞれ配置されていることが好ましい。」(段落【0009】ないし【0013】)

3d 「【0021】
本発明の重力発電装置は、発電コストが安く、メインテナンスが容易であり、重量を変えることにより発電量を自在に調整することができる上、環境を全く汚染させず、様々な地理環境や天然資源に乏しい地域で利用して産業の発展にも役立つ。」(段落【0021】)

3e 「【0024】
図1を参照する。図1に示すように、本発明の一実施形態による重力発電装置1は、汚染されたり外界の影響を受けたりしないように、チャンバ10内に配置されている。図1は、チャンバ10の側面部の1つを外し、重力発電装置1の内部構造を見えるようにしたときの状態を示す。図1に示すように、重力発電装置1は、1組の多数の重力物体102、発電機106、ベルトコンベア101及びベルトコンベア動力供給機構103を有する。各重力物体102は、多数組の磁性積層重力部材1028をそれぞれ有する。発電機106は、1組の多数の重力物体102が重力により重力軌道1021を通り、発電機106の伝動ギア109を回転させて発電を行うために用いる。ベルトコンベア101は、各重力物体102が重力により最高地点Bから重力軌道1021を通って搬送された後、最低地点Aから最高地点Bへ搬送させるために用いる。ベルトコンベア動力供給機構103(本実施形態ではベルトコンベアモータである)は、ベルトコンベア101へ動力を供給するために用いる。多数の磁性部材104(本実施形態では磁性円筒体であるが、他の実施形態では磁性長方体でもよい)は、重力軌道1021の周囲に配置され、磁性部材104の表面に巻回したコイル105を有し、各重力物体102が重力軌道1021を通るときに、多数の磁性部材104の磁束量を変化させ、コイル105に誘導電流を発生させ、ベルトコンベア動力供給機構103に電磁誘導電流を供給する。重力物体102が最低地点Aに達してから、所定距離で平行移動すると、傾斜プレート11の上面に当接されるが、傾斜プレート11の上面が平滑であるため、重力物体102を引き上げる際に発生する摩擦抵抗力を減らし、重力物体102を引き上げる際に必要な力が小さくてすむようにする。重力物体102の上端部には、ベルトコンベア101により平行移動させたり、上方へ引き上げたりする際に、ベルトコンベア101上の横杆108に係合させる凹体120が設けられている(図3及び図4(a)に示す)。重力物体102は、外表面に多数の凸体1024を有する。凸体1024は、最高地点(B)で重力軌道1021の重力伝動機構1023に係合され始め、各重力物体102を重力伝動機構1023へ係合してから、重力により重力伝動機構1023を下方へ引っ張る。各重力伝動機構1023は、発電機106の伝動ギア109に対応させ、重力伝動機構1023により伝動ギア109を駆動して発電機106を回転させる。本実施形態の重力伝動機構1023はチェーンである。
【0025】
図2を参照する。図2に示すように、本発明の一実施形態による重力発電装置は、1組の重力物体102の数は14個である。各重力物体102の重量は、0.3トンであり、同一組の2つの重力物体102の間隔は約1mである。各組の多数の重力物体102は、重力軌道1021、ベルトコンベア101及び重力伝動機構1023をそれぞれ有する。並列に配列された5組の重力物体102は、1つの発電機106を駆動し、定格電力(3.85MW)で駆動される。互いに隣接した各組の重力物体102は、交互にロータを引っ張ることにより、ロータに均一な力を与えて発電機106を駆動させる。ロータが多数組の重力物体102によりスムーズに交互に引っ張られるため、重力物体102が配列順で落下し、ロータを同じ方向で回転させ続けることができる。
【0026】
図3を参照する。図3は、本発明の一実施形態による重力発電装置1の上部を示す側面図である。図3に示すように、重力物体102が最低地点Aまで落下し、所定距離で平行移動すると、最高地点Bまで引っ張られた後、重力物体102は、その外表面に設けられた凸体1024が重力伝動機構1023の凹孔1025に係合され、重力軌道1021を介して下方へ移動し、発電機106の伝動ギア109を駆動する。重力物体102が下方へ移動すると、重力物体102の2組の磁性積層重力部材1028間の通過空間1029を磁性円筒体104が通り、磁性円筒体104の表面に巻回されたコイル105の磁束量が変化し(図4(b)、図4(c)及び図4(d)に示す)、コイル105中に誘導電流が発生する。そして、下端の磁性円筒体104が通過空間1029を通ることにより、この誘導電流はベルトコンベア動力供給機構103に電流が供給され続ける。」(段落【0024】ないし【0026】)

3f 「【0041】
誘導起電力をコイル105の抵抗値で除算すると、コイル105上の誘導電流を算出することができる。この誘導電流がベルトコンベア接線セット1026を介してベルトコンベア動力供給機構103に供給され、ベルトコンベア101に動力を供給したり、余分な電力を発電機106へ送って保存したりすることができる。また、多数の磁性円筒体104と重力物体102との間の距離を小さくしたり、多数の磁性円筒体104と重力物体102との間の磁性を大きくしたりすることにより、コイル105上に発生する電磁誘導電流を大きくすることができる。
【0042】
さらに、発生した誘導電流が不足し、ベルトコンベア動力供給機構103が重力物体102をベルトコンベア101に沿って搬送することができない場合、ベルトコンベア動力供給機構103に必要な動力を発電機106により供給してもよい。」(段落【0041】及び【0042】)

3g 「【0049】
上述したことから分かるように、本発明の重力発電装置は、エネルギ源が枯渇せず、メインテナンスが容易であり、メインテナンス時間が短く、組立てが簡便で安価で(重力発電装置が故障したり損壊したりしても、その部分だけを交換することができるため、全体を交換する必要がない)、特定の自然環境に頼る必要がなく、自然環境を汚染させない長所を有し、自然環境を半永久的に保護しながら、産業を発展させることができる。」(段落【0049】)

4 当審の判断
(1)記載3aによると、本願発明は、各種産業に電力を供給する発電装置の発明であるから、発電装置の駆動によって、継続的に電力を発生させて、供給された電力量よりも電力量を増大させ、増大させた分の電力を外部に供給できなければならない。
また、記載3b、3d及び3gによると、本願発明は、火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電、太陽光発電、潮力発電、海洋温度差発電、地熱発電、バイオマス発電などを使用しないものであって、発電コストが安く、環境を全く汚染させず、様々な地理環境や天然資源に乏しい地域で利用できるものでなければならない。
そこで、発明の詳細な説明に、本願発明が、継続的に電力を発生させて、供給された電力量よりも電力量を増大させ、増大させた分の電力を外部に供給できることが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているかどうか、また、本願発明が、火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電、太陽光発電、潮力発電、海洋温度差発電、地熱発電、バイオマス発電などを使用しないものであって、発電コストが安く、環境を全く汚染させず、様々な地理環境や天然資源に乏しい地域で利用できるものであることが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているかどうかについて、以下に検討する。

(2)記載3c及び3eによると、本願発明の一実施形態による重力発電装置1においては、まず、重力物体102が、モータであるベルトコンベア動力供給機構103によってベルトコンベア101を用いて、最低地点Aから最高地点Bまで搬送され、その後、重力物体102が、最高地点Bから最低地点Aまで落下する際に、発電機106を駆動して電力を発生させ、また、同時に、磁性円筒体104の表面に巻回されたコイル105から誘導電流を発生させている。即ち、重力物体102を最高地点Bから最低地点Aまで落下する際の位置エネルギーの変化分の内、誘導電流によって生じる磁力と磁性部材による磁力の間に発生する反発力及び摩擦等で失われるエネルギーを除いたものを、発電機106による電力及び磁性円筒体104の表面に巻回されたコイル105から誘導電流として取り出していることになる。
他方、記載3fによると、ベルトコンベア動力供給機構103は、磁性円筒体104の表面に巻回されたコイル105からの誘導電流及び発電機106からの動力により駆動されるものであるが、ベルトコンベア動力供給機構103には、少なくとも、重力物体102を最低地点Aから最高地点Bまで搬送するのに必要な電力(重力物体102を最高地点Bから最低地点Aまで落下する際の位置エネルギーの変化分に相当する。)に加え、ベルトコンベア101を駆動するのに必要な電力を加える必要がある。
したがって、磁性円筒体104の表面に巻回されたコイル105からの誘導電流の誘導電流及び発電機106による電力を全て使用したとしても、重力物体102を最低地点Aから最高地点Bまで搬送することはできず、不足分の電力を外部から重力発電装置1に供給する必要がある。即ち、不足分以上の電力を継続的に重力発電装置1に供給した場合に、不足分との差に相当する電力(当然、重力発電装置1に供給された電力よりも小さい量の電力である。)を、継続的に外部に供給できることになるが、供給された電力よりも小さい電力しか外部に供給できないのであるから、重力発電装置1は、継続的に電力を発生させて、供給された電力量よりも電力量を増大させ、増大させた分の電力を外部に供給する発電装置であるとはいえない。
してみると、発明の詳細な説明の記載では、本願発明は、継続的に電力を発生させて、供給された電力量よりも電力量を増大させ、増大させた分の電力を外部に供給するものとはいえず、各種産業に電力を供給する発電装置として機能するための構成が、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

また、上記のとおり、本願発明の一実施形態による重力発電装置1においては、不足分以上の電力、即ち外部に供給できる電力より大きい量の電力を継続的に外部から重力発電装置1に供給するのであるから、発電コストが安くなっているとはいえないし、不足分以上の電力を火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電、太陽光発電、潮力発電、海洋温度差発電、地熱発電、バイオマス発電以外の如何なるエネルギー源を用いて供給しているのかや磁性円筒体104の表面に巻回されたコイル105からの誘導電流及び発電機106からの動力により駆動されるベルトコンベア動力供給機構103にどのように供給するのかも、発明の詳細な説明に記載されていない。

(3)したがって、発明の詳細な説明に、本願発明が、継続的に電力を発生させて、供給された電力量よりも電力量を増大させ、増大させた分の電力を外部に供給できること及び火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電、太陽光発電、潮力発電、海洋温度差発電、地熱発電、バイオマス発電などを使用しないものであって、発電コストが安く、環境を全く汚染させず、様々な地理環境や天然資源に乏しい地域で利用できるものであることが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

5 回答書における請求人の主張について
請求人は、平成25年9月12日付け回答書において、「外部より供給するエネルギーの一部は当然に「電気」エネルギー以外のエネルギーである必要があることが容易に理解できます。かかる「電気」エネルギー以外のエネルギーとしては、当業者であれば、例えば、水力エネルギー、風力エネルギー、海洋温度差エネルギー、地熱エネルギー等のエネルギーを容易に想起することができます。」(以下、「請求人主張」という。)と主張しているが、記載3e及び3fによると、ベルトコンベア動力供給機構103に供給できるエネルギーは電気エネルギーであるから、「外部より供給するエネルギーの一部は当然に「電気」エネルギー以外のエネルギーである必要があることが容易に理解できます。」という主張は、発明の詳細な説明の記載と矛盾するものであるし、記載3bによると、本願発明は、水力エネルギー、風力エネルギー、海洋温度差エネルギー、地熱エネルギー等の特定の地理領域又は環境条件により左右されるエネルギーを除外していることから、「かかる「電気」エネルギー以外のエネルギーとしては、当業者であれば、例えば、水力エネルギー、風力エネルギー、海洋温度差エネルギー、地熱エネルギー等のエネルギーを容易に想起することができます。」という主張も、発明の詳細な説明の記載と矛盾するものである。
したがって、請求人主張は、発明の詳細な説明の記載に基づかないものであり、理由がない。

第4 むすび
以上のとおり、発明の詳細な説明に、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-01 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-20 
出願番号 特願2010-276373(P2010-276373)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (F03G)
P 1 8・ 536- Z (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 則夫  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
加藤 友也
発明の名称 重力発電装置  
代理人 廣田 雅紀  
代理人 小澤 誠次  
代理人 東海 裕作  
代理人 松田 一弘  
代理人 仲 晃一  
代理人 堀内 真  
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