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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10G
管理番号 1296906
審判番号 不服2013-15418  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-09 
確定日 2015-01-28 
事件の表示 特願2009-525961「廃棄物からの燃料の生成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月 6日国際公開、WO2008/025493、平成22年 1月21日国内公表、特表2010-501685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2007年 8月24日(パリ条約による優先権主張:2006年 8月31日(DE)ドイツ)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成21年 4月27日 翻訳文提出
平成22年 8月18日 出願審査請求
平成24年11月 2日付け 拒絶理由通知
平成25年 2月 5日 意見書・手続補正書
平成25年 4月 5日付け 拒絶査定
平成25年 8月 9日 本件審判請求
同日 誤訳訂正書
平成25年 8月30日付け 審査前置移管
平成25年 9月17日付け 前置報告書
平成25年 9月20日付け 審査前置解除
平成25年10月 7日付け 審尋
平成25年12月23日 回答書
平成26年 4月 7日付け 拒絶理由通知
平成26年 7月 8日 意見書・手続補正書

第2 当審がした拒絶理由通知の概要
当審が平成26年 4月 7日付けでした拒絶理由通知の概要は、以下のとおりのものである。
<拒絶理由通知>
「1)(省略)
2)(省略)
3)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・・(中略)・・
[2]理由3/請求項1?12/刊行物A?J

刊行物A:特表2003-503171号公報(原査定の引用文献1)
刊行物B:米国特許出願公開第2005/0250862号明細書(原査定 の引用文献2)
刊行物C:特表2005-517053号公報
刊行物D:国際公開2004/113472号(日本語訳:特表2007- 526158号公報参照)
刊行物E:特表2006-515636号公報
刊行物F:特表2005-528379号公報
・・(中略)・・
1.刊行物に記載された発明
・・(中略)・・
(2)刊行物Aには、 ・・(中略)・・ 次の発明が記載されている。

「・・(中略)・・ 」(以下「引用発明」という。)

2.本願請求項1に係る発明
(1)対比・判断
ア 対比
・・(中略)・・
(以下「周知技術1」という。例.刊行物B(特に請求項1参照。)、刊行物C(特に[0017]-[0018]、[0043]参照。)、刊行物D(特に7頁16-18行、9頁32行-10頁16行、11頁7?11行、請求項1,5(22頁)参照。))。
・・(中略)・・
(以下「周知技術2」という。例.刊行物E(特に[0005]参照。)、刊行物F(特に[0016]参照。))。
・・(中略)・・
(ウ)まとめ
本願請求項1に係る発明は、当業者が、引用発明及び周知技術1?2に基づいて容易に発明をすることができたものである。
・・(中略)・・ 」

第3 当審の判断
当審は、通知した上記拒絶理由3と同一の理由により、本願は、拒絶すべきものである、と判断する。以下詳述する。

1.本願に係る発明
本願に係る発明は、平成26年 7月 8日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12の各項に記載された事項で特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、請求項1に記載された以下の事項で特定されるとおりのものである。

「全ての種類の廃棄物の処理および利用の方法であって、
廃棄物に部分的に熱を吹き付け、該廃棄物を熱分離し、あるいは物質変換し、結果として生じる固体残留物を高温溶解物に変換し、
前記廃棄物を、バッチ状態で圧縮し、小型パケットに形成し、少なくとも1つの低温域と、合成ガスが廃棄物から生成される少なくとも1つの高温域とを有する温度処理域で、低温域から高温域へ温度が増加する方向に通過させ、
前記合成ガスを、ガス透過性床および前記ガス透過性床の上方に位置する合成ガスの安定化ゾーンを通過して生成し、次いで安定化ゾーンの外へ出し、
前記合成ガスの一部を、後続反応において複数の炭化水素分子の変換に用い、
前記合成ガスの前記後続反応において用いられない部分を、前記温度処理域の前記高温域で必要なエネルギーを賄うために用いることを特徴とする方法。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用例に記載された事項
上記拒絶理由通知で引用した刊行物A(特表2003-503171号公報)(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が図とともに記載されている(下線は当審で付した。)。

(a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 あらゆるタイプの廃棄物を処理及び利用する方法であって、固体及び/又は液体形状のあらゆる種類の有害な物質を含有する、分別されない、未処理の産業、家庭、及び/又は特殊な廃棄物ならびに産業スクラップは段階的な温度に曝され、熱分離され、又は熱物質変換され、そして生じた固体残留物は次いで高温溶融体に転化され、ここで、前記除去される廃棄物はバッチ状で押圧されて圧縮されたパッケージに形成され、そして増大する温度方向に複数の熱処理相を通過し、この複数の熱処理相は少なくとも1つの低温相と、少なくとも1つの高温相とを有し、前記低温相において、圧力の印加と反応容器の側壁に対するポジティブで強制的な接触が維持され、また前記高温相において、除去されるべき廃棄物はガス透過性バルクを形成し、そして合成ガスが生成し、この生成した合成ガスは前記高温相から取り出される、前記方法において、
前記生成した合成ガス中の水素の濃度及び/又は前記生成した合成ガスの体積流量が制御されることを特徴とする、前記方法。

【請求項16】 あらゆるタイプの廃棄物を加工し、変換し、そして後処理する装置であって、複数の熱処理相を有し、前記熱処理相は酸素が供給されない少なくとも1つの低温相と1000℃を越える温度で酸素が供給さえる少なくとも1つの高温相とを含み、また前記高温相で生じる合成ガス混合物の出口を有し、ここで、前記熱処理相の全ての反応室は鎖錠されることなく相互に確実に連結され、そして酸素を供給する装置及び燃料を供給する装置が前記高温相に設けられる、前記装置において、
前記合成ガス混合物の出口に、水素含量及び/又は前記合成ガス混合物の体積流量を測定するセンサーが設けられ、前記センサーは酸素及び/又は供給燃料の量を制御する装置に接続することを特徴とする、前記装置。
…」

(b)
「 【0018】
図1において、符号を付けられた方法の工程1)?8)が示される。廃棄物は前処理なしで、即ち、分別されないで、砕かれないで、工程1)に供給され、ここで圧縮される。圧縮の結果はプレス面が垂直方向と水平方向の両方に作用する場合、かなり改善される。方法の工程2)が実施されるストーキングチャンネル(stoking channel)の供給開口は高圧縮された廃棄物の栓により気密に封止されるため、高圧縮が必要である。
【0019】
高圧縮された廃棄物は酸素の供給なしに600℃以下の温度で工程2)のチャンネルを通過する。廃棄物の有機成分がガス抜きされる。このガスは前記炉内に配置された廃棄物を通って方法の工程3)の方向に流れる。このガスが流れる間に、このガスは廃棄物が炉壁と強く圧接するため、良好な熱伝達に寄与する。この高圧縮された廃棄物に圧力が絶えず加えられるため、この圧接は前記炉の全長及び前記チャンネルの全表面にわたって維持され、その結果、前記廃棄物が前記ストーキングチャンネルを通過した後に、前記有機物質のガス抜きはほとんど完了する。
【0020】
炭化ガス、廃棄物の天然水分からの水蒸気、金属類、鉱物及びガス抜きされた有機物の炭素は方法の工程3)に一緒に供給され、ここでまず最初に炭素が酸素と燃焼される。ここで温度を2000℃以上に上げて、前記金属及び鉱物成分を溶融し、これらを方法の工程6)で溶融状態で排出する。
【0021】
これと平行して、1200℃より高い温度の白熱炭素ベッドの高温領域の上方において、炭化ガスの有機化合物が破壊される。これらの温度におけるC、CO_(2)、CO及びH_(2)Oのそれぞれの反応平衡の結果として、実質的にCO、H_(2)及びCO_(2)から成る合成ガスが生成し、この合成ガスは方法の工程4)において100℃より低い温度に急激に冷却される。この急激な冷却により有害な有機物質の新たな生成が防止され、工程5)で行われるガス洗浄が容易になる。この極めて純粋な合成ガスはどのような用途にも利用できる。
【0022】
前記極めて純粋な合成ガスは廃棄物の組成及び量に依存する体積流量を有し、また変化する水素濃度を有する。従って、前記ガス洗浄工程5)の後に、前記純化された合成ガスの体積流量と水素含量が測定され、そしてこれらの測定値は制御装置9)に送られる。この制御装置は、上述したように、酸素及び、例えば天然ガス又は合成ガスのような燃料を工程3)に供給することを制御し、この工程3)において既にガス抜きされた廃棄物がO_(2)を添加されて2000℃以下の温度でガス化される。この燃料の導入又は酸素の供給の変更を通じて、合成ガスの体積流量及び水素含量が共に影響される。従って、この調整を通じて、制御された一定の体積流量及び制御された一定の水素含量を有する合成ガス流が前記ガス洗浄工程5)の後のガス回収のために利用される。
【0023】
工程6)で溶融されて排出された金属類及び鉱物物質は工程7)において便宜的に1400℃以上で酸素を添加される後処理を実施される。この工程において、炭素残留物が除去されて、灰化が終了する。例えば、水浴中に固形物を排出させることにより工程8)の廃棄プロセスが終了する。固形物を水浴中に排出した後に得られる粒状物中に、その他の金属類、合金成分及び十分に灰化した非金属類が存在する。鉄合金は磁気的に堆積できる。浸出しないように鉱物化された非金属類は、多くの方法により利用できる。例えば、膨張した粒状形状、即ち、絶縁材料としてのロックウールとして処理されるか、又は道路建造及びコンクリート製造用の充填剤の細粒として直接に利用できる。」

(c)
「 【0024】
図2は本発明の方法を実施する装置を極めて概略的に示す。それぞれの領域に対して、本発明を有利に実施する典型的なプロセスデータが例示される。ガス抜きは温度T、圧力、及び廃棄物の組成の関数である。
【0025】
前記組成及び体積流量は存在する炭素、酸素及び水蒸気に依存する。利用できる炭素(ガス相への燃料の供給)及び酸素(ガス相への酸素ランスを経由する酸素の供給)の量が制御されるため、公知の方法において比較的高品質である、合成ガスの組成は更に最適化され、従って、例えば、ガスエンジンにおいて電気エネルギーに変換するために、又は化学プロセスのために好ましく利用される。」

(d)
「 【0026】
図3において、圧縮プレス1はその構造が、例えば車両を解体するのに使用されるような公知のスクラッププレスに相当する。旋回式のプレス板2は混合廃棄物をプレス1に、ここでは垂直方向に(破線で示すように)、詰め込むことができる。プレス面3は、前記プレスの充填室が完全に開くように左側に位置する。プレス板2を図示のように水平位置に回転させることにより、まず第一に前記廃棄物は垂直方向に圧縮される。その後、プレス面3は実線で示す位置まで水平に移動し、そして廃棄物パッケージを水平方向に圧縮する。この目的のために必要な反力は矢印の方向に出し入れできるカウンタプレート9により吸収される。圧縮工程が完了した後、カウンタプレート9は外側に移動し、そして廃棄物の圧縮された栓はプレス面3を用いて押圧され、更に右側方向に移動して炉6の非加熱領域5に入り、従って前記圧縮栓の全量はこれに対応して更に再度圧縮され、そして前記チャンネル壁即ち炉壁との加圧接触を維持する。次にプレス面3が左側の元の位置に復帰し、カウンタプレート9が挿入され、そしてプレス板2が破線で示す垂直位置に振り戻る。圧縮プレス1が再び充填のために準備される。廃棄物は強く圧縮されるため、炉6の非加熱領域5中に押込められた廃棄物の栓は気密になる。この炉は、矢印の方向に加熱ジャケット8を通して流れる燃焼ガス及び/又は廃棄物ガスにより加熱される。
【0027】
圧縮された廃棄物が炉6のチャンネルを通じて押圧されると、ガス抜きされた帯域7は図示のように炉6の中央面の方向に膨張し、その長方形断面の横幅/高さの比が2より大きい関係を有する大面積を与えられる。高温反応器10の入口において、廃棄物の押圧を通じて一定の圧力が加えられるため、炭素、鉱物及び金属類の圧縮された混合物が生じる。この混合物は前記高温反応器中への入口の領域中で極めて強い輻射熱に曝される。従って、燻る廃棄物中の残留ガスが急激に膨張するため、前記廃棄物は小片に分解される。このようにして得られた固体の小片は前記高温反応器中でガス透過性ベッド20を形成し、このベッド中で前記燻った廃棄物の炭素が酸素ランス12を用いて灰化されて、CO_(2)又はCOを生成する。この炭化ガスは前記反応器10を通じて前記ベッド20の上方を乱流状に流れてクラッキングにより完全に解毒される。前記廃棄物から発生したC、CO_(2)、CO及び水蒸気の間で、温度に依存する反応平衡が合成ガスの生成を通じて設定される。温度の上昇は図2の例図に相当する。合成ガスは容器14中において水を噴射することにより100℃未満に急激に冷却される。ガス中に伴なわれる成分(鉱物及び/又は溶融状態の金属)が前記冷水中に堆積し、水蒸気が凝縮し、その結果、ガス容積が減少して、公知の装置を用いた急激な冷却の後に実施されるガス浄化を容易にする。浄化後において、合成ガス流の急激な冷却に使用された水は浄化後に再び冷却用に使用できる。
【0028】
水素含量及び体積流量は生成した合成ガス流中に配置されたセンサー100を用いて制御され、このセンサーはライン102を通じて信号を制御装置101に送る。この信号は前記冷却され、浄化された合成ガス流の体積流量の電流及び水素含量の電流の両方を含む。この制御装置は制御装置101と酸素ランス104との間に設けられた制御信号ライン103を通じて、酸素ランス104を通して酸素をバルク20の上方のガス相に供給することを変更する。酸素の供給を増大させると、H_(2)の燃焼が増大し、従って合成ガス中の水素の量を減少できる。酸素ランス104を通じて酸素の供給を低下させると、ガス相中の燃焼が減少し、従って合成ガス中の水素量が増大する。合成ガスの体積流量が十分でない場合には、例えば、天然ガス又は合成ガス自体のような可燃性ガスのバルク20又はガス相への供給を増大又は減少させてもよい。従って、反応器中の炭化水素の量が変更されて、全体の合成ガスの体積流量が影響される。
【0029】
前記ベッド20の、2000℃より高く加熱された前記コア領域において、前記燻った廃棄物の鉱物及び金属成分が溶融する。これらの物質は密度が異なるため、互いに混じることなく層に分離する。例えば、クロム、ニッケル及び銅のような典型的な鉄合金成分は前記廃棄物の鉄と合金化して処理可能な合金を形成し、他の金属化合物又はアルミニウムを酸化し、そして酸化物として鉱物溶融物を安定化させる。
【0030】
前記溶融物は後処理反応器16中に直接に入り、ここで好ましくは図示されないガスバーナーにより支持されたO_(2)ランス13を用いて導入された酸素性雰囲気中の1400℃より高い温度に曝される。既に導入された炭素粒子が酸化され、前記溶融物は均質化されて、その粘度は低下する。
【0031】
水浴17中への一般的な排出を通じて、鉱物物質及び鉄溶融物は分離した細粒を形成し、その後磁気的に分類される。
図3において、後処理反応器16の位置は明確さのために90度片寄らせて描かれている。この反応器16は高温反応器10の下方部分と共に構造体を形成し、これはフランジ接続部10’が取外された後に、保守及び修理の目的のために、装置のラインから横に移動できる。
【0032】
図3に示すように、実質的に一直線に配置された装置のラインは、かなりの長さにわたって延びる。特に、装置が熱平衡の内外に燃焼又は消火される場合、温度の変動はかなり熱膨張を生じる。従って、定置型の高温反応器10の場合、前記炉6及び前記連結圧縮プレス1に対して、ローラー4がガイドレール(図示せず)上を長さ方向に移動するばかりでなく、横力をも吸収できるように構成される。前記高温反応器から導出されるパイプライン(例えば、15)においては、伸縮継手11が前記熱膨張を補償する。」

(e)【図1】(第14頁)




(f)【図2】(第15頁)




(g)【図3】(第3頁)




3.検討

(1)引用例に記載された発明
ア 引用例には、「あらゆるタイプの廃棄物を処理及び利用する方法であって、廃棄物は段階的な温度に曝され、熱分離され、又は熱物質変換され、そして生じた固体残留物は次いで高温溶融体に転化され、ここで、前記除去される廃棄物はバッチ状で押圧されて圧縮されたパッケージに形成され、そして増大する温度方向に複数の熱処理相を通過し、この複数の熱処理相は少なくとも1つの低温相と、少なくとも1つの高温相とを有し、前記高温相において、除去されるべき廃棄物はガス透過性バルクを形成し、そして合成ガスが生成し、この生成した合成ガスは前記高温相から取り出される、前記方法」(摘示(a)【請求項1】参照)が記載されている。
イ 前記方法において、「除去されるべき廃棄物はガス透過性バルクを形成し」とされ、前記「ガス透過性バルク」は廃棄物から形成されるものであり、摘示(d)段落【0028】及び図3によれば、「バルク20」と記載され、符号20にて図示される部材であるところ、摘示(d)段落【0027】には、「…廃棄物は小片に分解され…得られた固体の小片は…ガス透過性ベッド20を形成し…」と記載されているから、前記方法において、「ガス透過性バルク」は「ガス透過性ベッド」と言い換えることができる。
また引用例の摘示(d)、(f)及び(g)からみて、引用例の図3における「ガス化」部分には、「合成ガスはガス透過性ベッドおよび前記ガス透過性ベッドの上方に位置する合成ガスの安定化ゾーンを通過して生成され、次いで安定化ゾーンの外へ出され」ることが記載されているといえる。
さらに前記方法は、引用例の「…燃料を供給する装置が前記高温相に設けられる…」(摘示(a)【請求項16】参照)によれば、「燃料を供給する装置が前記高温相に設けられる」ものといえ、摘示(b)段落【0020】及び【0022】「・・有機物の炭素は方法の工程3)に一緒に供給され、ここでまず最初に炭素が酸素と燃焼される。・・合成ガスのような燃料を工程3)に供給する・・」によれば、前記「燃料」は「合成ガスのような燃料」といえるから、前記方法は、「合成ガスのような燃料を供給する装置が前記高温相に設けられる」ものといえる。

ウ してみると、上記引用例には、上記ア及びイからみて、次の発明が記載されているといえる。

「あらゆるタイプの廃棄物を処理及び利用する方法であって、廃棄物は段階的な温度に曝され、熱分離され、又は熱物質変換され、そして生じた固体残留物は次いで高温溶融体に転化され、ここで、前記除去される廃棄物はバッチ状で押圧されて圧縮されたパッケージに形成され、そして増大する温度方向に複数の熱処理相を通過し、この複数の熱処理相は少なくとも1つの低温相と、少なくとも1つの高温相とを有し、前記高温相において、除去されるべき廃棄物はガス透過性ベッドを形成し、そして合成ガスが生成し、この生成した合成ガスはガス透過性ベッドおよび前記ガス透過性ベッドの上方に位置する合成ガスの安定化ゾーンを通過して生成され、次いで安定化ゾーンの外へ出され、前記高温相から取り出され、合成ガスのような燃料を供給する装置が前記高温相に設けられる、前記方法。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「廃棄物」、「合成ガス」、「ガス透過性ベッド」、「あらゆるタイプの廃棄物を処理及び利用する方法」、「廃棄物は段階的な温度に曝され、熱分離され、又は熱物質変換され、そして生じた固体残留物は次いで高温溶融体に転化され」、「低温相」、「『合成ガス』が『除去されるべき廃棄物』から『生成』される『高温相』」、「熱処理相」、「前記除去される廃棄物はバッチ状で押圧されて圧縮されたパッケージに形成され、そして増大する温度方向に複数の熱処理相を通過し、この複数の熱処理相は少なくとも1つの低温相と、少なくとも1つの高温相とを有し、前記高温相において、除去されるべき廃棄物はガス透過性ベッドを形成し、そして合成ガスが生成し、この生成した合成ガスはガス透過性床および前記ガス透過性床の上方に位置する合成ガスの安定化ゾーンを通過して生成され、次いで安定化ゾーンの外へ出され、前記高温相から取り出される」は、それぞれ、本願発明の「廃棄物」、「合成ガス」、「ガス透過性床」、「全ての種類の廃棄物の処理および利用の方法」、「廃棄物に部分的に熱を吹き付け、該廃棄物を熱分離し、あるいは物質変換し、結果として生じる固体残留物を高温溶解物に変換し」、「低温域」、「『合成ガスが廃棄物から生成』される『高温域』」、「温度処理域」、「前記廃棄物を、バッチ状態で圧縮し、小型パケットに形成し、少なくとも1つの低温域と、合成ガスが廃棄物から生成される少なくとも1つの高温域とを有する温度処理域で、低温域から高温域へ温度が増加する方向に通過させ、前記合成ガスを、ガス透過性床および前記ガス透過性床の上方に位置する合成ガスの安定化ゾーンを通過して生成し、次いで安定化ゾーンの外へ出し」に相当する。

イ 上記アから、本願発明と引用発明とは、
「全ての種類の廃棄物の処理および利用の方法であって、
廃棄物に部分的に熱を吹き付け、該廃棄物を熱分離し、あるいは物質変換し、結果として生じる固体残留物を高温溶解物に変換し、
前記廃棄物を、バッチ状態で圧縮し、小型パケットに形成し、少なくとも1つの低温域と、合成ガスが廃棄物から生成される少なくとも1つの高温域とを有する温度処理域で、低温域から高温域へ温度が増加する方向に通過させ、
前記合成ガスを、ガス透過性床および前記ガス透過性床の上方に位置する合成ガスの安定化ゾーンを通過して生成し、次いで安定化ゾーンの外へ出す、前記方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本願発明は、「合成ガスの一部を、後続反応において複数の炭化水素分子の変換に用い、前記合成ガスの前記後続反応において用いられない部分を、温度処理域の高温域で必要なエネルギーを賄うために用いる」のに対して、引用発明は、「合成ガスのような燃料を供給する装置が高温相に設けられる」点。

(3)相違点に係る検討
ア 相違点について
引用例の「実質的にCO、H_(2)及びCO_(2)から成る合成ガスが生成し、…この極めて純粋な合成ガスはどのような用途にも利用できる。」(摘示(b)【0021】、摘示(e)参照)及び「合成ガスの組成は更に最適化され、従って、例えば、ガスエンジンにおいて電気エネルギーに変換するために、又は化学プロセスのために好ましく利用される。」(摘示(c)【0025】参照)との記載等からみて、引用例には、引用発明において生成した合成ガスを化学プロセスのため等の用途で利用できることが開示されていると認められる。
そして、合成ガスを化学プロセスにおいて利用する用途として、フィッシャー-トロプシュ反応により複数の炭化水素分子に変換させることは、本願優先日前に周知のことであること(以下、「周知技術1」という。例.米国特許出願公開第2005/0250862号明細書(特に請求項1参照。)、特表2005-517053号公報(特に段落【0017】、【0018】、【0043】参照)、国際公開2004/113472号(日本語訳:特表2007-526158号公報参照)(特に7頁16?18行、9頁32行?10頁16行、11頁7?11行、請求項1,5(22頁)参照。なお、以上の周知技術1に係る刊行物は、平成26年 4月 7日付け拒絶理由通知における刊行物B?Dである。)、及び、フィッシャー-トロプシュ反応の未反応合成ガスの一部は燃料として利用することは、本願優先日前に周知のことであること(以下「周知技術2」という。例.特表2006-515636号公報(特に段落【0005】、【0035】、【図2】参照)、特表2005-528379号公報(特に段落【0016】、【0025】?【0027】、【図1】?【図3】参照)。前記特表2006-515636号公報の「…その合成ガス流をフィッシャー・トロプシュ反応器18へ入れるか、又は排出流23としてその工程を出、そこでその未反応ガスを燃料として用いる。」(段落【0005】参照)、前記特表2005-528379号公報の「…フィッシャー-トロプシュ反応器からの生成物は分離ゾーンに回される。…分離ゾーンから回収されたテールガスは、未反応合成ガス(すなわち、CO、H_(2))…を含む。…テールガスの一部分は、取り出され、燃料として使用することができる。」(段落【0016】参照)との記載等からみて、フィッシャー-トロプシュ反応による生成物からの未反応の合成ガスの一部を燃料として利用することが開示されていると認められる。なお、上記周知技術2に係る刊行物は、平成26年 4月 7日付け拒絶理由通知における刊行物E,Fである。)を考慮すると、引用発明において、合成ガスを後続のフィッシャー-トロプシュ反応により複数の炭化水素分子に変換させる原料として利用するとともに(周知技術1)、当該反応に用いられない未反応合成ガスを燃料として(周知技術2)、引用発明の高温相に設けられている「合成ガスのような燃料を供給する装置」の燃料として用いることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
そうすると、引用発明の「合成ガスのような燃料を供給する装置が前記高温相に設けられる」との構成に換えて、「合成ガスの一部を、後続反応において複数の炭化水素分子の変換に用い、前記合成ガスの前記後続反応において用いられない部分を、温度処理域の高温域で必要なエネルギーを賄うために用いる」との構成を採用することは、当業者が、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易になし得たことと認められる。

イ 効果について
本願明細書の段落【0015】?【0017】の記載等からみて、本願発明は廃棄物の処理により、炭化水素分子と、廃棄物の処理で必要なエネルギーとを産出するとの効果を奏するものと認められる。しかしながら、前記炭化水素分子の産出については、引用発明及び周知技術1から当業者が予測し得たものであり、前記廃棄物の処理で必要なエネルギーの産出については、引用発明及び周知技術2から当業者が予測し得たものであるから、本願発明の効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2から、当業者が予測し得たものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4.審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成26年 7月 8日付け意見書において、
(1)「すなわち、ナフサ留分や未反応の「合成ガス自体」を、それらに含まれる成分を目的として再度フィッシャートロプシュ反応において用いることと、本願発明における、未反応の合成ガスの「エネルギー」を合成ガスの処理または反応において用いることとは、構成において明らかに異なるものであり、未反応の合成ガス自体を後続反応において用いることが、未反応の合成ガスのエネルギーを後続反応において用いることを開示するとはいえないものと思料致します。」(意見書3頁12?17行)
及び
(2)「本願発明では、廃棄物の処理により、炭化水素分子と、廃棄物の処理で必要なエネルギーとを産出するものであり、これは、いずれの刊行物にも開示されておらず、また上記刊行物を組み合わせても当業者が容易に想到するものではないと思料致します。」(意見書3頁18?20行)
と主張する。
しかるに、上記(1)の主張は、上記3.(3)アで説示したとおり、未反応の合成ガスを燃料、すなわち、エネルギー源として用いることが本願優先日前周知のことであること(周知技術1)からみて、明らかに当を得ないものである。
次に、上記(2)の主張は、上記3.(3)イで説示したとおり、本願発明の効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2から、当業者が予測し得たものであり、引用発明に周知技術1及び周知技術2を組合わせることも上記3.(3)アで説示したとおり、当業者が容易になし得たことといえるから、明らかに当を得ないものである。

5.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
結局、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、その余につき検討するまでもなく、本願は、特許法第49条第2号に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-28 
結審通知日 2014-09-02 
審決日 2014-09-16 
出願番号 特願2009-525961(P2009-525961)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 康彰  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 菅野 芳男
日比野 隆治
発明の名称 廃棄物からの燃料の生成方法  
代理人 西脇 民雄  

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